JP7139741B2 - 光学用保護フィルム - Google Patents
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Description
このような量子ドット技術を利用した液晶表示装置の一例として、光源側から順に、青色LEDを搭載した反射板、蛍光体としての量子ドット(「QD」とも称される)を含有した樹脂シート(表裏に保護フィルムが貼り合わされている)、プリズムシート、拡散シート及び偏光板を積層してなる構成の液晶表示装置を挙げることができる。発光特性の異なる2種又は3種の量子ドットがLEDから入射された光により励起され、白色光を具現化することができる。
そこで本発明の目的は、ニュートンリング現象の発生を抑制することができ、しかも、輝度の向上を図ることもできる、新たな光学用保護フィルムを提供することにある。
本発明の実施形態の一例に係る光学用保護フィルム(「本保護フィルム」と称する)は、基材フィルム(「本基材フィルム」と称する)の表裏一面側に粒子含有層(「本粒子含有層」と称する)を備えたフィルムである。
上記機能層としては、例えばアンカーコート層、無機物含有層、易接着層、中間緩衝層などの層を挙げることができる。各機能層については後述する。
本保護フィルムは、ニュートンリング現象発生抑制と輝度向上の観点から、粒子含有層とは反対側のフィルム面の反射率R2と、粒子含有層側表面の反射率R1との差が4%より大きいことが好ましく、中でも5%より大きい、その中でも6%より大きい、その中でも10%より大きいことがさらに好ましい。上限値は特に限定するものではないが、光制御効果を考慮すると、20%程度であると考えることができる。
他方、ニュートンリング現象発生抑制と輝度向上の観点から、前記反射率R2は14%より大きいことが好ましく、その中でも16%より大きい、その中でも18%より大きいことがさらに好ましい。上限値は特に限定するものではないが、光制御効果を考慮すると、26%程度であると考えることができる。
この際、ニュートンリング現象発生抑制と輝度向上の観点から、上記光線透過率T1と上記光線透過率T2との差は4%より大きいことが好ましく、中でも5%より大きい、その中でも6%より大きい、その中でも10%より大きいことがさらに好ましい。上限値は特に限定するものではないが、光制御効果を考慮すると、20%程度であると考えることができる。
他方、前記光線透過率T2が85%より小さいことが好ましく、その中でも80%より小さい、その中でも76%より小さいことがさらに好ましい。下限値は特に限定するものではないが、光制御効果を考慮すると、74%程度であると考えることができる。
光学用途に用いるフィルムのヘーズ値が40%より大きいということは、技術常識的には考えられないかもしれないが、本保護フィルムは上記のような特殊な光学特性を兼ね備えているため、ヘーズ値が40%より大きい場合であっても光学用途に好適に用いることができる。
本保護フィルムは、水蒸気透過率(WvTR)が1g/m2/dayより小さいことが好ましい。
光学部材、例えば量子ドットなどの蛍光体を含有するシートは水蒸気によって劣化する可能性があるため、当該光学部材を保護する観点から、本保護フィルムは水蒸気透過率(WvTR)が1g/m2/dayより小さいことが好ましく、中でも0.5g/m2/dayより小さい、その中でも0.1g/m2/dayより小さいことがさらに好ましい。
ここで、上記水蒸気透過率(WvTR)は後述する実施例で示した測定方法で測定することができる。
本保護フィルムにおいて、水蒸気透過率(WvTR)を1g/m2/dayより小さくする手段としては、例えば後述する無機物含有層を積層する方法を挙げることができる。但し、この方法に限定するものではない。
本粒子含有層は、本保護フィルムに上記光学特性を付与するため、バインダー樹脂と平均粒径3μm~10μmの粒子とを含有するのが好ましい。
本粒子含有層が含有する粒子の平均粒径が3μm以上であれば、上記光学特性を付与するのに有効であり、10μm以下であれば、フィルムの表面粗度が粗くなり過ぎることがなく、後工程において、粒子の脱落等の不具合発生を抑えることができる。
かかる観点から、本粒子含有層が含有する粒子の平均粒径は3μm~10μmであるのが好ましく、中でも3μm以上或いは8μm以下、その中でも3μm以上或いは6μm以下、その中でも3μm以上或いは5μm以下であるのがさらに好ましい。
なお、本粒子含有層における粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって、本粒子含有層に存在する10個以上の粒子を任意に選択し、各粒子の直径を測定し、その平均値として求めることができる。その際、非球状粒子の場合は、最長径と最短径の平均値((短径+長径)/2)を各粒子の直径として測定することができる。
この際、各粒子の粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって求めることができ、非球状粒子の場合は、最長径と最短径の平均値を各粒子の直径として測定することができる。
上記大きな粒子の粒径は、5μm以上或いは10μm以下であるのがさらに好ましく、中でも5μm以上或いは8μm以下であるのがさらに好ましい。
他方、上記小さな粒子の粒径は、2μm以上或いは5μm以下であるのがさらに好ましく、中でも2μm以上或いは4μm以下であるのがさらに好ましい。
なお、本粒子含有層は、上記粒径の大きな粒子及び上記粒径の小さな粒子のほかに、異なる大きさの粒子が存在してもよい。
中でも、粒子の透明性及び耐擦傷性の観点から、アクリル架橋樹脂から構成されるアクリルビーズを用いるのが好ましい。
かかる観点から、粒子含有層中の粒子含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して40~300質量部であるのが好ましく、中でも50質量部以上或いは200質量部以下、その中でも60質量部以上或いは100質量部以下であるのがさらに好ましい。
本基材フィルム(なお、上記基材フィルム(1)及び基材フィルム(2)も「本基材フィルム」に属する)は、透明性を有し、且つ、保護フィルムとして必要十分な剛性を備えたフィルムであれば、材質及び構成を限定するものではない。
本基材フィルムが多層構成の場合、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよい。
この際、「主成分樹脂」とは、本基材フィルムを構成する樹脂のうち最も含有割合の多い樹脂を意味し、例えば本基材フィルムを構成する樹脂のうち50質量%以上、特に70質量%以上、中でも80質量%以上(100質量%を含む)を占める樹脂である。
本基材フィルムの各層は、ポリエステルを主成分樹脂として含有すれば、ポリエステル以外の樹脂或いは樹脂以外の成分を含有していてもよい。
ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。
前記芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などを挙げることができる。
前記脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。
代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等を例示することができる。
当該粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではない。例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等を挙げることができる。これらは1種単独で用いても、これらのうちの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
上記粒子の形状は、特に限定されるわけではない。例えば球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれであってもよい。
また、上記粒子の硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
また、一軸延伸又は二軸延伸したものであってもよく、剛性の点から、二軸延伸フィルムが好ましい。
本基材フィルムは、上述したように、図2に示すように、基材フィルム(1)の表裏一面側に本粒子含有層(3)を備え、基材フィルム(1)の表裏他面側に、接着剤層(4)を介して基材フィルム(2)を備えた非対称構成であってもよい。
この際の接着剤層(4)は、公知の接着剤を適宜選択して用いればよい。中でも、ポリエステルフィルム同士を接着することができ、透明性を確保することができる公知の接着剤を適宜選択して用いればよい。例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース及びヒドロキシセルロースなどのうちの一種又は二種以上の組合せからなる接着剤を挙げることができる。
上述したように、基材フィルム(2)の表裏他面側、又は、本粒子含有層(3)の表裏一面側、又は、基材フィルム(1)と基材フィルム(2)との間、又は、基材フィルム(1)と本粒子含有層(3)との間、又は、これらのうちの2か所以上に、必要に応じて、各種機能を備えた層、すなわち機能層を設けることができる。
上記機能層としては、例えば次に説明するアンカーコート層、無機物含有層、易接着層、中間緩衝層などの層を挙げることができる。但し、これらに限定するものではない。
アンカーコート層は、基材フィルム(1)と基材フィルム(2)、基材フィルム(1)と本粒子含有層(3)、基材フィルム(1)と各機能層、又は、基材フィルム(2)と各機能層との接着性を高めるための層であり、必要に応じて設けることができる。
当該アンカーコート剤としては、溶剤性又は水性のポリエステル、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、イソシアネート基含有樹脂、アルコキシル基含有樹脂、変性スチレン樹脂及び変性シリコーン樹脂等を挙げることができ、これらを単独或いは2種以上組み合わせて使用することができる。中でも、密着性及び耐熱水性の点から、ポリエステル、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、イソシアネート含有樹脂及びこれらの共重合体から選ばれる少なくとも1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが好ましく、その中でも、ポリエステル、ウレタン樹脂、アクリル樹脂の1種類以上と、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、イソシアネート基含有樹脂から選ばれる少なくとも1種を単独で又は2種以上と、を組み合わせて用いることが好ましい。
かかる観点から、アンカーコート層の厚さは0.005~5μmであることが好ましく、中でも0.01μm以上或いは1μm以下、その中でも0.02μm以上或いは0.5μm以下であることがより好ましい。
無機物含有層は、主にガス透過を抑制する役割の層であり、必要に応じて設けることができる。
なお、主成分とは、無機物含有層の50質量%以上、中でも70質量%以上、中でも80質量%以上、中でも90質量%以上を無機物が占めるという意味である。
無機物含有層は、PVD法により形成されたPVD無機物含有層を少なくとも1層備えていることが好ましい。これにより高いガスバリア性を発揮させることができる。
PVD無機物含有層が、SiOx(1.0<X≦2.0)で表される珪素酸化物から構成される、該Xの値(下限値)が小さくなれば、ガス透過度は小さくなるが、珪素酸化物膜自体が黄色性を帯び、透明性が低くなる場合がある。上記組成であることはXPS(X線光電子分光)分析などで確認することが可能である。
CVD無機物含有層は炭素を含有し、その炭素含有量は、ガスバリア性の観点から20at.%未満であることが好ましく、中でも10at.%以下であるのがより好ましく、その中でも5at.%以下であるのが最も好ましい。炭素含有量が上記範囲を満足することで、無機物含有層の表面エネルギーが大きくなり、無機物含有層同士の間の密着性が良好となるため、バリアフィルムの耐折曲げ性、耐剥離性が向上する。
また、CVD無機物含有層の炭素含有量は0.5at.%以上、好ましくは1at.%以上、より好ましくは2at.%以上がよい。CVD無機物含有層中間層に炭素を微量含有することで、応力緩和が効率よくなされ、バリアフィルム自体のカール低減効果にもつながる。
なお、「at.%」とは、原子組成百分率(atomic%)を示す。また、組成に関してはXPS分析などで確認することが可能である。
CVD無機物含有層として、酸化珪素、酸化炭化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化窒化珪素、窒化珪素及び酸化アルミニウムから選ばれる少なくとも一種からなるものが更に好ましい。また、金属酸化物又は金属窒化物としては、有機化合物をプラズマ分解して得られるものが好ましい。
無機物含有層の厚さがこのような範囲であれば、所望するガスバリア性を確保することが可能となる。
無機物含有層は、上記無機物含有層に柔軟な層を積層して2層以上の構成とするのが好ましい。すなわち、基材フィルムの粗大突起部が起点となって生じたり、加熱蒸着によって上記無機物含有層を形成した際に原料が塊となって飛来し付着したりするなどして、上記無機物含有層中には、ピンホールと呼ばれる微小な欠陥が生じることがあり、この欠陥による空隙をガスが通過することによってガスバリア性が低下することがあるため、上記無機物含有層に、柔軟な材料からなる層を積層して2層以上の構成とし、ガスバリア性をより一層高めるのが好ましい。
主成分とは、柔軟な層の50質量%以上、中でも70質量%以上、中でも80質量%以上、中でも90質量%以上を上記主成分が占めるという意味である。
易接着層は、基材フィルム(1)と基材フィルム(2)、基材フィルム(1)と本粒子含有層(3)、基材フィルム(1)と各機能層、又は、基材フィルム(2)と各機能層、又は、基材フィルム(2)と各種光学部材、例えば蛍光体含有シートとの接着性を高めるための層であり、必要に応じて設けることができる。
上記炭素-炭素二重結合を有する化合物は、例えば単官能(メタ)アクリレート基、二官能(メタ)アクリレート基、多官能(メタ)アクリレート基、ビニル基、アリル基等を有する化合物を挙げることができる。
なお、「(メタ)アクリレート化合物」の表記は「アクリレート化合物およびメタクリレート化合物」を表す。
密着性向上の観点から、これらの(メタ)アクリレート化合物の中でも、二官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリレートが好ましく、その中でも多官能(メタ)アクリレートが特に好ましい。
上記ウレタン樹脂は、ウレタン結合を分子内に有する高分子化合物であればよく、ポリオールとイソシアネートの反応により得られる高分子化合物であればよい。
当該ポリオールとしては、ポリカーボネートポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類などを挙げることができ、これらの化合物は単独で用いても、複数種用いてもよい。密着性向上の観点から、ポリカーボネートポリオール類またはポリエステルポリオール類が好ましく、ポリカーボネートポリオール類がより好ましい。
この際、多価アルコール類としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン等を挙げることができる。
カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等を挙げることができ、これらの反応から得られるポリカーボネート系ポリオール類としては、例えば、ポリ(1,6-ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレン)カーボネート等を挙げることができる。
水酸基を2個有する鎖延長剤としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール等の脂肪族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール、ネオペンチルグリコール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート等のエステルグリコールといったグリコール類を挙げることができる。また、アミノ基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、イソプロビリチンシクロヘキシル-4,4’-ジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環族ジアミン等を挙げることができる。
水系のウレタン樹脂の場合、ウレタン樹脂を水に分散または溶解させるには、乳化剤を用いる強制乳化型、ウレタン樹脂中に親水性基を導入する自己乳化型あるいは水溶型等がある。特に、ウレタン樹脂の骨格中にイオン基を導入しアイオノマー化した自己乳化タイプが、液の貯蔵安定性や得られる塗布層の耐水性、透明性、密着性に優れており好ましい。また、導入するイオン基としては、カルボキシル基、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、第4級アンモニウム塩等、種々のものを挙げることができ、中でもカルボキシル基が好ましい。
ウレタン樹脂にカルボキシル基を導入する方法としては、重合反応の各段階の中で種々の方法を採用することができる。例えば、プレポリマー合成時に、カルボキシル基を持つ樹脂を共重合成分として用いる方法や、ポリオールやポリイソシアネート、鎖延長剤などの一成分としてカルボキシル基を持つ成分を用いる方法を採用することができる。特に、カルボキシル基含有ジオールを用いて、この成分の仕込み量によって所望の量のカルボキシル基を導入する方法が好ましい。例えば、ウレタン樹脂の重合に用いるジオールに対して、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ビス-(2-ヒドロキシエチル)プロピオン酸、ビス-(2-ヒドロキシエチル)ブタン酸等を共重合させることができる。またこのカルボキシル基はアンモニア、アミン、アルカリ金属類、無機アルカリ類等で中和した塩の形にするのが好ましい。特に好ましいものは、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンである。かかるウレタン樹脂は、塗布液の乾燥工程において中和剤が外れたカルボキシル基を他の架橋剤による架橋反応点として利用できる。これにより、塗布液状態での安定性に優れ、得られる易接着層の耐久性、耐水性、耐ブロッキング性等を更に改善することが可能となる。
易接着層は、ウレタン樹脂又は炭素-炭素二重結合を有する化合物の他に、塗布外観、透明性、密着性向上の観点から、バインダーポリマーを含有するのが好ましい。
ポリビニルアルコールのケン化度は、特に限定されなく、70モル%以上であるのが好ましく、中でも80モル%以上或いは99.9モル%以下、その中でも86モル%以上或いは97モル%以下、その中でも95モル%以下であるのがさらに好ましい。
他方、良好な塗膜強度を得る観点からは、易接着層中のバインダーポリマーの含有量は、90重量%以下であるのが好ましく、中でも80重量%以下、その中でも75重量%以下であるのがさらに好ましい。
易接着層は、さらに架橋剤を含有することにより、該易接着層の架橋度を高めて、その接着性及び耐久性を高めることができる。
密着性向上の観点から、オキサゾリン化合物のオキサゾリン基量は、0.5~10mmol/gであるのが好ましく、中でも1mmol/g以上或いは9mmol/g以下、その中でも3mmol/g以上或いは8mmol/g以下、その中でも4mmol/g以上或いは6mmol/g以下であるのがさらに好ましい。
このカルボジイミド化合物は従来公知の技術で合成することができ、一般的には、ジイソシアネート化合物の縮合反応が用いられる。ジイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではなく、芳香族系、脂肪族系いずれも使用することができ、具体的には、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどを挙げることができる。
他方、蛍光体シート、特に量子ドット層との良好な密着性が得られる観点から、易接着層中の架橋剤の含有量は、70重量%以下であるのが好ましく、中でも60重量%以下、その中でも50重量%以下の範囲であるのがさらに好ましい。
易接着層は、滑り性やブロッキングの改良のため、粒子を含有してもよい。
易接着層が粒子を含有する場合、その平均粒径は、フィルム透明性の観点から、1.0μm以下の範囲であるのが好ましく、中でも0.5μm以下、その中でも0.2μm以下であるのがさらに好ましい。
易接着層が含有する粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、有機粒子等の粒子を挙げることができる。
これらの添加剤は単独で用いてもよいし、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
易接着層を設ける方法は、例えばリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
インラインコーティングによって設ける場合、上述の一連の化合物を水溶液または水分散体として、固形分濃度が0.1~50重量%程度を目安に調整した塗布液をポリエステルフィルム上に塗布するようにするのが好ましい。
また、本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。
一方、インラインコーティングにより易接着層を設ける場合、通常、70~280℃で3~200秒間を目安として熱処理を行うのがよい。
なお、易接着層を形成する対象面には、予めコロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
易接着層は、単層であっても、2層以上の層からなるものであってもよい。
ここで言う「2層」とは、易接着層自体が二層以上から構成されてもよいし、易接着層を有するフィルム構成として、二層構成以上であってもよく、いずれの場合でもよいと解釈するものである。
この際、接着層は、上述した易接着層の説明のとおりであればよく、その厚みや形成方法も上述したようにすればよい。
他方、接着基材層は、当該接着層の基材として機能する層であればよい。例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリトニトリル、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ABS、環状オレフィン・コポリマー(COC)、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロースなどを主成分樹脂とする樹脂層又は樹脂フィルムを挙げることができる。強度を高めるため、これらの延伸フィルムであってもよい。
接着基材層の厚さは、支持特性を確保する観点から、3μm~50μmが好ましく、中でも4μm以上或いは30μm以下、その中でも5μm以上或いは25μm以下であるのがさらに好ましい。
易接着層の膜厚(乾燥後)は、0.002μm~10.0μmであるのが好ましく、中でも0.005μm以上或いは5μm以下、その中でも0.01μm以上或いは2μm以下、その中でも0.01μm以上或いは0.5μm以下の範囲であるのがさらに好ましい。
易接着層の膜厚が上記の範囲であれば、密着性を確保することができると共に、ブロッキングの悪化やヘーズ上昇等を抑制することができる。
前記無機物含有層及び前記易接着層を設ける場合、必要に応じて、前記無機物含有層と前記易接着層との間に無機物含有層の表面凹凸を吸収する中間緩衝層を設けてもよい。
この中間緩衝層は、トップコート層とも称される層であり、無機物含有層の表面凹凸を吸収して当該無機物含有層に起因する黄色化抑制或いは黄褐色化抑制を目的として設ける層である。
中間緩衝層を設けることで、ヘーズ値を低くし、色調及び透明性を良好なものとすることができる。
中間緩衝層における(a)ポリビニルアルコールと(b)珪素化合物の含有割合は、ガスバリア性及び透明性の観点から、質量比で1/6~1/2であることが好ましく、1/5~1/3であることがより好ましい。
また、高速グラビアコーティング性、耐印刷性、耐熱水密着性の点から、(b)珪素化合物粒子を20~70質量%含有することが好ましく、中でも30質量%以上或いは60質量%以下の割合で含有することがさらに好ましい。
また、ガスバリア性、高速グラビアコーティング性、耐熱水密着性の点から、(c)エチレン-不飽和カルボン酸共重合体を10~70質量%含有することが好ましく、中でも20質量%以上或いは60質量%以下の割合で含有することがさらに好ましい。
さらに、耐熱水性の点から、(d)架橋剤を2~30質量%含有することが好ましく、中でも3質量%以上或いは10質量%以下の割合で含有することがさらに好ましい。
中間緩衝層の構成成分としてのポリビニルアルコールは公知の方法で製造することができ、通常は、酢酸ビニルの重合体をケン化することで得られる。ケン化度は80%以上、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、98%以上であることが特に好ましい。
また、ポリビニルアルコールとしては、40%以下の割合でエチレンを共重合したタイプも使用することができ、カルボキシル変性したタイプも使用することができる。
ケン化度及び平均重合度は、JIS K6726(ポリビニルアルコール試験方法)に従い、測定することができる。
ポリビニルアルコール水性液は、例えば、ポリビニルアルコール樹脂を常温水中で攪拌しながら供給して昇温し、80~95℃で30~60分攪拌することで調製することができる。
珪素化合物としては、珪素の酸化物が好ましく、例えば二酸化珪素粒子、SiOxで表される珪素酸化物粒子、シリカゾル等が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、SiOxのXは1.0よりも大きく、2.0以下であることが好ましい。
また、その平均粒子径は、耐熱水性及び耐凝集破壊性の点から、0.5nm~2μmであることが好ましく、中でも1nm以上或いは200nm以下、その中でも100nm以下であることが特に好ましい。
上記珪素化合物粒子の平均粒子径は、例えば、窒素ガス吸着(BET)法、電子顕微鏡観察、小角X線散乱分析法、動的光散乱法などの方法により測定できる。但し、本発明では動的光散乱法により測定した値を用いる。
前者の調製方法の場合の官能基比率の算出は、例えば上記国際公開パンフレットの第15頁19行~16頁8行に記載された方法で行うことができ、後者の調製方法の場合はシラノール基100モル%と見積もることができる。
アルコキシシランを加水分解縮合し熟成させ部分架橋反応を十分進ませることにより、シリカを粒子形状とし且つ好ましくはシラノール基を含有させたものを用いることにより、塗布層の樹脂成分との相互作用や凝集力を調整することができる。
中間緩衝層の構成成分として用いられるエチレン-不飽和カルボン酸共重合体は、エチレンと、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸との共重合体であり、中でも汎用性の点からエチレンとアクリル酸またはメタクリル酸との共重合体が好ましい。このエチレン-不飽和カルボン酸共重合体は任意の他の単量体を含んでいてもよい。
不飽和カルボン酸成分の割合は10~35質量%であることが好ましく、中でも15質量%以上或いは30質量%以下であることがさらに好ましい。
なお、中和度は、下記の式により求めることができる。
(A:中和されたエチレン-不飽和カルボン酸共重合体1g中の中和されたカルボキシル基のモル数、B:中和する前のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体1g中のカルボキシル基のモル数)
水性分散液の場合は、簡便的に、上記Aを(溶媒中の金属イオン数)×(その金属イオンの価数)とし、Bを中和する前のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の数として、算出することができる。
上記エチレン-不飽和カルボン酸共重合体と上記分散媒から水性分散液を製造するには、例えば、撹拌可能な容器に、所定量の水と上記両原料を供給し、90~150℃の温度で10分ないし2時間程度攪拌することによって得ることができる。このようにして得られた水性分散液は、安定性に優れており、長期に保存しても粒径や粘度が大幅に変化することがない。
上記エチレン-不飽和カルボン酸共重合体は、1種で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
架橋剤を中間緩衝層に配合することにより、中間緩衝層の塗膜強度や本基材フィルムなどとの密着性を向上することができる。
上記ポリビニルアルコールやエチレン-不飽和カルボン酸共重合体の反応性官能基としては、カルボキシル基や塩型カルボン酸基を始め、所望によりさらに共重合される他の成分によって、その他の活性水素をもつ様々な官能基を挙げることができる。
架橋剤における架橋性官能基としては、上記のポリビニルアルコールやエチレン-不飽和カルボン酸共重合体の反応性官能基と反応し得る基、例えばカルボジイミド基、オキサゾリン基、イソシアネート基、エポキシ基、メチロール基、アルデヒド基、酸無水物基、アジリジニル基等を挙げることができるが、混合した水性分散液の安定性の点から、カルボジイミド基、オキサゾリン基、イソシアネート基又はエポキシ基が好ましい。これらの架橋性官能基は、1分子中に1種導入されていてもよく、2種以上導入されていてもよいが、架橋性の点から、上記架橋性官能基は、1分子中に2個以上導入されていることが好ましい。
ここでオキサゾリン基含有単量体としては例えば2-ビニル-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリンなどを挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、なかでも2-イソプロペニル-2-オキサゾリンが工業的に入手しやすく、好適である。
中間緩衝層は、例えば以下に示す方法により形成することができる。
先ず、(a)ポリビニルアルコール及び(b)珪素化合物を含む水性分散液を調製する。
水蒸気バリア性、高速グラビアコーティング性、耐熱水密着性の点から、更に(c)エチレン-不飽和カルボン酸共重合体、及び(d)架橋剤を含むことが望ましい。
その後、無機物含有層面に塗布し、乾燥することにより、中間緩衝層として樹脂層を形成することができる。
中間緩衝層の厚みは、特に制限はない。0.05μm~20μmであるのが好ましく、中でも0.1μm以上或いは10μm以下、その中でも1μm以上或いは5μm以下であるのがさらに好ましい。
本保護フィルムの全体厚みを調整することで、光透過性および光反射性を確保しつつシワの発生などを抑制することができる。
かかる観点から、本保護フィルムの全体厚みは20μm以上であるのが好ましく、中でも23μm以上或いは500μm以下、その中でも23μm以上或いは250μm以下であるのが特に好ましい。
本保護フィルムは、上記のように、粒子含有層側から入射する光は透過する一方、粒子含有層とは反対側から入射する光は反射するという特殊な光学特性を備えた光学用保護フィルムであるため、バックライトユニット乃至ディスプレイ表示装置の構成部材として好適に用いることができる。
例えば、本保護フィルムを、蛍光体を含有する蛍光体シートと積層して、ディスプレイ表示装置の構成部材として用いることにより、ディスプレイ表示装置の輝度の向上を図ることができる。具体的には、例えば図3に示すように、樹脂及び蛍光体30Aを含有する蛍光体層を備えた蛍光体シート(30)の表裏一側に、本保護フィルム(「保護フィルム(10)」と称する)の本粒子含有層(3)が蛍光体シート(30)の反対側に位置するように、本保護フィルム(10)を積層してなる構成を備えた光学用フィルム積層体(「本波長変換フィルム積層体」と称する)(40)を構成することができる。
量子ドット層の好適な一例として、マトリックスとしの樹脂中に、蛍光特性が異なる二種類以上の量子ドットが分散してなる層を挙げることができる。この際、蛍光特性が異なる二種類以上の量子ドットとしては、青色光LBにより励起されて蛍光(赤色光)LRを発光する量子ドットと、青色光LBにより励起されて蛍光(緑色光)LGを発光する量子ドットとの組み合わせを一例として挙げることができる。但し、この組み合わせに限定するものではない。
本波長変換フィルム積層体を用いて、バックライトユニット乃至ディスプレイ表示装置を構成することができる。
例えば、図3及び図4に示されるように、面状光源(50)の視認側に、本波長変換フィルム積層体(40)を設けてバックライトユニット(「本バックライトユニット」と称する)(100)を構成することができる。
この際、蛍光体シート(30)の光源側に保護フィルム(10)が位置し、且つ、該保護フィルム(10)においては、本粒子含有層(3)が当該蛍光体シート(30)の反対側すなわち光源側に位置するように配置することが必要である。
また、上記面状光源は、周側に配置された光源と、該光源から出射された一次光を視認側に導光させて出射させる導光板とからなるエッジライト方式のものであってもよい。
いずれの場合も光源としては、発光ダイオードやレーザー光源等を使用することができる。
例えば本波長変換フィルム積層体を挟んで面状光源と対向配置するように再帰反射性部材を設けてもよい。該再帰反射性部材としては、公知の拡散板や拡散シート、プリズムシート、導光板などを使用することができる。
また、面状光源を挟んで本波長変換フィルム積層体と対向配置するように反射板を設けてもよい。反射板としては、公知のものを用いることができる。
より具体的には、保護フィルム保護フィルム(1)又は保護フィルム(2)の視認側にプリズムシート又は拡散シート又はこれら両方を設けることができる。例えば、保護フィルム(2)の視認側にプリズムシート及び拡散シートを順次積層すれば、光源から発した光は、本保護フィルム(1)、蛍光体シート(30)及び保護フィルム(2)を通ってプリズムシートで集光され、次に拡散シートで光を拡散することができる。
上記本バックライトユニットとディスプレイユニット、例えば液晶ユニットを組み合わせてディスプレイ表示装置(「本ディスプレイ表示装置」と称する)、例えば液晶表示装置を構成することができる。
本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
また、画像表示パネル、保護パネル等のように「パネル」と表現する場合、板体、シート及びフィルムを包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA-CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
塗布層の表面をRuO4で染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片を再度RuO4染色し、塗布層断面を透過型電子顕微鏡(Hitachi社製 H-7650、加速電圧100kV)を用いて測定した。
JIS K 7136に準拠し、村上色彩技術研究所製ヘーズメーターHM-150を使用して、ヘーズ及び全光線透過率を測定した。
実施例及び比較例のガスバリアフィルムの水蒸気バリア性は、JIS Z0222「防湿包装容器の透湿度試験方法」、JIS Z0208「防湿包装材量の透湿度試験方法(カップ法)」の諸条件に準じ、次の手法で評価した。
厚さ60μmの無軸延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(東洋紡績(株)製「P1146」)の表面に、ウレタン系接着剤〔東洋モートン(株)製AD900とCAT-RT85を、AD900:CAT-RT85=10:1.5(重量比)の割合で配合したもの〕を塗布し、次いで乾燥し、厚さ約3μmの接着剤層を形成した。
この接着剤層上に実施例及び比較例のガスバリアフィルムの無機薄膜層側が接着剤層と隣接するようにラミネートし、水蒸気バリア性評価用の試料フィルムを得た。
透湿面積10.0cm×10.0cm角の各試料フィルムを2枚用い、吸湿剤として無水塩化カルシウム約20gを入れ四辺を封じた袋を作製し、その袋を温度40℃相対湿度90%の恒温恒湿装置に入れ、48時間以上間隔で重量増加がほぼ一定になる目安として14日間まで、質量測定(0.1mg単位)し、水蒸気透過率を下記式から算出し、表のガスバリア性の項目に示した。
水蒸気透過率[g/m2/day]=(m/s)/t
m;試験期間最後2回の秤量間隔の増加質量(g)
s;透湿面積(m2)
t;試験期間最後2回の秤量間隔の時間(h)/24(h)
無機物含有層の膜厚の測定は蛍光X線を用いて行った。この方法は、原子にX線を照射すると、その原子特有の蛍光X線を放射する現象を利用した方法で、放射される蛍光X線強度を測定することにより原子の数(量)を知ることができる。測定試料について同様に蛍光X線強度を測定し、検量線からその膜厚を測定した。
エポキシ樹脂包埋超薄切片法で試料を調整し、フィルムの断面を日本電子(株)社製の断面TEM装置(JEM-1200EXII)により加速電圧120KVの条件で測定した。
なお、10nm以下のCVD無機層の厚みについては、断面TEM法による測定においても正確な値を得ることは難しいため、同様の成膜条件にて成膜した20nm以上の比較的厚いCVD無機層を、断面TEM法により測定して単位走行速度当たりの成膜レートを算出し、実施例記載の走行速度で成膜した場合の厚みを算出した。
サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製のXPS分析装置K-Alphaを使用し、XPS(X線光電子分光法)により結合エネルギーを測定し、Si2P、C1S、N1S、O1S等に対応するピークの面積から換算することによって元素組成(at.%)を算出した。なお、CVD無機層の炭素含有量は、XPSチャートのCVD無機層の部分の値を読み取ることで評価した。
ガスバリアフィルムのアンチニュートンリング効果の有無を下記評価方法で確認した。
(評価方法)
ガスバリアフィルムを30cm×30cmに切り出し、導光板(ブライト株式会社製BR-U10)上に静置し、LED光源からの光を該導光板に入射し、10分間経過したのちのフィルムの状態を目視確認することでニュートンリングの有無を確認した。
(判定基準)
○(good):アンチニュートンリング効果あり。
×(poor):アンチニュートンリング効果なし。
市販のタブレット端末(Amazon社製、Kindle Fire HDX7”)を分解し、バックライトユニットからQDEF(3M社製量子ドットフィルム)を取り出し、QDEFに代えて矩形に切り出した、本発明の実施例および比較例の量子ドット含有樹脂シートに保護フィルムを貼りあわせた積層体構成の部材を組み込んで、評価用液晶表示装置を作製した。その後、導光板の面に対して、垂直方向760mmの位置に配置した輝度計(コニカミノルタ社製:CA-2000)にて測定し、比較例の輝度を相対値100としたとき、下記判定基準により、判定を行った。
(判定基準)
○(good):相対値が100を超える。
×(poor):相対値が100以下。
実施例および比較例で得られた、各保護フィルムについて、下記判定基準により、判定を行った。
(判定基準)
○(good):ガスバリア性、アンチニュートンリング効果、輝度の各項目について、すべてが○である。
△(little good):ガスバリア性、アンチニュートンリング効果、輝度の各項目について、少なくとも一つが△であり、残りが〇である。
×(poor):ガスバリア性、アンチニュートンリング効果、輝度の各項目について、少なくとも一つが×。
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04部を添加した後、三酸化アンチモン0.04部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63dl/gに相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステルAの固有粘度は0.63dl/gであった。
ポリエステルAの製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04部を添加後、エチレングリコールに分散させた平均粒子径1.6μmのシリカ粒子を0.3部、三酸化アンチモン0.04部を加えて、極限粘度0.65dl/gに相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステルAの製造方法と同様の方法を用いてポリエステルBを得た。得られたポリエステルBは、固有粘度0.65dl/gであった。
ポリエステルAをあらかじめ160℃で予備結晶化させた後、温度220℃の窒素雰囲気下で固相重合し、固有粘度0.85dl/gのポリエステルCを得た。
ポリエステルA/B=90/10(質量%)の配合比でA層、ポリエステルA=100(質量%)の配合比でB層原料とし、2台の二軸押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、A層を最外層(外層)、B層を中間層として、2種3層の構成で20℃に冷却したキャスティングドラム上に共押出し、冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、90℃にて縦方向に3.4倍延伸した後、テンター内で予熱工程を経て125℃で4.2倍の横延伸を施した後、235℃で5秒間の熱処理を行い、その後160℃で幅方向に2.0%の弛緩を加え、層構成がA層/B層/A層/=2μm/19μm/2μm、厚み23μmのポリエステルフィルムF1を得た。
ポリエステルC/B=90/10(質量%)の配合比でA層、ポリエステルA=100(質量%)の配合比でB層原料とする以外はポリエステルフィルムF1と同様にして製造し、層構成がA層/B層/A層=2μm/19μm/2μm、厚み23μmのポリエステルフィルムF2を得た。
ポリエステルフィルムF1において、縦延伸後、テンターにフィルムを導く前に、下記アンカーコート組成物をオキサゾリン化合物:樹脂A:樹脂B=60質量%:20質量%:20質量%の配合比率の条件下、塗布量(乾燥後)が0.1g/m2になるように塗布する以外はポリエステルフィルムF1と同様に製造し、層構成がA層/B層/A層/アンカーコート層からなるポリエステルフィルムF3を得た。
オキサゾリン基及びポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリルポリマー エポクロス
(オキサゾリン基量=4.5mmol/g、株式会社日本触媒製)
・樹脂A(水性アクリル樹脂):アクリル酸エチル40重量部、メタクリル酸メチル30重量部、メタクリル酸20重量部、グリシジルメタクリレート10重量部の混合物をエチルアルコール中で溶液重合し、重合後水を加えつつ加熱しエチルアルコールを除去した。アンモニア水でpH7.5に調節し、水性アクリル系樹脂水性塗料を得た。
・樹脂B(水性ウレタン樹脂):まず、テレフタル酸664質量部、イソフタル酸631質量部、1,4-ブタンジオール472質量部、ネオペンチルグリコール447質量部からなるポリエステルポリオールを得た。次いで、得られたポリエステルポリオールに、アジピン酸321質量部、ジメチロールプロピオン酸268質量部を加え、ペンダントカルボキシル基含有ポリエステルポリオールAを得た。更に、該ポリエステルポリオールA1880質量部にヘキサメチレンジイソシアネート160質量部を加えて水性ポリウレタン系樹脂水性塗料を得た。
ポリエステルフィルムF1において、縦延伸後、テンターにフィルムを導く前に、下記粒子含有層組成物を塗布量(乾燥後)が0.1g/m2になるように塗布する以外は、ポリエステルフィルムF1と同様に製造し、層構成が粒子含有層/A層/B層/A層からなるポリエステルフィルムF4を得た。
・樹脂B(水性ウレタン樹脂): 60質量%
ポリエステルフィルムF3のアンカーコート層で使用のものと同様。
・オキサゾリン化合物: 10質量%
オキサゾリン基及びポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリルポリマー
エポクロス(オキサゾリン基量=4.5mmol/g、株式会社日本触媒製)
・メラミン化合物:ヘキサメトキシメチロールメラミン 10質量%
・粒子:平均粒径0.20μmのシリカ粒子 20質量%
ポリエステルフィルムF1上に、下記のように調製したアンカーコート層組成物を塗布量(乾燥後)が0.025g/m2になるように塗布、乾燥し、アンカーコート層を形成した。
イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業(株)製「コロネートL」)と飽和ポリエステル((株)東洋紡績製「バイロン300」数平均分子量23,000)とを1:1質量比で配合し、アンカーコート剤を調製した。
次いで、真空蒸着装置を使用して、SiO(純度99.9%以上)を加熱方式で蒸発させ、酸素を導入し、酸素分圧を3.5×10-3Paとし、5×10-3Paの真空下にてアンカーコート層上に厚さ40nmのSiOxのPVD無機物含有層を形成した。
さらに、無機物含有層表面に、下記のように調製した中間緩衝層組成物をグラビアコート方式で塗布量(湿潤状態で2.9g/m2)、90℃の熱風で5秒間乾燥し、厚さ(乾燥後)0.4g/m2の中間緩衝層を有するガスバリアフィルムを得た。
下記のようにして調製した、(a)、(b)、(c)及び(d)を配合比率が10:30:30:30(質量比)になるように混合し、水性分散液からなる中間緩衝層組成物を調製した。
(a)ポリビニルアルコール(PVA、日本合成化学工業(株)製「ゴーセノールNM-14」、ケン化度99%モル以上、重合度1400)をイオン交換水に攪拌しながら入れ、95℃で60分間溶解し、固形分濃度10%のPVA水性液(a)を調製した。
(b)エチレンメタクリル酸共重合体(EMAA)(メタクリル酸20重量%、MFR:300g/10分)、アンモニア及びイオン交換水を95℃で2時間攪拌混合し、中和度60%、固形分20%の水性液(b)を調製した。
(c)特開平6-16414号公報の記載に準じ、ナトリウム水ガラスJIS3号を硝酸ナトリウム水溶液に溶解し、珪酸ナトリウム水溶液を作製した。その後、水素型カチオン交換樹脂カラム、水酸基型アニオン交換樹脂カラム、再度水素型カチオン交換樹脂カラムと順に通した後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、珪酸水溶液を得た。次いで該珪酸水溶液の20%量を減圧蒸留し蒸発水を除去すると共に、残りの珪酸水溶液を連続的に徐々に供給することにより、減圧蒸留を連続的に行い、コロイダルシリカゾルを作製した。該コロイダルシリカゾルを水素型カチオン交換樹脂カラム、水酸基型アニオン交換樹脂カラム、再度水素型カチオン交換樹脂カラムと順に通し、その直後に特級アンモニア水を添加して、pH9、平均粒子径4nm、各種金属酸化物濃度が500ppmの水性シリカゾル(c)を調製した。
(d)攪拌機、還流冷却機、窒素導入管、温度計及び滴下ロートを備えたフラスコに、脱イオン水179質量部及び重合開始剤である2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩1質量部を仕込み、ゆるやかに窒素ガスを流しながら60℃に加熱し、そこへ予め調製したアクリル酸エチル2質量部、メタクリル酸メチル2質量部及び2-イソプロペニル-2-オキサゾリン16質量部からなる単量体混合物を滴下ロートより1時間で滴下した。その後、窒素気流下、60℃で10時間反応を行い、反応後、冷却して、固形分濃度10重量%の2-オキサゾリン基含有樹脂水性液(d)を調製した。
下記のようにして調製した易接着層組成物をA1/U1/C1=30/50/20(質量%)になるように配合し、トルエン溶媒にて10質量%に調整した。その後、中間緩衝層上に塗布量(乾燥後)が30nmになるように塗布、乾燥して、易接着層を設けた。
易接着層組成物として、以下を用いた。
(A1)テトラメチロールメタンエチレンオキサイド変性テトラアクリレート(全エチレングリコール鎖=35)。全体に対する炭素-炭素二重結合部の割合が5重量%の4官能アクリレート。
(U1):イソホロンジイソシアネート:テレフタル酸:イソフタル酸:エチレングリコール:ジエチレングリコール:ジメチロールプロパン酸=12:19:18:21:25:5(mol%)から形成されるポリエステル系ウレタン樹脂。
(C1): オキサゾリン基及びポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリルポリマー エポクロス(オキサゾリン基量=4.5mmol/g、株式会社日本触媒製)
粒子:架橋アクリルビーズ(平均粒径:5μm) 30質量部
粒子:架橋アクリルビーズ(平均粒径:3μm) 10質量部
バインダー樹脂:アクリルポリオール 42質量部
硬化剤:イソシアネート 18質量部
溶剤:酢酸エチル 10質量部
量子ドット層組成物を、乾燥後の厚みが10μmになるように、前記保護フィルムの易接着層上に塗布し、これを、(量子ドット層側)ポリエステルフィルムF1/アンカーコート層/PVD無機物含有層/中間緩衝層/易接着層/接着層/ポリエステルフィルムF1/易接着層から構成されるバリアフィルムとラミネートした後、紫外線照射装置から高圧水銀ランプ160Wで積算光量が1000mJ/cm2となるよう紫外線を照射して、量子ドット層組成物を構成するアクリル系樹脂を硬化させて、粒子含有層(A)/ポリエステルフィルムF1/アンカーコート層/PVD無機物含有層/中間緩衝層/易接着層/接着層/ポリエステルフィルムF1/易接着層/量子ドット層/ポリエステルフィルムF1/アンカーコート層/PVD無機物含有層/中間緩衝層/易接着層/接着層/ポリエステルフィルムF1/易接着層の構成からなる保護フィルム積層体を得た。
量子ドット1:CdSe/ZnS(発光ピーク530nm)2重量部
量子ドット2:CdSe/ZnS(発光ピーク620nm)2重量部
ジペンタエリスリトールペンタアクリレート 63重量部
日本化薬製KARAYAD R―128H 10重量部
エチレングリコール変性ビスフェノールAアクリレート(エチレングリコール鎖=8) 20重量部
ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド 3重量部
実施例1において、粒子含有層(A)組成物に代えて下記粒子含有層(B)組成物を用いた以外は実施例1と同様に製造して、粒子含有層(B)/ポリエステルフィルムF1/アンカーコート層/PVD無機物含有層/中間緩衝層/易接着層/接着層/ポリエステルフィルムF1/易接着層の構成からなる保護フィルムを得た。
粒子:アクリルビーズ(平均粒径:6μm) 20質量部
粒子:アクリルビーズ(平均粒径:3μm) 10質量部
バインダー樹脂:アクリルポリオール 50質量部
硬化剤:イソシアネート 20質量部
溶剤:酢酸エチル 30質量部
実施例1において、粒子含有層(A)組成物に代えて下記粒子含有層(C)組成物を用いた以外は実施例1と同様に製造して、粒子含有層(C)/ポリエステルフィルムF1/アンカーコート層/PVD無機物含有層/中間緩衝層/易接着層/接着層/ポリエステルフィルムF1/易接着層の構成からなる保護フィルムを得た。
粒子:アクリルビーズ(平均粒径:6μm) 20質量部
粒子:アクリルビーズ(平均粒径:3μm) 10質量部
バインダー樹脂:アクリルポリオール 50質量部
硬化剤:イソシアネート 20質量部
溶剤:酢酸エチル 10質量部
実施例1において、ポリエステルフィルムF2に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、粒子含有層(A)/ポリエステルフィルムF2/アンカーコート層/PVD無機物含有層/中間緩衝層/易接着層/接着層/ポリエステルフィルムF2/易接着層の構成からなる保護フィルムを得た。
次に、実施例1と同様にして、粒子含有層(C)/ポリエステルフィルムF2/アンカーコート層/PVD無機物含有層/中間緩衝層/易接着層/接着層/ポリエステルフィルムF1/易接着層/量子ドット層/ポリエステルフィルムF2/アンカーコート層/PVD無機物含有層/中間緩衝層/易接着層/接着層/ポリエステルフィルムF1/易接着層の構成からなる保護フィルム積層体を得た。
実施例1において、ポリエステルフィルムF3に変更し、ポリエステルフィルムF3のインラインコート面(アンカーコート層に相当)に無機物含有層を設けたこと以外は実施例1と同様にして製造し、粒子含有層(A)/ポリエステルフィルムF3/アンカーコート層/PVD無機物含有層/中間緩衝層/易接着層/接着層/ポリエステルフィルムF3/易接着層の構成からなる保護フィルムを得た。
次に、実施例1と同様にして、粒子含有層(C)/ポリエステルフィルムF3/アンカーコート層/PVD無機物含有層/中間緩衝層/易接着層/接着層/ポリエステルフィルムF3/易接着層/量子ドット層/ポリエステルフィルムF1/アンカーコート層/PVD無機物含有層/中間緩衝層/易接着層/接着層/ポリエステルフィルムF1/易接着層の構成からなる保護フィルム積層体を得た。
実施例1において、粒子含有層(A)組成物に代えて下記粒子含有層(D)組成物を用いた以外は実施例1と同様に製造して、粒子含有層(D)/ポリエステルフィルムF1/アンカーコート層/PVD無機物含有層/中間緩衝層/易接着層/接着層/ポリエステルフィルムF1/易接着層の構成からなる保護フィルムを得た。
粒子:平均粒径2μm シリカ粒子 5質量部
バインダー:アクリルポリオール 50質量部
硬化剤:イソシアネート 10質量部
溶剤:酢酸エチル 30質量部
上記実施例および比較例で得られた、各ガスバリアフィルムの特性を下記表1に示す。
なお、下記表において、ILCはインラインコーティング(塗布延伸法)の略号であり、OLCはオフラインコーティングの略号である。
上記実施例及びこれまで発明者が行ってきた試験結果から、基材フィルム(本実施例ではポリエステルフィルムを使用)の一面側に粒子含有層を備えた光学用保護フィルムにおいて、粒子含有層の光散乱性を従来よりも大きく散乱させることにより、光線透過率および反射率を選択的に制御できることが分かった。この際、光学用保護フィルムにおいて、粒子含有層が設けられていないフィルム面から入射した光が、粒子含有層と直接接する基材フィルム層との界面近傍において、より強く反射することにより、特殊な光学特性に制御できるものと推察される。
そして、粒子含有層とは反対側のフィルム面の反射率R2と、粒子含有層側表面の反射率R1との差が4%より大きくする一方、粒子含有層表面側から光を照射した際に測定される光線透過率T1と、粒子含有層とは反対側から光を照射した際に測定される光線透過率T2との差が4%より大きくなるように制御することにより、ニュートンリング現象の発生を抑えつつ、輝度の向上を図ることができることが分かった。特に、例えば蛍光体シートの表裏一側に、前記粒子含有層とは反対側が、当該蛍光体シート側に位置するように、光学用保護フィルムを配置することにより、蛍光体が発光する光のうち、粒子含有層に入射する光を蛍光体シート側に反射することができ、蛍光体の発光効率を高めることができ、輝度の向上を図ることができることが分かった。
一般的な粒子含有層に光が入射すると、本来であれば、そのまま直進するべきはずのところ、本粒子含有層の場合は、一部の光は、互いに接する粒子界面間を光が伝搬し、最後には一部が元々来た方向に近い角度で光散乱(反射)すると推察される。
さらに平均粒径のより小さい粒子を混ぜることにより、大きい粒子の隙間を埋めるように配置され、さらに微小な光散乱を生じていると推察される。そのため、粒径の異なる大小の粒子による光散乱の相乗効果により、反射率が予想に反して大きくなったものと推察することができる。
また、本発明では、蛍光体シートを介して、従来の構成(従来品は両面対象な構成;両面ともに粒子含有層が設けられたフィルムを用いる)とは異なる、両面非対称構成(光源に近い側のみに粒子含有層を設けたフィルムを用いる)を採用することによって、顕著な輝度向上効果を奏することがわかったことも、特筆すべき点である。
Claims (14)
- 基材フィルム(1)の表裏一面側に粒子含有層を備えた光学用保護フィルムであって、
粒子含有層とは反対側のフィルム面の反射率R2が、粒子含有層側表面の反射率R1より大きく、前記反射率R2と前記反射率R1との差が4%より大きく、かつ、粒子含有層表面側から光を照射した際に測定される光線透過率T1が、粒子含有層とは反対側から光を照射した際に測定される光線透過率T2よりも大きいことを特徴とする光学用保護フィルム。 - 前記光線透過率T1と前記光線透過率T2との差が4%より大きいことを特徴とする請求項1記載の光学用保護フィルム。
- フィルムヘーズが40%より大きく、前記反射率R1が14%より小さく、前記反射率R2が14%より大きいことを特徴とする、請求項1又は2に記載の光学用保護フィルム。
- 前記光線透過率T1が87%より大きく、前記光線透過率T2が85%より小さいことを特徴する、請求項1~3の何れか記載の光学用保護フィルム。
- 前記光線透過率T1と前記反射率R1の合計値が97%より大きく、且つ、前記光線透過率T2と前記反射率R2の合計値が97%より大きいことを特徴する、請求項1~4の何れかに記載の光学用保護フィルム。
- 水蒸気透過率(WvTR)が1g/m2/dayより小さい、請求項1~5の何れかに記載の光学用保護フィルム。
- 基材フィルム(1)の表裏一面側に粒子含有層を備え、基材フィルム(1)の表裏他面側に、接着層及び基材フィルム(2)を備えた請求項1~6の何れかに記載の光学用保護フィルム。
- 前記基材フィルム(1)又は前記基材フィルム(2)はそれぞれ、ポリエステルを主成分樹脂とするフィルムである、請求項1~7の何れかに記載の光学用保護フィルム。
- 前記粒子含有層は、バインダー樹脂と平均粒径3μm~10μmの粒子とを含有する層である、請求項1~8の何れか記載の光学用保護フィルム。
- 前記粒子含有層は、粒径3μm~10μmの大きさの粒子と、粒径1μm~5μmの大きさの粒子とを含有する、請求項9に記載の光学用保護フィルム。
- 前記粒子含有層において、粒径3μm~10μmの大きさの粒子が、粒子含有層に含まれる粒子の40~80質量%を占める請求項10に記載の光学用保護フィルム。
- 粒子含有層は、バインダー樹脂100質量部に対して40質量部~300質量部の粒子を含有する請求項9~11の何れかに記載の光学用保護フィルム。
- 樹脂及び蛍光体を含有する蛍光体層を備えた蛍光体シートの表裏一側に、前記粒子含有層が当該蛍光体シートとは反対側に位置するように、請求項1~12の何れかに記載の光学用保護フィルム(「保護フィルム(10)」と称する)を積層してなる構成を備えた光学用フィルム積層体。
- 前記蛍光体シートの表裏他側に、前記保護フィルム(10)とは異なる保護フィルム(「保護フィルム(20)」と称する)を備えた光学用フィルム積層体であって、
保護フィルム(20)のフィルムヘーズが30%未満である請求項13に記載の光学用フィルム積層体。
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