JP5210068B2 - レーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物、樹脂成形品の製造方法、及び樹脂成形品 - Google Patents

レーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物、樹脂成形品の製造方法、及び樹脂成形品 Download PDF

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本発明は、レーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物に関する。特に、レーザ溶着法においてレーザ光を透過させる透過樹脂部材を構成するためのレーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物に関する。また、前記レーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物を用いた樹脂成形品の製造方法、及び前記方法によって得られた樹脂成形品に関する。
ポリブチレンテレフタレート系樹脂等の熱可塑性ポリエステル樹脂は、加工が容易であり、強度等の機械特性、電気特性、及び耐熱性等が優れており、さらに、比較的安価な材料である。このため、電気・電子機器における絶縁性成形部品や輸送機器における機構成形部品等に幅広く使用されている。また、近年、複数の樹脂成形部品を接合することによって形成される複雑な形状を有する製品、例えば、エンジンコントロールユニット(ECU)やセンサー等の電子制御部品等における、電気回路等を密閉するための樹脂成形部品等にも使用されるようになってきた。
熱可塑性樹脂製の成形部品を接合する方法としては、例えば、ボルトやビス等による接合方法、接着剤を用いた接合方法、超音波溶着法、及び熱板溶着法等が行われてきたが、以下のような問題があった。例えば、ボルトやビス等による接合方法の場合には、成形部品同士の密着性が不充分であり、電気回路等を密閉するためには気密性が不充分であるという問題があった。接着剤を用いた接合方法の場合には、接着剤が硬化するまでの時間がかかり、また、周囲の汚染等の環境負荷の問題があった。また、超音波溶着法や熱板溶着法の場合には、振動や熱による製品へのダメージ、摩耗粉やバリの発生により後処理が必要になる等の問題があった。
そこで、熱可塑性樹脂製の成形部品を接合する方法として、レーザ溶着法が検討されている。また、気密性付与のために一般的に採用されているシリコーン樹脂やエポキシ樹脂による注型(ポッティング)を施さずに気密性を得る方法としても、レーザ溶着法が検討されている。レーザ溶着法とは、接触させた樹脂部材同士にレーザ光を照射することによって、樹脂部材同士を溶着させる方法である。具体的には、まず、レーザ光を透過可能な透過樹脂部材とレーザ光を吸収可能な吸収樹脂部材とを接触させ、透過樹脂部材にレーザ光を照射する。そうすることによって、透過樹脂部材を透過したレーザ光が、吸収樹脂部材に到達し、その部分が発熱し、溶融する。その際、溶融した部分に接触している透過樹脂部材にも熱が伝わり、透過樹脂部材も溶融する。その結果、透過樹脂部材と吸収樹脂部材とが溶着される。このようなレーザ溶着法は、溶着したい箇所に接触することなく溶着が可能であること、振動等の応力をかけることなく溶着が可能であること、局所加熱であり周辺部への熱影響が少ないこと、高い気密性が得られること、溶着強度が高いこと等の特長が挙げられ、上記各接合方法の問題を解決しうるものである。
しかしながら、レーザ溶着法は、透過樹脂部材として、レーザ光が充分に透過されるものを用いなければならない。レーザ光の透過率が低い材料からなる樹脂部材を用いる場合は、レーザ光を透過させるために、樹脂部材を薄肉化せざるを得ない。また、このような場合に、レーザ光の出力を高めると、レーザ光が入射する側の表面での溶融、発煙、接合界面での異常発熱による気泡等の不具合発生のおそれがあった。したがって、レーザ溶着法を適用する透過樹脂部材には、レーザ光の透過率が高い材料が求められる。また、このレーザ光の透過率は、樹脂の種類だけではなく、成形品の強度を高めるための添加剤等の影響も受けることが知られている。
一般的に、結晶性が低いほうが、レーザ透過性を確保しやすく、結晶性樹脂は、非晶性樹脂と比較してレーザ透過性が低い。ポリブチレンテレフタレート系樹脂は、上記のように樹脂部材として好適に使用されるが、結晶性が比較的高く、レーザ透過性があまり高くない。また、ポリブチレンテレフタレート系樹脂等の熱可塑性ポリエステル樹脂は、高温高湿下に長時間曝されると加水分解反応が進み、分子量の低下、さらには強度の低下を引き起こす特性を持っている。
そこで、レーザ溶着用の樹脂組成物としては、例えば、下記特許文献1〜3に記載されている樹脂組成物等が挙げられる。特許文献1には、熱可塑性ポリエステルと、α−メチルスルホンコポリマーと、無機充填材又は補強材を所定含有比で含有する樹脂組成物が記載されている。特許文献2には、ポリエステル樹脂、強化充填材、エポキシ化合物を所定含有比で含有する樹脂組成物が記載されている。特許文献3には、ポリエステル樹脂、スチレン・ブタジエン共重合エラストマー及び/又はエチレン・グリシジルメタクリレート共重合体エラストマー、フィラー、エポキシ化合物を所定含有比で含有する樹脂組成物が記載されている。
特表2007−517966号公報 特開2007−186584号公報 特開2006−249260号公報
特許文献1に記載の樹脂組成物によれば、溶融流量の増加、成形収縮の低下、良好な型取出し性、高温剛性及び耐クリープ性が向上することが開示されている。また、特許文献2に記載の樹脂組成物によれば、熱安定性が良好でレーザ溶着特性に優れたものが得られることが開示されている。また、特許文献3に記載の樹脂組成物によれば、レーザ溶着によって充分な溶着強度を有し、且つ耐加水分解性に優れたものが得られることが開示されている。しかしながら、特許文献1〜3に記載の樹脂組成物では、レーザ透過性、低反り性、及び耐加水分解性等のすべてが充分に優れたものではなかった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、レーザ透過性、低反り性、及び耐加水分解性の優れたレーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、前記レーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物を用いた樹脂成形品の製造方法、及び前記方法によって得られた樹脂成形品を提供することを目的とする。
本発明に係るレーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)を35〜85質量%と、1分子中に2個以上のエポキシ基を含有するエポキシ樹脂(B)を0.5〜7質量%と、L値が90以上の無機系充填材(C)を0.5〜5質量%と、平均繊維長が100μm以下のガラス短繊維(D)を2〜10質量%とを含有し、前記ポリエステル樹脂(A)が、ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A1)とポリエチレンテレフタレート系樹脂(A2)とを質量比(A1/A2)51/49〜90/10で含有することを特徴とするものである。
このような構成によれば、レーザ透過性、低反り性、及び耐加水分解性の優れたレーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物が得られる。このことは、以下のことによると考えられる。まず、ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A1)にポリエチレンテレフタレート系樹脂(A2)を併用することによって、結晶性が低下し、レーザ透過性が向上する。そして、レーザ光を照射しても、発熱等が抑制され、発熱等による反り等の変形の発生を抑制できる。また、1分子中に2個以上のエポキシ基を含有するエポキシ樹脂(B)を含有することによって、高温高湿下で保管しても、前記ポリエステル樹脂(A)が加水分解することを抑制できる。また、L値が90以上の無機系充填材(C)は、レーザ光の透過を阻害せずに、樹脂成形品の強度を高めることができる。さらに、平均繊維長が100μm以下のガラス短繊維(D)を含有することによって、ガラス長繊維等を含有することによって発生しうる配向性の高さを低減することができ、反り等の変形の発生を抑制できる。さらに、ガラス短繊維(D)を含有することによって、得られる樹脂部材の表面が平滑化される。よって、レーザ溶着の相手側の樹脂部材との接触させたときの密着性が高まり、レーザ溶着によって溶着されやすくなる。
また、平均繊維長が1mm以上のガラス長繊維(E)を10〜50質量%を含有することが好ましい。このような構成によれば、レーザ光の透過を阻害せずに、樹脂成形品の強度を高めることができる。また、ガラス短繊維(D)と併用することによって、ガラス長繊維(E)を含有することによって発生しうる配向性の高さを低減することができ、反り等の変形の発生を抑制できる。
また、前記エポキシ樹脂(B)が、エポキシ当量が150〜250g/eqのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂であることが好ましい。このような構成によれば、エポキシ樹脂(B)が、前記ポリエステル樹脂(A)と反応しすぎることなく、耐加水分解性を充分に向上させることができる。
また、本発明に係る樹脂成形品の製造方法は、前記レーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物からなるレーザ光を透過可能な第1樹脂部材と、前記第1樹脂部材とは異なる熱可塑性樹脂組成物からなるレーザ光を吸収可能な第2樹脂部材とを接触させる工程と、前記第1樹脂部材の表面から前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材との接触面に向けて波長880〜1200nmのレーザ光を照射することによって、前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材とを溶着させる工程とを備えることを特徴とするものである。
このような構成によれば、前記第1樹脂部材に照射したレーザ光は、ほとんど吸収されることなく、前記第2樹脂部材の第1樹脂部材が接触している面に到達する。そして、第2樹脂部材の、レーザ光が到達した部分は、レーザ光が吸収され、発熱し、溶融する。そして、その部分に接している第1樹脂部材にも、熱が伝わり、その部分が溶融する。そうすることによって、第1樹脂部材と第2樹脂部材とが溶着される。
また、前記第2樹脂部材が、前記レーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物とカーボンとを含有してなる部材であることが好ましい。このような構成によれば、溶着された第1樹脂部材と第2樹脂部材とが、なじみやすく、より強固に固着される。すなわち、溶着強度がより高まる。
また、本発明に係る樹脂成形品は、前記製造方法によって得られることを特徴とするものである。このような構成によれば、複雑な形状の樹脂成形品が得られる。
本発明によれば、レーザ透過性、低反り性、及び耐加水分解性の優れたレーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物が得られる。また、前記レーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物を用いた樹脂成形品の製造方法、及び前記方法によって得られた樹脂成形品が提供される。
以下に本発明を具体的に説明する。
本発明に係るレーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)を35〜85質量%と、1分子中に2個以上のエポキシ基を含有するエポキシ樹脂(B)を0.5〜7質量%と、L値が90以上の無機系充填材(C)を0.5〜5質量%と、平均繊維長が100μm以下のガラス短繊維(D)を2〜10質量%とを含有し、前記ポリエステル樹脂(A)が、ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A1)とポリエチレンテレフタレート系樹脂(A2)とを質量比(A1/A2)51/49〜90/10で含有することを特徴とするものである。
前記ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A1)としては、テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体と、1,4−ブタンジオール又はそのエステル形成性誘導体とを主成分とする反応性混合物を重縮合反応等の重合方法によって得られる重合体からなる樹脂を用いることができる。また、ポリブチレンテレフタレート系樹脂が有する特性を損なわない範囲であれば、上記以外の他の共重合成分を用いてもよい。この他の共重合成分としては、例えば、酸成分として、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、シュウ酸等が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
前記ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A1)の具体例としては、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタネート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレン(テレフタレート/ナフタレート)、ポリ(ブチレン/エチレン)テレフタレート等が挙げられる。これらの重合体は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、ここで「/」は、共重合を意味する。
前記ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A1)は、その平均分子量が大きくなると樹脂成形品の機械的強度を向上することができるが、溶融粘度が高くなる傾向がある。このため、良好な成形性を維持すると共に樹脂成形品に所望の機械的強度が付与されるように、適宜の平均分子量のものを用いることが好ましい。
また、前記ポリエステル樹脂(A)には、前記ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A1)以外のポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(A2)を含有する。一般的に、ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A1)は、成形性が良いが、結晶性が高く、レーザ透過性があまり高くない。そこで、ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A1)にポリエチレンテレフタレート系樹脂(A2)を含有させることによって、樹脂組成物の結晶性を低下させ、レーザ透過性を高めることができる。
前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂(A2)は、例えば、テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコール又はそのエステル形成性誘導体とを主成分とする反応性混合物を重縮合反応等の重合方法によって得られる重合体からなる樹脂が挙げられる。また、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(A2)が有する特性を損なわない範囲であれば、上記以外の他の共重合成分を用いてもよい。この他の共重合成分としては、例えば、前記ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A1)における他の共重合成分と同様のものが挙げられる。
また、前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂(A2)に対する前記ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A1)の質量比(A1/A2)が、51/49〜90/10であり、55/45〜80/20であることが好ましい。この比率が小さすぎると、前記ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A1)の含有量が少なくなりすぎて、ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A1)のもつ成形性の良さが損なわれる傾向がある。また、この比率が大きすぎると、前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂(A2)の含有量が少なくなりすぎて、前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂(A2)を含有したことによる効果が充分に発揮されず、充分なレーザ透過性が確保できない傾向がある。
また、前記ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A1)及び前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂(A2)の各含有量は、上記関係を満たし、レーザ溶着が実行可能である程度であれば特に限定されない。具体的には、例えば、前記ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A1)の含有量は、組成物全量に対して、25〜70質量%程度であることが好ましく、前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂(A2)の含有量は、組成物全量に対して、5〜35質量%程度であることが好ましい。
また、ポリエステル樹脂(A)としては、本発明の効果を阻害しない範囲で、前記ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A1)及び前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂(A2)以外の、例えば、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂を含んでいてもよい。
前記エポキシ樹脂(B)は、1分子中に2個以上のエポキシ基を含有するものであり、このエポキシ基が、前記ポリエステル樹脂(A)のエステル基と反応して、耐加水分解性を向上させるものである。前記エポキシ樹脂(B)としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を含有するものであればよい。具体的には、例えば、1分子中に2個以上のエポキシ基を含有する、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル類、グリシジルエステル類、グリシジルアミン類、複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。ノボラック型エポキシ樹脂の具体例としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。脂環式エポキシ樹脂の具体例としては、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレ−ト、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1−エポキシエチル−3,4−エポキシシクロヘキサン等が挙げられる。グリシジルエステル類の具体例としては、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等が挙げられる。グリシジルアミン類の具体例としては、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルP−アミノフェノール、N,N−ジグリシジルアニリン等が挙げられる。複素環式エポキシ樹脂の具体例としては、1,3−ジグリシジル−5,5−ジメチルヒダントイン、トリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。上記各エポキシ樹脂は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、前記エポキシ樹脂(B)としては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂であることが好ましく、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂であることがより好ましい。
また、前記エポキシ樹脂(B)のエポキシ当量は、150〜250g/eqであることが好ましい。前記エポキシ当量が小さすぎると、樹脂組成物の各成分を混練する際、前記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基が、前記ポリエステル樹脂(A)のエステル結合と反応しすぎて、流動性を低下させ、また、場合によっては、発泡し、成形材料として使用できなくなるおそれがあった。また、前記エポキシ当量が大きすぎると、前記ポリエステル樹脂(A)のエステル結合が加水分解することを抑制する効果が低くなる傾向がある。また、前記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基数としては、一分子中に2個以上であれば特に制限はなく用いることが好ましい。なお、前記エポキシ基数はエポキシ樹脂が分子量分布を有するため、1分子あたりのエポキシ基の平均を意味する。
また、前記エポキシ樹脂(B)の含有量としては、組成物全量に対して、0.5〜7質量%である。含有量が少なすぎると、前記ポリエステル樹脂のエステル結合が加水分解することを抑制する効果が低くなる傾向がある。また、多すぎると、前記ポリエステル樹脂のエステル結合と反応しすぎて、流動性を低下させ、また、場合によっては、発泡し、成形材料として使用できなくなるおそれがある。さらに、レーザ溶着に用いた際に、溶融しにくくなる傾向がある。
また、本発明に係るレーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物の樹脂成分としては、本発明の効果を阻害しない範囲で、前記ポリエステル樹脂(A)、及び前記エポキシ樹脂(B)以外のものを含有していてもよい。具体的には、例えば、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等を挙げることができる。これらは、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明に係るレーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物は、添加剤の存在がこの組成物から作製された樹脂部材のレーザ光透過率がレーザ溶着が実行不可能である程度まで低減しない限り、樹脂成形品の強度を高めるための充填剤等の添加剤を含有させることができる。本発明に係るレーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物に含有する添加剤としては、具体的には、L値が90以上の無機系充填材(C)、平均繊維長が100μm以下のガラス短繊維(D)、及び平均繊維長が1mm以上のガラス長繊維(E)等が挙げられる。
前記無機系充填材(C)としては、L値が90以上であれば、特に限定なく使用できる。具体的には、例えば、L値が90以上である、タルク(滑石)、マイカ(雲母)、ウォラストナイト(珪灰石)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、アルミナ、クレー、珪砂、ケイソウ土及び粉砕ガラス等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、L値が低いと、所望の強度等の性能を発揮できる程度の量を含有させると、充分に高いレーザ透過性を確保できなくなる。なお、L値は、色彩色度計により測定したLab表色系のL値であり、明度を示す。L値が大きいほど、明るく、高い白色度を示す。また、前記無機系充填材(C)の含有量としては、組成物全量に対して、0.5〜5質量%である。そうすることによって、所望の強度等の性能を示すことができる。すなわち、含有量が少なすぎると、無機系充填材(C)を含有した効果を発揮できない傾向がある。また、多すぎると、高いレーザ透過性を確保できなくなる傾向がある。
また、本発明に係るレーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物は、平均繊維長が100μm以下のガラス短繊維(D)を含有する。また、前記ガラス短繊維(D)と平均繊維長が1mm以上のガラス長繊維(E)とを併用することが好ましい。平均繊維長が1mm以上のガラス長繊維(E)を含有することによって、樹脂部材の強度を高めることができ、さらに、レーザ透過性をほとんど低下させない。しかしながら、ガラス長繊維(E)を含有した組成物を、射出成形等によって、樹脂部材を形成させると、射出方向にガラス長繊維が配向したものとなり、反り等の変形が発生するおそれがある。そこで、平均繊維長が100μm以下のガラス短繊維(D)を含有することによって、樹脂成形品の強度を高めたまま、ガラス長繊維(E)を含有することによって発生しうる配向性の高さを低減することができ、反り等の変形の発生を抑制できる。さらに、ガラス短繊維(D)を含有することによって、得られる樹脂部材の表面が平滑化される。よって、レーザ溶着の相手側の樹脂部材との接触させたときの密着性が高まり、レーザ溶着によって溶着されやすくなる。
また、ガラス長繊維(E)としては、平均繊維長が1mm以上のガラス繊維(チョップドストランド)を用いることができる。具体的には、例えば、平均繊維長が1.5〜5mmの一般的なチョップドストランドを用いることができる。また、ガラス短繊維(D)の平均繊維長が100μmより長いと、配向性を充分に緩和することができなかったり、樹脂部材の表面を充分に平滑化できなかったりする。なお、本明細書にいう平均繊維長とは、繊維の繊維長の度数分布を測定し、その長さ加重平均から求められる値、即ち長さ加重平均繊維長をいう。また、前記ガラス短繊維(D)の含有量としては、組成物全量に対して、2〜10質量%である。前記含有量が少なすぎると、樹脂部材の配向性の緩和や表面の平滑化が不充分になる傾向がある。また、前記含有量が少なすぎると、樹脂成形品の強度が低下する傾向がある。前記ガラス長繊維(E)の含有量としては、組成物全量に対して、10〜50質量%であることが好ましく、15〜35質量%であることがより好ましい。前記含有量が少なすぎると、樹脂部材の強度が不充分になる傾向があり、多すぎると、レーザ溶着を施しても、溶融される樹脂成分が少なくなりすぎ、充分な溶着強度が得られない傾向がある。
本発明に係るレーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物に含有される添加剤としては、上記のものの他、例えば、離型剤、増粘剤、消泡剤、熱安定剤、酸化防止剤、潤滑剤、紫外線安定剤等が挙げられる。前記離型剤は、成形材料に一般的に用いられているものを使用することができる。具体的には、例えば、ステアリン酸、モンタン酸及びミスチリン酸等の脂肪酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪族酸金属塩、リン酸エステル等の界面活性剤、カルナバワックスやポリエチレンワックス等が挙げられる。前記増粘剤は、成形材料に一般的に用いられているに一般的に用いられているものを使用することができる。具体的には、例えば、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム等の2価金属の酸化物や水酸化物、アクリルポリマー等が挙げられる。前記消泡剤としては、公知の消泡剤を用いることができる。具体的には、例えば、オイル型、溶液型、粉末型、エマルジョン型等のシリコーン系消泡剤等が挙げられる。
本発明に係るレーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物は、例えば、まず、前記ガラス短繊維(D)及び前記ガラス長繊維(E)以外の各成分、すなわち、前記ポリエステル樹脂(A)、前記エポキシ樹脂(B)、前記無機系充填材(C)及び前記その他の添加剤を所定の含有量となるように、タンブラーミキサーやヘンシェルミキサー等のミキサー及びブレンダー等で均一に混合する。その際の混合時間としては、均一に混合できればよく、特に限定されない。その後、得られた混合物を、二軸押し出し混練機、ニーダー、ロール、ディスパー、アジホモミキサー、プラネタリーミキサー及びらいかい機等で加熱しながら混練し、混合物が溶融したところで、前記ガラス短繊維(D)及び前記ガラス長繊維(E)を所定の含有量となるように添加し、さらに混練する。その際の混練温度としては、組成物の組成等によっても異なるが、上記各樹脂が溶融する温度、例えば、250〜270℃程度に加熱することが好ましい。また、混練時間としては、均一に混練できればよく、特に限定されない。そして、得られた混練物を水冷却及び風冷等によって固化し、ペレタイザー等の造粒機等で切断して、約2〜4mm程度の大きさのペレット状にする。そうすることによって、レーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物が得られる。
そして、このようにして得られたレーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物を、例えば、射出成形法等によって、レーザ溶着に用いることができる所望の形状の樹脂部材に成形される。射出速度としては、組成物の組成や成形する樹脂部材の形状等によっても異なり、良好な成形性を維持することができる射出速度に設定することが好ましい。また、ここでの、射出成形法としては、成形性に優れる高速射出成形法又は射出圧縮成形法等を用いることが好ましい。また、樹脂部材の配向を抑制するためには、射出圧縮成形法を用いることがより好ましい。射出圧縮成形法は、射出成形の金型を目的とする樹脂部材の厚み寸法よりも少し開いた状態で、溶融樹脂を射出することにより薄肉部分に樹脂組成物を充填した後、型締めすることにより目的とする樹脂部材を得る公知の射出成形法である。射出圧縮成形法を用いた場合には、予め金型を樹脂部材の実際の厚みよりも開いたままで射出するために、樹脂部材が、例えば、0.5mm以下のような極めて薄い厚みの部分があっても良好な成形性を確保できる。
そして、このようにして得られた樹脂部材は、レーザ光を透過可能な樹脂部材(透過樹脂部材)であり、この透過樹脂部材を用いてレーザ溶着を行うことによって、より複雑な形状の樹脂成形品を得ることができる。例えば、エンジンコントロールユニット(ECU)やセンサー等の電子制御部品等における、電気回路等を密閉するための樹脂成形部品等を得ることができる。すなわち、上記レーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物は、レーザ溶着法においてレーザ光を透過させる透過樹脂部材を構成するためのレーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物である。また、上記レーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物にカーボンを含有させることによって、レーザ溶着法においてレーザ光を吸収させる吸収樹脂部材を構成するための熱可塑性樹脂組成物としても用いることができる。
具体的には、まず、上記のようにして得られた、レーザ光を透過可能な透過樹脂部材(第1樹脂部材)と、レーザ光を吸収可能な吸収樹脂部材(第2樹脂部材)とを接触させる。その際、ある程度、両樹脂部材間に圧力を加えて密着性を高めることが、溶着強度を高める点から好ましい。そして、前記透過樹脂部材の表面から、前記透過樹脂部材と前記吸収樹脂部材との接触面に向けて波長880〜1200nmのレーザ光を照射する。なお、前記透過樹脂部材の表面とは、前記吸収樹脂部材と接触していない側の面である。そうすることによって、透過樹脂部材を透過したレーザ光が、吸収樹脂部材に到達し、その部分が発熱し、溶融する。その際、溶融した部分に接触している透過樹脂部材にも熱が伝わり、透過樹脂部材も溶融する。その結果、透過樹脂部材と吸収樹脂部材とが溶着される。また、この方法によれば、レーザ光が照射された部分が溶着されるので、レーザ光の照射位置を走査することによって、所望の位置のみ溶着された樹脂成形品が得られる。
前記吸収樹脂部材としては、レーザ光を吸収することができ、レーザ光が吸収されることにより、溶融される熱可塑性樹脂組成物からなる部材であれば、特に限定されない。具体的には、本発明に係るレーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物に、レーザ光を吸収可能とするためにカーボンを含有した樹脂組成物からなる部材等が挙げられる。このような部材であれば、カーボンの有無以外は同様の組成であるので、溶着された透過樹脂部材と吸収樹脂部材とが、なじみやすく、より強固に固着される。また、カーボンとしては、特に限定されないが、例えば、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、及びケッチェンブラック等のカーボンブラック等が挙げられる。また、カーボンの含有量は、特に限定されないが、例えば、レーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物に対して、0.2〜1質量%含有させることが好ましい。
また、レーザ溶着に用いるレーザ光源としては、波長880〜1200nmのレーザ光を照射するレーザ光源であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、YAGレーザ、Nd:YAGレーザ、半導体レーザ等が挙げられる。また、レーザ光の出力は、組成物の組成や樹脂部材の厚さによっても異なるが、例えば、10〜80W程度であることが好ましい。レーザ光の走査速度は、溶着強度等の点から、例えば、10〜60mm/秒程度であることが好ましい。
以下に、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に
限定されるものではない。
表1及び表2に示す配合割合(質量部)で、ガラス短繊維(D)及びガラス長繊維(E)以外の各成分、すなわち、ポリエステル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、無機系充填材(C)、及びポリエチレンワックスを、ブレンダーで30分間混合し均一化させた。その後、シリンダ温度を260℃に加熱した二軸押し出し混練機で混練する。上記各樹脂が溶融したところで、表1及び表2に示す配合割合(質量部)で、ガラス短繊維(D)及びガラス長繊維(E)を添加し、さらに混練した。その後、得られた混練物を、50℃の水中で冷却させ、ペレタイザーで2〜4mm程度のペレット状に切断して、レーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物を調製した。実施例及び比較例においては次の原材料を用いた。
・ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A1):ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂(東レ株式会社製のトレコンPBT1200)
・ポリエチレンテレフタレート系樹脂(A2):ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂(株式会社クラレ製のクラペットPETKL236R)
・エポキシ樹脂(B):エポキシ当量210g/eqのo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂
・無機系充填材(C):L値95のタルク(林化成株式会社製のミクロンホワイト♯5000S)
・無機系充填材(C):L値94のタルク(林化成株式会社製のタルカンパウダー−PK−C)
・無機系充填材(C):L値86のタルク(竹原化学工業株式会社製のTTタルク)
・ガラス短繊維(D):平均繊維長100μmのガラス繊維(旭ファイバーグラス株式会社製のミルドファイバー)
・ガラス長繊維(E):平均繊維長3mmのカットガラス(オーウェンスコーニングジャパン株式会社製のES03−TP70)
Figure 0005210068
Figure 0005210068
上記のように調製した各組成物を用いて、以下に示す方法により評価を行った。
まず、評価に用いる樹脂部材(テストピース)を作製した。
上記のようにして得られたペレット状の樹脂組成物を恒温槽で140℃4時間、乾燥させた。その結果、ペレット状の樹脂組成物の含有水分率が0.02%以下となった。その後、乾燥させたペレット状の樹脂組成物を、100tの射出成形機を用いて、テストピースを作製した。その際の射出条件としては、樹脂組成物を射出成形機に投入する材料投入口の温度を200℃、シリンダ温度を260℃付近に設定して行った。また、テストピースとして、平行部の長さが173mm、厚さが4mm、幅10mmのダンベル試験片を作製するときは、金型温度を80℃に設定して行い、60mm×60mm×1mm厚の試験片を作製するときは、金型温度を40℃に設定して行った。
(レーザ透過率)
前記60mm×60mm×1mm厚の試験片に対するレーザ光の透過率を、株式会社島津製作所製の分光光度計を用いて測定した。
(溶着強度)
透過樹脂部材としては、60mm×60mm×1mm厚の試験片を用いた。そして、吸収樹脂部材としては、透過樹脂部材の作製する際に用いた樹脂組成物に対して、カーボンブラックを0.5質量%含有させた樹脂組成物を用いたこと以外、透過樹脂部材と同様に作製した。吸収樹脂部材のサイズとしては、60mm×60mm×2mm厚とした。
そして、透過樹脂部材と吸収樹脂部材とを重ね合わせ、所定荷重を加えた。そして、透過樹脂部材の表面から透過樹脂部材と吸収樹脂部材との接触面に向けて、波長940nmのレーザ光(半導体レーザ)を照射する。その際、レーザ光の出力を20W、レーザ光の走査速度を50mm/秒、レーザ光の線径(直径)を1.6mmとした。そうすることによって、溶着長さ10mmで透過樹脂部材と吸収樹脂部材とが溶着された樹脂成形品が得られた。
そして、得られた樹脂成形品の透過樹脂部材側と吸収樹脂部材側とをそれぞれ挟み、万能材料試験機(オートグラフ)を用いて、引張り破壊荷重(溶着強度)(N)を測定した。
(表面状態)
上記溶着強度の測定時に得られた樹脂成形品の表面、特に透過樹脂部材側の表面を目視で観察し、異常がないか確認した。
(強度保持率)
まず、上記溶着強度の測定時に得られた樹脂成形品に対して、PCT(プレッシャークッカーテスト)処理を施した。なお、ここでのPCT処理とは、121℃、2kg/cm(約0.2MPa)の条件下、50時間放置する処理である。PCT処理後の樹脂成形品を、上記溶着強度の測定と同様に引張り破壊荷重を測定した。そして、強度保持率は、PCT処理前の樹脂成形品の引張り破壊荷重(上記溶着強度)に対するPCT処理後の樹脂成形品の引張り破壊荷重の比率(%)として算出した。
(反り変形量)
60mm×60mm×1mm厚の試験片を作製したときと同様の射出成形機を用いて、サイドゲートで、100mm×100mm×2mm厚の試験片を作製した。その試験片を冷却後、平坦なところに置き、4つの角部の変形量を測定し、その平均値を反り変形量とした。
結果を上記表1及び表2に示す。
上記表1及び表2からわかるように、PBT樹脂(A1)とPET樹脂(A2)とを、A1/A2が51/49〜90/10で含有し、エポキシ樹脂(B)と、L値が90以上のタルク(C)と、平均繊維長が100μm以下のガラス短繊維(D)とを含有するレーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物(実施例1〜7)を用いると、レーザ光透過率が高く、溶着強度が高く、表面状態も良好であった。さらに、PCT処理後であっても溶着強度が保持されていた。また、反り変形量が小さかった。
これに対して、PET樹脂(A2)、エポキシ樹脂(B)、及びガラス短繊維(D)を含有せず、含有させたタルク(C)のL値が90未満である場合(比較例1)、レーザ透過性が低く、溶着強度も低く、表面状態も良くなかった。さらに、PCT処理後には、溶着強度が大きく低下した。また、反り変形量が大きかった。
また、エポキシ樹脂(B)を含有せず、含有させたタルク(C)のL値が90未満である場合(比較例2)、溶着強度はある程度高いものの、レーザ透過性が低く、PCT処理後には、溶着強度が大きく低下した。
PBT樹脂(A1)とPET樹脂(A2)との質量比(A1/A2)が51/49〜90/10の範囲外であって、PET樹脂(A2)が少ない場合(比較例3)、レーザ透過性が低く、溶着強度も低かった。さらに、反り変形量が大きかった。
エポキシ樹脂(B)を含有しない場合(比較例4)、レーザ透過性及び溶着強度が高いものの、PCT処理後には、溶着強度が大きく低下した。
以上のことから、PBT樹脂(A1)とPET樹脂(A2)との質量比(A1/A2)が51/49〜90/10の範囲外であったり、ガラス短繊維(D)を含有しなかったり、タルク(C)のL値が90未満であると、レーザ透過性が大きく低下し、レーザ溶着性が確保できないことがわかった。また、エポキシ樹脂(B)を含有しないと、ポリエステル樹脂(A)の加水分解を抑制することができず、PCT処理をすると溶着強度が大きく低下することがわかった。

Claims (5)

  1. ポリエステル樹脂(A)を35〜85質量%と、
    1分子中に2個以上のエポキシ基を含有するエポキシ樹脂(B)を0.5〜7質量%と、
    L値が90以上の無機系充填材(C)を0.5〜5質量%と、
    平均繊維長が100μm以下のガラス短繊維(D)を2〜10質量%と
    平均繊維長が1.5〜5mmのガラス長繊維(E)を15〜35質量%とを含有し、
    前記ポリエステル樹脂(A)が、ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A1)とポリエチレンテレフタレート系樹脂(A2)とを質量比(A1/A2)51/49〜90/10で含有することを特徴とするレーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物。
  2. 前記エポキシ樹脂(B)が、エポキシ当量150〜250g/eqのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂である請求項1に記載のレーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のレーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物からなるレーザ光を透過可能な第1樹脂部材と、前記第1樹脂部材とは異なる熱可塑性樹脂組成物からなるレーザ光を吸収可能な第2樹脂部材とを接触させる工程と、
    前記第1樹脂部材の表面から前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材との接触面に向けて波長880〜1200nmのレーザ光を照射することによって、前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材とを溶着させる工程とを備えることを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
  4. 前記第2樹脂部材が、前記レーザ溶着用熱可塑性樹脂組成物とカーボンとを含有してなる部材である請求項に記載の樹脂成形品の製造方法。
  5. 請求項又は請求項に記載の樹脂成形品の製造方法によって得られることを特徴とする樹脂成形品。
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