JP5206461B2 - 窓枠付き車両用窓ガラスの車両本体への接着・固定方法および窓枠付き車両用窓ガラスと車両本体との接着・固定構造 - Google Patents
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(b)前記接着剤層の表面にプライマを塗布してプライマ層を形成させるプライマ塗布工程、
(c)前記接着剤層とプライマ層を前記接着剤層が接着力を発現する温度以上の温度に加熱する加熱工程、
(d)前記窓枠を取り付けた車両用窓ガラスを前記車両開口フランジに装着し前記プライマ層表面を前記車両開口フランジにウレタン接着剤により接着・固定する接着・固定工程。
(b)前記接着剤層の表面にプライマを塗布してプライマ層を形成させるプライマ塗布工程、
(d)前記窓枠を取り付けた車両用の窓ガラスを前記車両開口フランジに装着し前記プライマ層表面を前記車両開口フランジにウレタン接着剤により接着・固定する接着・固定工程。
まず、図1および図2を用いて本発明の熱可塑性エラストマ製窓枠付き車両用窓ガラスの車両本体への接着・固定方法の第1の実施形態について説明する。
プロピレン単位の含有量(モル%)=[プロピレン単位のモル数/全単位のモル数]×100
このプロピレン単位の含有量が50モル%以上であると、プロピレン−α−オレフィン共重合体の充分な凝集力が得られ、熱可塑性エラストマとの接着性に優れる。より接着性に優れる点でプロピレン単位の含有量は60モル%以上であることがより好ましい。
このようなプロピレン−α−オレフィン共重合体は、1種を単独でまたは2種以上を混合して変性ポリオレフィンの主鎖として用いられる。
(1)α、β−不飽和カルボン酸およびその酸無水物から選択される少なくとも1種がグラフト共重合されたポリオレフィン(以下、変性ポリオレフィン(1)とも記載する)、
(2)塩素化ポリオレフィン、
(3)α、β−不飽和カルボン酸およびその酸無水物から選択される少なくとも1種がグラフト共重合され、かつ塩素化されたポリオレフィン(以下、変性ポリオレフィン(3)とも記載する)。
また、(2)塩素化ポリオレフィンとしては、主鎖ポリオレフィンがポリプロピレンである塩素化ポリプロピレンが好ましい。
(1)変性ポリオレフィン(1)
上記変性ポリオレフィン(1)の側鎖は、α、β−不飽和カルボン酸およびその酸無水物から選択される少なくとも1種(以下、「不飽和カルボン酸等」という)から形成される。該側鎖は、不飽和カルボン酸等のみから形成されていても、他の有機基に不飽和カルボン酸等が結合して形成されていてもよい。
変性ポリオレフィン(1)における上記不飽和カルボン酸等(有機基に結合する不飽和カルボン酸等を含む)による変性量は、変性ポリオレフィン(1)の100質量部に対して、導入される不飽和カルボン酸等の質量が0.1〜10質量部であることが好ましい。この変性量が0.1質量部以上であれば充分な接着力が得られ、変性量が10質量部以下であれば変性ポリオレフィンの極性が好適であり熱可塑性エラストマとの接着力に優れる。これらのバランスがよりよい点で、不飽和カルボン酸等による変性量は1〜5質量部であることがより好ましい。さらに合成が容易である点でこの変性量は3質量部以下であることが好ましい。
溶液法としては、主鎖となるポリオレフィン、好ましくは、プロピレン−α−オレフィンをトルエン等の芳香族有機溶媒に100〜180℃で溶解させた後、不飽和カルボン酸等を添加し、さらに、後述するラジカル発生剤を一度にまたは数回に分けて添加して共重合させる方法が挙げられる。溶融法としては、主鎖となるポリオレフィン、好ましくは、プロピレン−α−オレフィンをこれらの溶融温度以上に加熱して溶融させた後、不飽和カルボン酸等および後述するラジカル発生剤を添加して共重合させる方法が挙げられる。
グラフト共重合に用いられるラジカル発生剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−ターシャルブチルパーオキサイド等が挙げられ、共重合反応温度とラジカル発生剤の分解温度を考慮して選択される。
塩素化ポリオレフィンの製造は、例えば、ガラスライニングされた圧力反応缶の中で、ポリオレフィンを(a)四塩化炭素、クロロホルム等の塩素系溶剤およびイオン交換水を含む水性混合溶媒中で加温して溶解した後、または(b)四塩化炭素、クロロホルム等の塩素系溶剤中で加温し溶解し、ラジカル発生剤を加えた後、塩素ガスを所定塩素含有量になるように吹き込み、反応終了後、脱溶剤する方法で行うことができる。
なお、塩素化ポリオレフィン中の塩素含有量の測定方法としては、電位差滴定法等が挙げられる。
また、塩素化ポリオレフィンの結晶化度は、10〜50%が好ましい。結晶化度が10%以上であれば充分な凝集力が得られ充分な接着強度が得られる。結晶化度が50%以下であれば、有機溶媒の溶解性に優れ、塗布時の良好な作業性が得られる室温での流動性にも優れ、低温での保管も可能となる。さらに、結晶化度が50%以下であれば、エポキシ基含有化合物やシランカップリング剤との均一な混合が容易になる。
変性ポリオレフィン(3)の製造方法としては、ポリオレフィンにα、β−不飽和カルボン酸およびその酸無水物から選ばれる1種以上をグラフト変性し、ついで塩素化する方法;ポリオレフィンを塩素化し、ついでα、β−不飽和カルボン酸およびその酸無水物から選ばれる1種以上をグラフト変性する方法;ポリオレフィンに対してグラフト変性と塩素化とを同時に行う方法;のいずれであってもよい。
なお、変性ポリオレフィン(3)の製造に用いるα、β−不飽和カルボン酸およびその酸無水物は、変性ポリオレフィン(1)の製造におけるα、β−不飽和カルボン酸およびその酸無水物と同様であり、好ましい態様も同様である。また、変性ポリオレフィン(3)の製造に用いる塩素化の方法については上記(2)塩素化ポリオレフィンにおける塩素化の方法と同様とすることができる。
本発明に用いる変性ポリオレフィンを含む接着剤には、前記変性ポリオレフィン以外に、プライマ層(後述)との密着力の向上や接着耐久性の向上などを目的として、シランカップリング剤、エポキシ基含有化合物、ポリイソシアネート等が含まれることが好ましい。
前記シランカップリング剤としては、エポキシ基、ビニル基、チオール基、アミノ基等の官能基を末端に有するシランカップリング剤が挙げられる。
これらポリイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)等の低分子ポリイソシアネートが挙げられる。
ポリオール化合物と上記の低分子ポリイソシアネートとの混合比は、ポリオール化合物中のヒドロキシ基に対する上記の低分子のポリイソシアネート中のイソシアネート基のモル比(NCO/OH)が1.3〜2.5であるのが好ましく、1.5〜2.0であるのがより好ましい。
また、別の前記3者の好ましい組み合わせとして、オレフィン系熱可塑性エラストマ、無水マレイン酸変性ポリプロピレンとエポキシ基含有シランカップリング剤とを含む接着剤および反応性基を含むメタクリル酸エステルの共重合体とシラン化合物とを含むプライマ、の組み合わせが挙げられる。
加熱工程における加熱温度は、変性ポリオレフィンを含む接着剤が熱溶着による接着力を発現する温度以上の温度であれば特に制限されず、これはまた用いる変性ポリオレフィンを含む接着剤の種類にもよるが、具体的には、160〜220℃、好ましくは180〜200℃を挙げることができる。また、加熱の時間として、オーブンによる加熱の場合は10〜30分間、好ましくは15〜20間を挙げることができ、熱風加熱、赤外加熱の場合は、1〜60秒間、好ましくは、10〜30秒間を挙げることができる。
このようにして前記プライマ層5の表面と車両開口フランジ7の間に前記ウレタン硬化物の層6が形成されるが、その厚さは概ね1〜10mm程度とすることができる。
熱可塑性エラストマ、変性ポリオレフィンを含む接着剤、プライマの種類や、窓枠の形状等にもよるが、(a’)工程では、射出成形機の射出口の温度を190〜240℃の範囲内で、金型の温度を30〜60℃(より好ましくは40〜50℃)の範囲内で調整することが好ましい。
以下の[1]〜[5]に示す方法で、図3に示す、車両用窓ガラスのための熱可塑性エラストマ製窓枠と車両本体との接着・固定構造のサンプルであると同時に接着試験のための試験片となるサンプルを作製した。図3において、接着・固定構造のサンプル(接着試験片)20は、車両用窓ガラスのための熱可塑性エラストマ製窓枠に相当する熱可塑性エラストマ基材21の片面端部に約10mm幅で、変性ポリオレフィンを含む接着剤層22、プライマ層23、ウレタン接着剤が硬化してなるウレタン硬化物層24の順に3層構造の接着層が積層されその接着層を介して、熱可塑性エラストマ基材21が車両本体(開口フランジ)に相当するアルミニウム板25と接着・固定された構造を有するものである。
被着体となる熱可塑性エラストマとして、サントプレーン121−65M300(アドバンスト・エラストマー・システムズ・ジャパン社製、商品名)を厚さ3mmのシート状に射出成形したものから、25×50mmの大きさに切り出したサンプルを準備した。
上記[1]で得られた熱可塑性エラストマ基材の、片側約15mm幅程度に熱可塑性樹脂用の接着剤Aをフェルトを用いて接触塗布した後、常温で前記接着剤中の溶剤を揮発させて、接着剤層を形成させた。なお、接着剤Aは、塩素化ポリプロピレンおよびアミノ基含有シランカップリング剤を含む接着剤である。なお、接着剤A中の各成分の配合割合は、塩素化ポリプロピレン:アミノ基含有シランカップリング剤=17:0.8(質量比)である。
上記[1]で得られた熱可塑性エラストマ基材上の接着剤層の表面全面に、プライマ(横浜ゴム社製、MS90(商品名))をフェルトを用いて接触塗布した後、常温で溶剤を揮発させて、プライマ層を形成させた。
上記[3]で得られた接着剤層/プライマ層付き熱可塑性エラストマ基材を、200℃に設定したオーブンに入れ、20分間加熱した。
加熱処理後の熱可塑性エラストマ基材の、プライマ層の表面全面にウレタン接着剤(横浜ゴム社製、WS202(商品名))をシーリングガンを用いて塗布し、ウレタン接着剤層の厚さが10mmとなるようなスペーサーを用いて、プライマ処理を施したアルミニウム板を接着した。つぎに、40℃90%RH雰囲気中で4日間養生することにより接着試験片(接着・固定構造のサンプル)とした。なお、アルミニウム板のプライマ処理としては、横浜ゴム社製のGC20(商品名)を塗布後、さらに、横浜ゴム社製のMS90(商品名)を塗布することで実施した。
プライマをPC3(横浜ゴム社製、商品名)とした以外は実施例1と同様の条件で接着試験片(接着・固定構造のサンプル)を作製した。
[実施例3]
変性ポリオレフィンを含む接着剤を熱可塑性樹脂用の接着剤Bとした以外は実施例1と同様の条件で接着試験片(接着・固定構造のサンプル)を作製した。なお、接着剤Bは、無水マレイン酸変性ポリプロピレンおよびエポキシ基含有シランカップリング剤を含む接着剤である。なお、接着剤B中の各成分の配合割合は、無水マレイン酸変性ポリプロピレン:エポキシ基含有シランカップリング剤=6:1(質量比)である。
プライマをPC3(横浜ゴム社製、商品名)とした以外は実施例3と同様の条件で接着試験片(接着・固定構造のサンプル)を作製した。
[実施例5]
接着剤を熱可塑性樹脂用の接着剤ハードレンMP−200(東洋化成工業社製、商品名)とした以外は実施例2と同様の条件で接着試験片(接着・固定構造のサンプル)を作製した。
熱可塑性エラストマ基材をマルチフレックス(マルチベース社製、商品名、特開2006−291019号公報を参照)とした以外は実施例1と同様の条件で接着試験片(接着・固定構造のサンプル)を作製した。
[実施例7]
プライマをPC3(横浜ゴム社製、商品名)とした以外は実施例6と同様の条件で接着試験片(接着・固定構造のサンプル)を作製した。
接着剤を熱可塑性樹脂用の接着剤Bとした以外は実施例7と同様の条件で接着試験片(接着・固定構造のサンプル)を作製した。
[実施例9]
接着剤を熱可塑性樹脂用の接着剤ハードレンMP−200(東洋化成工業社製、商品名)とした以外は実施例7と同様の条件で接着試験片(接着・固定構造のサンプル)を作製した。
[実施例10]
熱可塑性エラストマ基材をノフアロイ(日油社製、商品名)とした以外は実施例9と同様の条件で接着試験片(接着・固定構造のサンプル)を作製した。
上記[3]のプライマの塗布と[4]加熱処理の順番を逆にした以外は実施例1と同様の条件で接着試験片(接着・固定構造のサンプル)を作製した。
[比較例2]
プライマを塗布しないこと以外は実施例1と同様の条件で接着試験片(接着・固定構造のサンプル)を作製した。
上記各実施例および各比較例で得られた接着試験片について、JIS−K6850に準拠し、試験片の非接着部分をチャックで掴み、室温下、引張り速度50mm/分の条件でせん断引張り試験を行い、せん断強さを評価した。結果を表1に示す。
11…熱可塑性エラストマ製窓枠付き車両用窓ガラスの車両本体との接着・固定構造
20…接着・固定構造のサンプル(接着試験片)、21…熱可塑性エラストマ基材、22…変性ポリオレフィンを含む接着剤層、23…プライマ層、24…ウレタン硬化物層、25…アルミニウム板
Claims (7)
- 熱可塑性エラストマ製の窓枠を取り付けた車両用窓ガラスの前記窓枠を車両開口フランジにウレタン接着剤により接着して前記車両用窓ガラスを車両本体に接着・固定する方法であって、
下記(a)工程〜(d)工程を含む窓枠付き車両用窓ガラスの車両本体への接着・固定方法。
(a)熱可塑性エラストマ製の窓枠を周縁部に一体成形した車両用窓ガラスの前記窓枠の車両開口フランジへの接着面に変性ポリオレフィンを含む接着剤を塗布して接着剤層を形成させる接着剤塗布工程、
(b)前記接着剤層の表面にプライマを塗布してプライマ層を形成させるプライマ塗布工程、
(c)前記接着剤層とプライマ層を前記接着剤層が接着力を発現する温度以上の温度に加熱する加熱工程、
(d)前記窓枠を取り付けた車両用窓ガラスを前記車両開口フランジに装着し前記プライマ層表面を前記車両開口フランジにウレタン接着剤により接着・固定する接着・固定工程。 - 熱可塑性エラストマ製の窓枠を取り付けた車両用窓ガラスの前記窓枠を車両開口フランジにウレタン接着剤により接着して前記車両用窓ガラスを車両本体に接着・固定する方法であって、
下記(a’)工程、(b)工程、および(d)工程を含む窓枠付き車両用窓ガラスの車両本体への接着・固定方法。
(a’)成形面の所定位置に変性ポリオレフィンを含む接着剤を塗布した金型を用いて車両用窓ガラスの周縁部に熱可塑性エラストマ製の窓枠を射出成形により一体成形して、前記車両用窓ガラスの周縁部に、車両開口フランジへの接着面に変性ポリオレフィンを含む接着剤層の形成された窓枠を一体成形する窓枠成形工程、
(b)前記接着剤層の表面にプライマを塗布してプライマ層を形成させるプライマ塗布工程、
(d)前記窓枠を取り付けた車両用の窓ガラスを前記車両開口フランジに装着し前記プライマ層表面を前記車両開口フランジにウレタン接着剤により接着・固定する接着・固定工程。 - 前記熱可塑性エラストマが、オレフィン系熱可塑性エラストマまたはスチレン系熱可塑性エラストマである請求項1または2に記載の窓枠付き車両用窓ガラスの車両本体への接着・固定方法。
- 前記変性ポリオレフィンを含む接着剤が、下記変性ポリオレフィンの少なくとも1種を含む接着剤である請求項1〜3のいずれか1項に記載の窓枠付き車両用窓ガラスの車両本体への接着・固定方法。
(1)α、β−不飽和カルボン酸およびその酸無水物から選択される少なくとも1種がグラフト共重合されたポリオレフィン、
(2)塩素化ポリオレフィン、
(3)α、β−不飽和カルボン酸およびその酸無水物から選択される少なくとも1種がグラフト共重合され、かつ塩素化されたポリオレフィン。 - 前記(c)加熱工程における加熱が、160〜220℃で行われる請求項1、3または4に記載の窓枠付き車両用窓ガラスの車両本体への接着・固定方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法により接着・固定された、窓枠付き車両用窓ガラスの窓枠と車両開口フランジとの間に、窓枠側から順に変性ポリオレフィンを含む接着剤からなる層、プライマからなる層、およびウレタン接着剤が硬化してなるウレタン硬化物層の3層を有する窓枠付き車両用窓ガラスと車両本体との接着・固定構造。
- 前記熱可塑性エラストマ製窓枠付き車両用窓ガラスの窓枠と車両開口フランジとの間の前記3層からなる接着層の幅が、5〜25mmである請求項6記載の窓枠付き車両用窓ガラスと車両本体との接着・固定構造。
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