JP5933927B2 - 接着用構成体 - Google Patents

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本発明は、剛体たる構造部材に接着取付けをするために必要な優れた接着性を有する、接着用構成体に関するものである。
従来から透明な熱可塑性樹脂をガラスの代替として利用する試みは、軽量化、安全性の向上、およびガラスでは不可能な態様での利用を達成するために盛んに行なわれてきた。特に、ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、透明性、軽量性、加工性等の特徴を生かして、多方面の用途で使用されている。例えば、特許文献1には自動車の窓ガラスやサンルーフ、建設機械の窓ガラス等に使用する目的で、ポリカーボネートの表面の一部または全体に着色層、アクリル樹脂層からなるプライマー層、オルガノシロキサン樹脂からなるハードコート層が順次積層された透明樹脂積層体と金属枠とが接着剤を介して接合されている接着体を提案している。
しかしながら、上記特許文献1記載の接着体の構成においては、積層体のサイズが大型化した際に、ポリカーボネートの線膨張の影響が大きくなるため接着部分に応力が発生し、長期の屋外での使用を考えた場合に接着性に不具合をもたらすという問題があった。
また、上記の問題のために、サイズの大きな積層体を接着しようとした際、同じサイズのガラスを接着する場合に比べて接着剤の厚みを厚くすることで応力を緩和する必要があり、そのために接着部分の設計を樹脂積層体特有に設計しなければならないという問題点があった。
一方、積層体のサイズが小さい場合においても、自動車の窓ガラス等に用いた際、運転時の振動から接着性を確保するために従来では6mm以上の接着剤の厚みが必要であった(非特許文献1参照)。
そのため、接着剤層の厚みを厚くすることなく、剛体たる構造部材に接着取付けをするために必要な優れた接着性を有する接着用構成体は、未だ提供されていなかった。
特開2006−255928号公報
Adhesives and Sealants : General Knowledge, Application Techniques, New Curing Techniques (Elsevier Science Ltd,2006)の385頁Figure27
本発明の目的は、剛体たる構造部材に接着取付けをするために必要な優れた接着性を有する、接着用構成体を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ナノインデンテーション法により測定した押し込み弾性率が500MPa以上4000MPa以下の範囲である接着用プライマーを用いることにより、基材層と剛体たる構造部材との接着部に高い応力が発生した場合でも、線膨張の小さいガラス窓を接着した場合と同じ接着剤の厚みで良好な接着性を得られることを究明し、本発明に至った。
即ち、本発明は下記の通りである。
1.熱可塑性樹脂からなる光透過基材層((A)層)の少なくとも一つの面に、シロキサン結合、二重結合、水酸基、またはカルボキシル基を有するハードコート層((B)層)、アルコキシシリル基およびイソシアネート基を含有する接着用プライマー層((C)層)、ウレタン弾性接着剤層((D)層)がこの順で形成された、剛体たる構造部材に接着取付けをするため接着用構成体であって、
上記(C)層は、その厚みが1μm以上20μm以下の範囲であり、かつ荷重800μN下におけるナノインデンテーション法により測定される押し込み弾性率が500MPa以上4000MPa以下の範囲であり、
上記(D)層の厚みが0.9mm以上14mm以下であり、
上記(A)層を形成する基材の長辺長さをX(mm)、上記(D)層を形成する接着剤の厚みをY(mm)としたとき、Xは300mm以上3000mm以下であり、XおよびYは下記式(2)〜(3)を満足する接着用構成体。
3×10―3X≦ Y <6 (300≦X≦1500の時) (2)
3×10―3X≦ Y <(16/3)×10―3X−2
(1500<X≦3000の時) (3)
2.上記(C)層を形成する接着用プライマーは、シランカップリング剤を含むウレタン系プライマーである上記1記載の接着用構成体。
.上記(A)層を形成する熱可塑性樹脂からなる光透過基材層がポリカーボネート樹脂である上記1〜いずれかに記載の接着用構成体。
.上記(A)層と上記(B)層との間にインキ層としてシルクスクリーン印刷層または二色成形樹脂層を有する上記1〜いずれかに記載の接着用構成体。
.上記(B)層のハードコート層の最表層がシリコーンを主成分とする層から形成される上記1〜いずれかに記載の接着用構成体。
.上記(C)層を形成する接着用プライマーが、オープンタイム1ヶ月以上を満足している上記1〜いずれかに記載の接着用構成体。
.上記1〜いずれかに記載の接着用構成体がグレージング用途である接着用構成体。
本発明の接着用構成体は、熱可塑性樹脂からなる光透過基材層、ハードコート層、ナノインデンテーション法により測定した押し込み弾性率が500MPa以上4000MPa以下の範囲である接着用プライマー層、弾性接着剤層をこの順で形成することで、剛体たる構造部材に接着取付ける際に、線膨張の小さいガラス窓を接着した場合と同じ接着剤の厚みで良好な接着性を得られることが可能となった。そのため、その奏する工業的効果は格別である。
実施例で作成した試料片および応力試験の図である。 グレージング用基材層の図である。 グレージング用接着構成体の上から見た図である。 グレージング用接着構成体の横から見た図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
(I)基材層((A)層)
(I−1)基材層を構成する熱可塑性樹脂
本発明の((A)層)を構成する熱可塑性樹脂は、各種の重合体または共重合体、およびこれらに各種の添加剤を配合した樹脂組成物を含む。本発明における熱可塑性樹脂は、非晶性の熱可塑性樹脂を主成分とすることが好ましい。また結晶性熱可塑性樹脂であっても、射出圧縮成形で十分な透明性を確保できるものであれば、本発明の熱可塑性樹脂として使用できる。かかる結晶性熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、および結晶性を低下させた共重合ポリエステル樹脂などが例示される。
非晶性熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、変性PPE樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、およびポリエーテルイミド樹脂などが例示される。これらの中でも輸送機に求められる高い強度を有する点でポリカーボネート樹脂が好ましく、特にビスフェノールA型ポリカーボネートが好ましい。
ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールA型ポリカーボネート以外にも、他の二価フェノールで重合された、各種のポリカーボネート樹脂であってもよい。ポリカーボネート樹脂はいかなる製造方法によって製造されたものでもよく、界面重縮合の場合は通常一価フェノール類の末端停止剤が使用される。ポリカーボネート樹脂はまた3官能フェノール類を重合させた分岐ポリカーボネート樹脂であってもよく、更に脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂、二価の脂肪族または脂環式アルコールを重合または共重合させたポリカーボネートまたは共重合ポリカーボネートであってもよい。脂環式アルコールとしてはイソソルビドが好適に利用される。更には、ポリオルガノシロキサン単位、ポリアルキレン単位、およびポリフェニレン単位などポリカーボネート以外の単位が共重合された共重合ポリカーボネートであってもよい。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は13,000〜40,000の範囲であると、幅広い分野に適用可能となる。粘度平均分子量が20,000未満であると切削性に優れ、装飾用途や精密彫刻用途に好適となる。粘度平均分子量が20,000以上であると強度に優れ、輸送機の樹脂窓に好適となる。本発明の好適な用途である輸送機の樹脂窓においては、粘度平均分子量の下限はより好ましくは22,000、更に好ましくは23,000である。ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量の上限は、汎用性の点からより好ましくは35,000、更に好ましくは30,000である。尚、かかる粘度平均分子量はポリカーボネート樹脂全体として満足すればよく、分子量の異なる2種以上の混合物によりかかる範囲を満足するものを含む。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液から20℃で求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。ポリカーボネート樹脂の詳細については、例えば、特開2002−129003号公報に記載されている。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
上記のポリカーボネート樹脂に代表される熱可塑性樹脂は、好ましくは上記の透明性を損なわない範囲において、従来公知の各種の添加剤を含有することができる。かかる添加剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、離型剤、摺動剤、赤外線吸収剤、光拡散剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、強化充填材、衝撃改質剤、光触媒系防汚剤、酸抑制剤、加水分解安定剤、およびフォトクロミック剤等が例示される。尚、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、および離型剤などは、従来上記の熱可塑性樹脂における公知の適正量を配合できる。
本発明の接着用構成体は、上述のとおり殊に自動車の窓に好適であることから、上記の中でも特に熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、および赤外線吸収剤などを含有することが好ましい。
(I−1a)熱安定剤
熱安定剤としては、リン系安定剤が好適に例示される。リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル、並びに第3級ホスフィンなどが例示される。かかるリン安定剤のうちホスファイトの具体例としては、(a−1)トリス(イソデシル)ホスファイトの如きトリアルキルホスファイト、(a−2)フェニルジイソデシルホスファイトの如きアリールジアルキルホスファイト、(a−3)ジフェニルモノ(イソデシル)ホスファイトの如きジアリールモノアルキルホスファイト、(a−4)トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトの如きトリアリールホスファイト、(b)ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびビス{2,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイトなどのペンタエリスリトール型ホスファイト、並びに(c)2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトの如き二価フェノール類と反応し環状構造を有するホスファイトなどが好適に例示される。リン安定剤のうちホスフェートの具体例としては、トリメチルホスフェートおよびトリフェニルホスフェートなどが好適に例示される。ホスホナイト化合物の具体例としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトなどが好適に例示される。第3級ホスフィンの具体例としては、トリフェニルホスフィンが好適に例示される。
他の熱安定剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、およびグリセロール−3−ステアリルチオプロピオネートなどのイオウ含有安定剤、およびラクトン系安定剤等が例示される。
熱安定剤の配合量は、熱可塑性樹脂100重量%中好ましくは0.0001〜1重量%、より好ましくは0.01〜0.3重量%である。但しラクトン系安定剤は、その上限を0.03重量%とするのがよい。
(I−1b)酸化防止剤
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール化合物が好適に例示される。例えばテトラキス[メチレン−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、および3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが好適に利用される。
酸化防止剤の配合量は、熱可塑性樹脂100重量%中好ましくは0.0001〜1重量%、より好ましくは0.01〜0.3重量%である。但しラクトン系安定剤は、その上限を0.03重量%とするのがよい。
(I−1c)紫外線吸収剤
本発明における紫外線吸収剤としては、紫外線吸収剤として公知のベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、環状イミノエステル系化合物、およびシアノアクリレート系化合物などが例示される。ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−tert−ブチルフェノール、および2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]などが好適に例示される。ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノールが好適に例示される。環状イミノエステル系化合物としては2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が好適に例示される。更に、シアノアクリレート系化合物としては1,3−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパンが好適に例示される。
更に紫外線吸収剤は、ラジカル重合が可能な単量体化合物の構造をとることにより、かかる紫外線吸収性単量体と、アルキル(メタ)アクリレートなどの単量体とを共重合したポリマー型の紫外線吸収剤であってもよい。上記紫外線吸収性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル置換基中にベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、環状イミノエステル骨格、およびシアノアクリレート骨格を含有する化合物が好適に例示される。
上記の中でも良好な熱安定性を有する点から、より好適な紫外線吸収剤として環状イミノエステル系化合物が挙げられる。その他化合物においても比較的高分子量である方が良好な耐熱性が得られる。例えば、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール、および1,3−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパンが好適に例示される。紫外線吸収剤の含有量は、熱可塑性樹脂100重量%中、好ましくは0.005〜5重量%、より好ましくは0.01〜3重量%、更に好ましくは0.05〜0.5重量%である。
また熱可塑性樹脂は、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートに代表されるヒンダードアミン系の光安定剤も含むことができる。ヒンダードアミン系光安定剤と上記紫外線吸収剤との併用が耐候性を効果的に向上させる。かかる併用では両者の重量比(光安定剤/紫外線吸収剤)は95/5〜5/95の範囲が好ましく、80/20〜20/80の範囲が更に好ましい。光安定剤は単独であるいは2種以上の混合物で用いてもよい。光安定剤の含有量は熱可塑性樹脂100重量%中、好ましくは0.0005〜3重量%、より好ましくは0.01〜2重量%、更に好ましくは0.05〜0.5重量%である。これらの安定剤は、ハードコート層に含むこともできる。
(I−1d)赤外線吸収剤
積層体をグレージングとして使用する場合には、建物および輸送機におけるエアコンデイショナーの効率を高めるため、本発明の熱可塑性樹脂中に赤外線吸収剤を含有することが好ましい。これにより樹脂グレージングは、その軽量化による効果のみならず、エアコンデイショナー効率の向上により、更なる二酸化炭素削減に代表される環境負荷の低減を達成できる。本発明の赤外線吸収剤としては、金属酸化物、金属ホウ化物、および金属窒化物などの無機近赤外線吸収剤、フタロシアニン系近赤外線吸収剤の如き有機近赤外線吸収剤、並びに炭素フィラーが好適に例示される。
無機近赤外線吸収剤は、透明性と近赤外線吸収性との両立、樹脂中への分散適性等の点から、その平均粒子径が好ましくは1〜200nm、より好ましくは2〜80nm、更に好ましくは3〜60nmである。無機材料としては、本発明の効果を奏する範囲であれば、材料自体に制限はなく、金属酸化物、金属ホウ化物、金属窒化物などが挙げられる。
無機近赤外線吸収剤における金属酸化物としては、例えば、酸化タングステン系化合物、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化亜鉛、酸化ルテニウム、酸化インジウム、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、酸化セシウムなどが挙げられる。金属ホウ(硼)化物としては、多ホウ化金属化合物が好ましく、具体的には、ホウ化ランタン(LaB)、ホウ化プラセオジウム(PrB)、ホウ化ネオジウム(NdB)、ホウ化セリウム(CeB)、ホウ化イットリウム(YB)、ホウ化チタン(TiB)、ホウ化ジルコニウム(ZrB)、ホウ化ハフニウム(HfB)、ホウ化バナジウム(VB)、ホウ化タンタル(TaB)、ホウ化クロム(CrB、CrB)、ホウ化モリブデン(MoB、Mo、MoB)、ホウ化タングステン(W)などが挙げられる。また金属窒化物としては、窒化チタン、窒化ニオブ、窒化タンタル、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム、窒化バナジウムなどが挙げられる。
これらの中で、近赤外線の吸収率が高く、かつ可視光線の透過率が高いことから、酸化タングステン系化合物が好ましく、特には下記一般式(α)で示される酸化タングステン系化合物が好ましい。
MxWyOz ・・・(α)
ここで、M元素はCs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、FeおよびSnからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、Wはタングステンを示し、Oは酸素を示す。上記一般式(α)で示される酸化タングステン系化合物のうち、特にM元素がCsで表わされるセシウム含有酸化タングステンが、近赤外線吸収能が高いことから好適である。
また、上記一般式(α)において、添加されるM元素の添加量はタングステンの含有量を基準としたx/yの値として、0.001≦x/y≦1.1の関係を満足することが好ましく、特にx/yが0.33付近であることが、好適な近赤外線吸収能を示す点で好ましい。また、x/yが0.33付近であると、六方晶の結晶構造をとりやすく、該結晶構造をとることによって、耐久性の点でも好適である。また、上記一般式(α)における酸素の含有量は、タングステンの含有量を基準としたz/yの値として、2.2≦z/y≦3.0の関係を満足することが好ましい。より具体的には、Cs0.33WO、Rb0.33WO、K0.33WO、Ba0.33WOなどを挙げることができる。上記無機近赤外線吸収剤は1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を併用することもできる。
炭素フィラーとしては、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、およびフラーレンなど例示され、特にカーボンブラックが好ましい。
上記、金属酸化物系近赤外線吸収剤の含有量は、重量割合で熱可塑性樹脂:100重量%中好ましくは10〜2,000ppm、より好ましくは50〜1,000ppm、更に好ましくは100〜700ppmである。金属ホウ化物系近赤外線吸収剤の含有量はそれぞれ、熱可塑性樹脂100重量%中、重量割合で好ましくは、1〜200ppm、より好ましくは5〜100ppmである。
(I−2)基材層の形態
本発明の基材層に用いるシートの長辺長さは、好ましくは300mm以上3000mm以下であり、より好ましくは300mm以上2500mm以下である。長辺長さが、下限以上、上限以下であると、前記式(2)〜(3)を満足する接着剤の厚みで剛体たる構造部材に接着取付けをした際に良好な接着性が得られるため好ましい。本発明における基材層に用いるシートの長辺とは、シートの外周部分における最も長い辺を意味する。
基材層に用いるシートの厚みは、好ましくは1〜9mmである。かかる厚みの下限は、より好ましくは2mm、更に好ましくは3mmである。かかる厚みの上限は、より好ましくは7mm、更に好ましくは6mmである。
基材層に用いるシートの最大投影面積は、好ましくは200〜60,000cm、より好ましくは1,000〜40,000cmである。
さらに基材層は曲面を有していてもよく、湾曲の程度は、曲率半径(mm)で表わして、好ましくは500〜30,000mm、より好ましくは1,000〜25,000mm、より好ましくは1,500〜10,000mmの範囲である。
上述のような大型の基材および比較的緩やかな曲面を有する基材において、本発明の接着部における応力耐性効果はより発揮される。
(II)ハードコート層((B)層)
本発明における(B)層は、1層のみから構成されても、2層以上の積層から構成されてもよい。1層のみからなる(B)層においては、従来コーティングに用いられる各種の有機ポリマーが利用できる。中でも本発明においては、多官能アクリル系ポリマーを主成分とする硬化型ポリマー、並びに有機ポリマーと金属酸化物微粒子とからなる有機−無機複合体が好適に例示される。かかる(B)層を形成する多官能アクリル系ポリマーとしては、メチルメタクリレートから誘導させる構成単位を主成分とし、各種の官能基により自己架橋および他の架橋成分との反応による架橋構造を形成するポリマーが好適に例示される。かかる架橋構造の形成に寄与する官能基は、従来公知の各種の官能基が利用でき、例えば二重結合、水酸基(例えば、メチルロールメラミンやポリイソシアネートとの反応による架橋)、並びに、カルボキシル基(例えば、ポリエポキシとの反応による架橋)などが例示される。一方、(B)層を形成する有機−無機複合体としては、(i)有機ポリマーと該ポリマー中に分散可能な表面処理がなされた金属酸化物との混合型複合体、(ii)有機ポリマーと、該ポリマーに反応可能な官能基を有する表面処理剤で表面処理された金属酸化物とが反応により結合した複合体、並びに(iii)官能基を有する表面処理剤で表面処理された金属酸化物において、かかる官能基同士の反応により、もしくはかかる官能基に対して他の反応性モノマーやポリマーとの反応によりポリマーマトリックスを形成した複合体などが例示され、更にこれらの組合せからなってもよい。
2層以上の積層からなる(B)層としては、少なくともプライマー層((P)層)およびトップ層((T)層)の2層以上の構成が代表的に例示される。概して(P)層は、上記(A)層と(T)層とを強力に結合すると共に、高濃度の紫外線吸収剤を含有することで、(A)層における耐候性を向上させる。更に(T)層と(A)層との熱膨張差を緩和して、(T)層のクラックなどを防止する役割を有する。かかる(P)層の機能をより高めるべく、(P)層と(T)層との中間に、更に密着性の向上と熱膨張差の緩和を可能とする層を含有した3層以上の構成も可能である。
以下、本発明の(B)層として特に好適な態様である、アクリル樹脂からなるプライマー層((P)層)およびオルガノシロキサン樹脂からなるトップ層((T)層)からなる構成について説明する。
(II−1)(P)層を形成するアクリル樹脂の好適な態様
(P)層を形成するアクリル樹脂は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物群から選択される少なくとも1種の化合物を重合してなるアクリルポリマーもしくはアクリルコポリマーを主成分とする。尚(メタ)アクリロイル基の表記は、アクリロイル基およびメタクリロイル基のいずれも含むことを意味する。かかるアクリル樹脂は、熱可塑性および架橋成分を含有することによる熱硬化性のいずれであってもよいが、後述するよう本発明では架橋成分を含有することが好ましい。更にかかる(P)層の形成は、溶液状態で積層した後、乾燥および固化を行う態様であっても、熱可塑性を利用して溶融状態で積層した態様であってもよい。溶融状態で積層する態様としては、基材層と(P)層とを共押出する態様が代表的に例示され、好ましく利用できる。上記アクリルポリマーまたはコポリマーの分子量は、標準ポリスチレン換算によるGPC測定から算出される重量平均分子量で2万以上が好ましく、5万以上がより好ましい。また、重量平均分子量で1000万以下のものが好ましく使用される。よって、アクリル共重合体の重量平均分子量は、好ましくは5万〜1000万、より好ましくは5万〜100万、さらに好ましくは5万〜50万である。かかる分子量範囲の上記アクリル共重合体は、プライマー層としての密着性や強度などの性能が十分に発揮され好ましい。
(P)層のアクリル樹脂中に含有される紫外線吸収剤は、アクリル樹脂に別途配合される配合型、アクリルコポリマー中に共重合される共重合型、および両者の併用のいずれも利用できる。配合型の場合に利用できる紫外線吸収剤としては、上記ポリカーボネート樹脂中に配合可能な紫外線吸収剤を利用することができる。これらの中でも、分子量が高く、揮発性が低く、化合物として安定しているものが好ましい。かかる点から高分子量のベンゾトリアゾール系化合物、およびトリアジン系化合物からなる紫外線吸収剤が好ましい。好適なベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、および2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]が好適に例示され、またトリアジン化合物としては、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、および2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどが好適に例示される。
アクリル樹脂中に別途紫外線吸収剤を配合する場合には、アクリル樹脂100重量%中、1〜30重量%、より好ましくは2〜20重量%が好ましい。
(II−2)(P)層に用いる好適なアクリル共重合体
本発明の好適な(P)層に用いるアクリル樹脂共重合体は、(A−1)下記式(1)で示される繰り返し単位を50モル%以上、(A−2)下記式(2)で示される繰り返し単位を1〜15モル%を含有するアクリル共重合体((A)成分)であって、(A)成分を100モル%として、((A−1)成分および(A−2)成分の合計が少なくとも70モル%ある。
(式中Rはメチル基またはエチル基である。)
(式中Rは炭素数2〜5のアルキレン基であり、Yは水素原子またはメチル基である。)
前記(A)成分のアクリル共重合体は、少なくとも前記式(1)及び前記式(2)で示される繰返し単位からなる共重合体であり、それぞれ式(1)に対応するアルキルメタクリレートと、式(2)に対応するヒドロキシ基を含有するアクリレートおよび/またはメタクリレートモノマーを共重合して得られるヒドロキシ基を有するアクリル共重合体である。
前記式(1)に対応するアルキルメタクリレートとしては、メチルメタクリレートまたはエチルメタクリレートが挙げられ、単独でまたは両者を混合して使用できる。
前記式(2)に対応するヒドロキシ基を有するアクリレートまたはメタクリレートモノマーとしては、具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。なかでも2−ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましく採用される。
さらに、本発明におけるアクリル共重合体((A)成分)は、プライマー層に用いる紫外線吸収剤としてトリアジン系紫外線吸収剤を用いる場合、アクリル共重合体とトリアジン系紫外線吸収剤の相溶性を向上させる目的で、下記式(3)で示される(A−3)成分を使用することが好ましい。
(式中Rはシクロアルキル基であり、Xは水素原子またはメチル基である。)
(A−3)成分を使用する場合、(A)成分は前記(A−1)成分の繰返し単位50モル%以上、前記(A−2)成分の繰返し単位1〜15モル%および(A−3)前記式(3)で示される繰返し単位1〜35モル%を含有するアクリル共重合体((A)成分)であって、(A)成分を100モル%として、(A−1)〜(A−3)成分の合計が少なくとも70モル%のアクリル共重合体であることが好ましい。前記式(3)で示される繰返し単位の割合が、1モル%以上であるとトリアジン系紫外線吸収剤の分散性が良好で塗膜が白化せず、35モル%以下であると基材やハードコート層との密着性が良好となり好ましい。
前記式(3)に対応するシクロアルキル基を有するアクリレートまたはメタクリレートモノマーとしては、分子内に少なくとも1つのシクロアルキル基を有するアクリレートまたはメタクリレートであれば特に制限はない。
具体例として、シクロヘキシルアクリレート、4−メチルシクロヘキシルアクリレート、2,4−ジメチルシクロヘキシルアクリレート、2,4,6−トリメチルシクロヘキシルアクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、アダマンチルアクリレート、ジシクロペンタジエニルアクリレート、シクロヘキシルメチルアクリレート、4−メチルシクロヘキシルメチルアクリレート、2,4−ジメチルシクロヘキシルメチルアクリレート、2,4,6−トリメチルシクロヘキシルメチルアクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルメチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、4−メチルシクロヘキシルメタクリレート、2,4−ジメチルシクロヘキシルメタクリレート、2,4,6−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、ジシクロペンタジエニルメタクリレート、シクロヘキシルメチルメタクリレート、4−メチルシクロヘキシルメチルメタクリレート、2,4−ジメチルシクロヘキシルメチルメタクリレート、2,4,6−トリメチルシクロヘキシルメチルメタクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルメチルメタクリレートなどの化合物が挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。なかでもシクロヘキシルメタクリレートが好ましく採用される。
さらに、本発明におけるアクリル共重合体((A)成分)は、耐候性をさらに向上させる目的で、下記式(4)で示される(A−4)成分を使用することが好ましい。
(式中Rは、水素原子、炭素数1〜14のアルキル基または炭素数1〜14のアルコキシ基である。)
(A−4)成分を使用する場合、(A)成分は前記(A−1)成分の繰返し単位50モル%以上、前記(A−2)成分の繰返し単位1〜15モル%、前記(A−3)成分の繰返し単位1〜35モル%および(A−4)前記式(4)で示される繰返し単位0.1〜10モル%を含有するアクリル共重合体((A)成分)であって、(A)成分を100モル%として、(A−1)〜(A−4)成分の合計が少なくとも70モル%のアクリル共重合体であることが好ましい。前記式(4)で表される繰返し単位を含むことで、ラジカル捕捉能が付与することができ、耐候性をさらに向上することができる。前記式(4)で示される繰返し単位の割合は、(A)成分を100モル%として、1〜8モル%の範囲がより好ましい。10モル%を超えると、基材やハードコート層との密着性が低下し易くなる。
前記式(4)で表される繰返し単位は対応するアクリレートおよび/またはメタクリレートモノマーを共重合することで導入でき、対応するモノマーとしては、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6、6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−エチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−t−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−シクロヘキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−(4−メチルシクロヘキシル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−t−オクチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−デシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−ドデシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−エトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−プロポキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−t−ブトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−(4−メチルシクロヘキシロキシ)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−t−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−デシロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−ドデシロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレートなどが挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用してもよい。
上記(A−1)〜(A−4)成分を含む繰り返し単位からなるヒドロキシ基を有するアクリル共重合体((A)成分)は、さらに機能性付与等のため他の繰返し単位を含んでいてもよい。他の繰返し単位は(A)成分のアクリル共重合体100モルに対して好ましくは30モル以下の範囲、より好ましくは20モル以下の範囲、特に好ましくは10モル以下の範囲である。
他の繰返し単位はアクリレートまたはメタクリレートモノマーと共重合可能なビニル系モノマーを共重合することで導入できる。他のビニル系モノマーとしては、接着性の耐久性の面で、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2―エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート等が挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。また、アクリル樹脂は単一組成のものを単独で使用する必要はなく、アクリル樹脂を2種以上混合して使用してもよい。
(II−3)(P)層を形成する他の成分について
(P)層のアクリル樹脂は、より好適には溶液状態で積層された後、乾燥および固化され、かつ該アクリル樹脂が架橋成分により熱硬化される態様が好ましい。
該架橋成分としては特にブロック化されたポリイソシアネート化合物が好ましい。ブロック化されたポリイソシアネート化合物とは、イソシアネート基にブロック化剤を反応させ遊離のイソシアネート基をほとんどなくして、常温での反応性を抑制したもので、加熱によりブロック化剤が分離してイソシアネート基となり、反応性を持つに至る化合物を意味する。
ブロック化されたポリイソシアネート化合物として、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に、アセトオキシムおよびメチルエチルケトオキシムなどのオキシム類、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、およびアセチルアセトンなどの活性メチレン化合物、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、および2−エチル−1−ヘキサノールなどのアルコール類、フェノール、クレゾール、およびエチルフェノールなどのフェノール類に代表されるブロック化剤を付加させて得られるブロックイソシアネート化合物が挙げられる。
ブロック化剤を付加させるポリイソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート、ポリイソシアネートと多価アルコールとのアダクト変性体、ポリイソシアネート同士のイソシアヌレート変性体、およびイソシアネート・ビュレット体などが挙げられる。
ポリイソシアネート化合物は2以上のイソシアネート基を有するものであり、例えば、ジイソシアネート化合物としては、
(1)トリレンジイソシアネート(通常“TDI”と略称される。2,4−TDI、および2,6−TDIを含む)、ジフェニルメタンジイソシアネート(“MDI”と略称され、4,4’−MDI、2,4’−MDI、および2,2’−MDIを含む)、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,4−ナフチレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(“XDI”と略称され、o−XDI、m−XDI、およびp−XDIを含む)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(“TMXDI”と略称される)、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、および3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;
(2)テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(“HDI”と略称される)、2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、およびトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(“TMDI”と略称され、2,2,4−TMDI、および2,4,4−TMDIを含む)などの脂肪族ジイソシアネート;
(3)イソホロンジイソシアネート(“IPDI”と略称される)、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(“H12MDI”と略称される)、水素添加キシリレンジイソシアネート(“HXDI”と略称される)、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート、およびシクロヘキシルジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート
などが例示され、トリイソシアネート化合物としては、トリフェニルメタン−4,4,4−トリイソシアネート、およびトリス(p−イソシアネートフェニル)チオホスフェートなどが例示される。
このブロック化されたポリイソシアネート化合物は単独もしくは2種類以上を混合して使用できる。ブロック化された脂肪族および/または脂環式ポリイソシアネート化合物は特に耐候性に優れ好ましい。ブロック化された脂肪族および/または脂環式ポリイソシアネート化合物としては、(i)2〜4個のヒドロキシ基を有するヒドロキシ化合物と脂肪族および/または脂環式ジイソシアネート化合物を反応させることにより得られる、アダクト型ポリイソシアネート化合物をブロック剤でブロックしたアダクト型ポリイソシアネート化合物、(ii)脂肪族および/または脂環式ジイソシアネート化合物から誘導された、イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物をブロック剤でブロックしたイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物が好ましい。その中でも、脂肪族ジイソシアネート化合物および/または脂環式ジイソシアネート化合物の炭素数が4〜20のものが好ましく、炭素数4〜15のものがより好ましい。イソシアネート化合物の炭素数をかかる範囲にすることで、耐久性に優れた塗膜が形成される。
ブロック化されたポリイソシアネート化合物は、好ましくは5.5〜50重量%、より好ましくは6.0〜40重量%、更に好ましくは6.5〜30重量%の換算イソシアネート基率を有する。換算イソシアネート基率とは、ブロック化されたポリイソシアネート化合物を加熱しブロック化剤を分離した場合に、生成するイソシアネート基の重量をブロック化されたポリイソシアネート化合物の重量に対する百分率で表した値である。イソシアネート基率が上記好適な範囲であると、基材への密着性と、(T)層のクラック防止とを良好に両立できる。換算イソシアネート基率(重量%)は、イソシアネート基を既知量のアミンで尿素化し、過剰のアミンを酸で滴定する方法により求められる。更に、ブロック化されたポリイソシアネート化合物の含有量は、上記アクリル共重合体中に存在するイソシアネートとの反応性基1当量に対してイソシアネート基が0.8〜1.5当量、好ましくは0.8〜1.3当量、最も好ましくは0.9〜1.2当量となる量である。
更に、上記(P)層を形成するアクリル樹脂組成物は、ブロック化されたポリイソシアネート化合物のブロック化剤の解離および再生したイソシアネート基とアクリル共重合体のヒドロキシ基とのウレタン化反応を促進させるため、硬化触媒を含有することが好ましい。かかる硬化触媒としては、有機錫化合物、4級アンモニウム塩化合物、3級アミン化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物などが挙げられ、これらの化合物は単独または2種以上を混合して使用される。これらの硬化触媒のなかでも有機錫化合物が好ましく使用される。かかる硬化触媒の詳細は特開2008−231304号公報に記載されている。
更に、上記(P)層を形成するアクリル樹脂組成物は、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、および光安定剤などを含有することができる。これらの剤の詳細も特開2008−231304号公報に記載されている。かかる剤の配合量は、アクリル樹脂組成物100重量%中、シランカップリング剤においては0.2〜8重量%、紫外線吸収剤においては0.2〜20重量%、並びに光安定剤においては0.05〜10重量%が好ましい。紫外線吸収剤および光安定剤は、相乗効果を有することから、上記(A−1)単位〜(A−4)単位にいずれか片方が含まれない場合、それらを相互補完するように含有されることが好ましい。かかる紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤および無機系紫外線吸収剤のいずれも利用できる。無機系紫外線吸収剤としては、後述の(T)層に含有される単一もしくは複合の酸化物微粒子が好適に例示され、特に酸化チタン、酸化セリウム、および酸化亜鉛が好ましく、特に酸化亜鉛が好ましい。
かかる酸化物微粒子は、各種の物理的方法および化学的方法で製造されたものが利用できる。かかる物理的方法としては、ガス中蒸発法が好適に挙げられ、化学的方法のうち液相反応法として、前駆体法、沈殿法、共沈法、水熱法、アルコキシド法、界面活性剤法、エマルション法、および噴霧熱分解法等が、気相反応法として、化学気相析出法が挙げられる。これらの中でも、ガス中蒸発法、および沈殿法・共沈法が好ましい。ガス中蒸発法としては、誘導加熱方式、レーザー加熱方式、並びに直流アークプラズマ法、プラズマジェット法、高周波プラズマ法などのプラズマ法が好適に例示され、中でも直流アークプラズマ法が好適である。かかる直流アークプラズマ法は、金属原料を消費アノード電極とし、カソード電極からアルゴンガスのプラズマフレームを発生させ、該金属原料を加熱し、蒸発させ、その金属蒸気を酸化、冷却するものである。これにより、平均粒子径が好ましくは3〜100nm、より好ましくは5〜80nm、更に好ましくは10〜70nmの酸化物微粒子を製造することができる。更にかかる酸化物微粒子は、少なからず光触媒活性を有することから、その活性を抑制し、コーティングの耐候性を向上させるため、酸化物微粒子表面をAl、Si、Zr、およびSnの酸化物もしくは水酸化物から選ばれる少なくとも1種で被覆処理された複合酸化物とすることができる。
(II−4)(P)層の膜厚
(P)層の厚みは、1〜100μmの範囲であることが好ましい。ここで、(P)層が溶融状態で積層される場合には、厚みの厚い方が製造効率の点で好ましいことから、かかる場合好ましくは10〜100μmの範囲、より好ましくは20〜80μmの範囲である。
一方、溶液状態で積層される場合には、(P)層の厚みは好ましくは1〜15μmの範囲、より好ましく、2〜10μmの範囲である。したがって、上記の好適なアクリル樹脂組成物を熱硬化させてなる、本発明の好適なプライマー層の膜厚は1〜15μmが好ましく、2〜10μmがより好ましい。膜厚が1μm未満であると、紫外線の透過率が高くなり、ポリカーボネート基材の黄変やシリコーン樹脂系トップ層との密着性の低下が生ずるため、耐候性が乏しくなる。膜厚が15μmを超えると、内部応力の増大のため、また熱硬化時に架橋反応が十分進行しないため、耐久性に乏しい塗膜層になる。また、アクリル樹脂組成物を溶解するために使用する溶剤の揮発が不十分となり、溶剤が塗膜中に残存し、耐熱水性、耐候性を損ねることになる。
(II−5)熱硬化性の(P)層の形成方法
上記の好適な熱硬化性のアクリル樹脂組成物から(P)層を形成する方法としては、基材に反応せず且つ該基材を溶解しない揮発性の溶媒に、かかるアクリル樹脂組成物を溶解して、このアクリル樹脂塗料を基材表面に塗布し、次いで該溶媒を加熱などにより除去し、さらに加熱してヒドロキシ基と加熱により生成するイソシアネート基とを反応させ架橋させることにより形成される。かかる溶媒としては、好適には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、およびシクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、および1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、エチルアセテート、ブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、およびエトキシエチルアセテートなどのアセテート類、並びにメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、ジアセトンアルコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(プロピルプロピレングリコール)、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、および2−ブトキシエタノールなどのアルコール類が利用でき、更に、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ガソリン、軽油、および灯油などの炭化水素類、アセトニトリル、ニトロメタン、並びに水などが挙げられ、これらは単独で使用することも、2種以上を混合して使用することもできる。好適には有機溶媒のSP値(solubility parameter 値)が、18.5〜22(MPa)0.5であることが好ましく、19.5〜21.5(MPa)0.5であることが更に好ましい。かかる範囲では、有機溶媒のポリカーボネート樹脂への悪影響の低下と、固形分への溶解性の向上とを両立することができる。本発明における有機溶媒のSP値は、原崎勇次著;「コーティングの基礎と工学」p.50(2010)加工技術研究会の化学組成からの計算に則って計算することができる。本発明のかかるアクリル樹脂塗料において、アクリル樹脂組成物(固型分)の濃度は1〜50重量%が好ましく、3〜30重量%がより好ましい。
アクリル樹脂塗料が塗布された基材は、通常常温から該基材の熱変形温度以下の温度下で溶媒の乾燥、除去が行われ、加熱硬化する。熱硬化は好ましくは80〜160℃の範囲、より好ましくは100〜140℃の範囲、最も好ましくは110〜130℃の範囲で、好ましくは10分間〜3時間、より好ましくは20分間〜2時間加熱して架橋性基を架橋させ、第1層として上記アクリル樹脂層を積層した成形品が得られる。硬化温度が上記上限を超えると、いわゆるオーバーキュア状態となって、(T)層との結合力および密着性が低下し、ハードコートの耐久性を低下させる要因となる。熱硬化時間が10分より短いと架橋反応が十分に進行せず、高温環境下での耐久性、耐候性に乏しい塗膜層になることがある。また、塗膜の性能上熱硬化時間は3時間以内で十分である。
(II−6)(T)層の好適な態様
本発明における(T)層は、コロイダルシリカおよびアルコキシシランの加水分解縮合物を含有し、適宜、更に金属酸化物微粒子の如き紫外線吸収剤を含有するオルガノシロキサン樹脂組成物を熱硬化してなる塗膜層が好ましい。好適には、コロイダルシリカとアルコキシシランの加水分解縮合物とからなるオルガノシロキサン樹脂形成質、並びに酸、硬化触媒、および溶媒からなるコーティング用塗料を用いて形成される。更に必要に応じて金属酸化物微粒子の如き紫外線吸収剤が含有されコーティング用塗料が調整される。シロキサン結合をもった硬化樹脂層を形成するものとしては、3官能シロキサン単位に相当する化合物(トリアルコキシシラン化合物など)を主成分とする化合物の部分加水分解縮合物、好ましくは更に4官能シロキサン単位に相当する化合物(テトラアルコキシシラン化合物など)および/または2官能シロキサン単位に相当する化合物を含む部分加水分解縮合物、並びに更にこれらにコロイダルシリカなどの金属酸化物微粒子を充填した部分加水分解縮合物などが例示される。シリコーン樹脂系ハードコート剤は更に1官能性のシロキサン単位を含んでよい。これらには縮合反応時に発生するアルコール(アルコキシシランの部分加水分解縮合物の場合)などが含まれるが、更に必要に応じて任意の有機溶剤、水、あるいはこれらの混合物に溶解ないしは分散させてもよい。そのための有機溶剤としては、低級脂肪酸アルコール類、多価アルコールとそのエーテル、エステル類などが挙げられる。なお、ハードコート層には平滑な表面状態を得るためレベリング剤を添加できる。かかるコロイダルシリカ、アルコキシシラン、酸、硬化触媒、および溶媒の具体的態様、配合量、並びに調整条件の詳細に関してもまた特開2008−231304号公報に記載されている。
本発明における(T)層を形成するオルガノシロキサン樹脂には、より良好な耐侯性を付与するため、各種の紫外線吸収剤を配合することができる。無機紫外線吸収剤としては、金属酸化物微粒子が好適である。かかる金属酸化物微粒子としては、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、アンチモン含有酸化スズ、およびスズ含有酸化インジウムなどの単一もしくはこれらの複合金属酸化物微粒子、およびこれらの混合物が例示される。かかる微粒子の粒子径は好ましくは1〜150nm、より好ましくは3〜100nm、更に好ましくは5〜70nmである。かかる金属酸化物微粒子の好適な製造方法およびその表面被覆については、上述の(P)層における酸化物微粒子における説明のとおりである。
その他の紫外線吸収剤として、亜鉛、およびジルコニウムなどの金属キレート化合物、並びにこれらの(部分)加水分解縮合物、また有機系のものとしては、主骨格がヒドロキシベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、もしくはトリアジン系である化合物誘導体、並びに側鎖にこれら紫外線吸収剤を含有するビニルポリマーの如き重合体もしくは共重合体などが例示される。
(II−7)(T)層の膜厚
上記(T)層の厚みは、好ましくは2〜10μm、より好ましくは3〜8μmである。塗膜層の厚みがかかる範囲であると、熱硬化時に発生する応力のために塗膜層にクラックが発生したり、(T)層と(P)層との密着性が低下したりすることがなく、本発明の目的とする十分な耐摩耗性を有する塗膜層が得られることとなる。
(II−8)(T)層の形成方法
上記(T)層は、上記オルガノシロキサン樹脂組成物を溶媒に溶解して得られたコーティング用塗料を、基材層上に形成された上記(P)層上に塗布し、次いで加熱硬化することにより形成される。溶媒の使用量は、コロイダルシリカとアルコキシシランの加水分解縮合物とから形成されるオルガノシロキサン樹脂量100重量部に対して、好ましくは50〜1900重量部、より好ましくは150〜900重量部である。固形分の濃度は好ましくは5〜70重量%、より好ましくは7〜40重量%である。オルガノシロキサン樹脂を形成するコーティング塗料は、酸および硬化触媒の含有量を調節することによりpHを好ましくは3.0〜6.0、より好ましくは4.0〜5.5に調製することが望ましい。この範囲でpHを調製することにより、常温での該コーティング塗料のゲル化を防止し、保存安定性を増すことができる。該コーティング塗料は、通常数時間から数日間更に熟成させることにより安定な塗料になる。
上記(T)層の形成は、上記(P)層の形成に引き続き連続して行うことが好ましい。オルガノシロキサン樹脂組成物が塗布された基材は、通常、常温から該基材の熱変形温度以下の温度下で溶媒を乾燥、除去した後、加熱硬化する。熱硬化は基材の耐熱性に問題がない範囲で高い温度で行う方がより早く硬化を完了することができ好ましい。なお、常温では、熱硬化が進まず、硬化被膜を得ることができない。これは、コーティング塗料中のオルガノシロキサン樹脂組成物が部分的に縮合したものであることを意味する。かかる熱硬化の過程で、残留するSi−OHが縮合反応を起こしてSi−O−Si結合を形成し、耐摩耗性に優れたコート層となる。熱硬化温度は、好ましくは50〜200℃、より好ましくは80〜160℃、さらに好ましくは100〜140℃である。熱硬化時間は、好ましくは10分間〜4時間、より好ましくは20分間〜3時間、さらに好ましくは30分間〜2時間である。
(II−9)(P)層および(T)層の積層方法
上述の(P)層および(T)層をそれぞれアクリル樹脂塗料およびコーティング塗料により基材にコートする方法としては、ディップコート法、フローコート法、ブレードコート法、ナイフコート法、スクイズコート法、トランスファーロールコート法、グラビヤロールコート法、エアースプレーコート法、静電スプレーコート法、およびスピンコート法などを用いることができる。コート成分の塗布以外の方法としては転写法が挙げられる。かかる方法では、離型紙上に、ハードコート層および該層と成形品とを接着する層を設けたラミネート用シートを準備し、かかるシートと成形品とをラミネートすることにより、成形品上にハードコート層を設けることができる。上記コート方法の中でもディップコート法およびフローコート法が好ましい。
(III)接着用プライマー層((C)層)
本発明における接着用プライマー層は、厚みが1μm以上20μm以下の範囲であり、かつ荷重800μN下におけるナノインデンテーション法により測定される押し込み弾性率500MPa以上4000MPa以下の範囲である。接着用プライマー層は、厚みが2μm以上10μm以下の範囲であることが好ましい。厚みが下限以上であると良好な接着性が得られ、上限以下であると良好な接着性が必要最低限の接着用プライマーの量で得られるため好ましい。ナノインデンテーション法により測定される弾性率は、1000MPa以上3500MPa以下であることが好ましい。弾性率が下限以上であると被着体への十分な反応性が得られるため好ましく、上限以下であると十分な応力緩和効果が期待できるため好ましい。
本発明の押し込み弾性率の測定は、基板上のハードコート層に接着用プライマーを50μm程度の厚みで塗布し、温度23℃および相対湿度50%の雰囲気下で養生し、硬化させた後にミクロトームを用いて断面切削を行い、平滑断面を得た後、かかる断面において、膜厚の中央付近で測定することを基本とする。かかるプライマーが塗工されたサンプルをバーコビッチ圧子(α:65.03°)を備えたナノインデンテーション装置により、押し込み弾性率を測定する。かかる測定においては、20.4mgf/secの荷重速度で負荷をかけ、最大荷重として800μNを1秒間保持した後、同様の荷重速度で除荷を行う条件を適用する。かかる測定に好適な装置としては、例えばエリオニクス株式会社製、製品名ENT−2100超微小押し込み硬さ試験機が利用できる。
本発明におけるプライマーの条件は、すでに市販されている各種プライマーの中から選択することにより、もしくはその構成成分を適宜調整することにより達成できるものであるが、より好適な構成について以下に説明する。
本発明におけるプライマーは、シロキサン化合物を主成分とするハードコート層、およびウレタン接着剤のいずれに対しても良好な接着性が求められる。したがって、該プライマーは、シロキサン成分に対する反応性の良好なアルコキシシリル基、およびウレタン接着剤に対する反応性の良好なイソシアネート基のいずれも含有する化合物を含むことが好ましい。かかる化合物のアルコキシシリル基は、ハードコート層に直接にもしくは他のアルコキシシリル基含有化合物との加水分解縮合結合を介して、ハードコート層に強固に結合する。一方、かかる化合物のイソシアネート基は、ウレタン接着剤に直接に、もしくは他のアルコール性OH基含有化合物の如きイソシアネート基に対する反応性基含有化合物を介して直接に結合することを可能とする。したがって、アルコキシシリル基およびイソシアネート基をいずれも含む化合物は、ハードコート層とウレタン接着剤とを化学結合を介して結ぶことを可能とする。
一方で、本発明のプライマーは、特定の弾性率を有することにより、接着構成体に負荷される応力を効率よく緩和する特性を有する。かかる特性を満たすため、プライマーの架橋構造はあまり密にならないことが好ましい。かかる観点から上記のアルコキシシリル基およびイソシアネート基をいずれも含む化合物は、反応性の官能基のいずれかが、分岐構造の分岐基点から離れて存在する構造であることが好ましい。
より具体的には、好適な態様として、分岐構造を有するポリイソシアネート化合物と、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランの如きイソシアネート基と反応性を有する基を含有するシランカップリング剤との反応生成物(以下、“シラン変性ポリイソシアネート”と称する)が例示される。かかる反応においては、ポリイソシアネート化合物とシラン化合物との割合を調整し、少なからずイソシアネート基を残留させる。
分岐構造を有するポリイソシアネート化合物としては、トリメチロールプロパンなどの多価アルコールと、ジイソシアネート化合物とのアダクト変性体、TDIとHDIとのイソシアヌレート変性体、HDIのイソシアヌレート変性体、HDIとIPDIとのイソシアヌレート変性体、並びにIPDIのイソシアヌレート変性体などが例示される。尚、ジイソシアネート化合物の略号については以下に示すとおりである。すなわち、かかるジイソシアネート化合物としては、
(1)トリレンジイソシアネート(通常“TDI”と略称される。2,4−TDI、および2,6−TDIを含む)、ジフェニルメタンジイソシアネート(“MDI”と略称され、4,4’−MDI、2,4’−MDI、および2,2’−MDIを含む)、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,4−ナフチレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(“XDI”と略称され、o−XDI、m−XDI、およびp−XDIを含む)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート( “TMXDI”と略称される)、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、および3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;
(2)テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(“HDI”と略称される)、2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、およびトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(“TMDI”と略称され、2,2,4−TMDI、および2,4,4−TMDIを含む)などの脂肪族ジイソシアネート;
(3)イソホロンジイソシアネート(“IPDI”と略称される)、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(“H12MDI”と略称される)、水素添加キシリレンジイソシアネート(“HXDI”と略称される)、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート、およびシクロヘキシルジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート
が例示される。
上述のごとく、応力緩和の点では分子運動性が、他方、強度を保持の点では比較的剛直な構造が求められることから、上記のポリイソシアネート化合物は、多価アルコールと芳香族ジイソシアネートおよび/または脂環式ジイソシアネートとのアダクト変性体、並びにHDIと芳香族ジイソシアネートおよび/または脂環式ジイソシアネートとのイソシアヌレート変性体が好適に例示され、特に前者のアダクト体が好ましい。更に好適には多価アルコールとしてはトリメチロールプロパンなどが例示され、殊に等価のアルコール性OH基を有し汎用されるトリメチロールプロパンが好ましい。また、ジイソシアネート化合物としては、脂環式ジイソシアネートが耐侯性も良好である点から好ましく、殊にHXDI、IPDI、およびH12MDIが好適である。
尚、シラン変性ポリイソシアネートにおいては、ジオールとの反応によりポリイソシアネート化合物を高分子量化した後、かかるポリイシソアネートと反応性のシランカップリング剤を反応させたものも利用できる。かかるジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのグリコール類、並びに、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、および2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールなどが好適に例示される。
本発明におけるプライマー組成物には、更に塗工用の溶剤の他、他のシランカップリング剤、他の硬化成分、触媒、乾燥剤、樹脂成分、およびカーボンブラック、並びにその他の化合物を含有することができる。
他のシランカップリング剤は、上記のシラン変性ポリイソシアネート化合物を補完し、ハードコート層との強固な接着性を達成する。かかるシランカップリング剤も、イソシアネート基に対して、活性を有することが好ましく、よって、官能基としては、アルコール性OH基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基、およびエポキシ基などを含有することが好ましい。
かかるシランカップリング剤の具体例としては、エポキシシランとして、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、および3,4−エポキシシクロヘキシルエチルメチルジメトキシシランなどが挙げられ、アミノシランとして、例えばアミノメチルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)メチルトリブトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノイソブチルトリメトキシシラン、N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、およびN−(β−アミノエチル)−γ−アミノ−β−メチルプロピルトリメトキシシランなどが挙げられ、メルカプトシランとして、例えばγ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メチルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メチルカプトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、β−メルカプトエチルメチルジメトキシシラン、β−メルカプトエチルトリメトキシシラン、およびβ−メルカプトエチルトリエトキシシランなどが挙げられる。更にアルコール性OH基含有のシラッカップリング剤として、上記エポキシシラン1モルに対し、上記アミノシランやメルカプトシランなどの、エポキシ基に対して活性な官能基を有するシラン化合物を0.1〜1モルの割合で反応させた変成シランが好適に例示される。
本発明におけるプライマーにおける他のシランカップリング剤としては、かかる変性シランが好適であり、エポキシシラン1モルに対しに対しアミノシランを0.1〜1モルの割合で反応させた変性シランがより好適に例示される。更に、かかるエポキシシランとしては、特にγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが、かかるアミノシランとしては、特にN−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、およびN−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。
他の硬化成分としては、各種のジイソシアネート化合物およびポリイソシアネート化合物が挙げられる。かかる硬化成分は、ウレタン接着剤との良好な接着性に寄与するが、一方で吸水による塗工後のオープンタイムを制限する要因ともなることから、かかるオープンタイムの自由度を高くしたい用途においては含有しないことが好ましい。他の硬化成分としては上記例示のイソシアネート化合物の他、トリイソシアネート化合物としては、トリフェニルメタン−4,4,4−トリイソシアネート、およびトリス(p−イソシアネートフェニル)チオホスフェートなどが例示され、他の硬化成分を配合する場合には、特にトリス(p−イソシアネートフェニル)チオホスフェートが好ましい。
樹脂成分としては、ポリエステルポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、および塩化ビニル樹脂などが例示される。上記の如く、オープンタイムの自由度を高くしたい用途では、アクリル樹脂、およびエポキシ樹脂、殊にエポキシ樹脂とアクリル樹脂との混合体が好ましい。かかる混合体の使用により、オープンタイム1ヶ月以上、より好ましくは2ヶ月以上を満足することができる。かかるオープンタイムは化学反応の観点では上限を有していないが、他の要因による汚染や分解などの影響を考慮すると実用上6ヶ月以下、より好ましくは4ヶ月以下の使用となる。一方かかる用途が必要とされない場合にはポリエステルポリウレタン樹脂が強度に優れる点で好適である。
かかるエポキシ樹脂はそのエポキシ当量が好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは1,000〜5,000である。またアクリル樹脂の分子量は、標準ポリスチレン換算に基づくGPC測定法の数平均分子量において、好ましくは1,000〜100,000、より好ましくは5,000〜80,000である。
尚、上記の樹脂成分は、その変性や共重合処方により、アルコール性OH基やアルコキシシリル基を含有した態様とすることもでき、殊にオープンタイムの自由度を高くしたい用途において利用できる。かかる態様はより好適にはこれらの官能基を有するアクリル樹脂が例示され、その具体例は例えば特開2001−064470号公報に記載され、本発明においても好適に利用できる。
プライマー組成物中のカーボンブラックは、その分散性などの点から酸性カーボンブラックが好ましい。酸性カーボンブラックとしては、そのpH値が2.5〜4の範囲が好ましい。またその粒径は10〜30nmの範囲が好ましく利用でき、平均粒径の異なる2種以上を混合して使用することもできる。
触媒としては、ジラウリン酸ジブチル錫、トリオクタン酸ビスマス、2−エチルヘキサン酸亜鉛、およびコバルト塩などの金属塩、並びにN−メチルモルホリンおよびN,N’−ジメチルピペラジンなどの3級アミン類が例示され、殊に金属塩を含有することが好ましい。乾燥剤としては、合成ゼオライト、天然ゼオライト、およびモレキュラーシーブスなどが例示され、その細孔径が3〜10オングストロームの範囲にあるものが好適に利用できる。その他の添加剤として、例えば安定剤として、マロン酸ジエチルなどが例示される。また溶剤としては、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ミネラルスピリット、トルエン、キシレン、ジメチルアセトアミド、アセトン、n−ヘキサン、メチレンクロライド、テトラヒドロフラン、エチルエーテル、およびジオキサンなどが例示される。かかる溶剤は2種以上を混合して利用できる。更にかかる化合物にペンタン、ヘキサン、ヘプタン、およびオクタンなどの炭素数5〜12の飽和炭化水素化合物を併用してもよい。上記溶剤の中でもメチルエチルケトン、酢酸エチル、および酢酸ブチルが好適であり、特に酢酸エチルを主成分とすることが好ましい。溶剤の配合量は、通常、上記固形分の合計100重量部に対して100〜1,000重量部程度、より好ましくは200〜700重量部である。
本発明のプライマーにおける上述の各種成分の組成割合は、その溶剤を除く固形分100重量%中、シラン変性ポリイソシアネートは好ましくは10〜45重量%、より好ましくは12〜30重量%、他のシランカップリング剤は好ましくは0〜60重量%、より好ましくは10〜35重量%、樹脂成分は好ましくは5〜35重量%、より好ましくは20〜30重量%(尚、オープンタイムの自由度が求められる用途では、エポキシ樹脂が好ましくは3〜15重量%)、カーボンブラックは好ましくは10〜40重量%、より好ましくは20〜35重量%、並びに触媒は好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.05〜3重量%である。
接着用プライマー層は、各種のアプリケータを用いてプライマー組成物を塗工し、通常常温にて乾燥させて形成される。塗工方法としては、例えば、ハケ塗り法、スプレーコーティング法、ワイヤバー法、ブレード法、およびロールコーティング法などを用いて塗工できる。接着用プライマー層の厚みは、1〜20μmの範囲が好適である。
接着用プライマーの好適な代表例としては、ガラス用プライマーGP−402(サンスター技研(株)製)、HAMATITEガラスプライマーG(MS−90)(横浜ゴム(株)製)などが挙げられる。
(IV)弾性接着剤層((D)層)
本発明における(D)層を構成する弾性接着剤には、ウレタン接着剤が好適に利用される。ウレタン接着剤は、湿気硬化型一液性ウレタン接着剤、および二液性ウレタン接着剤のいずれも使用可能であるが、特に湿気硬化型一液性ウレタン接着剤が生産効率に優れているので好ましい。湿気硬化型1液性ウレタン接着剤は、通常イソシアネート基含有化合物、とりわけイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(以下、NCO末端プレポリマーと称す)を主成分とし、これに対して可塑剤、充填剤、触媒、および任意にその他の化合物が配合されてなる。その他の化合物は、該組成物に所望の特性を付与することなどを目的とするものであって、例えばポリイソシアネート化合物およびγ−メルカプトプロピルトリメトキシシランの如きシランカップリング剤などの密着剤、耐熱接着性を付与するための(メタ)アクリレート系共重合体、並びに軽量性・制振性・防音性を付与するための発泡剤やマイクロバルーンなどを包含する。ここで、プレポリマーの含有量は、通常、ウレタン接着剤組成物全量中好ましくは15〜50重量%であり、より好ましくは20〜45重量%、更に好ましくは30〜45重量%の範囲で選択される。ウレタン接着剤組成物の好適な態様の代表例としては、横浜ゴム(株)製のWS−222、およびサンスター技研(株)製のペンギンシール#560などダイレクトグレージング用の各種の接着剤が好適に例示される。
一方、(D)層の厚みは、0.9mm以上1.4mm以下である。好ましくは、上記(A)層を形成する基材の長辺長さをX(mm)、(D)層を形成する接着剤の厚みをY(mm)としたとき、XおよびYは下記式(1)〜(3)を満足する。
0.9≦ Y < 6 (0<X<300の時) (1)
3×10―3X≦ Y <6 (300≦X≦1500の時) (2)
3×10―3X≦ Y <(16/3)×10―3X−2
1500<X≦3000の時) (3)
接着剤の厚みが下限以上では十分な接着性が得られ好ましく、上限以下では接着剤の重量が少ない点、コストが低い点、デザインの制限が少ない点で好ましい。ここで、(1)〜(3)式の上限の値は、非特許文献1によるものである。
(V)ブラックアウト層
本発明の積層体は、(A)層と(B)層の間にブラックアウト層としてシルクスクリーン印刷層または二色成形樹脂層を有していてもよい。かかるブラックアウトはグレージングにおいては周縁部に形成され、周縁部に形成される接着剤や構造部材の目隠し機能を有する。ブラックアウト部分は、基材の第1の側(例えば車両内側)および第2の側(例えば車両外側)において、いずれ1面において形成される(この場合第1の側に形成される)ことが好ましい。
ブラックアウト部分は、インキの塗工、着色シートの貼り付け、並びに成形品の同時成形や接合などにより形成されることができる。かかる接合の方法には、接着(湿気硬化型、反応型、光硬化型、および感圧型など)、および溶着(熱溶着、超音波溶着、およびレーザー溶接など)などの接合方法を用いることができる。かかる接合物は、接着能を有する本体を塗工する方法、および両面接着テープを用いる方法のいずれも利用可能である。
ブラックアウト部分をインキ塗工で形成する場合、各種のインキを用いることができる。上記の如く、ブラックアウト部分の形成箇所によって、求められる特性が異なることから、かかる点に留意してインキを選定する。ブラックアウト部分にアクリル樹脂塗料を用いて(P)層を形成する場合、インキにはかかる塗料に対する耐性が必要とされる。ポリカーボネートとの親和性、ハードコート液に対する耐性、および熱成形時での追従性などの点で、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステルエラストマー、アクリルポリオールとポリイソシアネートとからなる2液性ウレタン樹脂、およびポリエステルポリオールとポリイソシアネートとからなる2液性ウレタン樹脂がインキバインダとして好適である。インキバインダは単独でも2種以上を混合しても使用できる。更にこれらの中でも2液性ウレタン樹脂が好適であり、特にアクリルポリオールとポリイソシアネートとからなる2液性ウレタン樹脂が好適である。
ブラックアウト部分をインキ塗工で形成する場合、かかる形成方法としては、各種の印刷方法、スプレー塗装、および刷毛塗りなどの各種の方法が適用できる。印刷方法は特に限定されず、従来公知の方法で、平板のもしくは湾曲したシート表面に印刷できる。例えば、スプレー印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、およびインクジェット印刷などの方法が例示され、これらの中でもスクリーン印刷が最も好ましく適用できる。
成形品の同時成形や接合などによりブラックアウト部分を形成する場合、該成形品は、各種プラスチック(ポリマーアロイ材料を含む)、繊維強化プラスチック、ミネラル強化プラスチック、並びに繊維強化コンポジット(ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維および炭素繊維等からなるFRP、SMC、およびRTMなどの複合材料)などから形成されることができる。かかる成形品は、鋼材(鋼板)、並びにアルミニウム合金、マグネシウム合金、およびチタン合金などの金属部材、並びに木材などの他の剛性部材による補強がなされてもよく、また、ガスアシスト成形や発泡成形により軽量化がなされていてもよい。繊維強化プラスチックを射出成形する場合、SVG法に基づくカスケード成形を利用することもできる。
(VI)剛体たる構造部材
本発明の剛体たる構造部材とは、構造体(structure)もしくは建造物の構成部品であり、他の物体もしくは部分の荷重を担う支持材をいい、例えば、輸送機器のボディ、かかるボディに固定されパネルモジュール、およびかかるボディに配設される各種の窓枠などが例示される。かかる輸送機器には、自動車、トラック、列車、航空機、船舶、自動二輪車、自転車、および車イス、並びに建設機器、およびトラクターなどを含む。構造部材としての建造物には、例えばビルディング、屋外競技場、体育館、アーケード、カーポート、温室、および家屋などの建築物、防音壁、防風壁、および防雪柵などの道路施設、標識、看板および屋外用大型モニターなどの表示設備、並びに太陽光発電装置の如き発電装置などが含まれる。本発明でいうグレージング結合体とは、本発明のグレージング構成体が上記構造部材に結合して一体となったものをいう。構造部材としては、金属、ガラス、セラミック、セラミックコンポジット、繊維強化プラスチック、繊維強化コンポジット(ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維および炭素繊維等からなるFRP、SMC、およびRTMなどの複合材料)、並びに木材など形成された部材が例示される。金属部材としては、鋼材(鋼板)、並びにアルミニウム合金、マグネシウム合金、およびチタン合金などから形成された部材が例示される。
(I)評価項目
(I−A)接着用プライマーのナノインデンテーション法による押し込み弾性率測定
ポリカーボネート基板上のハードコート層に接着用プライマーを、プライマー溶液を十分に含浸させたベンコットワイパーを用いて塗布し、一週間養生後、ミクロトームによる断面切削を行い得られた平滑断面において、押し込み弾性率の測定を実施した。接着用プライマー層の厚みは約50μmであった。かかる測定はプライマー膜厚の中央部分において実施した。本発明におけるナノインデンテーション法による押し込み弾性率は接着用プライマー層の厚みが50μmにおける値を意味する。
押し込み弾性率の測定は、得られたプライマー層の表面部分において超微小押し込み硬さ試験機(エリオニクス株式会社製、製品名ENT−2100)により押し込み試験を行った。押し込みの際にはバーコビッチ圧子(α:65.03°)を用いて、20.4mgf/secの荷重速度で負荷をかけ、最大荷重として800μNを1秒間保持した後、同様の荷重速度で除荷を行った。結果を表1に示す。
(I−B)手剥離接着性評価
(I−B−i)試料作成
図1に示したように、基材層上にハードコート層が形成された70mm×50mmの積層体に接着用プライマーをベンコットにて塗布し、その上に湿気硬化性ポリウレタン系接着剤を底辺8mm高さ12mmの三角形ビードで塗工した。同様に接着用プライマーを塗布した積層体で接着剤の厚みを評価する高さまで押しつぶし、23℃50%RH雰囲気下で一週間養生硬化させた。
(I−B−ii)応力試験
図1に示したように、応力試験用冶具に(I−B−i)で作成した試験片を固定し、一方の積層体側に1〜6mmの変位を加え、40℃100%RHの恒温恒湿槽中に500hrおよび70℃のオーブン中に500hr保管した。かかる保管後試験片を冶具より取り外し、接着剤厚みが2mmのものは下側の板との境界で接着剤を切り取って、それ以外は接着剤厚みが上の板から3mmになる位置で切り取って手剥離接着性試験に供した。
応力試験で加えた変位は、上述の非特許文献1における392頁の式(9)に従い、該式をポリカーボネート樹脂に適用して算出されたものである。すなわち、
ΔI=I×Δα×ΔT=I×58×10−6×70≒4×I(mm)
を適用した。ここでIは基材の長辺長さ(m)、Δαはスチールの線膨張係数:12×10−6×K−1とポリカーボネート樹脂の線膨張係数:70×10−6×K−1との線膨張係数差、並びに該非特許文献1に倣い、ΔTは20℃〜90℃での使用を想定した温度差70℃を示す。更に、該非特許文献1に記載のとおり、通常接着されたグレージングは、その両端が自由に動くので、接着剤が受け持つ変位は、その1/2となる。よって、想定される接着剤部分の変位量は、“2×I(mm)”と算出できる。かかる計算により算出した基材層の長辺長さと想定される変位量との関係を表2に示した(小数点以下四捨五入)。
(I−B−iii)手剥離接着性試験
手剥離接着性試験では、接着剤のビードを引っ張りながらカッターナイフで接着界面に切り込みを入れていき、接着剤の凝集破壊面積が100%の場合を100と表記した。80の場合は、接着剤の凝集破壊面積が80%、界面破壊の面積が20%であることを示す。凝集破壊面積は75%以上であることが好ましく、100%であることがより好ましい。
(II)基材層の製造
(II−1)ポリカーボネート樹脂−A1の製造
下記の原料表記に従い、ポリカーボネート樹脂−A1の製造方法について説明する。9.5重量部のPC、0.08重量部のVPG、0.02重量部のSA、0.03重量部のPEPQ、0.05重量部のIRGN、0.32重量部のUV1577、および1×10−4重量部のBLをスーパーミキサーで均一混合した。かかる混合物10.0001重量部に対して、90重量部のPCをV型ブレンダーで均一に混合し、押出機に供給するための予備混合物を得た。
得られた予備混合物を押出機に供給した。使用された押出機は、スクリュ径77mmφのベント式二軸押出機((株)日本製鋼所製:TEX77CHT(完全かみ合い、同方向回転、2条ネジスクリュ))であった。該押出機は、スクリュ根元から見てL/D約8〜11の部分に順に送りのニーディングディスクと逆送りのニーディングディスクとの組合せからなる混練ゾーンを有し、その後L/D約16〜17の部分に送りのニーディングディスクからなる混練ゾーンを有していた。更に該押出機は、後半の混練ゾーンの直後にL/D0.5長さの逆送りのフルフライトゾーンを有していた。ベント口はL/D約18.5〜20の部分に1箇所設けられた。押出条件は吐出量320kg/h、スクリュ回転数160rpm、およびベントの真空度3kPaであった。また押出温度は第1供給口230℃からダイス部分280℃まで段階的に上昇させる温度構成であった。
ダイスから押出されたストランドは、温水浴中で冷却され、ペレタイザーにより切断されペレット化された。切断された直後のペレットは、振動式篩部を10秒ほど通過することにより、切断の不十分な長いペレットおよびカット屑のうち除去可能なものが除去された。
(II−2)ポリカーボネート樹脂−A2の製造
9.43重量部のPC、0.1重量部のVPG、0.02重量部のSA、0.03重量部のPEPQ、0.05重量部のIRGN、0.3重量部のUV234、0.07重量部のIRA、および1×10−4重量部のBLをスーパーミキサーで均一混合した。かかる混合物10.0001重量部に対して、90重量部のPCをV型ブレンダーで均一に混合し、押出機に供給するための予備混合物を得た以外は、上記ポリカーボネート樹脂−A1の製造と同様にして、ペレット状のポリカーボネート樹脂−A2を得た。
尚、上記使用原料は下記の通りである。
PC: ビスフェノールAとホスゲンから界面縮重合法により製造された粘度平均分子量25,000のポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製:パンライトL−1250WQ(商品名))
VPG:ペンタエリスリトールと脂肪族カルボン酸(ステアリン酸およびパルミチン酸を主成分とする)とのフルエステル(コグニスジャパン(株)製:ロキシオールVPG861)
SA:脂肪酸部分エステル(理研ビタミン(株)製:リケマールS−100A)
PEPQ:ホスホナイト系熱安定剤(Sandoz社製:サンドスタブP−EPQ)
IRGN:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:Irganox1076)
UV1577:2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:Tinuvin1577)
UV234:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:Tinuvin234)
BL:ブルーイング剤(バイエル社製:マクロレックス バイオレットB)
IRA:有機分散樹脂と無機赤外線吸収剤としてCs0.33WO(平均粒子径5nm)とからなり、無機赤外線吸収剤含有量が約23重量%からなる赤外線遮蔽剤(住友金属鉱山(株)製YMDS−874)
(III)シート成形品の製造
上記樹脂材料−A1のペレットをプラテンの4軸平行制御機構を備えた射出プレス成形可能な大型成形機((株)名機製作所製:MDIP2100、最大型締め力33540kN)を用いて射出プレス成形し、厚み5mmで長さ×幅が1000mm×600mmのシート成形品を製造した。得られたシートを70mm×50mmのサイズに切断して実施例1〜2、比較例1〜4で用いる試験片とした。
(IV)アクリル樹脂塗料の調整
(IV−1)アクリル樹脂塗料P−1の調製
還流冷却器および撹拌装置を備え、窒素置換したフラスコ中にエチルメタクリレート(以下EMAと省略する)74.2重量部、シクロヘキシルメタクリレート(以下CHMAと省略する)33.6重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下HEMAと省略する)13.0重量部、LA−82(旭電化工業(株)製ヒンダードアミン系光安定性基含有メタクリレート;1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート12.0重量部、メチルイソブチルケトン(以下MIBKと省略する)132.8重量部および2−ブタノール(以下2−BuOHと省略する)66.4重量部を添加混合した。混合物に窒素ガスを15分間通気して脱酸素した後、窒素ガス気流下にて70℃に昇温し、アゾビスイソブチロニトリル(以下AIBNと省略する)0.33重量部を加え、窒素ガス気流中、70℃で5時間攪拌下に反応させた。さらにAIBN:0.08重量部を加えて80℃に昇温し、3時間反応させ、不揮発分濃度が39.7重量%のアクリル共重合体溶液を得た。アクリル共重合体の重量平均分子量はGPCの測定(カラム;Shodex GPCA−804、溶離液;THF)からポリスチレン換算で115,000であった。アクリル共重合体溶液100重量部に、MIBK:71.5重量部、2−BuOH:35.7重量部、1−メトキシ−2−プロパノール:112重量部を加えて混合し、チヌビン400(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製トリアジン系紫外線吸収剤)4.24重量部、およびチヌビン479(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製トリアジン系紫外線吸収剤)1.06重量部、アクリル共重合体溶液中のアクリル共重合体のヒドロキシ基1当量に対してイソシアネート基が1.0当量になるようにVESTANAT B1358/100(デグサ・ジャパン(株)製ブロック化されたポリイソシアネート化合物)10.3重量部を添加し、さらにジメチルチンジネオデカノエート:0.022重量部、APZ−6601(東レダウコーニング製シランカップリング剤加水分解縮合物の溶液:固形分4.5重量%)15.7重量部を加えて25℃で1時間攪拌し、アクリル樹脂塗料(P−1)を得た。
(V)オルガノシロキサン樹脂組成物からなるコーティング塗料の調製
(V−1)コーティング塗料T−1の調製
水分散型コロイダルシリカ分散液(触媒化成工業(株)製カタロイドSN−30、固形分濃度30重量%):100重量部に、濃塩酸(12M):0.1重量部を加えよく攪拌した。この分散液を10℃まで冷却し、その中にメチルトリメトキシシラン:161重量部を滴下した。メチルトリメトキシシランの滴下直後から反応熱で混合液の温度は上昇を開始し、かかる開始から数分後に60℃まで昇温した。60℃に到達後、氷水浴で冷却しながら、徐々に反応液の温度を低下させた。反応液の温度が35℃になった段階で、この温度を維持するようにして5時間攪拌し、これに、硬化触媒として45%コリンメタノール溶液:0.7重量部、pH調整剤としての酢酸:1.2重量部を混合し、コーティング塗料原液(α)を得た。
上記コーティング塗料原液(α)209重量部にIPA138重量部を加えて攪拌し、コーティング塗料T−1を得た。
[実施例1−a〜b、比較例1]
上記実施例(II)〜(III)で作成した基材層に、(IV)〜(V)で作成したアクリル樹脂塗料とオルガノシロキサン樹脂組成物からなるコーティング塗料をそれぞれ5μmの厚みで積層し、接着用プライマーとしてγ−メルカプトプロピルトリメトキシシランとポリイソシアネートとの反応生成物であるシラン変性ポリイソシアネート並びに他のシランカップリング剤、アクリル樹脂およびエポキシ樹脂などを含有しており、1ヶ月以上の長期オープンタイム特性を有するガラス用プライマーGP−402(サンスター技研(株)製)、弾性接着剤として湿気硬化型一液性ウレタン接着剤であるペンギンシール#560(サンスター技研(株)製)を用いて、上記(I−B)記載の手剥離接着性評価を実施した。接着用プライマーの塗工は、プライマー溶液を十分に含浸させた後、軽く絞ったベンコットワイパーを用いて実施した。接着剤厚みは、2mm〜8mmの範囲で実施した。結果を表3に示した。
[実施例1−c]
接着用プライマーの塗工後23℃50%RH雰囲気下で3ヶ月保管してからウレタン接着剤の塗工をした以外は実施例1−aと全く同じ条件で上記(I−B)記載の手剥離接着性評価を実施した。1ヶ月以上の長期オープンタイム特性を有するガラス用プライマーGP−402を用いた場合、接着用プライマーの塗工後23℃50%RH雰囲気下で3ヶ月保管してからウレタン接着剤の塗工をしても、接着用プライマーの塗工直後にウレタン接着剤の塗工をした実施例1−aとほぼ同等な結果が得られた。結果を表3に示した。
[実施例2]
上記実施例(II)〜(III)で作成した基材層に、(IV)〜(V)で作成したアクリル樹脂塗料とオルガノシロキサン樹脂組成物からなるコーティング塗料をそれぞれ5μmの厚みで積層し、接着用プライマーとしてγ−メルカプトプロピルトリメトキシシランとポリイソシアネートとの反応生成物であるシラン変性ポリイソシアネートおよびポリエステルポリウレタン樹脂などを含有しており、1ヶ月以上の長期オープンタイム特性を有していないHAMATITEガラスプライマーG(MS−90)(横浜ゴム(株)製)、弾性接着剤として湿気硬化型一液性ウレタン接着剤であるWS−222(横浜ゴム(株)製)を用いて、一週間の養生硬化後90℃24hrの処理を行った上で、上記(I−B)記載の手剥離接着性評価を実施した。結果を表3に示した。
[比較例2]
上記実施例(II)〜(III)で作成した基材層に、(IV)〜(V)で作成したアクリル樹脂塗料とオルガノシロキサン樹脂組成物からなるコーティング塗料をそれぞれ5μmの厚みで積層し、接着用プライマーとしてシラン変性ポリイソシアネートを含有しないが1ヶ月以上の長期オープンタイム特性を有するHAMATITEガラスプライマーG(PC−3)(横浜ゴム(株)製)、弾性接着剤として湿気硬化型一液性ウレタン接着剤であるWS−222(横浜ゴム(株)製)を用いて、上記(I−B)記載の手剥離接着性評価を実施した。結果を表3に示した。
[比較例3]
上記実施例(II)〜(III)で作成した基材層に、(IV)〜(V)で作成したアクリル樹脂塗料とオルガノシロキサン樹脂組成物からなるコーティング塗料をそれぞれ5μmの厚みで積層し、接着用プライマーとして1ヶ月以上の長期オープンタイム特性を有していないプライマー35(サンライズMSI(株)製)、弾性接着剤として湿気硬化型一液性ウレタン接着剤であるSRシールU−90W(サンライズMSI(株)製)を用いて、上記(I−B)記載の手剥離接着性評価を実施した。結果を表3に示した。
[実施例3]
上記実施例(I)で製造したA2のポリカーボネート樹脂から、プラテンの四軸平行制御機構を備えた射出プレス成形可能な大型成形機((株)名機製作所製:MDIP2100、最大型締め力3400T)を用いて、厚み6mm、長さ1940mm×幅1200mm、および投影面積23,280cmの樹脂板成形品を製造した。得られた樹脂板成形品の透明部となる部分にマスキング処理を行い、外周端部に約160mmの幅で、約20μm厚みのブラックアウト層を形成した。かかるブラックアウト層は、インキとして、POS:アクリルポリオールとポリイソシアネートとからなるウレタン樹脂をバインダーとする2液性インキ(POSスクリーンインキ911墨:100重量部、210硬化剤:5重量部、およびP−003溶剤:23重量部の均一混合物(原料はいずれも帝国インキ(株)製)を用い、スプレーガンを用いて形成した後、風乾を20分行った後、90℃で60分間の処理を行い、インキを硬化させた。その後、マスキングを除去し、ブラックアウト層が形成された成形品を得た。かかる成形品に、上記実施例(IV)〜(V)で作成したアクリル樹脂塗料(P−1)およびオルガノシロキサン樹脂組成物(T−1)をそれぞれ約4μmの厚みで成形品両面に積層した。いずれの層も塗装用ロボットを用いて、フローコート法により形成した。第1段階としてP−1のコート液を塗布後、風乾処理を行い、その後125℃で60分間、循環式熱風乾燥機中で熱処理し、プライマー層を硬化させた。かかる熱処理後、室温下で十分に冷却を行い、その後、第2段階としてP−1上にT−1のコート液を塗布し、風乾後、125℃60分間の熱処理を行い、硬化させた。
上記の外周端部にブラックアウト層を有し、かつ該層を含む全面にハードコート層が形成された積層体に、ガラス用プライマーGP−402(サンスター技研(株)製)を厚み8μm、弾性接着剤ペンギンシール#560(サンスター技研(株)製)を、幅12mm高さ15mmの三角形状となるように塗工した。HAMATITEボディプライマーM(RC−50E)(横浜ゴム(株)製)を厚み8μmで塗工したステンレス製の枠に、かかるウレタン接着剤が塗工された成形品を、ウレタン接着剤の厚みが6mmとなるようにして貼り付けた。かかる厚みは同厚みのスペーサを、ステンレス枠上に設置して調整した。得られた接着構成体を23℃で50%RHの条件で1週間養生処理した後、枠ごと70℃の熱風乾燥炉に入れ、1000時間の処理を実施した。接着剤は全く外れることなく、樹脂板成形品が固定されていた。
本発明は、剛体たる構造部材に接着取付けをするために必要な優れた接着性を有する、大型接着用構成体を提供する。したがって、上述のとおり、これらの特性が求められる車輌用グレージング材、例えばバックドアウインドウ、サンルーフ、ルーフパネル、デタッチャブルトップ、ウインドーリフレクター、ウインカーランプレンズ(カバーを含む)、ルームランプレンズ(カバーを含む)、およびディスプレー表示用前面板などにおいて好適に利用することができる。更に車輌用グレージング材以外にも、建設機械の窓ガラス、ビル、家屋、および温室などの窓ガラス、ガレージおよびアーケードなどの屋根などの幅広い用途に使用可能である。したがって本発明の樹脂グレージングの奏する産業上の効果は格別である。
11:ポリカーボネート層
12:ハードコート層
13:接着用プライマー層
14:接着剤
21:樹脂板成形品本体
22:成形品のゲート部分
31:ポリカーボネート層
32:ブラックアウト層
33:ハードコート層
34:接着用プライマー層
35:接着剤
36:被着体

Claims (7)

  1. 熱可塑性樹脂からなる光透過基材層((A)層)の少なくとも一つの面に、シロキサン結合、二重結合、水酸基、またはカルボキシル基を有するハードコート層((B)層)、アルコキシシリル基およびイソシアネート基を含有する接着用プライマー層((C)層)、ウレタン弾性接着剤層((D)層)がこの順で形成された、剛体たる構造部材に接着取付けをするため接着用構成体であって、
    上記(C)層は、その厚みが1μm以上20μm以下の範囲であり、かつ荷重800μN下におけるナノインデンテーション法により測定される押し込み弾性率が500MPa以上4000MPa以下の範囲であり、
    上記(D)層の厚みが0.9mm以上14mm以下であり、
    上記(A)層を形成する基材の長辺長さをX(mm)、上記(D)層を形成する接着剤の厚みをY(mm)としたとき、Xは300mm以上3000mm以下であり、XおよびYは下記式(2)〜(3)を満足する接着用構成体。
    3×10―3X≦ Y <6 (300≦X≦1500の時) (2)
    3×10―3X≦ Y <(16/3)×10―3X−2
    (1500<X≦3000の時) (3)
  2. 上記(C)層を形成する接着用プライマーは、シランカップリング剤を含むウレタン系プライマーである請求項1に記載の接着用構成体。
  3. 上記(A)層を形成する熱可塑性樹脂からなる光透過基材層がポリカーボネート樹脂である請求項1〜いずれかに記載の接着用構成体。
  4. 上記(A)層と上記(B)層との間にインキ層としてシルクスクリーン印刷層または二色成形樹脂層を有する請求項1〜いずれかに記載の接着用構成体。
  5. 上記(B)層のハードコート層の最表層がシリコーンを主成分とする層から形成される請求項1〜いずれかに記載の接着用構成体。
  6. 上記(C)層を形成する接着用プライマーが、オープンタイム1ヶ月以上を満足している請求項1〜いずれかに記載の接着用構成体。
  7. 請求項1〜いずれかに記載の接着用構成体がグレージング用途である接着用構成体。
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