JP5242929B2 - コーティング用アクリル樹脂組成物およびこれを用いたプラスチック成形体 - Google Patents

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Description

本発明は優れた耐候性を有するコーティング用アクリル樹脂組成物およびこれを用いたプラスチック成形体に関する。さらに詳しくは、特定構造の紫外線吸収性基をアクリル樹脂側鎖に導入することによりプラスチック基材に優れた耐候性、耐久性を付与し、加熱硬化時の紫外線吸収剤の飛散が少なく工程汚染を防止でき、リコート性、貯蔵安定性にも優れたコーティング用アクリル樹脂組成物およびプラスチック基材に該樹脂組成物の熱硬化塗膜層を積層し、ついで特定組成のオルガノシロキサン樹脂組成物の熱硬化塗膜層を積層したプラスチック成形板に関する。
プラスチック材料は、耐衝撃性、軽量性、加工性等の特長を生かして、多方面の用途で使用されている。特に、透明プラスチックであるアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂等はガラスの代替として幅広く利用されている。しかし、これらの樹脂は耐候性が十分ではなく、長期の屋外の使用において分解・劣化するため物性、外観が損われることが知られている。またこれらの樹脂は耐摩耗性も乏しく表面が傷つきやすく、また溶剤に侵されやすい等の欠点を有している。
近年、その軽量性、安全性を活かして窓ガラス、殊に自動車の窓ガラスに透明プラスチックを基材とする有機ガラスを適用しようとする動きがある。このような用途に透明プラスチックを適用する場合、ガラス並の高度な耐候性が要求される。また、前面ガラスではワイパー作動時のすり傷発生を防止する必要があり、サイドウィンドーではウィンドー昇降時のすり傷発生を防止する必要がある。このような用途では高いレベルの耐摩耗性が要求される。さらに、サンルーフは真夏の炎天下ではかなりの高温になることが予想され、この用途に使用されるプラスチック成形体は、環境の変化および高温環境下においてより強い耐久性が要求されている。
これらの欠点を改良する目的で、従来からプラスチック基材表面に熱硬化型アクリル樹脂層を設け、さらにその上にシロキサン系の硬化被膜を被覆することにより耐候性、耐久性、耐摩耗性を改良する数多くの提案がなされてきている。
例えば、特許文献1および特許文献2にはトリヒドロキシシラン部分縮合物とコロイダルシリカからなるコーティング用組成物が記載されている。さらに特許文献3および特許文献4にはアルキルトリアルコキシシランとテトラアルコキシシランとの縮合物にコロイド状シリカを添加したコーティング用組成物が記載されている。
しかしながら、これらのコーティング用組成物から得られる硬化被膜を透明プラスチック基材に積層したものはある程度耐摩耗性を有するが、高温環境下では基材とオルガノシロキサン樹脂を熱硬化してなる層の熱膨張率の違いにより、オルガノシロキサン樹脂を熱硬化してなる層が引っ張られコート層にクラックが生じる場合があり、より高度な耐久性を有するものが求められている。
この点を改善する目的で、プラスチック基材とオルガノシロキサン樹脂層の間に、熱硬化型アクリル樹脂層を設ける提案が多くなされている。例えば、特許文献5では、熱硬化型アクリル樹脂層としてアクリルポリオールとイソシアネート化合物から得られるアクリル−ウレタン樹脂層を使用する提案がなされている。ところが、イソシアネート化合物の反応性が高いため塗料の貯蔵安定性が低く使用中もしくは保存中において塗料の増粘やゲル化が生じやすい。また、熱硬化時に副反応が生じやすく塗膜物性が安定しないという欠点を有している。
耐候性を付与する目的で、例えば特許文献6および特許文献7では、熱硬化型アクリル樹脂層にベンゾフェノン系紫外線吸収剤やベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を添加する提案がなされているが、かかる紫外線吸収剤自体の紫外線に対する安定性が乏しく十分な耐候性が得られない。またかかるアクリル樹脂層を加熱硬化にて積層する際に、かかる紫外線吸収剤の揮発・飛散により工程を汚染してしまうという問題点があった。さらにアクリル樹脂上にオルガノシロキサン樹脂層を形成するオルガノシロキサン樹脂組成物を塗布する際に該アクリル樹脂層から紫外線吸収剤が溶け出し、オルガノシロキサン樹脂層に混入し、耐摩耗性や外観を損ねるという問題も有している。
かかる点を改善する目的で、特許文献8では、共重合性ビニル基を有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を共重合した高分子紫外線吸収剤およびこれを用いたコーティング剤組成物についての発明がなされているが、前述の通りかかる紫外線吸収剤の紫外線に対する安定性が乏しく耐候性は不十分である。
また、光分解速度の小さい紫外線吸収剤としてトリアジン系紫外線吸収剤が知られているが、該トリアジン系紫外線吸収剤を熱硬化型アクリル樹脂層に添加した場合、耐候性試験や屋外での暴露により塗膜が白化しやすく、プラスチックの外観や透明プラスチックの場合その透明性を損ねるという欠点を有している。
特開昭51−002736号公報 特開昭55−094971号公報 特開昭63−278979号公報 特開平01−306476号公報 特開昭62−169832号公報 特開平11−058654号公報 特開平11−217519号公報 特開2001−139924号公報
本発明の目的は、プラスチック基材に優れた耐候性、耐摩耗性、密着性、耐熱水性等を付与し、アクリル樹脂組成物の加熱硬化時の紫外線吸収剤の揮発の抑制や第2層を形成する際のオルガノシロキサン樹脂組成物への第1層からの紫外線吸収剤の溶出の抑制に優れ、リコート性、貯蔵安定性にも優れたコーティング用アクリル樹脂組成物およびプラスチック基材に該樹脂組成物の熱硬化塗膜層を積層し、ついで特定組成のオルガノシロキサン樹脂組成物の熱硬化塗膜層を積層した外観、耐候性、耐摩耗性、密着性および耐熱水性に優れたプラスチック成形板を提供することにある。
本発明者らは、この目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、シクロアルキル基含有メタクリレートからなる繰返し単位を35モル%を超えて85モル%以下含み、且つ紫外線吸収性基、特に光安定性の高い特定構造のトリアジン系紫外線吸収性基を側鎖に有するアクリル共重合体を含むアクリル樹脂組成物を使用することで、長期の耐候性試験や屋外暴露でも塗膜の白化が生じないことを見出した。また該アクリル樹脂組成物をプラスチック基材に塗布・加熱硬化し熱硬化アクリル樹脂塗膜層を形成する際の紫外線吸収剤の揮散が少なく、耐摩耗性を付与するためのオルガノシロキサン樹脂組成物を塗布する際の紫外線吸収剤の溶け出しが少なくリコート性にも優れたコーティング用アクリル樹脂組成物を発明するに至った。
さらに、該コーティング用アクリル樹脂組成物を用いてプラスチック基材上に第1層を設け、さらに第2層としてコロイダルシリカ、アルコキシシラン加水分解縮合物を含んでなるオルガノシロキサン樹脂組成物の熱硬化塗膜を積層することで、耐摩耗性が付与され、耐候性、密着性および耐熱水性に優れたプラスチック成形体を発明するに至った。
すなわち、本発明によれば、
1.(A)1〜60モル%の下記式(1)で表される繰り返し単位((A−1)単位)、
Figure 0005242929
(式中Rはメチル基またはエチル基である。)
35モル%を超えて85モル%以下の下記式(2)で表される繰返し単位((A−2)単位)、
Figure 0005242929
(式中Rはシクロアルキル基であり、Xは水素原子またはメチル基である。)
0.1〜15モル%の下記式(3)で表される繰返し単位((A−3)単位)、および
Figure 0005242929
(式中Xは水素原子またはメチル基であり、Wはトリアジン系紫外線吸収性基である。)
1〜15モル%の下記式(4)で表される繰り返し単位((A−4)単位)
Figure 0005242929
(式中Rは炭素数2〜5のアルキレン基であり、Xは水素原子またはメチル基であり、Zはヒドロキシ基、アルコキシシリル基、グリシジルオキシ基、イソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基である。)
を含有するアクリル共重合体(A成分)であって、該アクリル共重合体の全繰り返し単位100モル%中、(A−1)〜(A−4)単位の合計が少なくとも70モル%であるアクリル共重合体を含有するコーティング用アクリル樹脂組成物、
.前記(A−3)単位が下記式(5)および/または下記式(6)で表される紫外線吸収性基を含有するアクリルモノマーから誘導された繰返し単位である前項1記載のコーティング用アクリル樹脂組成物、
Figure 0005242929
(式中Rは炭素数2〜6のアルキレン基であり、Rは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基または炭素数1〜18のアルコキシ基を表し、R、Rは同一または互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、または炭素数1〜18のアルキル基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を表し、Rは炭素数1〜18のアルキル基を表し、Xは水素原子またはメチル基であり、Yは水素原子、OH基または炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
Figure 0005242929
(式中Rは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基または炭素数1〜18のアルコキシ基を表し、R10、R11は同一または互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、または炭素数1〜18のアルキル基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を表し、R12は炭素数1〜18のアルキル基を表し、Xは水素原子またはメチル基であり、Yは水素原子、OH基または炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
.前記(A−4)単位が、下記式(7)で表される繰返し単位である前項1記載のコーティング用アクリル樹脂組成物、
Figure 0005242929
(式中R13は炭素数2〜5のアルキレン基であり、Xは水素原子またはメチル基である。)
.(A)前項1記載のアクリル共重合体(A成分)、(B)5.5〜50重量%の換算イソシアネート基率を有し、(A−3)単位中のヒドロキシ基1当量に対して0.8〜1.5当量となる量のイソシアネート基を有するブロック化されたポリイソシアネート化合物(B成分)、および
(C)(A)成分および(B)成分の合計100重量部に対して0.001〜0.4重量部の硬化触媒(C成分)を含有する前項1記載のコーティング用アクリル樹脂組成物、
.(A)成分は、前記(A−1)単位1〜59.9モル%、前記(A−2)単位35モル%を超えて85モル%以下、前記(A−3)単位0.1〜15モル%、(A−4)単位1〜15モル%および下記式(8)で表される繰返し単位((A−5)単位)0.1〜20モル%を含有するアクリル共重合体であって、該アクリル共重合体の全繰り返し単位100モル%中、(A−1)〜(A−5)単位の合計が少なくとも70モル%である前項1記載のコーティング用アクリル樹脂組成物、
Figure 0005242929
(式中R14は、水素原子または炭素数1〜14のアルキル基またはアルコキシ基である。)
.(A)成分および(B)成分の合計100重量部に対して、(D)成分として0.1〜10重量部のシランカップリング剤および/またはシランカップリング剤の加水分解縮合物を含有する前項1記載のコーティング用アクリル樹脂組成物、
.前項1〜のいずれか1項に記載のアクリル樹脂組成物を溶媒に溶解したアクリル樹脂組成物濃度が1〜50重量%であるコーティング用アクリル樹脂塗料、
. プラスチック基材表面の少なくとも片面に、第1層として、
(A)1〜60モル%の下記式(1)で表される繰り返し単位((A−1)単位)、
Figure 0005242929
(式中Rはメチル基またはエチル基である。)
35モル%を超えて85モル%以下の下記式(2)で表される繰返し単位((A−2)単位)、
Figure 0005242929
(式中Rはシクロアルキル基であり、Xは水素原子またはメチル基である。)
0.1〜15モル%の下記式(3)で表される繰返し単位((A−3)単位)、および
Figure 0005242929
(式中Xは水素原子またはメチル基であり、Wはトリアジン系紫外線吸収性基である。)
1〜15モル%の下記式(4)で表される繰り返し単位((A−4)単位)
Figure 0005242929
(式中Rは炭素数2〜5のアルキレン基であり、Xは水素原子またはメチル基であり、Zはヒドロキシ基、アルコキシシリル基、グリシジルオキシ基、イソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基である。)
を含有するアクリル共重合体(A成分)であって、該アクリル共重合体の全繰り返し単位100モル%中、(A−1)〜(A−4)単位の合計が少なくとも70モル%であるアクリル共重合体を含有するアクリル樹脂組成物を熱硬化させてなるアクリル樹脂層が積層され、その第1層上に第2層として、
(E)コロイダルシリカ(e成分)および
(F)下記式(9)で表わされるアルコキシシランの加水分解縮合物(f成分)、
Figure 0005242929
(但し、式中R15、R16はそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基、ビニル基、またはメタクリロキシ基、アミノ基、グリシドキシ基および3,4−エポキシシクロヘキシル基からなる群より選ばれる1以上の基で置換された炭素数1〜3のアルキル基であり、R17は炭素数1〜4のアルキル基またはビニル基であり、m、nはそれぞれ0、1、2のいずれかの整数であり、m+nは0、1、2のいずれかの整数である。)
を含有し、e成分が10〜60重量%、f成分がR15 16 SiO(4−m−n)/2に換算して40〜90重量%であるオルガノシロキサン樹脂組成物の熱硬化塗膜層が積層されたプラスチック成形体、
.前記(A)成分の(A−3)単位が下記式(5)および/または下記式(6)で表される紫外線吸収性基を含有するアクリルモノマーから誘導された繰返し単位である前項記載のプラスチック成形体、
Figure 0005242929
(式中Rは炭素数2〜6のアルキレン基であり、Rは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基または炭素数1〜18のアルコキシ基を表し、R、Rは同一または互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、または炭素数1〜18のアルキル基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を表し、Rは炭素数1〜18のアルキル基を表し、Xは水素原子またはメチル基であり、Yは水素原子、OH基または炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
Figure 0005242929
(式中Rは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基または炭素数1〜18のアルコキシ基を表し、R10、R11は同一または互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、または炭素数1〜18のアルキル基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を表し、R12は炭素数1〜18のアルキル基を表し、Xは水素原子またはメチル基であり、Yは水素原子、OH基または炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
10.前記第1層の(A−4)単位が、下記式(7)で表される繰返し単位である前項記載のプラスチック成形体、
Figure 0005242929
(式中R13は炭素数2〜5のアルキレン基であり、Xは水素原子またはメチル基である。)
11.前項記載のアクリル樹脂組成物は、(A)アクリル共重合体(A成分)、(B)5.5〜50重量%の換算イソシアネート基率を有し、(A−3)単位中のヒドロキシ基1当量に対して0.8〜1.5当量となる量のイソシアネート基を有するブロック化されたポリイソシアネート化合物(B成分)、および
(C)(A)成分および(B)成分の合計100重量部に対して0.001〜0.4重量部の硬化触媒(C成分)を含有するコーティング用アクリル樹脂組成物である前項記載のプラスチック成形体、
12.前記(A)成分が、前記(A−1)単位1〜59.9モル%、前記(A−2)単位35モル%を超えて85モル%以下、前記(A−3)単位0.1〜15モル%、(A−4)単位1〜15モル%および下記式(8)で表される繰返し単位((A−5)単位)0.1〜20モル%を含有するアクリル共重合体であって、該アクリル共重合体の全繰り返し単位100モル%中、(A−1)〜(A−5)単位の合計が少なくとも70モル%であるアクリル共重合体である前項記載のプラスチック成形体、
Figure 0005242929
(式中R14は、水素原子または炭素数1〜14のアルキル基またはアルコキシ基である。)
13.前記第1層が、(A)成分および(B)成分の合計100重量部に対して、(D)成分として0.1〜10重量部のシランカップリング剤および/またはシランカップリング剤の加水分解縮合物を含有するコーティング用アクリル樹脂組成物を熱硬化させてなる塗膜層である前項記載のプラスチック成形体、
14.前記第2層が、(E)成分と(F)成分との合計100重量部に対して、(G)成分として金属酸化物(g成分)0.5〜5重量部を含むオルガノシロキサン樹脂組成物の熱硬化塗膜層である前項記載のプラスチック成形体、
15.(G)成分が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化スズおよび酸化タングステンからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属酸化物微粒子である前項14記載のプラスチック成形体、
16.プラスチック基材がポリカーボネート樹脂基材である前項記載のプラスチック成形体、
が提供される。
以下、本発明を詳細に説明する。
((A)成分のアクリル共重合体について)
前記(A)成分のアクリル共重合体は、少なくとも70モル%、好ましくは少なくとも80モル%、より好ましくは少なくとも90モル%が下記式(1)〜(4)で示される繰返し単位からなる共重合体であり、それぞれ式(1)に対応するアルキルメタクリレートモノマー、式(2)に対応するシクロアルキル基を含有するアクリレートおよび/またはメタクリレートモノマー、式(3)に対応する紫外線吸収性基を含有するアクリレートおよび/またはメタクリレートモノマーおよび式(4)に対応する官能基を有するアクリレートおよび/またはメタクリレートモノマーを共重合して得られる紫外線吸収性基を有するアクリル共重合体である。
Figure 0005242929
(式中Rはメチル基またはエチル基である。)
Figure 0005242929
(式中Rはシクロアルキル基であり、Xは水素原子またはメチル基である。)
Figure 0005242929
(式中Xは水素原子またはメチル基であり、Wは紫外線吸収性基である。)
Figure 0005242929
(式中Rは炭素数2〜5のアルキレン基であり、X3は水素原子またはメチル基であり、Zはヒドロキシ基、アルコキシシリル基、グリシジルオキシ基、イソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基である。)
前記式(1)に対応するアルキルメタクリレートとしては、メチルメタクリレートまたはエチルメタクリレートが挙げられ、単独でまたは両者を混合して使用できる。
前記式(2)に対応するシクロアルキル基を有するアクリレートまたはメタクリレートモノマーとしては、分子内に少なくとも1つのシクロアルキル基を有するアクリレートまたはメタクリレートであれば特に制限はない。シクロアルキル基の炭素数は5〜12であることが好ましい。
具体例として、シクロヘキシルアクリレート、4−メチルシクロヘキシルアクリレート、2,4−ジメチルシクロヘキシルアクリレート、2,4,6−トリメチルシクロヘキシルアクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、アダマンチルアクリレート、ジシクロペンタジエニルアクリレート、シクロヘキシルメチルアクリレート、4−メチルシクロヘキシルメチルアクリレート、2,4−ジメチルシクロヘキシルメチルアクリレート、2,4,6−トリメチルシクロヘキシルメチルアクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルメチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、4−メチルシクロヘキシルメタクリレート、2,4−ジメチルシクロヘキシルメタクリレート、2,4,6−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、ジシクロペンタジエニルメタクリレート、シクロヘキシルメチルメタクリレート、4−メチルシクロヘキシルメチルメタクリレート、2,4−ジメチルシクロヘキシルメチルメタクリレート、2,4,6−トリメチルシクロヘキシルメチルメタクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルメチルメタクリレートなどの化合物が挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。なかでもシクロヘキシルメタクリレートが好ましく採用される。
前記式(3)に対応するモノマーとして、トリアジン系紫外線吸収性基を有するアクリルモノマーが好ましい。トリアジン系紫外線吸収性基とは、トリアジン系紫外線吸収剤の残基であって紫外線吸収性能を有するものである。なかでも下記式(5)または式(6)で表されるアクリルモノマーが好ましく使用される。
Figure 0005242929
(式中Rは炭素数2〜6のアルキレン基であり、Rは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基または炭素数1〜18のアルコキシ基を表し、R、Rは同一または互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、または炭素数1〜18のアルキル基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を表し、Rは炭素数1〜18のアルキル基を表し、Xは水素原子またはメチル基であり、Yは水素原子、OH基または炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
Figure 0005242929
(式中Rは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基または炭素数1〜18のアルコキシ基を表し、R10、R11は同一または互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、または炭素数1〜18のアルキル基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を表し、R12は炭素数1〜18のアルキル基を表し、Xは水素原子またはメチル基であり、Yは水素原子、OH基または炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
具体的には、2−アクリロキシエチルカルバミド酸1−[3−ヒドロキシ−4−{4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル}フェニルオキシ]−3−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−プロピル、2−メタクリロキシエチルカルバミド酸1−[3−ヒドロキシ−4−{4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル}フェニルオキシ]−3−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−プロピル、2−アクリロキシー1−[3−ヒドロキシ−4−{4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル}フェニルオキシ]−3−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−プロパン、2−メタクリロキシー1−[3−ヒドロキシ−4−{4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル}フェニルオキシ]−3−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−プロパン等が挙げられる。
前記式(4)に対応する官能基を有するアクリレートまたはメタクリレートモノマーとしては、具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート等のヒドロキシ基を有するモノマー、3−トリメトキシシリルプロピルアクリレート、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート等のアルコキシシリル基を有するモノマー、3−グリシドキシプロピルアクリレート、3−グリシドキシプロピルメタクリレート等のグリシジルオキシ基を有するモノマーが挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。なかでもヒドロキシ基を有するモノマーが好ましく、特に2−ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。
前記式(1)〜(4)で示される繰り返し単位の割合は、式(1)で示される繰返し単位((A−1)単位)のモル比が1〜60モル%であり、好ましくは1〜50モル%、より好ましくは5〜40モル%である。式(2)で示される繰返し単位((A−2)単位)のモル比が35モル%を超えて85モル%以下、好ましくは35モル%を超えて75モル%以下である。式(3)で示される繰返し単位((A−3)単位)のモル比が0.1〜15モル%、好ましくは0.1〜10モル%である。式(4)で示される繰返し単位((A−4)単位)のモル比は1〜15モル%、好ましくは5〜15モル%である。
式(1)で示される繰返し単位の割合が1モル%より少ないと第1層の可撓性が低下し、オルガノシロキサン樹脂硬化層にクラックが生じやすくなったり、基材や第2層との密着性が低下する。さらに後述するアクリル共重合体を溶解させる溶媒に対する溶解性が低下するため好ましくない。式(2)で示される繰返し単位の割合が、35モル%以下であるとトリアジン系紫外線吸収剤の分散性が低下し塗膜が白化しやすくなり、85モル%を超えると基材や第2層との密着性が低下したり、アクリル共重合体の溶解性が低下するため好ましくない。式(3)で示される繰返し単位の割合が0.1モル%より少ないと十分な耐候性が得られず、15モル%を超えると、塗膜層にクラックが発生しやすくなったり、基材や第2層との密着性が低下するため好ましくない。また式(4)で示される繰返し単位の割合が1モル%より少ないと架橋密度が不足するため耐久性が乏しくなり、15モル%を超えると、基材や第2層との密着性が低下するため好ましくない。
本発明におけるアクリル共重合体(A成分)は、さらに、下記式(A−5)で表される繰返し単位を含有することが好ましい。(A−5)単位を含有することで耐候性が向上する。
Figure 0005242929
式中、R14は、水素原子、炭素数1〜14のアルキル基またはアルコキシ基を表す。
14は、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基またはアルコキシ基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
(A−5)単位の割合は、アクリル共重合体の全繰り返し単位100モル%中、好ましくは0.1〜20モル%、より好ましくは1〜20モル%である。20モル%を超えると、基材や第2層との密着性が低下し易くなる。
アクリル共重合体(A成分)において、前記(A−1)単位1〜59.9モル%、前記(A−2)単位35モル%を超えて85モル%以下、前記(A−3)単位0.1〜15モル%、前記(A−4)単位1〜15モル%および前記式(8)で表される繰返し単位((A−5)単位)0.1〜20モル%を含有し、アクリル共重合体の全繰り返し単位100モル%中、(A−1)〜(A−5)単位の合計が少なくとも70モル%であることが好ましい。
(A−5)単位を含むことで、ラジカル捕捉能を付与することができ、耐候性をさらに向上することができる。アクリル共重合体の全繰り返し単位100モル%中、(A−1)単位〜(A−5)単位の合計は少なくとも70モル%、より好ましくは少なくとも80モル%、さらに好ましくは少なくとも90モル%である。
(A−5)単位は、対応するアクリレートおよび/またはメタクリレートモノマーを共重合することで導入できる。対応するモノマーとしては、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6、6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−エチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−t−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−シクロヘキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−(4−メチルシクロヘキシル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−t−オクチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−デシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−ドデシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−エトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−プロポキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−t−ブトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−(4−メチルシクロヘキシロキシ)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−t−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−デシロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1−ドデシロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレートなどが挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用してよい。
上記(A−1)〜(A−4)単位、所望により(A−5)単位を含む繰り返し単位からなる官能基を有するアクリル共重合体((A)成分)は、さらに機能性付与等のため他の繰返し単位を含んでいてもよい。他の繰返し単位は(A)成分のアクリル共重合体100モル%に対して30モル%以下の範囲、好ましくは20モル%以下の範囲、特に好ましくは10モル%以下の範囲である。
他の繰返し単位はアクリレートまたはメタクリレートモノマーと共重合可能なビニル系モノマーを共重合することで導入できる。他のビニル系モノマーとしては、接着性あるいは耐候性等の耐久性の面で、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2―エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−アクリロキシエチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−アクリロキシエトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−アクリロキシプロピルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−アクリロキシプロポキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−アクリロキシエチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−アクリロキシエチル−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−アクリロキシエチル−5’−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−(アクリロキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−(アクリロキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロイルオキシエチル)ベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシプロピルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシプロポキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−メタクリロキシエチル−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−メタクリロキシエチル−5’−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−(メタクリロキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエチル)ベンゾフェノン等が挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。また、アクリル樹脂は単一組成のものを単独で使用する必要はなく、アクリル樹脂を2種以上混合して使用してもよい。
(A)成分のアクリル共重合体の分子量は、重量平均分子量で2万以上が好ましく、5万以上がより好ましい。また、重量平均分子量で1000万以下のものが好ましく使用される。よって、アクリル共重合体の重量平均分子量は、好ましくは5万〜1000万、より好ましくは5万〜100万、さらに好ましくは5万〜50万である。かかる分子量範囲のアクリル共重合体は、第1層としての密着性や強度などの性能が十分に発揮され好ましい。
((B)成分のブロック化されたポリイソシアネート化合物について)
前記(B)成分のブロック化されたポリイソシアネート化合物とは、イソシアネート基にブロック化剤を反応させ遊離のイソシアネート基をほとんどなくして、反応性を持たなくしたもので、加熱によりブロック化剤が分離してイソシアネート基となり、反応性を持つに至る化合物を意味する。
(B)成分として、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム等のオキシム類、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等の活性メチレン化合物、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール等のアルコール類、フェノール、クレゾール、エチルフェノール等のフェノール類に代表されるブロック化剤を付加させて得られるブロックイソシアネート化合物が挙げられる。
ブロック化剤を付加させるポリイソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート、ポリイソシアネートと多価アルコールとの付加物、ポリイソシアネート同士の環化重合体、イソシアネート・ビュレット体等が挙げられる。ポリイソシアネートとしてはトリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。
(B)成分は、熱硬化反応時に初めてイソシアネート基が生成するのでコーティング組成物は、貯蔵安定性に優れ、またイソシアネート基がコーティング組成物中や空気中の水分、溶媒コーティング組成物に使用されるアルコール溶媒との副反応に消費されることが少なく、塗工環境の影響を受け難く安定した物性を有する硬化被膜を形成することができる。このブロックイソシアネートは単独もしくは2種類以上を混合して使用できる。
ブロックイソシアネートのなかでも、ブロック化された脂肪族および/または脂環族ポリイソシアネート化合物が特に耐候性に優れ好ましい。ブロック化された脂肪族および/または脂環族ポリイソシアネート化合物としては、(i)2〜4個のヒドロキシ基を有するヒドロキシ化合物と脂肪族および/または脂環式ジイソシアネート化合物を反応させることにより得られる、アダクト型ポリイソシアネート化合物をブロック剤でブロックしたアダクト型ポリイソシアネート化合物、(ii)脂肪族および/または脂環式ジイソシアネート化合物から誘導された、イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物をブロック剤でブロックしたイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物が好ましい。その中でも、脂肪族ジイソシアネート化合物および/または脂環族ジイソシアネート化合物の炭素数が4〜20のものが好ましく、炭素数4〜15のものがより好ましい。イソシアネート化合物の炭素数をかかる範囲にすることで、耐久性に優れた塗膜が形成される。
換算イソシアネート基率とは、(B)成分を加熱しブロック化剤を分離した場合に、生成するイソシアネート基の重量を(B)成分の重量に対する百分率で表した値である。
(B)成分は、5.5〜50重量%、好ましくは6.0〜40重量%、最も好ましくは6.5〜30重量%の換算イソシアネート基率を有する。イソシアネート基率が5.5重量%未満であるとアクリル樹脂に対するブロック化されたポリイソシアネート化合物の配合量が多くなり、基材との密着性が乏しくなる。またイソシアネート基率が50重量%より多くなると塗膜層の可撓性が低下し、第2層を熱硬化する際に塗膜層にクラックが生じ、環境の変化に対する耐久性が損なわれる。イソシアネート基率(重量%)は、イソシアネート基を既知量のアミンで尿素化し、過剰のアミンを酸で滴定する方法により求められる。
(B)成分の含有量は、アクリル共重合体(A)中のヒドロキシ基1当量に対してイソシアネート基が0.8〜1.5当量、好ましくは0.8〜1.3当量、最も好ましくは0.9〜1.2当量となる量である。
(A)成分中のヒドロキシ基と(B)成分中のイソシアネート基とがウレタン結合による架橋を形成することにより、第1層は、基材および第2層との良好な密着性を保つことができる。また、紫外線、水、酸素等による架橋密度の低下が起こり難く、長期にわたって密着性を維持できる。また高温環境下での耐久性を維持できる。さらに耐候性にも優れる。
イソシアネート基が0.8当量より少ないと架橋が不十分となるため高温環境での耐久性が不十分になり、また、未反応のヒドロキシ基が水分子と高い親和性を示すために吸湿し、耐候性や耐熱水性も悪化する。イソシアネート基が1.5当量よりも多いと第1層はアロファネート結合を伴った非常に架橋密度が高く、硬くてもろい層となり、環境の変化に対する追従性が悪くなり、環境の変化に対する密着性に劣る。
((C)成分の硬化触媒について)
本発明において、(B)成分のブロック化されたポリイソシアネート化合物のブロック化剤の解離および再生したイソシアネート基と(A)成分のアクリル共重合体のヒドロキシ基とのウレタン化反応を促進させるため、(C)成分の硬化触媒が使用される。
硬化触媒としては、有機錫化合物、4級アンモニウム塩化合物、3級アミン化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物等が挙げられ、これらの化合物は単独または2種以上を混合して使用される。これらの硬化触媒のなかでも有機錫化合物が好ましく使用される。
かかる有機錫系化合物の代表的なものとしては、モノブチルチントリス(2−エチルヘキサノエート)、ジメチルチンジネオデカノエート、ジブチルチンビス(2−エチルヘキサノエート)、モノブチルチントリス(n−ブチルプロピオネート)、ジブチルチンジラウレート、モノヘキシルチントリオクトエート、ジヘキシルチンジオクトエート、トリヘキシルチンモノオクトエート、モノヘキシルチントリス(メチルマレエート)、ジオクチルチンジアセテート、トリオクチルチンモノアセテート、ジオクチルチンビス(メチルマレエート)、モノオクチルチントリス(メチルプロピオネート)、ジオクチルチンジプロピオネート)、トリオクチルチンモノプロピオネート、モノオクチルチントリオクトエート、ジオクチルチンジオクトエート、トリオクチルチンモノオクトエート等が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して使用される。
4級アンモニウム塩化合物の代表例としては、例えば2−ヒドロキシエチル・トリn−ブチルアンモニウム・2,2―ジメチルプロピオネート、2−ヒドロキシエチル・トリn−ブチルアンモニウム・2,2−ジメチルブタノエート、2−ヒドロキシプロピル・トリn−ブチルアンモニウム・2,2−ジメチルプロピオネート、2−ヒドロキシプロピル・トリn−ブチルアンモニウム・2,2−ジメチルブタノエート等が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して使用される。
3級アミン類としては、ジメチルエタノールアミン、トリエチレンジアミン等が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して使用される。
有機チタン化合物の代表的なものとしては、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラオクトキシチタン等のアルコキシチタン化合物、チタンアセチルアセトナート系、チタンエチルアセトアセテート系などのチタンキレート化合物等が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して使用される。
有機ジルコニウム化合物の代表的なものとしては、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラオクトキシジルコニウム等のアルコキシジルコニウム化合物、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネートなどのジルコニウムキレート化合物等が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して使用される。
また、これらの4級アンモニウム塩化合物、3級アミン化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物は、単独または2種以上を混合して、上記有機錫系化合物と併用して使用することが好ましい。
(C)成分の硬化触媒は、(A)成分および(B)成分の合計100重量部に対して0.001〜0.4重量部、好ましくは0.002〜0.3重量部の範囲で使用される。硬化触媒量が0.001重量部未満であると架橋反応を促進する作用が得られず、0.4重量部を超えると、アクリル樹脂層と第2層との密着性が低下し好ましくない。
((D)成分のシランカップリング剤および/またはシランカップリング剤の加水分解縮合物について)
本発明のアクリル樹脂組成物に、さらに(D)成分としてシランカップリング剤および/またはシランカップリング剤の加水分解縮合物を含有させることができる。かかるシランカップリング剤および/またはシランカップリング剤の加水分解縮合物を含有させることで、透明プラスチック基材と第1層および第1層と第2層の間の密着性が更に向上し、長期にわたりその密着性は持続されるため、好ましく使用される。
かかるシランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリメトシシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン・塩酸塩、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、オクタデシルジメチル〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、オクタデシルジメチル〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
シランカップリング剤および/またはシランカップリング剤の加水分解縮合物は、単独もしくは2種以上を併用してもよい。含有量は、(A)成分および(B)成分の合計100重量部に対して好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.2〜8重量部である。
(アクリル樹脂組成物に使用できる他の成分について)
本発明のアクリル樹脂組成物に、紫外線吸収剤を添加してもよい。かかる紫外線吸収剤としては、例えば2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2‘−エチル)ヘキシル)オキシプロピル]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチツオキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン類、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、2−(5′−メチル−2′−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3′−t−ブチル−5′−メチル−2′−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3′,5′−ジ−t−ブチル−2′−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール類、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート類、フェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等のサリシレート類、ジエチル−p−メトキシベンジリデンマロネート、ビス(2−エチルヘキシル)ベンジリデンマロネート等のベンジリデンマロネート類、2−(2’−ヒドロキシ−5−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体、2−(2’―ヒドロキシ−5−アクリロキシエチルフェニル)―2H―ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体、酸化チタン酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化タングステン、硫化亜鉛、硫化カドミウムなどの金属酸化物微粒子類が挙げられる。かかる紫外線吸収剤は、(A)成分および(B)成分の合計100重量部に対して好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは0.2〜20重量部用いられる。
本発明において、アクリル樹脂組成物に、さらに光安定剤を添加することができる。光安定剤としては、例えば1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、ジデカン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−オクチルオキシ−4−ピペリジニル)エステル、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−2−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)サクシネ−ト、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−オクタノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ジフェニルメタン−p,p′−ジカ−バメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ベンゼン−1,3−ジスルホネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)フェニルホスファイト等のヒンダードアミン類、ニッケルビス(オクチルフェニルサルファイド、ニッケルコンプレクス−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルリン酸モノエチラート、ニッケルジブチルジチオカ−バメート等のニッケル錯体が挙げられる。これらの光安定剤は単独もしくは2種以上を併用してもよい。含有量は、(A)成分および(B)成分の合計100重量部に対して好ましくは0.01〜50重量部、より好ましくは0.05〜10重量部である。
(アクリル樹脂層の膜厚について)
本発明のコーティング用のアクリル樹脂組成物を熱硬化させてなるアクリル樹脂層の膜厚は1〜15μmが好ましく、2〜10μmがより好ましい。
膜厚が1μm未満であると、紫外線の透過率が高くなり、プラスチック基材の黄変が生じたり密着性を低下させるため、耐候性が乏しくなる。膜厚が15μmを超えると、内部応力の増大のため、また熱硬化時に架橋反応が十分進行しないため、耐久性に乏しい塗膜層になる。また、コーティング用のアクリル樹脂組成物を溶解するために使用する溶剤の揮発が不十分となり、溶剤が塗膜中に残存し、耐熱水性、耐候性を損ねることになる。
(アクリル樹脂層の形成方法について)
本発明において、アクリル樹脂層(第1層)を形成する方法としては、本発明のアクリル樹脂組成物を基材であるプラスチックと反応せず、且つ溶解しない揮発性の溶媒に溶解して、このコーティング用アクリル樹脂塗料をプラスチック基材表面に塗布し、次いで該溶媒を加熱等により除去し、さらに加熱してヒドロキシ基と加熱により生成するイソシアネート基とを反応させ架橋させることにより形成される。
かかる溶媒としてはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸エトキシエチル等のエステル類、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−ブトキシエタノール等のアルコール類、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ガソリン、軽油、灯油等の炭化水素類、アセトニトリル、ニトロメタン、水等が挙げられ、これらは単独で使用してもよいし2種以上を混合して使用してもよい。
前記コーティング用アクリル樹脂塗料において、アクリル樹脂組成物(固型分)の濃度は1〜50重量%が好ましく、3〜30重量%がより好ましい。
前記コーティング用アクリル樹脂塗料のプラスチック基材への塗布はバーコート法、ディップコート法、フローコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ローラーコート法等の方法を、塗装される基材の形状に応じて適宜選択することができる。かかるアクリル樹脂塗料が塗布された基材は、通常常温から該基材の熱変形温度以下の温度下で溶媒の乾燥、除去が行われ、加熱硬化する。
かかる加熱硬化は基材の耐熱性に問題がない範囲で高い温度で行う方がより早く硬化を完了することができ好ましい。なお、常温では、熱硬化が完全には進行せず、第1層に求められる十分な架橋密度を持ったコート層にならない。かかる熱硬化の過程で、熱硬化型アクリル樹脂組成物中の架橋性基が反応してコート層の架橋密度が上がり、密着性、耐熱水性、高温環境下での耐久性に優れたコート層となる。
熱硬化は好ましくは80〜160℃の範囲、より好ましくは100〜140℃の範囲、最も好ましくは110〜130℃の範囲で、好ましくは10分間〜3時間、より好ましくは20分間〜2時間間加熱して架橋性基を架橋させ、第1層として上記アクリル樹脂層を積層した透明プラスチック基材が得られる。熱硬化時間が10分より短いと架橋反応が十分に進行せず、高温環境下での耐久性、耐候性に乏しい塗膜層になることがある。また、塗膜の性能上熱硬化時間は3時間以内で十分である。
前記アクリル樹脂組成物を熱硬化してアクリル樹脂層(第1層)を形成することにより、第2層と透明プラスチック基材との密着性が良好となり、耐摩耗性および耐候性に優れた透明プラスチック成形体を得ることができる。
(第2層;オルガノシロキサン樹脂組成物の熱硬化塗膜層について)
本発明において、上記第1層の上に積層される第2層は、コロイダルシリカ(e成分)およびアルコキシシランの加水分解縮合物(f成分)を含有するオルガノシロキサン樹脂組成物を熱硬化してなる塗膜層である。
第2層は、好適には上記コロイダルシリカとアルコキシシランの加水分解縮合物とからなるオルガノシロキサン樹脂固形分、酸、硬化触媒および溶媒からなるコーティング用塗料を用いて形成される。
(e成分のコロイダルシリカについて)
e成分のコロイダルシリカとして、好ましくは平均粒子径5〜200nm、より好ましくは平均粒子径5〜40nmのシリカ微粒子が、水または有機溶媒中にコロイド状に分散されたものである。
かかるコロイダルシリカとして、具体的には、酸性水溶液中で分散させた商品として日産化学工業(株)のスノーテックスO、触媒化成工業(株)のカタロイドSN30、塩基性水溶液中で分散させた商品として日産化学工業(株)のスノーテックス30、スノーテックス40、触媒化成工業(株)のカタロイドS30、カタロイドS40、有機溶剤に分散させた商品として日産化学工業(株)のMA−ST、IPA−ST、NBA−ST、IBA−ST、EG−ST、XBA−ST、NPC−ST、DMAC−ST等が挙げられる。
該コロイダルシリカは、水分散型および有機溶媒分散型のどちらでも使用できるが、水分散型のものを用いるのが好ましい。水分散型のコロイダルシリカの場合、シリカ微粒子の表面に多数の水酸基が存在し、これがアルコキシシラン加水分解縮合物と強固に結合するため、より耐摩耗性に優れたプラスチック成形体が得られるものと考えられる。また、該水分散型コロイダルシリカは酸性水溶液分散型と塩基性水溶液分散型のどちらでも使用できるが硬化触媒の選択の多様性、トリアルコキシシランの適切な加水分解、縮合状態の実現の観点から酸性水溶液分散型コロイダルシリカが好ましく使用される。
(f成分のアルコキシシランの加水分解縮合物について)
本発明のf成分であるアルコキシシランの加水分解縮合物は、下記式(9)のアルコキシシランを加水分解縮合反応させたものである。
Figure 0005242929
式中R15、R16は各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基、ビニル基、またはメタクリロキシ基、アミノ基、グリシドキシ基および3,4−エポキシシクロヘキシル基からなる群より選ばれる1以上の基で置換された炭素数1〜3のアルキル基である。R15、R16は各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
17は炭素数1〜4のアルキル基、またはビニル基である。R17は炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、特にメチル基またはエチル基が好ましい。m、nは各々独立に、0、1、2のいずれかの整数であり、m+nは0、1、2のいずれかの整数である。m、nはそれぞれ0または1が好ましい。また、m+nは1が好ましい。
アルコキシシランとしては、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられ、なかでもアルキルトリアルコキシシランが好ましく、特にメチルトリメトキシシランおよびメチルトリエトキシシランが好ましい。これらは単独もしくは混合して使用できる。さらに用途に応じて硬化膜に可撓性を付与するために、ジメチルジメトキシシランなどの二官能性アルコキシシランを混合して使用することも好ましく行われる。
また、特に耐摩耗性に優れたコート層を形成するコーティング用組成物を得るためには、アルコキシシラン中の70〜100重量%がメチルトリアルコキシシランであることが好ましい。
f成分は、該アルコキシシランの一部または全部が加水分解したものおよび該加水分解物の一部または全部が縮合反応した縮合物等の混合物であり、これらはゾルゲル反応をさせることにより得られるものである。
(e成分およびf成分を含有するオルガノシロキサン樹脂組成物について)
e成分およびf成分を含有するオルガノシロキサン樹脂組成物は、以下のプロセスを経て調製することが、沈殿の生成がなく、より耐摩耗性に優れるコート層を得ることができ好ましく採用される。
ここで、アルコキシシランの加水分解反応に必要な水は水分散型のコロイダルシリカ分散液を使用した場合はこの分散液から供給され、必要であればさらに水を加えてもよい。アルコキシシラン1当量に対して通常1〜10当量、好ましくは1.5〜7当量の水が用いられる。
アルコキシシランの加水分解縮合反応は、酸性条件下で行う必要があり、かかる条件で加水分解を行なうために一般的には加水分解剤として酸が使用される。かかる酸は、予めアルコキシシランまたはコロイダルシリカ分散液に添加するか、両者を混合後に添加してもよい。また、該添加は1回或いは2回以上に分けることもできる。かかる酸としては塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、亜硝酸、過塩素酸、スルファミン酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、乳酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸が挙げられ、pHのコントロールの容易さの観点からギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸等の有機カルボン酸が好ましく、酢酸が特に好ましい。
かかる酸として無機酸を使用する場合は通常0.0001〜2規定、好ましくは0.001〜0.1規定の濃度で使用し、有機酸を使用する場合はアルコキシシラン100重量部に対して通常0.1〜50重量部、好ましくは1〜30重量部の範囲で使用される。
加水分解縮合反応の条件は使用するアルコキシシランの種類、系中に共存するコロイダルシリカの種類、量によって変化するので一概には云えないが、通常、系の温度が20〜70℃、反応時間が1時間〜数日間である。
本発明において、オルガノシロキサン樹脂組成物中のe成分およびf成分の混合割合はオルガノシロキサン樹脂組成物の安定性、得られる硬化膜の透明性、耐摩耗性、耐擦傷性、密着性及びクラック発生の有無等の点から決められ、e成分とf成分との合計100重量%としたとき、この2成分の好ましい混合割合はe成分が10〜60重量%、f成分がR15 16 SiO(4−m−n)/2に換算して40〜90重量%であり、より好ましくはe成分が10〜40重量%、f成分がR15 16 SiO(4−m−n)/2に換算して60〜90重量%である。
本発明で使用されるオルガノシロキサン樹脂組成物には、さらに硬化触媒を含有することが好ましい。かかる硬化触媒としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、酒石酸、コハク酸等の脂肪族カルボン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、コリン塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩が挙げられ、具体的には酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸コリン、酢酸ベンジルトリメチルアンモニウムが好ましく使用される。硬化触媒はe成分とf成分との合計100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部の範囲で使用される。
オルガノシロキサン樹脂組成物は、(G)成分として金属酸化物を含有することが好ましい。(G)成分により耐候性を高めることができる。(G)成分として酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化スズおよび酸化タングステンからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属酸化物が、光による分解が少なく好ましく使用される。特に酸化チタンが好ましく使用される。(G)成分の含有量は、E成分とF成分との合計100重量部に対し好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.2〜5.0重量部である。
(オルガノシロキサン樹脂組成物の熱硬化塗膜層の形成方法について)
前記オルガノシロキサン樹脂組成物の熱硬化塗膜層(第2層)を形成する方法としては、e成分、f成分および所望によりg成分を含有するオルガノシロキサン樹脂組成物を溶媒に溶解して、このコーティング用オルガノシロキサン樹脂塗料を、透明プラスチック基材上に形成された第1層上に塗布し、次いで加熱硬化することにより形成される。
かかる溶媒としては、前記オルガノシロキサン樹脂組成物が安定に溶解することが必要であり、そのためには少なくとも20重量%以上、好ましくは50重量%以上がアルコールである溶媒を用いることが望ましい。
かかるアルコールとしては、具体的にはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−エトキシエタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−ブトキシエタノール等が挙げられ、なかでも炭素数1〜4の低沸点アルコールが好ましく、特に溶解性、安定性及び塗工性の点で2−プロパノールが好ましい。
該溶媒中には水分散型コロイダルシリカ中の水で該加水分解反応に関与しない水分、アルコキシシランの加水分解に伴って発生する低級アルコール、有機溶媒分散型のコロイダルシリカを使用した場合にはその分散媒の有機溶媒、コーティング用オルガノシロキサン樹脂塗料のpH調節のために添加される酸も含まれる。
pH調節のために使用される酸としては塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、亜硝酸、過塩素酸、スルファミン酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、乳酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸が挙げられ、pHのコントロールの容易さの観点からギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸等の有機カルボン酸が好ましい。
その他使用できる溶媒としては、水/アルコールと混和することが必要であり、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸エトキシエチル等のエステル類が挙げられる。
溶媒の使用量は、e成分とf成分との合計100重量部に対して、好ましくは50〜1900重量部、より好ましくは150〜900重量部である。固形分の濃度は好ましくは5〜70重量%、より好ましくは7〜40重量%である。
前記コーティング用オルガノシロキサン樹脂塗料は、酸及び硬化触媒の含有量を調節することによりpHを好ましくは3.0〜6.0、より好ましくは4.0〜5.5に調製することが望ましい。この範囲でpHを調製することにより、常温でのオルガノシロキサン樹脂塗料のゲル化を防止し、保存安定性を増すことができる。該オルガノシロキサン樹脂塗料は、通常数時間から数日間更に熟成させることにより安定な塗料になる。
前記オルガノシロキサン樹脂組成物の熱硬化塗膜層(第2層)の形成は、第1層の形成に引き続き連続して行うことが好ましい。
前記コーティング用オルガノシロキサン樹脂塗料を塗布するコート方法としては、バーコート法、ディップコート法、フローコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ローラーコート法等の方法を、塗装される基材の形状に応じて適宜選択することができる。かかるオルガノシロキサン樹脂組成物が塗布された基材は、通常常温から該基材の熱変形温度以下の温度下で溶媒を乾燥、除去した後、加熱硬化する。熱硬化は基材の耐熱性に問題がない範囲で高い温度で行う方がより早く硬化を完了することができ好ましい。なお、常温では、熱硬化が進まず、硬化被膜を得ることができない。これは、コーティング用オルガノシロキサン樹脂塗料中のオルガノシロキサン樹脂組成物が部分的に縮合したものであることを意味する。かかる熱硬化の過程で、残留するSi−OHが縮合反応を起こしてSi−O−Si結合を形成し、耐摩耗性に優れたコート層となる。
熱硬化温度は、好ましくは50〜200℃、より好ましくは80〜160℃、さらに好ましくは100〜140℃である。熱硬化時間は、好ましくは10分間〜4時間、より好ましくは20分間〜3時間、さらに好ましくは30分間〜2時間である。
(オルガノシロキサン樹脂組成物の熱硬化塗膜層の膜厚について)
オルガノシロキサン樹脂組成物の熱硬化塗膜層(第2層)の厚みは、好ましくは2〜10μm、より好ましくは3〜8μmである。塗膜層の厚みがかかる範囲であると、熱硬化時に発生する応力のために塗膜層にクラックが発生したり、塗膜層とアクリル樹脂層(第1層)との密着性が低下したりすることがなく、本発明の目的とする十分な耐摩耗性を有する塗膜層が得られることとなる。
(第1層および第2層に添加できる成分について)
本発明において、前記第1層および前記第2層のコーティング用組成物には塗工性並びに得られる塗膜の平滑性を向上する目的で公知のレベリング剤を配合することができる。
かかるレベリング剤としては、東レ・ダウコーニング(株)のシリコーン化合物SH200−100cs、SH28PA、SH29PA、SH30PA、ST83PA、ST80PA、ST97PA、ST86PA、SH21PA、信越化学工業(株)のシリコーン化合物KP321、KP322、KP323、KP324、KP326、KP340、KP341、大日本インキ化学工業(株)のフッ素系界面活性剤F−179、F−812A、F−815等が挙げられる。これらのレベリング剤は単独もしくは2種以上を併用してもよく、塗膜樹脂100重量部に対して、好ましくは0.0001〜2.0重量部、より好ましくは0.0005〜1.0重量部用いられる。
本発明の目的を損なわない範囲で、前記第1層および前記第2層のコーティング用組成物に染料、顔料、フィラーなどを添加してもよい。また、可撓性を向上する目的でアクリル樹脂を添加することもできる。
(プラスチック基材について)
本発明で用いられる基材とは、具体的にはポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレート)等のポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホンなどが挙げられる。これらの樹脂は単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
第1層との接着性および優れた耐摩耗性を有する基材としての有用性等によりポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂が好ましく、特にポリカーボネート樹脂が好ましい。
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、一例として二価フェノールとカーボネート前駆体とを界面重縮合法または溶融法等で反応させて得られるポリカーボネート樹脂である。二価フェノールの代表的な例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられ、なかでもビスフェノールAが好ましい。これらの二価フェノールは単独または2種以上を混合して使用できる。
ポリカーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重縮合法または溶融法によって反応させてポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防止剤等を使用してもよい。またポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよく、また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
ホスゲンを使用する界面重縮合法は、酸結合剤及び有機溶媒の存在下で反応させる。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物又はピリジン等のアミン化合物が用いられ、溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミン又は第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることもできる。反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は数分〜5時間である。
また、ジフェニルカーボネートを用いる溶融法は、不活性ガス雰囲気下、所定割合の二価フェノール成分とジフェニルカーボネートとを加熱しながら攪拌して、生成するアルコール又はフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコール又はフェノール類の沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコール又はフェノール類を留出させながら完結させる。また、反応を促進するために通常のエステル交換反応用触媒を使用することもできる。
ポリカーボネート樹脂の分子量は、粘度平均分子量(M)で10,000〜50,000が好ましく、15,000〜35,000がより好ましい。かかる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂は、十分な強度が得られ、また、成形時の溶融流動性も良好であり好ましい。本発明でいう粘度平均分子量は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
かかるポリカーボネート樹脂には、必要に応じて亜燐酸エステル、燐酸エステル、ホスホン酸エステル等の安定剤、テトラブロムビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールAの低分子量ポリカーボネート、デカブロモジフェノール等の難燃剤、着色剤、滑剤、上述したポリエステル樹脂やABS等の他の樹脂等を添加することができる。
(プラスチック成形体について)
本発明の表面を保護されたプラスチック成形体は、特定構造の紫外線吸収性基をアクリル樹脂側鎖に導入したアクリル樹脂組成物を熱硬化させてなるアクリル樹脂層(第1層)、第1層上にコロイダルシリカおよびアルコキシシランの加水分解縮合物を含有するオルガノシロキサン樹脂組成物を熱硬化してなる塗膜層(第2層)を有することにより、プラスチック基材に優れた耐候性、耐久性、耐摩耗性、耐熱水性付与でき、屋外で長期にわたり使用できうる成形体となる。
かかるプラスチック成形体は、航空機、車輛、自動車等の窓ガラス、サンルーフ、ピラー、建設機械の窓ガラス、ビル、家、温室などの窓ガラス、ガレージ、アーケードの屋根、前照灯レンズ、光学用のレンズ、ミラー、眼鏡、ゴーグル、遮音壁、信号機灯のレンズ、カーブミラー、バイクの風防、銘板、その他各種シート、フィルム等に好適に使用することができる。
本発明のコーティング用アクリル樹脂組成物は、プラスチック基材に優れた耐候性、耐摩耗性、密着性、耐熱水性等を付与し、アクリル樹脂組成物の加熱硬化時の紫外線吸収剤の揮発の抑制や第2層を形成する際のオルガノシロキサン樹脂組成物への第1層からの紫外線吸収剤の溶出の抑制に優れ工程汚染を防止でき、リコート性、貯蔵安定性にも優れる。また該樹脂組成物の熱硬化塗膜層を積層し、ついで特定組成のオルガノシロキサン樹脂組成物の熱硬化塗膜層を積層したプラスチック成形板は、外観、耐摩耗性、密着性、耐熱水性が良好で、高いレベルの耐候性を有し、耐久性にも優れ、殊に両面を保護されたプラスチック成形体は自動車用窓ガラスやサンルーフに好適に使用され、その奏する工業的効果は格別である。
以下、実施例により本発明を詳述するが本発明はもとよりこれに限定されるものではない。なお、得られた、アクリル樹脂層からの紫外線吸収剤の溶出性およびプラスチック成形体(積層体)の評価は以下の方法によって行った。また、実施例中の部および%は重量部および重量%を意味する。
(1)紫外線吸収剤の溶出性:5mm厚、10cm角のポリカーボネート樹脂(以下、PC樹脂と略称する)製シートにアクリル樹脂組成物を乾燥膜厚が4μmになるよう塗布し、130℃で1時間熱硬化させたものを、メタノール:2−プロパノール:1−ブタノール=16:50:34(重量比)の混合溶液350g中に1分間浸漬後取り出した。この操作を30回繰返した後、混合溶液の吸収スペクトルを測定し300nm近傍の極大波長における吸光度を求めることで評価した。測定は(株)日立製作所製分光光度計U−3100を用い、ブランクとしてシート浸漬前の混合溶液を用いた。
(2)外観評価:目視にて試験片の両面コート層の外観(異物、白化の有無)、ひび割れ(クラック)の有無を確認した。
(3)密着性:両面コート層の1面のコート層にカッターナイフで1mm間隔の100個の碁盤目を作りニチバン製粘着テープ(商品名“セロテープ”(登録商標))を圧着し、垂直に強く引き剥がす操作を3回繰り返した後、基材上に残った碁盤目の数で評価した。
(4)耐熱水性:試験片を沸騰水中に3時間浸漬した後のコート層の密着性を評価した。
(5)耐摩耗性:JIS K6735に従って、両面コート層の1面で、Calibrase社製CS−10F(TYPE IV)の摩耗輪を用い、荷重500gで500回転のテーバー摩耗試験を行い、テーバー摩耗試験後のヘーズとテーバー摩耗試験前のヘーズとの差△Hを測定して評価した。
(6)耐侯性:試験片の一面を紫外線照射面として、スガ試験機製(株)スーパーキセノンウェザーメーターSX−75を用いて、UV照射強度180W/m、ブラックパネル温度63℃、120分中18分降雨条件下で3000時間暴露試験し、試験片を取出して、試験後の外観および密着性を評価した。
(トリアジン系紫外線吸収剤残基を有するメタクリレートの合成)
[参考例1]
還流冷却器及び撹拌装置を備えたフラスコ中にメチルイソブチルケトン(以下MIBKと省略する)443.4部、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2′−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製チヌビン405)350.3部、2−イソシアナトエチルメタクリレート93.1部を添加混合し80℃に加熱した。ついで、ジブチルチンジラウレート0.1部を加え、同温度で30分間攪拌した。室温まで冷却後、得られた溶液を水中に移し、攪拌後、反応物をMIBKで抽出した。MIBKを留去し得られた油状物をメタノール中に滴下、攪拌し淡黄色粉末を得た。該粉末を乾燥し、下記式で示される2−メタクリロキシエチルカルバミド酸1−[3−ヒドロキシ−4−{4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル}フェニルオキシ]−3−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−プロピル(以下、MOI−405と省略する)を得た。
Figure 0005242929
(アクリル共重合体溶液(I)〜(V)の合成)
[参考例2]
還流冷却器及び撹拌装置を備え、窒素置換したフラスコ中にエチルメタクリレート(以下EMAと省略する)37.2部、シクロヘキシルメタクリレート(以下CHMAと省略する)201.9部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下HEMAと省略する)26.0部、参考例1で得られたMOI−T405 54.7部、LA−82(旭電化工業(株)製ヒンダードアミン系光安定性基含有メタクリレート;1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート)47.9部、MIBK 551.5部を添加混合した。混合物に窒素ガスを15分間通気して脱酸素した後、窒素ガス気流下にて70℃に昇温し、アゾビスイソブチロニトリル(以下AIBNと省略する)0.66部を加え、窒素ガス気流中、70℃で5時間攪拌下に反応させた。さらにAIBN0.16部を加えて80℃に昇温し3時間反応させ、室温付近まで冷却後2−ブタノール(以下2−BuOHと省略する)275.8部を加え、不揮発分濃度が30.5%のアクリル共重合体溶液(I)を得た。
[参考例3]
還流冷却器及び撹拌装置を備え、窒素置換したフラスコ中にEMA 62.1部、CHMA 168.2部、HEMA 26.0部、参考例1で得られたMOI−T405 41.4部、LA−82 47.9部、MIBK 518.4部を添加混合した。混合物に窒素ガスを15分間通気して脱酸素した後、窒素ガス気流下にて70℃に昇温し、AIBN 0.66部を加え、窒素ガス気流中、70℃で5時間攪拌下に反応させた。さらにAIBN0.16部を加えて80℃に昇温し3時間反応させ、室温付近まで冷却後2−BuOH 259.2部を加え、不揮発分濃度が30.4%のアクリル共重合体溶液(II)を得た。
[参考例4]
還流冷却器及び撹拌装置を備え、窒素置換したフラスコ中にEMA 83.6部、CHMA 168.2部、HEMA 26.0部、参考例1で得られたMOI−T405 50.3部、MIBK 492.1部を添加混合した。混合物に窒素ガスを15分間通気して脱酸素した後、窒素ガス気流下にて70℃に昇温し、AIBN 0.66部を加え、窒素ガス気流中、70℃で5時間攪拌下に反応させた。さらにAIBN0.16部を加えて80℃に昇温し3時間反応させ、室温付近まで冷却後2−BuOH 246.1部を加え、不揮発分濃度が30.5%のアクリル共重合体溶液(III)を得た。
[参考例5]
還流冷却器及び撹拌装置を備え、窒素置換したフラスコ中にEMA 48.9部、CHMA 201.9部、HEMA 26.0部、参考例1で得られたMOI−T405 53.2部、LA−82 23.9部、MIBK 530.9部を添加混合した。混合物に窒素ガスを15分間通気して脱酸素した後、窒素ガス気流下にて70℃に昇温し、AIBN 0.66部を加え、窒素ガス気流中、70℃で5時間攪拌下に反応させた。さらにAIBN0.16部を加えて80℃に昇温し3時間反応させ、室温付近まで冷却後2−BuOH 265.4部を加え、不揮発分濃度が30.4%のアクリル共重合体溶液(IV)(D)を得た。
[参考例6]
還流冷却器及び撹拌装置を備え、窒素置換したフラスコ中にEMA 205.5部、HEMA 26.0部、MIBK 347.2部を添加混合した。混合物に窒素ガスを15分間通気して脱酸素した後、窒素ガス気流下にて70℃に昇温し、AIBN 0.66部を加え、窒素ガス気流中、70℃で5時間攪拌下に反応させた。さらにAIBN0.16部を加えて80℃に昇温し3時間反応させ、室温付近まで冷却後2−BuOH 173.6部を加え、不揮発分濃度が30.6%のアクリル共重合体溶液(V)を得た。
Figure 0005242929
なお、表1中において、各記号は以下のものを示す。
(A−1単位)EMA;エチルメタクリレート
(A−2単位)CHMA;シクロヘキシルメタクリレート
(A−3単位)HEMA;2−ヒドロキシエチルメタクリレート
(A−4単位)MOI−T405; 2−メタクリロキシエチルカルバミド酸1−[3−ヒドロキシ−4−{4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル}フェニルオキシ]−3−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−プロピル
(A−5単位)LA−82;1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート(旭電化工業(株)製アデカスタブLA−82;ヒンダードアミン系光安定性基含有メタクリレート)
(その他)MIBK;メチルイソブチルケトン
2−BuOH;2−ブタノール
AIBN1;1回目に添加するアゾビスイソブチロニトリル
AIBN2;2回目に添加するアゾビスイソブチロニトリル
(アクリル樹脂組成物(i−1)〜(i−4)の調製)
[参考例7]
前記アクリル共重合体溶液(I)100部に、MIBK18.6部、2−BuOH9.3部、1−メトキシ−2−プロパノール(以下PMAと省略する)64.9部を加えて混合し、アクリル樹脂溶液(I)中のアクリル共重合体のヒドロキシ基1当量に対してイソシアネート基が1.0当量になるようにVESTANAT B1358/100(デグサ・ジャパン(株)ブロック化されたポリイソシアネート化合物)5.6部を添加し、APZ−6633(東レ・ダウコーニング(株)製シランカップリング剤加水分解縮合物のエタノール溶液;固形分5重量%)6.9部、ジブチル錫ジラウレート0.011部を加えて25℃で1時間攪拌し、アクリル樹脂組成物(i−1)を得た。得られたアクリル樹脂組成物を23℃で3ケ月間保管後、外観を目視で評価したところ、ゲル化は見られず貯蔵安定性は良好であった。
[参考例8]
前記アクリル共重合体溶液(II)100部に、MIBK18.8部、2−BuOH9.4部、PMA 65.2部を加えて混合し、アクリル樹脂溶液(II)中のアクリル共重合体のヒドロキシ基1当量に対してイソシアネート基が1.0当量になるようにVESTANAT B1358/100 6.0部を添加し、Tinuvin479(チバ・スペシャルティーケミカルズ(株)製トリアジン系紫外線吸収剤)0.53部、APZ−6633 7.0部、ジメチル錫ジネオデカノエート(以下DMDNTと省略する)0.011部を加えて25℃で1時間攪拌し、アクリル樹脂組成物(i−2)を得た。得られたアクリル樹脂組成物を23℃で3ケ月間保管後、外観を目視で評価したところ、ゲル化は見られず貯蔵安定性は良好であった。
[参考例9]
前記アクリル共重合体溶液(III)100部に、MIBK19.5部、2−BuOH9.7部、PMA 65.8部を加えて混合し、アクリル樹脂溶液(III)中のアクリル共重合体のヒドロキシ基1当量に対してイソシアネート基が1.0当量になるようにVESTANAT B1358/100 6.3部を添加し、APZ−6633 7.0部、DMDNT0.018部を加えて25℃で1時間攪拌し、アクリル樹脂組成物(i−3)を得た。得られたアクリル樹脂組成物を23℃で3ケ月間保管後、外観を目視で評価したところ、ゲル化は見られず貯蔵安定性は良好であった。
[参考例10]
前記アクリル共重合体溶液(IV)100部に、MIBK 7.8部、2−BuOH 3.9部、PMA 81.3部を加えて混合し、アクリル樹脂溶液(IV)中のアクリル共重合体のヒドロキシ基1当量に対してイソシアネート基が1.0当量になるようにVESTANAT B1358/100 5.9部を添加し、n−ブチルトリス(2−エチルヘキサノエート)錫(以下BTEHTと省略する)0.036部を加えて25℃で1時間攪拌し、アクリル樹脂組成物(i−4)を得た。得られたアクリル樹脂組成物を23℃で3ケ月間保管後、外観を目視で評価したところ、ゲル化は見られず貯蔵安定性は良好であった。
[参考例11]
前記アクリル共重合体溶液(V)100部に、MIBK 23.2部、2−BuOH 11.6部、PMA 69.5部を加えて混合し、アクリル樹脂溶液(V)中のアクリル共重合体のヒドロキシ基1当量に対してイソシアネート基が1.0当量になるようにVESTANAT B1358/100 9.0部を添加し、Tinuvin400(チバ・スペシャルティーケミカルズ(株)製トリアジン系紫外線吸収剤)4.1部、APZ−6633 7.5部、BTEHT 0.040部を加えて25℃で1時間攪拌し、アクリル樹脂組成物(i−5)を得た。得られたアクリル樹脂組成物を23℃で3ケ月間保管後、外観を目視で評価したところ、ゲル化は見られず貯蔵安定性は良好であった。
Figure 0005242929
なお、表2中において、各記号は以下のものを示す。
(B成分)
VEST;ブロック化されたポリイソシアネート化合物(デグサジャパン(株)製VESTANAT B1358/100、生成するイソシアネート基の含有割合は12.4重量%)
(C成分)
DBTDL:ジメチル錫ジラウレート
DMDNT;ジメチル錫ジネオデカノエート
BTEHT;n−ブチルトリス(2−エチルヘキサノエート)錫
(D成分)
APZ;アミノ基含有シランカップリング剤加水分解縮合物を5重量%含有するエタノール溶液(東レ・ダウコーニング(株)製APZ−6633)
(その他)
UVA−1;2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)Tinuvin479)
UVA−2;2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンの混合物約85%と1−メトキシ−2−プロパノール15%の混合物(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製チヌビン400)
MIBK;メチルイソブチルケトン
2−BuOH;2−ブタノール
PMA;1−メトキシ−2−プロパノール
(オルガノシロキサン樹脂組成物塗料の調製)
[参考例12]
水分散型コロイダルシリカ分散液(触媒化成工業(株)製 カタロイドSN−30、固形分濃度30重量%)133部に1Mの塩酸1.3部を加えよく攪拌した。この分散液を10℃まで冷却し、氷水浴で冷却下メチルトリメトキシシラン216部を滴下して加えた。メチルトリメトキシシラン滴下終了後、30℃で10時間攪拌した後、硬化触媒としてコリンメタノール溶液(コリン45重量%含有)1.1部、酢酸6.7部、希釈溶剤としてイソプロピルアルコール220部を混合し、さらに710T(テイカ(株)製IPA分散型酸化チタン分散液)3.4部を加えて、オルガノシロキサン樹脂組成物塗料(ii−1)を得た。
[参考例13]
水分散型コロイダルシリカ分散液(触媒化成工業(株)製 カタロイドSN−35、固形分濃度30重量%)133部に1Mの塩酸1部を加えよく攪拌した。この分散液を10℃まで冷却し、氷水浴で冷却下メチルトリメトキシシラン208.8部、ジメチルジメトキシシラン4.7部の混合試薬を滴下して加えた。滴下終了後、30℃で10時間攪拌した後、これに、硬化触媒としてコリンメタノール溶液(コリン45重量%含有)1.1部、酢酸6.7部、希釈溶剤としてイソプロピルアルコール210部を混合し、さらに710Tを6.7部を加えて、オルガノシロキサン樹脂組成物塗料(ii−2)を得た。
Figure 0005242929
なお、表3中において、各記号は以下のものを示す。
(E成分)
SN−30;カタロイドSN−30(触媒化成工業(株)製水分散型コロイダルシリカ分散液、固形分濃度30重量%含有)
(F成分)
MTMOS;メチルトリメトキシシラン
DMDMOS;ジメチルジメトキシシラン
(G成分)
710T;テイカ(株)製IPA分散型酸化チタン分散液(固形分42.5重量%含有)
(第1層中の紫外線吸収剤の溶出性の評価)
[実施例1]
5mm厚、10cm角のPC樹脂製シートにアクリル樹脂組成物(i−1)を乾燥膜厚が4μmになるよう塗布し、130℃で1時間熱硬化させた後、メタノール:2−プロパノール:1−ブタノール=16:50:34(重量比)の混合溶液350g中に1分間浸漬後取り出した。この操作を30回繰返した後の溶液の吸収スペクトルを測定したところ、290nmにおける吸光度は0.01であった。
[実施例2]
5mm厚、10cm角のPC樹脂製シートにアクリル樹脂組成物(i−2)を乾燥膜厚が4μmになるよう塗布し、130℃で1時間熱硬化させた後、メタノール:2−プロパノール:1−ブタノール=16:50:34(重量比)の混合溶液350g中に1分間浸漬後取り出した。この操作を30回繰返した後の溶液の吸収スペクトルを測定したところ、295nmにおける吸光度は0.05であった。
[実施例3]
5mm厚、10cm角のPC樹脂製シートにアクリル樹脂組成物(i−3)を乾燥膜厚が4μmになるよう塗布し、130℃で1時間熱硬化させた後、メタノール:2−プロパノール:1−ブタノール=16:50:34(重量比)の混合溶液350g中に1分間浸漬後取り出した。この操作を30回繰返した後の溶液の吸収スペクトルを測定したところ、295nmにおける吸光度は0.01であった。
[実施例4]
5mm厚、10cm角のPC樹脂製シートにアクリル樹脂組成物(i−4)を乾燥膜厚が4μmになるよう塗布し、130℃で1時間熱硬化させた後、メタノール:2−プロパノール:1−ブタノール=16:50:34(重量比)の混合溶液350g中に1分間浸漬後取り出した。この操作を30回繰返した後の溶液の吸収スペクトルを測定したところ、295nmにおける吸光度は0.01であった。
[比較例1]
5mm厚、10cm角のPC樹脂製シートにアクリル樹脂組成物(i−5)を乾燥膜厚が4μmになるよう塗布し、130℃で1時間熱硬化させた後、メタノール:2−プロパノール:1−ブタノール=16:50:34(重量比)の混合溶液350g中に1分間浸漬後取り出した。この操作を30回繰返した後の溶液の吸収スペクトルを測定したところ、295nmにおける吸光度は1.12であった。
Figure 0005242929
(成形体(積層体)の作成および評価)
[実施例5]
5mm厚のPC樹脂製シートに、参考例7で得られたアクリル樹脂組成物(i−1)を、熱硬化後の膜厚が8μmになるようにディップコート法によって両面塗布し、25℃で20分静置後、130℃で1時間熱硬化させた。次いで、該シートの被膜表面上に参考例12で得られたオルガノシロキサン樹脂組成物(ii―1)を熱硬化後の膜厚が4μmになるようにディップコート法で塗布し、25℃で20分静置後、125℃で1時間熱硬化させPC樹脂成形体(積層体)を得た。得られたPC樹脂積層体の構成および各評価結果を表5に示した。
[実施例6]
5mm厚のPC樹脂製シートに、参考例8で得られたアクリル樹脂組成物(i−2)を、熱硬化後の膜厚が8μmになるようにディップコート法によって両面塗布し、25℃で20分静置後、130℃で1時間熱硬化させた。次いで、該シートの被膜表面上に参考例12で得られたオルガノシロキサン樹脂組成物(ii―1)を熱硬化後の膜厚が4μmになるようにディップコート法で塗布し、25℃で20分静置後、125℃で1時間熱硬化させPC樹脂成形体(積層体)を得た。得られたPC樹脂積層体の構成および各評価結果を表5に示した。
[実施例7]
5mm厚のPC樹脂製シートに、参考例8で得られたアクリル樹脂組成物(i−2)を、熱硬化後の膜厚が10μmになるようにディップコート法によって両面塗布し、25℃で20分静置後、130℃で1時間熱硬化させた。次いで、該シートの被膜表面上に参考例13で得られたオルガノシロキサン樹脂組成物(ii―2)を熱硬化後の膜厚が5μmになるようにディップコート法で塗布し、25℃で20分静置後、125℃で1時間熱硬化させPC樹脂成形体(積層体)を得た。得られたPC樹脂積層体の構成および各評価結果を表5に示した。
[実施例8]
5mm厚のPC樹脂製シートに、参考例9で得られたアクリル樹脂組成物(i−3)を、熱硬化後の膜厚が8μmになるようにディップコート法によって両面塗布し、25℃で20分静置後、130℃で1時間熱硬化させた。次いで、該シートの被膜表面上に参考例13で得られたオルガノシロキサン樹脂組成物(ii―2)を熱硬化後の膜厚が5μmになるようにディップコート法で塗布し、25℃で20分静置後、125℃で1時間熱硬化させPC樹脂成形体(積層体)を得た。得られたPC樹脂積層体の構成をおよび各評価結果を表5に示した。
[実施例9]
5mm厚のPC樹脂製シートに、参考例10で得られたアクリル樹脂組成物(i−4)を、熱硬化後の膜厚が8μmになるようにディップコート法によって両面塗布し、25℃で20分静置後、130℃で1時間熱硬化させた。次いで、該シートの被膜表面上に参考例13で得られたオルガノシロキサン樹脂組成物(ii―1)を熱硬化後の膜厚が4μmになるようにディップコート法で塗布し、25℃で20分静置後、125℃で1時間熱硬化させPC樹脂成形体(積層体)を得た。得られたPC樹脂積層体の構成をおよび各評価結果を表5に示した。
[比較例2]
5mm厚のPC樹脂製シートに、参考例11で得られたアクリル樹脂組成物(i−5)を、熱硬化後の膜厚が8μmになるようにディップコート法によって両面塗布し、25℃で20分静置後、130℃で1時間熱硬化させた。次いで、該シートの被膜表面上に参考例13で得られたオルガノシロキサン樹脂組成物(ii―1)を熱硬化後の膜厚が4μmになるようにディップコート法で塗布し、25℃で20分静置後、125℃で1時間熱硬化させPC樹脂成形体(積層体)を得た。得られたPC樹脂積層体の構成をおよび各評価結果を表5に示した。
Figure 0005242929

Claims (16)

  1. (A)1〜60モル%の下記式(1)で表される繰り返し単位((A−1)単位)、
    Figure 0005242929
    (式中Rはメチル基またはエチル基である。)
    35モル%を超えて85モル%以下の下記式(2)で表される繰返し単位((A−2)単位)、
    Figure 0005242929
    (式中Rはシクロアルキル基であり、Xは水素原子またはメチル基である。)
    0.1〜15モル%の下記式(3)で表される繰返し単位((A−3)単位)、および
    Figure 0005242929
    (式中Xは水素原子またはメチル基であり、Wはトリアジン系紫外線吸収性基である。)
    1〜15モル%の下記式(4)で表される繰り返し単位((A−4)単位)
    Figure 0005242929
    (式中Rは炭素数2〜5のアルキレン基であり、Xは水素原子またはメチル基であり、Zはヒドロキシ基、アルコキシシリル基、グリシジルオキシ基、イソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基である。)
    を含有するアクリル共重合体(A成分)であって、該アクリル共重合体の全繰り返し単位100モル%中、(A−1)〜(A−4)単位の合計が少なくとも70モル%であるアクリル共重合体を含有するコーティング用アクリル樹脂組成物。
  2. 前記(A−3)単位が下記式(5)および/または下記式(6)で表される紫外線吸収性基を含有するアクリルモノマーから誘導された繰返し単位である請求項1記載のコーティング用アクリル樹脂組成物。
    Figure 0005242929
    (式中Rは炭素数2〜6のアルキレン基であり、Rは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基または炭素数1〜18のアルコキシ基を表し、R、Rは同一または互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、または炭素数1〜18のアルキル基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を表し、Rは炭素数1〜18のアルキル基を表し、Xは水素原子またはメチル基であり、Yは水素原子、OH基または炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
    Figure 0005242929
    (式中Rは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基または炭素数1〜18のアルコキシ基を表し、R10、R11は同一または互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、または炭素数1〜18のアルキル基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を表し、R12は炭素数1〜18のアルキル基を表し、Xは水素原子またはメチル基であり、Yは水素原子、OH基または炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
  3. 前記(A−4)単位が、下記式(7)で表される繰返し単位である請求項1記載のコーティング用アクリル樹脂組成物。
    Figure 0005242929
    (式中R13は炭素数2〜5のアルキレン基であり、Xは水素原子またはメチル基である。)
  4. (A)請求項1記載のアクリル共重合体(A成分)、(B)5.5〜50重量%の換算イソシアネート基率を有し、(A−3)単位中のヒドロキシ基1当量に対して0.8〜1.5当量となる量のイソシアネート基を有するブロック化されたポリイソシアネート化合物(B成分)、および
    (C)(A)成分および(B)成分の合計100重量部に対して0.001〜0.4重量部の硬化触媒(C成分)を含有する請求項1記載のコーティング用アクリル樹脂組成物。
  5. (A)成分は、前記(A−1)単位1〜59.9モル%、前記(A−2)単位35モル%を超えて85モル%以下、前記(A−3)単位0.1〜15モル%、(A−4)単位1〜15モル%および下記式(8)で表される繰返し単位((A−5)単位)0.1〜20モル%を含有するアクリル共重合体であって、該アクリル共重合体の全繰り返し単位100モル%中、(A−1)〜(A−5)単位の合計が少なくとも70モル%である請求項1記載のコーティング用アクリル樹脂組成物。
    Figure 0005242929
    (式中R14は、水素原子または炭素数1〜14のアルキル基またはアルコキシ基である。)
  6. (A)成分および(B)成分の合計100重量部に対して、(D)成分として0.1〜10重量部のシランカップリング剤および/またはシランカップリング剤の加水分解縮合物を含有する請求項1記載のコーティング用アクリル樹脂組成物。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載のアクリル樹脂組成物を溶媒に溶解したアクリル樹脂組成物濃度が1〜50重量%であるコーティング用アクリル樹脂塗料。
  8. プラスチック基材表面の少なくとも片面に、第1層として、
    (A)1〜60モル%の下記式(1)で表される繰り返し単位((A−1)単位)、
    Figure 0005242929
    (式中Rはメチル基またはエチル基である。)
    35モル%を超えて85モル%以下の下記式(2)で表される繰返し単位((A−2)単位)、
    Figure 0005242929
    (式中Rはシクロアルキル基であり、Xは水素原子またはメチル基である。)
    0.1〜15モル%の下記式(3)で表される繰返し単位((A−3)単位)、および
    Figure 0005242929
    (式中Xは水素原子またはメチル基であり、Wはトリアジン系紫外線吸収性基である。)
    1〜15モル%の下記式(4)で表される繰り返し単位((A−4)単位)
    Figure 0005242929
    (式中Rは炭素数2〜5のアルキレン基であり、Xは水素原子またはメチル基であり、Zはヒドロキシ基、アルコキシシリル基、グリシジルオキシ基、イソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基である。)
    を含有するアクリル共重合体(A成分)であって、該アクリル共重合体の全繰り返し単位100モル%中、(A−1)〜(A−4)単位の合計が少なくとも70モル%であるアクリル共重合体を含有するアクリル樹脂組成物を熱硬化させてなるアクリル樹脂層が積層され、その第1層上に第2層として、
    (E)コロイダルシリカ(e成分)および
    (F)下記式(9)で表わされるアルコキシシランの加水分解縮合物(f成分)、
    Figure 0005242929
    (但し、式中R15、R16はそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基、ビニル基、またはメタクリロキシ基、アミノ基、グリシドキシ基および3,4−エポキシシクロヘキシル基からなる群より選ばれる1以上の基で置換された炭素数1〜3のアルキル基であり、R17は炭素数1〜4のアルキル基またはビニル基であり、m、nはそれぞれ0、1、2のいずれかの整数であり、m+nは0、1、2のいずれかの整数である。)
    を含有し、e成分が10〜60重量%、f成分がR15 16 SiO(4−m−n)/2に換算して40〜90重量%であるオルガノシロキサン樹脂組成物の熱硬化塗膜層が積層されたプラスチック成形体。
  9. 前記(A)成分の(A−3)単位が下記式(5)および/または下記式(6)で表される紫外線吸収性基を含有するアクリルモノマーから誘導された繰返し単位である請求項記載のプラスチック成形体。
    Figure 0005242929
    (式中Rは炭素数2〜6のアルキレン基であり、Rは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基または炭素数1〜18のアルコキシ基を表し、R、Rは同一または互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、または炭素数1〜18のアルキル基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を表し、Rは炭素数1〜18のアルキル基を表し、Xは水素原子またはメチル基であり、Yは水素原子、OH基または炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
    Figure 0005242929
    (式中Rは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基または炭素数1〜18のアルコキシ基を表し、R10、R11は同一または互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、または炭素数1〜18のアルキル基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を表し、R12は炭素数1〜18のアルキル基を表し、Xは水素原子またはメチル基であり、Yは水素原子、OH基または炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
  10. 前記第1層の(A−4)単位が、下記式(7)で表される繰返し単位である請求項記載のプラスチック成形体。
    Figure 0005242929
    (式中R13は炭素数2〜5のアルキレン基であり、Xは水素原子またはメチル基である。)
  11. 請求項記載のアクリル樹脂組成物は、(A)アクリル共重合体(A成分)、(B)5.5〜50重量%の換算イソシアネート基率を有し、(A−3)単位中のヒドロキシ基1当量に対して0.8〜1.5当量となる量のイソシアネート基を有するブロック化されたポリイソシアネート化合物(B成分)、および
    (C)(A)成分および(B)成分の合計100重量部に対して0.001〜0.4重量部の硬化触媒(C成分)を含有するコーティング用アクリル樹脂組成物である請求項記載のプラスチック成形体。
  12. 前記(A)成分が、前記(A−1)単位1〜59.9モル%、前記(A−2)単位35モル%を超えて85モル%以下、前記(A−3)単位0.1〜15モル%、(A−4)単位1〜15モル%および下記式(8)で表される繰返し単位((A−5)単位)0.1〜20モル%を含有するアクリル共重合体であって、該アクリル共重合体の全繰り返し単位100モル%中、(A−1)〜(A−5)単位の合計が少なくとも70モル%であるアクリル共重合体である請求項記載のプラスチック成形体。
    Figure 0005242929
    (式中R14は、水素原子または炭素数1〜14のアルキル基またはアルコキシ基である。)
  13. 前記第1層が、(A)成分および(B)成分の合計100重量部に対して、(D)成分として0.1〜10重量部のシランカップリング剤および/またはシランカップリング剤の加水分解縮合物を含有するコーティング用アクリル樹脂組成物を熱硬化させてなる塗膜層である請求項記載のプラスチック成形体。
  14. 前記第2層が、(E)成分と(F)成分との合計100重量部に対して、(G)成分として金属酸化物(g成分)0.5〜5重量部を含むオルガノシロキサン樹脂組成物の熱硬化塗膜層である請求項記載のプラスチック成形体。
  15. (G)成分が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化スズおよび酸化タングステンからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属酸化物微粒子である請求項14記載のプラスチック成形体。
  16. プラスチック基材がポリカーボネート樹脂基材である請求項記載のプラスチック成形体。
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