JP6130163B2 - ポリカーボネート樹脂積層体 - Google Patents
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Description
従って、これまで耐擦傷性、密着耐久性、および耐熱性に優れた特徴を有するポリカーボネート樹脂積層体は得られてなかった。
1.ポリカーボネート樹脂層(A層)の少なくとも片面または両面に、熱可塑性樹脂層(B層)および湿式法で形成された熱硬化性薄膜層(C層)を積層したポリカーボネート樹脂積層体において、B層を形成する熱可塑性樹脂の線膨張係数が100〜130℃の範囲の平均で3×10−5〜80×10−5/Kであり、A層を形成するポリカーボネート樹脂とB層を形成する熱可塑性樹脂のISO 306 B−50に従い、試験荷重50N、昇温速度50℃/hで測定されるビカット軟化温度の間で熱硬化性薄膜層(C層)を形成させることを特徴とするポリカーボネート樹脂積層体。
2.共押出によりポリカーボネート樹脂層(A層)および熱可塑性樹脂層(B層)を積層した上記1に記載のポリカーボネート樹脂積層体。
3.B層を形成する熱可塑性樹脂の線膨張係数が100〜130℃の範囲の平均で3×10−5〜60×10−5/Kであることを特徴とする上記1または2のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
4.熱可塑性樹脂層(B層)がベンゾトリアゾール類またはトリアジン類の紫外線吸収剤を含むこと特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
5.上記熱可塑性樹脂層(B層)がISO 306 B−50に従い、試験荷重50N、昇温速度50℃/hで測定されるビカット軟化温度が110℃以上140℃以下のアクリル系樹脂組成物を用いてなることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
6.上記ポリカーボネート樹脂層(A層)および熱可塑性樹脂層(B層)の厚みの合計が1mm以上20mm以下であり、A層とB層の厚み比率がA/B=200〜4であることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
7.上記熱硬化性薄膜層(C層)がビスフェノール型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、高分子型エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、およびポリイミド系樹脂の群から選ばれることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
8.熱硬化性薄膜層(C層)を形成する塗料の水とメタノールを除く希釈溶剤と熱可塑性樹脂層(B層)とのSP値の差が1.9(cal/cm3)1/2以下であり、かつ沸点が115℃以下である水とメタノールを除く希釈溶剤が熱硬化性薄膜層(C層)を形成する塗料の水とメタノールを除く希釈溶剤100重量部に対して50〜100重量部であることを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
9.上記熱硬化性薄膜層(C層)は酸化セリウム微粒子、酸化チタン微粒子、および酸化亜鉛微粒子から選択される少なくとも1種の金属酸化微粒子を含むことを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
10.ハードコート層(C層)上に更にPE−CVD(プラズマ化学気相成長プロセス)プロセスなどのドライハードコートプロセスにより形成されたプラズマ重合有機ケイ素を含んでなる層(D層)が積層された上記1〜9のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
(i)ポリカーボネート樹脂層(A層)
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールA型ポリカーボネート以外にも、他の二価フェノールを用いて重合された高耐熱性または低吸水率の各種のポリカーボネート樹脂や、脂肪族ジオールを用いて重合された高耐熱性の各種のポリカーボネート樹脂であってもよい。ポリカーボネート樹脂はいかなる製造方法によって製造されたものでもよく、界面重縮合の場合は通常一価フェノール類の末端停止剤が使用される。ポリカーボネート樹脂はまた3官能フェノール類を重合させた分岐ポリカーボネート樹脂であってもよく、更に脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸、または二価の脂肪族または脂環族アルコールを共重合させた共重合ポリカーボネートであってもよい。ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は13,000〜40,000の範囲であると、幅広い分野に適用可能となる。粘度平均分子量が20,000未満であると流動性に優れ車両用樹脂窓の中でも、複雑な形状や大型の樹脂成型品(例えばバックドアウィンドウ)に好適となり、粘度平均分子量が20,000以上であると強度に優れ、車両用樹脂窓全般に好適となる。本発明の好適な用途である車両用樹脂窓においては、目的とする成型品に合わせて分子量の選択が必要である。本発明の樹脂板は厚肉であるため、比較的高い分子量においても成形時の歪みは許容限度内となる。粘度平均分子量の上限は、汎用性の点からより好ましくは35,000、更に好ましくは30,000である。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−4M0.83
c=0.7
(1)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称)成分が20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつ9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称)成分が20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
(2)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、ビスフェノールA成分が10〜95モル%(より好適には50〜90モル%、さらに好適には60〜85モル%)であり、かつBCF成分が5〜90モル%(より好適には10〜50モル%、さらに好適には15〜40モル%)である共重合ポリカーボネート。
(3)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、BPM成分が20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつ1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン成分が20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
(4)該ポリカーボネートを構成するニ価フェノール成分100モル%中、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(以下“ビスフェノールC”と略称)成分が40〜90モル%(より好適には50〜80モル%)であり、かつビスフェノールA成分が10〜60モル%(より好適には20〜50モル%)である共重合ポリカーボネート。
これらの特殊なポリカーボネートの製法及び特性については、例えば、特開平6−172508号公報、特開平8−27370号公報、特開2001−55435号公報及び特開2002−117580号公報等に詳しく記載されている。
本発明に用いる熱可塑性樹脂の線膨張係数は100〜130℃の範囲の平均で3×10−5〜80×10−5/Kであり、好ましくは3×10−5〜60×10−5/Kであり、さらに好ましくは3×10−5〜50×10−5/Kである。平均値が上限以下では、硬化過程およびその後の使用環境でのB層とC層の膨張の差が小さく、B層が変形したり、クラックが入ることや、C層にクラックが入ることを防ぐことができる。C層の上にさらにドライコーティングシステム工程によって製膜した層(D層)が形成されている場合、D層の線膨張係数は通常0.1×10−5〜2×10−5/Kであり、熱可塑性樹脂層(B層)や熱硬化性薄膜層(C層)との線膨張係数の差が大きいが、B層の線膨張係数の平均値が100〜130℃の範囲で3×10−5〜80×10−5/Kの場合はD層の製膜時の温度を適切に設定することによって製膜時およびその後の使用環境での変形やクラック発生を防ぐことができる。
本発明に用いる熱硬化性薄膜層としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、高分子型エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、およびポリイミド系樹脂等が挙げられ、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、シリコーン系樹脂が特に好ましい。
熱硬化反応が終了し、基材を冷却する過程ではB層とC層の線膨張係数の差から応力が緩和され、基材温度がおよそ100℃になった段階で応力が0になる。
本発明に用いる熱硬化性薄膜層(C層)は、酸化セリウム微粒子、酸化チタン微粒子、および酸化亜鉛微粒子から選択される少なくとも1種の金属酸化微粒子を含むことが好ましい。
アクリル系樹脂層を形成する方法としては熱硬化型アクリル樹脂塗料を調製し、これを共押出シートに塗布し、加熱乾燥する方法が採用される。本発明において、かかる熱硬化型アクリル樹脂塗料塗料は、アクリル樹脂および架橋剤を溶剤に溶解して得られ、さらに必要に応じて硬化触媒、その他添加剤成分を添加しても良い。
熱硬化型アクリル樹脂層を形成する樹脂成分は、アクリルポリオールを必須成分として含む。アクリルポリオールは、水酸基を有するアクリル系単量体に由来する構造単位を必須とした重合体であり、適宜、カルボキシル基を有するアクリル系単量体、エステル基を有するアクリル系単量体や、アクリル系以外のビニル系単量体等の単量体に由来する構造単位をさらに含んだ共重合体であってもよく、重合体を構成する構造単位の種類については特に限定はない。
メラミン系樹脂層を形成する方法としてはメラミン系樹脂塗料を調製し、これを共押出シートに塗布し、熱硬化する方法が採用される。本発明において、かかるメラミン系樹脂塗料は、メラミン系樹脂、架橋剤、硬化剤、および分散剤等を溶剤に溶解して得られる。
メラミン系樹脂とは、メチル化メチロールメラミン、プロピル化メチロールメラミン、ブチル化メチロールメラミン、イソブチル化メチロールメラミン等のメラミン樹脂単独、又はこれにアクリル樹脂、ポリエーテル、ポリエステル、シリコーン樹脂等の変成剤を本発明の特性を損なわない範囲で混合したものである。
メラミン系樹脂塗料を基材に塗布後10〜30分程度、室温で乾燥させた後、熱硬化してメラミン系樹脂層が形成される。熱硬化温度は、好ましくは100〜145℃、より好ましくは105〜140℃、さらに好ましくは110〜135℃である。熱硬化時間は、好ましくは10分間〜4時間、より好ましくは20分間〜3時間、さらに好ましくは30分間〜2時間である。
シリコーン系樹脂層を形成方法としては金属酸化物微粒子分散液、並びにコロイダルシリカとアルコキシシランの加水分解縮合物とからなるオルガノシロキサン樹脂形成質、酸、硬化触媒、および溶媒からなるコーティング用塗料を共押出シートに塗布し、熱硬化する方法が挙げられる。シロキサン結合をもった硬化樹脂層を形成するものとしては、3官能シロキサン単位に相当する化合物(トリアルコキシシラン化合物など)を主成分とする化合物の部分加水分解縮合物、好ましくは更に4官能シロキサン単位に相当する化合物(テトラアルコキシシラン化合物など)および/または2官能シロキサン単位に相当する化合物を含む部分加水分解縮合物、並びに更にこれらにコロイダルシリカなどの金属酸化物微粒子を充填した部分加水分解縮合物などが例示される。シリコーン樹脂系ハードコート剤は更に1官能性のシロキサン単位を含んでよい。これらには縮合反応時に発生するアルコール(アルコキシシランの部分加水分解縮合物の場合)などが含まれるが、更に必要に応じて任意の有機溶剤、水、あるいはこれらの混合物に溶解ないしは分散させてもよい。そのための有機溶剤としては、低級脂肪酸アルコール類、多価アルコールとそのエーテル、エステル類などが挙げられる。なお、ハードコート層には平滑な表面状態を得るためレベリング剤を添加できる。かかるコロイダルシリカ、アルコキシシラン、酸、硬化触媒、および溶媒の具体的態様、配合量、並びに調整条件の詳細に関してもまた国際公開2010/137721号パンフレットに記載されている。
ポリカーボネート樹脂層(A層)表面に熱可塑性樹脂層(B層)を積層するには任意の方法を用いればよく、特に熱圧着法または共押出法で行うことが好ましい。積層体製造工程の具体例を以下に記す。
熱圧着法としては任意の方法が採用されるが、例えば熱可塑性樹脂フィルムとポリカーボネート樹脂層をラミネート機やプレス機で熱圧着する方法、押出し直後のポリカーボネート樹脂層に熱可塑性樹脂フィルムを熱圧着する方法が好ましく、特に押出し直後のポリカーボネート樹脂層に連続して熱圧着する方法が工業的に有利である。この場合の熱圧着条件は、ポリカーボネート樹脂層や熱可塑性樹脂フィルムの厚さ、圧着面の状態等により異なり、一概に特定できないが、熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移点近傍又はそれ以上の温度、通常熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移点−10℃〜ガラス転移点+150℃、好ましくはガラス転移点−5℃〜ガラス転移点+100℃で0.05kg/cm以上、好ましくは1〜10kg/cm程度の線圧を加えることにより熱圧着できる。
本発明で用いられる各種のポリカーボネート樹脂層基材層上、熱可塑性樹脂層上、および熱硬化性薄膜層上に二酸化ケイ素などの金属酸化物薄膜を析出させる、もしくは金属酸化物薄膜分散液を塗布し化学変性させる、もしくは有機ケイ素系化合物系に真空紫外線等の強エネルギー線を照射し二酸化ケイ素などの金属酸化物薄膜を形成させる等の方法で、耐摩耗性、耐擦傷性に優れた層や光触媒超親水性層等の機能性層を形成することも出来る。これらは例えば、二酸化ケイ素などの金属酸化物薄膜を析出させる技術については特表2009−540124号公報、特表2009−502569号公報、特開2011−016257号公報 特開2010−253683号公報に、金属酸化物薄膜分散液を塗布し化学変性させる方法についてはJ.Phys.Chem.B.110(2006年)6198−6203ページ等に、有機ケイ素系化合物系に真空紫外線等の強エネルギー線を照射し二酸化ケイ素などの金属酸化物薄膜を形成させる方法については、特開2011−202050号公報等に詳しく記載されている。これらの被膜は、上述した湿式法で形成された熱硬化性薄膜を越えて耐擦傷性を著しく改良する。中でも二酸化ケイ素などの金属酸化物薄膜を析出させる方法では、使用する金属酸化物原料の組成や製膜条件を最適化することで、耐擦傷性と耐熱性等その他性質とのバランスをとることができ、さらにガスバリヤ性も付与されることで下層への水蒸気や水分の浸透を阻害して耐候性を高めることで、ポリカーボネート樹脂積層体のライフタイムを増大することができるために好ましい。本願に好適な二酸化ケイ素などの金属酸化物薄膜を析出させる方法としては、化学気相成長プロセス(CVDプロセス)、真空蒸着、スパッタリング等のプロセスが挙げられる。特に好適な化学気相成長プロセス(CVDプロセス)においては、容量結合型、誘導結合型の双方が使用できるが、2枚の電極間に交流電力を印加する等により、空間中に均一性の高い交流電界を発生させ、その中にプラズマの安定継続と反応促進のためのガス種(アルゴン、酸素、窒素等)と膜形成の原料となるガス種(ケイ素化合物等)を含んだ反応プラズマ場を発生させる等の手法を採る容量結合型が、本願が目的とする諸性能をバランス良く得る上での条件制御性に優れるため、最も好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂積層体は上記の工程以外に印刷層を有していてもよい。かかる印刷層はグレージングにおいては周縁部に形成され、周縁部に形成される接着剤や構造部材の目隠し機能を有する。また建材用途などにおいては意匠、デザインの機能を有する。印刷層は、A層またはB層において、いずれか1面または両面に形成されても構わない。印刷層をインキ塗工で形成する場合、かかる形成方法としては、各種の印刷方法、スプレー塗装、および刷毛塗りなどの各種の方法が適用できる。印刷方法は特に限定されず、従来公知の方法で、平板のもしくは湾曲したシート表面に印刷できる。例えば、スプレー印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、およびインクジェット印刷などの方法が例示され、これらの中でもスクリーン印刷が最も好ましく適用できる。
本発明のポリカーボネート樹脂積層体は、上述の周辺部材の取り付けと同様に、各種の固定化手段を用いて車体の如き最終製品に取り付けることができる。グレージングの場合かかる取り付けにおいては、接着が最も好適な手段として適用される。かかる接着方法には、硬質接着剤、半硬質接着剤、および弾性接着剤のいずれも利用できるが、本発明では構造接着剤として優れている弾性接着剤が好ましく、特にウレタン系弾性接着剤が、そのシーリング性能、強度およびコストなどの点から好ましい。かかる接着層の形成は、ポリカーボネート樹脂層上、熱可塑性樹脂層上、熱硬化性薄膜層上、あるいは印刷層上のいずれに形成されてもよい。更に、一旦積層された層を各種化学処理、ブラスト、研磨、および切削などの方法により除去し、接着層を形成してもよい。印刷層の形成においては版を埋めて印刷しないことにより、またハードコート層の形成では主としてマスキングを施すことにより、接着層を設ける部位の表面層を所定の層にすることができる。
ウレタン接着剤用プライマーは、かかる反応活性を有する主成分の他に、概して溶剤、充填剤、触媒、乾燥剤、樹脂成分、および任意に他の化合物が配合されてなる。
(I−1)透明性
実施例で得られた樹脂積層体から切り出した100mm四方の試験片を、JIS K 7361−1、JIS K 7136に準拠して、全光線透過率値(Tt)、ヘイズ値(Haze)を評価した。
ASTM1044に準拠し、テーバー磨耗試験機にて摩耗輪CS−10Fを装着、荷重500g下での500回転後と1000回転後のヘイズ値(Haze)を濁度計(NDH2000、日本電色工業製)を用いて測定し、試験後と試験前のヘイズ値差(ΔHz)を測定した。
ハードコート層にカッターで1mm間隔に縦横に各11本の切れ目を入れて100個のマス目を作り、この目にセロテープ(登録商標)(ニチバン(株)製粘着テープ)を貼り付けた後、90°の方向に一気に剥した。ハードコート層が剥離せず、残ったマス目の数を数えた。
実施例で得られた樹脂積層体から切り出した100mm四方の試験片を沸騰水中に3時間浸漬した後に、目視にて外観観察、及び上記(I−3)同様にして密着性試験を行った。
試験片をスーパーキセノンテスト(UV照射強度180W/m2、ブラックパネル温度63℃)にて1000時間、3000時間暴露し、試験片を取り出して下記の黄変度、耐候クラック性、耐候密着性、耐候剥離を評価した。
<黄変度>
JISZ8722に準拠し、積分球分光光度計CE−7000A(X−Rite社製)にて測定し、耐候性試験後と試験前の黄変度差(ΔYI)を測定した。
<耐候クラック性>
耐候性試験後の外観(クラックの有無)を下記の基準で評価した。
○:異常なし
△:僅かにクラックあり
×:塗膜全体にクラックあり
<耐候密着性>
耐候性試験後に、前記初期密着性と同様にして密着性試験を行った。
<耐候剥離>
耐候性試験後の外観(剥離の有無)を下記の基準で評価した。
○:異常なし
△:一部剥離あり
×:全面剥離
実施例で得られた樹脂積層体から切り出した100mm四方の試験片を、100℃、110℃、120℃環境下で1000時間放置し、試験片を取り出して下記の耐熱クラック性、耐熱密着性を評価した。
<耐熱クラック性>
耐熱性試験後の外観(クラックの有無)を下記の基準で評価した。
○:異常なし
△:僅かにクラックあり
×:塗膜全体にクラックあり
<耐熱密着性>
耐候性試験後に、前記(I−3)同様にして密着性試験を行った。
(II−1)一般的なポリカーボネート樹脂
常法によりビスフェノールAとホスゲンを界面重合法で重合して得た粘度平均分子量23,900のポリカーボネート樹脂粉粒体である帝人化成(株)製パンライトL−1250WPを使用した。
常法によりビスフェノールAとホスゲンを界面重合法で重合して得た粘度平均分子量23,900のポリカーボネート樹脂粉粒体に熱線吸収剤を配合した帝人化成(株)製パンライトAM−1125ZVを使用した。
実施例ならびに比較例で用いた熱可塑性樹脂は下記の通りであり、略号を表に示す。またISO 306 B−50に従い、試験荷重50N、昇温速度50℃/hで測定されたそれぞれのビカット軟化温度およびそれぞれの熱可塑性樹脂100重量部に対する熱可塑性樹脂中の紫外線吸収剤量を表1に示す。なお、紫外線吸収剤はアデカスタブLA−31(ADEKA(株)社製)を用いた。
HT121:アルケマ社製アルトグラスHT121
980N:旭化成ケミカル製980N
PM120N:旭化成ケミカル製PM120N
V020:アルケマ社製アルトグラスV020
HR−L:クラレ製パラペットHR−L
上記ポリカーボネート樹脂層(A層)を形成する(II−1)ならびに(II−2)記載のポリカーボネート樹脂層はスクリュー径40mmの単軸押出機で、また、上記熱可塑性樹脂層(B層)を形成する熱可塑性樹脂はスクリュー径30mmの単軸押出機でそれぞれ溶融させ、フィードブロック法にて2層に積層させ、設定温度280℃のT型ダイスを介して押出し、得られるシートを鏡面仕上げされたロールにて冷却し、ポリカーボネート樹脂シートの片面に、表1記載の熱可塑性樹脂層を積層した樹脂積層体を得た。なお、A層とB層の厚みとA層とB層の厚み比率は表1に示した通りである。
(V−1)シリコーン系樹脂塗料(C−1)の調製
水分散型コロイダルシリカ分散液(触媒化成工業(株)製カタロイドSN−30、固形分濃度30重量%):100重量部に、濃塩酸(12M):0.1重量部を加えよく攪拌した。この分散液を10℃まで冷却し、その中にメチルトリメトキシシラン:161重量部を滴下した。メチルトリメトキシシランの滴下直後から反応熱で混合液の温度は上昇を開始し、かかる開始から数分後に60℃まで昇温した。60℃に到達後、氷水浴で冷却しながら、徐々に反応液の温度を低下させた。反応液の温度が35℃になった段階で、この温度を維持するようにして5時間攪拌し、これに、硬化触媒として45%コリンメタノール溶液:0.7重量部、pH調整剤としての酢酸:4.9重量部を混合し、コーティング塗料原液(α)を得た。
還流冷却器および撹拌装置を備え、窒素置換したフラスコ中にエチルメタクリレート:62.8重量部、シクロヘキシルメタクリレート:50.5重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート:13.0重量部、1−メトキシ−2−プロパノール:192.6重量部を添加混合した。混合物に窒素ガスを15分間通気して脱酸素した後、窒素ガス気流下にて70℃に昇温し、AIBN1:1.3重量部を加え、窒素ガス気流中、70℃で5時間攪拌下に反応させた。さらにAIBN2:0.7重量部を加えて80℃に昇温し、3時間反応させ、不揮発分濃度が40.0重量%のアクリル共重合体溶液(β)を得た。
メチル化メチロールメラミン(日本サイテックインダストリーズ(株)製サイメル301):100部に対し、アクリル共重合体溶液(β):20重量部、架橋剤として1,6−ヘキサンジオール:70重量部、硬化剤としてマレイン酸:5重量部、溶剤としてイソプロピルアルコール:150部、イソブチルアルコール:320部、エチレングリコールモノブチルエーテル:25部を添加、混合してメラミン系樹脂塗料(C−2)を得た。
日本ペイント製スーパーラックネオLTをそのままアクリル系樹脂塗料(C−3)として用いた。
希釈溶剤の酢酸エチルを酢酸ブチルに変更した以外は(V−1)シリコーン系樹脂塗料(C−1)の調製と同様にしてオルガノシロキサン樹脂からなるコーティング塗料(C−4)を得た。
希釈溶剤の酢酸エチルを配合せずにイソプロピルアルコールを391重量部に変更した以外は(V−1)シリコーン系樹脂塗料(C−1)の調製と同様にしてオルガノシロキサン樹脂からなるコーティング塗料(C−5)を得た。
上記(II)、(III)に記載のポリカーボネート樹脂ならびに熱可塑性樹脂を用いて上記(IV)に記載の方法で共押出シートを作成した。共押出シートの熱可塑性樹脂層(B層)中に含まれている紫外線吸収剤量ならびにポリカーボネート樹脂層(A層)と熱可塑性樹脂層(B層)のそれぞれの厚みと厚み比率を表1に示した。
得られた共押出シートに(V)で作成した熱硬化性塗料をフローコート法で塗布し、25℃で15分静置後、1時間熱硬化させることで熱硬化性薄膜層(C層)を積層し、ポリカーボネート樹脂積層体を作成した。用いた熱硬化性塗料の種類ならびに熱硬化温度、さらにC層の厚みを表1に示した。
得られたポリカーボネート樹脂積層体の各種評価結果を表1に示した。
実施例1で得られたPC樹脂積層体を容量結合型で内部電極方式のプラズマ重合装置のRF電極に取り付け、真空ポンプで減圧して0.1Paとした。この装置内に酸素ガスを流量1000sccmで供給して圧力を7.5Paにし、投入電力1000Wでグロー放電を行った。さらに1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを流量30sccmで供給し、酸素プラズマ中で反応させてプラズマCVD膜を形成した。膜形成を17分行ってプラズマCVD膜の厚みが5μmのPC樹脂積層体を得た。得られたPC樹脂積層体の各種評価結果を表1に示した。
実施例1〜4と同様の方法で得られたポリカーボネート樹脂積層体の熱可塑性樹脂層(B層)中に含まれている紫外線吸収剤量、ポリカーボネート樹脂層(A層)と熱可塑性樹脂層(B層)のそれぞれの厚みと厚み比率ならびに各種評価結果を表1に示した。
上記(II)、(III)に記載のポリカーボネート樹脂ならびに熱可塑性樹脂を用いて上記(IV)に記載の方法で共押出シートを作成した。共押出シートの熱可塑性樹脂層(B層)中に含まれている紫外線吸収剤量ならびにポリカーボネート樹脂層(A層)と熱可塑性樹脂層(B層)のそれぞれの厚みと厚み比率を表1に示した。
得られた共押出シートに(V)で作成した熱硬化性塗料をフローコート法で塗布し、25℃で15分静置後、1時間熱硬化させることで熱硬化性薄膜層(C層)を積層し、ポリカーボネート樹脂積層体を作成した。用いた熱硬化性塗料の種類ならびに熱硬化温度、さらにC層の厚みを表1に示した。
得られたポリカーボネート樹脂積層体の各種評価結果を表1に示した。
Claims (10)
- ポリカーボネート樹脂層(A層)の少なくとも片面または両面に、熱可塑性樹脂層(B層)および湿式法で形成された熱硬化性薄膜層(C層)を積層したポリカーボネート樹脂積層体において、B層を形成する熱可塑性樹脂の線膨張係数が100〜130℃の範囲の平均で3×10−5〜80×10−5/Kであり、A層を形成するポリカーボネート樹脂とB層を形成する熱可塑性樹脂のISO 306 B−50に従い、試験荷重50N、昇温速度50℃/hで測定されるビカット軟化温度の間で熱硬化性薄膜層(C層)を形成させることを特徴とするポリカーボネート樹脂積層体。
- 共押出によりポリカーボネート樹脂層(A層)および熱可塑性樹脂層(B層)を積層した請求項1に記載のポリカーボネート樹脂積層体。
- B層を形成する熱可塑性樹脂の線膨張係数が100〜130℃の範囲の平均で3×10−5〜60×10−5/Kであることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
- 熱可塑性樹脂層(B層)がベンゾトリアゾール類またはトリアジン類の紫外線吸収剤を含むこと特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
- 熱可塑性樹脂層(B層)がISO 306 B−50に従い、試験荷重50N、昇温速度50℃/hで測定されるビカット軟化温度が110℃以上140℃以下のアクリル系樹脂組成物を用いてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
- ポリカーボネート樹脂層(A層)および熱可塑性樹脂層(B層)の厚みの合計が1mm以上20mm以下であり、A層とB層の厚み比率が、A/B=200〜4であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
- 熱硬化性薄膜層(C層)がビスフェノール型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、高分子型エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、およびポリイミド系樹脂の群から選ばれることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
- 熱硬化性薄膜層(C層)を形成する塗料の水とメタノールを除く希釈溶剤と熱可塑性樹脂層(B層)とのSP値の差が1.9以下であり、かつ沸点が115℃以下である水とメタノールを除く希釈溶剤が熱硬化性薄膜層(C層)を形成する塗料の水とメタノールを除く希釈溶剤100重量部に対して50〜100重量部であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
- 熱硬化性薄膜層(C層)は酸化セリウム微粒子、酸化チタン微粒子、および酸化亜鉛微粒子から選択される少なくとも1種の金属酸化微粒子を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
- 熱硬化性薄膜層(C層)上に更にPE−CVD(プラズマ化学気相成長プロセス)プロセスなどのドライハードコートプロセスにより形成されたプラズマ重合有機ケイ素を含んでなる層(D層)が積層された請求項1〜9のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
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