JP6130163B2 - ポリカーボネート樹脂積層体 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリカーボネート樹脂層の少なくとも片面に、熱可塑性樹脂層および特定の条件下の湿式法で形成された熱硬化性薄膜層を積層したポリカーボネート樹脂積層体に関する。更に詳しくは、熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂の線膨張係数が100〜130℃の範囲の平均で3×10−5〜80×10−5/Kであり、熱硬化性薄膜層にポリカーボネート樹脂と熱可塑性樹脂のISO 306 B−50に従い、試験荷重50N、昇温速度50℃/hで測定されるビカット軟化温度の間で熱硬化してなる熱硬化性薄膜層を用いることで、耐擦傷性、密着耐久性、および耐熱性に優れた特徴を有するポリカーボネート樹脂積層体。
ポリカーボネート樹脂は、優れた透明性、耐衝撃性、及び高い熱変形温度を有し、寸法安定性、及び、加工性に優れることから、従来ガラスが使用されていた各種窓、光学用レンズ、ミラー、眼鏡、ゴーグル、遮音壁、信号機灯のレンズ、カーブミラー、風防、銘板等に使用されている。しかし、ポリカーボネート樹脂は耐擦傷性が十分ではないため、従来から、ポリカーボネート樹脂層をラミネートやコーティング、共押出法等によりアクリル樹脂や熱硬化性樹脂で被覆する方法が知られている。
中でも共押出法による耐擦傷性の改良については、ポリカーボネート樹脂層の上に熱可塑性樹脂層としてアクリル系樹脂を積層した積層体が広く公知となっている(特許文献1〜3参照)。しかしながら、その積層体の耐擦傷性をさらに向上させるべく、アクリル樹脂層の上に熱硬化性薄膜層を形成させた積層体については、アクリル樹脂層の上に紫外線硬化性薄膜層を形成させた積層体ほど検討がなされていなかった。この理由は、熱可塑性樹脂層として用いられるアクリル系樹脂の耐熱性が一般的に90〜110℃であり、熱硬化性薄膜層を形成させる際の一般的な熱硬化温度である110〜140℃の焼成プロセスに耐えられないと考えられてきたからだと推測される。
従って、これまで耐擦傷性、密着耐久性、および耐熱性に優れた特徴を有するポリカーボネート樹脂積層体は得られてなかった。
特開2003−062953号公報 特開2002−370324号公報 特開平11−058627号公報
本発明の目的は、耐擦傷性、密着耐久性、および耐熱性に優れた積層体を提供することにある。
本発明によれば、上記課題は、下記構成により解決される。
1.ポリカーボネート樹脂層(A層)の少なくとも片面または両面に、熱可塑性樹脂層(B層)および湿式法で形成された熱硬化性薄膜層(C層)を積層したポリカーボネート樹脂積層体において、B層を形成する熱可塑性樹脂の線膨張係数が100〜130℃の範囲の平均で3×10−5〜80×10−5/Kであり、A層を形成するポリカーボネート樹脂とB層を形成する熱可塑性樹脂のISO 306 B−50に従い、試験荷重50N、昇温速度50℃/hで測定されるビカット軟化温度の間で熱硬化性薄膜層(C層)を形成させることを特徴とするポリカーボネート樹脂積層体。
2.共押出によりポリカーボネート樹脂層(A層)および熱可塑性樹脂層(B層)を積層した上記1に記載のポリカーボネート樹脂積層体。
3.B層を形成する熱可塑性樹脂の線膨張係数が100〜130℃の範囲の平均で3×10−5〜60×10−5/Kであることを特徴とする上記1または2のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
4.熱可塑性樹脂層(B層)がベンゾトリアゾール類またはトリアジン類の紫外線吸収剤を含むこと特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
5.上記熱可塑性樹脂層(B層)がISO 306 B−50に従い、試験荷重50N、昇温速度50℃/hで測定されるビカット軟化温度が110℃以上140℃以下のアクリル系樹脂組成物を用いてなることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
6.上記ポリカーボネート樹脂層(A層)および熱可塑性樹脂層(B層)の厚みの合計が1mm以上20mm以下であり、A層とB層の厚み比率がA/B=200〜4であることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
7.上記熱硬化性薄膜層(C層)がビスフェノール型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、高分子型エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、およびポリイミド系樹脂の群から選ばれることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
8.熱硬化性薄膜層(C層)を形成する塗料の水とメタノールを除く希釈溶剤と熱可塑性樹脂層(B層)とのSP値の差が1.9(cal/cm1/2以下であり、かつ沸点が115℃以下である水とメタノールを除く希釈溶剤が熱硬化性薄膜層(C層)を形成する塗料の水とメタノールを除く希釈溶剤100重量部に対して50〜100重量部であることを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
9.上記熱硬化性薄膜層(C層)は酸化セリウム微粒子、酸化チタン微粒子、および酸化亜鉛微粒子から選択される少なくとも1種の金属酸化微粒子を含むことを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
10.ハードコート層(C層)上に更にPE−CVD(プラズマ化学気相成長プロセス)プロセスなどのドライハードコートプロセスにより形成されたプラズマ重合有機ケイ素を含んでなる層(D層)が積層された上記1〜9のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
本発明の積層体は、ポリカーボネート樹脂を用いてなる層上に熱可塑性樹脂層(B層)および湿式法で形成された熱硬化性薄膜層(C層)を積層したポリカーボネート樹脂積層体であり、C層を特定の温度範囲で形成させることにより、耐擦傷性、密着耐久性、および耐熱性の向上が可能となった。そのため、その奏する産業上の効果は格別である。
以下、本発明を詳細に説明する。
(i)ポリカーボネート樹脂層(A層)
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールA型ポリカーボネート以外にも、他の二価フェノールを用いて重合された高耐熱性または低吸水率の各種のポリカーボネート樹脂や、脂肪族ジオールを用いて重合された高耐熱性の各種のポリカーボネート樹脂であってもよい。ポリカーボネート樹脂はいかなる製造方法によって製造されたものでもよく、界面重縮合の場合は通常一価フェノール類の末端停止剤が使用される。ポリカーボネート樹脂はまた3官能フェノール類を重合させた分岐ポリカーボネート樹脂であってもよく、更に脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸、または二価の脂肪族または脂環族アルコールを共重合させた共重合ポリカーボネートであってもよい。ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は13,000〜40,000の範囲であると、幅広い分野に適用可能となる。粘度平均分子量が20,000未満であると流動性に優れ車両用樹脂窓の中でも、複雑な形状や大型の樹脂成型品(例えばバックドアウィンドウ)に好適となり、粘度平均分子量が20,000以上であると強度に優れ、車両用樹脂窓全般に好適となる。本発明の好適な用途である車両用樹脂窓においては、目的とする成型品に合わせて分子量の選択が必要である。本発明の樹脂板は厚肉であるため、比較的高い分子量においても成形時の歪みは許容限度内となる。粘度平均分子量の上限は、汎用性の点からより好ましくは35,000、更に好ましくは30,000である。
尚、かかる粘度平均分子量はポリカーボネート樹脂全体として満足すればよく、分子量の異なる2種以上の混合物によりかかる範囲を満足するものを含む。特に粘度平均分子量が50,000(より好ましくは80,000以上、更に好ましくは100,000以上)を超えるポリカーボネートの混合は、溶融時のエントロピー弾性を高くする点で有利な場合がある。例えば、本発明においてはジェッティングの抑制に効果がある。エントロピー弾性の向上による効果は、ポリカーボネートの分子量が高いほど顕著となるが、実用上該分子量の上限は200万、好ましくは30万、より好ましくは20万である。かかるポリカーボネート樹脂を0.5〜20重量%、好ましくは1〜10重量%配合すると、成形性を特に損なうことなく所定の効果が得られる。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液から20℃で求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。ポリカーボネート樹脂の詳細については、例えば、特開2002−129003号公報に記載されている。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
他の二価フェノールを用いて重合された、高耐熱性または低吸水率の各種のポリカーボネート樹脂の具体例としては、下記のものが好適に例示される。
(1)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称)成分が20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつ9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称)成分が20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
(2)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、ビスフェノールA成分が10〜95モル%(より好適には50〜90モル%、さらに好適には60〜85モル%)であり、かつBCF成分が5〜90モル%(より好適には10〜50モル%、さらに好適には15〜40モル%)である共重合ポリカーボネート。
(3)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、BPM成分が20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつ1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン成分が20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
(4)該ポリカーボネートを構成するニ価フェノール成分100モル%中、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(以下“ビスフェノールC”と略称)成分が40〜90モル%(より好適には50〜80モル%)であり、かつビスフェノールA成分が10〜60モル%(より好適には20〜50モル%)である共重合ポリカーボネート。
一方、脂肪族ジオールを用いて重合された、高耐熱性の各種のポリカーボネート樹脂の具体例としては、該ポリカーボネートを構成する脂肪族ジオールがイソソルビド、イソマンニド、イソイディッドであるポリカーボネートが挙げられる。これらのなかでも特に、イソソルビド(1,4;3,6ージアンヒドローDーソルビトール)は、製造の容易さ、耐熱性に優れることから好ましい。
これらの特殊なポリカーボネートは、単独で用いてもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。また、これらを汎用されているビスフェノールA型のポリカーボネートと混合して使用することもできる。
これらの特殊なポリカーボネートの製法及び特性については、例えば、特開平6−172508号公報、特開平8−27370号公報、特開2001−55435号公報及び特開2002−117580号公報等に詳しく記載されている。
上記の熱可塑性樹脂は、上記の透明性を損なわない範囲において、従来公知の各種の添加剤を含有することができる。かかる添加剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、離型剤、摺動剤、赤外線吸収剤、光拡散剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、強化充填材、衝撃改質剤、光触媒系防汚剤、およびフォトクロミック剤等が例示される。尚、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、および離型剤などは、従来上記の熱可塑性樹脂における公知の適正量を配合できる。
(ii)熱可塑性樹脂層(B層)
本発明に用いる熱可塑性樹脂の線膨張係数は100〜130℃の範囲の平均で3×10−5〜80×10−5/Kであり、好ましくは3×10−5〜60×10−5/Kであり、さらに好ましくは3×10−5〜50×10−5/Kである。平均値が上限以下では、硬化過程およびその後の使用環境でのB層とC層の膨張の差が小さく、B層が変形したり、クラックが入ることや、C層にクラックが入ることを防ぐことができる。C層の上にさらにドライコーティングシステム工程によって製膜した層(D層)が形成されている場合、D層の線膨張係数は通常0.1×10−5〜2×10−5/Kであり、熱可塑性樹脂層(B層)や熱硬化性薄膜層(C層)との線膨張係数の差が大きいが、B層の線膨張係数の平均値が100〜130℃の範囲で3×10−5〜80×10−5/Kの場合はD層の製膜時の温度を適切に設定することによって製膜時およびその後の使用環境での変形やクラック発生を防ぐことができる。
熱可塑性樹脂の種類の具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリジシクロペンタジエン等のアモルファスポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレート)等のポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミドなどが挙げられる。中でも優れた透明性を有するポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレート)等のポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホンが好ましい。具体的にはダイセル・エボニック(株)社製「hw55」、アルケマ(株)社製「HT121」、クラレ製「パラペットHR−L」、旭化成ケミカルズ(株)社製「PM120N」、「980N」等が挙げられる。
本発明に用いる熱可塑性樹脂層は、紫外線吸収性能を有する熱可塑性樹脂組成物を用いてなることが好ましい。紫外線吸収性能を持たせるためには、熱可塑性樹脂に有機系紫外線吸収剤または無機系紫外線吸収剤を添加すること、または紫外線吸収基を固定化することにより達成できる。有機系紫外線吸収剤は、耐候性向上のため好ましく、なかでも光分解速度が遅く、耐久性に優れているベンゾトリアゾール系またはトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。
中でもトリアジン系紫外線吸収剤がより好ましい。前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾ−ルが挙げられる。また前記トリアジン系紫外線吸収剤としては、具体的に、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−(4,6−ビス(2.4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(オクチル)オキシ]−フェノール等が挙げられる。これらのベンゾトリアゾール系またはトリアジン系紫外線吸収剤は単独あるいは2種以上の混合物で用いることができる。熱可塑性樹脂中に含有する有機系紫外線吸収剤の量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.3〜35.0重量部であることが好ましく、1.0〜25.0重量部であることがより好ましく、2.0〜15.0重量部であることが更に好ましい。
本発明に用いる熱可塑性樹脂は、ISO 306 B−50に従い、試験荷重50N、昇温速度50℃/hで測定されるビカット軟化温度が110℃以上140℃以下であることが好ましく、115℃以上135℃以下であることがより好ましい。下限以上では屋外用途、特に自動車樹脂グレージングに求められる耐熱性を満たすことができるため好ましい。上限以下では熱硬化性薄膜層(C層)を熱硬化で形成させた後のポリカーボネート樹脂積層体が変形しないため好ましい。つまり、本発明ではポリカーボネート樹脂と熱硬化性樹脂のISO 306 B−50に従い、試験荷重50N、昇温速度50℃/hで測定されるビカット軟化温度の間で熱硬化性薄膜層を形成させるため、熱硬化性樹脂のビカット軟化温度が高すぎると必然的に熱硬化性薄膜の焼成温度も高くなり、140℃を越えるとポリカーボネート樹脂のビカット軟化温度である147℃に近づきすぎることによってポリカーボネート樹脂積層体そのものが寸法を維持できなくなる。
(iii)熱硬化性薄膜層(C層)
本発明に用いる熱硬化性薄膜層としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、高分子型エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、およびポリイミド系樹脂等が挙げられ、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、シリコーン系樹脂が特に好ましい。
本発明に用いる熱硬化性薄膜層の厚みは、好ましくは2〜20μm、より好ましくは3〜15μmである。塗膜層の厚みがかかる範囲であると、熱硬化時に発生する応力のために塗膜層にクラックが発生したり、オルガノシロキサン樹脂層とアクリル樹脂層との密着性が低下したりすることがなく、本発明の目的とする十分な耐摩耗性を有する塗膜層が得られることとなる。
本発明に用いる熱硬化性薄膜層を形成させる焼成温度は、上記A層を形成するポリカーボネート樹脂と上記B層を形成する熱可塑性樹脂のISO 306 B−50に従い、試験荷重50N、昇温速度50℃/hで測定されるビカット軟化温度の間である。焼成温度がかかる範囲であると、焼成温度が熱可塑性樹脂のビカット軟化温度よりも高いにもかかわらず熱硬化性薄膜層を形成させることができるだけでなく、熱可塑性樹脂と熱硬化性薄膜層との間の層間密着性が飛躍的に向上し、本発明の目的とする十分な耐擦傷性、密着耐久性、および耐熱性に優れた積層体が得られることとなる。
熱硬化の過程で基材は膨張しようとするのに対して硬化層は熱による膨張と縮合反応の進行による収縮が拮抗する形になる。基材の温度が100℃付近になるまでは縮合反応が十分には進行しておらずC層には粘性が存在するだけで弾性はほとんど存在しないので、B層とC層の間に応力はほとんど存在しない。基材の温度が100℃以上になると縮合反応がある程度進行し、C層は粘性と弾性が共存する状態になりB層とC層の間に応力が発生する。硬化温度で十分に縮合反応を進行させることでC層の粘性はなくなる。B層の100℃から硬化温度の範囲の線膨張係数が3×10−5〜80×10−5/Kの範囲であれば基材が熱硬化温度に到達するまでの過程およびC層の完全硬化過程でコート層にクラックが入るのを防止することができる。
熱硬化反応が終了し、基材を冷却する過程ではB層とC層の線膨張係数の差から応力が緩和され、基材温度がおよそ100℃になった段階で応力が0になる。
基材温度が一旦100℃以下まで低下した後に、再度環境試験中で100℃以上に温度上昇していく過程ではC層は粘性を持たない状態でB層との線膨張係数の差に基づく応力を受けるようになり、熱硬化温度以下でもC層にクラックが発生したり、B層が変形したりする。B層の100℃から硬化温度の範囲の線膨張係数が3×10−5〜80×10−5/Kの範囲であれば基材が熱硬化温度に到達するまでの過程およびC層の完全硬化過程でコート層にクラックが入るのを防止することができ、高温環境試験でも、より高温までC層のクラック発生やB層の変形を抑制することができる。
本発明に用いる熱硬化性薄膜層(C層)を形成する塗料の水とメタノールを除く希釈溶剤と熱可塑性樹脂層(B層)とのSP値の差が好ましくは1.9(cal/cm1/2以下であり、かつ沸点が115℃以下である水とメタノールを除く希釈溶剤が熱硬化性薄膜層(C層)を形成する塗料の水とメタノールを除く希釈溶剤100重量部に対して50〜100重量部であることが好ましい。一般的にSP値が近いものほど(すなわち、2成分のSP値の差が小さいほど)相溶性に優れるため、熱硬化性薄膜層(C層)を形成する塗料の水とメタノールを除く希釈溶剤と熱可塑性樹脂層(B層)とのSP値の差が好ましくは1.9(cal/cm1/2以下の場合、より好ましくは1.8(cal/cm1/2の場合、塗料の水とメタノールを除く希釈溶剤が熱可塑性樹脂層(B層)を適度に侵食することでアンカー効果を発現し、熱硬化によって形成された熱硬化性薄膜層(C層)との密着性が高まることが期待される。また、塗料の水とメタノールを除く希釈溶剤の沸点が115℃以下、より好ましくは110℃以下であれば、熱硬化過程で焼付け温度が100℃を超えてきたときに水とメタノールを除く希釈溶剤が熱硬化性薄膜層(C層)から概ね揮発している状態となり過分に残留することがないので、熱可塑性樹脂層(B層)への侵食が強くなりすぎてかえって密着性を低下させたり、白化させたりする原因にならない。さらに、混合溶剤の場合に共沸することを考慮すると、沸点が115℃以下である水とメタノールを除く希釈溶剤が熱硬化性薄膜層(C層)を形成する塗料の水とメタノールを除く希釈溶剤100重量部に対して50〜100重量部、より好ましくは60〜100重量部、さらに好ましくは75〜100重量部であることが好ましい。なお、シリコーン系樹脂の加水分解反応時や縮合反応時に発生する水やメタノールは、熱可塑性樹脂層(B層)への侵食に寄与しないために本発明における希釈溶剤の要件から除外できる。
本発明に用いる熱硬化性薄膜層(C層)は、酸化セリウム微粒子、酸化チタン微粒子、および酸化亜鉛微粒子から選択される少なくとも1種の金属酸化微粒子を含むことが好ましい。
(iii−1)アクリル系樹脂
アクリル系樹脂層を形成する方法としては熱硬化型アクリル樹脂塗料を調製し、これを共押出シートに塗布し、加熱乾燥する方法が採用される。本発明において、かかる熱硬化型アクリル樹脂塗料塗料は、アクリル樹脂および架橋剤を溶剤に溶解して得られ、さらに必要に応じて硬化触媒、その他添加剤成分を添加しても良い。
熱硬化型アクリル樹脂層を形成する樹脂成分は、アクリルポリオールを必須成分として含む。アクリルポリオールは、水酸基を有するアクリル系単量体に由来する構造単位を必須とした重合体であり、適宜、カルボキシル基を有するアクリル系単量体、エステル基を有するアクリル系単量体や、アクリル系以外のビニル系単量体等の単量体に由来する構造単位をさらに含んだ共重合体であってもよく、重合体を構成する構造単位の種類については特に限定はない。
水酸基を有するアクリル系単量体としては、たとえば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルや、これらのε−カプロラクトン付加物等を挙げることができ、1種のみ、または、必要に応じて2種以上を併用してもよい。カルボキシル基を有するアクリル系単量体としては、たとえば、(メタ)アクリル酸等を挙げることができ、1種のみ、または、必要に応じて2種以上を併用してもよい。エステル基を有するアクリル系単量体としては、たとえば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル等を挙げることができ、1種のみ、または、必要に応じて2種以上を併用してもよい。ビニル系単量体としては、たとえば、スチレン等を挙げることができ、1種のみ、または、必要に応じて2種以上を併用してもよい。アクリルポリオールは、上記アクリル系単量体およびビニル系単量体から、適宜単量体を選んで、重合させることによって得られる。アクリルポリオールの水酸基価は、60〜200KOHmg/gの範囲にあるのが好ましく、さらに好ましくは70〜160KOHmg/gである。
本発明で用いられる架橋剤は、ブロックイソシアネートもしくはポリイソシアネート化合物を必須成分として含有し、メラミン樹脂をさらに含有することがある。架橋剤は塗膜の強度を整えるものである。ポリイソシアネートとしてはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類およびこれらの多量体が挙げられる。ブロックイソシアネートとしては、上述のポリイソシアネートを、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等のブロック剤と反応させて得られるブロック化物を挙げることができる。これらは単独で使用しても2種以上を併用しても良く2種以上を併用する場合はポリイソシアネートとブロックイソシアネートを併用しても良いが、反応を適切に進める観点からはポリイソシアネートとブロックイソシアネートの併用は好ましくなく、反応性、塗料の保存安定性の観点からブロックイソシアネートの使用が望ましい。中でも、ブロックイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートブロック化物およびイソホロンジイソシアネートブロック化物のうちの少なくとも1種であると、耐候性が優れるようになるため好ましい。
熱硬化型アクリル樹脂塗料の架橋を補助するためのメラミン樹脂としては、たとえば、メチルエーテル化メラミン、エチルエーテル化メラミン、ブチルエーテル化メラミン等のアルキルエーテル化メラミンを挙げることができ、1種のみ、または、必要に応じて2種以上を併用してもよい。架橋剤として配合されるブロックイソシアネートおよびメラミン樹脂の重量比率は、ブロックイソシアネート/メラミン樹脂=100/0〜30/70であり、好ましくは50/50〜30/70である。上記重量比率が30/70未満となると、架橋剤全体に占めるメラミン樹脂の割合が大きくなって、耐酸性および耐汚染性が低下するため好ましくない。塗料中に含まれる架橋剤の配合割合については、特に限定はないが、たとえば、樹脂成分100重量部に対して、好ましくは20〜40重量部、さらに好ましくは25〜35重量部である。架橋剤の配合割合が少なすぎると、十分に硬化せず、耐酸性および耐汚染性が低下する。一方、多すぎると、屈曲性が低下するおそれがある。架橋剤は、ベンゾグアナミン等のブロックイソシアネートや、メラミン樹脂以外の他の薬剤を含むものでもよい。
熱硬化型アクリル樹脂塗料にはさらに必要に応じて硬化触媒が添加される。硬化触媒に特に制限はないが、好ましくはジブチル錫ジラウレート、ビス(ジブチル錫)マレエート、ビス(ジブチル錫)フマレート、ジメチル錫ジネオデカノエート等のジアルキル錫ジカルボン酸塩が好ましく使用される。
熱硬化型アクリル樹脂塗料には、必要に応じて、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のメラミン樹脂硬化触媒;ベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤;表面調整剤等の添加剤を配合することができる。塗料中のこれらの添加剤の配合割合は、特に制限はなく、適宜選択することができる。このような熱硬化型アクリル樹脂塗料は自動車ボディーの塗装、橋脚の保護用等に各種市販されており、例えば日本ペイント製スーパーラックネオ、スーパーラックネオLT、関西ペイント製レタンPG、日立化成製ヒタロイド等が挙げられ、これら市販の熱硬化型アクリル樹脂塗料も好ましく用いることができる。
熱硬化型アクリル樹脂上記塗料を基材に塗布後熱硬化して塗膜を硬化させることができる。硬化温度としてはたとえば、110〜120℃であると、塗膜を十分に硬化させることができ、作業効率が高く、プラスチック素材の場合には耐熱性がそこなわれないため好ましい。
(iii−2)メラミン系樹脂
メラミン系樹脂層を形成する方法としてはメラミン系樹脂塗料を調製し、これを共押出シートに塗布し、熱硬化する方法が採用される。本発明において、かかるメラミン系樹脂塗料は、メラミン系樹脂、架橋剤、硬化剤、および分散剤等を溶剤に溶解して得られる。
メラミン系樹脂とは、メチル化メチロールメラミン、プロピル化メチロールメラミン、ブチル化メチロールメラミン、イソブチル化メチロールメラミン等のメラミン樹脂単独、又はこれにアクリル樹脂、ポリエーテル、ポリエステル、シリコーン樹脂等の変成剤を本発明の特性を損なわない範囲で混合したものである。
架橋剤としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール等の短鎖グリコール、ポリエチレングリコール等の長鎖グリコールが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を配合してもよい。
硬化剤としては、例えばp−トルエンスルホン酸、シュウ酸、マレイン酸が挙げられる。かかるメラミン系樹脂塗料における架橋剤および硬化剤の配合量としては、その目的により適宜決められるが、通常架橋剤においてはメラミン樹脂の官能基および架橋剤の官能基が等モル量になることが目安とされ、メラミン系樹脂100重量部に対し好ましくは10〜200重量部、より好ましくは20〜150重量部である。また、硬化剤の量としてはメラミン系樹脂100重量部に対し好ましくは1〜10重量部、より好ましくは2〜7重量部である。
溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等の低級アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のセロソルブ類、メチルブチルエーテル、エチルブチルエーテール、ジエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。これらの溶剤は単独であるいは2種以上混合して使用される。
また、メラミン系樹脂塗料中に、種々の添加剤を配合することも可能である。例えば、紫外線吸収剤、レベリング剤、消泡剤等の機能調整剤が配合される。
メラミン系樹脂塗料を基材に塗布後10〜30分程度、室温で乾燥させた後、熱硬化してメラミン系樹脂層が形成される。熱硬化温度は、好ましくは100〜145℃、より好ましくは105〜140℃、さらに好ましくは110〜135℃である。熱硬化時間は、好ましくは10分間〜4時間、より好ましくは20分間〜3時間、さらに好ましくは30分間〜2時間である。
(iii−3)シリコーン系樹脂
シリコーン系樹脂層を形成方法としては金属酸化物微粒子分散液、並びにコロイダルシリカとアルコキシシランの加水分解縮合物とからなるオルガノシロキサン樹脂形成質、酸、硬化触媒、および溶媒からなるコーティング用塗料を共押出シートに塗布し、熱硬化する方法が挙げられる。シロキサン結合をもった硬化樹脂層を形成するものとしては、3官能シロキサン単位に相当する化合物(トリアルコキシシラン化合物など)を主成分とする化合物の部分加水分解縮合物、好ましくは更に4官能シロキサン単位に相当する化合物(テトラアルコキシシラン化合物など)および/または2官能シロキサン単位に相当する化合物を含む部分加水分解縮合物、並びに更にこれらにコロイダルシリカなどの金属酸化物微粒子を充填した部分加水分解縮合物などが例示される。シリコーン樹脂系ハードコート剤は更に1官能性のシロキサン単位を含んでよい。これらには縮合反応時に発生するアルコール(アルコキシシランの部分加水分解縮合物の場合)などが含まれるが、更に必要に応じて任意の有機溶剤、水、あるいはこれらの混合物に溶解ないしは分散させてもよい。そのための有機溶剤としては、低級脂肪酸アルコール類、多価アルコールとそのエーテル、エステル類などが挙げられる。なお、ハードコート層には平滑な表面状態を得るためレベリング剤を添加できる。かかるコロイダルシリカ、アルコキシシラン、酸、硬化触媒、および溶媒の具体的態様、配合量、並びに調整条件の詳細に関してもまた国際公開2010/137721号パンフレットに記載されている。
本発明に用いるオルガノシロキサン樹脂層の形成は、上記アクリル樹脂層の形成に引き続き連続して行う。オルガノシロキサン樹脂組成物が塗布された基材は、通常、常温から該基材の熱変形温度以下の温度下で溶媒を乾燥、除去した後、加熱硬化する。熱硬化は基材の耐熱性に問題がない範囲で高い温度で行う方がより早く硬化を完了することができ好ましい。なお、常温では、熱硬化が進まず、硬化被膜を得ることができない。これは、コーティング塗料中のオルガノシロキサン樹脂組成物が部分的に縮合したものであることを意味する。かかる熱硬化の過程で、残留するSi−OHが縮合反応を起こしてSi−O−Si結合を形成し、耐摩耗性に優れたコート層となる。熱硬化温度が100℃以上の領域では縮合反応がより速やかに進行する。100℃以上では縮合反応で生成する水の沸点を超えているため、生成した水が系中から速やかに除去されるため縮合反応が進行すると考えられる。熱硬化温度は、通常シリコーン樹脂層を形成する目的の場合、好ましくは100〜145℃、より好ましくは105〜140℃、さらに好ましくは110〜135℃である。熱硬化時間は、好ましくは10分間〜4時間、より好ましくは20分間〜3時間、さらに好ましくは30分間〜2時間である。
(iv)A層およびB層の積層方法
ポリカーボネート樹脂層(A層)表面に熱可塑性樹脂層(B層)を積層するには任意の方法を用いればよく、特に熱圧着法または共押出法で行うことが好ましい。積層体製造工程の具体例を以下に記す。
熱圧着法としては任意の方法が採用されるが、例えば熱可塑性樹脂フィルムとポリカーボネート樹脂層をラミネート機やプレス機で熱圧着する方法、押出し直後のポリカーボネート樹脂層に熱可塑性樹脂フィルムを熱圧着する方法が好ましく、特に押出し直後のポリカーボネート樹脂層に連続して熱圧着する方法が工業的に有利である。この場合の熱圧着条件は、ポリカーボネート樹脂層や熱可塑性樹脂フィルムの厚さ、圧着面の状態等により異なり、一概に特定できないが、熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移点近傍又はそれ以上の温度、通常熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移点−10℃〜ガラス転移点+150℃、好ましくはガラス転移点−5℃〜ガラス転移点+100℃で0.05kg/cm以上、好ましくは1〜10kg/cm程度の線圧を加えることにより熱圧着できる。
共押出法は、積層板の製造に用いられる押出装置としては、一般に基板層を構成するポリカーボネート樹脂を押し出す一つのメイン押出機と、被覆層を構成する熱可塑性樹脂を押し出す1又2以上のサブ押出機により構成され、通常サブ押出機はメイン押出機より小型のものが採用される。熱可塑性樹脂の種類により、サブ押出機の温度は適宜設定する。熱可塑性樹脂がアクリル系樹脂の場合、メイン押出機の温度条件は、通常230〜310℃、好ましくは240〜300℃であり、またサブ押出機の温度条件は通常200〜300℃、好ましくは210〜290℃である。2種以上の溶融樹脂を被覆する方法としては、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式などの公知の方法を用いることができる。この場合、フィードブロックで積層された溶融樹脂はTダイなどのシート成形ダイに導かれ、シート状に成形された後、表面を鏡面処理された成形ロール(ポリッシングロール)に流入して、バンクを形成する。このシート状成型物は、成形ロール通過中に鏡面仕上げと冷却が行われ、積層板が形成される。また、マルチマニホールドダイの場合は、該ダイ内で積層された溶融樹脂は同様にダイ内部でシート状に成形された後、成形ロールにて表面仕上げおよび冷却が行われ、積層板が形成される。ダイの温度としては、通常220〜300℃、好ましくは230〜290℃であり、成形ロール温度としては、通常90〜190℃、好ましくは100〜180℃である。ロールは縦型ロールまたは、横型ロールを適宜使用することができる。
共押出しにより得られたポリカーボネート樹脂層(A層)および可塑性樹脂層(B層)の厚みの合計は、1mm〜20mmが好ましく、1mm〜18mmがより好ましく、1mm〜15mmが特に好ましい。下限以上では、外部からの負荷に対する撓みが小さくなり寸法安定性が優れるために好ましく、上限以下では、薄肉化や軽量化を阻害せず、外部を歪みなく見ることができるため好ましい。
また、共押出しにより得られたポリカーボネート樹脂層(A層)および可塑性樹脂層(B層)の厚み比率は、A/B=200〜4が好ましく、100〜9がより好ましい。厚み比率が上限以下では、B層に紫外線吸収剤を含有させた際に十分な耐候性が得られ更に優れた耐擦傷性が得られるため好ましく、下限以上では、ポリカーボネート樹脂と熱硬化性樹脂のビカット軟化温度の間で熱硬化性薄膜層を形成させた際に熱可塑性樹脂の軟化による変形がおこりにくくなるため好ましい。
(v)ドライコーティングシステム工程(D層)
本発明で用いられる各種のポリカーボネート樹脂層基材層上、熱可塑性樹脂層上、および熱硬化性薄膜層上に二酸化ケイ素などの金属酸化物薄膜を析出させる、もしくは金属酸化物薄膜分散液を塗布し化学変性させる、もしくは有機ケイ素系化合物系に真空紫外線等の強エネルギー線を照射し二酸化ケイ素などの金属酸化物薄膜を形成させる等の方法で、耐摩耗性、耐擦傷性に優れた層や光触媒超親水性層等の機能性層を形成することも出来る。これらは例えば、二酸化ケイ素などの金属酸化物薄膜を析出させる技術については特表2009−540124号公報、特表2009−502569号公報、特開2011−016257号公報 特開2010−253683号公報に、金属酸化物薄膜分散液を塗布し化学変性させる方法についてはJ.Phys.Chem.B.110(2006年)6198−6203ページ等に、有機ケイ素系化合物系に真空紫外線等の強エネルギー線を照射し二酸化ケイ素などの金属酸化物薄膜を形成させる方法については、特開2011−202050号公報等に詳しく記載されている。これらの被膜は、上述した湿式法で形成された熱硬化性薄膜を越えて耐擦傷性を著しく改良する。中でも二酸化ケイ素などの金属酸化物薄膜を析出させる方法では、使用する金属酸化物原料の組成や製膜条件を最適化することで、耐擦傷性と耐熱性等その他性質とのバランスをとることができ、さらにガスバリヤ性も付与されることで下層への水蒸気や水分の浸透を阻害して耐候性を高めることで、ポリカーボネート樹脂積層体のライフタイムを増大することができるために好ましい。本願に好適な二酸化ケイ素などの金属酸化物薄膜を析出させる方法としては、化学気相成長プロセス(CVDプロセス)、真空蒸着、スパッタリング等のプロセスが挙げられる。特に好適な化学気相成長プロセス(CVDプロセス)においては、容量結合型、誘導結合型の双方が使用できるが、2枚の電極間に交流電力を印加する等により、空間中に均一性の高い交流電界を発生させ、その中にプラズマの安定継続と反応促進のためのガス種(アルゴン、酸素、窒素等)と膜形成の原料となるガス種(ケイ素化合物等)を含んだ反応プラズマ場を発生させる等の手法を採る容量結合型が、本願が目的とする諸性能をバランス良く得る上での条件制御性に優れるため、最も好ましい。
(vi)その他の工程
本発明のポリカーボネート樹脂積層体は上記の工程以外に印刷層を有していてもよい。かかる印刷層はグレージングにおいては周縁部に形成され、周縁部に形成される接着剤や構造部材の目隠し機能を有する。また建材用途などにおいては意匠、デザインの機能を有する。印刷層は、A層またはB層において、いずれか1面または両面に形成されても構わない。印刷層をインキ塗工で形成する場合、かかる形成方法としては、各種の印刷方法、スプレー塗装、および刷毛塗りなどの各種の方法が適用できる。印刷方法は特に限定されず、従来公知の方法で、平板のもしくは湾曲したシート表面に印刷できる。例えば、スプレー印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、およびインクジェット印刷などの方法が例示され、これらの中でもスクリーン印刷が最も好ましく適用できる。
また、本発明のポリカーボネート樹脂積層体は以上の工程以外にトリム、穿孔、および周辺部材の取り付けなどを行い、樹脂グレージングとしての最終部品または最終製品とすることができる。かかる周辺部材としては、枠、ピン、ネジ、ファスナー、緩衝材、シール材、ヒンジ、およびロック機構などが例示される。かかる周辺部材は、接着、粘着、ネジ止め、溶着、嵌め合い、超音波溶着、およびレーザー溶接などの固定化手段を用いて取り付けられる。
(vii)構造部材への取り付け
本発明のポリカーボネート樹脂積層体は、上述の周辺部材の取り付けと同様に、各種の固定化手段を用いて車体の如き最終製品に取り付けることができる。グレージングの場合かかる取り付けにおいては、接着が最も好適な手段として適用される。かかる接着方法には、硬質接着剤、半硬質接着剤、および弾性接着剤のいずれも利用できるが、本発明では構造接着剤として優れている弾性接着剤が好ましく、特にウレタン系弾性接着剤が、そのシーリング性能、強度およびコストなどの点から好ましい。かかる接着層の形成は、ポリカーボネート樹脂層上、熱可塑性樹脂層上、熱硬化性薄膜層上、あるいは印刷層上のいずれに形成されてもよい。更に、一旦積層された層を各種化学処理、ブラスト、研磨、および切削などの方法により除去し、接着層を形成してもよい。印刷層の形成においては版を埋めて印刷しないことにより、またハードコート層の形成では主としてマスキングを施すことにより、接着層を設ける部位の表面層を所定の層にすることができる。
好適な固定化手段であるウレタン系弾性接着剤を適用するに当たり、その接着性を向上させるため、予め接着用プライマーを塗工して、ウレタン接着剤の塗工を行うことが好ましい。かかるウレタン接着剤用プライマーは、基材層および印刷層上においては、ポリイソシアネート化合物を主成分とするものが好ましく、通常、市販品においてボディ用プライマーまたは塗膜用プライマーと称されるものが好適に利用できる。一方、ハードコート層上においては、ポリイソシアネート化合物とシラン化合物とを主成分とするものが好ましく、通常、ガラス用プライマーと称されるものが好適に利用できる。
ウレタン接着剤用プライマーは、かかる反応活性を有する主成分の他に、概して溶剤、充填剤、触媒、乾燥剤、樹脂成分、および任意に他の化合物が配合されてなる。
ポリカーボネート樹脂層、熱可塑性樹脂層、および印刷層上に適用するプライマーにおいては、かかるポリイソシアネート化合物は、芳香環を含有するポリイソシアネートを主成分とすることが好ましい。かかるポリイソシアネート化合物は反応性に優れる。より好適には、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4,4−トリイソシアネート、およびトリス(p−イソシアネートフェニル)チオホスフェートからなる群から選択される少なくとも1種のポリイソシアネート化合物を、接着用プライマー中のポリイソシアネート化合物100モル%中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは55〜90モル%とする。他のポリイソシアネート化合物には、脂肪族ポリイソシアネート化合物、および脂環式ポリイソシアネート化合物などが利用できる。かかる化合物としては、トリレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートとのイソシアヌレート変性体、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチルロールプロパンとのアダクト変性体、HDIのイソシアヌレート変性体、およびイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体が例示され、中でもトリレンジイソシアネートとHDIとのイソシアヌレート変性体が反応性の調整が容易なため好適である。ポリカーボネート樹脂層、熱可塑性樹脂層、および印刷層上に適用するプライマーは、好適には、MDI、トリス(p−イソシアネートフェニル)チオホスフェート、およびトリレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートとのイソシアヌレート変性体からなる組合せが挙げられ、特にトリス(p−イソシアネートフェニル)チオホスフェートをかかる3者の合計100モル%中、50〜70モル%の範囲とすることが好ましい。
熱硬化性薄膜層上に適用するプライマーにおいては、好適には、シランカップリング剤、並びにシラン化合物とポリイソシアネート化合物との反応生成物が主成分として利用される。シランカップリング剤としては、従来公知の各種の剤が利用できるが、殊にγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの如きエポキシ基含有シランカップリング剤、およびN−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランの如きアミノ基含有シランカップリング剤が併用されることが好ましい。更に必要に応じてビニルトリメトキシシランの如きビニル基含有シランカップリング剤が使用されることも好ましい。シラン化合物とポリイソシアネート化合物との反応生成物としては、上記各種のポリイソシアネート化合物と、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランの如きメルカプト基含有アルコキシシラン化合物との反応生成物が利用できる。かかるポリイソシアネート化合物には、ヘキサメチレンジイソシアネートに代表される脂肪族ポリイソシアネート化合物、イソホロンジイソシアネートに代表される脂環式ポリイソシアネート化合物、並びにこれらのアダクト変性体、イソシアヌレート変性体、およびビウレット変性体が含まれる。
接着用プライマー層は、各種のアプリケータを用いてプライマー組成物を塗工し、通常常温にて乾燥させて形成される。塗工方法としては、例えば、ハケ塗り法、スプレーコーティング法、ワイヤバー法、ブレード法、およびロールコーティング法などを用いて塗工できる。接着用プライマー層の厚みは、好ましくは2〜40μmの範囲、より好ましくは3〜30μm、より好ましくは5〜20μmの範囲である。
本発明におけるウレタン接着剤は、湿気硬化型1液性ウレタン接着剤、および2液性ウレタン接着剤のいずれも使用可能であるが、特に湿気硬化型1液性ウレタン接着剤が生産効率に優れているので好ましい。湿気硬化型1液性ウレタン接着剤は、通常イソシアネート基含有化合物、とりわけイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(以下、NCO末端プレポリマーと称す)を主成分とし、これに対して可塑剤、充填剤、触媒、および任意にその他の化合物が配合されてなる。その他の化合物は、該組成物に所望の特性を付与することなどを目的とするものであって、例えばポリイソシアネート化合物およびγ−メルカプトプロピルトリメトキシシランの如きシランカップリング剤などの密着剤、耐熱接着性を付与するための(メタ)アクリレート系共重合体、並びに軽量性・制振性・防音性を付与するための発泡剤やマイクロバルーンなどを包含する。ここで、プレポリマーの含有量は、通常、ウレタン接着剤組成物全量中好ましくは15〜50重量%であり、より好ましくは20〜45重量%、更に好ましくは30〜45重量%の範囲で選択される。ウレタン接着剤組成物の好適な態様の代表例としては、横浜ゴム(株)製のWS−222、およびサンスター技研(株)製の#560などダイレクトグレージング用の各種の接着剤が好適に例示される。
本発明におけるウレタン接着剤層の厚みは、Adhesives and Sealants : General Knowledge, Application Techniques, New Curing Techniques (Elsevier Science Ltd,2006)の385頁Figure27のPlastic/Steelの領域で決定するのが好ましい。但し、かかる図は比較的安全サイドでの領域設定となっていることから、各種の形状や使用条件を鑑みて、かかる領域を区分する線よりも2mm未満、好ましくは1.5mm未満の範囲でウレタン接着剤の厚みを薄くすることも可能である。特に成形品の長尺が1m未満の場合は、Δα=12×10−6Kのラインを外挿するライン上で厚みの設計をすることが可能である。
以下、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、何らこれに限定されるものではない。なお実施例、比較例の物性評価は下記の方法に従った。
(I)評価項目
(I−1)透明性
実施例で得られた樹脂積層体から切り出した100mm四方の試験片を、JIS K 7361−1、JIS K 7136に準拠して、全光線透過率値(Tt)、ヘイズ値(Haze)を評価した。
(I−2)耐擦傷性
ASTM1044に準拠し、テーバー磨耗試験機にて摩耗輪CS−10Fを装着、荷重500g下での500回転後と1000回転後のヘイズ値(Haze)を濁度計(NDH2000、日本電色工業製)を用いて測定し、試験後と試験前のヘイズ値差(ΔHz)を測定した。
(I−3)ハードコート層の密着性
ハードコート層にカッターで1mm間隔に縦横に各11本の切れ目を入れて100個のマス目を作り、この目にセロテープ(登録商標)(ニチバン(株)製粘着テープ)を貼り付けた後、90°の方向に一気に剥した。ハードコート層が剥離せず、残ったマス目の数を数えた。
(I−4)密着耐久性
実施例で得られた樹脂積層体から切り出した100mm四方の試験片を沸騰水中に3時間浸漬した後に、目視にて外観観察、及び上記(I−3)同様にして密着性試験を行った。
(I−5)耐候性試験
試験片をスーパーキセノンテスト(UV照射強度180W/m、ブラックパネル温度63℃)にて1000時間、3000時間暴露し、試験片を取り出して下記の黄変度、耐候クラック性、耐候密着性、耐候剥離を評価した。
<黄変度>
JISZ8722に準拠し、積分球分光光度計CE−7000A(X−Rite社製)にて測定し、耐候性試験後と試験前の黄変度差(ΔYI)を測定した。
<耐候クラック性>
耐候性試験後の外観(クラックの有無)を下記の基準で評価した。
○:異常なし
△:僅かにクラックあり
×:塗膜全体にクラックあり
<耐候密着性>
耐候性試験後に、前記初期密着性と同様にして密着性試験を行った。
<耐候剥離>
耐候性試験後の外観(剥離の有無)を下記の基準で評価した。
○:異常なし
△:一部剥離あり
×:全面剥離
(I−6)耐熱性
実施例で得られた樹脂積層体から切り出した100mm四方の試験片を、100℃、110℃、120℃環境下で1000時間放置し、試験片を取り出して下記の耐熱クラック性、耐熱密着性を評価した。
<耐熱クラック性>
耐熱性試験後の外観(クラックの有無)を下記の基準で評価した。
○:異常なし
△:僅かにクラックあり
×:塗膜全体にクラックあり
<耐熱密着性>
耐候性試験後に、前記(I−3)同様にして密着性試験を行った。
(II)ポリカーボネート樹脂層(A層)に用いるポリカーボネート樹脂
(II−1)一般的なポリカーボネート樹脂
常法によりビスフェノールAとホスゲンを界面重合法で重合して得た粘度平均分子量23,900のポリカーボネート樹脂粉粒体である帝人化成(株)製パンライトL−1250WPを使用した。
(II−2)熱線吸収性ポリカーボネート樹脂
常法によりビスフェノールAとホスゲンを界面重合法で重合して得た粘度平均分子量23,900のポリカーボネート樹脂粉粒体に熱線吸収剤を配合した帝人化成(株)製パンライトAM−1125ZVを使用した。
(III)熱可塑性樹脂層(B層)に用いる熱可塑性樹脂
実施例ならびに比較例で用いた熱可塑性樹脂は下記の通りであり、略号を表に示す。またISO 306 B−50に従い、試験荷重50N、昇温速度50℃/hで測定されたそれぞれのビカット軟化温度およびそれぞれの熱可塑性樹脂100重量部に対する熱可塑性樹脂中の紫外線吸収剤量を表1に示す。なお、紫外線吸収剤はアデカスタブLA−31(ADEKA(株)社製)を用いた。
HT121:アルケマ社製アルトグラスHT121
980N:旭化成ケミカル製980N
PM120N:旭化成ケミカル製PM120N
V020:アルケマ社製アルトグラスV020
HR−L:クラレ製パラペットHR−L
Figure 0006130163
(IV)共押出シートの製造
上記ポリカーボネート樹脂層(A層)を形成する(II−1)ならびに(II−2)記載のポリカーボネート樹脂層はスクリュー径40mmの単軸押出機で、また、上記熱可塑性樹脂層(B層)を形成する熱可塑性樹脂はスクリュー径30mmの単軸押出機でそれぞれ溶融させ、フィードブロック法にて2層に積層させ、設定温度280℃のT型ダイスを介して押出し、得られるシートを鏡面仕上げされたロールにて冷却し、ポリカーボネート樹脂シートの片面に、表1記載の熱可塑性樹脂層を積層した樹脂積層体を得た。なお、A層とB層の厚みとA層とB層の厚み比率は表1に示した通りである。
(V)熱硬化性薄膜層に用いる塗料の調製
(V−1)シリコーン系樹脂塗料(C−1)の調製
水分散型コロイダルシリカ分散液(触媒化成工業(株)製カタロイドSN−30、固形分濃度30重量%):100重量部に、濃塩酸(12M):0.1重量部を加えよく攪拌した。この分散液を10℃まで冷却し、その中にメチルトリメトキシシラン:161重量部を滴下した。メチルトリメトキシシランの滴下直後から反応熱で混合液の温度は上昇を開始し、かかる開始から数分後に60℃まで昇温した。60℃に到達後、氷水浴で冷却しながら、徐々に反応液の温度を低下させた。反応液の温度が35℃になった段階で、この温度を維持するようにして5時間攪拌し、これに、硬化触媒として45%コリンメタノール溶液:0.7重量部、pH調整剤としての酢酸:4.9重量部を混合し、コーティング塗料原液(α)を得た。
酸化セリウムスラリー(シーアイ化成(株)製、ナノテックスラリーCEANB、固形分濃度15重量%):7.2重量部を攪拌しながら、その中に2−プロパノール:100重量部を滴下し希釈した。かかる希釈スラリーを更に攪拌しながら、上記コーティング塗料原液(α):264重量部を滴下していき、該滴下終了後、更に酢酸エチル:311部を滴下した。最後にレベリング性の付与などを目的として、SH28PA(東レ・ダウコーニング(株)製):0.55重量部を添加し、オルガノシロキサン樹脂からなるコーティング塗料(C−1)を得た。動的光散乱法(大塚電子(株)製FPAR−1000使用)で測定した、塗料(C−1)における酸化セリウム微粒子の平均粒子径は45nmであった。尚、かかる(C−1)を硬化して得られるオルガノシロキサン組成物においては、コロイダルシリカおよびメチルトリメトキシシランから誘導されるオルガノシロキサン樹脂成分:100重量部に対して、酸化セリウム微粒子の割合は1重量部となる。
(V−2)メラミン系樹脂塗料(C−2)の調製
還流冷却器および撹拌装置を備え、窒素置換したフラスコ中にエチルメタクリレート:62.8重量部、シクロヘキシルメタクリレート:50.5重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート:13.0重量部、1−メトキシ−2−プロパノール:192.6重量部を添加混合した。混合物に窒素ガスを15分間通気して脱酸素した後、窒素ガス気流下にて70℃に昇温し、AIBN1:1.3重量部を加え、窒素ガス気流中、70℃で5時間攪拌下に反応させた。さらにAIBN2:0.7重量部を加えて80℃に昇温し、3時間反応させ、不揮発分濃度が40.0重量%のアクリル共重合体溶液(β)を得た。
メチル化メチロールメラミン(日本サイテックインダストリーズ(株)製サイメル301):100部に対し、アクリル共重合体溶液(β):20重量部、架橋剤として1,6−ヘキサンジオール:70重量部、硬化剤としてマレイン酸:5重量部、溶剤としてイソプロピルアルコール:150部、イソブチルアルコール:320部、エチレングリコールモノブチルエーテル:25部を添加、混合してメラミン系樹脂塗料(C−2)を得た。
(V−3)アクリル系樹脂塗料(C−3)の調製
日本ペイント製スーパーラックネオLTをそのままアクリル系樹脂塗料(C−3)として用いた。
(V−4)シリコーン系樹脂塗料(C−4)の調製
希釈溶剤の酢酸エチルを酢酸ブチルに変更した以外は(V−1)シリコーン系樹脂塗料(C−1)の調製と同様にしてオルガノシロキサン樹脂からなるコーティング塗料(C−4)を得た。
(V−5)シリコーン系樹脂塗料(C−5)の調製
希釈溶剤の酢酸エチルを配合せずにイソプロピルアルコールを391重量部に変更した以外は(V−1)シリコーン系樹脂塗料(C−1)の調製と同様にしてオルガノシロキサン樹脂からなるコーティング塗料(C−5)を得た。
[実施例1〜4]
上記(II)、(III)に記載のポリカーボネート樹脂ならびに熱可塑性樹脂を用いて上記(IV)に記載の方法で共押出シートを作成した。共押出シートの熱可塑性樹脂層(B層)中に含まれている紫外線吸収剤量ならびにポリカーボネート樹脂層(A層)と熱可塑性樹脂層(B層)のそれぞれの厚みと厚み比率を表1に示した。
得られた共押出シートに(V)で作成した熱硬化性塗料をフローコート法で塗布し、25℃で15分静置後、1時間熱硬化させることで熱硬化性薄膜層(C層)を積層し、ポリカーボネート樹脂積層体を作成した。用いた熱硬化性塗料の種類ならびに熱硬化温度、さらにC層の厚みを表1に示した。
得られたポリカーボネート樹脂積層体の各種評価結果を表1に示した。
[実施例5]
実施例1で得られたPC樹脂積層体を容量結合型で内部電極方式のプラズマ重合装置のRF電極に取り付け、真空ポンプで減圧して0.1Paとした。この装置内に酸素ガスを流量1000sccmで供給して圧力を7.5Paにし、投入電力1000Wでグロー放電を行った。さらに1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを流量30sccmで供給し、酸素プラズマ中で反応させてプラズマCVD膜を形成した。膜形成を17分行ってプラズマCVD膜の厚みが5μmのPC樹脂積層体を得た。得られたPC樹脂積層体の各種評価結果を表1に示した。
[実施例6〜7]
実施例1〜4と同様の方法で得られたポリカーボネート樹脂積層体の熱可塑性樹脂層(B層)中に含まれている紫外線吸収剤量、ポリカーボネート樹脂層(A層)と熱可塑性樹脂層(B層)のそれぞれの厚みと厚み比率ならびに各種評価結果を表1に示した。
[比較例1〜3]
上記(II)、(III)に記載のポリカーボネート樹脂ならびに熱可塑性樹脂を用いて上記(IV)に記載の方法で共押出シートを作成した。共押出シートの熱可塑性樹脂層(B層)中に含まれている紫外線吸収剤量ならびにポリカーボネート樹脂層(A層)と熱可塑性樹脂層(B層)のそれぞれの厚みと厚み比率を表1に示した。
得られた共押出シートに(V)で作成した熱硬化性塗料をフローコート法で塗布し、25℃で15分静置後、1時間熱硬化させることで熱硬化性薄膜層(C層)を積層し、ポリカーボネート樹脂積層体を作成した。用いた熱硬化性塗料の種類ならびに熱硬化温度、さらにC層の厚みを表1に示した。
得られたポリカーボネート樹脂積層体の各種評価結果を表1に示した。
本発明の積層体は、耐擦傷性、密着耐久性、および耐熱性に優れるため、車両、飛行機等の運送機の窓、風防、建物の窓、道路の遮音壁等屋外で使用される用途といった幅広い用途に使用可能である。したがって本発明の屋外向け用途の奏する産業上の効果は格別である。

Claims (10)

  1. ポリカーボネート樹脂層(A層)の少なくとも片面または両面に、熱可塑性樹脂層(B層)および湿式法で形成された熱硬化性薄膜層(C層)を積層したポリカーボネート樹脂積層体において、B層を形成する熱可塑性樹脂の線膨張係数が100〜130℃の範囲の平均で3×10−5〜80×10−5/Kであり、A層を形成するポリカーボネート樹脂とB層を形成する熱可塑性樹脂のISO 306 B−50に従い、試験荷重50N、昇温速度50℃/hで測定されるビカット軟化温度の間で熱硬化性薄膜層(C層)を形成させることを特徴とするポリカーボネート樹脂積層体。
  2. 共押出によりポリカーボネート樹脂層(A層)および熱可塑性樹脂層(B層)を積層した請求項1に記載のポリカーボネート樹脂積層体。
  3. B層を形成する熱可塑性樹脂の線膨張係数が100〜130℃の範囲の平均で3×10−5〜60×10−5/Kであることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
  4. 熱可塑性樹脂層(B層)がベンゾトリアゾール類またはトリアジン類の紫外線吸収剤を含むこと特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
  5. 熱可塑性樹脂層(B層)がISO 306 B−50に従い、試験荷重50N、昇温速度50℃/hで測定されるビカット軟化温度が110℃以上140℃以下のアクリル系樹脂組成物を用いてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
  6. ポリカーボネート樹脂層(A層)および熱可塑性樹脂層(B層)の厚みの合計が1mm以上20mm以下であり、A層とB層の厚み比率が、A/B=200〜4であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
  7. 熱硬化性薄膜層(C層)がビスフェノール型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、高分子型エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、およびポリイミド系樹脂の群から選ばれることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
  8. 熱硬化性薄膜層(C層)を形成する塗料の水とメタノールを除く希釈溶剤と熱可塑性樹脂層(B層)とのSP値の差が1.9以下であり、かつ沸点が115℃以下である水とメタノールを除く希釈溶剤が熱硬化性薄膜層(C層)を形成する塗料の水とメタノールを除く希釈溶剤100重量部に対して50〜100重量部であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
  9. 熱硬化性薄膜層(C層)は酸化セリウム微粒子、酸化チタン微粒子、および酸化亜鉛微粒子から選択される少なくとも1種の金属酸化微粒子を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
  10. 熱硬化性薄膜層(C層)上に更にPE−CVD(プラズマ化学気相成長プロセス)プロセスなどのドライハードコートプロセスにより形成されたプラズマ重合有機ケイ素を含んでなる層(D層)が積層された請求項1〜9のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
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