JP2009067862A - アクリル系樹脂フィルムを用いた積層体の製造方法 - Google Patents

アクリル系樹脂フィルムを用いた積層体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】密着性、硬度、平面性に優れたアクリル系樹脂フィルムの少なくとも一方の面にハードコート層を有する積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】アクリル系樹脂フィルム(A)の少なくとも一方の面にハードコート層(B)を設けて積層体を得る積層体の製造方法であって、ハードコート層(B)は、アクリレート基を有する化合物(B2)が全固形分の50質量%以上となるように溶剤(C)に溶解せしめたハードコート層形成材料溶液(B1)をアクリル系樹脂フィルム(A)の表面に塗布した後、溶剤(C)を乾燥させ、次いで活性線を照射して硬化させることにより形成されたものであり、アクリル系樹脂フィルム(A)の溶解度パラメータ(s1)と溶剤(C)の溶解度パラメータ(s2)とが次の式(1)または式(2)のいずれかを満足している積層体の製造方法とする。
式(1)
1.6cal1/2・cm−3/2≦s1−s2≦2.0cal1/2・cm−3/2
式(2)
1.0cal1/2・cm−3/2≦s2−s1≦1.5cal1/2・cm−3/2
【選択図】 なし

Description

本発明は密着性、硬度、平面性に優れたアクリル系樹脂フィルムの少なくとも一方の面にハードコート層を有する積層体の製造方法に関する。
近年、液晶表示装置やプラズマディスプレイなどのフラットパネルディスプレイの需要が拡大しており、これらに用いられる高機能の光学用フィルムが求められている。
例えば、液晶表示装置には、その画像形成方式から液晶パネル表面を形成するガラス基板の両側に偏光板を配置することが必要不可欠である。偏光板は、一般的には、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性材料からなる偏光子の両面に、トリアセチルセルロースなどを用いた偏光子保護フィルムをポリビニルアルコール系接着剤により貼り合せたものが用いられている(特許文献1)。
表示装置の保護フィルムには耐引っ掻き性、耐擦り傷性等が求められることから、一般的にトリアセチルセルロースフィルムの表面にハードコート層を設けたものや(特許文献2)、PETフィルムにハードコート層を設けたものが用いられてきたが(特許文献3)、トリアセチルセルロースフィルムを偏光子保護フィルムとして用いた偏光板を高温または高湿下において使用すると、偏光度や色相等の偏光板の性能が低下するという欠点があり、PETフィルムは使用中にオリゴマーが析出するなどの欠点があった。
従来、高い透明性が求められる液晶表示装置、CRT表示装置、プラズマディスプレイ表示装置、その他商業用のディスプレイ、レンズ、ミラー、窓ガラス代替、ゴーグル等の光学部材に汎用されてきたものとしてアクリル系樹脂をあげることができる。しかし、一般的なアクリル系樹脂であるPMMAはガラス転移温度が低いことやトリアセチルセルロースやPETと比べてヤング率が低いことから、厚みが薄いアクリル系樹脂フィルムの表面にハードコート層を設けるためにアクリレート系などの活性エネルギー線硬化性樹脂をコーティングする際、熱処理や、活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化収縮に伴うカールにより平面性が失われることがあった。
ハードコート層は基材となるフィルムとの密着性が優れていることが求められ、親和性を向上させるためにハードコート層を塗工する前にコロナ処理、プラズマ処理、アルカリ処理、火焔処理等の物理処理を施す(特許文献4)、または両方の層に親和性のある中間層を設けるといった方法(特許文献3)が提案されており密着性向上のための特別な処理が必要である。
また、薄型表示装置の前面保護フィルムとして用いる光学用フィルムには表面特性として、前述したような耐引っ掻き性や耐擦り傷性に加えて、高い鉛筆硬度が求められる。この、鉛筆硬度は最表層の硬度のみではなく、フィルムや積層体の全体の硬度の影響を受ける。このため、鉛筆硬度を向上するためには、密着性向上のために設ける中間層の硬度や、基材となるアクリル系樹脂フィルムとハードコート層の界面の構成の制御も必要である。鉛筆硬度は傷の判定基準に差があり、特に表示装置用にこれらのフィルムを用いるときの傷の判定は非常に厳しく、従来の判定基準では高い判定であった鉛筆硬度も傷を厳密に観察することにより判定結果がこれまでより低くなっている。
特公昭59−51911号公報 特開2003−131007号公報 特開平09−300549号公報 特開2002−361769号公報
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。すなわち、本発明の目的は密着性、硬度、平面性に優れたハードコート層を有するアクリル系樹脂フィルムを基材フィルムとした積層体の製造方法を提供することにある。
上記した目的を達成するための本発明は、以下の構成を有することを特徴とする。
アクリル系樹脂フィルム(A)の少なくとも一方の面にハードコート層(B)を設けて積層体を得る積層体の製造方法であって、ハードコート層(B)は、アクリレート基を有する化合物(B2)が全固形分の50質量%以上となるように溶剤(C)に溶解せしめたハードコート層形成材料溶液(B1)をアクリル系樹脂フィルム(A)の表面に塗布した後、溶剤(C)を乾燥させ、次いで活性線を照射して硬化させることにより形成されたものであり、アクリル系樹脂フィルム(A)の溶解度パラメータ(s1)と溶剤(C)の溶解度パラメータ(s2)とが次の式(1)または式(2)のいずれかを満足している積層体の製造方法。
式(1)
1.6cal1/2・cm−3/2≦s1−s2≦2.0cal1/2・cm−3/2
式(2)
1.0cal1/2・cm−3/2≦s2−s1≦1.5cal1/2・cm−3/2
本発明の製造方法により得られる積層体は、光学的品位ならびに密着性、硬度、平面性に優れるため、画像表示素子などの光学部材に好適に適用することができる。
以下に本発明の好ましい実施の形態を説明する。
本発明の積層体は、以下の工程を経て製造される。
アクリル系樹脂フィルム(A)の少なくとも一方の面にハードコート層(B)を設けて積層体を得る積層体の製造方法であって、ハードコート層(B)は、アクリレート基を有する化合物(B2)が全固形分の50質量%以上となるように溶剤(C)に溶解せしめたハードコート層形成材料溶液(B1)をアクリル系樹脂フィルム(A)の表面に塗布した後、溶剤(C)を乾燥させ、次いで活性線を照射して硬化させることにより形成されたものであり、アクリル系樹脂フィルム(A)の溶解度パラメータ(s1)と溶剤(C)の溶解度パラメータ(s2)とが次の式(1)または式(2)のいずれかを満足している積層体の製造方法。
式(1)
1.6cal1/2・cm−3/2≦s1−s2≦2.0cal1/2・cm−3/2
式(2)
1.0cal1/2・cm−3/2≦s2−s1≦1.5cal1/2・cm−3/2
上記のハードコート層形成材料溶液(B1)中の成分である化合物(B2)は、アクリレート基を有する樹脂またはモノマーであることが好ましく、(B1)中の全固形分中50質量%以上となるように調製される。
ここでアクリル系樹脂フィルム(A)とは、各種アクリル酸エステル系モノマーの重合体から作られる熱可塑性樹脂をその構造中に含むアクリル系ポリマーを含むフィルムである。本発明で使用できるモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)(アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−メチルブチル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアマイド、スチレンやα−メチルスチレン等のスチレン系モノマー、アクリロニトリル、無水マレイン酸などを挙げることができる。
アクリル系樹脂フィルム(A)上にハードコート層(B)を活性線照射により設けるとき、ハードコート層中の成分(B2)であるアクリレート基を有する化合物(例えば、アクリレート基を有する樹脂やモノマー)を単独で用いると、アクリル系樹脂フィルムとの密着性が悪く剥がれることがある。この問題を解決するために、本発明では全固形分中の50質量%以上を占める成分(B2)と溶剤(C)を溶媒として調製される溶液(B1)を塗工する。この際、この溶液(B1)には、成分(B2)、溶剤(C)の他にも、光開始剤や、他のアクリレート基を有する樹脂やモノマー、界面活性剤、重合助剤、シリカ粒子等を加えることができる。アクリレート基を有する樹脂またはモノマーの例としては、エポキシアクリレート、多官能アクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、芳香族アクリレートなどが挙げられる。
ハードコート層(B)を形成するために照射される活性線としては、紫外線や電子線などが挙げられるが、紫外線照射による光硬化が好ましい。紫外線照射による光硬化を行う場合は、ハードコート層形成材料溶液(B1)中に光重合開始剤等の重合開始剤を含めることが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーのケトン、ベンゾイルベンゾエート、ベンゾイン類、α−アシロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイドおよびチオキサントン等を使用できる。
ハードコート層形成材料溶液(B1)の塗工方法は例えば、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤーバー法、ディップコート法、エクストルージョン法、カーテンコート法、スプレーコート法、流延製膜法、バーコート法、グラビアコート法、ドクターブレード法、ダイコーター法等の方法で行うことができる。
なお、活性線としては、光重合開始剤に対し活性な電磁波を発生させるものは全て用いることができる。例えば、レーザー、発光ダイオード、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、タングステンランプ、水銀灯、無電極光源等をあげることができる。好ましくは、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、タングステンランプ、水銀灯等の光源が挙げられ、この際加えられるエネルギーは、重合開始剤の種類のより、露光距離、時間、強度を調整することにより適時選択して用いることができる。また活性線は、場合により、窒素置換、減圧下等による方法で空気を遮断し重合速度を向上させてもよい。照射する活性線として、紫外線を照射するときの積算光量はハードコート層(B)が十分な硬度を示す範囲であれば良いが、好ましくはその積算光量は50〜1,000mJ/cmである。積算光量が不足する場合、ハードコート層(B)の硬度が不足することがある。積算光量が大きすぎる場合、積層体全体が劣化したり、ハードコート層(B)のカールが大きくなることがある。
本発明の積層体の製造方法は、アクリル系樹脂フィルム(A)の溶解度パラメータ(s1)と溶剤(C)の溶解度パラメータ(s2)の値が次式(1)または(2)のいずれかを満足するものである。
式(1)
1.6cal1/2・cm−3/2≦s1−s2≦2.0cal1/2・cm−3/2
式(2)
1.0cal1/2・cm−3/2≦s2−s1≦1.5cal1/2・cm−3/2
溶剤(C)とアクリル系樹脂フィルム(A)の溶解度パラメータの差がこの範囲のとき、ハードコート層(B)を有する積層体の鉛筆硬度が著しく向上する。これは、鉛筆硬度が積層体全体の硬度や構成の影響を受けるためであり、溶解度パラメータの差が小さいときはアクリル系樹脂フィルム(A)と溶剤(C)の親和性が高すぎるためハードコート層(B)とアクリル系樹脂フィルム(A)の界面が荒れ鉛筆硬度が低くなる。また溶解度パラメータの差が大きいときは界面が明確に分かれるため中間層を持たない構成となり鉛筆硬度が低下する。ここで溶解度パラメータは、Fedors法より求めたものである。
本発明は積層体の製造に用いる溶剤(C)の沸点は40℃以上100℃以下であることが好ましい。沸点が40℃より低いとき、溶液(B1)の調製ならびに塗工の工程における溶剤揮発が著しく、溶液濃度の制御が困難であったり、雰囲気の水分が結露してヘイズが生じたり、ハードコート層(B)の厚みの制御が困難となったり、厚みムラが大きくなることがある。沸点が100℃を超えると、溶剤の乾燥が不十分となりやすくハードコート層(B)に溶剤が残り鉛筆硬度が低下することがあり、乾燥時間が長くなり生産性が悪化することがある。溶剤(C)の沸点はより好ましくは50℃以上90℃以下である。
本発明の積層体の製造方法において、溶液(B1)を30℃以上100℃以下の温度で乾燥することが好ましい(溶剤(C)を乾燥させる)。乾燥温度が30℃未満のとき、溶剤乾燥に要する時間が長くなり生産性が低下することがあり、また溶剤が十分に揮発せずハードコート層の硬度が低下して鉛筆硬度が低下することがある。乾燥温度が100℃を超えると、アクリル系樹脂フィルム(A)が溶剤(C)に浸食されやすくなり、鉛筆硬度を高くするために必要な界面を形成することができないことがあり、溶剤(C)の揮発速度が速すぎるまたはアクリル系樹脂フィルム(A)の耐熱性が不足するために、ハードコート層(B)の厚みムラが大きくなることがあり、積層体の面状が悪化することがある。
本発明の積層体の製造に用いる成分(B2)は、一分子中に4個以上18個以下の官能基を有する化合物であることが好ましく、より好ましくは一分子中に4個以上18個以下のアクリレート基を有する樹脂またはモノマーであることが好ましい。活性線硬化型の樹脂またはモノマーの硬度は一般的にその官能基の数が多いほどより三次元架橋度の高いハードコート層を得ることができるため高くなる。官能基が4個未満のときは十分な3次元架橋ができないため硬度の向上ができない、また18個を超えると架橋による硬化収縮が大きすぎてカールが大きくなりやすい。この官能基の数はより好ましくは5個以上18個以下であり、さらに好ましくは5個以上10個以下である。
本発明の積層体の製造に用いるハードコート層形成材料溶液(B1)の粘度は10mPa・s以上5,000mPa・s以下であることが好ましい。一般的にアクリレート基を有する化合物(樹脂やモノマー)はその官能基の数が多くなるほど、粘度が高くなる。粘度が10mPa・sより低いとき塗液の流動性が高すぎるため、均一な塗膜の形成が難しくコーティング層の塗り斑が発生したり、面状が悪化することがある。粘度が5,000mPa・sより高いとき塗液の流動性が低いために厚みムラが発生したり、面状が悪化することがある。粘度はより好ましくは100mPa・s以上3,000mPa・s以下である。粘度の調整はハードコート層形成材料溶液(B1)中の固形分濃度を調整して行うことが簡便であり好ましいが、粘度の低いアクリレート基を有する樹脂またはモノマーを用いる、レベリング剤を加えるなどの方法で行うこともできる。ハードコート層形成材料溶液(B1)の粘度の測定は、東機産業(株)製RBタイプR80U型粘度計を用いて25℃における粘度を測定したものである。
本発明の積層体の製造は、アクリル系樹脂フィルム(A)の厚みが10μm以上80μm以下であり、かつハードコート層(B)を設けるに際し、アクリル系樹脂フィルム(A)に、剥離強度が0.05N/50mm以上0.5N/50mm以下の工程フィルムを、ハードコート層形成材料溶液(B1)を塗布する面とは反対側の面に貼り合わせていることが好ましい。表示装置用に用いられるフィルムは薄膜化の要求が高く薄いほど好ましいが、アクリル系樹脂フィルムは厚みが10μm未満ではフィルムとしての十分な機械的強度を示さないことがある。またフィルム厚みが80μmを超えると生産コストが高くなったり、鉛筆硬度が低下することがある。しかしフィルム厚みが10μm以上から80μm以下であるとき、ハードコート層を設けたときに硬化収縮によりカール等の面状悪化が顕著になることがある。このため、ハードコート層を設けるに際し、アクリル系樹脂フィルム(A)に、剥離強度が0.05N/50mm以上0.5N/50mm以下の工程フィルムを塗工面の裏側(塗布面の反対側)に貼り合わせることで、面状を良好に保つことができる。貼り合わせる工程フィルムの剥離強度が0.05N/50mm未満のとき、フィルムへの接着力が足りず、ハードコート層を設ける際に硬化収縮によりアクリル系樹脂フィルム(A)との剥離が生じたりすることがある。剥離強度が0.5N/50mmより大きいとき、工程フィルムを剥がすためにかかる張力が大きすぎるため剥離自身が困難であったり、積層体にクラックが生じたりすることがある。
本発明の積層体の製造は、ハードコート層(B)の厚みが1μm以上20μm以下であることが好ましい。ハードコート層(B)が1μm未満のとき、十分な鉛筆硬度を付与することができなかったり、薄膜の塗工精度が低く塗工ムラが大きくなることがある。ハードコート層(B)の厚みが20μmを超えると、硬化収縮によるカール量が大きくなり平面性が悪化したり、クラックが生じたり、ハードコート層の硬化に要する時間が長くなったり、また生産コストが高くなることがある。
本発明の積層体の製造においては、アクリル系樹脂フィルム(A)が下記構造式(a)〜(c)からなる群で表される構造単位のうち少なくとも1つを含有するアクリル系ポリマーを含んでいることが好ましい。
Figure 2009067862
(上記式中、R1、R2は、同一または相異なる水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、カルボキシル基または炭素数2〜5のカルボキシアルキル基を表す。また、上記式中、X1、Xは、同一または相異なるCHまたはC=Oを表す。Xは、OまたはNRを表す。Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、カルボキシル基または炭素数2〜5のカルボキシアルキル基を表す。)

特に耐熱性の点から、R、Rは水素またはメチル基またはカルボキシメチル基が好ましく、とりわけメチル基が好ましく、X、Xは、C=Oが好ましい。また、透明性の観点からXは、Oが好ましい。
Figure 2009067862
(上記式中、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、カルボキシル基または炭素数2〜5のカルボキシアルキル基を表す。)
特に耐熱性の点から、Rはメチル基が好ましい。
Figure 2009067862
(上記式中、Rは炭素数6〜15の脂環式構造を含有する置換基を表す。)
特に低吸湿性の点から、Rは下記構造式(e)、(f)で表される置換基であることが好ましい。
Figure 2009067862
Figure 2009067862
構造式(a)〜(c)の中でも、特に構造式(d)に示す環化構造を有するアクリル系ポリマーを用いると、透明性、耐熱性、生産性に優れ、また、光学等方性に優れたフィルムを得ることができるため好ましい。
Figure 2009067862
(上記式中、R、Rは、同一または相異なる水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
特に耐熱性の点からは、R,Rは水素またはメチル基が好ましく、とりわけメチル基が好ましい。
次に、上記構造式(d)で表されるグルタル酸無水物単位を含有するアクリル系ポリマーの製造方法の例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
後の加熱工程により上記構造式(d)で表されるグルタル酸無水物単位を与える不飽和カルボン酸単量体(i)および不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体(ii)と、その他のビニル系単量体単位を含む場合には該単位を与えるビニル系単量体(iii)とを重合させ、共重合体(ア)とした後、かかる共重合体(ア)を適当な触媒の存在下あるいは非存在下で加熱し、脱アルコールおよび/または脱水による分子内環化反応を行わせることにより製造することができる。この場合、典型的には共重合体(ア)を加熱することにより2単位の不飽和カルボン酸単位のカルボキシル基が脱水されて、あるいは隣接する不飽和カルボン酸単位と不飽和カルボン酸アルキルエステル単位からアルコールの脱離により1単位の前記グルタル酸無水物単位が生成される。この際用いられる不飽和カルボン酸単量体(i)としては、特に限定はなく、他のビニル化合物(iii)と共重合させることが可能な、構造式(g)の不飽和カルボン酸単量体が使用できる。
Figure 2009067862
(上記式中、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
特に、熱安定性が優れる点でアクリル酸、メタクリル酸が好ましく、より好ましくはメタクリル酸である。これらはその1種、または2種以上用いることができる。なお、上記構造式(g)で表される不飽和カルボン酸単量体(i)は共重合すると上記構造式(d)で表される構造の不飽和カルボン酸単位を与える。
また、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体(ii)としては特に制限はないが、好ましい例として、下記構造式(h)で表されるものを挙げることができる。
Figure 2009067862
(上記式中、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。R10は水素原子、炭素数1〜6の脂肪族基または脂環式炭化水素基を示す。)
これらのうち、炭素数1〜6の脂肪族基、脂環式炭化水素基または置換基を有する該炭化水素基をもつアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルが熱安定性が優れる点で特に好適である。なお、上記構造式(h)で表される不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体は、共重合すると上記構造式(d)で表される構造の不飽和カルボン酸アルキルエステル単位を与える。
不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体(ii)の好ましい具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられ、中でもメタクリル酸メチルが最も好ましく用いられる。これらはその1種または2種以上を用いることができる。
また、本発明で用いるアクリル系ポリマーの製造においては、本発明の効果を損なわない範囲で、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミドなど、他のビニル系単量体(iii)を用いてもかまわないが、透明性の点で芳香環を含まない単量体がより好ましく使用できる。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
アクリル系ポリマーの重合方法については、基本的にはラジカル重合による、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の重合方法を用いることができるが、不純物がより少ない点で溶液重合、塊状重合、懸濁重合が特に好ましい。
重合温度については、特に制限はないが、色調の観点から、不飽和カルボン酸単量体および不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体を含む単量体混合物を95℃以下の重合温度で重合することが好ましい。また、重合温度の下限は、重合が進行する温度であれば、特に制限はないが、重合速度を考慮した生産性の面から、通常50℃以上である。重合収率あるいは重合速度を向上させる目的で、重合進行に従い重合温度を昇温することも可能である。また重合時間は、必要な重合度を得るのに十分な時間であれば特に制限はないが、生産効率の点から60〜360分間の範囲が好ましい。
本発明において、アクリル系ポリマーの製造時に用いられるこれらの単量体混合物の好ましい割合は、該単量体混合物を100質量部として、不飽和カルボン酸単量体(i)が5〜50質量部、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体(ii)は50〜95質量部、これらに共重合可能な他のビニル系単量体(iii)を用いる場合、その好ましい割合は0〜5質量部であり、より好ましい割合は0〜3質量部である。
不飽和カルボン酸単量体量(i)が5質量部未満の場合には、共重合体(ア)の加熱などによる上記構造式(d)で表されるグルタル酸無水物単位の生成量が少なくなり、本発明のアクリル系フィルムの耐熱性向上効果が小さくなる傾向がある。一方、不飽和カルボン酸単量体量(i)が50質量部より大きい場合には、共重合体(ア)の加熱による環化反応後に、不飽和カルボン酸単位が多量に残存する傾向があり、無色透明性、滞留安定性が低下する傾向がある。
また、本発明のアクリル系樹脂フィルムに使用するアクリル系ポリマーは、質量平均分子量が8万〜15万であることが好ましい。このような分子量を有するアクリル系ポリマーは、共重合体(ア)の製造時に、共重合体(ア)を所望の分子量、すなわち質量平均分子量で8万〜15万に予め制御しておくことにより、達成することができる。質量平均分子量が、15万より大きい場合、後工程の環化時に着色する傾向が見られる。一方、質量平均分子量が8万未満の場合、アクリル系樹脂フィルムの機械的強度が低下する傾向が見られる。
本発明に好ましく用いられるアクリル系ポリマーの製造に用いる共重合体(ア)を加熱し、(イ)脱水および/または(ロ)脱アルコールにより分子内環化反応を行いグルタル酸無水物単位を含有する熱可塑性重合体を製造する方法としては、特に制限はないが、ベントを有する加熱した押出機に通して製造する方法や不活性ガス雰囲気または減圧下で加熱脱揮できる装置内で製造する方法が生産性の観点から好ましい。中でも、酸素存在下で加熱による分子内環化反応を行うと、黄色度が悪化する傾向が見られるため、十分に系内を窒素などの不活性ガスで置換することが好ましい。また、これらに窒素などの不活性ガスが導入可能な構造を有した装置であることがより好ましい。例えば、二軸押出機に、窒素などの不活性ガスを導入する方法としては、ホッパー上部および/または下部より、10〜100リットル/分程度の不活性ガス気流の配管を繋ぐ方法などが挙げられる。
なお、環化時の温度は、(イ)脱水および/または(ロ)脱アルコールにより分子内環化反応が生じる温度であれば特に限定されないが、好ましくは180〜300℃の範囲、特に200〜280℃の範囲が好ましい。
また、この際の環化時間も特に限定されず、所望する共重合組成に応じて適宜設定可能であるが、通常、1分間〜60分間、好ましくは2分間〜30分間、とりわけ3〜20分間の範囲が好ましい。特に、押出機を用いて、十分な分子内環化反応を進行させるための加熱時間を確保するため、押出機スクリューの長さ/直径比(L/D)が40以上であることが好ましい。L/Dの短い押出機を使用した場合、未反応の不飽和カルボン酸単位が多量に残存するため、加熱成形加工時に反応が再進行し、成形品に気泡が見られる傾向や成形滞留時に色調が大幅に低下する傾向がある。
さらに本発明では、共重合体(ア)を上記方法等により加熱する際にグルタル酸無水物への環化反応を促進させる触媒として、酸、アルカリ、塩化合物の1種以上を添加することができる。その添加量は特に制限はなく、共重合体(ア)100質量部に対し、0.01〜1質量部程度が適当である。
本発明のアクリル系ポリマーとしては、上記構造式(d)で表されるグルタル酸無水物単位と不飽和カルボン酸アルキルエステル単位からなる共重合体を好ましく使用することができる。不飽和カルボン酸アルキルエステル単位とグルタル酸無水物単位の含有量は、特に制限はないが、耐熱性が向上することから、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位とグルタル酸無水物単位の合計を100質量部としたときに、好ましくは不飽和カルボン酸アルキルエステル単位50〜90質量部およびグルタル酸無水物単位10〜50質量部からなり、より好ましくは、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位55〜90質量部およびグルタル酸無水物単位10〜45質量部からなる。グルタル酸無水物単位が10質量部未満である場合、耐熱性向上効果が小さくなることがある。
本発明のアクリル系ポリマーにおける各成分単位の定量には、プロトン核磁気共鳴(H−NMR)測定機が用いられる。H−NMR法では、例えば、グルタル酸無水物単位、メタクリル酸、メタクリル酸メチルからなる共重合体の場合、ジメチルスルホキシド重溶媒中でのスペクトルの帰属を、0.5〜1.5ppmのピークがメタクリル酸、メタクリル酸メチルおよびグルタル酸無水物環化合物のα−メチル基の水素、1.6〜2.1ppmのピークはポリマー主鎖のメチレン基の水素、3.5ppmのピークはメタクリル酸メチルのカルボン酸エステル(−COOCH)の水素、12.4ppmのピークはメタクリル酸のカルボン酸の水素と、スペクトルの積分比から共重合体組成を決定することができる。
また、アクリル系ポリマー中に他の不飽和カルボン酸単位および/または、共重合可能な他のビニル系単量体単位を含有することができる。
上記の熱可塑性重合体100質量部中に含有される他の不飽和カルボン酸単位量は10質量部以下、すなわち0〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0〜5質量部、最も好ましくは0〜1質量部である。不飽和カルボン酸単位が10質量部を超える場合には、無色透明性、滞留安定性が低下する傾向がある。
また、共重合可能な他のビニル系単量体単位量は、上記熱可塑性重合体100質量部中、5質量部以下、すなわち0〜5質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは0〜3質量部である。特に、スチレンなどの芳香族ビニル系単量体単位を含有する場合、含有量が上記範囲を超えると、無色透明性、光学等方性、耐薬品性が低下する傾向がある。
また、本発明のアクリル系樹脂フィルムには本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミドなど)、熱硬化性樹脂(例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など)の一種以上をさらに含有させることができ、また、ヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、およびシアノアクリレート系の紫外線吸収剤および酸化防止剤、高級脂肪酸や酸エステル系および酸アミド系、さらに高級アルコールなどの滑剤および可塑剤、モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびエチレンワックスなどの離型剤、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、ハロゲン系難燃剤、リン系やシリコーン系の非ハロゲン系難燃剤、核剤、アミン系、スルホン酸系、ポリエーテル系などの帯電防止剤、顔料などの着色剤などの添加剤を任意に含有させてもよい。ただし、適用する用途が要求する特性に照らし、その添加剤保有の色が熱可塑性重合体に悪影響を及ぼさず、かつ透明性が低下しない範囲で添加することが重要である。
本発明のアクリル系樹脂フィルムの製造方法には、種々の方法を使用することができる。例えば、溶融製膜法、溶液製膜法、ホットプレス法等の製造法が使用できるが、好ましくは溶液製膜法、溶融製膜法が使用できる。さらに好ましくはフィルムの品質を優先する場合、溶液製膜法が最も好ましい。また、生産速度およびコストを優先する場合、溶融製膜法が最も好ましい。
本発明の積層体は、透明性、密着性、硬度、平面性に優れるため、例えば、各種カバー、各種端子板、プリント配線板、スピーカー、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、また、映像機器関連部品としてカメラ、VTR、プロジェクションTV等のファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズ等、光記録・光通信関連部品として各種光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LD等)基板保護フィルム、光スイッチ、光コネクター等、情報機器関連部品として、液晶ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、プラズマディスプレイの表層保護フィルム、偏光子保護フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、タッチパネル用導電フィルム、カバー等の表示装置用フィルムとして好適に用いることができるが、特に硬度と透明性に優れるため、表示装置の表層保護フィルムや、偏光子保護フィルムとして極めて有用である。
[物性の測定方法]
以下、実施例により本発明の構成、効果をさらに具体的に説明する。もちろん、本発明は下記実施例に限定されるものではない。各実施例の記述に先立ち、実施例で採用した測定方法、評価方法を記載する。
1.密着性
常態下(23℃、相対湿度65%)で、本発明の積層体のハードコート層(B)上に1mmのクロスカットを100個形成し、ニチバン(株)製セロハンテープをその上に貼り付け、ゴムローラーを用いて、荷重19.6Nで3往復させ、押し付けた後、90度方向に剥離し、ハードコート層の残存した個数により4段階評価(◎:100個残存、○:80〜99個残存、△:50〜79個残存、×:0〜49個残存)した。◎、○を接着性良好とした
2.鉛筆硬度
JIS−K5600−5−4(1999)に準じて、荷重を500gに変更して、各種硬度の鉛筆を45度の角度でハードコート層に当て引っ掻き試験をおこなった。傷の判定は引っ掻き試験を行ったサンプルを、引っ掻き試験を行った反対の面に粘着剤を貼り合わせ粘着剤層を介して黒のアクリル板に貼り合わせ蛍光灯の反射光を目視で観察し行った。
3.平面性
平らなガラス板の上に得られた積層体を静置したときの外観を目視で判別した。
◎:積層体にカールや面状悪化が無く、外観で顕著な積層ムラがみられない。
○:積層体にカールや面状悪化が小さく、外観で顕著な積層ムラがほとんどみられない。
△:積層体に一部カールや面状悪化が見られるか、ハードコート層に塗布ムラがある。
×:積層体が大きくカールしている、または全面の面状が悪化している。
4.粘度
東機産業(株)製RBタイプR80U型粘度計を用いて測定した。測定温度25℃、回転速度100rpm、STロータを用いて測定を行った値である
5.フィルム厚み
マイクロ厚み計(アンリツ社製)を用いて5点測定し、平均値を求めた。
[実施例]
(1)アクリル系ポリマーの調製
アクリル系ポリマー(あ)
先ず、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体系懸濁剤を、次の様にして調製した。
メタクリル酸メチル :20質量部、
アクリルアミド :80質量部、
過硫酸カリウム :0.3質量部、
イオン交換水 :1,500質量部
を反応器中に仕込み、反応器中を窒素ガスで置換しながら、単量体が完全に重合体に転化するまで、70℃に保ち反応を進行させた。得られた水溶液を懸濁剤とした。容量が5リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、上記懸濁剤0.05質量部をイオン交換水165質量部に溶解した溶液を供給し、系内を窒素ガスで置換しながら400rpmで撹拌した。
次に、下記仕込み組成の混合物質を、反応系を撹拌しながら添加した。
メタクリル酸 :27質量部
メタクリル酸メチル :73質量部
t−ドデシルメルカプタン :1.2質量部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル:0.4質量部
添加後、70℃まで昇温し、内温が70℃に達した時点を重合開始時点として、180分間保ち、重合を進行させた。
その後、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行い、ビーズ状の共重合体を得た。上記共重合体に添加剤(NaOCH)を0.2質量%配合し、2軸押出機(TEX30(日本製鋼社製、L/D=44.5)を用いて、ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら、スクリュー回転数100rpm、原料供給量5kg/h、シリンダ温度290℃で分子内環化反応を行い、ペレット状のアクリル系ポリマー(あ)を得た。
(2)弾性体粒子の調製
多層構造重合体である弾性体粒子(い)
冷却器付きのガラス容器(容量5リットル)内に、初期調整溶液として、
脱イオン水 :120質量部、
炭酸カリウム :0.5質量部、
スルホコハク酸ジオクチル :0.5質量部、
過硫酸カリウム :0.005質量部
を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌後、
アクリル酸ブチル :53質量部、
スチレン :17質量部、
メタクリル酸アリル(架橋剤):1質量部
を仕込んだ。これら混合物を70℃で30分間反応させて、ゴム質重合体を得た。
次いで、
メタクリル酸メチル :21質量部、
メタクリル酸 :9質量部、
過硫酸カリウム :0.005質量部
の混合物を引き続き70℃で90分かけて連続的に添加し、更に90分間保持して、シェル層を重合させた。
この重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソ−ダで中和した後、洗浄、濾過、乾燥して、多層構造重合体である弾性体粒子(い)を得た。電子顕微鏡で測定した弾性体粒子のゴム質重合体部分の平均粒子径は140nmであった。
(3)アクリル系ポリマー(あ)と弾性体粒子(い)との配合
アクリル系ポリマー(あ)を80質量部と弾性体粒子(い)20質量部とを配合し、2軸押出機(日本製鋼社製TEX30、L/D=44.5)を用いて、スクリュー回転数150rpm、シリンダ温度280℃で混練し、ペレット状のアクリル系ポリマー組成物(う)を得た。
(4)アクリル系樹脂フィルムの製膜
溶融製膜でアクリル系ポリマー(あ)/アクリル系ポリマー組成物(う)/アクリル系ポリマー(あ)の順に積層されたアクリル系樹脂フィルム(A−1)を得た。各層の厚みは5μm/30μm/5μmであり、フィルム全体の厚みは40μmであった。このアクリル系樹脂フィルム(A−1)の溶解度パラメータS1は10.4cal1/2・cm−3/2であった。
(5)ハードコート層形成材料溶液(B1−1)の調製
溶液(B1)の主成分(B2)としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート47.5質量部、光開始剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製“イルガキュア184”(登録商標)を2.5質量部、溶剤(C)を50質量部の割合で混合し溶液(B1−1)を得た。
(6)ハードコート層の形成
アクリル系樹脂フィルム(A−1)の表面に、塗工厚み15μmのワイヤーバーを用いて前記ハードコート層形成材料溶液(B1−1)を塗工し、熱風オーブンで乾燥を行い、紫外線照射(積算光量300mW/cm)することにより、ハードコート層(B)を得た。
(実施例1)
溶液(B1−1)の溶剤(C)として、酢酸エチルを用いてハードコート層を形成した。ハードコート層を形成するときの乾燥温度は80℃で60秒であった。得られたフィルムの各種物性を表1に示す。
(実施例2)
溶液(B1−1)の溶剤(C)として、酢酸ブチルを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でハードコート層を形成した。得られたフィルムの各種物性を表1に示す。
(実施例3)
溶液(B1−1)の溶剤(C)として、イソプロピルアルコールを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でハードコート層を形成した。得られたフィルムの各種物性を表1に示す。
(実施例4)
溶液(B1−1)の溶剤(C)として、酢酸エチルを用いてハードコート層を形成した。ハードコート層を形成するときの乾燥温度を110℃、60秒であった。得られたフィルムの各種物性を表1に示す。
(実施例5)
アクリル系樹脂フィルム(A)の非ハードコート形成面に工程フィルムとして、藤森工業(株)製のキャリアフィルム“マスタックPC−542PA”(登録商標)を貼り合わせた。このキャリアフィルムの剥離強度は0.09N/50mmである。溶液(B1−1)の溶剤(C)として、酢酸エチルを用いて実施例1と同様にハードコート層を形成した。得られたフィルムの各種物性を表1に示す。
(実施例6)
溶液(B1)の成分(B2)としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート47.5質量部、光開始剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製“イルガキュア184”(登録商標)を2.5質量部、溶剤(C)として酢酸エチルを5質量部の割合で混合し溶液(B1−2)を得た。得られた溶液(B1−2)の粘度は12,000mPasであった。得られた溶液(B1−2)を用いてハードコート層を形成した。ハードコート層を形成するときの乾燥温度は80℃で60秒であった。得られたフィルムの各種物性を表1に示す。
(実施例7)
溶液(B1)の成分(B2)として官能基の数が3個であるトリメチロールプロパンEO変性(3モル)トリアクリレート47.5質量部、光開始剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製“イルガキュア184”(登録商標)を2.5質量部、溶剤(C)として酢酸エチル20質量部の割合で混合し溶液(B1−3)を得た。溶液(B1−3)を用いてハードコート層を形成した。ハードコート層を形成するときの乾燥温度は80℃で60秒であった。得られたフィルムの各種物性を表1に示す。
(比較例1)
溶液(B1−1)の溶剤(C)として、アセトンを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でハードコート層を形成した。得られたフィルムの各種物性を表1に示す。
(比較例2)
溶液(B1−1)の溶剤(C)として、トルエンを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でハードコート層を形成した。得られたフィルムの各種物性を表1に示す。
(比較例3)
溶液(B1−1)の溶剤(C)として、2−ブタノンを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でハードコート層を形成した。得られたフィルムの各種物性を表1に示す。
(比較例4)
溶液(B1−1)の溶剤(C)として、メタノールを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でハードコート層を形成した。得られたフィルムの各種物性を表1に示す。
(比較例5)
溶液(B1−1)の溶剤(C)として、1−ブタノールを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でハードコート層を形成した。得られたフィルムの各種物性を表1に示す。
(比較例6)
溶液(B1)の成分(B2)として官能基の数が3個であるトリメチロールプロパンEO変性(3モル)トリアクリレート47.5質量部、光開始剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製“イルガキュア184”(登録商標)を2.5質量部、溶剤(C)としてアセトン20質量部の割合で混合し溶液(B1−4)を得た。溶液(B1−4)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でハードコート層を形成した。ハードコート層を形成するときの乾燥温度は80℃で60秒であった。得られたフィルムの各種物性を表1に示す。
(比較例7)
ハードコート形成材料溶液(B1)中に溶剤(C)を含まずに、溶液(B1)の成分(B2)としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート47.5質量部、光開始剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製“イルガキュア184”(登録商標)を2.5質量部の割合で混合し溶液(B1−5)を得た。ハードコート形成材料溶液(B1−4)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でハードコート層を形成した。ハードコート層を形成するときの乾燥温度は80℃で60秒であった。得られたフィルムの各種物性を表1に示す。
実施例1〜6、比較例1〜7の積層体の評価結果を表1に示す。
Figure 2009067862
実施例1〜7のアクリル系フィルムは密着性、鉛筆硬度、平面性に優れたフィルムであったが、比較例1〜7のフィルムは密着性、鉛筆硬度、平面性に劣るフィルムであった。

Claims (11)

  1. アクリル系樹脂フィルム(A)の少なくとも一方の面にハードコート層(B)を設けて積層体を得る積層体の製造方法であって、ハードコート層(B)は、アクリレート基を有する化合物(B2)が全固形分の50質量%以上となるように溶剤(C)に溶解せしめたハードコート層形成材料溶液(B1)をアクリル系樹脂フィルム(A)の表面に塗布した後、溶剤(C)を乾燥させ、次いで活性線を照射して硬化させることにより形成されたものであり、アクリル系樹脂フィルム(A)の溶解度パラメータ(s1)と溶剤(C)の溶解度パラメータ(s2)とが次の式(1)または式(2)のいずれかを満足している積層体の製造方法。
    式(1)
    1.6cal1/2・cm−3/2≦s1−s2≦2.0cal1/2・cm−3/2
    式(2)
    1.0cal1/2・cm−3/2≦s2−s1≦1.5cal1/2・cm−3/2
  2. 溶剤(C)の沸点が40℃以上100℃以下である、請求項1に記載の積層体の製造方法。
  3. 溶剤(C)の乾燥温度が30℃以上100℃以下である、請求項1または2に記載の積層体の製造方法。
  4. アクリレート基を有する化合物(B2)が、一分子中に4個以上18個以下の官能基を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の積層体の製造方法。
  5. ハードコート層形成材料溶液(B1)の粘度が10mPa・s以上5,000mPa・s以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の積層体の製造方法。
  6. アクリル系樹脂フィルム(A)の厚みを10μm以上80μm以下とすると共に、ハードコート層(B)を設けるに際し、剥離強度が0.05N/50mm以上0.5N/50mm以下の工程フィルムを、アクリル系樹脂フィルム(A)のハードコート層形成材料溶液(B1)を塗布する面とは反対側の面に貼り合わせた状態でハードコート層(B)の形成を行う、請求項1〜5のいずれかに記載の積層体の製造方法。
  7. ハードコート層(B)の厚みが1μm以上20μm以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の積層体の製造方法。
  8. アクリル系樹脂フィルム(A)が、下記構造式(a)〜(c)からなる群で表される構造単位のうち少なくとも1つを含有するアクリル系ポリマーを含んでいる、請求項1〜7のいずれかに記載の積層体の製造方法。
    Figure 2009067862
    (上記式中、R、Rは、同一または相異なる水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、カルボキシル基または炭素数2〜5のカルボキシアルキル基を表す。また、上記式中、X、Xは、同一又は相異なるCHまたはC=Oを表す。Xは、OまたはNRを表す。Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、カルボキシル基または炭素数2〜5のカルボキシアルキル基を表す。)
    Figure 2009067862
    (上記式中、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、カルボキシル基または炭素数2〜5のカルボキシアルキル基を表す。)
    Figure 2009067862
    (上記式中、Rは炭素数6〜15の脂環式構造を含有する置換基を表す。)
  9. アクリル系樹脂フィルム(A)が、下記構造式(d)で表されるグルタル酸無水物単位を含有するアクリル系ポリマーを含んでいる、請求項8に記載の積層体の製造方法。
    Figure 2009067862
    (上記式中、R、Rは、同一または相異なる水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法により得られる積層体を用いた表示装置用フィルム。
  11. 請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法により得られる積層体を用いた偏光子保護フィルム。
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