JP5203784B2 - ワイヤグリッド偏光板及びそれを用いた積層体 - Google Patents

ワイヤグリッド偏光板及びそれを用いた積層体 Download PDF

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Description

本発明は、表面に微細な凸凹構造を持つワイヤグリッド偏光板及びそれを用いた積層体に関する。
近年のフォトリソグラフィー技術の発達により、光の波長レベルのピッチを有する微細構造パターンを形成することができるようになってきた。この様に非常に小さいピッチのパターンを有する部材や製品は、半導体分野だけでなく、光学分野において利用範囲が広く有用である。
例えば、金属などで構成された導電体線が特定のピッチで格子状に配列してなる凸凹構造を持つワイヤグリッドは、そのピッチが入射光(例えば、可視光の波長400nmから800nm)に比べてかなり小さいピッチ(例えば、2分の1以下)であれば、導電体線に対して平行に振動する電場ベクトル成分の光をほとんど反射し、導電体線に対して垂直な電場ベクトル成分の光をほとんど透過させるため、単一偏光を作り出す偏光板として使用できる。ワイヤグリッド型偏光素子は、透過しない光を反射し再利用することができるので、光の有効利用の観点からも望ましいものである。
このようなワイヤグリッド型偏光素子としては、例えば、特許文献1に開示されているものがある。このワイヤグリッド偏光板は、入射光の波長より小さいグリッド周期で間隔が置かれた金属ワイヤを備えている。
特開2002−328234号公報
しかしながら、特許文献1に開示されている構成においては、微小間隔で微小な金属ワイヤが立設されており、強度的にも弱い。このため、搬送や取扱いの際には、金属ワイヤ側の表面に保護シートなどを貼付して金属ワイヤを保護することが考えられる。粘着層を有する保護シートを、単にワイヤグリッド偏光板の表面に貼付すると、粘着層を構成する被覆材から比較的低分子量の粘着成分が表面の凸凹構造に移行し、ワイヤ間に浸入して光学特性を損なうという問題がある。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、搬送や取扱いの際には、金属ワイヤ側の表面に保護シートを貼付し、使用時に保護シートを剥離する態様であっても、使用時に良好な光学特性を発揮できるワイヤグリッド偏光板及びそれを用いた積層体を提供することを目的とする。
本発明の積層体は、複数の格子状凸部が並設して構成された微細な凸凹構造を表面に有する透明な基材及び前記格子状凸部を含む領域上に設けられた金属ワイヤを備えたワイヤグリッド偏光板と、前記ワイヤグリッド偏光板上に当該ワイヤグリッド偏光板と剥離可能に配設され、前記金属ワイヤの先端部に接触する易剥離性の粘着層を有する保護フィルム基材を備えた被覆材と、を具備し、前記凸凹構造は、高さが0.01μm〜10μmであり、少なくとも1方向のピッチが0.01μm〜10μmであり、前記粘着層を構成する被覆材を溶剤抽出することによって抽出される成分の量が、前記被覆材1cm当たり0.3mg以下であることを特徴とする。
この構成によれば、微細で高精度な凸凹構造を保護することができる。また、この積層体における保護フィルムは、比較的低分子量の粘着成分の含有量が最小である粘着層を有するので、粘着成分の移行による光学特性の低下を防止することができる。また、この積層体は、高生産性であり、曲げ加工性にも優れるものである。
本発明の積層体においては、前記被覆材を剥離した際に、前記粘着層を構成する前記被覆材から前記ワイヤグリッド偏光板への移行成分量が前記被覆材1cm当たり0.005mg以下であることが好ましい。
本発明の積層体においては、剥離速度1000mm/分での90度剥離法による前記ワイヤグリッド偏光板と前記被覆材との間の剥離力が0.1gf/25mm〜200gf/25mmであることが好ましい。
本発明のワイヤグリッド偏光板は、上記積層体から前記被覆材を剥離してなることを特徴とする。
本発明のワイヤグリッド偏光板においては、前記ワイヤグリッド偏光板を溶剤抽出することによって抽出される成分の量が、前記ワイヤグリッド偏光板の全体の重量の10重量%以下であることが好ましい。
本発明の積層体は、複数の格子状凸部が並設して構成された微細な凸凹構造を表面に有する透明な基材及び前記格子状凸部を含む領域上に設けられた金属ワイヤを備えたワイヤグリッド偏光板と、前記ワイヤグリッド偏光板上に当該ワイヤグリッド偏光板と剥離可能に配設され、前記金属ワイヤの先端部に接触する易剥離性の粘着層を有する保護フィルム基材を備えた被覆材と、を具備し、前記凸凹構造は、高さが0.01μm〜10μmであり、少なくとも1方向のピッチが0.01μm〜10μmであり、前記粘着層を構成する被覆材を溶剤抽出することによって抽出される成分の量が、前記被覆材1cm当たり0.3mg以下であるので、搬送や取扱いの際には、金属ワイヤ側の表面に保護シートを貼付し、使用時に保護シートを剥離する態様であっても、使用時に良好な光学特性を発揮することができる。
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。ここでは、成形体が、複数の格子状凸部が並設して構成された凸凹構造の格子状凸部上に金属ワイヤが形成されてなるワイヤグリッド偏光板である場合について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る積層体の一部を示す概略断面図である。図1に示す積層体は、微細な凸凹構造11a(一方向に延在した凸部を持つ格子状の凸凹構造)を表面に有する透明な基材11と、この基材11の凸凹構造11aの格子状凸部を含む領域上に設けられた金属ワイヤ12と、この金属ワイヤ12の先端部と接触する粘着層22を有する保護フィルム基材21を備えた被覆材である保護フィルム2とから主に構成されている。基材11と金属ワイヤ12とで成形体であるワイヤグリッド偏光板1を構成しており、微細な凸凹構造11aは、高さが0.01μm〜10μmであり、少なくとも1方向のピッチが0.01μm〜10μmであり、例えば、光ナノインプリント技術を応用して製造することができる。また、凸凹構造11aについては、格子状凸部上に形成された金属ワイヤ12だけでなく、格子状凸部を薄膜やドットで構成しても良く。凸凹構造11aの凹部をピンホールで構成しても良い。
なお、ここでは、基材11は、基材11の表面に凸凹構造11aが形成された単層構造を有しているが、本発明においては、金属ワイヤ12を設けるための凸凹構造11aを有するものであれば、単層に限定されることはない。
基材11を単層で構成する場合、基材1を構成するものとしては、PET樹脂、PMMA樹脂、PC樹脂、PS樹脂、COPなどの熱可塑性樹脂やTAC樹脂などの樹脂、ガラスなどを挙げることができる。また、基材11は、例えば、ベース基材上に、凸凹構造11aを有するように紫外線硬化型樹脂層が設けられた複数層構造であっても良い。この場合、基材11を構成するものとしては、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、PS(ポリスチレン)樹脂、PE(ポリエチレン)樹脂、PP(ポリプロピレン)樹脂、COP(シクロオレフィンポリマー)などの熱可塑性樹脂やTAC(トリアセチルセルロース)樹脂などの樹脂、ガラスなどを挙げることができる。紫外線硬化型樹脂層を構成する紫外線硬化型樹脂としては、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系などの紫外線硬化型樹脂を用いることができる。
紫外線硬化型樹脂を用いて凸凹構造11aを設ける場合には、例えば、上記の基材11を構成する樹脂、ガラスの表面に上記の紫外線硬化樹脂を塗布し、所望の凸凹構造を反転した凹凸構造を有する型に押し当てながら紫外線硬化型樹脂を紫外線で硬化して、型の凹凸構造を紫外線硬化型樹脂に転写して基材11上に凸凹構造11aを設ける。
また、熱可塑性樹脂に凸凹構造11aを設け、単層の基材11とする場合には、例えば所望の凸凹構造を反転した凹凸構造を有する型を用いて熱可塑性樹脂に凸凹構造を熱転写する方法や、例えば延伸加工が可能な熱可塑性樹脂によりピッチの大きな反転型を用いて熱転写した後に延伸加工を施して、所望のピッチの凸凹構造11aを設けた基材11を得る方法が挙げられる。なお、このような熱可塑性樹脂基材の延伸については、本出願人の特願2006−2100号に記載されている。この内容はすべてここに含めておく。また、ガラス基板などに凸凹構造11aを設ける場合には、例えばフォトリソグラフィー、エッチングなどの通常のパターニング方法を用いればよい。
基材11の凸凹構造11aの格子状凸部のピッチは、可視光領域の広帯域にわたる偏光特性を考慮すると、150nm以下が好ましく、より好ましくは120nm以下であり、さらに好ましくは80nm以下である。ピッチが小さくなるほど偏光特性は向上する。一方、加工の容易さの面では10nm以上であることが好ましい。偏光特性を重視した場合2μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以下であり、さらに好ましくは250nm以下である。また、テラヘルツ領域の偏光特性を重視した場合10μm以下が好ましい。上記したようなピッチの大きさは製造条件を調整することにより制御することができる。
上記したように、凸凹構造11aの格子状凸部の高さは0.01μm〜10μmであることが好ましく、強度面からは格子状凸部間のピッチに対して0.5〜1.5倍の高さ、特に0.8〜1.5倍の高さであることがより好ましい。凸凹構造11aの上に金属ワイヤ12を設けた場合には、(格子状凸部+金属ワイヤ12)の高さが格子状凸部間のピッチに対して0.5〜1.5倍の高さ、特に0.8〜1.5倍の高さであることが強度、偏光性能の面からより好ましい。
また、凸凹構造11a上に誘電体層を設けてもよい。特に、基材11として樹脂基材を用いる場合、誘電体層を設けることが好ましい。誘電体層が凸凹構造11aの格子状凸部の側面を覆うことにより、格子状凸部と誘電体層との間の接触面積が増加する。これにより、格子状凸部と誘電体層との間の密着性を向上させることができる。そして、このように格子状凸部と誘電体層との間の密着性が向上することにより、金属ワイヤ12を強固に格子状凸部上に立設することができるので、金属ワイヤ12を厚く設けてワイヤ全体(格子状凸部+金属ワイヤ12)の高さを高くしても、ワイヤの外力に対する強度を高く保つことが可能となる。
金属ワイヤ12を構成する金属としては、光の反射率が高い素材が好ましく、アルミニウム、銀などを挙げることができる。金属ワイヤ12の幅は、偏光度、透過率などを考慮すると、格子状凸部間のピッチの35%〜60%であることが好ましい。ワイヤの高さと幅の比(アスペクト比)としては2〜5が好ましく、特に2〜3.5が好ましい。ワイヤの高さは可視光領域の偏光特性を考慮した場合には、120nm〜220nmがさらに好ましく、140nm〜200nmであることが最も好ましい。なお、金属ワイヤ12を形成する方法としては、金属ワイヤ12を構成する材料と基材を構成する材料とを考慮して適宜選択する。例えば、真空蒸着法などを用いることができる。
格子状凸部や、複数の格子状凸部によって形成される微細凸凹格子の凹部の断面形状に制限はない。これらの断面形状は、例えば台形、矩形、方形、プリズム状や、半円状などの正弦波状であってもよい。ここで、正弦波状とは凹部と凸部の繰り返しからなる曲線部をもつことを意味する。なお、曲線部は湾曲した曲線であればよく、例えば、凸部にくびれがある形状も正弦波状に含める。
成形体1の凸凹構造11a上に配設された保護フィルム2の粘着層22は、格子状凸部の(凸凹構造11aの上に金属ワイヤ12を設けた場合には、金属ワイヤ12の(以後このケースに沿って説明する。))頂部の形状に追従して接触し、成形体1と保護フィルム基材21とを結合するために必要な結合力を有すると共に、一方、保護フィルム2を成形体1から外す際には、金属ワイヤ12を基材11から剥離させたり、凸凹構造11aや成形体1そのものを保護フィルム2を設ける前と比較して変形させたり、粘着層22に由来する成分をワイヤ上に残留させることのない易剥離性を持つ。
このような粘着層22を構成する被覆材は、溶剤抽出することによって抽出される成分の量が、保護フィルム2(前記被覆材)1cm当たり0.3mg以下であることが好ましい。このような材料を用いれば、保護フィルム2を成形体1に貼付しても、粘着層22に含まれる比較的低分子量の粘着成分が成形体1の表面に移行し、金属ワイヤ12のワイヤ間および格子状凸部間に浸入し残留汚染したり、成形体1に浸透して凸凹構造11aを変形させたり、保護フィルム2と成形体1との層間を強固に接着したりすることがなく、保護フィルム2を成形体1から容易に剥離でき、保護フィルム2から剥離した成形体1はワイヤグリッド偏光板として、保護フィルム2を設ける前と同等の良好な光学特性を発揮せしめることができる。
本発明の積層体の保存安定性を一層向上させるには溶剤抽出することによって抽出される成分の量が、より少ないことが好ましく、被覆材1cm当たり0.2mg以下であることがより好ましい。さらに好ましくは被覆材1cm当たり0.1mg以下であり、特に好ましくは被覆材1cm当たり0.05mg以下であり、最も好ましくは被覆材1cm当たり0.01mg以下であり、特に最も好ましくは被覆材1cm当たり0.005mg以下である。このように溶剤抽出することによって抽出される成分の量が少ない保護フィルムを製造する方法としては、比較的低分子量の粘着成分の配合を制限する方法や、過剰な粘着成分を予め抽出等の手段で除去し低減する方法や、粘着層22の厚みを薄く制限する方法等が挙げられる。
ここで、溶剤抽出に使用する溶剤としては、抽出されうる成分の特性に応じて、トルエン、クロロホルム、アルコール類、ケトン類、エーテル類等の有機溶剤や、温水などから適宜選択できるが、広範な成分を溶解出来る面及び、安全性の面から、トルエン、アルコール類、温水などが好ましく用いられる。また、溶剤抽出の方法としては、従来用いられる方法を採用することができる。
また、粘着層22を構成する被覆材については、成形体1から保護フィルム2を剥離した際に、粘着層22を構成する被覆材から成形体1に移行する成分の量が保護フィルム2(前記被覆材)の1cm当たり0.005mg以下であるものが好ましい。このように成形体1に実質的に移行する成分の量が少ない材料を粘着層22に用いることにより、移行した成分がワイヤ間に浸入したり、ワイヤを腐食させたり、保護フィルム2を剥離した後の成形体1の表面に、塵などの異物を粘着させたりすることがなく、保護フィルム2から剥離した成形体1はワイヤグリッド偏光板として、保護フィルム2を設ける前と同等の良好な光学特性を発揮せしめることができるので好ましい。
本発明の効果を一層向上させるには粘着層22を構成する被覆材から成形体1に移行する成分の量がより少ないことが好ましく、被覆材1cm当たり0.001mg以下であるものがより好ましく、さらに好ましくは被覆材1cm当たり0.0005mg以下であり、特に好ましくは被覆材1cm当たり0.0002mg以下である。このように粘着層を構成する被覆材から成形体に移行する成分の量が少ない保護フィルムを製造する方法としては、比較的低分子量の粘着成分の配合を制限する方法や、過剰な粘着成分を予め抽出等の手段で除去し低減する方法や、粘着層22の厚みを薄く制限する方法や、粘着成分として保護フィルム2を剥離した後、成形体1の表面から速やかに揮発するものを選択する方法等が挙げられる。
ここで、移行成分量は、保護フィルム2と密着させる前の成形体1(a)と、積層体1から保護フィルム2を剥離した後の成形体2(b)の、各々の抽出物量を比較する方法や、上記成形体1(a)及び成形体1(b)のワイヤグリッド表面をXPS分析する方法などによって求めることができる。
このような易剥離性の粘着層22の材料としては、低流動性ゴム系弾性材料が挙げられる。具体的には、ポリアクリル酸エステルを主成分とするアクリル系粘着剤、架橋したシリコーンゴム(ポリオルガノシロキサン)、天然ゴム、ポリイソブチレンなどが挙げられる。このような粘着層22を構成する被覆材は、低分子量成分(揮発成分)が少ないことが好ましい。このようなゴム系材料に、本発明の効果を損なわない質的、量的範囲内で、粘着性付与剤、オイル、ガラス転移温度シフト剤などの添加剤を付与しても良い。このような材料で構成された粘着層22は、金属ワイヤ12と主にファンデルワールス力で結合する。これにより、上述したように、金属ワイヤ12を有する基材11上に対して保護フィルム2を多数回にわたって貼付・剥離することが可能となる。
保護フィルム2の基材21は透明であり、微細な凸凹構造11aや金属ワイヤ12を保護するために十分な剛性を有する。このような保護フィルム基材21を構成する材料としては、PET、PE、PP、PMMA、COP、PC、PS、TACなどを挙げることができる。
成形体1と保護フィルム2(前記被覆材)との剥離力は保護フィルム2を設けた際に保護フィルム2を成形体1上に確実に固定するために十分な力であると同時に、成形体1と保護フィルム2とを剥がす際には、金属ワイヤ12を基材11から剥離させたり、凸凹構造11aや成形体1そのものを保護フィルム2を設ける前と比較して変形させたり、粘着層22に由来する成分をワイヤ上に残留させることのない程度の力である。例えば、剥離速度1000mm/分での90度剥離法による剥離力が0.1gf/25mm〜200gf/25mmであることが好ましい。成形体1と保護フィルム2との接触面積が大きい大面積の成形体を保護する場合には、単位面積当たりの剥離力は小さい方が好ましく、他方小面積の成形体を保護する場合には、単位面積当たりの剥離力は大きい方が好ましい。より好ましい剥離力は0.5gf/25mm〜150gf/25mmの範囲であり、さらに好ましくは1.0gf/25mm〜100gf/25mmの範囲であり、特に好ましくは2.0gf/25mm〜50gf/25mmの範囲であり、最も好ましくは3.0gf/25mm〜30gf/25mmの範囲である。
これにより、本発明の積層体においては、成形体1と保護フィルム2とを、ワイヤグリッド偏光板としての特性を低下させることなく多数回にわたって貼付・剥離することが可能となる。
尚、本発明の成形体は保護フィルム2を剥離した後で溶剤抽出することによって抽出される残留モノマー、可塑剤、離型剤などといった成分の量が、成形体1の全体の重量の10重量%以下であることが好ましい。基材11を単層で構成する場合、残留モノマーの量は原料樹脂の純度に関わり、紫外線硬化型樹脂を用いて凸凹構造11aを設ける場合には、残留モノマーの量は原料樹脂の純度や反応率(生産性)に関わり、可塑剤の量は基材11を単層で延伸加工により製造する場合の加工性や、成形体1を製造した後での曲げ加工性の確保に関わり、離型剤の量は反転型によって凸凹構造11aを転写する際の高生産性の確保に、それぞれ関わる成分である。本発明の積層体においてはこれらの成分は成形体1からブリードアウトし、保護フィルム2から移行した成分とともに格子状凸部間やワイヤ間に浸入して光学特性を損なう問題がある。本発明の積層体においては、保護フィルムを剥離した後の成形体を溶剤抽出することによって抽出されるような成分の量を最小レベルに調整しつつ成形体の高生産性、延伸加工性、曲げ加工性などにも優れているように原料樹脂の組成面で対策することが好ましく、例えば原料樹脂の高純度化や高反応率化や、化学結合で固定されて抽出されることのない可塑成分や離型成分を導入する手段が好ましい。
このような材料を用いることにより、保護フィルムを剥離した後の成形体を溶剤抽出することによって抽出されるような成分の量が最小レベルであるために、これらの成分が格子状凸部間やワイヤ間に浸入して光学特性を損なうことを防止できるとともに、成形体の高生産性、延伸加工性、曲げ加工性などにも優れた成形体を製造できる。ここで、溶剤抽出に使用する溶剤としては、抽出されうる成分の特性に応じて、トルエン、クロロホルム、アルコール類、ケトン類、エーテル類等の有機溶剤や、温水などから適宜選択できるが、広範な成分を溶解出来る面及び、安全性の面から、トルエン、アルコール類、温水などが好ましく用いられる。また、溶剤抽出の方法としては、従来用いられる方法を採用することができる。
上記構成の積層体によれば、微細で高精度な凸凹構造を保護することができる。また、この積層体を構成する保護フィルム及び成形体は、比較的低分子量の粘着成分の量や、残留モノマー、可塑剤、離型剤などの含有量が最小であるので、ブリードアウトによる光学特性の低下を防止することができる。また、この積層体は、高生産性であり、曲げ加工性にも優れるものである。
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
(実施例1)
(格子状凸部の形成)
まず、本出願人の特開2006−224659号公報に記載された方法を用いて、ピッチが230nmで、微細凹凸格子の高さが350nmである微細凹凸格子から、表面の微細凹凸格子のピッチと高さが140nm/162nmで、厚さ0.3mm、縦300mm、横180mmのニッケルスタンパ(スタンパ1)を作製した。
・紫外線硬化樹脂を用いた格子状凸部転写フィルムの作製
トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)を20重量%、ヘキサメチレンジアクリレート(HDDA)を47重量%、ラウリルアクリレートを30重量%、ダロキュア1173(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)を3重量%配合し、異物をろ過して光硬化性樹脂組成物(組成物1)を作成した。
組成物1を厚さ100μmのPETフィルムに10μmの厚みで塗布し、表面にスタンパ1を押し付けて、PETフィルム側から1J/cmの光量で紫外光照射して硬化させて格子状凸部転写フィルムを作製した。
(ワイヤグリッド偏光板の作製)
・真空蒸着法を用いた金属の蒸着
得られた紫外線硬化樹脂格子状凸部転写フィルムに、電子ビーム真空蒸着法(EB蒸着法)を用いて金属を被着した。本実施例では、金属としてアルミニウム(Al)を用い、真空度2.5×10-3Pa、蒸着速度4nm/s、常温下においてアルミニウムを蒸着した。
・エッチングによる不要金属の除去
格子状凸部転写フィルムにAlを被着した後、フィルムを室温下の0.1重量%水酸化ナトリウム水溶液中で55秒及び80秒の2条件で洗浄し、すぐに水洗してエッチングを停止させた。その後、フィルムを乾燥して、金属ワイヤ層を有する格子状凸部転写フィルムを作製した。この格子状凸部転写フィルムの大きさは、縦300mm、横180mmであった。格子状凸部転写フィルムの断面を、電界放出型走査型電子顕微鏡にて観察したところ、格子状凸部のピッチ、形成したアルミニウムの高さ、及び幅はそれぞれ、140nm/162nm/63nm、140nm/130nm/55nmであった。このようにして実施例のワイヤグリッド偏光板(成形体1(a))を作製した。
(保護フィルムの作製)
厚さ50μmのPET製基材に、厚さ25μmのシリコーンゴム製の粘着剤層を設けたフィルムを作製し、さらにこれをヘキサン中に1時間浸漬した後、80℃の熱風乾燥機中で3時間乾燥して保護フィルムを作製した(保護フィルム1)。
保護フィルム1の粘着層が成形体1(a)のアルミニウムワイヤ層と対向するようにして密着させた。その後、20℃、55%RHの環境で24時間保持した。このようにして積層体を作製した(積層体1)。
(保護フィルムからの抽出成分量の測定)
保護フィルム1を620cm採取し、短冊状に裁断したものをトルエン50mlに12時間浸漬した抽出液を真空乾燥して抽出成分量を評価した結果、抽出成分量は、保護フィルム1について1cm当たり0.11mgであった。
(保護フィルム剥離の際の移行成分量の測定)
積層体1から保護フィルム1を剥離した後の成形体1(b)について、(1)成形体1(b)を700cm採取し、短冊状に裁断したものをクロロホルム50mlに浸漬し、1時間超音波照射した抽出液を濃縮して抽出成分を回収した、また成形体1(a)についても同様にして抽出成分を回収し、GPC分析によって保護フィルム1からの移行成分と判定された成分の量を測定した。その結果、移行成分量は、保護フィルム1について1cm当たり0.0002mgであった。また、(2)成形体1(b)のワイヤグリッド面のXPS分析によりシロキサン系粘着成分が14atomic%検出され、物質量としては保護フィルム1について1cm当たり凡そ0.00015mgと判定した。
(成形体からの抽出成分量の測定)
積層体1から保護フィルム1を剥離した後の成形体1(b)を700cm採取し、短冊状に裁断したものをクロロホルム50mlに浸漬し、1時間超音波照射した抽出液を真空乾燥して抽出成分量を評価した結果、抽出成分量は、成形体1の全体の重量の0.08w%であり、紫外線硬化樹脂部分の重量に対する値と考えても0.90w%であった。
(90度剥離法による剥離力測定)
積層体1について、幅25mm、長さ100mmに裁断したものを、JIS Z1528に準拠した、粘着テープ90度剥離試験治具を用いて、引っ張り試験機にて剥離速度1000mm/分での剥離力を測定した結果、剥離力は、16gf/25mmであった。
(分光光度計による偏光性能評価)
保護フィルム1と密着させる前の成形体1(a)と、60℃の熱風乾燥機中で8時間加熱した積層体1から保護フィルム1を剥離した後の成形体1(b)について分光光度計を用い、直線偏光に対する平行ニコル時及び直交ニコル時の透過光強度を測定した。測定波長域は可視光として400nm〜780nmとし、偏光度を下記式より算出した。その結果について図2に示す。
偏光度=[(Imax−Imin)/(Imax+Imin)]×100(%)
ここで、Imaxは平行ニコル時の透過光強度であり、Iminは直交ニコル時の透過光強度である。
本発明に係る積層体及びワイヤグリッド偏光板(成形体)は、保護フィルムを密着させた前後で、可視光領域のほぼ全領域にわたって同程度の優れた偏光度及び透過率を示した。またこの積層体をカッターナイフで切断した後で保護フィルムを剥離して、ワイヤグリッド偏光板の切断部とその周辺を目視外観評価したところ、いずれの箇所にも粘着層の付着などの異常は何ら認められなかった。
このように、本発明の積層体は保護フィルムによってワイヤグリッド偏光板の表面を周辺環境からの汚染や、取扱い時の擦れや切断加工などの外力から保護できる。また保護フィルムからの悪影響たとえば粘着剤によるワイヤグリッド偏光板性能の低下や、保護フィルムを剥離する際のワイヤグリッド表面の損傷や移行物質による汚染もほとんどないことがわかる。
(実施例2、3)
保護フィルムとして、厚さ50μmのPET製基材に、厚さ20μmのアクリル系粘着剤層を設けたフィルムを調整し、さらにこれをヘキサン中に1時間浸漬した後、80℃の熱風乾燥機中で3時間乾燥して保護フィルムを作製した(保護フィルム2)。
厚さ50μmのPET製基材に、厚さ5μmのアクリル系粘着剤層を設けたフィルムを調整し、さらにこれをヘキサン中に1時間浸漬した後、80℃の熱風乾燥機中で3時間乾燥して保護フィルムを作製した(保護フィルム3)。
さらに保護フィルム2〜3を使用した以外、積層体1を作製したのと同じ操作によって積層体を作製した(積層体2〜3)。
これら積層体2〜3についても、実施例1と同様に抽出成分、移行成分、剥離力、偏光性能、目視外観について評価した。結果を表1にまとめて示した。積層体2〜3についても保護フィルムからの悪影響はほとんどなく、ワイヤグリッド偏光板の性能を周辺環境や外力から保護できることがわかる。
(比較例1)
保護フィルムとして、厚さ38μmのPETフィルムに、厚さ25μmのアクリル系粘着剤層を設けたフィルムを作成した(保護フィルム4)。
さらに保護フィルム4を使用した以外、実施例1と同様に積層体を作製した(積層体4)。
これら積層体4についても、実施例1と同様に抽出成分、移行成分、剥離力、偏光性能、目視外観について評価した。結果を表1にまとめて示した。
保護フィルム4と密着させる前の成形体1(c)と、60℃の熱風乾燥機中で8時間加熱した積層体4から保護フィルム4を剥離した後の成形体1(d)について偏光性能を評価した結果を図3に示す。成形体1(d)は、可視光領域の短波長側において、偏光度の低下率が顕著であった。これは、保護フィルム4の粘着剤成分がワイヤグリッド表面に移行し、アルミニウムワイヤ間に入り込んでしまったことが原因と考えられる。また、積層体4をカッターナイフで切断した後で保護フィルム4を剥離してワイヤグリッド偏光板の切断部とその周辺を、目視外観評価したところ肉眼で判別出来る程度の粘着層断片の付着が認められた。一方、保護フィルム4は、格子状凸部を有さない単にアルミニウムを被着しただけのPET平面と密着させて切断加工などの外力を加えても、肉眼で判別出来る程度の粘着層断片の付着は認められなかった。この保護フィルム4の挙動の相違は、粘着層の流動性が高いために格子状凸部に浸入しやすく、成形体1(d)に対してはより強力に接着したためと考えられる。
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態における寸法、材質などは例示的なものであり、適宜変更して実施することが可能である。また、上記実施の形態における偏光板については、板状の部材である必要はなく、必要に応じてシート状、フィルム状であっても良い。その他、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
Figure 0005203784
本発明の実施の形態に係る積層体を示す図である。 実施例1の成形体1(a)と成形体1(b)の光学特性を示す図である。 比較例1の成形体1(c)と成形体1(d)の光学特性を示す図である。
符号の説明
1 ワイヤグリッド偏光板(成形体)
2 保護フィルム(被覆材)
11 基材
11a 凸凹構造
12 金属ワイヤ
21 保護フィルム基材
22 粘着層

Claims (5)

  1. 複数の格子状凸部が並設して構成された微細な凸凹構造を表面に有する透明な基材及び前記格子状凸部を含む領域上に設けられた金属ワイヤを備えたワイヤグリッド偏光板と、前記ワイヤグリッド偏光板上に当該ワイヤグリッド偏光板と剥離可能に配設され、前記金属ワイヤの先端部に接触する易剥離性の粘着層を有する保護フィルム基材を備えた被覆材と、を具備し、
    前記凸凹構造は、高さが0.01μm〜10μmであり、少なくとも1方向のピッチが0.01μm〜10μmであり、
    記粘着層を構成する被覆材を溶剤抽出することによって抽出される成分の量が、前記被覆材1cm当たり0.3mg以下であることを特徴とする積層体。
  2. 前記被覆材を剥離した際に、前記粘着層を構成する前記被覆材から前記ワイヤグリッド偏光板への移行成分量が前記被覆材1cm当たり0.005mg以下であることを特徴とする請求項1記載の積層体。
  3. 剥離速度1000mm/分での90度剥離法による前記ワイヤグリッド偏光板と前記被覆材との間の剥離力が0.1gf/25mm〜200gf/25mmであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の積層体。
  4. 請求項1から請求項3のいずれかに記載の積層体から前記被覆材を剥離してなることを特徴とするワイヤグリッド偏光板
  5. 前記ワイヤグリッド偏光板を溶剤抽出することによって抽出される成分の量が、前記ワイヤグリッド偏光板の全体の重量の10重量%以下であることを特徴とする請求項4記載のワイヤグリッド偏光板
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