WO2017002797A1 - 光透過性積層体 - Google Patents
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Abstract
高屈折率薄膜が有機薄膜からなる場合において、湿熱環境下でも高屈折率薄膜の剥離が抑えられる光透過性積層体を提供する。 金属薄膜層16、金属薄膜層16よりも屈折率の高い高屈折率薄膜層14、光透過性基板12、をこの順で有し、光透過性基板12が、高分子フィルムからなり、高屈折率薄膜層14が、N,O,Sから選択される少なくとも1種の元素を含む官能基を有する非架橋ポリマーおよび多官能アクリレートの重合体または多官能メタクリレートの重合体からなる架橋ポリマーを含有する有機薄膜からなり、光透過性基板12に接着している、光透過性積層体10とする。
Description
本発明は、光透過性積層体に関し、さらに詳しくは、遮熱性や断熱性に優れる光透過性積層体に関するものである。
ビル・住宅等の建築物の窓ガラスや自動車等の車両の窓ガラスなどには日射を遮蔽する目的で遮熱性を有する光透過性積層フィルム(光透過性積層体)が施工されることがある。光透過性積層体の高屈折率薄膜として有機薄膜を形成することが提案されている。
光透過性積層体において高屈折率薄膜が有機薄膜からなると、湿熱環境下に置かれたときに有機薄膜が基板から剥離することがあるという問題があった。
本発明が解決しようとする課題は、高屈折率薄膜が有機薄膜からなる場合において、湿熱環境下でも高屈折率薄膜の剥離が抑えられる光透過性積層体を提供することにある。
上記課題を解決するため本発明に係る光透過性積層体は、金属薄膜層、前記金属薄膜層よりも屈折率の高い高屈折率薄膜層、光透過性基板、をこの順で有し、前記光透過性基板が、高分子フィルムからなり、前記高屈折率薄膜層が、N,O,Sから選択される少なくとも1種の元素を含む官能基を有する非架橋ポリマーおよび多官能アクリレートの重合体または多官能メタクリレートの重合体からなる架橋ポリマーを含有する有機薄膜からなり、前記光透過性基板に接着していることを要旨とするものである。
前記金属薄膜層は、銀または銀合金からなることが好ましい。前記金属薄膜層の両面には、前記金属薄膜層の金属の凝集を抑制する凝集抑制層が形成されており、前記凝集抑制層は、金属または金属酸化物からなることが好ましい。前記凝集抑制層は、チタンまたはチタン酸化物からなることが好ましい。前記非架橋ポリマーは、トリアジン環を有する重合体であることが好ましい。前記高分子フィルムは、ポリエステルフィルムまたはポリオレフィンフィルムであることが好ましい。前記高分子フィルムは、二軸延伸ポリプロピレンフィルムであることが好ましい。
本発明に係る光透過性積層体は、さらに、前記光透過性基板の面上に表面保護層を有していてもよい。前記表面保護層は、有機無機ハイブリッド材料からなり、前記表面保護層における無機成分の含有量が1.0~30質量%の範囲内であることが好ましい。
また、本発明に係る光透過性積層体は、さらに、被着体に貼着するための粘着層を有していてもよい。前記粘着層の、JIS K6854-2に準拠し引張速度50mm/分の条件で測定される、被着体に貼着してから3時間後の粘着力が3.0N/25mm以下、被着体に貼着してから1カ月後の粘着力が4.0N/25mm以上であることが好ましい。
本発明に係る光透過性積層体は、前記粘着層と、前記金属薄膜層と、前記高屈折率薄膜層と、前記光透過性基板と、を、この順で有していてもよい。また、前記粘着層と前記金属薄膜層との間に、前記高屈折率薄膜層とは別の高屈折率薄膜層をさらに有していてもよい。前記粘着層は、前記金属薄膜層、または前記粘着層と前記金属薄膜層との間に有する別の高屈折率薄膜層に接して配置されていてもよい。
本発明に係る光透過性積層体によれば、高屈折率薄膜層が、N,O,Sから選択される少なくとも1種の元素を含む官能基を有する非架橋ポリマーおよび多官能アクリレートの重合体または多官能メタクリレートの重合体からなる架橋ポリマーを含有する有機薄膜からなり、光透過性基板に接着していることから、湿熱環境下でも高屈折率薄膜の剥離が抑えられる。
金属薄膜層が銀または銀合金からなると、有機薄膜からなる高屈折率薄膜層との接着性に優れる。また、光透過性、日射遮蔽性、熱線反射性に優れる。金属薄膜層の両面に金属または金属酸化物からなる凝集抑制層が形成されていると、耐久時における金属薄膜層の金属の凝集が抑えられ、これによる剥離や外観不良が抑えられる。チタンまたはチタン酸化物からなる凝集抑制層は、緻密なため、耐久時における金属薄膜層の金属の凝集を抑える効果が特に高い。非架橋ポリマーがトリアジン環を有する重合体であると、有機薄膜の屈折率が高く、光透過性積層体の光透過性が優れる。高分子フィルムが二軸延伸ポリプロピレンフィルムであると、ポリオレフィンフィルムの中でも比較的コシが強いので、貼り直し時にかかる力で光透過性積層体を折れなくしやすい。
さらに、光透過性基板の面上に表面保護層を有し、表面保護層が有機無機ハイブリッド材料からなり、表面保護層における無機成分の含有量が1.0~30質量%の範囲内であると、高屈折率薄膜層が、N,O,Sから選択される少なくとも1種の元素を含む官能基を有する非架橋ポリマーおよび多官能アクリレートの重合体または多官能メタクリレートの重合体からなる架橋ポリマーを含有する有機薄膜からなることと相まって、表面保護層の接着性と断熱性を両立できる。
さらに、被着体に貼着するための粘着層を有し、粘着層の被着体に貼着してから3時間後までの粘着力を低く抑えるとともに、高屈折率薄膜には割れやすい無機薄膜ではなく有機薄膜を用い、さらにその有機薄膜を架橋ポリマーで構成することで、貼り直し時にかかる力で光透過性積層体が折れなくなり、ポリオレフィンフィルムを基材とする場合においても貼り直しできるようになる。
本発明に係る光透過性積層体について詳細に説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係る光透過性積層体の断面図である。
光透過性積層体10は、金属薄膜層16、高屈折率薄膜層14、光透過性基板12、をこの順で有する。高屈折率薄膜層14は、光透過性基板12の一方面上に接して設けられている。金属薄膜層16は、高屈折率薄膜層14に接して設けられている。金属薄膜層16の面上には、さらに、高屈折率薄膜層18が接して設けられている。
光透過性基板12は、高屈折率薄膜層14や金属薄膜層16などの薄膜層を形成するためのベースとなる基材である。光透過性基板12の材料としては、光透過性を有し、その表面に薄膜を支障なく形成でき、柔軟性を有するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、(光透過性)高分子フィルムやフレキシブルガラスなどが挙げられる。ここでいう光透過性とは、波長領域360~830nmにおける透過率の値が50%以上であることをいう。
光透過性高分子フィルムの材料としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン,ポリプロピレン,エチレン-αオレフィン共重合体,シクロオレフィンポリマーなどのポリオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、トリアセチルセルロース、ポリウレタンなどの高分子材料が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、透明性、耐久性、加工性に優れるなどの観点から、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン,ポリプロピレン,エチレン-αオレフィン共重合体,シクロオレフィンポリマーなどのポリオレフィンがより好ましい材料として挙げられる。また、ポリエチレン,ポリプロピレン,エチレン-αオレフィン共重合体,シクロオレフィンポリマーなどのポリオレフィン(鎖状ポリオレフィン、環状ポリオレフィン)がより好ましい材料として挙げられる。
ポリオレフィンは、ポリエチレンテレフタレート(PET)のような官能基を有していないので、フィルム自体の赤外線の吸収が小さくなる。そうすると、室内で発生させた暖房熱などを吸収しにくく、断熱性をより高める。また、ポリオレフィンフィルムは柔軟性に優れるので、柔軟性が求められる用途への適用が可能となる。また、ポリオレフィンフィルムはPETフィルムと比べてコストが低減する。フィルムは、薄い膜状のものであり、一般には200μm以下あるいは250μm以下の厚みのものである。ロール状に巻けるほどの柔軟性を有するものであればよく、そのようなものであれば、200μm以上あるいは250μm以上の厚いものであってもよい。フィルムは、一般にロール状物として供出される。
ポリオレフィンとしては、光透過性、耐久性、加工性などの観点から、ポリプロピレンが好ましい。特に、光透過性などの観点から、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)が好ましい。二軸延伸ポリプロピレンは、ポリオレフィンフィルムの中で比較的コシが強い点でも好ましい。
ポリオレフィンフィルムは、その一方あるいは両方の表面に、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理などが挙げられる。表面処理により、ポリオレフィンフィルムの表面には水酸基や酸素基などが形成され、ポリオレフィンフィルムに接する層との接着性が向上する。
ポリオレフィンフィルムの厚みは、光透過性積層体10の施工時の再剥離性などの観点から、10μm以上であることが好ましい。より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上である。また、ロールtoロールでの生産性に優れるなどの観点から、100μm以下であることが好ましい。より好ましくは50μm以下である。
金属薄膜層16は、赤外線を反射しやすい金属から構成され、日射遮蔽層として機能することができる。金属薄膜層16の金属としては、銀、銀合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金などが挙げられる。これらは、金属薄膜層16の金属として1種単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。これらのうちでは、光透過性、日射遮蔽性、熱線反射性が優れるなどの観点から、銀、銀合金がより好ましい。そして、熱、光、水蒸気などの環境に対する耐久性が向上するなどの観点から、銀合金がさらに好ましい。銀合金としては、銀を主成分とし、銅、ビスマス、金、パラジウム、白金、チタンなどの金属元素を少なくとも1種以上含んだ銀合金が良い。さらに好ましくは、銅を含む銀合金(Ag-Cu系合金)、ビスマスを含む銀合金(Ag-Bi系合金)、チタンを含む銀合金(Ag-Ti系合金)等が良い。
金属薄膜層16の膜厚は、安定性、日射遮蔽性などの観点から、好ましくは3nm以上、より好ましくは4nm以上、さらに好ましくは5nm以上である。また、光透過性、経済性などの観点から、好ましくは30nm以下、より好ましくは20nm以下、さらに好ましくは15nm以下である。金属薄膜層16は、スパッタ法などにより形成することができる。
高屈折率薄膜層14,18は、金属薄膜層16とともに積層されることで光透過性を高めるなどの機能を発揮することができる。高屈折率薄膜層14,18は、金属薄膜層16よりも高い屈折率を持つ。屈折率は、633nmの光に対する屈折率をいう。高屈折率薄膜層14,18の屈折率は、1.6以上であることが好ましい。より好ましくは1.7以上である。
高屈折率薄膜層14,18は、有機薄膜からなる。金属酸化物薄膜のような無機薄膜は割れやすい。高屈折率薄膜層14,18が有機薄膜からなることで、高屈折率薄膜層14,18の割れが抑えられやすい。有機薄膜は、非架橋ポリマーおよび架橋ポリマーを含有する。有機薄膜(高屈折率薄膜層14,18)は、非架橋ポリマーおよび架橋ポリマーに加え、本発明の効果を損なわない範囲において、レベリング剤が含まれていてもよい。このようなレベリング剤としては、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
非架橋ポリマーは、N、S、Oから選択される少なくとも一種の元素を含む官能基を有する有機ポリマーからなる。このような官能基を有する有機ポリマーは、屈折率が比較的高い傾向にある。N、S、Oの中でも特にN、Sを含む有機ポリマーは、屈折率が特に高い傾向にある点で好ましい。また、これらの元素は金属薄膜層16の金属と結びつきの強い元素であり、これらの元素を含む官能基により、有機薄膜からなる高屈折率薄膜層14,18は高屈折率薄膜層14,18に接する金属薄膜層16と強く接着し、金属薄膜層16との接着性が良好になる。N、S、Oの中でも特にN、Sが金属の中でもAgと結びつきの強い元素であり、NやSを含む官能基を有する有機ポリマーであれば、Agを含む金属薄膜層16との接着性が特に良好になる。
Sを含む官能基としては、スルホニル基(-SO2-)、チオール基、チオエステル基などが挙げられる。これらのうちでは、金属薄膜層16との接着性により優れるなどの観点から、スルホニル基、チオール基などがより好ましい。そして、Sを含む官能基を有するポリマーとしては、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン、ポリフェニルスルホンなどが挙げられる。
Oを含む官能基としては、カルボキシル基、エステル基、ケトン基、ヒドロキシル基などが挙げられる。これらのうちでは、金属薄膜層16との接着性により優れるなどの観点から、カルボキシル基、エステル基などがより好ましい。そして、Oを含む官能基を有するポリマーとしては、エポキシ樹脂などが挙げられる。
Nを含む官能基としては、カルバゾール基、イミド基、ニトリル基などが挙げられる。これらのうちでは、金属薄膜層16との接着性により優れるなどの観点から、カルバゾール基、イミド基などがより好ましい。そして、Nを含む官能基を有するポリマーとしては、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリイミドなどが挙げられる。また、トリアジン環を有する重合体が挙げられる。トリアジン環を有する重合体は、その構造から、屈折率が比較的高い(1.70以上である)ため、特に好ましい。
架橋ポリマーは、多官能アクリレートの重合体または多官能メタクリレートの重合体からなる。有機薄膜が、N、S、Oから選択される少なくとも一種の元素を含む官能基を有する非架橋ポリマーに加えて、多官能アクリレートの重合体または多官能メタクリレートの重合体からなる架橋ポリマーを含むことで、高屈折率薄膜層14が有機薄膜からなる場合において、湿熱環境下でも高屈折率薄膜層14の剥離が抑えられる。湿熱環境下で高屈折率薄膜層14の剥離が生じやすい理由は、官能基により非架橋ポリマーが湿熱環境下で膨潤し、膨潤した状態で乾燥するため、非架橋ポリマーがポーラスになって強度が低下するからと推測される。また、架橋ポリマーは太陽光を受けた時にラジカルが発生しにくいため、架橋ポリマーを含有することで耐候性も向上する。
架橋ポリマーの架橋方法は、特に限定されるものではなく、過酸化物架橋、硫黄架橋、光架橋など、種々の方法が挙げられる。これらのうちでは、光架橋が好ましい。低温で架橋することができ、基材となるポリオレフィンフィルムの熱変形を抑えることができる。また、光による短時間での架橋が可能となる。多官能アクリレートの重合体および多官能メタクリレートの重合体は、光架橋が可能である。
多官能アクリレートまたは多官能メタクリレートとしては、(メタ)アクリル基を一分子中2個以上有するものであれば特に限定されるものではない。具体的には、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、エトキシ化グリセリントリメタクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ポリグリセリンモノエチレンオキサイドポリアクリレート、ポリグリセリンポリエチレングリコールポリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート等が挙げられる。
多官能アクリレートまたは多官能メタクリレートを用いる場合には、光ラジカル重合開始剤を用いることもできる。光ラジカル重合開始剤としても、公知のものから適宜選択して用いればよく、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーのベンゾイルベンゾエート、アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイドおよびチオキサントン類等が挙げられる。光ラジカル重合開始剤を用いる場合、多官能アクリレートまたは多官能メタクリレート100質量部に対して、0.1~15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1~10質量部の範囲である。
有機薄膜のポリマー成分は、他のポリマーを含む構成であってもよいが、上記非架橋ポリマーと上記架橋ポリマーで構成されているとよい。有機薄膜において、上記架橋ポリマーの含有量は、上記非架橋ポリマー100質量部に対し、2~100質量部の範囲内が好ましい。より好ましくは5~20質量部の範囲内である。上記非架橋ポリマー100質量部に対し、上記架橋ポリマーの含有量が2質量部以上であると、湿熱環境下での有機薄膜の膨潤が小さくなり、湿熱環境下で高屈折率薄膜層14の剥離を抑える効果が高い。上記非架橋ポリマー100質量部に対し、上記架橋ポリマーの含有量が100質量部以下であると、上記架橋ポリマーの含有量が抑えられているため、上記非架橋ポリマーによる高屈折率薄膜層14の接着力が高く、湿熱環境下で高屈折率薄膜層14の剥離を抑える効果が高い。
高屈折率薄膜層14,18の膜厚は、日射遮蔽性、視認性、反射色などを考慮して調節することができる。高屈折率薄膜層14,18の膜厚は、反射色の赤色や黄色の着色を抑制しやすくなる、高い光透過性が得られやすくなるなどの観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは8nm以上、さらに好ましくは10nm以上である。また、高屈折率薄膜層14,18の膜厚は、反射色の緑色の着色を抑制しやすくなる、高い光透過性が得られやすくなるなどの観点から、好ましくは90nm以下、より好ましくは85nm以下、さらに好ましくは80nm以下である。
高屈折率薄膜層14,18は、ゲル分率が20%以上であることが好ましい。より好ましくは30%以上である。ゲル分率が20%以上であることで、高屈折率薄膜層14,18の形成後の耐溶剤性が確保される。また、高屈折率薄膜層14,18は、ゲル分率が90%以下であることが好ましい。より好ましくは80%以下である。ゲル分率が90%以下であることで、高屈折率薄膜層14,18の形成時における硬化収縮が抑えられ、高屈折率薄膜層14,18の剥離が抑えられる。高屈折率薄膜層14,18のゲル分率は、上記非架橋ポリマーと架橋ポリマーの配合割合などにより調整することができる。
高屈折率薄膜層14,18となる有機薄膜は、有機ポリマーを含む塗工液を調製し、これを塗工した後、乾燥させて塗工膜とすることにより形成できる。塗工液には、本発明の効果を損なわない範囲において、レベリング剤が含まれていてもよい。塗工液の調製には、有機ポリマーを溶解させる溶剤を必要に応じて用いることができる。このような溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘプタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、酢酸エチルなどの有機酸エステル、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのシクロエーテル類、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミドなどの酸アミド類、ヘキサンなどの炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族類などが挙げられる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
以上の構成の光透過性積層体10によれば、高屈折率薄膜層14が、N、S、Oから選択される少なくとも一種の元素を含む官能基を有する非架橋ポリマーに加えて、多官能アクリレートの重合体または多官能メタクリレートの重合体からなる架橋ポリマーを含むことで、高屈折率薄膜14が有機薄膜からなる場合において、湿熱環境下でも高屈折率薄膜層14の剥離が抑えられる。また、光透過性積層体10においては、高屈折率薄膜層14,18が有機薄膜からなる。有機薄膜は緻密であるため、金属薄膜層16の金属が高屈折率薄膜層14,18の面外に拡散するのを抑制する。高屈折率薄膜層14,18がゾルゲル法により形成された金属酸化物薄膜からなるものと比べて、金属薄膜層16の金属の面外拡散が抑えられているため、光透過性積層体10においては、金属薄膜層16の金属の面外拡散を抑制する層を他に設けなくてもよい。
次に、本発明の第二実施形態に係る光透過性積層体について説明する。図2は、本発明の第二実施形態に係る光透過性積層体の断面図である。
光透過性積層体20は、金属薄膜層16、高屈折率薄膜層14、光透過性基板12、をこの順で有する。金属薄膜層16の両面には、それぞれ凝集抑制層22,24が金属薄膜層16に接して設けられている。高屈折率薄膜層14は、光透過性基板12の一方面上に接して設けられている。凝集抑制層22は、高屈折率薄膜層14に接して設けられている。金属薄膜層16は、凝集抑制層22に接して設けられている。凝集抑制層24は、金属薄膜層16に接して設けられている。凝集抑制層24の面上には、さらに、高屈折率薄膜層18が接して設けられている。
第二実施形態に係る光透過性積層体20は、第一実施形態に係る光透過性積層体10と比較して、金属薄膜層16の両面に凝集抑制層22,24が設けられている点が異なり、これ以外の構成については第一実施形態に係る光透過性積層体10と同様である。同じ構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
凝集抑制層22,24は、金属または金属酸化物からなる。凝集抑制層22,24により金属薄膜層16の金属の凝集を抑制する。金属薄膜層16の金属は、塩素あるいは塩素イオンに接触すると、凝集が促進される。凝集抑制層24は、金属薄膜層16の高屈折率薄膜層18側の面外から塩素あるいは塩素イオンが浸入するのを抑制する。また、周縁部(端部)から金属薄膜層16と凝集抑制層24の界面に塩素あるいは塩素イオンが浸入するのを抑制する。また、凝集抑制層22は、周縁部(端部)から金属薄膜層16と凝集抑制層22の界面に塩素あるいは塩素イオンが浸入するのを抑制する。これにより、金属薄膜層16の金属の凝集が抑制される。なお、凝集抑制層22は、金属薄膜層16の高屈折率薄膜層14側の面外から塩素あるいは塩素イオンが浸入するのを抑制する機能も有するが、金属薄膜層16の高屈折率薄膜層14側の面の外側には、ポリオレフィンフィルムからなる光透過性基板12が配置されており、このポリオレフィンフィルムによって金属薄膜層16の高屈折率薄膜層14側の面外からの塩素あるいは塩素イオンの浸入は十分に抑制されている。また、凝集抑制層22,24は、湿熱環境下における高屈折率薄膜層14,18と金属薄膜層16の間の剥離を抑制する。
凝集抑制層22,24において、金属および金属酸化物の種類は特に限定されるものではない。金属としては、チタン、亜鉛、インジウム、錫、マグネシウム、ジルコニウム、ニオブ、セリウム、ニッケル、クロム、タングステン、モリブデン、ケイ素などが挙げられる。金属酸化物としては、チタン酸化物、亜鉛酸化物、インジウム酸化物、錫酸化物、インジウム-錫酸化物、マグネシウム酸化物、アルミニウム酸化物、ジルコニウム酸化物、ニオブ酸化物、セリウム酸化物、ニッケル酸化物、クロム酸化物、タングステン酸化物、モリブデン酸化物、シリカなどが挙げられる。これらのうちでは、チタンまたはチタン酸化物が好ましい。チタンまたはチタン酸化物からなる凝集抑制層22,24は、緻密なため、耐久時における金属薄膜層16の金属の凝集を抑える効果が特に高い。
凝集抑制層22,24は、金属薄膜層16の金属の凝集を抑制する観点から設けられていてもよい層であるが、厚すぎると光透過性が低下するため、光透過性の観点から薄い(薄膜である)ほうが好ましい。例えば成膜レートの換算より0.3~5.0nmの範囲内が好ましい。より好ましくは0.5~3.0nmの範囲内である。
凝集抑制層22,24は、緻密な膜を形成できる、数nm~数十nm程度の薄膜を均一に形成できるなどの観点から、気相法で形成することが好ましい。気相法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、MBE法、レーザーアブレーション法などといった物理的気相法(PVD)、熱CVD法、プラズマCVD法などといった化学的気相法(CVD)などが挙げられる。これらのうちでは、膜厚制御が容易であるなどの観点から、DCマグネトロンスパッタリング法、RFマグネトロンスパッタリング法などのスパッタリング法が好ましい。
以上の構成の光透過性積層体20によれば、高屈折率薄膜層14が、N、S、Oから選択される少なくとも一種の元素を含む官能基を有する非架橋ポリマーに加えて、多官能アクリレートの重合体または多官能メタクリレートの重合体からなる架橋ポリマーを含むことで、高屈折率薄膜14が有機薄膜からなる場合において、湿熱環境下でも高屈折率薄膜層14の剥離が抑えられる。また、金属薄膜層16の両面に金属または金属酸化物からなる凝集抑制層22,24が形成されているため、耐久時における金属薄膜層16の金属の凝集が抑えられ、これによる剥離や外観不良が抑えられる。また、凝集抑制層22,24は、湿熱環境下における高屈折率薄膜層14,18と金属薄膜層16の間の剥離を抑制する。チタンまたはチタン酸化物からなる凝集抑制層22,24は、緻密なため、耐久時における金属薄膜層16の金属の凝集を抑える効果が特に高い。また、光透過性積層体20においては、高屈折率薄膜層14,18が有機薄膜からなる。有機薄膜は緻密であるため、金属薄膜層16の金属が高屈折率薄膜層14,18の面外に拡散するのを抑制する。高屈折率薄膜層14,18がゾルゲル法により形成された金属酸化物薄膜からなるものと比べて、金属薄膜層16の金属の面外拡散が抑えられているため、光透過性積層体20においては、金属薄膜層16の金属の面外拡散を抑制する層を他に設けなくてもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
例えば第一実施形態においては、金属薄膜層16の面上に高屈折率薄膜層18が接して設けられているが、図3に示す光透過性積層体30のように、金属薄膜層16の面上に高屈折率薄膜層18が設けられていない構成であってもよい。また、第二実施形態に係る光透過性積層体20においても、図3に示す光透過性積層体30と同様に、高屈折率薄膜層18が設けられていない構成であってもよい。
また、例えば第一実施形態および第二実施形態においては、金属薄膜層16は1層からなり、その両面に高屈折率薄膜層14,18が配置されている3層構成が示されているが、金属薄膜層と高屈折率薄膜層の積層構造は、この構成に限定されるものではない。光透過性基板12側から順に、金属薄膜層/高屈折率薄膜層/金属薄膜層/高屈折率薄膜層・・・のように合計で2層以上積層されていてもよいし、光透過性基板12側から順に、高屈折率薄膜層/金属薄膜層/高屈折率薄膜層/金属薄膜層/高屈折率薄膜層・・・のように合計で2層以上積層されていてもよい。
また、例えば第二実施形態においては、金属薄膜層16の両面に凝集抑制層22,24が設けられているが、図4に示すように、金属薄膜層16の片面(高屈折率薄膜層18側の面)に凝集抑制層24が設けられ、金属薄膜層16の高屈折率薄膜層14側の面に凝集抑制層22が設けられていない構成であってもよい。ポリオレフィンフィルムからなる光透過性基板12によって金属薄膜層16の高屈折率薄膜層14側の面外からの塩素あるいは塩素イオンの浸入は十分に抑制されているため、金属薄膜層16の片面(高屈折率薄膜層18側の面)に凝集抑制層24が設けられていれば、金属薄膜層16の高屈折率薄膜層14側の面に凝集抑制層22が設けられていなくても、面外からの塩素あるいは塩素イオンの浸入を抑制することができる。
また、例えば第一実施形態や第二実施形態において、高屈折率薄膜層18の面上に接着層が設けられていてもよい。接着層は、光透過性積層体を窓、ディスプレイなどの被着体に貼り付けるための層であり、粘着剤あるいは接着剤からなる。接着層の表面は、必要に応じてセパレータで覆われる。この接着層は、図1~4に示す光透過性積層体10~40において、高屈折率薄膜層18の面上、光透過性基板12の面上、あるいは金属薄膜層16の面上に設けられていてもよい。
粘着剤は、表面の粘着性を利用して圧力をかけて接着するものであり、感圧接着剤であって、固化により剥離抵抗力を発揮する接着剤とは区別される。粘着剤としては、アクリル樹脂系粘着剤、シリコーン樹脂系粘着剤、ウレタン系粘着剤などが挙げられる。これらのうちでは、光透過性に優れるなどの観点から、アクリル樹脂系粘着剤が好ましい。
粘着剤からなる粘着層(接着層)は、比較的粘着力の弱い粘着剤を用いて構成することが好ましい。弱い粘着力とすることで、光透過性積層体を板ガラスなどの被着体に貼り直ししやすくする。粘着力が強いと、剥がして貼り直しする際に光透過性積層体にかかる力が強くなり、光透過性積層体が折れて貼り直しできない問題が生じやすい。
粘着層の粘着性は、被着体に貼着したときの粘着力により評価できる。粘着層の粘着力は、JIS K6854-2に準拠し引張速度50mm/分の条件で測定される。粘着層の粘着力は、材種、組成などで調整することができる。
粘着層の初期の粘着力は、0.01N/25mm以上であることが好ましい。より好ましくは0.05N/25mm以上、さらに好ましくは0.1N/25mm以上、特に好ましくは0.2N/25mm以上である。初期の粘着力は、板ガラスなどの被着体に貼着直後の粘着力である。適度な粘着力を有することにより、板ガラスなどの被着体に貼着した光透過性積層体が自重で下にずれたり、フィルムの巻癖のため板ガラスなどの被着体に貼着した光透過性積層体の端部が浮いたりすることなく光透過性積層体を板ガラスなどの被着体に保持することができる。初期の粘着力(貼着直後の粘着力)は、初期の粘着力(貼着直後の粘着力)は、施工から1時間後の粘着力により評価することができる。
板ガラスなどの被着体に貼着してから3時間以内の粘着力は、3.0N/25mm以下とすることが好ましい。貼り直しのための時間内において、適度な粘着力とすることにより、ポリオレフィンフィルムを基材とする場合においても貼り直しできるようにする。初期の粘着力(貼着直後の粘着力)と同様、光透過性積層体を板ガラスなどの被着体に保持する必要があるため、板ガラスなどの被着体に貼着してから3時間以内の粘着力は、0.01N/25mm以上であることが好ましい。より好ましくは0.05N/25mm以上である。また、貼り直しできるように、初期の粘着力(貼着直後の粘着力)も、3.0N/25mm以下であることが好ましい。板ガラスなどの被着体に貼着してから3時間以内の粘着力は、好ましくは2.5N/25mm以下、さらに好ましくは2.0N/25mm以下である。3時間以内の粘着力は、施工から3時間後の粘着力により評価することができる。
板ガラスなどの被着体に貼着してから1カ月後の粘着力は、4.0N/25mm以上とすることが好ましい。光透過性積層体が板ガラスなどの被着体に十分密着しているため、例えば板ガラスなどの被着体の破損時に破片の飛散を防止する飛散防止性に貢献する。板ガラスなどの被着体に貼着してから1カ月後の粘着力は、好ましくは5.0N/25mm以上、より好ましくは6.0N/25mm以上である。
粘着層の厚みは、粘着力を確保するなどの観点から、5μm以上であることが好ましい。より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上である。一方、厚みムラによって歪みが生じるのを抑える、コストを抑えるなどの観点から、50μm以下であることが好ましい。より好ましくは40μm以下である。
粘着層の板ガラスなどの被着体に貼着してから3時間後までの粘着力を低く抑えるとともに、高屈折率薄膜には割れやすい無機薄膜ではなく有機薄膜を用い、さらにその有機薄膜を架橋ポリマーで構成することで、貼り直し時にかかる力で光透過性積層体が折れなくなり、ポリオレフィンフィルムを基材とする場合においても貼り直しできるようになる。ポリオレフィンフィルムが二軸延伸ポリプロピレンフィルムであると、ポリオレフィンフィルムの中でも比較的コシが強いので、貼り直し時にかかる力で光透過性積層体を折れなくしやすい。
また、例えば第一実施形態や第二実施形態において、光透過性基板12の他方面上に表面保護層が設けられていてもよい。表面保護層は、最外層として配置される層であり、光透過性基板の表面に傷が付くのを抑える。この表面保護層は、図1~4に示す光透過性積層体10~40において、高屈折率薄膜層18の面上、光透過性基板12の面上、あるいは金属薄膜層16の面上に設けられていてもよい。
表面保護層は、アクリル樹脂などの硬化性樹脂や、有機無機ハイブリッド材料などで構成することができる。有機無機ハイブリッド材料は、硬化性樹脂などの有機成分と無機粒子や有機金属化合物などの無機成分を含む材料である。
有機無機ハイブリッド材料としては、有機材料中に無機粒子が配合されたものが挙げられる。この場合における有機材料としては、硬化性樹脂が挙げられる。硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わされてもよい。これらのうちでは、透明性、可撓性などから、アクリル樹脂、ウレタン樹脂が好ましい。また、この場合における無機粒子としては、金属粒子、金属酸化物粒子などが挙げられる。これらのうちでは、光透過性などから金属酸化物粒子が好ましい。金属粒子、金属酸化物粒子の金属としては、Si、Ti、Zrなどが挙げられる。無機粒子としては、耐擦傷性、耐摩耗性、汎用性などの観点から、シリカ粒子が好ましい。無機粒子としては、分散性、光透過性などの観点から、ナノ粒子が用いられる。ナノ粒子は、粒径1μm未満のナノサイズの無機粒子である。この場合、無機粒子が表面保護層における無機成分となる。
また、有機無機ハイブリッド材料としては、有機材料(有機成分の原料)と無機材料(無機成分の原料)により形成され、有機材料と無機材料とがナノレベルあるいは分子レベルで複合化しているものが挙げられる。このような有機無機ハイブリッド材料は、例えば、有機材料中に分散させた無機材料と有機材料とが重合反応などの反応を起こし、化学結合を介して無機成分が有機成分中に高分散した網目状の架橋構造を有するものである。この場合における有機材料としては、硬化性樹脂が挙げられる。硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わされてもよい。また、この場合における無機材料としては、金属化合物などが挙げられる。金属化合物としては、Si化合物、Ti化合物、Zr化合物などが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わされてもよい。これらのうちでは、耐擦傷性、耐摩耗性、汎用性などの観点から、Si化合物がより好ましい。金属化合物は、Si、Ti、Zrなどの無機成分を含有する化合物で、有機成分の原料と重合反応などの反応を起こすなどにより複合化できるものからなる。金属化合物としては、より具体的には、有機金属化合物などが挙げられる。有機金属化合物としては、シランカップリング剤、金属アルコキシド、金属アシレート、金属キレート、シラザンなどが挙げられる。
表面保護層は、有機無機ハイブリッド材料からなることがより好ましい。無機成分を含まない材料と比べ、有機無機ハイブリッド材料からなることで、表面保護層の形成時の硬化収縮が抑えられる。これにより、歪みが小さくなり、表面保護層の剥離が抑えられやすくなる。また、耐擦傷性が向上する。この場合、表面保護層における無機成分の含有量は、1.0~30質量%の範囲内であることが好ましい。無機成分の含有量を少なくすることで、断熱性が確保されやすい。しかし、無機成分の含有量が少ないと、表面保護層の形成時の硬化収縮を抑える効果が小さい。そうすると、表面保護層の剥離が生じやすい。これに対し、高屈折率薄膜層14,18が、N,O,Sから選択される少なくとも1種の元素を含む官能基を有する非架橋ポリマーおよび架橋ポリマーを含有する有機薄膜からなる。これにより、高屈折率薄膜層14,18の柔軟性が向上する。高屈折率薄膜層14,18の柔軟性により、表面保護層の形成時の硬化収縮による応力が緩和されるため、無機成分の含有量が少なくても、表面保護層の剥離が抑えられる。これにより、表面保護層の接着性と断熱性を両立できる。そして、表面保護層における無機成分の含有量を2.0~10質量%の範囲内とすることで、表面保護層の接着性と断熱性をより高度に両立できる。
表面保護層の厚みは、断熱性に優れる(熱貫流率を低く抑える)などの観点から、2.5μm以下であることが好ましい。より好ましくは2.0μm以下、さらに好ましくは1.5μm以下である。また、耐擦傷性に優れるなどの観点から、0.4μm以上であることが好ましい。より好ましくは0.6μm以上、さらに好ましくは0.8μm以上である。
図5には、第一実施形態に係る光透過性積層体10に対し、さらに、高屈折率薄膜層18の面上に接着層28が設けられ、光透過性基板12の面上に表面保護層26が設けられている光透過性積層体50を示している。
本発明に係る光透過性積層体は、ビル・住宅等の建築物の窓ガラスや自動車等の車両の窓ガラスなどには日射を遮蔽する目的で遮熱性を有する光透過性積層フィルムとして好適に用いることができる。
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。
(実施例1)
実施例1に係る光透過性積層体として、ポリオレフィンフィルムからなる光透過性基板の一方面上に、有機薄膜からなる高屈折率薄膜層と、金属薄膜層と、有機薄膜からなる高屈折率薄膜層と、を順にする光透過性積層体(図1)を作製した。概略は以下の通りである。
実施例1に係る光透過性積層体として、ポリオレフィンフィルムからなる光透過性基板の一方面上に、有機薄膜からなる高屈折率薄膜層と、金属薄膜層と、有機薄膜からなる高屈折率薄膜層と、を順にする光透過性積層体(図1)を作製した。概略は以下の通りである。
<有機薄膜用塗工液の調製>
グラビアコーターで塗工可能な粘度(0.1~3.0mPa・s)にトリアジン環含有重合体(日産化学工業社製「UR-108NPT3」、光重合開始剤、多官能アクリレートを含有する)を希釈(溶媒:PGMEA)することにより、有機薄膜用塗工液を調製した。
グラビアコーターで塗工可能な粘度(0.1~3.0mPa・s)にトリアジン環含有重合体(日産化学工業社製「UR-108NPT3」、光重合開始剤、多官能アクリレートを含有する)を希釈(溶媒:PGMEA)することにより、有機薄膜用塗工液を調製した。
<光透過性積層体の作製>
OPPフィルム(東レ社製「トレファンBO 40-2500」、厚み:40μm)の両面にコロナ処理を行い、その一方面上に、マイクログラビアコーターを用いて、上記の有機薄膜用塗工液を塗工し、80℃で60秒間乾燥後、200mJ/cm2の紫外線を照射して架橋処理することにより、有機薄膜(膜厚20nm)を形成した。次いで、この1層目の有機薄膜上に、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、スパッタリングによりAg-Cu合金薄膜(膜厚7.8nm)を成膜した。次いで、このAg-Cu合金薄膜上に、1層目の有機薄膜と同様にして2層目の有機薄膜(膜厚20nm)を形成した。以上により、実施例1の光透過性積層体を作製した。
OPPフィルム(東レ社製「トレファンBO 40-2500」、厚み:40μm)の両面にコロナ処理を行い、その一方面上に、マイクログラビアコーターを用いて、上記の有機薄膜用塗工液を塗工し、80℃で60秒間乾燥後、200mJ/cm2の紫外線を照射して架橋処理することにより、有機薄膜(膜厚20nm)を形成した。次いで、この1層目の有機薄膜上に、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、スパッタリングによりAg-Cu合金薄膜(膜厚7.8nm)を成膜した。次いで、このAg-Cu合金薄膜上に、1層目の有機薄膜と同様にして2層目の有機薄膜(膜厚20nm)を形成した。以上により、実施例1の光透過性積層体を作製した。
(実施例2)
実施例2に係る光透過性積層体として、ポリオレフィンフィルムからなる光透過性基板の一方面上に、有機薄膜からなる高屈折率薄膜層と、金属からなる凝集抑制層と、金属薄膜層と、金属からなる凝集抑制層と、有機薄膜からなる高屈折率薄膜層と、を順にする光透過性積層体(図2)を作製した。概略は以下の通りである。
実施例2に係る光透過性積層体として、ポリオレフィンフィルムからなる光透過性基板の一方面上に、有機薄膜からなる高屈折率薄膜層と、金属からなる凝集抑制層と、金属薄膜層と、金属からなる凝集抑制層と、有機薄膜からなる高屈折率薄膜層と、を順にする光透過性積層体(図2)を作製した。概略は以下の通りである。
<光透過性積層体の作製>
OPPフィルム(東レ社製「トレファンBO 40-2500」、厚み:40μm)の両面にコロナ処理を行い、その一方面上に、マイクログラビアコーターを用いて、上記の有機薄膜用塗工液を塗工し、80℃で60秒間乾燥後、200mJ/cm2の紫外線を照射して架橋処理することにより、有機薄膜(膜厚20nm)を形成した。次いで、この1層目の有機薄膜上にスパッタリングにより1層目のチタン薄膜(膜厚2nm)を成膜した。次いで、この1層目のチタン薄膜上にスパッタリングによりAg-Cu合金薄膜(膜厚7.8nm)を成膜した。次いで、このAg-Cu合金薄膜上に、1層目のチタン薄膜と同様にして2層目のチタン薄膜(膜厚2nm)を成膜した。次いで、この2層目のチタン薄膜上に、1層目の有機薄膜と同様にして2層目の有機薄膜(膜厚20nm)を形成した。以上により、実施例2の光透過性積層体(図2)を作製した。
OPPフィルム(東レ社製「トレファンBO 40-2500」、厚み:40μm)の両面にコロナ処理を行い、その一方面上に、マイクログラビアコーターを用いて、上記の有機薄膜用塗工液を塗工し、80℃で60秒間乾燥後、200mJ/cm2の紫外線を照射して架橋処理することにより、有機薄膜(膜厚20nm)を形成した。次いで、この1層目の有機薄膜上にスパッタリングにより1層目のチタン薄膜(膜厚2nm)を成膜した。次いで、この1層目のチタン薄膜上にスパッタリングによりAg-Cu合金薄膜(膜厚7.8nm)を成膜した。次いで、このAg-Cu合金薄膜上に、1層目のチタン薄膜と同様にして2層目のチタン薄膜(膜厚2nm)を成膜した。次いで、この2層目のチタン薄膜上に、1層目の有機薄膜と同様にして2層目の有機薄膜(膜厚20nm)を形成した。以上により、実施例2の光透過性積層体(図2)を作製した。
(実施例3)
実施例2で作製した光透過性積層体を加熱炉内にて40℃で300時間加熱処理することにより、1層目および2層目のチタン薄膜を酸化させてチタン酸化物薄膜とした。以上により、実施例3の光透過性積層体を作製した。
実施例2で作製した光透過性積層体を加熱炉内にて40℃で300時間加熱処理することにより、1層目および2層目のチタン薄膜を酸化させてチタン酸化物薄膜とした。以上により、実施例3の光透過性積層体を作製した。
(実施例4)
実施例2において、1層目のチタン薄膜を形成する工程を省略し、1層目の有機薄膜上にAg-Cu合金薄膜を成膜した以外は実施例2と同様にして、実施例4の光透過性積層体を作製した。実施例4の光透過性積層体は、ポリオレフィンフィルムからなる光透過性基板の一方面上に、有機薄膜からなる高屈折率薄膜層と、金属薄膜層と、チタンからなる凝集抑制層と、有機薄膜からなる高屈折率薄膜層と、を順にする光透過性積層体(図4)である。
実施例2において、1層目のチタン薄膜を形成する工程を省略し、1層目の有機薄膜上にAg-Cu合金薄膜を成膜した以外は実施例2と同様にして、実施例4の光透過性積層体を作製した。実施例4の光透過性積層体は、ポリオレフィンフィルムからなる光透過性基板の一方面上に、有機薄膜からなる高屈折率薄膜層と、金属薄膜層と、チタンからなる凝集抑制層と、有機薄膜からなる高屈折率薄膜層と、を順にする光透過性積層体(図4)である。
(実施例5)
実施例4で作製した光透過性積層体を加熱炉内にて40℃で300時間加熱処理することにより、チタン薄膜を酸化させてチタン酸化物薄膜とした。以上により、実施例5の光透過性積層体を作製した。
実施例4で作製した光透過性積層体を加熱炉内にて40℃で300時間加熱処理することにより、チタン薄膜を酸化させてチタン酸化物薄膜とした。以上により、実施例5の光透過性積層体を作製した。
(実施例6)
OPPフィルムに代えてPETフィルム(東洋紡製「コスモシャイン」厚み50μm)を用いた以外は実施例3と同様にして、実施例6の光透過性積層体を作製した。
OPPフィルムに代えてPETフィルム(東洋紡製「コスモシャイン」厚み50μm)を用いた以外は実施例3と同様にして、実施例6の光透過性積層体を作製した。
(比較例1)
有機薄膜用塗工液の調製において、トリアジン環含有重合体(日産化学工業社製「UR-108NPT3」)に代えて、トリアジン環含有重合体(日産化学工業社製「UR-108NT3」)を用い、有機薄膜に架橋処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして、比較例1の光透過性積層体を作製した。
有機薄膜用塗工液の調製において、トリアジン環含有重合体(日産化学工業社製「UR-108NPT3」)に代えて、トリアジン環含有重合体(日産化学工業社製「UR-108NT3」)を用い、有機薄膜に架橋処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして、比較例1の光透過性積層体を作製した。
(Cu含有量の測定)
Ag-Cu合金薄膜層中の副元素(Cu)含有量は、次のようにして求めた。すなわち、各成膜条件において、別途、ガラス基板上にAg-Cu合金薄膜層を形成した試験片を作製し、この試験片を6%HNO3溶液に浸漬し、20分間超音波による溶出を行った後、得られた試料液を用いて、ICP分析法の濃縮法により測定した。Cu含有量は4原子%であった。
Ag-Cu合金薄膜層中の副元素(Cu)含有量は、次のようにして求めた。すなわち、各成膜条件において、別途、ガラス基板上にAg-Cu合金薄膜層を形成した試験片を作製し、この試験片を6%HNO3溶液に浸漬し、20分間超音波による溶出を行った後、得られた試料液を用いて、ICP分析法の濃縮法により測定した。Cu含有量は4原子%であった。
(薄膜の膜厚の測定)
各薄膜の膜厚は、上記電界放出型電子顕微鏡(HRTEM)(日本電子(株)製、「JEM2001F」)による試験片の断面観察から測定した。
各薄膜の膜厚は、上記電界放出型電子顕微鏡(HRTEM)(日本電子(株)製、「JEM2001F」)による試験片の断面観察から測定した。
各光透過性積層体について、湿熱環境下での耐久性(剥離、凝集)を評価した。また、あわせて、断熱性、遮熱性を評価した。
(耐久性(剥離))
光透過性積層体を60℃90%RHの湿熱試験槽にて250H処理後、JIS K5600-5-6に準拠して測定した。2層目の有機薄膜の面に対して垂直になるように刃を当て、高分子フィルムの面まで到達するように2mm間隔で6本の切り込みを入れた後、90度方向を変えて先の切り込みと直交する6本の切り込みを同じく高分子フィルムの面まで到達するように2mm間隔で入れて、25マスを作製した。その後、フィルムの格子にカットした部分にテープを貼り、テープ上をこすった。その後、テープを60度に近い角度で確実に引き剥がした上で、残マス数を目視にて確認した。高分子フィルム/有機薄膜間での剥離無く、残マス数が25の場合を耐久性(剥離)が特に良好「◎」とし、高分子フィルム/有機薄膜間での剥離は無いが、有機薄膜/金属薄膜間での剥離が生じ、残マス数が25未満の場合を耐久性(剥離)有する「○」、高分子フィルム/有機薄膜間での剥離が生じ、残マス数が25未満の場合を耐久性(剥離)に劣る「×」とした。
光透過性積層体を60℃90%RHの湿熱試験槽にて250H処理後、JIS K5600-5-6に準拠して測定した。2層目の有機薄膜の面に対して垂直になるように刃を当て、高分子フィルムの面まで到達するように2mm間隔で6本の切り込みを入れた後、90度方向を変えて先の切り込みと直交する6本の切り込みを同じく高分子フィルムの面まで到達するように2mm間隔で入れて、25マスを作製した。その後、フィルムの格子にカットした部分にテープを貼り、テープ上をこすった。その後、テープを60度に近い角度で確実に引き剥がした上で、残マス数を目視にて確認した。高分子フィルム/有機薄膜間での剥離無く、残マス数が25の場合を耐久性(剥離)が特に良好「◎」とし、高分子フィルム/有機薄膜間での剥離は無いが、有機薄膜/金属薄膜間での剥離が生じ、残マス数が25未満の場合を耐久性(剥離)有する「○」、高分子フィルム/有機薄膜間での剥離が生じ、残マス数が25未満の場合を耐久性(剥離)に劣る「×」とした。
(耐久性(凝集))
光透過性積層体の2層目の有機薄膜の面に厚さ25μmのアクリル粘着シート(積水化学工業社製「5402」)を貼り付け、この粘着シートの粘着面をフロートガラス(板ガラス)の片面に貼り付けた。フロートガラスに貼り付けた光透過性積層体の周縁部に、濃度10ppmの塩化ナトリウム水溶液を滴下後、250時間湿熱処理(50℃95%RH)することにより、塩素または塩素イオンに対する耐久性(凝集)を評価した。断面試料作製装置(日本電子(株)製「SM-09010」)にて観察試料を作製した後、電界放射形走査電子顕微鏡(日立製作所製「S-4800」)により観察した結果、金属薄膜層の金属の凝集が確認され、端部から1mm超においてであった場合を耐久性なし(凝集あり)「×」とした。一方、金属薄膜層の金属の凝集が確認されたものの、端部から1mm以内の範囲内においてであった場合を耐久性あり(凝集なし)「○」とした。そして、金属薄膜層の金属の凝集が全く確認されなかった場合を特に耐久性あり(凝集なし)「◎」とした。
光透過性積層体の2層目の有機薄膜の面に厚さ25μmのアクリル粘着シート(積水化学工業社製「5402」)を貼り付け、この粘着シートの粘着面をフロートガラス(板ガラス)の片面に貼り付けた。フロートガラスに貼り付けた光透過性積層体の周縁部に、濃度10ppmの塩化ナトリウム水溶液を滴下後、250時間湿熱処理(50℃95%RH)することにより、塩素または塩素イオンに対する耐久性(凝集)を評価した。断面試料作製装置(日本電子(株)製「SM-09010」)にて観察試料を作製した後、電界放射形走査電子顕微鏡(日立製作所製「S-4800」)により観察した結果、金属薄膜層の金属の凝集が確認され、端部から1mm超においてであった場合を耐久性なし(凝集あり)「×」とした。一方、金属薄膜層の金属の凝集が確認されたものの、端部から1mm以内の範囲内においてであった場合を耐久性あり(凝集なし)「○」とした。そして、金属薄膜層の金属の凝集が全く確認されなかった場合を特に耐久性あり(凝集なし)「◎」とした。
(断熱性)
光透過性基板としてOPPフィルムを用いたものは、光透過性積層体の2層目の有機薄膜の面上に厚さ25μmのアクリル粘着シート(積水化学工業社製「5402」)を貼り付け、この粘着シートの粘着面を板ガラスの片面に貼り付けた。OPPフィルム側から測定光を入射し、 JIS R3106に準拠し、ガラス面およびフィルム面の垂直放射率を求め、JIS A5759に準拠して熱貫流率(W/m2K)を求めた。熱貫流率5.0W/m2K以下を断熱性に優れる「○」とし、熱貫流率4.5W/m2K以下を断熱性に特に優れる「◎」とし、熱貫流率5.0W/m2K超を断熱性に劣る「×」とした。
光透過性基板としてPETフィルムを用いたものは、上記アクリル粘着シートをPETフィルム面上に貼り付け、粘着シートの粘着面を板ガラスの片面に貼り付けて、PETフィルム側とは反対の機能膜側から測定光を入射して各測定を行った。
光透過性基板としてOPPフィルムを用いたものは、光透過性積層体の2層目の有機薄膜の面上に厚さ25μmのアクリル粘着シート(積水化学工業社製「5402」)を貼り付け、この粘着シートの粘着面を板ガラスの片面に貼り付けた。OPPフィルム側から測定光を入射し、 JIS R3106に準拠し、ガラス面およびフィルム面の垂直放射率を求め、JIS A5759に準拠して熱貫流率(W/m2K)を求めた。熱貫流率5.0W/m2K以下を断熱性に優れる「○」とし、熱貫流率4.5W/m2K以下を断熱性に特に優れる「◎」とし、熱貫流率5.0W/m2K超を断熱性に劣る「×」とした。
光透過性基板としてPETフィルムを用いたものは、上記アクリル粘着シートをPETフィルム面上に貼り付け、粘着シートの粘着面を板ガラスの片面に貼り付けて、PETフィルム側とは反対の機能膜側から測定光を入射して各測定を行った。
(遮熱性)
JIS A5759に準拠し、分光光度計(島津製作所製「UV3100」)を用い、波長300~2500nmの透過スペクトル、反射スペクトルを測定することにより、日射透過率、日射反射率を計算し、日射透過率、日射反射率、修正放射率から遮蔽係数を計算することにより求めた。修正放射率は、JIS R3106に準拠して光透過性積層体全体の垂直放射率を求め、JIS A5759に記載されている係数で補正して算出した。遮蔽係数が0.69以下の場合を遮熱性が良好「○」、遮蔽係数が0.69を超える場合を遮熱性が不良「×」とした。
JIS A5759に準拠し、分光光度計(島津製作所製「UV3100」)を用い、波長300~2500nmの透過スペクトル、反射スペクトルを測定することにより、日射透過率、日射反射率を計算し、日射透過率、日射反射率、修正放射率から遮蔽係数を計算することにより求めた。修正放射率は、JIS R3106に準拠して光透過性積層体全体の垂直放射率を求め、JIS A5759に記載されている係数で補正して算出した。遮蔽係数が0.69以下の場合を遮熱性が良好「○」、遮蔽係数が0.69を超える場合を遮熱性が不良「×」とした。
比較例1では、高屈折率薄膜層を構成している有機薄膜が架橋ポリマーを含有しておらず、湿熱環境下に置かれたことにより、光透過性基板と高屈折率薄膜層の間で剥離が生じた。これに対し、実施例では、高屈折率薄膜層を構成している有機薄膜が架橋ポリマーを含有しており、湿熱環境下に置かれても、光透過性基板と高屈折率薄膜層の間で剥離が生じていない。したがって、高屈折率薄膜層を構成している有機薄膜が架橋ポリマーを含有することで、湿熱環境下に置かれても、光透過性基板と高屈折率薄膜層の間での剥離が抑えられることがわかる。
実施例1、4、5では、金属薄膜層の両面に凝集抑制層が設けられておらず、湿熱環境下に置かれたことにより、高屈折率薄膜層と金属薄膜層の間で剥離が生じた。これに対し、実施例2、3では、金属薄膜層の両面に凝集抑制層が設けられており、湿熱環境下に置かれても、高屈折率薄膜層と金属薄膜層の間で剥離が生じていない。したがって、金属薄膜層の両面に凝集抑制層が設けられることで、湿熱環境下に置かれても、高屈折率薄膜層と金属薄膜層の間での剥離が抑えられることがわかる。また、実施例1、4、5では、端部から1mm以内ではあるものの、塩素または塩素イオンの存在下で金属薄膜層の金属の凝集が確認されたが、実施例2、3では、塩素または塩素イオンの存在下で金属薄膜層の金属の凝集が確認されなかった。したがって、金属薄膜層の両面に凝集抑制層が設けられることで、塩素または塩素イオンによる端部からの腐食による金属薄膜層の金属の凝集が抑えられ、外観不良が抑えられることがわかる。
次に、表面保護層を有する光透過性積層体を作製し、その特性を評価した。
光透過性積層体として、ポリオレフィンフィルムからなる光透過性基板の一方面上に、有機薄膜からなる高屈折率薄膜層と、金属薄膜層と、有機薄膜からなる高屈折率薄膜層と、を順に有し、光透過性基板の他方面上に、表面保護層を有する光透過性積層体を作製した。概略は以下の通りである。
<有機薄膜用塗工液の調製>
グラビアコーターで塗工可能な粘度(0.1~3.0mPa・s)にトリアジン環含有重合体(日産化学工業社製「UR-108NPT3」、光重合開始剤、多官能アクリレートを含有する)を希釈(溶媒:PGMEA)することにより、有機薄膜用塗工液を調製した。
グラビアコーターで塗工可能な粘度(0.1~3.0mPa・s)にトリアジン環含有重合体(日産化学工業社製「UR-108NPT3」、光重合開始剤、多官能アクリレートを含有する)を希釈(溶媒:PGMEA)することにより、有機薄膜用塗工液を調製した。
<光透過性積層体の作製>
(実施例11)
OPPフィルム(東レ社製「トレファンBO 40-2500」、厚み:40μm)の両面にコロナ処理を行い、その一方面上に、マイクログラビアコーターを用いて、上記の有機薄膜用塗工液を塗工し、70℃で30秒間乾燥後、200mJ/cm2の紫外線を照射して架橋処理することにより、有機薄膜(膜厚20nm)を形成した。次いで、この1層目の有機薄膜上に、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、スパッタリングによりAg-Cu合金薄膜(膜厚7.8nm)を成膜した。次いで、このAg-Cu合金薄膜上に、1層目の有機薄膜と同様にして2層目の有機薄膜(膜厚20nm)を形成した。次いで、OPPフィルムの他方面上に、UV硬化型の有機無機ハイブリッド材(大日精化工業社製TGシリーズ、無機成分含有量1.0質量%)を塗工し、70℃で30秒乾燥後、200mJ/cm2の紫外線を照射して、有機無機ハイブリッド材よりなる表面保護層(厚み1.5μm)を形成した。以上により、実施例11の光透過性積層体を作製した。
(実施例11)
OPPフィルム(東レ社製「トレファンBO 40-2500」、厚み:40μm)の両面にコロナ処理を行い、その一方面上に、マイクログラビアコーターを用いて、上記の有機薄膜用塗工液を塗工し、70℃で30秒間乾燥後、200mJ/cm2の紫外線を照射して架橋処理することにより、有機薄膜(膜厚20nm)を形成した。次いで、この1層目の有機薄膜上に、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、スパッタリングによりAg-Cu合金薄膜(膜厚7.8nm)を成膜した。次いで、このAg-Cu合金薄膜上に、1層目の有機薄膜と同様にして2層目の有機薄膜(膜厚20nm)を形成した。次いで、OPPフィルムの他方面上に、UV硬化型の有機無機ハイブリッド材(大日精化工業社製TGシリーズ、無機成分含有量1.0質量%)を塗工し、70℃で30秒乾燥後、200mJ/cm2の紫外線を照射して、有機無機ハイブリッド材よりなる表面保護層(厚み1.5μm)を形成した。以上により、実施例11の光透過性積層体を作製した。
(実施例12~15)
UV硬化型の有機無機ハイブリッド材(大日精化工業社製TGシリーズ)の無機成分含有量(質量%)を変更した以外は実施例11と同様にして、実施例12~15の光透過性積層体を作製した。
UV硬化型の有機無機ハイブリッド材(大日精化工業社製TGシリーズ)の無機成分含有量(質量%)を変更した以外は実施例11と同様にして、実施例12~15の光透過性積層体を作製した。
(参考例11)
UV硬化型の有機無機ハイブリッド材(大日精化工業社製TGシリーズ)に代えて、紫外線硬化性のアクリル樹脂(DIC製、「UVTクリヤー TEF-046」)を表面保護層の材料として用いた以外は実施例11と同様にして、参考例11の光透過性積層体を作製した。
UV硬化型の有機無機ハイブリッド材(大日精化工業社製TGシリーズ)に代えて、紫外線硬化性のアクリル樹脂(DIC製、「UVTクリヤー TEF-046」)を表面保護層の材料として用いた以外は実施例11と同様にして、参考例11の光透過性積層体を作製した。
(参考例12)
UV硬化型の有機無機ハイブリッド材(大日精化工業社製TGシリーズ)の無機成分含有量(質量%)を変更した以外は実施例11と同様にして、参考例12の光透過性積層体を作製した。
UV硬化型の有機無機ハイブリッド材(大日精化工業社製TGシリーズ)の無機成分含有量(質量%)を変更した以外は実施例11と同様にして、参考例12の光透過性積層体を作製した。
(参考例13)
UV硬化型の有機無機ハイブリッド材(大日精化工業社製TGシリーズ)に代えて、紫外線硬化性のアクリル樹脂(DIC製、「UVTクリヤー TEF-046」)を表面保護層の材料として用い、有機薄膜用塗工液の調製において、トリアジン環含有重合体(日産化学工業社製「UR-108NPT3」)に代えて、トリアジン環含有重合体(日産化学工業社製「UR-108NT3」)を用い、有機薄膜に架橋処理を行わなかった以外は実施例11と同様にして、参考例13の光透過性積層体を作製した。
UV硬化型の有機無機ハイブリッド材(大日精化工業社製TGシリーズ)に代えて、紫外線硬化性のアクリル樹脂(DIC製、「UVTクリヤー TEF-046」)を表面保護層の材料として用い、有機薄膜用塗工液の調製において、トリアジン環含有重合体(日産化学工業社製「UR-108NPT3」)に代えて、トリアジン環含有重合体(日産化学工業社製「UR-108NT3」)を用い、有機薄膜に架橋処理を行わなかった以外は実施例11と同様にして、参考例13の光透過性積層体を作製した。
(参考例14)
有機薄膜用塗工液の調製において、トリアジン環含有重合体(日産化学工業社製「UR-108NPT3」)に代えて、トリアジン環含有重合体(日産化学工業社製「UR-108NT3」)を用い、有機薄膜に架橋処理を行わなかった以外は実施例11と同様にして、参考例14の光透過性積層体を作製した。
有機薄膜用塗工液の調製において、トリアジン環含有重合体(日産化学工業社製「UR-108NPT3」)に代えて、トリアジン環含有重合体(日産化学工業社製「UR-108NT3」)を用い、有機薄膜に架橋処理を行わなかった以外は実施例11と同様にして、参考例14の光透過性積層体を作製した。
(Cu含有量の測定)
Ag-Cu合金薄膜層中の副元素(Cu)含有量は、次のようにして求めた。すなわち、各成膜条件において、別途、ガラス基板上にAg-Cu合金薄膜層を形成した試験片を作製し、この試験片を6%HNO3溶液に浸漬し、20分間超音波による溶出を行った後、得られた試料液を用いて、ICP分析法の濃縮法により測定した。Cu含有量は4原子%であった。
Ag-Cu合金薄膜層中の副元素(Cu)含有量は、次のようにして求めた。すなわち、各成膜条件において、別途、ガラス基板上にAg-Cu合金薄膜層を形成した試験片を作製し、この試験片を6%HNO3溶液に浸漬し、20分間超音波による溶出を行った後、得られた試料液を用いて、ICP分析法の濃縮法により測定した。Cu含有量は4原子%であった。
(薄膜層の膜厚の測定)
各薄膜層の膜厚は、上記電界放出型電子顕微鏡(HRTEM)(日本電子(株)製、「JEM2001F」)による試験片の断面観察から測定した。
各薄膜層の膜厚は、上記電界放出型電子顕微鏡(HRTEM)(日本電子(株)製、「JEM2001F」)による試験片の断面観察から測定した。
各光透過性積層体について、接着性および断熱性を評価した。また、あわせて、湿熱環境下での耐久性、耐擦傷性、遮熱性を評価した。
(表面保護層の接着性)
JIS K5600-5-6に準拠して測定した。表面保護層を形成したOPPフィルムの面に対して垂直になるように刃を当て、2mm間隔で6本の切り込みを入れた後、90度方向を変えて先の切り込みと直交する6本の切り込みを2mm間隔で入れて、25マスを作製した。その後、フィルムの格子にカットした部分にテープを貼り、テープ上をこすった。その後、テープを60度に近い角度で確実に引き剥がした上で、残マス数を目視にて確認した。残マス数が25であった場合を接着性が特に良好「◎」、残マス数が20以上であった場合を接着性が良好「○」、残マス数が20未満であった場合を接着性が不良「×」とした。
JIS K5600-5-6に準拠して測定した。表面保護層を形成したOPPフィルムの面に対して垂直になるように刃を当て、2mm間隔で6本の切り込みを入れた後、90度方向を変えて先の切り込みと直交する6本の切り込みを2mm間隔で入れて、25マスを作製した。その後、フィルムの格子にカットした部分にテープを貼り、テープ上をこすった。その後、テープを60度に近い角度で確実に引き剥がした上で、残マス数を目視にて確認した。残マス数が25であった場合を接着性が特に良好「◎」、残マス数が20以上であった場合を接着性が良好「○」、残マス数が20未満であった場合を接着性が不良「×」とした。
(有機薄膜(高屈折率薄膜層)の接着性)
OPPフィルムの一方面上に有機薄膜を形成した試験片を用いた。その有機薄膜の面に厚さ25μmのアクリル粘着シート(積水化学工業社製「5402」)を貼り付け、この粘着シートの粘着面を板ガラスの片面に貼り付けた。卓上引張試験機(ミネベバ製「AGS-1kNG」)を用いて有機薄膜とOPPフィルムとの界面で180°ピール試験(JIS A5759に準拠、引張速度300mm/分)を行い、剥離力を測定してこれを層間の接着力とした。この際、引張荷重が8N/25mm以上であったものを接着性が良好「○」とし、4~7N/25mmであったものを接着性が「△」、4N/25mm未満であったものを接着性が劣る「×」とした。
OPPフィルムの一方面上に有機薄膜を形成した試験片を用いた。その有機薄膜の面に厚さ25μmのアクリル粘着シート(積水化学工業社製「5402」)を貼り付け、この粘着シートの粘着面を板ガラスの片面に貼り付けた。卓上引張試験機(ミネベバ製「AGS-1kNG」)を用いて有機薄膜とOPPフィルムとの界面で180°ピール試験(JIS A5759に準拠、引張速度300mm/分)を行い、剥離力を測定してこれを層間の接着力とした。この際、引張荷重が8N/25mm以上であったものを接着性が良好「○」とし、4~7N/25mmであったものを接着性が「△」、4N/25mm未満であったものを接着性が劣る「×」とした。
(断熱性)
光透過性積層体の2層目の有機薄膜の面上に厚さ25μmのアクリル粘着シート(積水化学工業社製「5402」)を貼り付け、この粘着シートの粘着面を板ガラスの片面に貼り付けた。OPPフィルム側から測定光を入射し、 JIS R3106に準拠し、ガラス面およびフィルム面の垂直放射率を求め、JIS A5759に準拠して熱貫流率(W/m2K)を求めた。熱貫流率5.0W/m2K以下を断熱性に優れる「○」とし、熱貫流率4.5W/m2K以下を断熱性に特に優れる「◎」とし、熱貫流率5.0W/m2K超を断熱性に劣る「×」とした。
光透過性積層体の2層目の有機薄膜の面上に厚さ25μmのアクリル粘着シート(積水化学工業社製「5402」)を貼り付け、この粘着シートの粘着面を板ガラスの片面に貼り付けた。OPPフィルム側から測定光を入射し、 JIS R3106に準拠し、ガラス面およびフィルム面の垂直放射率を求め、JIS A5759に準拠して熱貫流率(W/m2K)を求めた。熱貫流率5.0W/m2K以下を断熱性に優れる「○」とし、熱貫流率4.5W/m2K以下を断熱性に特に優れる「◎」とし、熱貫流率5.0W/m2K超を断熱性に劣る「×」とした。
(耐久性(耐湿熱))
光透過性積層体を60℃90%RHの湿熱試験槽にて168H処理後、JIS K5600-5-6に準拠して測定した。有機薄膜の面に対して垂直になるように刃を当て、2mm間隔で6本の切り込みを入れた後、90度方向を変えて先の切り込みと直交する6本の切り込みを2mm間隔で入れて、25マスを作製した。その後、フィルムの格子にカットした部分にテープを貼り、テープ上をこすった。その後、テープを60度に近い角度で確実に引き剥がした上で、残マス数を目視にて確認した。残マス数が25であり、且つ薄膜層に目視でクラック、変色無き場合を耐久性(耐湿熱)を有する「○」とし、残マス数が25未満、または、薄膜層にクラック、変色が観測される場合を耐久性(耐湿熱)に劣る「×」とした。
光透過性積層体を60℃90%RHの湿熱試験槽にて168H処理後、JIS K5600-5-6に準拠して測定した。有機薄膜の面に対して垂直になるように刃を当て、2mm間隔で6本の切り込みを入れた後、90度方向を変えて先の切り込みと直交する6本の切り込みを2mm間隔で入れて、25マスを作製した。その後、フィルムの格子にカットした部分にテープを貼り、テープ上をこすった。その後、テープを60度に近い角度で確実に引き剥がした上で、残マス数を目視にて確認した。残マス数が25であり、且つ薄膜層に目視でクラック、変色無き場合を耐久性(耐湿熱)を有する「○」とし、残マス数が25未満、または、薄膜層にクラック、変色が観測される場合を耐久性(耐湿熱)に劣る「×」とした。
(耐擦傷性)
スチールウール(日本スチール社製「Bon Star No.0000」)を用い、光透過性積層体の表面保護層の表面に一定の荷重(20g/cm2)をかけながらスチールウールを10往復擦り付けた。この際、目視にて傷が全く観測されなかった場合を耐擦傷性に特に優れる「◎」、10mm以下の長さの傷が2本以下の本数で観測された場合を耐擦傷性に優れる「○」、10mm以下の長さの傷が3本以上5本以下の本数で観測された場合を耐擦傷性を有する「△」、10mmを超える長さの傷が観測された場合、もしくは、10mm以下の長さの傷が5本を超える本数で観測された場合を耐擦傷性不良「×」とした。
スチールウール(日本スチール社製「Bon Star No.0000」)を用い、光透過性積層体の表面保護層の表面に一定の荷重(20g/cm2)をかけながらスチールウールを10往復擦り付けた。この際、目視にて傷が全く観測されなかった場合を耐擦傷性に特に優れる「◎」、10mm以下の長さの傷が2本以下の本数で観測された場合を耐擦傷性に優れる「○」、10mm以下の長さの傷が3本以上5本以下の本数で観測された場合を耐擦傷性を有する「△」、10mmを超える長さの傷が観測された場合、もしくは、10mm以下の長さの傷が5本を超える本数で観測された場合を耐擦傷性不良「×」とした。
(遮熱性)
JIS A5759に準拠し、分光光度計(島津製作所製「UV3100」)を用い、波長300~2500nmの透過スペクトル、反射スペクトルを測定することにより、日射透過率、日射反射率を計算し、日射透過率、日射反射率、修正放射率から遮蔽係数を計算することにより求めた。修正放射率は、JIS R3106に準拠して光透過性積層体全体の垂直放射率を求め、JIS A5759に記載されている係数で補正して算出した。遮蔽係数が0.69以下の場合を遮熱性が良好「○」、遮蔽係数が0.69を超える場合を遮熱性が不良「×」とした。
JIS A5759に準拠し、分光光度計(島津製作所製「UV3100」)を用い、波長300~2500nmの透過スペクトル、反射スペクトルを測定することにより、日射透過率、日射反射率を計算し、日射透過率、日射反射率、修正放射率から遮蔽係数を計算することにより求めた。修正放射率は、JIS R3106に準拠して光透過性積層体全体の垂直放射率を求め、JIS A5759に記載されている係数で補正して算出した。遮蔽係数が0.69以下の場合を遮熱性が良好「○」、遮蔽係数が0.69を超える場合を遮熱性が不良「×」とした。
参考例11、13は、表面保護層が紫外線硬化性のアクリル樹脂で形成されており、表面保護層に無機成分が含まれておらず、表面保護層の接着性に劣っている。参考例12は、表面保護層が有機無機ハイブリッド材で形成されているが、無機成分の含有量が50質量%と多く、断熱性に劣っている。参考例14は、表面保護層が有機無機ハイブリッド材で形成され、無機成分の含有量が1.0質量%と少ないが、高屈折率薄膜層を構成している有機薄膜が架橋ポリマーを含有しておらず、表面保護層の接着性に劣っている。これに対し、各実施例は、表面保護層が有機無機ハイブリッド材で形成され、無機成分の含有量が1.0~30質量%と少なく抑えられ、高屈折率薄膜層を構成している有機薄膜が架橋ポリマーを含有しており、表面保護層の接着性と断熱性を両立している。また、実施例12~14は無機成分の含有量が2.0~10質量%の範囲内となっており、実施例11,15に対し、表面保護層の接着性と断熱性をより高度に両立している。
また、各実施例は、高屈折率薄膜層を構成している有機薄膜が架橋ポリマーを含有しており、参考例13,14と比較して、湿熱環境下における耐久性が向上している。また、各実施例は、表面保護層が有機無機ハイブリッド材で形成されており、参考例11,13と比較して、耐擦傷性が向上している。また、各実施例の比較から、有機無機ハイブリッド材における無機成分の含有量が多いほど耐擦傷性に優れている。また、各実施例は、金属薄膜層を有しており、遮熱性に優れる。
次に、粘着層を有する光透過性積層体を作製し、その特性を評価した。
光透過性積層体として、ポリオレフィンフィルムからなる基材フィルムの一方面上に、金属薄膜と、有機薄膜からなる高屈折率薄膜と、粘着層と、を有し、基材フィルムの他方面上に表面保護層を有する光透過性積層体を作製した。
<有機薄膜用塗工液の調製>
グラビアコーターで塗工可能な粘度(0.1~3.0mPa・s)にトリアジン環含有重合体(日産化学工業社製「UR-108NPT3」、光重合開始剤、多官能アクリレートを含有する)を希釈(溶媒:PGMEA)することにより、有機薄膜用塗工液を調製した。
グラビアコーターで塗工可能な粘度(0.1~3.0mPa・s)にトリアジン環含有重合体(日産化学工業社製「UR-108NPT3」、光重合開始剤、多官能アクリレートを含有する)を希釈(溶媒:PGMEA)することにより、有機薄膜用塗工液を調製した。
<光透過性積層体の作製>
(実施例21)
OPPフィルム(東レ社製「トレファンBO 40-2500」、厚み:40μm)の両面にコロナ処理を行い、その一方面上に、マイクログラビアコーターを用いて、上記の有機薄膜用塗工液を塗工し、70℃で30秒間乾燥後、200mJ/cm2の紫外線を照射して架橋処理することにより、有機薄膜(膜厚20nm)を形成した。次いで、この1層目の有機薄膜上に、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、スパッタリングによりAg-Cu合金薄膜(膜厚7.8nm)を成膜した。次いで、このAg-Cu合金薄膜上に、1層目の有機薄膜と同様にして2層目の有機薄膜(膜厚20nm)を形成した。一方、PET製セパレータの離形処理面に、アクリル樹脂系粘着剤(東洋インキ社製「主剤:BPS5260、硬化剤:BHS8515」、表1に記載の割合(質量部))を塗布し、110℃で1分間乾燥して、粘着層を形成し、この粘着層をOPPフィルムに形成した2層目の有機薄膜上に転写ラミネートして、2層目の有機薄膜上に粘着層(25μm)を形成した。次いで、OPPフィルムの他方面上に、紫外線硬化性のアクリル樹脂(アイカ工業(株)製、「アイカトロンZ729-35」)を塗工し、70℃で30秒乾燥後、200mJ/cm2の紫外線を照射して、硬化性樹脂よりなる表面保護層(厚み1.5μm)を形成した。以上により、光透過性積層体を作製した。
(実施例21)
OPPフィルム(東レ社製「トレファンBO 40-2500」、厚み:40μm)の両面にコロナ処理を行い、その一方面上に、マイクログラビアコーターを用いて、上記の有機薄膜用塗工液を塗工し、70℃で30秒間乾燥後、200mJ/cm2の紫外線を照射して架橋処理することにより、有機薄膜(膜厚20nm)を形成した。次いで、この1層目の有機薄膜上に、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、スパッタリングによりAg-Cu合金薄膜(膜厚7.8nm)を成膜した。次いで、このAg-Cu合金薄膜上に、1層目の有機薄膜と同様にして2層目の有機薄膜(膜厚20nm)を形成した。一方、PET製セパレータの離形処理面に、アクリル樹脂系粘着剤(東洋インキ社製「主剤:BPS5260、硬化剤:BHS8515」、表1に記載の割合(質量部))を塗布し、110℃で1分間乾燥して、粘着層を形成し、この粘着層をOPPフィルムに形成した2層目の有機薄膜上に転写ラミネートして、2層目の有機薄膜上に粘着層(25μm)を形成した。次いで、OPPフィルムの他方面上に、紫外線硬化性のアクリル樹脂(アイカ工業(株)製、「アイカトロンZ729-35」)を塗工し、70℃で30秒乾燥後、200mJ/cm2の紫外線を照射して、硬化性樹脂よりなる表面保護層(厚み1.5μm)を形成した。以上により、光透過性積層体を作製した。
なお、各薄膜(Ag-Cu合金薄膜、有機薄膜)の膜厚は、電界放出型電子顕微鏡(HRTEM)(日本電子(株)製、「JEM2001F」)による試験片の断面観察から測定した。
(実施例22~23、参考例21~22)
粘着層を構成するアクリル樹脂系粘着剤の主剤と硬化剤の割合を変更した以外は実施例21と同様にして、光透過性積層体を作製した。
粘着層を構成するアクリル樹脂系粘着剤の主剤と硬化剤の割合を変更した以外は実施例21と同様にして、光透過性積層体を作製した。
(参考例23~25)
粘着層を構成するアクリル樹脂系粘着剤の主剤と硬化剤の割合を変更し、有機薄膜を構成するトリアジン環含有重合体を日産化学工業社製「UR-108NT3」に変更し、有機薄膜に架橋処理を行わなかった以外は実施例21と同様にして、光透過性積層体を作製した。
粘着層を構成するアクリル樹脂系粘着剤の主剤と硬化剤の割合を変更し、有機薄膜を構成するトリアジン環含有重合体を日産化学工業社製「UR-108NT3」に変更し、有機薄膜に架橋処理を行わなかった以外は実施例21と同様にして、光透過性積層体を作製した。
(水貼り施工)
作製した光透過性積層体を、厚さ3mmの板ガラスの片面に貼り付けた。具体的には、図6に示すように、光透過性積層体1の一端側を支持体2にテープ3で固定し、粘着面1aを外側にして光透過性積層体1を180°湾曲させた状態で、他端側の辺を幅50mm、厚み3mmの板ガラス4の一辺に合わせ、板ガラス4の一辺から対向する他辺に向かって支持体2を移動させながら板ガラス4の面に光透過性積層体1の粘着面1aを合わせることにより、板ガラス4に光透過性積層体1を貼り合わせた。貼り合わせ速度は1.0m/分とした。ただし、貼り合わせは、施工液A(中性洗剤「チャーミーVクイック」0.1質量%含有水)を用いた方法で行った。施工液Aは、霧吹きを用い、貼り合わせ前にガラス面および粘着面の両方に吹き付けた上で貼り合せ、貼り合せ後に再度フィルム表面に施工液Aを霧吹きで吹き付け、スキージで表面を擦って貼り合せ界面から施工液を押し出して密着させた。
作製した光透過性積層体を、厚さ3mmの板ガラスの片面に貼り付けた。具体的には、図6に示すように、光透過性積層体1の一端側を支持体2にテープ3で固定し、粘着面1aを外側にして光透過性積層体1を180°湾曲させた状態で、他端側の辺を幅50mm、厚み3mmの板ガラス4の一辺に合わせ、板ガラス4の一辺から対向する他辺に向かって支持体2を移動させながら板ガラス4の面に光透過性積層体1の粘着面1aを合わせることにより、板ガラス4に光透過性積層体1を貼り合わせた。貼り合わせ速度は1.0m/分とした。ただし、貼り合わせは、施工液A(中性洗剤「チャーミーVクイック」0.1質量%含有水)を用いた方法で行った。施工液Aは、霧吹きを用い、貼り合わせ前にガラス面および粘着面の両方に吹き付けた上で貼り合せ、貼り合せ後に再度フィルム表面に施工液Aを霧吹きで吹き付け、スキージで表面を擦って貼り合せ界面から施工液を押し出して密着させた。
(粘着力の測定)
貼り合わせてから所定時間経過後(1時間後、3時間後、1カ月後)に、JIS-K6854-2に規定される180度剥離法により、粘着力(N/25mm)を測定した。なお、サンプルの幅は50mm、引張速度は50mm/分とした。
貼り合わせてから所定時間経過後(1時間後、3時間後、1カ月後)に、JIS-K6854-2に規定される180度剥離法により、粘着力(N/25mm)を測定した。なお、サンプルの幅は50mm、引張速度は50mm/分とした。
(浮き)
貼り合わせてから1時間経過後に、板ガラス4の面から光透過性積層体の端部が浮いているか、目視にて確認した。浮きが生じていない場合を良好「○」、浮きが生じている場合を不良「×」とした。
貼り合わせてから1時間経過後に、板ガラス4の面から光透過性積層体の端部が浮いているか、目視にて確認した。浮きが生じていない場合を良好「○」、浮きが生じている場合を不良「×」とした。
(再剥離性)
貼り合わせてから3時間経過後に、光透過性積層体の端部を把持し、板ガラス4から光透過性積層体を剥離させ、目視にて確認した。光透過性積層体に折れが発生せず、板ガラス4からきれいに剥がせて再利用可能な状態の場合を良好「○」、光透過性積層体に折れが発生し、再利用できない状態の場合を良好「×」とした。
貼り合わせてから3時間経過後に、光透過性積層体の端部を把持し、板ガラス4から光透過性積層体を剥離させ、目視にて確認した。光透過性積層体に折れが発生せず、板ガラス4からきれいに剥がせて再利用可能な状態の場合を良好「○」、光透過性積層体に折れが発生し、再利用できない状態の場合を良好「×」とした。
(遮断熱性)
(断熱性)
光透過性積層体の粘着層を板ガラスの片面に貼り付けた。JIS R3106に準拠し、ガラス面およびフィルム面の垂直放射率を求め、JIS A5759に準拠して熱貫流率(W/m2K)を求めた。測定光は、光透過性積層体側から入射させた。熱貫流率が4.7W/m2K以下の場合を良好「○」、4.7W/m2K超の場合を不良「×」とした。
(断熱性)
光透過性積層体の粘着層を板ガラスの片面に貼り付けた。JIS R3106に準拠し、ガラス面およびフィルム面の垂直放射率を求め、JIS A5759に準拠して熱貫流率(W/m2K)を求めた。測定光は、光透過性積層体側から入射させた。熱貫流率が4.7W/m2K以下の場合を良好「○」、4.7W/m2K超の場合を不良「×」とした。
(遮熱性)
JIS A5759に準拠して測定した。分光光度計(島津製作所製「UV3100」)を用い、波長300~2500nmの透過スペクトル、反射スペクトルを測定することにより、日射透過率、日射反射率を計算し、日射透過率、日射反射率、修正放射率から日射遮蔽係数を計算により求めた。修正放射率は、JIS R3106に準拠して光透過性積層体全体の垂直放射率を求め、JIS A5759に記載されている係数で補正して算出した。遮蔽係数が0.69以下の場合を良好「○」、0.69超の場合を不良「×」とした。
JIS A5759に準拠して測定した。分光光度計(島津製作所製「UV3100」)を用い、波長300~2500nmの透過スペクトル、反射スペクトルを測定することにより、日射透過率、日射反射率を計算し、日射透過率、日射反射率、修正放射率から日射遮蔽係数を計算により求めた。修正放射率は、JIS R3106に準拠して光透過性積層体全体の垂直放射率を求め、JIS A5759に記載されている係数で補正して算出した。遮蔽係数が0.69以下の場合を良好「○」、0.69超の場合を不良「×」とした。
表3に、各光透過性積層体の評価結果を示す。
参考例21,22は、粘着層の粘着力が高すぎて、高屈折率薄膜が架橋ポリマーであっても板ガラスから光透過性積層体を剥離させたときに光透過性積層体に折れが発生し、貼り直しできなかった。参考例23は、粘着層の粘着力が適度に低いが、高屈折率薄膜が未架橋ポリマーであるため、板ガラスから光透過性積層体を剥離させたときに光透過性積層体に折れが発生し、貼り直しできなかった。参考例24,25は、粘着層の粘着力が高すぎ、また、高屈折率薄膜が未架橋ポリマーであるため、板ガラスから光透過性積層体を剥離させたときに光透過性積層体に折れが発生し、貼り直しできなかった。
これに対し、実施例によれば、粘着層の板ガラスに貼着してから3時間後までの粘着力を低く抑えるとともに、高屈折率薄膜には割れやすい無機薄膜ではなく有機薄膜を用い、さらにその有機薄膜を架橋ポリマーで構成したので、貼り直し時にかかる力で光透過性積層体が折れなくなり、ポリオレフィンフィルムを基材とする場合においても貼り直しできるようになった。
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
Claims (12)
- 金属薄膜層、前記金属薄膜層よりも屈折率の高い高屈折率薄膜層、光透過性基板、をこの順で有し、
前記光透過性基板が、高分子フィルムからなり、
前記高屈折率薄膜層が、N,O,Sから選択される少なくとも1種の元素を含む官能基を有する非架橋ポリマーおよび多官能アクリレートの重合体または多官能メタクリレートの重合体からなる架橋ポリマーを含有する有機薄膜からなり、前記光透過性基板に接着していることを特徴とする光透過性積層体。 - 前記金属薄膜層が、銀または銀合金からなることを特徴とする請求項1に記載の光透過性積層体。
- 前記金属薄膜層の両面には、前記金属薄膜層の金属の凝集を抑制する凝集抑制層が形成されており、前記凝集抑制層が、金属または金属酸化物からなることを特徴とする請求項1または2に記載の光透過性積層体。
- 前記凝集抑制層が、チタンまたはチタン酸化物からなることを特徴とする請求項3に記載の光透過性積層体。
- 前記非架橋ポリマーが、トリアジン環を有する重合体であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の光透過性積層体。
- 前記高分子フィルムが、ポリエステルフィルムまたはポリオレフィンフィルムであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の光透過性積層体。
- 前記高分子フィルムが、二軸延伸ポリプロピレンフィルムであることを特徴とする請求項6に記載の光透過性積層体。
- さらに、前記光透過性基板の面上に表面保護層を有し、前記表面保護層が、有機無機ハイブリッド材料からなり、前記表面保護層における無機成分の含有量が1.0~30質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の光透過性積層体。
- さらに、被着体に貼着するための粘着層を有し、前記粘着層の、JIS K6854-2に準拠し引張速度50mm/分の条件で測定される、被着体に貼着してから3時間後の粘着力が3.0N/25mm以下、被着体に貼着してから1カ月後の粘着力が4.0N/25mm以上であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の光透過性積層体。
- 前記粘着層と、前記金属薄膜層と、前記高屈折率薄膜層と、前記光透過性基板と、を、この順で有することを特徴とする請求項9に記載の光透過性積層体。
- 前記粘着層と前記金属薄膜層との間に、前記高屈折率薄膜層とは別の高屈折率薄膜層をさらに有することを特徴とする請求項10に記載の光透過性積層体。
- 前記粘着層は、前記金属薄膜層、または前記粘着層と前記金属薄膜層との間に有する別の高屈折率薄膜層に接して配置されることを特徴とする請求項11に記載の光透過性積層体。
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WO2017154276A1 (ja) * | 2016-03-08 | 2017-09-14 | 住友理工株式会社 | 光透過性積層体および光透過性積層体の製造方法 |
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2016
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