JP5202622B2 - プラスチックレンズの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、眼鏡用プラスチックレンズの製造方法に関し、特に、プラスチックレンズ基板の表面にハードコート層を形成する工程を含むプラスチックレンズの製造方法に関する。
近年、眼鏡用のレンズとして、ガラスレンズの代わりにプラスチックレンズが多用されている。これは、プラスチックレンズが、ガラスレンズに比べて軽量であり、割れにくくかつ加工成形がしやすいことなどの利点があることに起因している。
一方、プラスチックレンズは傷つき易いという短所もあり、これを防ぐために、プラスチックレンズの表面にハードコート層を形成して、表面硬度を強くすることも行われている。
しかし、一般にプラスチックレンズ基板の特性上の問題から、プラスチックレンズ基板の表面にハードコート層を形成する場合、レンズ面上にハードコート層が密着しにくく、そのままでは形成しにくいという問題がある。このため、ハードコート層とプラスチックレンズ基板との密着性を向上させるためのいくつかの提案がなされている。
例えば、プラスチックレンズ基板に対してハードコート層を形成する際に、ハードコート液塗布前にレンズ基板の表面(被塗布面)に研磨剤を吹き付け、又は研磨剤で傷を付けて、レンズ基板の表面の清浄化及び改質を行う方法が提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載の技術は、レンズ基板の表面に形成された傷に塗膜液剤が入り込む、いわゆるアンカー効果を高め、ハードコート膜とレンズ表面の密着性を高めるものである。
また、プラスチックレンズ基板の表面にプラズマ処理を施し、その後、中性洗剤と研磨剤を併用して機械的洗浄を行い、ハードコート層を塗布する技術も提案されている(特許文献2参照)。この特許文献2に記載された技術では、プラズマと研磨剤による2重の改質を行うことで、ハードコート層とレンズ基板表面の密着性を向上させ、ハードコート層の剥離を防ぐことができるようにしている。
また、プラスチックレンズ基板とハードコート層の間にプライマー層を介在させる方法も提案されている(特許文献3を参照)。この特許文献3に記載の技術では、プライマー層をハードコート層とレンズ基板の間に介在させることにより、両者の密着性を向上させている。このように、プラスチックレンズの表面にハードコート層を形成させることにより、耐摩耗性、耐薬品性、耐温水性、耐熱性、耐候性(プラスチックや塗料等が屋外で使用された場合に、変形、変色、劣化等の変質を起こしにくい性質)等を向上させるようにしている。なお、特許文献3には、プラスチックレンズ基板とプライマー層の密着性をより効果的に向上させる方法として、無機又は有機微粒子からなる研磨剤を用いてレンズ基板を擦過する方法が記載されている。
特開平5−70615号公報 特開平11−316302号公報 特開2001−288406号公報
上述したように、特許文献1〜3に記載の技術は、いずれも研磨剤を用いてプラスチックレンズ基板の表面を改質している。これは、研磨剤によってレンズ基板の表面に析出、又は付着している夾雑物を物理的に除去するためである。また、物理的な除去に加えてレンズ基板表面を粗面化することにより、ハードコート膜を形成されやすくしている。
しかし、プラスチックレンズ表面を粗面化するために使用した研磨剤の微粒子を確実に取り除かないと、この微粒子によって、ハードコート層やプライマー層を成膜したときに光の乱反射が生じるという問題がある。これは、取り除かれなかった研磨剤の微粒子が、輝点あるいは欠陥となって光を乱反射させるからである。また、砥粒の残渣により膜剥がれ、膜浮きが生じる場合もある。
このように、研磨剤を使用してプラスチックレンズ表面の改質を行った場合は、砥粒がプラスチックレンズ表面に残るため、改質後の洗浄処理を丁寧に行う必要があり、そのための洗浄工程には相当な時間が必要になる。また、研磨剤を構成する粒子の形状や研磨剤の使用量により、研磨粒子の凝集が生じて擦過痕にバラツキが生じる恐れもある。擦過痕が許容範囲を超えて深くなってしまうと、眼鏡レンズ等の完成したプラスチックレンズ製品における不良率の上昇につながってしまう。
本発明の目的は、上記問題に鑑み、プラスチックレンズ表面に形成するハードコート層の密着性を確保するに当たって、研磨剤を使用することなく表面の改質を行うことによって、改質後の洗浄時間の短縮を図ることである。
上記課題を解決するため、本発明によるプラスチックレンズの製造方法は、以下の工程を有する。
(1)プラスチックレンズ基板の表面を、払拭材によって擦過する擦過工程
(2)前記擦過したプラスチックレンズ基板の表面に、湿式表面処理によりハードコート層を形成する工程
(3)前記擦過工程の前又は後に、前記プラスチックレンズ基板を化学エッジングする工程
本発明は、上記(1)の工程において用いる払拭材が可撓性を有しており、その払拭材が払拭対象のレンズ基板表面の素材よりも硬質な材料で構成されているか、又は、硬質な材料が可撓性を有する基材上に固定されていることを特徴とする。
このような構成によれば、払拭材の硬質材料がプラスチックレンズ基板の表面に付着している夾雑物を確実に除去する事ができる。また、可撓性を有することで、払拭材が払拭残渣を発生させないこと、又は、発生させても払拭残渣を拭い出すこと、ができる。
「プラスチックレンズ基板」とは、ハードコート層が形成される直前の状態のものをいう。したがって、表面加工が全く施されていないプラスチックレンズ基板(レンズブランクス)のみを示すものではない。例えば、ハードコート層の密着性やプラスチックレンズの耐衝撃性を向上させるためにプライマー層を含むレンズも、プラスチックレンズ基板に含まれる。この場合、上記の擦過工程で払拭材が擦過する対象面は、ハードコート層が形成される前に外側に露出しているプライマー層表面になる。また、調光機能を有するプラスチックレンズ(いわゆるフォトクロミックレンズ)の中には、調光層の上面にハードコート層を成膜するものがある。この場合、上記擦過工程で払拭材が擦過する対象面は、ハードコート層が形成される前に外側に露出している調光層表面になる。
「払拭材」とは、プラスチックレンズ基板の表面素材よりも硬質の材料からなるか、または、硬質な材料を基材上に固定している可撓性を有するものをいう。「レンズ基板の表面素材よりも硬質な材料」とは、払拭対象のレンズ基板の構成によるものであり、払拭工程におけるレンズ基板最表面の材質によって材料を選択することが可能である。例えば、表面にプライマー層を形成しているレンズ基板を払拭する場合と、プラスチックレンズ基板そのものの表面を擦過する場合とでは、異なる素材を選択することができる。また、払拭材は、硬質な素材からなる織布、不織布又はスポンジなどでもよく、比較的軟質な基材である織布、不織布又はスポンジなどに硬質な砥粒を固定させたもの、いわゆる研磨シートでも良い。要は、払拭対象のレンズ基板に硬質な材料が接触すれば、表面の夾雑物をぬぐい去ることができるという事である。
前記したように、このような払拭材を用いると、擦過工程中や終了後に払拭材から発生する残渣がほとんど残らず、また、自身の可撓性により残渣が残っても容易に除去することができる。
好ましい払拭材として、例えば、非常に細密な多孔質体であるプラスチックフォーム(スポンジ)、また、プラスチック消しゴムのような質感のエラストマー、微細な糸で構成されている織布又は不織布があげられる。また、研磨剤の砥粒が固定されている織布、不織布、紙、フィルム等の研磨シートに加え、砥粒が表面に固定されているプラスチックフォーム、及び、エラストマー、もここでいう払拭材に含まれる。
本発明によれば、このような払拭材を用いて表面を擦過することで、プラスチックレンズ基板の表面に浮き出している夾雑物が確実に除去される。密着界面に存在する夾雑物によるハードコート層の密着状態が好適に改善される。また、その夾雑物による完成プラスチックレンズの着色や曇りなどが防止される。
さらに、研磨材を使用している従来技術の場合は、砥粒の分散によるプラスチックレンズ基板の二次汚染が生じ、その除去に多大な労力を要するが、本発明は、遊離砥粒を使用しないため研磨砥粒によって二次汚染する恐れがない。
好ましい形態の一つは、前記擦過する工程において、夾雑物の除去に加えてプラスチックレンズ基板の表面に擦過痕を形成することである。
「擦過痕」とは、微小な溝のことをいう。微小な溝によりハードコート層とプラスチックレンズ基材の界面面積が広く確保されることから、アンカー効果による密着性も改善される。なお、ハードコート層の屈折率は通常、加工前のプラスチックレンズ基板であるいわゆるレンズブランクスの屈折率に近似している。したがってハードコート層を形成するときにコート液がその溝に入り込んだ状態で硬化すれば、その溝は視認されなくなる。本形態によれば、ハードコート層とプラスチックレンズ基板の、界面の密着状態がさらに良好に確保される。
「化学エッジングする工程」の順番は限定されず、擦過工程の前に行っても後に行っても良い。また、擦過工程と連続して行う事にも限定されない。
なお、ここでいう「化学エッジング」とは、酸性溶液、アルカリ溶液等によるエッジングや、酸化剤、還元剤を使用したエッジング方法を指すものであり、特定の液剤に限定されるものではない。
酸性エッジングを行う場合には、塩酸溶液、硝酸溶液、及び、過塩素酸溶液といったエッジング後に酸の残渣が残りにくい揮発性がある酸を使用すると良い。アルカリエッジングを行う場合には、水酸化ナトリウム水溶液及び水酸化カリウム水溶液といった水溶性の高いアルカリ溶液を使用すると良い。このようなアルカリ性水溶液を使用することにより、エッジング後の洗浄を容易に行うことができる。また、酸化・還元によるエッジングを行う場合には、過酸化水素水やオゾン水を用いることができ、オゾンが含まれる雰囲気中にプラスチックレンズ基板を配置することもここで言う化学エッジングに含まれる。
特に好ましくは、化学エッジング工程におけるエッジング剤としてアルカリ性水溶液を用いる事である。アルカリ性水溶液は、基板表面の改質を好適に行うことができると共に、ハードコート液の濡れ広がり状態を改善することができる。
また、擦過工程は湿潤環境下で行われると好ましい。
湿潤環境を実現するための液体の種類は限定されない。液体は、擦過対象の面を構成する成分を変質させず、擦過に用いる払拭材の変質を生じさせずに湿潤性を実現できるものであれば良く、水、水溶液、有機溶媒、有機溶液、及び、各種混合溶液等、適宜選択して使用することができる。
本発明は、少なくとも一方の面にプライマー層が施されているプラスチックレンズに好ましく適用できる。
プライマー層は、この場合、アルカリ性溶液等によりプライマー層が侵食してしまう事がある。また、化学エッジング方法のみでハードコート層の密着性を確保するためには、充分な時間エッジング用の試薬に漬浸しておかなければならない場合がある。本発明の方法によれば、擦過工程によりハードコート層との密着性を向上させることができる。また、化学エッジングを行う時間を短縮することができる。本発明によれば、プライマー層を有するプラスチックレンズを製造する場合であっても、プライマー層を損傷させることなく、ハードコート層の密着性を好適に確保することができる。
本発明において用いる払拭材は、砥粒が固定されて成る研磨シートであると好ましい。
ここで、砥粒が固定されて成る研磨シートとは、研磨処理を行う前の状態で、布や紙等の可撓性を有するシート上に、砥粒が接着剤等によって固定されている研磨シートを示す。このような研磨シートとしては、紙に砥粒が固定されている研磨紙(紙ヤスリ)や、織布、不織布に砥粒が固定されている研磨布(布ヤスリ)等の研磨布紙の他、研磨パッド、研磨スポンジ等を用いることができる。研磨布紙の場合、電気抵抗試験方法による累積沈降高さ50%の粒子径が約10μm以下(いわゆる粒度が1500番(#1500)以上)であることが望ましい。
かかる構成によると、研磨砥粒により表面に付着している夾雑物を物理的にはぎ取るとともに砥粒で表面を傷つけ擦過痕を形成することができる。前述したように、このような擦過痕の形成により、アンカー効果によってプラスチックレンズ基板とハードコート層の密着性を向上させることができる。
また、前記砥粒がダイヤモンドであると好ましい。ダイヤモンドは酸やアルカリ、酸化剤や還元剤、及び、有機溶剤によって変質や溶解が生じないこと、またダイヤモンド砥粒を採用すると、化学エッジング処理直後に擦過処理を行っても微細な砥粒がエッジング剤と反応することがないという利点がある。
更に、ダイヤモンドは、非常に硬質であるため、ダイヤモンド砥粒を採用すると、擦過工程によって砥粒が破砕することが殆ど生じない。したがって、一つ一つの砥粒が形成する擦過痕の形状に大きな変化が生じにくい。このため、安定した擦過痕を形成することができる。
本発明は、払拭材がメラミン樹脂発泡体(メラミンフォーム)であっても好ましい。
メラミン樹脂発泡体は、硬質プラスチックであるメラミンを微細な泡で発泡させたものである。したがって、硬質なプラスチックがレンズの基板表面の夾雑物を拭うだけでなく、表面に付着している場合も削り取る形で除去する事ができる。またこのとき、削り取られた夾雑物は、メラミンフォームの発泡孔に吸着するので、プラスチックレンズ基板表面に残渣として残ることを確実に防げる。
更に湿式環境下で実施した場合には、液成分がメラミンフォームの発泡孔にむけて吸い上げられる毛細管現象が生じる。削り取られて微細に粉砕した夾雑物は、この毛管現象により発泡孔の内部に回収される。結果、夾雑物の残渣がレンズ表面に残存しにくくなる。
上述したように本発明によれば、湿式表面処理によりハードコート層を形成する前に、プラスチックレンズの表面を、このような払拭材を用いて擦過することによって、プラスチックレンズの表面を、ばらつきを抑えてより均等に改質し、ハードコート層の密着性を高めることができる。そして研磨砥粒がプラスチックレンズの表面上に残留することが回避、ないしは殆ど抑制されるので、砥粒が固定されないいわゆる遊離砥粒の研磨剤を用いる場合と比較して、その後の洗浄工程時間を格段に短縮することが可能となる。
本発明によれば、研磨剤を使用することなく表面の改質を行ってハードコート層の密着性を確保し、且つ、表面改質後の洗浄工程時間の短縮を図ることができる。
本発明の第1の実施の形態例としてのプラスチックレンズの製造方法の工程を示すフローチャートである。 払拭材として研磨シート(#1500)を用いてレンズ基板を擦過したときのレンズ基板の顕微鏡写真である。 払拭材として研磨シート(#3000)を用いてレンズ基板を擦過したときのレンズ基板の顕微鏡写真である。 払拭材として研磨シート(#6000)を用いてレンズ基板を擦過したときのレンズ基板の顕微鏡写真である。 払拭材としてメラミンフォームを用いてレンズ基板を擦過したときのレンズ基板の顕微鏡写真である。 本発明の第2の実施の形態例としてのプラスチックレンズの製造方法を示すフローチャートである。 本発明の第3の実施の形態例としてのプラスチックレンズの製造方法を示すフローチャートである。 本発明の第4の実施の形態例としてのプラスチックレンズの製造方法を示すフローチャートである。 本発明の実施形態例において、擦過処理について説明するための図である。 本発明の実施形態例において、ハードコート層のプラスチックレンズ基板への密着性を評価する方法について説明するための図である。
以下本発明を実施するための形態の例を説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。以下の例では眼鏡用のプラスチックレンズの製造方法に適用する場合を示すが、その他、表面にハードコート層を形成するプラスチックレンズであれば、本発明を適用することが可能である。
(第1の実施形態例)
図1は、本発明の第1の実施形態例のプラスチックレンズの製造方法の各工程を示すフローチャートである。
まず、図1を参照して本発明の第1の実施形態例について説明する。最初に、眼鏡の元となる、プラスチックレンズ基板を用意する(ステップS1)。このプラスチックレンズ基板としては、通常、チオウレタン系レンズが用いられるが、この他、汎用品で屈折率が高いCR39(アリルジグリコールカーボネート)でもよく、また屈折率の高いスルフィドウレタン系のレンズ基板にも好ましく適用することができる。
次に、用意されたプラスチックレンズ基板の表面に対し、払拭材により擦過処理を行う(ステップS2)。払拭材は、表面に吸着した夾雑物を取り除くことが可能である材料であれば特に限定されない。好ましくは、硬質のプラスチック材料からなるスポンジ状の発泡プラスチック材料や、砥粒がスポンジ、織布、又は、不織布などに固定された研磨シートなどがあげられる。このような払拭材を用いて擦過することにより、表面に吸着している夾雑物を確実に取り除くことができる。更に、プラスチックレンズ基材の材料よりも硬質のプラスチックの発泡体や研磨シートを採用すると、プラスチックレンズ基板の表面を粗面化することができるので好ましい。このような払拭材を用いることにより、遊離砥粒を含む研磨剤を用いないので、擦過処理後に研磨砥粒や払拭残渣(切り子)がプラスチックレンズの表面に残留することを抑制ないしは殆ど回避することができる。また、遊離砥粒が凝集することによって生じる、不測の擦過痕を付けてしまうことも回避できる。つまり、擦過処理後にハードコート層を形成した後に、この擦過痕が視認可能な程度に幅や深さが大きくなることを防ぐことができる。
払拭材として研磨シートを用いた場合、砥粒としては、電気抵抗試験方法における累積沈降高さ50%の粒子径がおよそ10μm以下であるものが望ましい。具体的には、JIS「R6010」に定める#1500以上の粒度で規定されている研磨シートが望ましい。#1500以上の研磨布紙等の研磨シートを用いる場合に、擦過後に形成するハードコート層の密着性を確実に良好に保持することができる。また、累積沈降高さ50%の粒子径が0.1μm未満である砥粒の研磨シートを用いても、砥粒が細かすぎて所望の擦過痕を得られず、所望の密着性を確保しにくくなる。擦過処理に用いる研磨シートは、砥粒の累積沈降高さ50%の粒子径が0.1μm以上10μm以下のものを用いることが望ましい。
また、研磨シートに固定される砥粒の材料としては、コランダム(アルミナ)、炭化ケイ素、炭化ホウ素、ダイヤモンド、窒化ホウ素(CBN)、酸化セリウム、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化第二鉄(Fe、ベンガラ)等、種々の材料を用いることができる。特に、ダイヤモンド、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、コランダム等の硬度の高い材質からなる砥粒を使用すると、擦過時に砥粒が粉砕して研磨能力が低下する現象や砥粒の粉砕物がシートから遊離して基板に付着する現象が抑制されるので好ましい。
払拭材としてスポンジ状のプラスチック発泡体を用いた場合、擦過する面を構成するプラスチック基材よりも硬質な素材からなる発泡体を採用すると良い。このような材料を選択すると、プラスチック発泡体であっても、擦過工程中に表面を粗面化することができる。例えば、硬質なウレタンフォームやメラミンフォームは、ポリウレタン材料やポリカーボネート材料を使用しているプラスチックレンズに使用することができる。また、メラミンフォームは、比較的硬質なプラスチック材料であるチオウレタンやアリルジグリコールカーボネート(いわゆるCR39)やエピスルフィド系樹脂などに用いると良い。
(試験観察)
異なる粒度の砥粒が固定された研磨シートを用いてプラスチックレンズ基板を人の手で湿式擦過して顕微鏡観察した結果を図2〜図4に示す。
図2は、チオウレタン系レンズ基板(屈折率ne:1.67、HOYA(株)製、商品名:アイノア(以下「チオウレタン系レンズ基板」という))の表面を、起毛織布にダイヤモンド砥粒を定着させたダイヤ研磨布紙(ノリタケコーテッドアブレーシブ社製、商品名:ダイヤ研磨布紙(以下単に「ダイヤ研磨布紙」という))#1500を用いて擦過したときの顕微鏡写真を示す。
図3は、チオウレタン系レンズ基板の表面を、ダイヤ研磨布紙#3000を用いて擦過したときの顕微鏡写真を示す。
図4は、チオウレタン系レンズ基板の表面を、ダイヤ研磨布紙#6000を用いて擦過したときの顕微鏡写真を示す。
また、図5は、チオウレタンレンズ基板の表面を、メラミンフォーム(レック(株)製)を用いて擦過したときの顕微鏡写真を示す。
なお、図2〜図5において左下部に示す線分は50μmの長さを示す。
図2〜5に示すように、ダイヤモンド砥粒を固定している研磨シートやメラミンフォームで擦過した場合、プラスチックレンズ基板に直線的な微細な傷が形成されていることが判った。このような微細な傷は、ハードコート層との密着性を向上させることができる。また、このような微細な傷であれば、その後の表面加工により埋められてしまい、人の目に視認されることはない。また、図2〜図5に示す範囲において、研磨砥粒が見られない。したがって、研磨砥粒の残留を殆ど回避ないしは十分抑制できることが判る。
再び図1を参照して擦過処理後の工程について説明する。擦過工程の次に、この擦過処理が終了したプラスチックレンズ基板を、超音波洗浄等により表面浄化処理を行う(ステップS3)。その後、このプラスチックレンズ基板を、後述するようなハードコート液に浸漬し、プラスチックレンズ基板にハードコート層を形成する(ステップS4)。なお、この場合、ステップS3として表面浄化工程を設けるが、この浄化工程は必ずしも必要とはされない。また、表面浄化工程を設ける場合も、本発明においては上述したように研磨砥粒の残留を殆ど回避、ないしは十分に抑制できるので、浄化時間を短縮することが可能となる。
(第2の実施形態例)
また、図6は、本発明の第2の実施形態例のプラスチックレンズの製造方法を示すフローチャートである。図6に示す製造方法が図1に示す製造方法と異なる点は、擦過工程の前にアルカリ溶液洗浄等による化学エッジング工程を含むことと、擦過工程の後の表面浄化処理を省略するところである。
この例では、図6に示すように、レンズ基板を用意し(ステップS11)、化学エッジング用の試薬による処理を行う(ステップS12)。その後、研磨シートによる擦過工程を経て(ステップS13)、ハードコート層形成工程を行う(ステップS14)。
このように、本形態において擦過工程の後に化学エッジング処理を行わなくても、擦過工程後に擦過残渣が殆ど残らないので、その後ハードコート層形成工程に進むことが可能である。つまり、何らかの理由で擦過工程前に化学エッジング工程を行うことも可能であり、その後再度の化学エッジング処理は不要となる。
(第3の実施形態例)
図7は、本発明の第3の実施形態例のプラスチックレンズの製造方法を示すフローチャートである。図7に示す製造方法が図1に示す製造方法と異なる点は、擦過工程(ステップ23)の前にプライマー層を形成する工程(ステップ22)を含むことと、擦過工程後の表面浄化処理を省略するところである。また、図6に示す製造方法と異なる点は、擦過工程の前にプライマー層を形成する点と、化学エッジング処理を省略することである。
本発明は、上述したようにアルカリ洗浄等の化学エッジング処理を行うことなく、擦過処理のみにてハードコート層の密着性を確保することができるので、このようにプライマー層を形成する場合に、プライマー層の材料として、耐アルカリ性等の化学的安定性を有する材料に限定されない、という利点がある。すなわち化学エッジング処理を行う場合は、エッジング用の試薬が付着しても、耐衝撃性や密着性を保持できる材料であることがプライマー層材料に要求されるが、本発明を適用する場合は、そのような特性を考慮する必要がなく、プライマー層材料の選択自由度を高めることができる。
(第4の実施形態例)
図8は、本発明の第4の実施形態例のプラスチックレンズの製造方法を示すフローチャートである。本発明の第4の実施形態例は、図6に示す製造方法の化学エッジング処理(ステップ12)を擦過工程(ステップ13)の後に行うものである。この方法によれば、ステップS13の擦過工程(物理エッジング)終了後に化学エッジング用の試薬に洗い流されるため、表面に擦過残渣等が付着していても確実に洗浄することができる。
(実施例)
次に、本実施形態例の製造方法とその製法で作製されたプラスチックレンズを、より具体的な実施例として示し、プラスチックレンズ基板とハードコート層との密着性を評価した結果について説明する。
<評価1>
先ず、払拭材として用いる研磨シートを布ヤスリとし、これによる擦過処理(実施例1)が、研磨剤を使用したときの擦過処理(比較例1)と同等の効果を発揮することを確認した。また、擦過処理を行わない場合(比較例2)も確認した。
[実施例1]
この例においては、図1のフローチャートで示す処理を行ってプラスチックレンズにハードコート層を形成した。擦過工程においては、#1500の布ヤスリを用いたサンプル(サンプル1〜4)とメラミンフォームを用いたサンプル(サンプル5〜8)を作成した。同じ材料より成るレンズ基板に同様の処理を行ってハードコート層を形成し、密着性の評価を行った。
先ず、ステップS1で用意されるプラスチックレンズ基板として、チオウレタン系レンズ基板(屈折率ne:1.67、HOYA(株)製、商品名:アイノア)を用意した。
次に、ステップS2として、払拭材として、(株)ノリタケコーテッドアブレーシブ社製、商品名:ダイヤ研磨布紙、#1500を用いて4枚の基板(サンプル1〜4)に、また払拭材としてレック(株)製メラミンフォームを用いて別の4枚の基板(サンプル5〜8)に、擦過処理を行った。このとき、擦過処理は流水環境下で行った。
擦過処理としては、図9に示すように、先ずプラスチックレンズ基板2に対し矢印mで示すように一方向に10往復擦過した。その後、プラスチックレンズ基板2を90度回転させて、矢印nで示すように、上述の擦過による擦過痕5に対しほぼ垂直な方向に更に10往復擦過した。ダイヤ研磨布紙の場合は擦過時の荷重を300Gから400Gの範囲とし、メラミンフォームの場合は擦過時の荷重を750G〜800Gの範囲とした。
その後、ステップS3として、アセトンを保持した布で基板表面を拭き取った後、超音波28kHz印加のもと、イオン交換水を用いて300秒間の表面浄化処理を行った。超音波洗浄後に、70℃雰囲気下で乾燥させた。
最後に、ハードコート層形成工程(ステップS4)になるが、ここでは、次の3つの段階の処理を行った。まず、第1段階として、プラスチックレンズ基板を、ディッピング法にてハードコート用組成液に30秒間浸漬した。そして、第2段階として、ハードコート用組成液に浸かったプラスチック基板を、速度30cm/分で引き上げた。第3段階として、引き上げたプラスチックレンズ基板を、110℃の温度で60分間、加熱することにより、ハードコート液を硬化してハードコート層を形成した。このように形成したハードコート層の屈折率(ne)は1.65であった。
ここで、ハードコート用組成液の製法について、説明しておく。まず、5℃雰囲気下で、溶媒として、ダイアセトンアルコール(DAA)30質量部と、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン2.7質量部を混合した。そして、この混合液にγ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン3.0質量部を攪拌しながら滴下し、4時間攪拌させた。その後、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン69.8質量部を混合した後、0.01mol/リットル濃度の塩酸を攪拌しながら滴下し、1昼夜攪拌した。これにより、まず、ハードコートの一つの成分であるシランカップリング剤加水分解品が得られた。
続いて、5℃雰囲気下、別途作製した変性酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合メタノールゾル(日産化学工業(株)製)180質量部を攪拌しながら、ダイアセトンアルコール(DAA)20質量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)80質量部を混合した。そして、この混合物を攪拌しながら、変性酸化チタン−酸化スズ−酸化ケイ素−酸化ジルコニウム複合メタノールゾル(触媒化成工業(株)製、商品名:オプトレイク1120Z)62.5質量部をさらに混合し、一時間攪拌した。その後、攪拌しながら先に作製したシランカップリング剤を滴下し、一昼夜攪拌した。
ついで、シリコン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名:Y−7006)0.25質量部及びアルミニウムトリスアセチルアセトネート5質量部を順次添加し、150時間攪拌した。得られた溶液を0.5μmのフィルターでろ過したものをコーティング組成物とした。
以上説明したように、ハードコート組成物としては、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化チタン等の無機化合物微粒子割合が凡そ20%、シランカップリング剤(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)が凡そ20%、メタノール、1−メトキシ2−プロパノール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のアルコール系溶媒が凡そ55%の液が用いられる。残りの略5%は、レベリング剤他の添加剤である。
上述の方法で4枚ずつ2組(2種の払拭材用)、合計8枚のレンズを作製し、そのプラスチックレンズ基板とハードコート層との密着性を試験によって確認した。この密着性試験の詳細については後述する。そして、8枚のレンズサンプルで密着性を確認した結果を、実施例1のサンプルNo.1〜8として、下記の表1に示す。
[比較例1]
比較例1は、擦過工程(ステップS2)において、研磨剤((株)フジミインコーポレーテッド製、商品名:POLIPLA 103H)を保持したスポンジを用いた。擦過処理の条件(擦過方向及び擦過回数、擦過時の荷重)は上述の実施例1のサンプルNo.1〜4と同様とした。また、その他の表面浄化処理工程(ステップS3)、ハードコート層形成工程(ステップS4)も実施例1と同様とした。この方法で4枚のレンズを作製し、実施例1と同様の条件でハードコート層とプラスチックレンズ基板との密着性を試験によって確認した。この結果を、比較例1のサンプルNo.1〜4として上記表1に示す。
[比較例2]
比較例2は、擦過工程(ステップS2)を省略した他は、実施例1と同様の条件で表面浄化処理(ステップS3)、ハードコート層形成工程(ステップS4)を行った。この方法で5枚のレンズを作製し、同様に密着性を試験により確認した。この結果を、比較例2のサンプルNo.1〜5として上記表1に示す。
[ハードコートの密着性評価]
上述のプラスチックレンズ基板とハードコート層との密着性を評価した方法は以下の通りである。
図10は、以上説明した製造方法によって作製したプラスチックレンズ1の正面図と側面図である。図10に示すように、プラスチックレンズ1は、プラスチックレンズ基板2の表面全体にハードコート層3が形成されて構成される。このハードコート層3は、単なる硬化膜でもよいが、反射防止膜を兼ねるようにすることもできる。図5では、分かりやすくするためにハードコート層3を厚く示しているが、実際は2〜5μm程度の膜である。
そして密着性の評価にあたって、図10(a)〜(f)に示すように、プラスチックレンズ1の表面に形成されたハードコート層3(硬化膜又は反射防止膜)に対して、1つのレンズサンプルにつき、1.5mm間隔で5〜6箇所、100目クロスカット4を剃刀によって形成した。そして、このクロスカット4を形成したところに粘着テープ(ニチバン(株)製、セロテープ(登録商標))を強く貼り付けた後、これを急速に剥がし、その後のハードコート膜3の剥離の有無を調べた。100目のうち剥離の生じていない領域の数で評価し、すなわち100のとき剥離なしとなる。また、1目の中で部分的に剥離が生じたものは、その度合いを少数点以下の面積比で評価した。例えば100目のうち、1目において、その10分の1程度の領域に膜剥がれが生じている場合は、99.9として表中に示すこととする。
表1の結果から、実施例1によるプラスチックレンズでは、遊離砥粒を含む研磨剤を使用した比較例1と同様に、密着性に優れることがわかった。一方、擦過処理を施さない比較例2の場合は、密着性が全く得られないことがわかった。
なお、JIS「R6010」の規格によると、電気抵抗試験方法により測定される研磨材用微粉(砥粒)の粒度として、#1500の研磨布紙の場合は、累積沈降高さ50%の粒子径が、「9.7±0.8μm」と規定されている。なお、電気抵抗試験方法については、JIS「R6012」において規定されている。
つまり、電気抵抗試験方法による累積沈降高さ50%の粒子径がおよそ10μmの砥粒を有する研磨シートを用いて擦過を行う場合に、良好な密着性が得られることがわかる。
<評価2>
次に、擦過処理に用いる払拭材として研磨シートを用いる場合に、その粒度の番号を大きくする(砥粒の粒子径をより小さくする)と共に、擦過処理後の表面浄化工程を行わない場合について、密着性の評価を行った。なお、本評価において、擦過処理は乾式環境下で行った。
[実施例2]
擦過処理後の表面浄化処理工程を省略したほかは、上述の実施例1と同様の製造工程を経て3枚のプラスチックレンズを作製した。先ず、ステップS1として用意するプラスチックレンズ基板としては、実施例1と同様に、チオウレタン系レンズ基板(屈折率ne:1.67、HOYA(株)製、商品名:アイノア)を用いた。
次に、ステップS2において、研磨シートとして、(株)ノリタケコーテッドアブレーシブ社製、商品名:ダイヤ研磨布紙、#10000を用いて擦過処理を行った。
この例では、擦過処理は乾式環境下で行った。その他の擦過処理の条件(擦過方向及び擦過回数、擦過時の荷重)は上述の実施例1のサンプルNo.1〜4と同様である。この場合の密着性の評価結果を下記の表2に示す。各レンズサンプル2−1,2−2,2−3において6箇所の100目クロスカットを行い、その平均をレンズ平均とし、実施例2全体の平均を「平均」として示す。
上記表2の結果から、実施例2により製造したプラスチックレンズでは、擦過工程を乾式環境下で行っているものであるが、擦過工程を湿式環境下で行う実施例1による場合と同様の優れた密着性が得られることがわかった。また、擦過処理後の表面浄化工程を行わない場合でも、良好な密着性が得られることを確認できた。
なお、JIS「R6010」においては、#10000の研磨シートの粒子径は規定されていないが、研磨シートの各メーカーにおける#10000の研磨シートの研磨材の粒度は、電気抵抗試験方法による累積沈降高さ50%の粒子径がおよそ0.5μm〜1.0μm程度である。つまり、電気抵抗試験方法による累積沈降高さ50%の粒子径が0.5μm〜1.0μmの粒子径の砥粒を有する研磨シートを用いる場合に、良好な密着性が得られることがわかる。
また、実施例1及び2の結果から、電気抵抗試験方法による累積沈降高さ50%の粒子径が10μm以下の粒子径の砥粒を有する研磨シートを用いて擦過することで、良好な密着性をもったプラスチックレンズを製造することができるといえる。
<評価3>
次に、本発明の実施例として払拭材を用いて擦過処理を行う実施例と、通常の眼鏡拭きで擦過処理を行う比較例とについてアルカリ洗浄を伴う製造方法によりプラスチックレンズを作製し、密着性を比較した。
[実施例3]
前述の図6のフローチャートに示す製造工程に沿って、2種類の払拭材で擦過処理を施したプラスチック基板を用いてそれぞれ3枚ずつのプラスチックレンズを作製した。
先ず、ステップS11で用意されるプラスチックレンズ基板として、実施例1と同様にチオウレタン系レンズ基板(屈折率ne:1.67、HOYA(株)製、商品名:アイノア)を用意した。
次に、ステップS23として、プラスチックレンズ基板をアルカリ溶液に漬浸し、レンズ表面の化学エッジング処理を行った。この条件は、下記の通りである。
アルカリ溶液:10%水酸化ナトリウム水溶液
アルカリ溶液温度:60℃
漬浸時間:100秒
漬浸条件:超音波28kHz印加
次に、ステップS13の擦過工程で使用した払拭材は、プラスチックレンズ基板の表面を布ヤスリ(実施例3−1,3−2、3−3)とメラミンフォーム(実施例3−4,3−5,3−6)である。これらの払拭材で擦過し、物理エッジング処理を行った。この例では、布ヤスリとして、(株)ノリタケコーテッドアブレーシブ製、商品名:ダイヤ研磨布紙、#1500を用い、メラミンフォームはレック(株)製のものを用いた。また、擦過工程の条件(擦過方向、擦過回数、擦過時の荷重)は実施例1のサンプルNo.1〜4、5〜8とそれぞれ同様とした。
そして、ステップS14として、プラスチックレンズ基板にハードコート層を形成した。なお、このハードコート層の形成工程は、上述の実施例1と同様とした。ハードコート組成液の組成及び調整方法も、実施例1と同様とした。サンプル名は、払拭材として布ヤスリを使用した場合を実施例3−1、実施例3−2、実施例3−3、メラミンフォームを使用した場合を実施例3−4、実施例3−5、実施例3−6として下記の表3に示す。表3においては、結果数として、上述の図10に示す評価方法と同様の評価を行い、膜剥がれの生じない個数を示す。この場合も実施例2と同様に各レンズサンプルにおいて5乃至6箇所の100目クロスカットを行い、その平均をレンズ平均とし、実施例3全体の平均を「平均」として示す。
[実施例4]
実施例3の製造方法のアルカリ洗浄工程(ステップS12)において、漬浸時間を180秒に変えた他は、同様の条件、同様の製造工程で3枚のプラスチックレンズを作製した。払拭材として布ヤスリを用いたサンプル名を実施例4−1、実施例4−2、実施例4−3とし、メラミンフォームを用いたサンプル名を実施例4−4、実施例4−5、実施例4−6として、密着性の評価結果を下記表4に示す。サンプル4−1,4−2,4−3では2箇所、4−4,4−5,4−6では6箇所の100目クロスカットを行い、実施例2及び3と同様にレンズ平均と平均を算出した。
[比較例3]
実施例1の擦過工程で、払拭材として一般的な眼鏡拭き(ポリエステル製)でプラスチックレンズ基板を擦過したことをのぞくと、実施例1と同様の方法で3枚のレンズを作製した。比較例に用いた一般的な眼鏡拭きはプラスチックレンズ基板よりも明らかに軟質な材料で構成されているものである。サンプル名を比較例C3−1、比較例C3−2、比較例C3−3として、下記表5に示す。
[比較例4]
実施例3の擦過工程で、払拭材として一般的な眼鏡拭き(ポリエステル製)でレンズ基板を擦過したことをのぞくと、実施例2と同様の方法で3枚のレンズを作製した。サンプル名を比較例C4−1、比較例C4−2、比較例C4−3として、密着性の評価結果を実施例2及び3、比較例3と同様に、下記表5に示す。
上記表2〜5の結果より、実施例2〜4におけるように、布ヤスリやメラミンフォーム等の払拭材で擦過処理を施したプラスチックレンズは、評価の「平均」がいずれも略100に保たれており、優れた密着性であることがわかった。一方、比較例3及び4においては、擦過加工をポリエステル製の眼鏡拭きで行っており、軟らかいポリエステル製眼鏡拭きでは、評価の「平均」が95以下となってしまい、密着性が不十分であることがわかった。これは、ポリエステル眼鏡拭きの擦過では製造過程の析出により強力に付着した夾雑物は充分に除去できず、また、レンズ表面を粗面化する表面改質を行えないためと考えられる。
<評価4>
次に、擦過処理に用いる払拭材として研磨シートを用いる場合の粒度の番号を大きくすると共に、アルカリ洗浄等の化学エッジング工程を行わず、また擦過処理後の表面浄化工程を行わない場合について、密着性の評価を行った。
[実施例5]
擦過処理前のアルカリ洗浄等の化学エッジング工程を省略した他は、上述の実施例3と同様の製造工程を経てプラスチックレンズを作製した。プラスチックレンズ基板としては、実施例1〜4と同様に、チオウレタン系レンズ基板(屈折率ne:1.67、HOYA(株)製、商品名:アイノア)を用いた。
なお、この例においては、擦過処理を行う払拭材としてダイヤモンド布ヤスリを用いた。布ヤスリとしては、(株)ノリタケコーテッドアブレーシブ社製、商品名:ダイヤ研磨布紙、#6000を用いた。
擦過処理の条件は、前述の実施例1のサンプルNo.1〜4において説明した擦過処理と同様の条件(擦過方向、擦過回数及び擦過時の荷重)とした。この場合の密着性の評価結果を下記表6に示す。
この表6から明らかなように、実施例5においても、プラスチックレンズ基板とハードコート層との密着性が充分得られることがわかった。つまり、アルカリ洗浄を伴わずに研磨処理を行っても、密着性が充分得られるといえる。
したがって、プライマー層を形成する仕様のプラスチックレンズに適用する場合は、プライマー層材料として耐アルカリ性を考慮する必要がなく、選択自由度が高まることとなる。したがって、プライマー層を設ける眼鏡等のプラスチックレンズの製造方法に適用する場合は、比較的コストの低い材料や、製造・取り扱いの容易な材料を選択することも可能となるという利点がある。
以上説明したように、本発明によれば、遊離砥粒を含む研磨剤による表面改質を行わずに、プラスチックレンズ基板とハードコート層との密着性を確保することができる。砥粒が表面に殆ど残留しないため、擦過処理後の残渣の浄化工程に要する時間を短縮し、すなわち浄化工程を簡易化できるか、もしくは表面浄化工程を省略することが可能となる。
また、擦過工程を湿潤環境で行うことにより、僅かに生じる擦過残渣が基板表面に付着しにくくなり、擦過直後のレンズ基板表面をより確実に清浄に保つことができる。その結果、擦過処理後の洗浄処理がより容易になり、擦過残渣による膜浮きを抑制することができる。また、湿潤環境で実施することにより、擦過残渣の微粒が起点となる膜はがれも効果的に抑制できることから、長期にわたって密着性が得られる。
更に、従来行われていたような表面改質処理としてのプラズマ処理やアルカリ処理によるレンズ表面の化学変化を要しないため、前処理を簡略化することができる。
プライマー層は、ハードコートと基板の密着性を向上させる効果のほかに耐衝撃性を向上させる効果を有している。しかし、耐衝撃性が得られるプライマー層は、ポリウレタン系の樹脂層で構成されており、ハードコート層との密着性を高めるために、アルカリ洗浄や紫外線照射、オゾンによる酸化処理等を行うとプライマー層が劣化することが懸念される。
しかしながら、本発明による場合は布ヤスリ等の研磨シートを用いて擦過処理を行うのみであるので、アルカリ洗浄や紫外線照射、オゾンよる表面酸化処理を要さない。その結果、プライマー層を犠牲にすることなくハードコート層を形成することができるので、レンズ基板の劣化現象を抑制することができ、表面加工性に優れたプラスチックレンズの製造方法を提供することが可能となる。
なお、本発明は上述の実施形態例において説明した構成に限定されるものではなく、その他本発明構成を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能である。
引用符号の説明
1.プラスチックレンズ、2.プラスチックレンズ基板、3.ハードコート層、4.クロスカット、5.擦過痕

Claims (10)

  1. プラスチックレンズ基板の表面を払拭材を用いて擦過する擦過工程と、
    前記擦過したプラスチックレンズ基板の表面に、湿式表面処理によりハードコート層を形成する工程と、
    前記擦過工程の前又は後に、前記プラスチックレンズ基板を化学エッジングする工程と、
    を含み、
    前記払拭材は、可撓性を有しており、前記プラスチックレンズ基板表面の素材よりも硬質な材料で構成されるか、又は、前記プラスチックレンズ基板表面の素材よりも硬質な材料が可撓性を有する基材上に固定されて構成される
    プラスチックレンズの製造方法。
  2. 前記擦過工程において、前記プラスチックレンズ基板の表面に擦過痕を形成する請求項1に記載のプラスチックレンズの製造方法。
  3. 前記化学エッジングする工程は、アルカリ性水溶液を用いて行う請求項1に記載のプラスチックレンズの製造方法。
  4. 前記擦過工程を湿潤環境で行う請求項1〜3のいずれかに記載のプラスチックレンズの製造方法。
  5. 前記払拭材が、砥粒が固定されて成る研磨シートである請求項1〜4のいずれかに記載のプラスチックレンズの製造方法。
  6. 前記砥粒は、電気抵抗試験方法による累積沈降高さ50%の粒子径がおよそ10μm以下であり0.1μm以上である請求項5に記載のプラスチックレンズの製造方法。
  7. 前記研磨シートは、砥粒が織布又は不織布に固定されている請求項5又は6に記載のプラスチックレンズの製造方法。
  8. 前記砥粒がダイヤモンドであることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のプラスチックレンズの製造方法。
  9. 前記払拭材が、メラミン樹脂発泡体である請求項1〜4のいずれかに記載のプラスチックレンズの製造方法。
  10. 前記プラスチックレンズ基板は、チオウレタン系プラスチックより成る請求項1〜9のいずれかに記載のプラスチックレンズの製造方法。
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