JP5201436B2 - 熱硬化性水系透明導電性塗料と該塗料によって形成した塗膜 - Google Patents

熱硬化性水系透明導電性塗料と該塗料によって形成した塗膜 Download PDF

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本発明は、導電性粉末の分散性に優れた水分散液を用いた熱硬化性の水系透明導電性塗料およびその塗膜に関する。
基材に導電性を付与するために導電粉を含有した導電性塗料を基材表面に塗布して導電膜を形成することが広く行われている。従来、導電粉として、酸化スズ粉末やSbドープ酸化スズ(ATO)粉末、Inドープ酸化スズ(ITO)粉末など用いて透明導電膜を形成しているが、導電粉の粒径が大きいと塗膜に曇り(ヘーズ)を生じて透明性が低下する。そこで、透明性の高い塗膜を得るために、粒径が可視光波長域よりも格段に小さいÅレベルの超微細な導電粉末を用いた導電性塗料(特許文献1)や、酸化スズコロイドの水性ゾルを利用した導電性塗料(特許文献2)などが従来知られている。
しかし、導電粉末が微細過ぎると凝集を生じやすくなり、粉末相互の接触が不均一になるので導電性が低下し、透明性も向上しない。従って、超微細な導電粉末を用いるだけでは不十分である。また、酸化スズコロイドの水性ゾルを利用するものは、通常は水性ゾルの脱酸処理や脱アルカリ処理を必要とするので、塗料の製造工程が煩わしい。
また、従来の導電性塗料の多くは、塗料成分の樹脂と馴染み易いように、導電粉末を有機溶剤に分散させた有機系分散液を用いた有機系塗料であるが、最近、有機溶剤による環境汚染が懸念されており、有機溶剤を主に用いない水系塗料が見直されている。さらに、有機系塗料では分散性の向上や分散安定性を高めるために分散剤を用いているが、成膜したときに経時的に分散剤が表面に浮き出すブリートアウトを生じる問題があった。
また、従来の導電性塗料は、導電粉末の量が導電粉末と樹脂の量比60/40より少ないと、導電性塗料を成膜したときに十分低い表面抵抗が得られないため、導電性塗料を調製する際に多量の導電粉末を配合する必要があり、塗膜の透明度や膜強度が低下し、かつ塗料がコスト高になるという問題があった。一方、塗膜の表面抵抗を低くしつつ、導電粉末の配合量を減らす手段として、針状導電粒子を一部添加することが知られているが、この場合には針状導電粒子によって塗膜のヘーズが上がるという欠点がある(特許文献3)。
特開平08−20734号公報 特開平06−76636号公報 特開平08−231222号公報
本発明は、従来の透明導電性塗料における従来の上記問題を解決したものであり、分散剤を必要とせずに、水中において導電性粉末が優れた分散性を示す水分散液を用いた熱硬化性の水系透明導電性塗料等を提供する。
本発明は、以下に示す構成によって上記課題を解決した水系透明導電性塗料とその塗膜に関する。
〔1〕導電粉末の水分散液と水性の熱硬化性樹脂とを混合してなる分散剤を含まない水系透明導電性塗料であり、導電粉末として平均粒子径が10〜300nmのアンチモンドープ酸化スズ粉末、インジウムドープ酸化スズ粉末、アンチモンフリー酸化スズ粉末、またはリンドープ酸化スズ粉末を用い、水性の熱硬化性樹脂としてウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、またはシリコンアクリル樹脂を用い、
上記導電粉末の水分散液をミルで分散処理してさらに遠心分離することによって、
分散後の導電粉末の累積重量50%粒子径(D50)が50〜80nmであって、
分散前の導電粉末の平均一次粒子径(DT50)と分散後のD50との比〔D50/DT50〕が2.5〜8.0になるように、または、
分散前の導電粉末のBET比表面積(B0)と分散後のBET比表面積(B1)の比〔B0/B1〕が0.64〜0.68になるように、
これらの範囲を外れる粗粒を分離して〔D50/DT50〕2.5〜8.0または〔B0/B1〕0.64〜0.68にした導電粉末水分散液を用いることを特徴とする水系透明導電性塗料。
〔2〕ポリエステルフィルム(厚み100μm、ヘーズ2.0%、全光透過率90%)を基材とし、該基材の表面に塗布し、10分間自然乾燥した後にさらに70℃で10分間加熱乾燥して膜厚5μmの塗膜を形成したときに、塗膜の比全光透過率が90%以上であって、基材を含むヘーズ値が3.0%以下である上記[1]に記載する水系透明導電性塗料。
〔3〕請求項2に記載する塗膜を形成したときに、該塗膜についてJIS K5400に規定するクロスカット試験の残存率が80%以上である上記[1]〜上記[2]の何れかに記載する水系透明導電性塗料。
〔4〕上記[1]〜上記[3]の何れかに記載する水系透明導電性塗料によって形成された透明導電性塗膜。
〔5〕上記[1]〜上記[3]の何れかに記載する水系透明導電性塗料を用い、ポリエステルフィルム(ヘーズ2.0%、全光透過率90%)を基材とし、該基材の表面に塗布し、10分間自然乾燥した後にさらに70℃で10分間加熱乾燥して形成された塗膜であって、膜厚5μmにおいて、塗膜の比全光透過率が90%以上、基材を含むヘーズ値が3.0%以下であり、JIS K5400に規定するクロスカット試験の残存率が80%以上である透明導電性塗膜。
本発明の水系透明導電性塗料は、導電粉末の分散性に優れており、塗料中で導電粉末が均一に分散しているので、導電粉末の含有量が比較的少なくても、高い導電性を有し、かつヘーズ値が小さく、優れた透明性を有する透明導電性塗膜を形成することができる。
また、本発明の水系透明導電性塗料は熱硬化性であるので、UV硬化性のものと異なり、紫外線照射手段などを必要とせずに成膜することができるので、実施し易く、適用範囲も広い。
また、本発明の塗料は水系塗料であり、多量の有機溶媒が含まれていないので、有機溶媒による環境汚染を生じない。さらに、本発明の水系透明導電性塗料は、分散剤を用いる必要がないので、成膜したときに経時的に分散剤が染み出すブリートアウトを引き起こす問題がなく、安定な塗膜を形成することができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の導電性塗料は、導電粉末の水分散液と水性の熱硬化性樹脂とを混合してなる分散剤を含まない水系透明導電性塗料であり、導電粉末として平均粒子径が10〜300nmのアンチモンドープ酸化スズ粉末、インジウムドープ酸化スズ粉末、アンチモンフリー酸化スズ粉末、またはリンドープ酸化スズ粉末を用い、水性の熱硬化性樹脂としてウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、またはシリコンアクリル樹脂を用い、
上記導電粉末の水分散液をミルで分散処理してさらに遠心分離することによって、
分散後の導電粉末の累積重量50%粒子径(D50)が50〜80nmであって、
分散前の導電粉末の平均一次粒子径(DT50)と分散後のD50との比〔D50/DT50〕が2.5〜8.0になるように、または、
分散前の導電粉末のBET比表面積(B0)と分散後のBET比表面積(B1)の比〔B0/B1〕が0.64〜0.68になるように、
これらの範囲を外れる粗粒を分離して〔D50/DT50〕2.5〜8.0または〔B0/B1〕0.64〜0.68にした導電粉末水分散液を用いることを特徴とする水系透明導電性塗料である。
本発明において、導電粉末としては、酸化スズ粉末、Sbドープ酸化スズ粉末(ATO)、Inドープ酸化スズ(ITO)粉末、Alドープ酸化スズ粉末などの酸化スズ系粉末、あるいは、希土類、アルミニウム、リン、チタン、亜鉛、インジウム、スズ、アンチモン、タングステン、これらをドープもしくは複合した酸化物を用いることができる。また、導電粉末は二種以上を混合して用いても良い。
導電粉末の平均粒子径は10〜300nmが好ましい。粒子径がこれより小さいと導電粉末が相互に接触し難くなったり、または接触しても粒子どうしの接触抵抗が高くなるので、少量の導電粉末によって高い導電性を得るには適さない。一方、粒子径がこれより大きいと成膜したときにヘーズを生じ、透明性が低下する傾向がある。
本発明の水系透明導電性塗料は、平均粒子径が10〜300nmの導電粉末を分散させた水分散液と水性樹脂とを混合して製造される。この水分散液は、分散剤を加えないで、導電粉末の分散前のBET比表面積(B0)と分散後のBET比表面積(B1)の比〔B0/B1〕が0.50〜0.85の範囲内のものが好ましい。
一般に有機系の導電粉末分散液は、高分子分散剤を添加して導電粉末を有機溶液に懸濁させた後にミル等で分散処理することによって、導電粉末の凝集を抑制しているが、本発明の上記水分散液は、好ましくは、上記粒子径の導電粉末を、分散剤を用いずに水と共にミル等に入れ、分散処理して上記比表面積比〔B0/B1〕を0.50〜0.85に調整したものである。
BET比表面積の比〔B0/B1〕が0.50未満であると、粉砕された導電粉末の表面活性が高くなって導電粉末の凝集や網目構造が多くなりすぎ、粘性の増加などのために導電粉末の分散性が低下する。一方、上記比表面積比〔B0/B1〕が0.85より大きいものは、分散液中で導電粉末が均一に分散されず、残存する粗大粒子等によって導電粉末が沈降しやすくなる。上記比表面積比〔B0/B1〕を0.50〜0.85に調整することによって、導電粉末の分散性が良く、沈降を生じない高分散性の水分散液を得ることができる。実施例1〜4には比表面積比〔B0/B1〕0.64〜0.68の試料A1〜A6が記載されている。
上記水分散液の分散状態は、分散前の導電粉末の平均一次粒子径(DT50)に対する分散後の累積重量50%粒子径(D50)の比〔D50/DT50〕によっても表される。本発明で用いる水分散は、この比〔D50/DT50〕が1.1〜9.0のものである。分散前後の粒子径比〔D50/DT50〕が上記範囲内であるものは、導電粉末が分散後に殆ど凝集せず、むしろ分散時の粉砕処理によって粒子径(DT50)が分散前よりも小さくなっており、水中での導電粉末の分散性が高い。実施例1〜4には粒子径比〔D50/DT50〕2.5〜8.0の試料A1〜A6が記載されている。
このような導電粉末の分散性に優れた水分散液は、導電粉末の懸濁液をミル等で分散処理し、さらに遠心分離等によって導電粉末の粗粒子を分離する水分散工程において、分散力(ビーズミル等による分散処理)ないし分級力(遠心分離等による分級処理)を制御し、さらに温度管理を適切に行うことによって調製することができる。
上記分散処理において、分散力や分級力が強すぎると、導電粉末粒子が細かくなるので、この塗料によって形成した塗膜の透明性は向上するが、粒子が細かくなり過ぎるために、塗膜の導電性が低下し、また水分散液の生産性も低下する。一方、分散力および分級力が弱すぎると適切な分散状態にならない。分散前後の粒子径比が上記範囲内のものは、適切な分散条件下で調製されているので、分散剤を添加しなくても導電粉末が殆ど凝集せず、粗大粒子を含まない分散性の高い水分散液を得ることができる。
また、水分散液の調製工程において、液の温度は40℃〜80℃が好ましい。温度が高すぎると凝集粒子が多く発生してしまい、温度が低すぎると凍結および粘度アップによる分散不足が起こる。
以上のように、粒子径が10〜300nmの導電粉末を水に懸濁させた後に、分散前と分散後のBET比表面積の比が0.50〜0.85になるように、または分散前の導電粉末の平均一次粒子径(DT50)に対する液中の累積重量50%粒子径(D50)の比〔D50/DT50〕が1.1〜9.0になるように、導電粉末懸濁液をミルで分散処理し、さらに遠心分離によって導電粉末の粗粒子を分離し、この水分散液と水性塗料成分の熱硬化性樹脂とを混合して水系透明導電性塗料を得ることができる。
上記水系導電性塗料において、塗料中の導電粉末の分散性は水分散液の分散性による影響が大きい。本発明の水系導電性塗料は、水分散液中の導電粉末が高い分散性を有するので、塗料中においても分散剤を必要とせずに導電粉末が殆ど凝集せずに均一に分散し、優れた分散性を有する。
具体的には、塗料においても、分散剤を必要とせず、分散前の導電粉末の平均一次粒子径(DT50)に対する分散後の累積重量50%粒子径(D50)の比〔D50/DT50〕が、水分散液の場合と同様に、1.1〜9.0である水系塗料を得ることができる。
また、本発明の水系透明導電性塗料は導電粉末の分散性が良いので、分散剤を含まなくても、5000rpmの遠心分離下において導電粉末が沈降しない。因みに、導電粉末を配合した従来の有機系導電性塗料は、分散剤を使用して導電粉末の分散性を保っており、分散剤を含有しないものは、概ね5000rpmの遠心分離下において導電粉末が分離する。
本発明の水系透明導電性塗料の樹脂成分には水性の熱硬化性樹脂を用いる。水性の熱硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、またはシリコンアクリル樹脂が用いられる。なお、これらの樹脂は塗料中の水分量に制限の無いエマルションタイプまたはディスパージョンタイプが好ましい。
本発明の水系透明導電性塗料は、分散剤を含まずに適度な粒子径の導電粉末が均一に分散しているので、曇りが殆どない透明性の高い塗膜を形成することができる。一般に、従来の有機系塗料は分散剤を加えることによって導電粉末の分散性を高めており、分散剤を添加しない有機系塗料では導電粉末の分散性が低いので、ヘーズ値が高く、全光透過率が低い。一方、本発明の水系塗料では、分散剤を必要とせずに、ヘーズ値が小さく全光透過率が格段に高い透明性に優れた塗膜を形成することができる。
具体的には、本発明の水系塗料は、塗布後、熱硬化して成膜した膜厚5μmの塗膜の比全光透過率が90%以上であって、ヘーズ値が3.0%以下である透明導電膜を形成することができる。なお、上記比全光透過率は、塗膜と基材とを通過した全光透過率[E1]と、基材のみの全光透過率[E0]との比(比全光透過率=[E1]/[E0])によって表され、この数値が大きいほど透明性が高い。
本発明の水系透明導電性塗料は、適度な粒子径の導電粉末が均一に分散しているので、導電粉末の含有量が少なくても高い導電性を有する塗膜を形成することができる。例えば、導電粉末としてATO粉末を用い、膜厚5μmに成膜したときに、導電粉末と樹脂の量比が70/30〜50/50の範囲で、表面抵抗が1×108Ω/□以下の導電性に優れた塗膜を形成することができる。具体的には、導電粉末の含有量に応じて以下のような導電性を有する。
(イ)導電粉末70部に対して樹脂30部であるとき、上記塗膜の表面抵抗は1.2×106Ω/□と格段に低い。(ロ)導電粉末と樹脂が何れも50部の場合でも上記塗膜の表面抵抗は6.2×107Ω/□と低い。(ハ)導電粉末量が樹脂よりも少なく、導電粉末40部であって樹脂60部の場合でも、上記塗膜の表面抵抗は6.1×1010Ω/□程度である。
なお、一般に従来の導電性塗料では、導電粉末としてATO粉末を用いて表面抵抗5×105〜5×108Ω/□程度の導電性を得るには、樹脂に対する導電粉末の量比が1.5倍以上必要とし、本発明の水系導電性塗料よりも導電粉末の含有量が格段に多い。
以上のように、本発明で用いる導電粉末の水分散液、あるいは水分散液を用いて製造した水系透明導電性塗料は、分散剤を必要とせずに導電粉末が高い分散性を有する。なお、塗料の基材への濡れ性や出来上がった塗膜の成膜性を改善する少なくとも1種の添加剤を添加することも出来る。
本発明の水系導電性塗料は熱硬化性であるので成膜工程が簡単であり、例えばUV照射などの必要がない。従って、特別な装置を必要とせずに容易に実施することができる。また、PETフィルムなどに対して密着性が非常に良く、耐久性に優れた透明導電膜を形成することができる。

以下に本発明の実施例を比較例と共に示す。なお、各例において、アンチモンドープ酸化スズ粉末(ATO粉末)およびスズドープ酸化インジウム粉末(ITO)は株式会社ジェムコ社製品である。粉末の粒子径は堀場製作所社製品LB550を用いて測定した。塗料は#3のワイヤーバーを用いて、ポリエステルフィルム(厚み100μm、ヘーズ2.0%、全光透過率90%)の表面に塗布し、10分間自然乾燥した後にさらに70℃で10分間加熱乾燥して塗膜を形成した。塗膜と基材とを通過した全光透過率[E1]と、基材のみの全光透過率[E0]とを測定して比全光透過率([E1]/[E0])を求めた。また、塗料について遠心分離下(5000rpm)の沈降性を調べた。
〔実施例1〕
導電性粉末としてATO粉末(比表面積75m2/g、商品名T−1)を用い、これを水に懸濁させてpHを7に調整し、ビーズミルで分散処理した後、遠心分離して粗粒をカットし、メジアン径(累積重量が50%となる粒子径:D50)50nm、粒子径比〔D50/DT50〕2.5、BET比0.65の導電粉末水分散液を調製した。この分散液の溶媒を乾燥して得た粉末の比表面積を測定すると120m2/gであった。この水分散液を固形分濃度17.7%に希釈した。この分散液100gと水系熱硬化型樹脂として熱硬化型ウレタン樹脂水溶液(ディスパージョンタイプ)33.4gを混合して水系透明導電性塗料を調製した。この塗料のD50は60nm、粒子径比〔D50/DT50〕3.0であった。塗料中の導電性粉末/熱硬化型樹脂バインダー比は70/30である。この塗料を用いてポリエステルフィルム表面に塗膜(膜厚5μm)を形成した。この塗膜について、表面抵抗、ヘーズ、全光透過率、クロスカット試験(JIS K5400)による密着性を測定した。結果を表1に示す(試料A1)。

〔実施例2〕
上記試料A1と同様のATO粉末を用い、この粉末と樹脂の量比を表1に示すように調整した以外は実施例1と同様にして水系透明導電性塗料を調製した。この塗料のD50および粒子径比〔D50/DT50〕を表1に示す。この塗料を用いて塗膜(膜厚5μm)を形成した。この塗膜について実施例1と同様の測定を行なった。結果を表1に示す(試料A2、A3、B1)。
〔実施例3〕
導電粉末として、アンチモンフリー酸化スズ粉末(商品名S-2000)と、リンドープ酸化スズ粉末(株式会社ジェムコ社製品:NPTO)を用いること以外は実施例1と同様にして水系透明導電性塗料を調製した。この塗料のD50および粒子径比〔D50/DT50〕を表1に示す。この塗料を用いて塗膜(膜厚5μm)を形成した。この塗膜について実施例1と同様の測定を行なった。結果を表1に示す(試料A4、A5)。
〔実施例4〕
導電性粉末としてITO粉末(比表面積45m2/g、商品名ITO)を用い、これを水に懸濁させてpHを5に調整し、ビーズミルで分散処理した後、遠心分離して粗粒をカットし、メジアン径(累積重量が50%となる粒子径:D50)80nm、分散後の粒子径比〔D50/DT50〕2.8、分散後のBET比0.64の導電粉末水分散液を調製した。この分散液の溶媒を乾燥して得た粉末の比表面積を測定すると70m2/gであった。この水分散液を固形分濃度17.7%に希釈した。このITO水分散液を用い、実施例1と同様にして水系導電性塗料を調製した。この塗料のD50および粒子径比〔D50/DT50〕を表1に示す。この塗料を用いて塗膜(膜厚5μm)を形成した。この塗膜について実施例1と同様の測定を行なった。結果を表1に示す(試料A6)。
〔実施例5〕
水系熱硬化型樹脂として、アクリルウレタン系熱硬化型樹脂水溶液(エマルジョンタイプ)とシリコンアクリル系熱硬化型樹脂水溶液(エマルジョンタイプ)を用いること以外は実施例1と同様にして水系透明導電性塗料を調製この塗料のD50および粒子径比〔D50/DT50〕を表1に示す。この塗料を用いて塗膜(膜厚5μm)を形成した。この塗膜について実施例1と同様の測定を行なった。結果を表1に示す(試料B2、B3)。
〔比較例1〕
実施例1と同様にしてATO濃度17.7%の水分散液を調製した。このATO水分散液100gと、40重量%水溶性UV硬化型樹脂水溶液(エマルジョンタイプ)43.2g、および光重合開始剤0.34gを混合して、水系透明導電性塗料を調製した(塗料中の導電粉末/UV硬化型樹脂比は50/50)。この塗料中の導電粉末のD50は65nm、粒子径比〔D50/DT50〕は3.3であった。この塗料を用い、実施例1と同様にしてポリエステルフィルム表面に塗布した後に10分間自然乾燥を行い、さらに70℃で1分間乾燥させた後、紫外線を照射して樹脂を硬化させて塗膜(膜厚5μm)を形成した。この塗膜について実施例1と同様の測定を行なった。結果を表1に示す(試料C1)。
〔比較例2〕
水系熱硬化型樹脂として、ポリウレタン・シリカハイブリッド系熱硬化型樹脂水溶液(ディスパージョンタイプ)と、アクリル系熱硬化型樹脂水溶液(エマルジョンタイプ)とをおのおの用いた以外は比較例1と同様にして水系透明導電性塗料を調製し、塗膜(膜厚5μm)を形成した。この塗膜について比較例1と同様の測定行なった。結果を表1に示す(試料C2、C3)。試料C2のポリウレタン・シリカハイブリッド系樹脂は含有されているシリカが基材のPETに対して馴染みが悪いために密着性が低く、クロスカット試験が良くない。一方、試料C3のアクリル系熱硬化型樹脂を用いた塗料は、一般にアクリル樹脂がPETに対して非常に濡れ性が悪いため、この塗料C3もクロスカット試験が良くない。
〔比較例3〕
表1に示すATO粉末を用い、分散溶媒を用いずにイソプロピルアルコールに分散させ、粉末濃度30%の有機系分散液を調製した。この分散液100gを光重合開始剤と共にUV硬化型樹脂と混合し、導電粉末/UV硬化型樹脂の量比50/50の有機系塗料を調製した。この塗料をPET表面に塗布した後にUV照射して塗膜(膜厚5μm)を形成し、その特性を測定した。結果を表1に示す(試料C4)。
表1に示すように、本発明の試料A1〜A6、B1〜B3は、何れも、遠心分離下(5000rpm)においても導電粉末が沈降せず、しかも導電粉末の含有量が従来より少なくても、表面抵抗が大幅に低い塗膜を形成することができる。また、本発明の塗料によって形成した塗膜のヘーズは何れも3.0以下であり、比全光透過率は95以上である。また、クロスカット試験による密着性は何れも良好である。一方、比較試料C1〜C3は塗膜の表面抵抗が高く、密着性が不良であり、一部はヘーズも高い。また、分散剤を用いない有機系塗料の比較試料C4は導電粉末の分散性が低く、塗膜の表面抵抗も高い。
Figure 0005201436

Claims (5)

  1. 導電粉末の水分散液と水性の熱硬化性樹脂とを混合してなる分散剤を含まない水系透明導電性塗料であり、導電粉末として平均粒子径が10〜300nmのアンチモンドープ酸化スズ粉末、インジウムドープ酸化スズ粉末、アンチモンフリー酸化スズ粉末、またはリンドープ酸化スズ粉末を用い、水性の熱硬化性樹脂としてウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、またはシリコンアクリル樹脂を用い、
    上記導電粉末の水分散液をミルで分散処理してさらに遠心分離することによって、
    分散後の導電粉末の累積重量50%粒子径(D50)が50〜80nmであって、
    分散前の導電粉末の平均一次粒子径(DT50)と分散後のD50との比〔D50/DT50〕が2.5〜8.0になるように、または、
    分散前の導電粉末のBET比表面積(B0)と分散後のBET比表面積(B1)の比〔B0/B1〕が0.64〜0.68になるように、
    これらの範囲を外れる粗粒を分離して〔D50/DT50〕2.5〜8.0または〔B0/B1〕0.64〜0.68にした導電粉末水分散液を用いることを特徴とする水系透明導電性塗料。
  2. ポリエステルフィルム(厚み100μm、ヘーズ2.0%、全光透過率90%)を基材とし、該基材の表面に塗布し、10分間自然乾燥した後にさらに70℃で10分間加熱乾燥して膜厚5μmの塗膜を形成したときに、塗膜の比全光透過率が90%以上であって、基材を含むヘーズ値が3.0%以下である請求項1に記載する水系透明導電性塗料。
  3. 請求項2に記載する塗膜を形成したときに、該塗膜についてJIS K5400に規定するクロスカット試験の残存率が80%以上である請求項1〜請求項2の何れかに記載する水系透明導電性塗料。
  4. 請求項1〜請求項3の何れかに記載する水系透明導電性塗料によって形成された透明導電性塗膜。
  5. 請求項1〜請求項3の何れかに記載する水系透明導電性塗料を用い、ポリエステルフィルム(ヘーズ2.0%、全光透過率90%)を基材とし、該基材の表面に塗布し、10分間自然乾燥した後にさらに70℃で10分間加熱乾燥して形成された塗膜であって、膜厚5μmにおいて、塗膜の比全光透過率が90%以上、基材を含むヘーズ値が3.0%以下であり、JIS K5400に規定するクロスカット試験の残存率が80%以上である透明導電性塗膜。
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