JP5200810B2 - 無端金属ベルトの製造方法 - Google Patents
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Description
従来の無端金属ベルトの製造方法では、素材鋼板としてのマルエージング鋼の鋼板ロールをまず所用大きさの鋼板に切断し、次に切断した鋼板を筒状に湾曲させた状態で、その端部を溶接して筒状のドラム部材に形成する。その後、ドラム部材に対して、溶接した部位の合金組成を均質化するために一次溶体化処理が施され、次に前記ドラム部材を所定幅で切断して、複数のリング状部材を形成する。その後、リング状部材を圧延して、ベルト状部材を形成する。
このようにして形成されたベルト状部材は、圧延等による加工応力を除去するために二次溶体化処理が施され、その後、より強度を向上させるために時効処理や窒化処理が施され、所定の靭性および強度を有する無端金属ベルトが製造される。
特許文献1に示される無端金属ベルトの製造方法では、窒化処理が確実に施されるようにするために、リング状部材に対して、一次溶体化処理を施した後に、例えば、バレル研磨をすることによって、リング状部材の表面を0.5〜3μm程度の厚さで除去し、一次溶体化処理時に形成された元素濃化層および酸化物層を機械的に除去している。これにより、窒化処理時に、ベルト状部材の表裏面に窒化処理を阻害する窒素化合物が生成することを防止して、無端金属ベルトの強度を確保する構成としている。
窒化処理が阻害されるその他の原因としては、被処理物(ベルト状部材)の表面に付着したCaやK等の無機系物質によるものが挙げられ、無機系物質が付着した部位では部分的に窒化処理が阻害されることが判明してきた。
加工油の除去が不十分であると、残された加工油は二次溶体化処理時に蒸発(気化)して浸炭性のガスとなる。無端金属ベルトは、二次溶体化処理の際に浸炭性のガスに触れると、その表裏面には軽度の浸炭処理が施されてしまうが、浸炭処理が施された部位では、窒化処理が阻害されてしまう。つまり、二次溶体化処理の前には、加工油を完全に除去しておくことが必要であり、このため、洗浄工程は無端金属ベルトの製造方法において不可欠な工程となっていた。
さらに特許文献1に開示された従来技術やその他の従来技術では、製造した無端金属ベルトの中には、窒化不良による強度不足のために不良品と判断されるものが相当数含まれており、無端金属ベルトの歩留まりに改善の余地が残されていた。
まず始めに、本発明の一実施例に係る無端金属ベルト7の製造方法について、図1を用いて説明をする。図1は本発明の一実施例に係る無端金属ベルトの製造工程の流れを示す模式図である。
本実施例において製造される無端金属ベルト7の素材鋼は、マルエージング鋼であり、その組成が、Ni:17〜19%、Co:7〜13%、Mo:3.5〜4.5%、Ti:0.3〜1%、Al:0.05〜0.15%、C:0.03%以下、Fe:残り全部、となるものを使用している。
(a)鋼板ロール切断工程では、前述した組成を有するマルエージング鋼の鋼板ロール1から、所用大きさの鋼板2が切り出される。切り出された鋼板2は、端部同士を付き合わせるようにして、円筒状に湾曲される。
(b)溶接工程では、円筒状に湾曲された鋼板2aの端部同士を付き合わせた部位を溶接して、筒状のドラム3が形成される。
(c)一次溶体化処理工程では、筒状に形成されたドラム3に対して、溶接部3aの合金組成を均質化させるための一次溶体化処理が施される。この一次溶体化処理の過程では、ドラム3の表裏面には、TiやAl等の酸化物層および元素濃化層が形成される。
(d)リング状部材切断工程では、ドラム3が所定幅に切断されて、複数のリング状部材4・4・・・が生成される。
(e)バレル研磨工程では、リング状部材4・4・・・がバレル研磨されて、(c)一次溶体化処理工程において形成された酸化物層および元素濃化層が機械的に除去される。
(f)圧延工程では、(e)バレル研磨工程によって表層(即ち、酸化物層および元素濃化層)が除去されたリング状部材4を圧延し、ベルト状部材5を形成する。
圧延が行われる際には、冷却や摩擦低減等の目的で加工油6を使用するが、本発明の一実施例に係る無端金属ベルト7の製造方法では、鉱物油にエステル系化合物を添加したものであって、無機系物質を含んでいない加工油で沸点が220℃のものを使用するようにしている。さらに、圧延後には圧延機(図示せず)内でエアブローを行って、加工油6の持ち出し量を少なくするようにしている。
尚、本実施例では、加工油として、鉱物油にエステル系化合物を添加したものを使用した場合を例示しているが、本発明に係る無端金属ベルトの製造方法において使用する加工油を限定するものではなく、無機系物質を含まない加工油であれば、他の原料からなる加工油を使用することも可能である。
(g)加工油除去工程では、(f)圧延工程においてベルト状部材5に付着した加工油6が除去される。
従来の無端金属ベルトの製造方法では、ここで(g)加工油除去工程ではなく、洗浄工程を設けて、洗浄剤を使用してベルト状部材5を洗浄することによって、加工油を除去していたが、本発明の一実施例に係る無端金属ベルト7の製造方法では、洗浄工程は設けず、洗浄剤を使用せずに加工油6を除去する構成としている。
(h)二次溶体化処理工程では、ベルト状部材5に対して、圧延時に生じた加工応力等を除去するための二次溶体化処理が施される。二次溶体化処理では、ベルト状部材5が、該ベルト状部材5を組成する合金が固溶体に溶解される温度(後述する温度T1)まで加熱され、その温度T1で十分な時間保持される。そして、ベルト状部材5を、その温度T1から常温まで冷却することにより、二次溶体化処理を完了する。
図2に示す如く、本発明の一実施例に係る無端金属ベルト7の製造方法では、(g)加工油除去工程および(h)二次溶体化処理工程においてメッシュベルト炉8を使用して、圧延工程においてベルト状部材5に付着した加工油6を除去する構成としている。
尚、本実施例では、メッシュベルト炉8の炉内8a・8b・8cを窒素ガス(不活性ガス)雰囲気に保持して二次溶体化処理を行う例を示しているが、例えば、炉内8a・8b・8cを水素ガス(還元ガス)雰囲気に保持して、二次溶体化処理を行う構成とすることも可能である。
加工油除去ゾーンBでは、炉内8aの温度を300〜400℃に保持する構成としている。本実施例では、加工油除去ゾーンBにおいて、ベルト状部材5の温度を300℃まで昇温する。すると、本実施例で使用している加工油6の沸点は220℃であるため、ベルト状部材5に付着している加工油6を蒸発(気化)させることができる。ベルト状部材5が加工油除去ゾーンBを通過する時間tbや、炉内8aの温度を調整することによって、ベルト状部材5に付着している加工油6をほぼ完全に除去することが可能となる。
このような構成により、加工油6を蒸発させることによって、ベルト状部材5に付着した加工油6を除去することが可能となる。
このような構成により、洗浄剤を使用した洗浄工程を行わずに、容易に加工油6を除去することが可能となる。
二次溶体化処理ゾーンCは、さらに溶体化処理ゾーンC1と冷却ゾーンC2に分かれており、溶体化処理ゾーンC1では、炉内8bの温度を780〜850℃に保持する構成としている。ベルト状部材5は、メッシュベルト8dによって搬送され、溶体化処理ゾーンC1を通過する間に、ベルト状部材5を組成する合金が固溶体に溶解される温度T1まで加熱され、その温度T1で十分な時間保持される。本実施例では、温度T1=800℃としており、その温度が780〜850℃に保持されている溶体化処理ゾーンC1において、ベルト状部材5の温度を800℃まで昇温させて、かつ、ベルト状部材5を、時間tc1を掛けて溶体化処理ゾーンC1を通過させる構成としている。また、時間tc1は、十分な保持時間を確保できる期間としている。
このような構成により、二次溶体化処理ゾーンCに、加工油除去ゾーンBで蒸発した加工油6(浸炭性のガス)が流入することが防止でき、これにより、(h)二次溶体化処理工程において、ベルト状部材5に浸炭処理が施されることを確実に防止することが可能となる。
二次溶体化処理工程を完了する。
このため、二次溶体化処理ゾーンCに、無機系物質が付着したベルト状部材5が供給されることがなく、無機系物質が付着したまま(h)二次溶体化処理工程が行われることに起因して、窒化処理が阻害されることがなくなる。
このような構成により、洗浄剤を使用した洗浄工程を行わずに、ベルト状部材5に付着した加工油6を除去することが可能となる。また、これにより、(h)二次溶体化処理工程において、ベルト状部材5に浸炭処理が施されることを確実に防止でき、かつ、(m)窒化処理工程において、無機系物質によって、ベルト状部材5に対する窒化処理が阻害されることを確実に防止することが可能となる。
そして、本発明の一実施例に係る無端金属ベルト7の製造方法によれば、(m)窒化処理工程において、ベルト状部材5に対して窒化処理が確実に行われるようになることから、無端金属ベルト7の歩留まりが改善される。
5 ベルト状部材
6 加工油
7 無端金属ベルト
8 メッシュベルト炉
11 ガスカーテン
Claims (4)
- 金属製のリング状部材を圧延することによって、
無端のベルト状部材を成形する圧延工程と、
前記圧延工程の後に行われ、
前記ベルト状部材を溶体化処理する溶体化処理工程と、
前記溶体化処理工程の後に行われ、
前記ベルト状部材を窒化処理する窒化処理工程と、
を備える無端金属ベルトの製造方法であって、
前記圧延工程の後に行われ、
前記圧延工程において使用され前記ベルト状部材に付着した加工油を除去する加工油除去工程をさらに備え、
前記圧延工程において、
前記加工油は、無機系物質を含まないものを使用して、
前記加工油除去工程において、
前記ベルト状部材を、前記加工油の沸点以上の温度であって、前記ベルト状部材に対する浸炭処理が進展する温度未満の温度に加熱して、前記ベルト状部材に付着した前記加工油を蒸発させることによって、前記加工油を除去した後に、
前記溶体化処理工程を行う、
ことを特徴とする無端金属ベルトの製造方法。 - 前記加工油除去工程および前記溶体化処理工程は、
メッシュベルト炉を用いて行われ、
前記メッシュベルト炉は、
前記加工油除去工程が行われる加工油除去ゾーンと、
前記溶体化処理工程が行われる溶体化処理ゾーンと、
を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の無端金属ベルトの製造方法。 - 前記メッシュベルト炉は、
前記加工油除去ゾーンと、
前記溶体化処理ゾーンと、の境界部に、
不活性ガスまたは還元ガスによるガス層を形成するガスカーテンを備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の無端金属ベルトの製造方法。 - 前記加工油除去ゾーンは、
前記加工油の沸点以上の温度に保持される、
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の無端金属ベルトの製造方法。
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