JP3871211B2 - 無端金属ベルトの製造方法およびその製造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、無端金属ベルトの製造方法およびその製造装置に関し、より詳しくは、無端金属ベルトの製造過程に生じる窒化ムラの発生を防止するための無端金属ベルトの製造方法およびその製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
マルエージング鋼を用いた金属ベルトでは、疲労強度を向上させるため、窒化処理を施す例が多く報告されている(例えば、特許文献1参照)。
いずれの例においてもその課題となっているのが、「表面のTi,Alなどの酸化物が窒化を阻害しており、どのようにすればうまく窒化できるか」についてである。例えば、窒化前に酸洗いして、これらの酸化物を除去したり(特許文献1参照)、窒化の雰囲気ガスとしてフッ素ガスや硫化水素などを使用して、窒化阻害要因を除去する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
この表面のTi,Alなどの酸化物は、リングを圧延してフープとなした後の溶体化処理時に生成する。通常溶体化処理は酸化を防止するため真空炉で行うことが多い(例えば、特許文献3参照)。また、1〜10%の水素を含む窒素雰囲気で露点をー7〜0℃に管理することにより、この問題を回避する方法も開示されている(特許文献4参照)。
【0004】
しかし、窒化処理前に表面の窒化阻害因子を除去する方法では、製造工程が増えるためコスト高になったり、阻害因子を均一に除去できずに製品の精度を悪化させたり、窒化深さのバラツキを発生させたりする。また、窒化ガス中にフッ素系ガスや硫化水素を使用する方法では、高価なガスを使用することによるコスト高や、ガス漏れによる危険性が大きい。また、真空炉で溶体化処理を実施しても、表面のTi,Alの酸化物の生成を完全に無くすことはできない。真空炉ではワークの昇温速度が遅いため処理時間が長くなるのに加え、設備費も高価であるため、コスト高となる。さらに、1〜10%の水素を含む窒素雰囲気で露点を管理する方法でも、特許文献4に記載されている露点−7℃〜0℃では、「本実施形態では、赤い部分(Tiの酸化物)は不連続であり、Tiの酸化は、従来の真空炉における溶体化処理を行ったものと同程度であることが確認された。」と記載されているとおり(特許文献4 段落0032〜0033参照)、表面のTi酸化物を完全に無くすことはできない。
【0005】
真空炉で酸素を完全に0にするのは不可能であり、工業的な真空炉で得られる1Paから1×10-4Pa程度の真空では、高真空にするほど(残留ガスを少なくするほど)表面のTi,Alの濃化は激しくなり(酸化厚さは小さくなるが、表面の濃度が上昇する)、かえって窒化を阻害することになる。
【0006】
また、1〜10%の水素を含む窒素雰囲気で露点0℃以上では、Mo,Feの酸化が発生すると記載されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−337452号公報
【特許文献2】
特開2000−87214号公報
【特許文献3】
特開2001−26857号公報
【特許文献4】
特開2001−121232号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、窒化処理により均一な窒化処理層を得る無端金属ベルトの製造方法およびその製造装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の無端金属ベルトの製造方法は、円筒状に曲げたマルエージング鋼板の端部同士を溶接してドラムに形成する溶接工程と、溶接後のドラムに溶体化処理を施す第1溶体化処理工程と、第1溶体化処理を施されたドラムを所定幅に裁断してリングを形し、このリングを圧延してフープとする圧延工程と、圧延されたフープに溶体化処理を施す第2溶体化処理工程と、第2溶体化処理されたフープを所定周長に微調整するエキスパンド工程と、エキスパンドしたフープを窒化処理する窒化処理工程と、を有する無端金属ベルトの製造方法において、第2溶体化処理工程は、水分を0.5〜2容量%含有する窒素と水素の混合ガスであり露点が0℃を超え15℃以下である加湿雰囲気中で、溶体化温度を790〜900℃、かつ、前記フープが600℃以上に加熱される時間を15分以下とする工程であることを特徴とする。
【0011】
本発明の無端金属ベルトの製造装置は、リングを圧延したフープ状の無端金属ベルトに第2溶体化処理を施す溶体化処理炉を具備する無端金属ベルトの製造装置であって、フープを加熱冷却する溶体化処理炉と、溶体化処理炉を貫通してフープを搬送する搬送手段と、露点管理した雰囲気ガスを前記溶体化処理炉内へ供給する雰囲気ガス供給手段とから構成され、前記雰囲気ガス供給手段は、窒素ガスを加湿する窒素湿潤器と、窒素ガスの流量を計測する流量計と、窒素ガスに水素ガスを混合するガスミキサと、溶体化処理炉内の露点を測定する露点計と、この露点計のデータによって窒素ガスの流量を制御するマスフローコントローラとを備えることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の無端金属ベルトの製造方法は、円筒状に曲げた鋼板の端部同士を溶接してドラムに形成する溶接工程と、溶接後のドラムに溶体化処理を施す第1溶体化処理工程と、第1溶体化処理を施されたドラムを所定幅に裁断してリングを形し、このリングを圧延してフープとする圧延工程と、圧延されたフープに溶体化処理を施す第2溶体化処理工程と、第2溶体化処理されたフープを所定周長に微調整するエキスパンド工程と、エキスパンドしたフープを窒化処理する窒化処理工程と、を有する無端金属ベルトの製造方法において、第2溶体化処理工程は、露点が0〜15℃の加湿雰囲気で施す工程であることを特徴とする。
【0013】
本発明の無端金属ベルトの鋼板は、Cが0.03%以下の低炭素鋼であり、17〜19%Ni、7〜13%のCo、3.5〜4.5%のMo、0.3〜1%のTi、0.05〜0.15%のAlを含むマルエージング鋼であることが望ましい。しかし、本発明の無端金属ベルトの製造方法では、マルエージング鋼板はこの組成のマルエージング鋼に限定されることなく、Ti,Al,Moといった元素を含むマルエージング鋼であれば適用することができる。
【0014】
まず、上述したマルエージング鋼の薄板鋼材の素材(ステップ1)を帯鋼に切断した後(ステップ2)、この帯鋼をロール状に成形し(ステップ3)、洗浄後に突き合わせ部を溶接してドラム状に形成する(ステップ4)。その後、洗浄後に溶接部の組織の均一化を目的として、薄板鋼材の第1溶体化処理を行う(ステップ5)。
【0015】
次に、ドラム状の薄板鋼材を所定幅のリング部材(以下、本明細書においては、フープと称する)に切断し(ステップ6)、端部の形状修正およびバリ取りを目的として、このフープのバレル研磨/洗浄を行う(ステップ7)。その後、周長の粗調整および板厚調整の目的から、圧延を施される(ステップ8)。そして、洗浄(ステップ9)を行った後、加工応力の除去を目的として、フープの第2溶体化処理を行う(ステップ10)。続いて、フープの周長の微調整を行うためにフープをエキスパンド処理し(ステップ11)、しかる後に、フープの硬さ向上のため、洗浄後に窒化処理を施す(ステップ12)。
【0016】
以上のような無端金属ベルトの製造方法において、本発明は、ステップ10の第2溶体化処理工程に特色がある。すなわち、第2溶体化処理は、加湿装置によって加湿されたガス雰囲気で行う。フープに均一な窒化処理を行うには、この加湿雰囲気ガスは、露点が0℃を超え15℃以下であることが望ましい。露点が0℃以下では、Ti、Alの表面酸化となり、一方、15℃を越えると、Moの表面酸化となって好ましくない。より好ましくは5〜10℃である。
【0017】
フープの第2溶体化処理温度は、790℃〜900℃であることが好ましい。この温度が790℃未満では溶体化されず、900℃を越えると結晶粒が粗大化することがあるので適当ではない。より好ましくは820〜850℃である。なお、第2溶体化処理時間は、フープが600℃以上に加熱される時間が15分以下であることが望ましい。フープが600℃以上に加熱されると、Ti、Alの表面濃化が始まり、時間の経過とともに表面濃化が増大するので、Ti、Alの表面濃化を窒化処理を阻害しない程度に留めるためには15分以下であることが望ましい。より好ましくは1〜2分間である。
【0018】
なお、ここで、加湿雰囲気ガスは窒素と水素との混合ガスであり、水素は混合ガス全体を100容積%として1〜7容積%であることが好ましい。水素が1容積%未満では還元不足となり、一方、7容積%を越えると炉内への空気巻き込みによる爆発の危険があるので好ましくない。より好ましくは5〜7容積%である。
【0019】
前記のように本発明はステップ9の第2溶体化処理工程に特徴があり、被加熱物であるフープは、加湿された窒素と水素との混合ガス雰囲気中で加熱される。加熱によって、窒素ガス中に添加された水蒸気から分解した酸素は、母材内部へ浸透し、活性化したTiと結びつく、いわゆる内部酸化を生じる。
【0020】
ここで、母材中のTiの拡散速度より酸素の拡散速度の方が大きければ内部酸化は進行するが、酸素が不十分であれば、内部へ侵入する酸素が不足するためTiが表面に移動して外部酸化となる。本発明では、水蒸気の分解により得られる酸素を利用しているので、酸素が不十分となることはない。従って、母材表面においては、Tiの酸化物が形成される外部酸化の発生は少ない。
【0021】
母材に含有されるAlやMoもTiと同様の挙動を示すので、本発明の加湿雰囲気による第2溶体化処理を施すことにより、母材表面に窒化処理の阻害因子となるAlやMoなどの外部酸化物の形成も抑制することができる。
【0022】
溶体化処理温度を820℃とし、露点を変えた雰囲気ガス中で処理時間を5分と10分の2水準として第2溶体化処理したときの、母材表面からのTiの濃度分布をグロー放電発光分析で測定した。結果を図2に示す。図2の横軸は、母材表面からの深さを(μm)で示し、縦軸はTiの濃度を相対強度で示した。ここで、線アは露点が−40℃の雰囲気ガスで処理時間を10分間としたときの母材表面からのTiの濃度分布を示している。同様に、線イは露点−10℃で10分間、線ウは露点0℃で10分間、線エは露点0℃で5分間、線オは露点+8℃で5分間処理したときの母材表面からのTiの濃度分布を示している。なお、比較のために真空炉(1×10-4Pa)で30分間溶体化処理した場合の母材表面からのTiの濃度分布を線カで示した。
【0023】
図2に示すように、線カの真空炉で処理した場合が最もTiの表面濃化が大きく、次に露点−40℃、処理時間10分の線アが、他の加湿および処理条件に比べてTiの表面濃化が進んでいることが分かる。一方、露点が−10℃以上の線イ、ウ、エ、オはいずれも線アに比べてTiの表面濃化を大きく抑制できていることが理解できる。特に、線オで示す露点が8℃で処理時間が5分間の場合には、全く表面濃化が生じていないことが分かった。
(作用効果)
以上、本実施の形態における無端金属ベルトの製造方法においては、第2溶体化処理時に、水蒸気を含む加湿ガスを溶体化処理炉内へ供給するので、加熱処理に伴うTi,Al,Mo等の表面濃化が抑制される。その結果、後工程である窒化処理工程で、図3の断面模式図に示すように、フープ10の母材10aの表面に均一な厚さ(例えば、約30μm程度)の窒化処理層10bを形成することが可能になる。
【0024】
また、従来の無端金属ベルトの製造方法の工程においては、窒化処理工程には、2時間程度必要とされていたが、試験例で後述するように、本実施の形態においては約1時間程度の窒化処理ですむため、製造プロセス時間の短縮を図ることも可能となる。
【0025】
さらに、従来の場合、Ti,Al,Moなどの表面の濃化の激しいものでは、濃化層よりも内部においてTi,Al,Moなどの欠乏層が発生することがあった。この時効析出元素の欠乏層では時効処理後の硬さが低下し窒化処理による品質のバラツキとなることがあった。図4は、露点−40℃、処理時間10分間で処理した場合の母材表面からのTi濃度分布を示す図であるが、表面からの距離を図2よりも広い範囲で示している。母材内部の平均的なTi濃度は0.4程度であるが、表面から0.5μm程度入ったところでは約0.15と極端にTi濃度の低下していることが分かる。すなわち、略三角形で示した表面から約5μmの範囲がTi欠乏層Bであると判断することができる。
【0026】
しかし、本実施の形態における無端金属ベルトの製造方法においては、このような欠乏層が生じることがないので、深さ方向において均一な硬さを得ることが可能となる。
【0027】
なお、上記において第2溶体化処理雰囲気としては窒素と水素との混合ガスを用いた還元ガス雰囲気が望ましい。
(製造装置)
本発明の無端金属ベルトの製造装置は、リングを圧延したフープ状の無端金属ベルトに第2溶体化処理を施す溶体化処理炉を具備する無端金属ベルトの製造装置であって、フープを加熱冷却する溶体化処理炉と、溶体化処理炉を貫通してフープを搬送する搬送手段と、露点管理した雰囲気ガスを前記溶体化処理炉内へ供給する雰囲気ガス供給手段と、から構成されることを特徴とする。
【0028】
図5は本実施の形態における無端金属ベルトの製造装置200の概略構成を示す模式図である。本実施の形態における無端金属ベルトの製造装置200は、上記の無端金属ベルトの製造方法を実現可能とするもので、従来のバッチ処理形式とは異なり、連続処理方式であることが望ましい。
【0029】
本発明の無端金属ベルトの製造装置は、第2溶体化処理炉210と、フープを搬送する搬送手段220と、露点を管理した加湿雰囲気ガスを供給する雰囲気ガス供給手段230とから構成されている。
【0030】
第2溶体化処理炉210は片側にフープを供給する供給口213とフープを加熱する加熱ゾーン211と、加熱されたフープを冷却する冷却ゾーン212と、冷却されたフープを搬出する搬出口214とで構成され、供給口213と搬出口214とは窒素カーテン215により外部雰囲気から遮断されている。すなわち、炉内の加熱ゾーンと冷却ゾーンとの雰囲気は、露点管理された雰囲気ガスにより置換されていることが望ましい。
【0031】
フープを搬送する搬送手段220は、フープを連続的に溶体化処理炉210へ供給して、連続的に加熱冷却するための搬送手段であって、溶体化処理炉210をフープの供給口213から搬出口214へ貫通して、図示しない駆動手段によって矢印X方向へ回転する無限軌道であることが好ましい。例えば、メッシュベルトなどは好適である。
【0032】
また、露点を管理した加湿雰囲気ガスを供給する雰囲気ガス供給手段230は、窒素ガスを加湿する窒素湿潤器231と、流量計232と、窒素ガスに水素ガスを混合するガスミキサ233と、溶体化処理炉内の露点を測定する露点計234と、露点計234からのデータによって窒素ガスの流量を制御するマスフローコントローラ235とから構成されている。
【0033】
以上のような構成からなる無端ベルトの製造装置を用いて、圧延および洗浄されたフープを連続的に第2溶体化処理する。すなわち、搬送手段220に載置されたフープは、溶体化処理炉210の供給口213から窒素カーテン215を通過して加熱ゾーン211へ搬送される。なお、加熱ゾーンは790℃〜900℃の所望の溶体化温度に加熱されている。フープは1個ずつ順に加熱されるので、600℃以上に加熱される時間が15分以下となるように搬送速度を制御することが好ましい。加熱ゾーンを通過すると、フープは冷却ゾーンに搬送され冷却される。溶体化されたフープは搬出口214から炉外へ搬出される。なお、溶体化処理炉210内は、雰囲気ガス供給手段230によって供給される露点を管理された窒素と水素との混合ガスで置換されており、窒素カーテン215によって外部雰囲気とは遮断されている。
【0034】
このようにして第2溶体化処理を施されたフープは、引き続いて施される窒化処理によって、均一な窒化処理層を得ることができる。
【0035】
なお、以上の溶体化処理過程において、加湿雰囲気ガスの露点は以下のようにして調整するとよい。
【0036】
窒素と水素との混合ガス雰囲気の露点は通常−40℃以下になる。これを、0〜+15℃の露点にするには、酸素または、水蒸気を炉内へ導入すればよいが、安定した露点を保持するためには、図5および図6に示すように炉内導入窒素の一部aを窒素湿潤器(ウエッター)231を通して、その流量をマスフローコントローラ235で調整するとよい。
【0037】
窒素湿潤器231は、密閉構造となっており、内部の水(純水)236をヒータ237で温度調節できるようになっている。この水236の中へ窒素aを吹き込みバブリングすることにより、加湿することができる。排出される窒素ガスの露点は、その温度(水温)での飽和水蒸気となる。この加湿窒素ガスaを通常のドライの窒素ガスbに戻す経路には、テープヒータ238などで保温して配管内で結露しないようにするとよい。窒素湿潤器231を通すガス量をマスフローコントローラ235で調節することにより、炉内の露点を調節することができる。
【0038】
この窒素湿潤器231では、水温と湿潤器内の温度とを一定に保持することが重要である。このため、同じ温度に保持された予備槽を設けてそこから本槽へ減少した水量を補給するようにすることが望ましい。また、水温は、使用環境の外気温の最高温度より少し高めに設定するとよい。高温にするほど加湿された窒素ガス流量が少なくなり、調節が難しくなるからである。水温が40℃でドライ窒素(b)の流量が100L/minの場合の、加湿窒素ガス(a)の流量F(L/min)と露点T(℃)との関係を図7に示す。加湿窒素ガス(a)の流量Fが増加すると露点Tは0℃までは急激に上昇するが、0℃以上では放物線的に緩やかに上昇することが分かる。従って、水温40℃の窒素加湿器を使用して0〜+5℃の露点を得るための加湿窒素ガスの流量範囲は、5〜20L/minと広いために安定した露点を得ることができる。
【0039】
本発明は、第2溶体化処理の加熱時間を短くすることが必要であるので、溶体化処理炉の構造としては、図5に示したメッシュベルト式連続炉が好ましい。しかし、本発明は、メッシュベルト式に限定されるものではなく、短時間加熱が可能なローラーハースやウォーキングビームといった構造の装置も好適に使用することができる。
【0040】
【試験例】
C:0.05重量%(以下、組成は重量%で示す)、Ni:17.0%、Co:8.2%、Mo:5.1%、Ti:0.45%、Al:0.1%を含有するマルエージング鋼の、厚さ:0.42mm、幅:250mmの鋼板を切断して、内径:100mm、長さ:250mmの円筒状に曲げ加工し、両端部を溶接してドラムを形成した。形成したドラムを真空炉(真空度:1×10-4Pa)で880℃×30分間の溶体化を施し、次に裁断して18個の内径:100mm、幅:12.5mmのリングを得た。各リングの端部の形状修正とバリ取りのためにバレル研磨と洗浄を行ってから、厚さ0.42mmのリングを圧延して、厚さ:0.18mm、内径:350mmのフープとした。以上のようにして得られたフープに図5の製造装置を用いて第2溶体化処理を施した。なお、処理雰囲気と処理時間とは表1の試験例1〜3の3水準とした。試験例4は、比較のために真空炉で溶体化したものである。なお、第2溶体化処理温度は820℃であった。続いてエキスパンド機で周長調整し所望の周長とした。さらに、残留アンモニア30%、温度:430℃で処理時間を50〜120分まで変化させて窒化処理を施し、30μmの窒化深さを得る処理時間を求めた。結果を表1に併記した。
【0041】
【表1】
【0042】
試験例1は露点が8℃の窒素と水素の混合ガス雰囲気で5分間処理した場合であるが、50分間の窒化処理で30μmの窒化層が得られた。試験例2の露点が−10℃の場合には70分、試験例3の露点が−40℃の場合には110分、と溶体化処理雰囲気の露点が下がると同じ厚さの窒化層を得るのに長時間の窒化処理時間を要することが分かる。また、試験例1は、比較のために行った真空炉を使用した試験例4に比べて窒化処理時間を大幅に短縮することができ、生産性を大きく向上することが可能となる。
【0043】
【発明の効果】
本発明の無端金属ベルトの製造方法およびその製造装置によれば、母材内部の活性化したTi,Al,Moなどは、母材内部で酸素元素と結合し、母材表面で酸素と結合することがない。その結果、母材の表面においては、Ti,Al,Moの酸化物が形成されることがない。従って、第2溶体化処理後の窒化処理工程では、母材表面に均一な窒化処理層を得ることができる。また、短時間で同じ厚さの窒化層を得ることができるので生産性が向上する。さらに、TiやAlといった析出硬化元素の欠乏層が発生しないので、時効処理後の深さ方向いおいて均一な硬さを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の無端金属ベルトの製造方法のフローを示すブロック図である。
【図2】本発明の第2溶体化処理工程における、雰囲気ガスの露点温度に対する母材表面からのTiの濃度分布を示す図である。
【図3】本発明の無端金属ベルトの製造方法により形成されたフープの断面組織を示す模式図である。
【図4】Tiの表面濃化により発生する析出硬化元素の欠乏層を示す説明図である。
【図5】本発明の無端金属ベルトの製造装置の概略構成を示す模式図である。
【図6】加湿ガスを生成する窒素湿潤器を示す模式図である。
【図7】窒素湿潤器の水温40℃における窒素ガスの流量と露点との関係を示す図である。
【符号の説明】
210:第2溶体化処理炉 211:加熱ゾーン 212:冷却ゾーン 215:窒素カーテン 220:搬送手段 230:雰囲気ガス供給手段 231:窒素湿潤器 232:流量計 233:ガスミキサ 234:露点計 235:マスフローコントローラ 237:ヒータ
Claims (2)
- 円筒状に曲げたマルエージング鋼板の端部同士を溶接してドラムに形成する溶接工程と、
該ドラムに溶体化処理を施す第1溶体化処理工程と、
該第1溶体化処理を施されたドラムを所定幅に裁断してリングとし該リングを圧延してフープとするリング圧延工程と、
該圧延されたフープに溶体化処理を施す第2溶体化処理工程と、
該第2溶体化処理されたフープを所定周長に微調整するエキスパンド工程と、
該エキスパンドしたフープを窒化処理する窒化処理工程と、
を有する無端金属ベルトの製造方法において、
前記第2溶体化処理工程は、水分を0.5〜2容量%含有する窒素と水素の混合ガスであり露点が0℃を超え15℃以下である加湿雰囲気中で、溶体化温度を790〜900℃、かつ、前記フープが600℃以上に加熱される時間を15分以下とする工程であることを特徴とする無端金属ベルトの製造方法。 - リングを圧延したフープ状の無端金属ベルトに第2溶体化処理を施す溶体化処理炉を具備する無端金属ベルトの製造装置であって、
フープを加熱冷却する溶体化処理炉と、
該溶体化処理炉を貫通してフープを搬送する搬送手段と、
露点管理した雰囲気ガスを前記溶体化処理炉内へ供給する雰囲気ガス供給手段と、から構成され、
前記雰囲気ガス供給手段は、窒素ガスを加湿する窒素湿潤器と、窒素ガスの流量を計測する流量計と、窒素ガスに水素ガスを混合するガスミキサと、溶体化処理炉内の露点を測定する露点計と、該露点計のデータによって窒素ガスの流量を制御するマスフローコントローラとを備えることを特徴とする無端金属ベルトの製造装置。
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