JP2006045629A - 転がり軸受の軌道輪の製造方法 - Google Patents

転がり軸受の軌道輪の製造方法 Download PDF

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明弘 西田
Shigeru Okita
滋 沖田
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厚 成重
Hideki Kokubu
秀樹 國分
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Abstract

【課題】大量の鋼材に対する焼入れを連続的に行うことができる焼入れ方法であって、転がり軸受の軌道輪として必要な硬さが確保できる方法を提供する。
【解決手段】転がり軸受の軌道輪を、炭素0.50〜1.20質量%、珪素0.50〜2.00質量%、マンガン0.20〜2.00質量%、クロム2.00〜5.00質量%、モリブデン0.10〜2.00質量%であり、下記の(1)式により算出されるDI 値が15.0以上40.0以下である合金鋼により形成する。また、焼入れ時の加熱温度を870℃以上とし、焼入れ時の冷却を、大気圧下で気体を流速6m/秒以上で処理品に当てることにより行う。
I =(0.2〔C〕+0.14)×(0.64〔Si〕+1)×(4.1〔Mn〕+1)×(2.33〔Cr〕+1)×(3.14〔Mo〕+1)‥‥(1)
【選択図】 図1

Description

この発明は、転がり軸受の軌道輪(内輪および外輪)の製造方法に関する。
一般的な転がり軸受の軌道輪(内輪および外輪)は、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼からなるリング状素材を所定形状に加工した後、焼入れおよび焼戻しを施すことにより製造されている。
焼入れは、鋼材(所定形状に加工後の素材)を高温に加熱した後に適当な速度で冷却する熱処理であり、一般的には、冷却剤として油を使用し、油中に鋼材を浸漬して所定時間保持する「油焼入れ」が行われている。この油焼入れでは、冷却の初期段階で鋼材の表面に蒸気膜が形成される。これに起因して均一な冷却が行われ難くなるため、変形量が大きくなる。特に、外径(a)に対する厚さ(t)の比(t/a)が小さい軌道輪は、油焼入れ時に変形が生じ易い。
また、油焼入れでは、焼戻し工程の前に洗浄工程が必要であり、この洗浄が不十分であると、焼戻し時に気化して焼戻しの作業環境が悪くなったり、焼戻し後に固化して鋼材に付着することがある。さらに、焼入れ装置内を頻繁に洗浄する必要があるため、設備費や管理費などのコストが嵩む。
下記の特許文献1には、焼入れ剤(冷却剤)として高圧ガス(例えば、500kPa以上のヘリウムガス等の無酸化ガス)を使用することで、焼入れ後の洗浄を不要にし、均一な冷却が行われるようにすることが記載されている。
下記の特許文献2には、被処理物を雰囲気ガス中で熱処理する熱処理ゾーンと、この熱処理ゾーンで熱処理された被処理物に対して冷却用ガスを吹き付けて冷却する冷却ゾーンとを備え、両ゾーンの間が開閉扉を介して互いに連通している熱処理装置が記載されている。
下記の非特許文献1には、鋼材の焼入れ性を示す理想臨界直径(DI 値)について、以下のように記載されている。いろいろな直径の丸棒試験片を用いて中心まで焼きの入る直径(臨界直径)を調べることにより、臨界直径の大小で鋼の焼入れ性を定量的に表すことができる。この理想臨界直径は焼入れ液の冷却能によって異なる。鋼材を焼入れ液に入れた瞬間にその表面が焼入れ液の温度になる時の臨界直径を、理想臨界直径と呼ぶ。この理想臨界直径は焼入れ液の冷却能に無関係で、鋼特有の値となる。この理想臨界直径は下記の(2)式で計算できる。
I =(基本〔C鋼〕のDI )×fSi×fMn×fNi×fCr‥‥(2)
ここで、fX は合金元素Xの焼入れ倍数である。
特開2002−155314号公報 特許3017303号公報 日本鉄鋼協会編、「鋼の熱処理 改定5版」、丸善株式会社、1989年 p.24〜28
前述の焼入れ剤として高圧ガスを使用する方法では、ガスの圧力を2×106 〜3×106 Pa(20〜30bar)まで高くしたり組成を最適化することにより、油焼入れと同等の焼入れ性能を得ることができる。しかしながら、この方法を実施する設備には、高精度で強度的にも優れた密閉技術が不可欠であるが、そのためのコストが嵩む上、余り大きな設備を作ることができない。また、この方法を実施するためには、処理品の出し入れ時に高圧状態から大気圧状態へ切り換える必要がある。したがって、特許文献1に記載された方法は、大量の鋼材を連続的に冷却することが難しく、コストの点で改善の余地がある。
一方、自動車の小型・軽量化および高性能・高出力化に伴い、例えばオルタネータ用の転がり軸受では、鋼材の白色組織変化により軌道面が早期剥離することが問題となっている。そのため、白色組織変化が生じ難い組成の鋼を使用し、焼入れ条件を特定することにより、熱処理後に転がり軸受の軌道輪として必要な硬さが確保できるようにする必要がある。
本発明は、このような点に着目してなされたものであり、大量の鋼材に対する焼入れを連続的に行うことができる焼入れ方法であって、転がり軸受の軌道輪として必要な硬さが確保できる方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は、鋼製のリング状素材を所定形状に加工した後、焼入れおよび焼戻しを施すことにより、転がり軸受の軌道輪を製造する方法において、前記鋼として、炭素(C)の含有率が0.50質量%以上1.20質量%以下、珪素(Si)の含有率が0.50質量%以上2.00質量%以下、マンガン(Mn)の含有率が0.20質量%以上2.00質量%以下、クロム(Cr)の含有率が2.00質量%以上5.00質量%以下、モリブデン(Mo)の含有率が0.10質量%以上2.00質量%以下で、残部が鉄および不可避成分であり、且つ、下記の(1)式により算出されるDI 値が15.0以上40.0以下となるものを使用し、焼入れ時の加熱温度を870℃以上とし、焼入れ時の冷却は、大気圧下で気体を、流速6m/秒以上30m/秒以下、処理時間1分以上30分以下の条件で処理品に当てることにより行うことを特徴とする軌道輪の製造方法を提供する。
I =(0.2〔C〕+0.14)×(0.64〔Si〕+1)×(4.1〔Mn〕+1)×(2.33〔Cr〕+1)×(3.14〔Mo〕+1)‥‥(1)
冷却に用いる気体としては、空気または不活性ガス等が挙げられる。空気を用いると、コストを低く抑えられる利点がある。不活性ガスを用いると、脱炭を少なくできるため、研磨工程での取り代を少なくできる利点がある。
本発明の軌道輪の製造方法によれば、焼入れの冷却を、大気圧下で気体を前記所定の条件で当てることで行うため、大量の鋼材に対する焼入れを連続的に行うことができる。また、前記特定の鋼を用い、焼入れ時の加熱温度を870℃以上とし、焼入れ時の冷却を前記所定の条件で行うことで、軌道輪として必要な硬さ(HRC60以上)を確保することができる。
本発明の軌道輪の製造方法では、焼入れを前記条件で行うことにより、リング状素材の外径(a)に対する厚さ(t)の比(t/a)が0.11以下のときに、軌道輪として必要な硬さを安定的に確保することができる。前記条件で焼入れを行うと、比(t/a)が0.12以上の場合には、材料成分やDI 値が下限の場合に焼入れ性が不十分となって、不完全焼入れ組織が出現する恐れがある。
ここで、外径(a)に対する厚さ(t)の比(t/a)が0.11以下であるリング状素材に対する焼入れを油焼入れで行うと、焼入れによる熱応力、変態応力により、焼入れ時の変形が大きく(例えば0.15%以上と)なるが、前記条件で行うことにより、焼入れ時の変形を小さく(例えば0.11%以下に)することができる。
<炭素および合金元素の含有率の特定理由について>
[C:0.50質量%以上1.20質量%以下]
炭素は、マトリックスに固溶して鋼に硬さを付与するとともに、Cr、Mo、V等と結合して炭化物を形成する元素である。鋼の炭素含有率が0.50質量%未満であると、焼入れ焼戻し後に、転がり軸受の軌道輪として必要な硬さ(HRC60以上)が確保できない場合がある。
一方、鋼の炭素含有率が1.20質量%を超えると、製鋼過程で巨大炭化物(クロム炭化物)が析出し、この炭化物を起点とした欠陥により軸受の転がり疲れ寿命が低下したり、耐衝撃性が低下する恐れがある。また、鋼の炭素含有率が高くなることに伴いクロム炭化物が多量に生成されることで、マトリックス中のクロム濃度が低下して、クロムによる耐食性が十分に確保できなくなる恐れがある。
[Si:0.50質量%以上2.00質量%以下]
珪素は、製鋼時に脱酸剤として作用するため、応力集中源となる酸化物系介在物の生成を少なくして、白色組織変化を生じ難くする元素である。また、焼入れ性および焼戻し軟化抵抗性を向上させる作用も有する。さらに、マルテンサイト組織を強化する元素であるため、亀裂進展抵抗性を高くする作用を有する。
珪素の含有率が0.50質量%未満であると、これらの作用が実質的に得られない。一方、珪素の含有率が2.00質量%を超えると、被切削性や冷間加工性が著しく低下する。
[Mn:0.20質量%以上2.00質量%以下]
マンガンは、焼入れ性を向上させる作用を有し、転がり寿命の向上に有効な元素でもある。マンガンの含有率が0.20質量%未満であると、これらの作用が実質的に得られない。一方、マンガンの含有率が2.00質量%を超えると、鍛造性、熱間加工性、被切削性が低下する可能性が高くなる。
[Cr:2.00質量%以上5.00質量%以下]
クロムは、耐食性、焼入れ性、および焼戻し軟化抵抗性を向上させる作用を有し、転がり寿命の向上に有効な元素でもある。クロムの含有率が2.00質量%未満であると、これらの作用が十分に得られない。
一方、クロムの含有率が5.00質量%を超えると、δフェライトが生成して脆性が高くなり、加工性が低下する。また、製鋼過程で巨大炭化物(直径10μm以上の共晶炭化物)が形成され易くなり、この炭化物を起点とした欠陥により軸受の転がり疲れ寿命が低下する。
[Mo:0.10質量%以上2.00質量%以下]
モリブデンは、耐食性、焼入れ性、および焼戻し軟化抵抗性を向上させる作用を有するとともに、炭素と結合して直径500nm以下の微細炭化物を形成することにより、転がり寿命の向上に有効な元素でもある。微細炭化物により水素がトラップされて白色組織変化が生じ難くなる。モリブデンの含有率が0.10質量%未満であると、これらの作用が実質的に得られない。
一方、モリブデンの含有率が2.00質量%を超えると、靱性および加工性の低下が顕著となる。また、モリブデンは高価な材料であるため、材料コストを抑えるという観点からその含有率をなるべく低くしたい。
<DI 値について>
本発明では、鋼材の焼入れ性を示す理想臨界直径(DI 値)として、独自に定義した下記の(1)式により算出されるDI 値を使用する。
I =(0.2〔C〕+0.14)×(0.64〔Si〕+1)×(4.1〔Mn〕+1)×(2.33〔Cr〕+1)×(3.14〔Mo〕+1)‥‥(1)
このDI 値が15.0以上であって、炭素および合金元素の含有率が前述の範囲である合金鋼材を使用し、処理条件を前記所定の条件とすることによって、焼入れ時の冷却を気体を用いて行った場合に、この鋼材の表層部の硬さをHRC60以上にすることができる。一方、DI 値が40.0を超えると、材料コストが上昇するだけで、硬さの向上効果は飽和する。なお、クロム(Cr)とモリブデン(Mo)を多く含有させることでDI 値が大きくなるが、CrとMoは高価な元素であるため、DI 値をできるだけ小さくしてコストを押さえる必要がある。
本発明の軌道輪の製造方法によれば、大量の鋼材に対する焼入れを連続的に行うことができるとともに、鋼の組成と焼入れ条件を特定することで、軌道輪として必要な硬さ(HRC60以上)を確保することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
[第1実施例:鋼の組成および焼入れ剤と表層部硬さおよび変形率との関係]
呼び番号6810の単列深溝玉軸受(転がり軸受)は、図1に示すように、内輪1と外輪2と玉3と保持器4とからなる。また、図2に示すように、この玉軸受の外輪2の外径aは40mmであり、内径bは33.25mmであり、幅cは12mmである。この外輪2の厚さtは(40−33.25)/2=3.375mmであり、外径(a)に対する厚さ(t)の比(t/a)は、3.375/40=0.084375≒0.084である。この外輪2用のリング状素材を、下記の表1に示す各組成の合金鋼で形成した。
各リング状素材に対して、以下の方法で熱処理を行った。空気焼入れ工程は、図3に示す焼入れ装置を用いて行った。
この装置は、ベルトコンベヤーにより処理品Bが搬送されながら、所定時間加熱された後に空気により冷却されるように構成され、加熱帯5と冷却帯6とで別々にベルトコンベヤー23,24が設置されている。また、加熱帯5のベルトコンベヤー23の囲い内に、ヒーター25が設置されている。
冷却帯6のベルトコンベヤー24の上方には冷却ファン26が設置されている。空気の流速(処理品Bに当てる速度)は、冷却ファン26の大きさや回転速度および空気の通り道の断面積で決まるため、流速の設定値に応じてこれらを設定する。また、加熱帯5へ処理品Bを搬入するシュート27と、加熱帯5から冷却帯6に処理品Bを移動するシュート28と、冷却帯6から処理品Bを搬出するシュート29を備えている。なお、冷却帯6から搬出された処理品Bは、焼戻し炉に搬送されるように構成されている。
加熱帯5での加熱は、圧力:大気圧、温度:870〜900℃、処理時間:25〜35分間の条件で行った。冷却帯6での冷却は、圧力:大気圧、空気の流速:10〜20m/秒、処理時間(ベルトコンベヤー24で運ばれて冷却帯6内に存在している時間):10〜15分の条件で行った。焼戻しは、温度:160〜180℃、処理時間:90〜120分、冷却:空冷の条件で行った。
油焼入れ工程は、図4に示す設備を用いて行った。この装置は、ベルトコンベヤー23とヒーター25を備えた加熱装置50と、焼入れ油を入れたタンク内にベルトコンベヤー61が設置された油焼入れ装置60と、ベルトコンベヤー71と洗浄液吹き付け装置72を備えた洗浄装置70と、で構成されている。また、油焼入れ装置60と洗浄装置70との間にベルトコンベヤー67が設置されている。
加熱装置50は、図3の加熱帯5と類似の加熱炉であって、加熱後の処理品Bが油焼入れ装置60の焼入れ油62内に落下するように形成されている。油焼入れ装置60は、処理品Bをベルトコンベヤー61で移動する間に油焼入れする。ベルトコンベヤー61上の処理品Bは、油焼入れ後にベルトコンベヤー67を介して洗浄装置70内のベルトコンベヤー71に搬送され、洗浄液吹き付け装置72からの洗浄液シャワーにより洗浄された後に、焼戻し装置に炉に搬送されるように構成されている。そして、油焼入れ工程の加熱装置50での加熱条件は、温度:830〜850℃、処理時間:25〜35分間とし、油焼入れ条件は、温度:60℃、処理時間:10分間とした。
熱処理後の各リング状素材について、表層部の硬さ(HRC)と変形率を測定した。変形率は以下の方法で測定した。先ず、熱処理後のリング状素材の最大径と最小径を測定し、その差(真円度)を算出する。次に、この算出された真円度を熱処理前のリング状素材の外径で除算する。
これらの結果も表1に併せて示す。表1の「変形率」は、この算出値を「%」で示した値である。また、これらの結果から得られたDI 値と表層部の硬さとの関係を示すグラフを図5に示す。
Figure 2006045629
この表に示すように、No. 1〜10は、使用した合金鋼の炭素と合金元素の含有率、および(1)式により算出されるDI 値が本発明の範囲内であり、No. 3とNo. 10では油焼入れを行っているが、それ以外では前記条件で空気焼入れを行っている。いずれも表層部の硬さはHRC60以上となった。変形率は、No. 3では0.24%、No. 10では0.23%と大きかったが、それ以外では0.09〜0.15%と小さかった。
No. 11〜15は、使用した合金鋼の合金元素含有率および前記DI 値が本発明の範囲から外れる例であり、前記条件で空気焼入れを行ったNo. 11、No. 12、No. 14では、表層部の硬さがHRC60未満であった。油焼入れを行ったNo. 13とNo. 15では、表層部の硬さがHRC60以上であったが、変形率が0.23%および0.28%と大きかった。
以上のことから、使用した合金鋼の炭素と合金元素の含有率およびDI 値が本発明の範囲内であり、前記条件で空気焼入れを行うことで、比(t/a)が0.084であるリング状素材について、表層部の硬さをHRC60以上としながら焼入れ時の変形を小さくできることが分かる。また、図5のグラフから、前記条件で熱処理を行うことで空気焼入れを行って表層部の硬さがHRC60以上となるのは、前記DI 値が15以上の場合であることが分かる。
[第2実施例:比(t/a)と表層部硬さおよび変形率との関係]
No. 2と同じ合金鋼を用いて、比(t/a)を変化させた9種類(表2参照)のリング状素材を種類毎に20個形成した。これらのリング状素材に上記と同じ条件で、種類毎に10個の素材に対して空気焼入れを行い、残りの各10個の素材に対して油焼入れを行った。そして、熱処理後の各リング状素材の変形率を上記と同じ方法で測定し、それぞれ10個の平均値を算出した。また、熱処理後の各リング状素材の表層部の硬さ(HRC)を測定し、それぞれ10個の平均値を算出した。
変形率の測定結果を、比(t/a)と変形率との関係を示すグラフにまとめた。これを図6に示す。また、硬さの測定結果を表2に併せて示すとともに、比(t/a)と硬さとの関係を示すグラフにまとめた。これを図7に示す。
Figure 2006045629
図6のグラフから、比(t/a)が小さいほど、No. 2と同じ合金鋼を用いて空気焼入れすることで、油焼入れした場合よりも変形率を低減できる効果が高いことが分かる。また、比(t/a)が0.12を超えると、No. 2と同じ合金鋼を用いて油焼入れした場合でも変形率が0.11%程度と小さいことが分かる。すなわち、本発明の方法で空気焼入れをすることは、リング状素材の比(t/a)が0.11以下である場合に有効であることが分かる。
また、表2および図7のグラフから、比(t/a)が12.30以上であると表層部の硬さがHRC54.2以下となり、軸受として必要な硬さ(HRC60以上)が得られないことが分かる。また、上記熱処理条件の場合には、比(t/a)を0.11以下とすることにより、表層部の硬さをHRC60以上にできることが分かる。さらに、上記熱処理条件の場合には、比(t/a)を0.102以下とすることにより、表層部の硬さをHRC61.5以上にできることが分かる。
[第3実施例:焼入れ温度と表層部硬さとの関係]
No. 2と同じ合金鋼を用いて、比(t/a)が0.084である前述の外輪用のリング状素材に対して、焼入れ時の加熱温度を表3に示すように変化させて熱処理を行った。リング状素材は、条件毎に10個用意した。それ以外の条件は、第1実施例と全て同じにした。そして、熱処理後の各リング状素材の表層部の硬さ(HRC)を測定し、それぞれ10個の平均値を算出した。その結果を表3に併せて示すとともに、焼入れ温度と表層部の硬さとの関係を示すグラフにまとめた。これを図8に示す。
Figure 2006045629
表3および図8のグラフから、上記熱処理条件で空気冷却をした場合は、焼入れ温度を870℃以上にすることにより、軸受として必要な硬さ(HRC60以上)が得られ、焼入れ温度を900℃以上にすることにより、表層部の硬さをHRC61以上にできることが分かる。ただし、焼入れ温度が必要以上に高すぎると、焼入れ後の硬さや組織に悪影響があるため、焼入れ温度は900℃以下にすることが望ましい。
[実施例4:空気の流速と表層部硬さとの関係]
No. 2と同じ合金鋼を用いて、比(t/a)が0.084である前述の外輪用のリング状素材に対して、空気焼入れ時の冷却空気の流速を表4に示すように変化させて熱処理を行った。リング状素材は、条件毎に10個用意した。それ以外の条件は、第1実施例と全て同じにした。そして、熱処理後の各リング状素材の表層部の硬さ(HRC)を測定し、それぞれ10個の平均値を算出した。その結果を表4に併せて示すとともに、冷却空気の流速と硬さとの関係を示すグラフにまとめた。これを図9に示す。
Figure 2006045629
表4および図9のグラフから、上記熱処理条件の場合には、冷却空気の流速を6m/秒以上にすることにより、軸受として必要な硬さ(HRC60以上)が得られることが分かる。また、上記熱処理条件で表層部の硬さをHRC61以上とするためには、冷却空気の流速を10m/秒以上にする必要がある。
単列深溝玉軸受(転がり軸受)の一例を示す断面図である。 図1の軸受の外輪を示す断面図である。 連続処理用の空気焼入れ装置の一例を示す概略構成図である。 連続処理用の油焼入れ装置の一例を示す概略構成図である。 油焼入れの場合と空気焼入れの場合について、DI 値と表層部の硬さとの関係を示すグラフである。 油焼入れの場合と空気焼入れの場合について、熱処理後の各リング状素材の変形率と比(t/a)との関係を示すグラフである。 空気焼入れの場合について、比(t/a)と表層部の硬さとの関係を示すグラフである。 油焼入れの場合と空気焼入れの場合について、焼入れ温度と表層部の硬さとの関係を示すグラフである。 空気焼入れの場合について、冷却空気の流速と表層部の硬さとの関係を示すグラフである。
符号の説明
1 内輪
2 外輪
3 玉
4 保持器
5 加熱帯
6 冷却帯
23 加熱帯用のベルトコンベヤー
24 冷却帯用のベルトコンベヤー
25 ヒーター
26 冷却空気供給装置
27〜29 シュート
50 加熱装置
60 油焼入れ装置
61 ベルトコンベヤー
62 焼入れ油
67 ベルトコンベヤー
70 洗浄装置
71 ベルトコンベヤー
72 洗浄液吹き付け装置
B 処理品

Claims (2)

  1. 鋼製のリング状素材を所定形状に加工した後、焼入れおよび焼戻しを施すことにより、転がり軸受の軌道輪を製造する方法において、
    前記鋼として、炭素(C)の含有率が0.50質量%以上1.20質量%以下、珪素(Si)の含有率が0.50質量%以上2.00質量%以下、マンガン(Mn)の含有率が0.20質量%以上2.00質量%以下、クロム(Cr)の含有率が2.00質量%以上5.00質量%以下、モリブデン(Mo)の含有率が0.10質量%以上2.00質量%以下で、残部が鉄および不可避成分であり、且つ、下記の(1)式により算出されるDI 値が15.0以上40.0以下となるものを使用し、
    焼入れ時の加熱温度を870℃以上とし、
    焼入れ時の冷却は、大気圧下で気体を、流速6m/秒以上30m/秒以下、処理時間1分以上30分以下の条件で処理品に当てることにより行うことを特徴とする軌道輪の製造方法。
    I =(0.2〔C〕+0.14)×(0.64〔Si〕+1)×(4.1〔Mn〕+1)×(2.33〔Cr〕+1)×(3.14〔Mo〕+1)‥‥(1)
  2. 前記リング状素材の外径(a)に対する厚さ(t)の比(t/a)が0.11以下である請求項1記載の軌道輪の製造方法。
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