JP2008297620A - 高炭素クロム軸受鋼の焼入方法および高炭素クロム軸受鋼ならびに軸受部品および転がり軸受 - Google Patents

高炭素クロム軸受鋼の焼入方法および高炭素クロム軸受鋼ならびに軸受部品および転がり軸受 Download PDF

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Abstract

【課題】転がり軸受の基本静定格荷重を向上させる高炭素クロム軸受鋼の焼入方法および高炭素クロム軸受鋼ならびに軸受部品および転がり軸受を提供する。
【解決手段】高炭素クロム軸受鋼を昇温し、A1変態点を越える温度(第1温度)で所定時間保持した後に油中へ一般焼入処理(1回目の焼入処理)を行い、その後再度昇温し、A1変態点を越え第1温度未満の温度(第2温度)で所定時間保持した後に流水中へ焼入処理(2回目の焼入処理)する。また、流水を3m/s以上6m/s以下の流速とすることもできる。
【選択図】図1

Description

本発明は、高炭素クロム軸受鋼の焼入方法および高炭素クロム軸受鋼ならびに軸受部品および転がり軸受に関する。
軸受、特に転がり軸受の寿命とは、主に軸受が回転している場合の寿命限界を指し、そのときの軸受寿命は軌道輪又は転道体に最初にフレーキング(転がり疲れによって生じる軌道面若しくは転動面の剥離現象)が現れるまでの総回転数と一般的には定義されている。また静止している場合や揺動運動および低速回転の場合においても荷重が加わると転動体および軌道輪に局部的な永久変形が生じ、この場合も広義の寿命として解釈されている。
また、永久変形量をある限度内にとどめ、静止時の転がり軸受に許容しうる最大荷重の目安として基本静定格荷重が定義されている。ここで、基本静定格荷重とは、最大応力を受けている接触部において、転動体と軌道輪の永久変形量が所定の値になるような静荷重をいう。
例えば、転がり軸受の基本静定格荷重はJISのB0104において、ころ軸受の場合では接触応力4000MPaの下で生じる転動体と軌道輪との永久変形量が、転動体の直径のおよそ0.0001倍となる静荷重と規定されている。
以上より、転がり軸受の長寿命化を図るためには、転動することによる材料の疲労限を向上させて、さらに基本静定格荷重の向上も要求されている。
そこで、長寿命化を図る手段の一つとして表面硬化処理による表面改質が行われてきた。例えば、特許文献1には高周波焼入処理により鋼部品のミクロ組織を微細化し、高い表層硬度を得て、長寿命化を図る方法が記載されている。
具体的には、高周波焼入れは表層部のみの焼入れを対象としたものであり、焼入れ後の水冷やガス冷却等の冷却工程により、鋼部品の表層部のオーステイナイト結晶粒度番号が平均9番以上となり、転動疲労等に優れた軸受部品が得られる旨の記載がある。
また、特許文献2には浸炭窒化処理により軸受部品の転動疲労に対して長寿命化を図る方法が記載されており、具体的な熱処理方法として、下記の2パターンが示されている。
一つ目は、A1変態点を越える浸炭窒化温度で浸炭窒化処理した後、A1変態点未満の温度に冷却(1次焼入れ)し、その後、A1変態点以上で浸炭窒化処理の温度未満の焼入れ温度域に再加熱し、油冷による焼入れを行う(2次焼入れ)熱処理パターンである。二つ目は、A1変態点を越える浸炭窒化温度で浸炭窒化処理した後、冷却してA1変態点を下回ると、再度A1変態点以上で浸炭窒化処理の温度未満の焼入れ温度域に加熱し、油冷による焼入れを行う熱処理パターンである。
いずれの熱処理パターンも軸受部品の表層部に炭素や窒素を拡散させた浸炭窒化層(表面硬化層)を設けることにより、オーステナイト粒径が微細化できるので、軸受部品の転動疲労寿命が向上する旨が記載されている。
なお、JIS(日本工業規格)のG0201において、高周波焼入れとは、高周波誘導加熱を用いる焼入れと規定されている。また、浸炭とは鋼製品の表面層の炭素量を増加させるために浸炭剤中で加熱する処理、窒化とは金属製品の表面層に窒素を拡散させ、表面層を硬化する処理と規定されている。
また、表面硬化処理以外の方法においては、特許文献3にて焼入れ・焼戻し処理およびサブゼロ処理により、ミクロ組織中の残留オーステナイト量を一定量以下として、かつ硬さを一定範囲に制限することで玉軸受の基本静定格荷重が向上する旨が開示されている。
具体的には、高炭素クロム軸受鋼を用いた内輪や外輪などの軸受部品を820〜870℃で加熱油冷後に焼戻しおよび−60〜−180℃の温度でサブゼロ処理(深冷処理)を行って、残留オーステナイト量を4%以下、硬さをビッカース硬さHV810〜910に調整して基本静定格荷重を向上させた玉軸受が開示されている。
さらに、特許文献4では鋼および合金部品を高速流水中で冷却させて、発生歪を低減したまま焼入処理を施す方法が開示されている。この方法により焼入れ性能が改善されることで素材費と加工費が低減される。
具体的には、加熱後の低炭素合金鋼(S25C、S35C、S45C)および高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)を流速3.0m/s以上の流水中で焼入処理することにより、これらの材料の表面硬さが大きくなるデータが開示されている。
特開2002−256336号公報 特開2003−226918号公報 特開2004−301149号公報 特開2005−213646号公報
しかしながら、特許文献1および2においては高周波加熱に用いるコイルの選定や浸炭窒化に用いるガスおよび付帯設備が製品コストの増加につながるという問題があった。また、転がり軸受の基本静定格荷重に対する効果については何ら開示されていない。
また、特許文献3においてはサブゼロ処理時の冷却速度が大きいため、薄肉の内輪や外輪に適用させると、焼入処理に伴う発生歪が大きいために容易に変形するという問題があった。さらに、サブゼロ処理時には液体窒素等の冷媒が必要となり、製品コストの増加につながる。また、冷媒の温度により内輪や外輪の金属組織割合が変化するため、その温度管理も煩雑であった。
さらに、特許文献4では高炭素クロム軸受鋼のような合金鋼を流水中で焼入処理した場合、発生歪が大きく、容易に変形するために軸受部品への適用は困難であった。
本発明の課題は、前述した問題点に鑑みて、浸炭窒化処理やサブゼロ処理を行うことなく、硬さの向上と発生歪の抑制を両立させて、さらに結晶粒も微細化させて、転がり軸受の基本静定格荷重を向上させる高炭素クロム軸受鋼の焼入方法および高炭素クロム軸受鋼ならびに軸受部品および転がり軸受を提供することである。
本発明においては、高炭素クロム軸受鋼をA1変態点を超える温度(第1温度)へ加熱して所定時間保持した後、油中にて一般焼入処理(1回目の焼入処理)を行い、さらにA1変態点を越え第1温度未満の温度(第2温度)へ再加熱して所定時間保持した後、流水中にて焼入処理(2回目の焼入処理)を行う高炭素クロム軸受鋼の焼入方法を提供することにより、前述した課題を解決した。
すなわち、前述の特許文献に示されている高周波焼入処理や浸炭窒化処理による表面硬化層を設けることなく、高炭素クロム軸受鋼を油中へ一般焼入処理(1回目の焼入処理)した後、再度流水中へ焼入処理(2回目の焼入処理)することにより、硬さの向上と発生歪の抑制を両立させて、さらに結晶粒度の微細化も実現した。
一般的に、高炭素クロム軸受鋼を焼入処理した場合、その形状や肉厚等によって局部的に冷却速度が異なる部分が発生すると、歪みが生じる傾向にある。一方、本発明においては、一般焼入処理の後、2回目の焼入処理を流水中で行うことにより、焼入時に発生する蒸気膜を除去し、均一な冷却速度となるため、高炭素クロム軸受鋼の硬さを高め、かつ焼入処理による発生歪を抑制することができる。また、結晶粒度を微細化させることもできる。
このことにより、本発明は前述した浸炭窒化処理等による表面硬化層を設けることなく、高炭素クロム軸受鋼の硬さの向上と発生歪の抑制を両立させて、さらに結晶粒度も微細化できる。
なお、本発明中の一般焼入処理とは、通称「普通焼入れ」または「ずぶ焼入れ」とも呼ばれる熱処理であり、一定温度に加熱処理した後、前述した浸炭窒化などの特別な処理を施すことなく油冷または水冷を行う熱処理をいう。また、本発明中の高炭素クロム軸受鋼とは、JISのG4805に規定される相当鋼種をいう。
また、請求項2記載の発明においては、流水は3m/s以上6m/s以下の流速とする高炭素クロム軸受鋼の焼入方法とした。すなわち流水を3m/s以上6m/s以下の流速とすることにより、高炭素クロム軸受鋼全体に均一な焼入処理を施すことができる。
流速が3m/s未満の場合、焼入時に発生する蒸気膜を除去する能力が不足しやすく、焼入処理の効果が高炭素クロム軸受鋼の寸法や形状等によってばらつきやすくなる。また、流速が6m/sを超えると、例えば円形断面の高炭素クロム軸受鋼を焼入処理する場合、カルマン渦の効果により高炭素クロム軸受鋼が振動を起こして、流水との均一接触が困難となり、流速が3m/s未満の場合と同様に焼入効果がばらつきやすくなる。
なお、蒸気膜を完全に除去する点から、流速は5m/s以上とすることが望ましい。
さらに、請求項3に記載の発明においては、請求項1または2に記載の焼入方法により焼入処理された高炭素クロム軸受鋼とした。すなわち本発明の焼入処理により硬さの向上と発生歪を抑制し、結晶粒度を微細化させた高炭素クロム軸受鋼を得ることができる。また、均一な焼入処理が施された高炭素クロム軸受鋼を得ることもできる。
また、請求項4に記載の発明においては、表面硬化層を有することなく、かつ、JISのG0551に基づく鋼のオーステナイト結晶粒度試験方法による粒度番号が12番以上であることを特徴とする高炭素クロム軸受鋼とした。すなわち、前述の特許文献に示されている高周波焼入処理や浸炭窒化処理による表面硬化層を有することなく、結晶粒度を微細化させた高炭素クロム軸受鋼により基本静定格荷重を向上させた軸受部品を得ることができる。
さらに、請求項5に記載の発明においては、請求項3または4に記載の高炭素クロム軸受鋼から成る軸受部品とした。すなわち、基本静定格荷重を向上させた軸受部品を用いることにより基本静定格荷重を向上させた転がり軸受を得ることができる。
また、請求項6に記載の発明においては、請求項5に記載の軸受部品であって、高炭素クロム軸受鋼がJISのG4805に規定されるSUJ2である軸受部品とした。すなわち、基本静定格荷重を向上させた軸受部品を用いることにより、SUJ2が多用される小型の転がり軸受の基本静定格荷重を向上させることができる。
さらに、請求項7に記載の発明においては、請求項5または6に記載の軸受部品を有する転がり軸受とした。すなわち、基本静定格荷重を向上させた軸受部品を用いることにより、転がり軸受の長寿命化を実現できる。
以上述べたように、本発明においては、高炭素クロム軸受鋼の焼入方法において、高炭素クロム軸受鋼をA1変態点を超える温度(第1温度)へ加熱して所定時間保持した後、油中にて一般焼入処理(1回目の焼入処理)を行い、さらにA1変態点を越え第1温度未満の温度(第2温度)へ再加熱して所定時間保持した後、流水中にて焼入処理(2回目の焼入処理)を行う高炭素クロム軸受鋼の焼入方法により、硬さの向上と発生歪の抑制を両立させて、さらに結晶粒度も微細化するため、高炭素クロム軸受鋼からなる転がり軸受の基本静定格荷重を向上できる。
また、前述の特許文献に示されている高周波焼入処理や浸炭窒化処理による表面硬化層を設ける必要がないため、高周波加熱に用いるコイルの選定や浸炭窒化に用いるガスや付帯設備も不要となり、製品コストの低減を図ることができる。さらに、前述した高周波焼入処理ならびに浸炭窒化処理に伴う1次および2次焼入れなどの焼入処理に比べて、処理サイクルの短縮化を図ることができるため、軸受部品の製品コストの上昇も抑制できる。
また、請求項2に記載の発明おいては、流水中へ焼入れする流速を3m/s以上6m/s以下とする高炭素クロム軸受鋼の焼入方法により、高炭素クロム軸受鋼に均一な焼入処理を施すことができるので、焼きむら不良による製品歩留まりを低減し、製品コストを低減できる。
さらに、請求項3に記載の発明においては、請求項1または2に記載の焼入方法により焼入処理された高炭素クロム軸受鋼により硬さの向上と発生歪を抑制し、結晶粒度を微細化させた高炭素クロム軸受鋼を得ることができるので、基本静定格荷重を向上させた転がり軸受を得ることができる。また、均一な焼入処理が施された高炭素クロム軸受鋼を得ることもできるので、軸受部品の焼きむら不良が減少して、転がり軸受の製品コストが低減できる。
また、請求項4に記載の発明においては、表面硬化層を有することなく、かつ、JISのG0551に基づく鋼のオーステナイト結晶粒度試験方法による粒度番号が12番以上であることを特徴とする高炭素クロム軸受鋼により、基本静定格荷重を向上させた軸受部品を得ることができるので、転がり軸受の長寿命化を実現できる。
本発明の実施の形態の一例を、図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施形態を示す高炭素クロム軸受鋼の焼入方法による熱処理パターンである。図1に示すように本発明の熱処理パターンは、1回目の焼入処理において高炭素クロム軸受鋼を昇温、所定時間保持後に油冷にて一般焼入処理を行う。その後、2回目の焼入処理において再昇温、所定時間保持後に流水中での焼入処理を行ってから焼戻し処理を施す。
また、図1に示すように1回目および2回目の焼入処理時の保持温度である第1温度および第2温度は、いずれの場合もA1変態点を超える温度まで昇温させるが、第2温度は第1温度よりも低く設定する。
なお、高炭素クロム軸受鋼の代表鋼種であるSUJ2の焼入処理時の保持温度は800〜900℃、焼戻し処理時の保持温度は150〜200℃に設定され、各々の保持時間は寸法や形状等により決定される。また、本発明に係る1回目の焼入処理(一般焼入処理)は、通常の油槽を備えた焼入装置があれば実施可能であり、2回目の焼入処理は流水を発生させる機能を備えた焼入装置を用いる。例えば、前述した特許文献4や特開2002−97520号公報に記載されている焼入装置を用いれば良い。
高炭素クロム軸受鋼を種々の条件で焼入処理をした後の反り量の結果について説明する。焼入処理は、本発明に係る2条件の焼入処理および比較例として8条件の焼入処理の計10条件で行った。本発明に係る焼入処理は、油冷による一般焼入処理(1回目の焼入処理)後に流速3m/sの流水中で焼入処理(2回目の焼入処理)する場合(本発明例1)と、油冷による一般焼入処理(1回目の焼入処理)後に流速5m/sの流水中で焼入処理(2回目の焼入処理)する場合(本発明例2)の2条件で行った。
一方、比較例とした焼入処理は、油冷のみの一般焼入処理(比較例1)、水冷(流速0〜5m/s)のみの焼入処理(比較例2〜5)、油冷のみを2回行う一般焼入処理(比較例6)および油冷による一般焼入処理後に流速0m/sおよび3m/sの流水中での焼入処理(比較例7および8)の8条件で行った。
表1は、高炭素クロム軸受鋼の代表鋼種であるSUJ2製の試験片(直径10mm、長さ100mmのキー溝付の棒材)を前述した条件で焼入処理を施した後の試験片の反り量を示す。
表1中の比較例1〜5の結果に示すように油冷もしくは水冷(流速0〜5m/s)のみから成る焼入処理では、比較例1の油冷のみによる一般焼入処理後の反り量が0.2mmであるのに対して、比較例2〜5の水冷(流速0〜5m/s)のみによる焼入処理後の反り量は0.7〜0.4mmとなり大きいが、水冷時の流速が大きいほど反り量は減少した。
また、比較例7の油冷による一般焼入処理(1回目の焼入処理)後、水冷(流速0m/s)による焼入処理(2回目の焼入処理)を行った後の反り量は0.7mmとなり、比較例2の水冷(流速0m/s)のみによる焼入処理後の反り量と同値となった。
さらに、比較例7および8ならびに本発明例1および2の油冷による一般焼入処理(1回目の焼入処理)後、水冷(流速0〜5m/s)による焼入処理(2回目の焼入処理)を行った後の反り量は、2回目の焼入処理時の流速が大きいほど、その反り量が減少した。特に、本発明例1および2の結果より、2回目の焼入処理時の流速が3m/s以上になると、その反り量は0.4〜0.3mmまで小さくなり、比較例4および5の水冷のみから成る焼入処理後の反り量0.4mmと同等以下となった。
このことにより、本発明に係る焼入方法である油冷による一般焼入処理(1回目の焼入処理)後、流速3m/s以上の流水中で行う焼入処理(2回目の焼入処理)は、高炭素クロム軸受鋼の発生歪の抑制にとって有効である。
次に、SUJ2製の試験片を表1中で示した本発明例2ならびに比較例1、5および6の計4条件で焼入処理した後の試験片の表面硬さと圧痕深さの結果について説明する。表面硬さの測定には、ロックウェル硬さ試験機を用いた。また、圧痕深さの測定には、焼入処理後の試験片上に転がり軸受の転動体(ころ)に見立てた直径7mm、長さ12mmのSUJ2製の棒材を介した状態で、アムスラー試験機により接触面圧が4000MPa、5000MPa、6000MPaの3水準となるよう加圧した後、発生した凹み量を形状測定器にて測定した。
表2は、転がり軸受の軌道輪に見立てたSUJ2製の試験片(直径61mm、厚さ6mmの円板材)を前述した条件で焼入処理した後の表面硬さおよび一定応力を負荷した場合の圧痕深さの結果を示す。
表2に示すとおり比較例1、5および6の結果に関して、硬さについては、油冷のみの一般焼入処理をした場合(比較例1)が60.4HRCであるのに対して、水冷(流速5m/s)のみの焼入処理をした場合(比較例5)は62.0HRCと高くなった。また、油冷のみを2回行う一般焼入処理をした場合(比較例6)は逆に58.3HRCと低くなった。
一方、本発明例2の結果に関して、油冷による一般焼入処理(1回目の焼入処理)後に流速5m/sの流水中で焼入処理(2回目の焼入処理)した場合(本発明例2)には、硬さは62.2HRCとなり、比較例5の場合の硬さである62.0HRCを上回る結果となった。
このことにより、本発明に係る焼入方法である油冷による一般焼入処理(1回目の焼入処理)後、水冷(流速5m/s)による焼入処理(2回目の焼入処理)によって硬さが向上した。
また、圧痕深さについては、前述したJISのB0104に規定されている転がり軸受の基本静定格荷重の定義に従って、接触応力4000MPa時に発生する変形量
(圧痕深さ)の基準値を0.7μmとして判断すると、油冷のみの一般焼入処理後の場合(比較例1)が0.50μmであるのに対して、水冷(流速5m/s)のみの焼入処理後の場合(比較例5)および油冷のみを2回行う一般焼入処理後の場合(比較例6)は、いずれも0.30μmと小さくなった。
一方、本発明例2の結果に関して、油冷による一般焼入処理(1回目の焼入処理)後に流速5m/sの流水中で焼入処理(2回目の焼入処理)した場合(本発明例2)には、圧痕深さ(4000MPa時)は0.20μmとなり、比較例5および6の圧痕深さ(4000MPa時)である0.30μmを下回る結果となった。
このことにより、比較例1、5および6の圧痕深さの結果は、いずれも基準値である0.7μmを下回るものであったが、本発明に係る焼入方法である油冷による一般焼入処理(1回目の焼入処理)後、水冷(流速5m/s)による焼入処理(2回目の焼入処理)を行うことによって、圧痕深さが更に小さくなったことから転がり軸受の基本静定格荷重が向上した。
次に、実施例2に示した比較例1および本実施例2の2種類の試験片の結晶粒度について説明する。図2は比較例1に係る油冷のみによる一般焼入処理後の試験片表面における断面腐食組織の顕微鏡写真であり、図3は本発明例2に係る油冷による一般焼入処理(1回目の焼入処理)後、流水(流速5m/s)中で焼入処理(2回目の焼入処理)を行った後の試験片表面における断面腐食組織の顕微鏡写真を示す。
図2および3に示す断面腐食組織は、JISのG0551に基づく鋼のオーステナイト結晶粒度試験方法による粒度番号に従うと、図2に示す組織が10.5番であるのに対して、図3に示す組織は12番に相当する。よって本発明に係る焼入方法によって高炭素クロム軸受鋼の結晶粒度が微細化された。
また、前述した特許文献1に示されている鋼部品の表層部のオーステイナイト結晶粒度番号が平均9番以上であるのに対して、本発明に係る高炭素クロム軸受鋼の焼入方法では、高周波焼入れや浸炭窒化処理による表面硬化層を設けることなく、オーステイナイト結晶粒度番号で12番相当の微細化組織が得られた。
以上述べたように、本発明においては、高炭素クロム軸受鋼を油中にて一般焼入処理(1回目の焼入処理)した後、流水中へ再度焼入処理(2回目の焼入処理)することにより、硬さの向上と発生歪を抑制し、また結晶粒度が微細化するため、浸炭窒化などによる表面硬化層を設けることなく、転がり軸受の基本静定格荷重が向上した。
本発明の実施形態を示す高炭素クロム軸受鋼の焼入方法による熱処理パターンである。 比較例1に係る油冷のみによる一般焼入処理後の試験片表面における断面腐食組織の顕微鏡写真である。 本発明例2に係る油冷による一般焼入処理(1回目の焼入処理)後、流水(流速5m/s)中で焼入処理(2回目の焼入処理)を行った後の試験片表面における断面腐食組織の顕微鏡写真である。

Claims (7)

  1. 高炭素クロム軸受鋼の焼入方法において、高炭素クロム軸受鋼をA1変態点を超える温度(第1温度)へ加熱して所定時間保持した後、油中にて一般焼入処理(1回目の焼入処理)を行い、さらにA1変態点を越え前記第1温度未満の温度(第2温度)へ再加熱して所定時間保持した後、流水中にて焼入処理(2回目の焼入処理)を行うことを特徴とする高炭素クロム軸受鋼の焼入方法。
  2. 前記流水は、3m/s以上6m/s以下の流速であることを特徴とする請求項1に記載の高炭素クロム軸受鋼の焼入方法。
  3. 前記請求項1または2に記載の焼入方法により焼入処理されたことを特徴とする高炭素クロム軸受鋼。
  4. 表面硬化層を有することなく、かつ、JISのG0551に基づく鋼のオーステナイト結晶粒度試験方法による粒度番号が12番以上であることを特徴とする高炭素クロム軸受鋼。
  5. 前記請求項3または4に記載の高炭素クロム軸受鋼から成ることを特徴とする軸受部品。
  6. 前記請求項5に記載の軸受部品であって、前記高炭素クロム軸受鋼がJISのG4805に規定されるSUJ2であることを特徴とする軸受部品。
  7. 前記請求項5または6に記載の軸受部品を有することを特徴とする転がり軸受。



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