JP3842193B2 - 窒化処理方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無段変速機用ベルト等に用いられるマルエージング鋼の窒化処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車等の無段変速機(CVT)の動力伝達のために、複数の金属リングを積層して積層リングを形成し、該積層リングを所定形状のエレメントに組み付けて保持したCVT用ベルトが知られている。
【0003】
前記積層リングを形成する金属リングは、マルエージング鋼等のNi、Moを含む低炭素鋼の薄板を長方形に切断し、該薄板を長辺に沿って丸め、短辺側の端部同士を溶接して円筒状のドラムを形成した後、該ドラムを所定幅に裁断することにより製造されている。前記マルエージング鋼は、適温に加熱することによりマルテンサイト状態において時効硬化を生じ、高強度、高靱性を兼ね備える超強力鋼であるので、前記金属リングに賞用される。
【0004】
しかし、前記金属リングを積層した積層リングを前記CVTの動力伝達のために用いる場合には、さらに耐摩耗性、耐疲労強度を備えることが望まれる。そこで、前記時効硬化後のマルエージング鋼に表面硬化処理を施すが行われている。
【0005】
前記表面硬化処理は、一般に、前記金属リングに窒化処理を施して、該金属リング表面に窒化層を形成することにより行われる。前記窒化処理としては、例えば、ガス窒化処理またはガス軟窒化処理がある。
【0006】
前記ガス窒化処理は、前記金属リングを加熱炉内で、例えば500〜550℃に加熱した後、アンモニアガス雰囲気下、前記範囲の温度に所定時間保持することにより行われる。また、前記ガス軟窒化処理は、前記ガス窒化処理におけるアンモニアガス雰囲気に代えて、アンモニアガスとRXガスとの混合ガス雰囲気を用いる以外は、前記ガス窒化と全く同一にして行われる。
【0007】
前記ガス窒化処理またはガス軟窒化処理によれば、アンモニアの分解により生じる窒素がマルエージング鋼の金属組織中に浸透する。この結果、前記金属リングの表面に窒化層を形成して硬化させ、該金属リングの耐摩耗性、耐疲労強度を向上させることができる。
【0008】
ところが、窒素が前記マルエージング鋼の金属組織中に浸透するためには、前記金属リングの表面が活性化されていることが必要であり、該金属リング表面に酸化被膜が存在すると、前記窒化層が均一に形成されないとの問題がある。前記問題を解決するために、前記ガス窒化処理またはガス軟窒化処理に先だって、前記金属リングをフッ素化合物またはフッ素を含む雰囲気中で加熱することにより、前記酸化被膜をフッ化物被膜で置換する技術が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【0009】
前記技術によれば、前記フッ化物被膜が形成された金属リングに前記ガス窒化処理またはガス軟窒化処理を施すと、該フッ化物被膜が分解消失する代わりに前記金属リング表面が活性化され、活性化された金属表面に窒素が浸透して、均一な窒化層が形成されるとされている。
【0010】
しかしながら、前記ガス窒化処理またはガス軟窒化処理ではアンモニアが水素と窒素に分解し、該水素が前記フッ化物被膜の分解により発生するフッ素と化合して強酸化性を備えるフッ化水素を形成するので、前記金属リングの表面が該フッ化水素に侵され、欠陥を生じるという不都合がある。前記金属リングの表面に前記欠陥があると、該金属リングを積層してCVT用ベルトとして用いたときに、亀裂等の原因となる虞がある。
【0011】
【特許文献1】
特公平8−9766号公報(第2頁)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる不都合を解消して、マルエージング鋼表面の酸化被膜を除去して金属表面を活性化することができ、しかも該金属表面に欠陥を生じることのない窒化処理方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本発明の窒化処理方法は、マルエージング鋼をハロゲン化合物ガスの存在下に加熱して、該マルエージング鋼表面の酸化被膜を除去し、ハロゲン化物被膜を形成する工程と、該ハロゲン化物被膜が形成されたマルエージング鋼を、真空または減圧雰囲気下に加熱することにより該ハロゲン化物被膜を除去する工程と、該ハロゲン化物被膜が除去されたマルエージング鋼をアンモニアガスの存在下に加熱して窒化処理を行う工程とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の窒化処理方法は、まず、マルエージング鋼をハロゲン化合物ガスの存在下に加熱する。このようにすると、前記マルエージング鋼表面の酸化被膜が前記ハロゲン化合物と反応して除去され、代わりに該マルエージング鋼表面にハロゲン化物の被膜が形成される。前記ハロゲン化合物ガスとしては、フッ素化合物、塩素化合物、臭素化合物等のガスを用いることができる。
【0015】
次に、前記ハロゲン化物の被膜が形成されたマルエージング鋼を、真空または減圧雰囲気下に加熱する。このようにすると、前記ハロゲン化物の被膜が分解除去されるが、本発明の窒化処理方法ではこのときアンモニアが存在せず、該被膜の分解により生じたハロゲンは、酸を生成することなくハロゲンガスとして除去される。この結果、前記マルエージング鋼の表面は、前記酸化被膜もハロゲン化被膜も無く、極めて清浄で活性化された状態となる。
【0016】
そこで、次に、前記ハロゲン化物被膜が除去されたマルエージング鋼をアンモニアガスの存在下に加熱して窒化処理を行うことにより、前記マルエージング鋼の表面に欠陥を生じることなく、均一な窒化層を形成することができる。前記アンモニアガスの存在下に行う窒化処理は、ガス窒化処理であってもよく、ガス軟窒化処理であってもよい。
【0017】
本発明の窒化処理方法において、前記ハロゲン化物被膜が形成されたマルエージング鋼は、真空または減圧雰囲気下に、450〜490℃の範囲の温度で、5〜10分間加熱することにより該ハロゲン化物被膜を除去することが好ましい。
【0018】
前記温度が450℃未満では、前記ハロゲン化物被膜の除去に続いて窒化処理を行うことが困難になることがあり、490℃を超えると残留応力が過大になることがある。また、前記加熱時間が5分未満では生成したハロゲンガスを排出することが難しく、10分を超えると残留応力が低下して、十分な強度を得ることが難しくなる。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1はCVT用ベルトとして用いられる金属リングの製造工程を模式的に示す工程説明図である。
【0020】
前記金属リングを製造する際には、まず、図1示のようにマルエージング鋼の薄板1をベンディングしてループ化したのち、端部同士を溶接して円筒状のドラム2を形成する。前記マルエージング鋼は、Cが0.03%以下、Siが0.10%以下、Mnが0.10%以下、Pが0.01%以下、Sが0.01%以下の低炭素鋼であり、18〜19%のNi、4.7〜5.2%のMo、0.05〜0.15%のAl、0.50〜0.70%のTi、8.5〜9.5%のCoを含む所謂18%Ni鋼である。このとき、前記マルエージング鋼は溶接の熱により時効硬化を示すので、ドラム2の溶接部分の両側に硬度の高い部分が出現する。
【0021】
そこで、次に、ドラム2を真空炉3に収容して820〜830℃の温度に20〜60分間保持することにより第1の溶体化処理を行い、硬度ムラを除去する。前記第1の溶体化処理が終了したならば、ドラム2を真空炉3から搬出し、所定幅に裁断して金属リングWを形成する。
【0022】
前記のようにして形成された金属リングWは、次に圧下率40〜50%で圧延される。圧延された金属リングWには、表面から30μm程度の厚さで圧延組織が形成されている。そこで、圧延された金属リングWを、加熱炉4に収容して第2の溶体化を行うことにより、前記圧延組織を消滅させると共に、均一な金属結晶粒を形成させる。
【0023】
溶体化された金属リングWは、次に周長補正した後、加熱炉5に収容し、445〜475℃の範囲の温度に30〜150分間保持して時効処理を行う。そして、前記時効処理が終了したならば、金属リングWを加熱炉5内で冷却し、窒化装置に移送して、窒化処理を行う。
【0024】
本実施形態の窒化処理では、まず、前記時効処理が行われた金属リングWを、加熱炉6に収容し、塩化メチレン等の塩化物ガスの存在下に、440〜490℃の範囲の温度で1〜10分間加熱する。金属リングWの表面には、酸化被膜が形成されていることが多いが、前記塩化物ガスの存在下で加熱すると、前記酸化被膜が塩化物と反応して除去され、代わりに金属リングWの表面に塩化物被膜が形成される。
【0025】
前記塩化物ガスの存在下での加熱が終了したならば、次に、前記塩化物ガスを排出し、さらに加熱炉6内を減圧することにより、真空または10−3Pa未満の減圧雰囲気とする。そして、前記塩化物被膜が形成された金属リングWを、前記真空または減圧雰囲気下、450〜490℃の範囲の温度で5〜10分間加熱する。尚、加熱炉6は、前記真空または減圧雰囲気下に保持するために、常時排気されている。
【0026】
このようにすると、前記塩化物被膜が分解されて塩素ガスが発生し、該塩素ガスが排気される。一方、金属リングWの表面は、前記塩化物被膜が分解、除去されることにより、清浄で活性化された状態となる。
【0027】
前記真空または減圧雰囲気下での加熱が終了したならば、次に、加熱炉6内に少なくともアンモニアガスを含む雰囲気を導入し、該雰囲気下、440〜490℃の範囲の温度で30〜120分間加熱することにより、金属リングWの窒化処理を行う。加熱炉6に導入される雰囲気は、純アンモニアガスであってもよく、純アンモニアガスの他に不活性ガス等を含むアンモニアガス雰囲気、または純アンモニアガスとRXガスとの混合ガス雰囲気であってもよい。
【0028】
本実施形態では、前記アンモニアガスを含む雰囲気下に加熱する際に、金属リングWの表面に塩化物被膜が存在せず、該表面が前述のように清浄で活性化された状態となっている。従って、アンモニアが分解して発生する水素が前記塩化物被膜と反応して塩化水素を生成することがなく、金属リングWの表面が該塩化水素に侵されて欠陥を生じることを未然に防止することができる。また、金属リングWの表面が清浄且つ活性化されていることにより、均一な窒化層を形成することができる。
【0029】
尚、本実施形態では、金属リングW表面の酸化被膜の除去を塩化物ガスにより行う場合について説明しているが、塩化物ガスに代えて、フッ化物ガス、臭化物ガス等の他のハロゲン化物ガスを用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】金属リングの製造工程を模式的に示す工程説明図。
【符号の説明】
1…マルエージング鋼の薄板、 W…マルエージング鋼の金属リング。
【発明の属する技術分野】
本発明は、無段変速機用ベルト等に用いられるマルエージング鋼の窒化処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車等の無段変速機(CVT)の動力伝達のために、複数の金属リングを積層して積層リングを形成し、該積層リングを所定形状のエレメントに組み付けて保持したCVT用ベルトが知られている。
【0003】
前記積層リングを形成する金属リングは、マルエージング鋼等のNi、Moを含む低炭素鋼の薄板を長方形に切断し、該薄板を長辺に沿って丸め、短辺側の端部同士を溶接して円筒状のドラムを形成した後、該ドラムを所定幅に裁断することにより製造されている。前記マルエージング鋼は、適温に加熱することによりマルテンサイト状態において時効硬化を生じ、高強度、高靱性を兼ね備える超強力鋼であるので、前記金属リングに賞用される。
【0004】
しかし、前記金属リングを積層した積層リングを前記CVTの動力伝達のために用いる場合には、さらに耐摩耗性、耐疲労強度を備えることが望まれる。そこで、前記時効硬化後のマルエージング鋼に表面硬化処理を施すが行われている。
【0005】
前記表面硬化処理は、一般に、前記金属リングに窒化処理を施して、該金属リング表面に窒化層を形成することにより行われる。前記窒化処理としては、例えば、ガス窒化処理またはガス軟窒化処理がある。
【0006】
前記ガス窒化処理は、前記金属リングを加熱炉内で、例えば500〜550℃に加熱した後、アンモニアガス雰囲気下、前記範囲の温度に所定時間保持することにより行われる。また、前記ガス軟窒化処理は、前記ガス窒化処理におけるアンモニアガス雰囲気に代えて、アンモニアガスとRXガスとの混合ガス雰囲気を用いる以外は、前記ガス窒化と全く同一にして行われる。
【0007】
前記ガス窒化処理またはガス軟窒化処理によれば、アンモニアの分解により生じる窒素がマルエージング鋼の金属組織中に浸透する。この結果、前記金属リングの表面に窒化層を形成して硬化させ、該金属リングの耐摩耗性、耐疲労強度を向上させることができる。
【0008】
ところが、窒素が前記マルエージング鋼の金属組織中に浸透するためには、前記金属リングの表面が活性化されていることが必要であり、該金属リング表面に酸化被膜が存在すると、前記窒化層が均一に形成されないとの問題がある。前記問題を解決するために、前記ガス窒化処理またはガス軟窒化処理に先だって、前記金属リングをフッ素化合物またはフッ素を含む雰囲気中で加熱することにより、前記酸化被膜をフッ化物被膜で置換する技術が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【0009】
前記技術によれば、前記フッ化物被膜が形成された金属リングに前記ガス窒化処理またはガス軟窒化処理を施すと、該フッ化物被膜が分解消失する代わりに前記金属リング表面が活性化され、活性化された金属表面に窒素が浸透して、均一な窒化層が形成されるとされている。
【0010】
しかしながら、前記ガス窒化処理またはガス軟窒化処理ではアンモニアが水素と窒素に分解し、該水素が前記フッ化物被膜の分解により発生するフッ素と化合して強酸化性を備えるフッ化水素を形成するので、前記金属リングの表面が該フッ化水素に侵され、欠陥を生じるという不都合がある。前記金属リングの表面に前記欠陥があると、該金属リングを積層してCVT用ベルトとして用いたときに、亀裂等の原因となる虞がある。
【0011】
【特許文献1】
特公平8−9766号公報(第2頁)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる不都合を解消して、マルエージング鋼表面の酸化被膜を除去して金属表面を活性化することができ、しかも該金属表面に欠陥を生じることのない窒化処理方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本発明の窒化処理方法は、マルエージング鋼をハロゲン化合物ガスの存在下に加熱して、該マルエージング鋼表面の酸化被膜を除去し、ハロゲン化物被膜を形成する工程と、該ハロゲン化物被膜が形成されたマルエージング鋼を、真空または減圧雰囲気下に加熱することにより該ハロゲン化物被膜を除去する工程と、該ハロゲン化物被膜が除去されたマルエージング鋼をアンモニアガスの存在下に加熱して窒化処理を行う工程とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の窒化処理方法は、まず、マルエージング鋼をハロゲン化合物ガスの存在下に加熱する。このようにすると、前記マルエージング鋼表面の酸化被膜が前記ハロゲン化合物と反応して除去され、代わりに該マルエージング鋼表面にハロゲン化物の被膜が形成される。前記ハロゲン化合物ガスとしては、フッ素化合物、塩素化合物、臭素化合物等のガスを用いることができる。
【0015】
次に、前記ハロゲン化物の被膜が形成されたマルエージング鋼を、真空または減圧雰囲気下に加熱する。このようにすると、前記ハロゲン化物の被膜が分解除去されるが、本発明の窒化処理方法ではこのときアンモニアが存在せず、該被膜の分解により生じたハロゲンは、酸を生成することなくハロゲンガスとして除去される。この結果、前記マルエージング鋼の表面は、前記酸化被膜もハロゲン化被膜も無く、極めて清浄で活性化された状態となる。
【0016】
そこで、次に、前記ハロゲン化物被膜が除去されたマルエージング鋼をアンモニアガスの存在下に加熱して窒化処理を行うことにより、前記マルエージング鋼の表面に欠陥を生じることなく、均一な窒化層を形成することができる。前記アンモニアガスの存在下に行う窒化処理は、ガス窒化処理であってもよく、ガス軟窒化処理であってもよい。
【0017】
本発明の窒化処理方法において、前記ハロゲン化物被膜が形成されたマルエージング鋼は、真空または減圧雰囲気下に、450〜490℃の範囲の温度で、5〜10分間加熱することにより該ハロゲン化物被膜を除去することが好ましい。
【0018】
前記温度が450℃未満では、前記ハロゲン化物被膜の除去に続いて窒化処理を行うことが困難になることがあり、490℃を超えると残留応力が過大になることがある。また、前記加熱時間が5分未満では生成したハロゲンガスを排出することが難しく、10分を超えると残留応力が低下して、十分な強度を得ることが難しくなる。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1はCVT用ベルトとして用いられる金属リングの製造工程を模式的に示す工程説明図である。
【0020】
前記金属リングを製造する際には、まず、図1示のようにマルエージング鋼の薄板1をベンディングしてループ化したのち、端部同士を溶接して円筒状のドラム2を形成する。前記マルエージング鋼は、Cが0.03%以下、Siが0.10%以下、Mnが0.10%以下、Pが0.01%以下、Sが0.01%以下の低炭素鋼であり、18〜19%のNi、4.7〜5.2%のMo、0.05〜0.15%のAl、0.50〜0.70%のTi、8.5〜9.5%のCoを含む所謂18%Ni鋼である。このとき、前記マルエージング鋼は溶接の熱により時効硬化を示すので、ドラム2の溶接部分の両側に硬度の高い部分が出現する。
【0021】
そこで、次に、ドラム2を真空炉3に収容して820〜830℃の温度に20〜60分間保持することにより第1の溶体化処理を行い、硬度ムラを除去する。前記第1の溶体化処理が終了したならば、ドラム2を真空炉3から搬出し、所定幅に裁断して金属リングWを形成する。
【0022】
前記のようにして形成された金属リングWは、次に圧下率40〜50%で圧延される。圧延された金属リングWには、表面から30μm程度の厚さで圧延組織が形成されている。そこで、圧延された金属リングWを、加熱炉4に収容して第2の溶体化を行うことにより、前記圧延組織を消滅させると共に、均一な金属結晶粒を形成させる。
【0023】
溶体化された金属リングWは、次に周長補正した後、加熱炉5に収容し、445〜475℃の範囲の温度に30〜150分間保持して時効処理を行う。そして、前記時効処理が終了したならば、金属リングWを加熱炉5内で冷却し、窒化装置に移送して、窒化処理を行う。
【0024】
本実施形態の窒化処理では、まず、前記時効処理が行われた金属リングWを、加熱炉6に収容し、塩化メチレン等の塩化物ガスの存在下に、440〜490℃の範囲の温度で1〜10分間加熱する。金属リングWの表面には、酸化被膜が形成されていることが多いが、前記塩化物ガスの存在下で加熱すると、前記酸化被膜が塩化物と反応して除去され、代わりに金属リングWの表面に塩化物被膜が形成される。
【0025】
前記塩化物ガスの存在下での加熱が終了したならば、次に、前記塩化物ガスを排出し、さらに加熱炉6内を減圧することにより、真空または10−3Pa未満の減圧雰囲気とする。そして、前記塩化物被膜が形成された金属リングWを、前記真空または減圧雰囲気下、450〜490℃の範囲の温度で5〜10分間加熱する。尚、加熱炉6は、前記真空または減圧雰囲気下に保持するために、常時排気されている。
【0026】
このようにすると、前記塩化物被膜が分解されて塩素ガスが発生し、該塩素ガスが排気される。一方、金属リングWの表面は、前記塩化物被膜が分解、除去されることにより、清浄で活性化された状態となる。
【0027】
前記真空または減圧雰囲気下での加熱が終了したならば、次に、加熱炉6内に少なくともアンモニアガスを含む雰囲気を導入し、該雰囲気下、440〜490℃の範囲の温度で30〜120分間加熱することにより、金属リングWの窒化処理を行う。加熱炉6に導入される雰囲気は、純アンモニアガスであってもよく、純アンモニアガスの他に不活性ガス等を含むアンモニアガス雰囲気、または純アンモニアガスとRXガスとの混合ガス雰囲気であってもよい。
【0028】
本実施形態では、前記アンモニアガスを含む雰囲気下に加熱する際に、金属リングWの表面に塩化物被膜が存在せず、該表面が前述のように清浄で活性化された状態となっている。従って、アンモニアが分解して発生する水素が前記塩化物被膜と反応して塩化水素を生成することがなく、金属リングWの表面が該塩化水素に侵されて欠陥を生じることを未然に防止することができる。また、金属リングWの表面が清浄且つ活性化されていることにより、均一な窒化層を形成することができる。
【0029】
尚、本実施形態では、金属リングW表面の酸化被膜の除去を塩化物ガスにより行う場合について説明しているが、塩化物ガスに代えて、フッ化物ガス、臭化物ガス等の他のハロゲン化物ガスを用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】金属リングの製造工程を模式的に示す工程説明図。
【符号の説明】
1…マルエージング鋼の薄板、 W…マルエージング鋼の金属リング。
Claims (2)
- マルエージング鋼をハロゲン化合物ガスの存在下に加熱して、該マルエージング鋼表面の酸化被膜を除去し、ハロゲン化物被膜を形成する工程と、
該ハロゲン化物被膜が形成されたマルエージング鋼を、真空または減圧雰囲気下に加熱することにより該ハロゲン化物被膜を除去する工程と、
該ハロゲン化物被膜が除去されたマルエージング鋼をアンモニアガスの存在下に加熱して窒化処理を行う工程とを備えることを特徴とする窒化処理方法。 - 前記ハロゲン化物被膜が形成されたマルエージング鋼は、真空または減圧雰囲気下に、450〜490℃の範囲の温度で、5〜10分間加熱することにより該ハロゲン化物被膜を除去することを特徴とする請求項1記載の窒化処理方法。
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RU2790841C1 (ru) * | 2022-07-22 | 2023-02-28 | Общество с ограниченной ответственностью научно-производственная фирма "Термомет-М" | Способ обработки поверхности жаропрочной нержавеющей стали |
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CN102308118B (zh) * | 2010-04-28 | 2013-04-17 | 丰田自动车株式会社 | 金属环及其制造方法 |
WO2012083974A1 (en) * | 2010-12-20 | 2012-06-28 | Robert Bosch G.M.B.H. | Heat treatment process for a manufacturing process of a drive belt metal ring component |
JP2014122367A (ja) * | 2012-12-20 | 2014-07-03 | Daido Steel Co Ltd | 真空浸窒処理方法 |
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2002
- 2002-09-24 JP JP2002277898A patent/JP3842193B2/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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