JP4175285B2 - 被膜形成方法 - Google Patents

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本発明は、半導体製造、化学工業、食品産業、火力または原子力発電設備等の分野で広く用いられているステンレス鋼鋼管を始めとする金属管において、加熱による金属管表面からのガスの発生を防止するとともに、管表面からの金属イオンの溶出を抑制するための酸化被膜を形成する被膜形成方法に関する。
クリーンな純粋物質を輸送する金属配管、異物質の混入により生じる管内通過物質の“物質汚染”が許されない配管等においては、配管表面からの塵や水分の放出、金属イオンの溶出、加熱による配管表面(正確には、配管の表面に存在する付着物)からのガス発生等があると、配管内を通過する物質の純度低下を招き、その物質を扱う設備の性能低下や、寿命の低下を来すという問題が生じる。
金属配管(金属管)は、一般に、冷間加工後に熱処理を施され、製造されるが、冷間加工された金属管、例えば鋼管を熱処理する場合、冷間圧延時や抽伸時に塗布した冷間圧延油、潤滑剤を洗浄(脱脂)し、鋼管の内外表面の付着物を除去する。除去しきれずに鋼管表面に付着物が残留したままで熱処理を施すと、圧延油や潤滑剤に含まれる炭化水素系の成分や塩素(Cl)化合物等が分解、蒸発してガスが発生し、これらのガスが特に滞留しやすい鋼管内に残留する。残留したガスは温度が低下すると凝縮して管内表面に付着し、配管として使用する際に再びガス発生し、管内を通過する物質に汚染を生じさせる。
また、特に、原子力発電設備に設けられている給水加熱器用の伝熱管には、クロム(Cr)を含むステンレス鋼製の鋼管(以下、「ステンレス鋼管」という)が使用されているが、製造の過程で酸洗処理を施した管表面に酸化被膜が形成されていない伝熱管を使用すると、原子炉運転時に伝熱管の表面から多量のクロムが溶出する。クロムの溶出量が増加すると、炉水が原子炉内を循環する過程で中性子の照射を受け、炉水中に放射性核種であるコバルト60(60Co)イオンが増加するとともに、原子炉内の機器にクロムが付着して運転性能が低下する等の問題が生じる。
前記伝熱管の表面からのクロムの溶出等、管の表面からの金属イオンの溶出に起因する汚染を防止するためには、酸化被膜の形成が有効である。
例えば、特許文献1には、Ni基合金管内に、露点が−60℃から+20℃までの範囲内にある水素または水素とアルゴンの混合ガスからなる雰囲気ガスを供給しつつ管を連続式熱処理炉内に装入して、650〜1200℃で所定時間保持し、管内表面に高温水環境でNiの溶出を抑制する酸化皮膜を生成させる熱処理方法が記載されている。この場合、熱処理炉の出側(または、入側と出側)に被処理管の進行方向への移動が自在なように設けた2基のガス供給装置と、熱処理炉内を貫通するように配置されるガス導入管とを用いて雰囲気ガスの管内への供給を行う。
また、特許文献2では、所定の化学組成を有する二相ステンレス鋼製の鋼材にH2濃度が実質的に100%で、かつ露点が−30℃以下のガス雰囲気中で1050℃以上に加熱保持する熱処理を施して、表面から少なくとも50μmにわたる表層がフェライト単相である高純度ガス用二相ステンレス鋼材の製造方法が提案されている。この二相ステンレス鋼材を10〜1000ppmの水蒸気を含む不活性ガス雰囲気中で500〜1000℃に加熱保持することにより、その表面にCr濃度の均一なCr酸化物を生成させることができるとしている。
しかし、特許文献1に記載される熱処理方法では、雰囲気ガスの管内への供給を、ガス供給装置とガス導入管とを用い、被処理管の進行に合わせて一方のガス供給装置から他方のガス供給装置へ切り替えながら行わなければならない。また、特許文献2に記載の二相ステンレス鋼材の製造方法では、熱処理とは別に酸化皮膜形成処理を行う必要があり、工程数の増大は避けられない。
一方、管内面の残留付着物からのガス発生に起因する管内通過物質の汚染を防止するためには、熱処理する際に、管内のガスを雰囲気ガスで完全に置換する方法が有効であり、従来から、そのための種々の対策が提案されている。
例えば、特許文献3では、弾性パッドが対向部に設けられた一対の開閉扉をパージ室の入口部の上下に夫々上下動するように設け、搬入される直管を入口部にて一時停止させ、上下から開閉扉により挟んでパージ室の雰囲気ガスの圧力を高くすることにより、直管内を雰囲気ガスに置換するようにした管内ガスパージ装置が提案されている。
また、特許文献4に開示される熱処理装置では、直状管を雰囲気ガス中で熱処理するための熱処理炉の側方には、直状管の入口に向けて直状管を送り込む為の装入テーブルを配設し、この装入テーブルには、直状管の先端が上記熱処理炉内に入った状態において、その直状管の後端が位置する場所を負圧にする為の負圧手段を設けている。これにより、直状管内のパージ作業を極めて簡易に行えるとしている。
しかしながら、特許文献3で提案された装置では、パージ室の入口部でその都度直管の装入を停止させる必要があるため、熱処理能率が著しく低下すると同時に、加熱雰囲気での弾性パッドの品質劣化が激しく、要求性能が得られない場合や、頻繁に交換を要するという問題がある。また、特許文献4が開示する装置は、大容量の負圧手段を必要とするため、大がかりな設備投資を要し、鋼管製造コストが上昇するという問題がある。
特開2003−239060号公報
特開平10−88288号公報 特開平5−320745号公報 特開平6−128645号公報
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、加熱によりガスを発生する脱脂残留物の金属管内面への付着を防止するとともに、管表面からの金属イオンの溶出、特に、原子力発電設備等の給水加熱器において、伝熱管に使用されるクロム含有ステンレス鋼管の表面からのCrイオンの溶出を抑制するための酸化被膜を形成する被膜形成方法を提供することを目的としている。
本発明者は、上記の課題を解決するため、冷間加工された鋼管を洗浄(脱脂)した後、その表面に残留する付着物を除去し、管表面からの金属イオンの溶出を抑制する酸化被膜を形成するための被膜形成方法について種々の検討を行った。
その結果、炉内の圧力が階段状に変化する熱処理炉において、雰囲気ガスとして微量の水蒸気を含む非酸化性ガスを用いて熱処理することにより、管内表面の残留付着物の分解により生成するガス(すなわち、管内通過物質に汚染を生じさせる「汚染ガス」)を容易に雰囲気ガスに置換すると同時に、管表面からの金属イオンの溶出を抑制する酸化被膜を形成することが可能であることを知見した。すなわち、前記汚染ガスを排除しながら、冷間加工後の鋼管の熱処理と酸化被膜を形成するための処理(以下、「被膜処理」という)とを同時に行うことができる。
本発明は、上述の知見に基づいてなされたものであり、下記の被膜形成方法を要旨としている。
『冷間加工した金属管に酸化被膜を形成する被膜形成方法であって、脱脂した後、炉入口から加熱帯の被熱処理管が最高温度となる位置までの炉内圧力が2段階以上で順次高くなり、被熱処理管が加熱されて500℃となる管進行方向位置での炉内圧力が、炉外圧よりも高く、かつ炉内最大圧力よりも低い圧力となる連続熱処理炉を用い、露点を−50℃から+50℃の範囲内に調節した非酸化性ガスを連続熱処理炉内に導入して、酸化被膜を形成することを特徴とする被膜形成方法。』
前記被膜形成方法において、油潤滑処理を行って冷間加工し、アルカリに浸漬し温水で洗浄することにより脱脂した後、熱処理し酸化被膜を形成することとすれば、酸洗による脱脂の必要がなく、腐食により粗さが劣化せず、欠陥がなく薄くて密着した被膜が得られ、望ましい。
前記被膜形成方法において、非酸化性ガスとして水素、または、水素を主成分とし、窒素、ヘリウム、アルゴンのうちの1種以上を含有するガスを用いることができる。
本発明の被膜形成方法によれば、冷間加工後の金属管を対象として、管内面の残留付着物から発生するガスを管内から排除しながら、熱処理と、管表面からの金属イオンの溶出を抑制するための酸化被膜を形成させる被膜処理とを同時に行うことが可能である。これにより、原子力発電設備を始めとする各種のプラントで使用する際に、金属の溶出や管内面の残留付着物からのガス発生等のない金属管を提供することができる。
前記のように、本発明の被膜形成方法は、『冷間加工した金属管に酸化被膜を形成する被膜形成方法であって、脱脂した後、炉入口から加熱帯の被熱処理管が最高温度となる位置までの炉内圧力が2段階以上で順次高くなり、被熱処理管が加熱されて500℃となる管進行方向位置での炉内圧力が、炉外圧よりも高く、かつ炉内最大圧力よりも低い圧力となる連続熱処理炉を用い、露点を−50℃から+50℃の範囲内に調節した非酸化性ガスを連続熱処理炉内に導入して、酸化被膜を形成する方法』である。すなわち、冷間加工した金属管を対象として、連続熱処理炉を用いて酸化被膜を形成する方法であって、管内面の残留付着物からの発生ガスを排除しながら、被膜処理と熱処理とを同時に行うことができる。
図1は、本発明の被膜形成方法を適用した一般的なステンレス鋼管の製管工程例を示す図で、(a)は従来方式の熱処理を行う工程例、(b)と(c)は本発明の被膜形成方法を適用した工程例である。(b)図は1パスの冷間加工を行う場合、(c)図は2パス以上の冷間加工を行う場合である。
図1(b)または(c)に示すように、「熱間製管」で得られたステンレス鋼管素管は、「化成皮膜潤滑処理または油潤滑処理」された後、「冷間加工」に供され、続いて「脱脂」(または、「脱脂」後、さらに「酸洗」)処理される。なお、前記の「脱脂」処理は、通常は、アルカリに浸漬し温水で洗浄することにより行われる。
熱間製管後の素管は、スケールの生成に起因して表面粗さが粗く、かつ、バラツキも大きい。加えて、母材のCrがスケール層の形成に消費されており、母材表面はCr濃度が低い。結晶粒界はCrの拡散速度が大きいためCr濃度がさらに低く、しかもその影響は粒界に沿って深くまで及んでいる。
この素管の表面を平滑にし、かつ、Cr濃度を均一化するために、「化成皮膜潤滑処理または油潤滑処理」を施し、断面減少率がある程度以上の冷間加工を行う。
化成皮膜潤滑処理は、化学反応により化成皮膜を形成させて潤滑性を付与する潤滑方法である。すなわち表面を腐食して粗くし、腐食生成物により表面を覆うものであり、密着性良く表面を覆い、潤滑性を付与させたものである。冷間加工時には工具と材料表面の間に皮膜が介在するため、摩擦せん断力は比較的弱くかつ皮膜が詰まった状態の表面凹部(ポケット)はすり潰され難い。また、潤滑膜(化成皮膜)の除去は困難で、冷間加工後は、アルカリ浸漬および温水洗浄に加え、「酸洗」による脱皮膜処理が必要になる(図1(a)参照)。このような処理の後も表面凹部には皮膜残存物があり、熱処理時に熱分解により発生するガスの増大を招く。
一方、油潤滑処理の場合は、潤滑剤(油)は管の表面に物理的に付着しているだけなので、表面粗さの劣化はなく、また、潤滑剤の除去の困難性は化成皮膜の除去の場合に比べて大きく軽減され、「酸洗」の工程を省略することができる。
したがって、図1(b)に示した工程例における「冷間加工」の前の「化成皮膜潤滑処理または油潤滑処理」は、通常は、油潤滑処理とし、冷間加工後、アルカリに浸漬し温水で洗浄することにより脱脂する(すなわち、酸洗処理をしない「非酸洗脱脂」とする)のが望ましい。なお、アルカリによる脱脂は、通常用いられている方法で行えばよい。
また、図1(c)に示した工程例でも、仕上げパスは油潤滑処理で行い、酸洗を含まない非酸洗脱脂とするのが望ましい。さらに、すべてのパスを、油潤滑処理で行い、非酸洗脱脂を実施し、中間での熱処理も後述する圧力が炉内で2段階以上に変化する連続熱処理炉を適用して行うのが、より望ましい。
冷間加工は少なくとも1回実施する。冷間加工の加工率は断面減少率で20%以上とするのが望ましい。これによって、管の内外表面に新生面が創出され、管の表面が平滑化されるとともに、表面近傍におけるCr濃度が均一化される。
加工方法は引抜き、圧延のいずれでもよく、引抜きと圧延を組み合わせてもよい。引抜きは管内に工具を挿入する芯金引きとする。空引きは、内面における新生面の生成が不十分であるため、望ましくない。
良好な新生面を得るためには、断面減少率を大きく取れる圧延を少なくとも1回実施するのが望ましい。
「冷間加工」後、「脱脂」処理される。冷間加工前の潤滑処理が油潤滑処理の場合は、潤滑剤(油)が管表面に物理的に付着しているだけなので、「アルカリ浸漬→温水洗浄」により潤滑剤はほとんど除去される。したがって、「酸洗」処理を要しない。一方、化成皮膜潤滑処理の場合は、前述したように、潤滑膜(化成皮膜)の除去が困難で、「酸洗」による脱脂が必要になる。
酸洗処理を行うと、結晶粒界が特に浸食され、表面粗さが劣化するとともに(後述する実施例の本発明例12参照)、母材と酸との反応で生成する反応膜が、被膜処理の際に、酸化被膜の生成に対して悪影響を及ぼす。
前記「潤滑処理」、「冷間加工」および「脱脂」に続いて、金属管に「被膜処理」を施す。この処理においては、「炉入口から加熱帯の被熱処理管が最高温度となる位置までの炉内圧力が2段階以上で順次高くなり、被熱処理管が加熱されて500℃となる管進行方向位置での炉内圧力が、炉外圧よりも高く、かつ炉内最大圧力よりも低い圧力となる連続熱処理炉を用い、露点を−50℃から+50℃の範囲内に調節した非酸化性ガスを連続熱処理炉内に導入」する。
炉入口から加熱帯の被熱処理管が最高温度となる位置までの炉内圧力が2段階以上で順次高くなり、被熱処理管が加熱されて500℃となる管進行方向位置での炉内圧力が、炉外圧よりも高く、かつ炉内最大圧力よりも低い圧力となる連続熱処理炉」を具体例に基づいて説明すると、例えば、入口帯、加熱帯、冷却帯および出口帯で構成される熱処理炉において、入口帯の内圧が、炉外圧以上で加熱帯の圧力以下となるように設定された(この場合は、2段階で順次高くなる)熱処理炉である。以下、炉内圧力が「2段階で順次高くなる」ことを「2段階に変化する」という。
図2(イ)は、このような圧力が炉内で2段階に変化する連続熱処理炉の断面構成例を模式的に示す図であり、図2の(ロ)、(ハ)および(ニ)は、それぞれこの熱処理炉を用いた場合の金属管(例えば、ステンレス鋼管)の温度パターン、炉内圧力分布および管内面の残留付着物から発生するガスの排出効果を模式的に示す図である。図2の(ロ)〜(ニ)における横方向の長さはいずれも(イ)のそれに対応している。
図2(イ)に示す熱処理炉は、入口帯1、加熱帯2、冷却帯3および出口帯4を有しており、加熱帯2に雰囲気ガスを導入して、金属管をその軸方向に沿って入口帯1から連続的に炉内に装入し、所定の熱処理を施し、出口帯4から搬出する構造になっている。炉床には、金属管を搬送するための送管用ローラ(図示せず)が配置されている。
入口帯1の入側と、加熱帯2の入側近傍および出口帯4の出側にそれぞれシールカーテン5a、5bおよび5cが取り付けられている。
図2(ハ)は、炉内の圧力分布で、前記のようにシールカーテン5a、5bおよび5cを取り付けることにより、シールカーテン5aを挟んで入口帯1と連続熱処理炉外との間で圧力差が生じ、シールカーテン5bを挟んで加熱帯2と入口帯1との間で圧力差が生じる。すなわち、炉内圧を炉外の圧力に対して入口帯1の部分と加熱帯2の部分とで2段階に変化させることができる。なお、シールカーテン5bとシールカーテン5cの間には圧力差はなく、シールカーテン5cを挟んで出口帯4と炉外との間に前記2段階分の圧力差が存在する。
図2(ロ)は、金属管の温度パターンである。金属管は、加熱帯2で加熱され、シールカーテン5bの手前で500℃に達し、さらに昇温して、固溶化熱処理温度で所定時間保持された後、冷却帯6で所定温度まで冷却され、その後は徐々に冷却される。なお、前記の500℃とは、後述する調査結果(図9参照)に基づくもので、残留付着物からのF、ClおよびS含有ガスの発生がこの温度までには終了する“ガス発生の上限温度”である。
図2(ニ)は、管内面の残留付着物から発生するガスの排出効果を説明するための図で、連続熱処理炉に装入された金属管が、金属管6aの位置から6eの位置まで炉内を搬送されていく間に、管内のガスが管外へ排出される状態を表している。金属管6aの全体、または管6bの後端側半分等の薄黒色を施した部分は、残留付着物から未だガスが発生していないか、発生していても、完全には排出されておらず、管内に滞留していることを表す。また、金属管6aから6eの先端および後端に記した薄黒色の矢印は、管内を流れる雰囲気ガスの流れの方向を示している。
図2(ニ)において、金属管6aは、その先端側3/4程度が炉内に装入され、管の先端がシールカーテン5bに達する直前の状態にある。管の大部分がまだ加熱されておらず、先端部でも500℃に昇温していない。炉外と入口帯1との間には圧力差があるので雰囲気ガスは管の先端から後端に向かって流れてはいるが、管内面の残留付着物からのガス発生は管の先端近傍で始まったばかりで(後述するように、残留付着物からのガス発生は200℃から500℃までの温度範囲で認められる)、管の大部分では未だガス発生は起こっていない。
金属管6bは、管の先端が加熱帯2にあり、管の後端が入口帯1にある状態で、管の先端側の半分は既に500℃以上に昇温して残留付着物からのガス発生が終わっており、一方、管の先端と後端との間には圧力差があるので、雰囲気ガスは管の先端から後端に向かって流れ、管の先端側半分の発生ガスは管外へ排出される。金属管6cは、この管外への排出が更に進んだ状態を示している。
金属管6dは、管全体が500℃以上に昇温して残留付着物からのガス発生が終わり、雰囲気ガスの管先端から後端への流れにより発生ガスが管外へ排出された状態を表している。そして、金属管6eは管の先端が炉外へ搬出された状態で、未だ炉内にある管の後端側の方が圧力が高いので、雰囲気ガスは逆に管の後端から先端へ流れる(薄黒色の矢印参照)。
図3は、圧力が炉内で2段階に変化する他の連続熱処理炉の断面構成例(図3(イ))、この熱処理炉を用いた場合の金属管の温度パターン(同(ロ))、炉内圧力分布(同(ハ))および管内面の残留付着物から発生するガスの排出効果(同(ニ))を模式的に示す図である。図3の(ロ)〜(ニ)における横方向の長さはいずれも(イ)のそれに対応している。
図3に示した熱処理炉と前記図2に示した炉との違いは、図3に示した熱処理炉においては、さらに、出口帯4の入側(換言すれば、冷却帯3の出側)にシールカーテン5dが取り付けられている点である。そのため、図3(ハ)に示すように、炉内の圧力分布が炉の出口帯4側でも2段階に変化している。
管内面の残留付着物から発生するガスの排出効果に関しては、図3(ニ)に示すように、前記図2に示した熱処理炉の場合と同等である。
図4は、圧力が炉内で2段階に変化するさらに他の連続熱処理炉の断面構成例(図4(イ))、この熱処理炉を用いた場合の金属管の温度パターン(同(ロ))、炉内圧力分布(同(ハ))および管内面の残留付着物から発生するガスの排出効果(同(ニ))を模式的に示す図で、(ロ)〜(ニ)における横方向の長さはいずれも(イ)のそれに対応している。
図4に示した熱処理炉と前記図2に示した炉との違いは、入口帯1のシールカーテンの取り付け位置で、図4に示した熱処理炉では、入口帯1の入側ではなく、後端にシールカーテン5a′が取り付けられている。そのため、図4(ハ)に示すように、炉内の圧力分布が若干相違し、炉内の1段目の圧力の範囲が狭くなっている。
管内面の残留付着物からのガスの排出効果に関しては、図4(ニ)に示すように、前記図2に示した熱処理炉の場合と同じである。
図5は、圧力が炉内で2段階に変化するさらに他の連続熱処理炉の断面構成例(図5(イ))、この熱処理炉を用いた場合の金属管の温度パターン(同(ロ))、炉内圧力分布(同(ハ))および管内面の残留付着物から発生するガスの排出効果(同(ニ))を模式的に示す図で、(ロ)〜(ニ)における横方向の長さはいずれも(イ)のそれに対応している。
図5に示した熱処理炉と前記図2に示した炉との違いは、入口帯1に予熱器7を設け、加熱帯2のシールカーテン5bを外して、入口帯1の後端にシールカーテン5a′を取り付けた点である。そのため、図5(ハ)に示すように、金属管の温度が500℃に到達する領域が入口帯1側へ移行するとともに、炉内の2段目の圧力の範囲が広くなっている。
その結果、管内面の残留付着物からのガスの排出効果に関しては、図(ニ)に示すように、残留付着物からのガス発生が早期に起こるので、発生ガスの管外への排出が迅速に行われる。これによって、熱処理炉内への送管速度の上昇が可能となる。
シールカーテンの材質、形状等について特に限定はなく、従来使用されている耐熱性のカーテンが使用できる。複数枚を重ね、更にそれを複数セットで使用すれば、シールカーテンの前後における圧力差の維持に効果的である。
前記の説明は、炉内の圧力が入口帯と加熱帯とで2段階に変化している例であるが、3段階以上に変化する炉を用いてもよい。
これに対して、従来は、炉内の圧力の段階的な変化のない熱処理炉が用いられてきたが、本発明の被膜形成方法で使用する連続熱処理炉との比較のためにここで説明する。
図6は、従来使用されてきた連続熱処理炉の断面構成例(図6(イ))、金属管の温度パターン(同(ロ))、炉内圧力分布(同(ハ))および管内面の残留付着物から発生するガスの排出効果(同(ニ))を模式的に示す図で、なお、図6の(ロ)〜(ニ)における横方向の長さはいずれも(イ)のそれに対応している。
図6に示した熱処理炉と前記図2〜図5に示した熱処理炉との違いは、加熱帯2のシールカーテン5bと、入口帯1の後端におけるシールカーテン5a′の有無である。すなわち、図2〜図5に示した熱処理炉はシールカーテン5bまたはシールカーテン5a′を備えているので、炉内の圧力を2段階に変化させることが可能であるが、図6に示した従来の熱処理炉では、図6(ハ)に示すように、炉内の圧力分布は1段である。
そのため、図6(ニ)に示すように、金属管全体が炉内に装入された状態(金属管6b、6c、6d)では、炉内雰囲気ガスの管先端から後端へ向かう流れは生じず、残留付着物から発生したガスが管内に滞留したままで被膜処理(固溶化熱処理)を受けることになるので、良好な被膜は形成されない。
金属管6eの状態になると管の先端部分が炉外に搬出されるので、管の後端から先端へ向かう雰囲気ガスの流れが生じるが、発生ガスが完全に排出(除去)される前に管全体が炉外へ搬出されると、発生ガスが一部管内に残留し、管内表面に凝縮、付着し、配管として使用する際に、管内を通過する物質に汚染を生じさせることになる。
本発明の被膜形成方法において、前記のように、圧力が炉内で2段階以上に変化する連続熱処理炉を用いるのは、以下の理由による。
冷間加工を行い、脱脂(非酸洗脱脂)処理した後の金属管の内外表面では、通常、脱脂剤(油潤滑処理に用いた潤滑油)は、見かけ上は除去されていると判断される。しかし、僅かではあるが残存(付着)しており、加熱すると残留付着物からガスが発生する。
金属加工用の潤滑油は一般的に油脂を主成分とし、それに添加されている極圧添加剤は、F、Cl、S、Pなどの化合物を含んでいる。脱脂後、除去されなかった僅かの残留潤滑油は管の内外面に付着しているが、被膜処理時には、管外面の付着物から発生したガスは炉内に飛散し、さらに、連続的に供給される雰囲気ガスで希釈されるので影響が少ない。しかし、管内面の残留付着物から発生したガスは管内に滞留しやすく、管内の内容積に対して無視できない量である。
雰囲気ガスとして水素を用いる従来の水素炉(「光輝炉」ともいう)において、ステンレス鋼管を熱処理した際の管内のガスを採取し、分析した結果、管内を十分に水素で置換した後に被処理材を炉内に装入して熱処理しているにもかかわらず、炭化水素、CO、CO2、N2、O2を主体とするガスが合わせて6〜10体積%(残部は、雰囲気ガスのH2)含まれていることが判明した。炭化水素、CO、CO2は、脱脂後の残留付着物から発生したガスであり、N2、O2は装入前の管内に存在していた空気に由来するものと考えられる。さらに、この結果から、微量ではあるが、極圧材に含まれるF、Cl、S等を含有するガス成分が残留付着物から発生し、管内に滞留することも予測される。なお、これらの成分は、管内通過物質に対する汚染という観点からは、微量でも問題となる成分である。
そこで、図7に示すように、円筒型加熱炉8を用いて、冷間加工および脱脂(非酸洗脱脂)処理した後のステンレス鋼管9を加熱し、残留付着物からのF、Cl、S等を含有するガスの発生特性を調査した。
図8は、実験で用いたヒートパターンを模式的に示す図で、(a)は加熱炉内の温度を段階的に上昇させた場合(ヒートパターンA)、(b)は500℃まで急激に加熱した後、室温まで低下させ、その後段階的に上昇させた場合(ヒートパターンB)である。
表1に実験条件を示す。なお、表1の「管内水素流れ」の欄の「有り」とは、ステンレス鋼管9の加熱中、実炉における通常の流量(0.5Nm3/h)とほぼ同程度になるように水素を送通したことを、「なし」とは、水素の送通を行わなかったことを表す。
Figure 0004175285
図9に調査結果を示す。図9中のテスト1(○印)、テスト2(●印)およびテスト3(×印)はそれぞれ表1のテスト1、テスト2およびテスト3に対応する。なお、発生したガスは管内に送通した水素とともに純水中に導いて溶解させ、その後、実施例で用いた方法により、F-、Cl-またはSO4 2-として定量し、図9の縦軸にそれらの総量で表示した。
図9のテスト1は、加熱炉内の温度を段階的に上昇させて、各温度でのF、ClおよびSを含有するガスの発生量を調査した結果で、200℃を超えると管内の付着物からのガス発生が認められ、300℃を超えるとその発生量が次第に減少し、500℃以上では殆ど発生しなくなることがわかる。これらのガスは、雰囲気ガスに混入すると酸化被膜の生成に悪影響を及ぼすので、500℃以上で炉内の雰囲気ガスを管内に通気させ、管の温度が被膜処理温度に達する前に管内から完全に排出する必要がある。
テスト3は、発生したガスが温度の低下により再度付着することを確認するために行ったもので、図8(b)に示すように、500℃まで加熱してガスを発生させても、室温まで低下させた後の段階的な温度の上昇により、テスト1の場合と類似のガス発生特性を示すことから、発生したガスが温度の低下により再度付着することがわかる。このような鋼管が配管として使用に供されると、温度上昇時に再度ガスが発生し、汚染が生じることになる。
そこで、図2〜図5に例示した連続熱処理炉を用いれば、鋼管内部に管の進行方向先端から後端に向かう雰囲気ガスの流れを自然に生じさせることができ、管内部の残留付着物から発生するガスを雰囲気ガスにより置換、排除しながら、被膜処理と熱処理(この例では、固溶化熱処理)とを同時に行うことができる。なお、前記図9に示したテスト2は、本発明の被膜形成方法を適用した場合の効果を確認するために、圧力が炉内で2段階に変化する連続熱処理炉で酸化被膜を形成させたステンレス鋼管を対象として加熱処理を行った結果で、管内の残留付着物から発生したガスは完全に排除され、管の冷却に伴う再付着が生じていないので、ガスの発生は認められなかった。
図1(b)および(c)では、この被膜処理を兼ねる熱処理を「管内に雰囲気ガス通気のある光輝熱処理」と表示している。また、図1(a)に示した従来の工程例では、「大気炉熱処理」が行われているが、これは、炉内圧力の段階的な変化がなく、大気雰囲気下で行う熱処理である。図1(c)に示した本発明の工程例の1パス目で行われる「大気炉熱処理または光輝熱処理」の「光輝熱処理」は、同じく炉内圧力の段階的な変化がなく、水素または水素主体の雰囲気下で行う熱処理である。なお、図1(c)に示した工程例では、仕上げパスで圧力が炉内で2段階以上に変化する連続熱処理炉を適用した熱処理、すなわち、「管内に雰囲気ガス通気のある光輝熱処理」を行っているが、先に付言したように、仕上げパスだけでなく全てのパスでこの光輝熱処理を実施するのが、より望ましい。
このように、本発明の被膜形成方法では、圧力が炉内で2段階以上に変化する連続熱処理炉を用いるのであるが、このとき、「露点を−50℃から+50℃の範囲内に調節した非酸化性ガスを連続熱処理炉内に導入」する。すなわち、被膜処理と熱処理とを同時に行えるように、操業上定められた熱処理条件(すなわち、加熱温度および時間)の下で適度な酸化被膜(欠陥のない密着した酸化被膜)が得られるような炉内雰囲気とする。具体的には、金属管表面の過剰な酸化を抑えるために非酸化性ガス雰囲気とし、これに、適度な酸化被膜を得るために水蒸気を加える。
水蒸気の混合量は、露点で管理し、露点が−50℃から+50℃の範囲内になるように調節する。被処理物の形状に応じ、熱処理温度と熱処理炉での加熱時間を考慮して、この範囲内で、所定の酸化被膜が得られる条件とする。例えば、ステンレス鋼管の熱処理では、外径、肉厚に応じて加熱昇温時間と冷却時間が異なり、小径薄肉管の場合は、加熱昇温時間が短時間で、管の送り速度が大きく在炉時間が短くなるので、雰囲気ガスの露点は、酸化雰囲気の強い高温側(+50℃側)に設定する。逆に、在炉時間の長い厚肉材の場合は、露点を酸化雰囲気の弱い低温側に設定するのがよい。なお、酸化被膜の厚さは、特に限定しない。欠陥がなく、薄く密着した、表面色むらの少ない酸化被膜であれば、管の表面からの金属イオンの溶出を抑制し、溶出に伴う汚染の防止に有効である。
非酸化性ガスとしては、水素を使用するのが一般的であるが、水素と不活性ガス(窒素を含む)を主体とするガスを用いることも可能である。例えば、水素を主成分とし、窒素、ヘリウム、アルゴンのうち少なくとも1種を含有するガスなどである。
窒素は安価なガスで、コスト面では有利である。しかし、例えば、ステンレス鋼管の窒素含有レベルによっては、母材への浸透(窒化)または脱窒を生じるので、母材の窒素含有量に応じて0〜10体積%の範囲で調整するのがよい。
熱処理と被膜処理を兼ねた、圧力が炉内で2段階に変化する連続熱処理炉での処理を終了して金属管の内外表面に酸化被膜を形成させた後、図1に示すように、「精整」工程、「検査」工程で、常法に従って曲がり矯正、切断、管端仕上げ等の「精整」や「検査」を行い、さらに、必要に応じ、Uベンド加工と精整検査を行う。
以上、主としてステンレス鋼管について説明したが、本発明の被膜形成方法は、その他の合金鋼、あるいはNi基合金、その他の非鉄金属を素材とする金属管の製造にも適用することができる。
SUS304(オーステナイト系ステンレス鋼)、SUS444(フェライト系ステンレス鋼)およびNCF690(ニッケルクロム鉄合金、Ni:60質量%、Cr:30質量%)をそれぞれ素材とするステンレス鋼管またはニッケルクロム鉄合金管(以下、単に「管」ともいう)を、前記図1(b)または(c)に例示した製管工程に準じた工程で製造し、表面粗さ、金属溶出量、被膜のバラツキおよび付着物(塩化物、硫化物)量を調査した。
前記製造した管の寸法は、それぞれの管について、外径34mm、厚さ4.0mm(以下、寸法「A」と記す)、または、外径16mm、厚さ1.2mm(以下、寸法「B」と記す)とした。
評価方法は次のとおりである。
〔表面粗さ〕
管の内面3箇所の表面粗さを中心線平均粗さRa(μm)で表示し、その平均値が0.5μm以下であれば「◎印(極めて良好)」、0.5μm超え1μm以下であれば「○印(良好)」、1μm超えであれば「×印(不良)」とした。
〔金属溶出量〕
管内に非脱気純水を封入し、215℃で100時間保持した後、封入水中のFe、CrおよびNiの量を誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−MS)で定量し、封入水量と管内の表面積から単位表面積当たり溶出量(mg/m2)を算出した。
Fe、CrおよびNiの溶出量の合計が5mg/m2以下であれば「◎印」、5mg/m2超え10mg/m2以下であれば「○印」、10mg/m2超えであれば「×印」とした。
〔被膜のバラツキ〕
被膜処理(熱処理)後の管について、炉幅方向3箇所(管の直径方向両端および中央)と長さ方向3箇所(管の先端、中央および後端)の計9箇所からサンプリングし、内外表面の色を目視にて観察した。
先ず、酸化被膜の有無を調査し、前記9個のうちの過半数のサンプルにおいて酸化被膜が認められなければ、「被膜なし」とした。続いて、被膜が認められた場合、薄く密着した酸化被膜であるか否かを評価し、1個以上のサンプルにおいて、薄く密着した酸化被膜とは認められない場合は、「欠陥有り」とした。欠陥なしと判定された場合、さらに、酸化被膜表面の色のバラツキを評価し、表面色むらが小さければ「○印」、表面色むらが大きければ「×印」とした。
〔付着物量(塩化物および硫化物量)〕
管内に純水を封入し、内面の付着物を溶出させた後、封入水中のClイオン、SO4イオンの濃度をイオンクロマトグラフィーにより求め、封入水量と管内の表面積から単位表面積当たりの塩化物量(mg/m2)、および硫化物量(mg/m2)を算出した。塩化物および硫化物の合計量が1mg/m2以下であれば「○印」、1mg/m2超えであれば「×印」とした。
製管条件を表2に、調査結果を表3に示す。
Figure 0004175285
Figure 0004175285
表2において、「脱脂方法」の欄の「アルカリ」とは、「アルカリ浸漬→温水洗浄」処理を、「酸洗」とは、「酸洗→水洗」を意味する。
表2の「炉の形式」の欄の「2段階炉内圧1」とは、炉内圧力が図2の(ハ)のような分布を示す炉であり、「2段階炉内圧2」とは、同じく図3の(ハ)、「2段階炉内圧3」とは、同じく図4の(ハ)、そして「2段階炉内圧4」とは、同じく図5の(ハ)のような炉内圧分布を示す炉である。また、比較例の「従来水素炉」とは、炉内の圧力の段階的な変化のない水素炉(光輝炉)である。また、「雰囲気ガス」の欄の「水素」は、H2が実質的に100体積%であることを意味する。
表2および表3から明らかなように、圧力が炉内で2段階に変化する熱処理炉(光輝炉)を用い、雰囲気ガスの露点を規定範囲内に調整した本発明例1〜11、13および14では、表面粗さRa、金属溶出量、付着物量および被膜のバラツキのいずれも良好であった。本発明例12で表面粗さRaが大きかったが、これは冷間加工前の潤滑処理に化成皮膜潤滑処理を行ったためである。しかし、これ以外の金属溶出量、付着物量および被膜のバラツキについては、良好な結果が得られた。
これに対して、「従来水素炉」を用いた比較例1、3では、管内面の残留付着物から発生するガスを完全に排出させることができず、管内に付着物が認められ、また、雰囲気ガスへの発生ガスの混入の影響で管内面に全長にわたり均一な酸化被膜が形成されず被膜のバラツキが大きかった。一方、雰囲気ガスの露点が本発明で規定する範囲から外れる比較例2、4では、「2段階炉内圧4」の熱処理炉を使用しているので管内に付着物は認められなかったが、被膜の状態は比較例1、3に比べてさらに悪かった。また、比較例1〜4全てにおいて、金属溶出量が大きかった。
本発明の被膜形成方法によれば、冷間加工後の金属管を対象として、管内面の残留付着物から発生するガスを排除しながら、熱処理と被膜処理を同時に行って、管の内外面に均一な酸化被膜を形成させることができる。したがって、本発明の被膜形成方法を適用した金属管は、金属の溶出や管内面の残留付着物からのガス発生等がなく、原子力発電設備を始めとする各種のプラントで利用することができる。
本発明の被膜形成方法を適用した一般的なステンレス鋼管の製管工程例を示す図で、(a)は従来方式の熱処理を行う工程例、(b)と(c)は本発明の被膜形成方法を適用した工程例である。 圧力が炉内で2段階に変化する連続熱処理炉の断面構成例(図2(イ))、金属管の温度パターン(同(ロ))、炉内圧力分布(同(ハ))および管内面の残留付着物から発生するガスの排出効果(同(ニ))を模式的に示す図である。 圧力が炉内で2段階に変化する他の連続熱処理炉の断面構成例(図3(イ))、金属管の温度パターン(同(ロ))、炉内圧力分布(同(ハ))および管内面の残留付着物から発生するガスの排出効果(同(ニ))を模式的に示す図である。 圧力が炉内で2段階に変化するさらに他の連続熱処理炉の断面構成例(図4(イ))、金属管の温度パターン(同(ロ))、炉内圧力分布(同(ハ))および管内面の残留付着物から発生するガスの排出効果(同(ニ))を模式的に示す図である。 圧力が炉内で2段階に変化するさらに他の連続熱処理炉の断面構成例(図5(イ))、金属管の温度パターン(同(ロ))、炉内圧力分布(同(ハ))および管内面の残留付着物から発生するガスの排出効果(同(ニ))を模式的に示す図である。 従来使用されてきた連続熱処理炉の断面構成例(図6(イ))、金属管の温度パターン(同(ロ))、炉内圧力分布(同(ハ))および管内面の残留付着物から発生するガスの排出効果(同(ニ))を模式的に示す図である。 管内の残留付着物からのF、Cl、S等を含有するガスの発生特性の調査に使用した実験装置の要部の概略構成を示す図である。 管内の残留付着物からのF、Cl、S等を含有するガスの発生特性の調査で用いたヒートパターンを模式的に示す図で、(a)は加熱炉内の温度を段階的に上昇させた場合(ヒートパターンA)、(b)は500℃まで急激に加熱した後、室温まで低下させ、その後段階的に上昇させた場合(ヒートパターンB)である。 管内の残留付着物からのF、Cl、S等を含有するガスの発生特性の調査結果で、加熱温度とF-、Cl-およびSO4 2-の合計量との関係を示す図である。
符号の説明
1:入口帯
2:加熱帯
3:冷却帯
4:出口帯
5a、5a′、5b、5c、5d:シールカーテン
6a、6b、6c、6d、6e:金属管
7:予熱器
8:円筒型加熱炉
9:ステンレス鋼管

Claims (4)

  1. 冷間加工した金属管に酸化被膜を形成する被膜形成方法であって、脱脂した後、炉入口から加熱帯の被熱処理管が最高温度となる位置までの炉内圧力が2段階以上で順次高くなり、被熱処理管が加熱されて500℃となる管進行方向位置での炉内圧力が、炉外圧よりも高く、かつ炉内最大圧力よりも低い圧力となる連続熱処理炉を用い、露点を−50℃から+50℃の範囲内に調節した非酸化性ガスを連続熱処理炉内に導入して、酸化被膜を形成することを特徴とする被膜形成方法。
  2. 油潤滑処理を行って冷間加工し、アルカリに浸漬し温水で洗浄することにより脱脂した後、熱処理し酸化被膜を形成することを特徴とする請求項1に記載の被膜形成方法。
  3. 非酸化性ガスが水素であることを特徴とする請求項1または2に記載の被膜形成方法。
  4. 非酸化性ガスが水素を主成分とし、窒素、ヘリウム、アルゴンのうち少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項3に記載の被膜形成方法。
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