JP2002256472A - フェライト系ステンレス鋼板及びその製造法 - Google Patents

フェライト系ステンレス鋼板及びその製造法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ロ−ルコ−ティングを安定して生成させ得る
簡易な手法を見出し、表面光沢の均一性等に優れたフェ
ライト系ステンレス鋼板を安価に提供する。 【解決手段】 熱間圧延鋼板の酸洗を硝酸濃度が20〜20
0g/L, 温度30〜70℃の硝酸あるいは硝酸混合液に15秒以
上浸漬し、機械的表面研削を行うことなく“表層から酸
素濃度が30原子%までの範囲における皮膜中のCr/Fe
原子比の最大値が0.28以上である酸化皮膜”を表面に有
して成るフェライト系ステンレス鋼板を得て、これを冷
間圧延用素材とする。また、鋼板の化学組成を調整する
ことで、優れた表面光沢に加えて加工性,耐食性に優れ
た冷延製品が得られるようにする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、冷間圧延後の表
面光沢の均一性に優れ、更には優れた加工性をも有する
冷間圧延用フェライト系ステンレス鋼板に関し、またそ
の製造方法にも関するものである。なお、本発明におい
ては、特に断らない限り「鋼板」は鋼帯をも含めた呼称
とする。
【0002】一般に、フェライト系ステンレス鋼板は、
その優れた外観,耐食性の故に各種の厨房用品,家庭用
品,建材,自動車用部材等といった様々な用途で使用さ
れている。しかし、近年、フェライト系ステンレス鋼板
に対する特性要求は一段と高度化してきており、優れた
加工性や耐食性は元より、意匠性の観点から表面光沢に
関する要求も年々厳しくなりつつある。特に、建築用部
材あるいはエレベ−タやエスカレ−タの側板等といった
外装材については、単なる「光沢がある」との要求のみ
に止まらず、表面光沢のムラや色調差が少ない所謂“表
面光沢の均一性”といった非常に厳しい要求がなされる
ようになってきた。
【0003】
【従来の技術】現在、工業的に製造されるフェライト系
ステンレス鋼板は、連続鋳造で得られた鋳片を熱間圧延
して熱間圧延鋼帯となし、得られた熱間圧延鋼帯に焼鈍
・酸洗を施してから冷間圧延にて所定の製品板厚まで圧
延し、次いでこれに再結晶焼鈍を施し、その後、光沢を
得るために調質圧延を施して製品とされるのが一般的で
ある。ただ、この場合における製品単重は通常6〜15
ton というオ−ダ−であるので、必要量の鋼板を製造す
るために繰り返される一連の製造工程においては例え同
一ロットであっても製造条件にバラツキ(実生産で許容
される範囲内のバラツキ)が生じるのを否めず、最終製
品において鋼板の幅方向及び長手方向で表面光沢等に若
干の差異が生じるのを回避しがたかった。そのため、表
面光沢の均一性が厳しく要求される用途においては、現
在、熱間圧延鋼帯を冷間圧延する前に該熱間圧延鋼帯の
表面をグラインダ−で手入れすることが常套的に行われ
ており、生産性の面で少なからぬ障害となっていた。
【0004】一方、最近の研究により、ステンレス鋼板
の表面性状に及ぼす新たな影響因子が存在することが明
らかになってきた。それは、冷間圧延時にロ−ル表面に
生成する“ロ−ルコ−ティング”と称されるものであ
る。即ち、ステンレス鋼板では一般に冷間圧延後の製品
表面を高光沢に仕上げるべく冷間圧延においてゼンジマ
−圧延機等を用い直径200mm以下の所謂“小径ワ−ク
ロ−ル”で圧延がなされる。このワ−クロ−ルは各ロッ
トの圧延を行う度に交換されるが、圧延完了後のワ−ク
ロ−ルの表面に黒褐色の付着物が生成するのが観察さ
れ、この黒褐色の付着物を“ロ−ルコ−ティング”と称
している。
【0005】ロ−ルコ−ティングが圧延後のステンレス
鋼板表面に及ぼす影響については、例えば「第46回塑
性加工連合講演会論文集,1995年,第139〜140
頁」や「第47回塑性加工連合講演会論文集,1996年,
第281〜282頁」にも報告がなされている。これら
によると、ロ−ルコ−ティングはFeあるいはCrの酸化物
を主体とした組成を有しており、圧延中に生成する鋼板
表面の摩耗粉あるいは酸化膜の微細粒子が剥離してロ−
ル表面に付着するものと推定されている。そして、ロ−
ルコ−ティングが生成すると、これがワ−クロ−ルの表
面研磨によって生じる“ロ−ル表面の微細な凹凸”を埋
めて平滑化してしまうため、圧延材の表面光沢が向上す
るものと考えられている。
【0006】従って、冷間圧延時にロ−ルコ−ティング
をワ−クロ−ル表面に均一かつ安定して生成させること
ができるならば、高光沢で均一な表面性状を有した圧延
板を得ることができると予想される。
【0007】しかしながら、冷間圧延時におけるロ−ル
コ−ティングの生成挙動は必ずしも明らかになっておら
ず、特にフェライト系ステンレス鋼板の圧延では、ワ−
クロ−ル表面にロ−ルコ−ティングが生成しないで面光
沢不良をもたらしたり、ワ−クロ−ル表面に生成するロ
−ルコ−ティングが幅方向で不均一となって表面光沢ム
ラを生じるといった問題を完全に克服することができな
かった。なお、このようなロ−ルコ−ティングの生成不
良に起因した表面光沢不良は、SUS430に代表され
る一般的なフェライト系ステンレス鋼板に比べ、成形性
や耐食性を向上させるために安定化元素としてTi,Nb,
Al,V等を添加した所謂“高純度フェライト系ステンレ
ス鋼板”において発生する傾向が強い。
【0008】冷間圧延に使用するワ−クロ−ルの表面に
ロ−ルコ−ティングを安定生成させる手法として、例え
ば特開平8−117804号公報には、圧延油のみを希
釈せずにワ−クロ−ル表面に供給してステンレス鋼板を
予備圧延する方法が提案されている。そして、当該特開
平8−117804号公報では、このようにして表面に
ロ−ルコ−ティング皮膜を生成させたワ−クロ−ルをス
テンレス鋼板の冷間圧延に供することによってヒ−トス
トリ−クスを抑制できるとしている。
【0009】また、特開平8−215712号公報を見
ると、圧延油にアルキルアミン及びアルカノ−ルアミン
のうち1種以上を添加することにより圧延油のpHを
8.0〜10の範囲に制御すると共に、使用する圧延油の
pHに応じて圧延ロ−ルの電位E (V) を〔−(pH×
0.1)〕から〔1−(pH×0.1)〕の範囲内に制御するこ
とによって圧延ロ−ルに安定したロ−ルコ−ティングを
生成させ、焼付き疵及びオイルピットを発生させること
なく高速の冷間圧延を可能とするステンレス鋼の冷間圧
延方法が開示されている。
【0010】更に、特開平8−225794号公報に
は、40℃での粘度が7〜150cStの合成エステルを
基油とすると共にエマルジョンの平均粒径を5μm未満
とした水溶性圧延油を用いた冷間圧延方法が開示されて
おり、これによりワ−クロ−ル表面にコ−ティング皮膜
が早期にムラなく生成して優れた光沢のステンレス鋼板
を得ることができるとしている。
【0011】しかしながら、前記特開平8−21571
2号公報や特開平8−225794号公報に開示されて
いる手法では、現行の圧延油を排して特殊なものを用い
る必要があり、場合によっては特別な圧延油循環供給装
置も必要になるなど、少なからずコスト増を余儀なくさ
れるものであった。また、上記特開平8−215712
号公報に開示されている手法によると、圧延ロ−ルへ電
位を付与し管理するための設備投資も必要となる。一
方、前記特開平8−117804号公報に開示されてい
る手法ではステンレス鋼板の冷間圧延に先立ってステン
レス鋼を用いた予備圧延を施す必要があり、工程増を招
くので好ましい方法とは言えなかった。
【0012】上述のように、ワ−クロ−ル表面にロ−ル
コ−ティングが生成すると、ロ−ル研磨痕の影響が抑え
られ、また冷間圧延時に生じがちなオイルピットや焼付
き疵等の欠陥が抑制されて製品表面光沢が著しく向上す
ることが知られており、圧延油の工夫によるロ−ルコ−
ティング生成手法も幾つか提案されてはいたが、それで
もロ−ルコ−ティングの生成機構が必ずしも明らかにな
っているとは言いがたく、そのため冷間圧延時に簡易か
つ安定にワ−クロ−ル表面にロ−ルコ−ティングを生成
させて表面光沢の均一性に優れたフェライト系ステンレ
ス鋼板を安価に提供する手段を見出せないでいるのが現
状であった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】このようなことから、
本発明が目的としたのは、従来の圧延設備,圧延手法に
格別な変更を加えることなく冷間圧延時にロ−ルコ−テ
ィングを均一かつ安定して生成させ得る簡易な手法を見
出し、これにより“表面光沢の均一性”等に優れたフェ
ライト系ステンレス鋼板を安価に提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記目的
を達成すべく、特にこれまではそれほど着目されること
のなかった“冷間圧延に供される母材の表面状態”に留
意し、母材の表面状態が冷間圧延時のロ−ルコ−ティン
グ生成に及ぼす影響を各種のフェライト系ステンレス鋼
について鋭意研究を行った。その結果、 a) ワ−クロ−ル表面におけるロ−ルコ−ティング生成
の有無には、冷間圧延に供される母材の表面酸化皮膜の
組成が大きく影響しており、母材の酸化皮膜組成がある
一定の条件を満足する場合は母材鋼の組成によらずほぼ
安定してロ−ルコ−ティングを生成させることができ
る, b) ロ−ルコ−ティングの生成に好ましいこのような母
材の表面状態は、熱間圧延鋼帯の酸洗工程で使用する酸
液の種類を極く一般的なものの中から選択すると共に、
その濃度,温度,浸漬時間を工夫するだけで得ることが
でき、適正条件の酸洗を施した後は、通常の酸洗工程で
一般的に行われる酸洗槽間でのブラシ研削や酸洗工程後
のコイルグラインダ−を用いての表面研削等といった鋼
帯表面の機械的研削を行わずに冷間圧延に供すること
が、均一なロ−ルコ−ティングを生成させる上での重要
な要件となる,という新しい知見を得ることができた。
【0015】即ち、フェライト系ステンレス鋼板の冷間
圧延時におけるロ−ルコ−ティング生成の有無は、当該
フェライト系ステンレス鋼板の鋼組成によらず、冷間圧
延に供される母材の表面酸化皮膜中のCr,Feの組成比で
整理すると比較的良く相関することが分かった。そし
て、表面酸化皮膜のうちのある酸素(O)濃度部位にお
ける「Cr/Fe比」がある特定の値以上となる領域におい
て非常に安定してロ−ルコ−ティングが生成することを
確認した。これは、母材の表面酸化皮膜がCr組成比の高
いCrリッチな皮膜組成になると、冷間圧延時において摩
耗粉が生成しやすくなったり、酸化皮膜の微細粒子がワ
−クロ−ルに付着しやすくなったりするためではないか
と考えられた。
【0016】また、このようなロ−ルコ−ティングの生
成に有利な母材酸化皮膜組成を得るためには、熱間圧延
フェライト系ステンレス鋼帯を酸洗する工程で、酸洗液
として“硝酸”あるいは“弗硝酸のような硝酸混合液”
を用い、このような酸液中で熱間圧延鋼帯の表面を一定
時間以上処理すれば良いことも明らかとなった。ここ
で、硝酸あるいは硝酸混合液は表面酸化皮膜の成長を促
進させ、かつ皮膜中のCr組成比を上げる働きがあると考
えられる。
【0017】ただ、このような酸洗を行う場合、酸洗槽
間(酸洗は複数の酸洗槽によって行われるのが通常であ
る)に設置したブラシで鋼帯の表面研削を行ったり、酸
洗後にコイルグラインダ−等で鋼帯表面を機械的に研削
したりすると、酸洗によって生成したCr比の高い酸化皮
膜が失われてロ−ルコ−ティングの生成に悪影響を及ぼ
すので、これら機械的研削は厳に慎まなければならな
い。酸洗槽間ブラシ研削や酸洗後の機械的研削を実施し
ないことにより、硝酸あるいは硝酸混合液で酸洗処理さ
れた熱間圧延フェライト系ステンレス鋼帯はCr比の高い
酸化皮膜が生成した状態のまま冷間圧延に供されること
となって、ワ−クロ−ル表面にロ−ルコ−ティングを容
易かつ安定に生成させることができる。
【0018】本発明は、上記知見事項等に基づいてなさ
れたものであり、次の冷間圧延用フェライト系ステンレ
ス鋼板並びにその製造方法を提供するものである。 “皮膜表層から酸素濃度が30原子%に減少するに
至るまでの範囲における皮膜中のCr,Fe組成比(Cr/Fe
原子比)の最大値が0.28以上である酸化皮膜”を表面に
有して成ることを特徴とする、冷間圧延後の表面光沢の
均一性に優れる冷間圧延用フェライト系ステンレス鋼
板。 母材が、質量%にて、C:0.10%以下,Si:1.5 %
以下,Mn:1.5%以下,P:0.040 %以下,S:0.030 %
以下,N:0.050 %以下,Cr:14.0〜25.0%を含み、残
部がFe及び不可避的不純物である組成を有して成る、前
記記載の冷間圧延用フェライト系ステンレス鋼板。 母材が、質量%にて、C:0.10%以下,Si:1.5 %
以下,Mn:1.5%以下,P:0.040 %以下,S:0.030 %
以下,N:0.050 %以下,Cr:14.0〜25.0%を含むと共
に、更にCu:1.5 %以下,Nb:0.1 〜1.0 %,Ti:0.03
〜0.15%,Al:0.2 %以下及びV:1.0 %以下のうちの
1種又は2種以上を含有し、残部がFe及び不可避的不純
物である組成を有して成る、前記記載の冷間圧延用フ
ェライト系ステンレス鋼板。 熱間圧延鋼板を酸洗処理するに際して、酸洗槽のう
ちの少なくとも1つの槽を硝酸あるいは硝酸混合液によ
る酸洗槽となし、少なくともこの酸洗槽にて熱間圧延鋼
板を濃度20〜200g/L(リットル) ,温度30〜70℃の
硝酸あるいは硝酸混合液から成る酸洗液に15秒以上浸
漬すると共に、この硝酸あるいは硝酸混合液への浸漬後
は機械的表面研削を行うことなく処理製品とすることを
特徴とする、前記乃至の何れかに記載の冷間圧延用
フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
【0019】なお、 本発明では、鋼の化学成分割合を表
す%は断りがない限り質量%とし、また表面酸化皮膜中
の原子比率を表す%は断りがない限り原子%とする。以
下、本発明において冷間圧延用フェライト系ステンレス
鋼板の表面酸化皮膜組成,母材の化学組成,鋼板の製造
条件を前記の如くに限定した理由を、必要により本発明
の実施の形態をも紹介しながら説明する。
【0020】
【発明の実施の形態】[A] 表面酸化皮膜組成の限定理
由 先にも述べたように、一般にフェライト系ステンレス鋼
板は連続鋳造鋳片を熱間圧延して熱間圧延鋼帯となし、
得られた熱間圧延鋼帯に焼鈍・酸洗を施してから冷間圧
延にて所定の製品板厚まで圧延し、更に再結晶焼鈍を施
してから光沢を得るための調質圧延を行って製品とされ
ている。本発明では、冷間圧延に供される酸洗後の熱間
圧延フェライト系ステンレス鋼板を、“皮膜表層から酸
素濃度が30原子%に減少するに至るまでの範囲におけ
る皮膜中のCr,Fe組成比(Cr/Fe原子比)の最大値が0.
28以上である酸化皮膜”を表面に有して成る構成とす
る。これは、冷間圧延時におけるワ−クロ−ル表面への
ロ−ルコ−ティングの生成に関し、表面酸化皮膜中のCr
/Fe値が高いものの方が(Crリッチな皮膜組成の方が)
有利となるためである。
【0021】酸化皮膜中の原子比は、ESCA (Electr
on Spectroscopy for Chemical Analysis)やXPS (X
-ray Photoelectron Spectroscopy)のような物理分析機
器を用いて鋼板表面を深さ方向にスパッタリングし、各
原子のX線強度から原子比率を求めることにより容易に
測定することができる。酸化皮膜中の原子比を確認する
手法は特に規定されるものではないが、具体的な測定手
順例を以下に示す。 1) 酸洗後の熱間圧延鋼板から「板厚×5mm角」の大き
さに測定サンプルを切り出す。ここで、鋼板幅方向にお
ける測定サンプルの切り出し箇所は任意で良いが、鋼板
の代表的な情報を得るためには幅中央部から切り出すの
が好ましい。 2) 酸化皮膜中のFe,Cr,Oの原子比率を測定するた
め、ESCAにて表面酸化皮膜の分析を行う。スパッタ
リングガスは例えばArガスを用いることができる。ま
た、スパッタリングは、例えば3秒ピッチで合計60秒
まで行うことによって目的を達成することができる。各
々のスパッタリング深さにおいてMgKαを表面に照射す
ると、各原子において固有X線が発生し、その発生した
X線のカウント数から原子%で組成比を求めることがで
きる。図1,図2及び図3に、焼鈍に続いて酸洗処理を
行った後の熱間圧延フェライト系ステンレス鋼板から測
定サンプルを切り出し、その酸化皮膜中Fe,Cr,Oにつ
いて各スパッタリング深さでの原子%の組成比を求め、
深さ方向における原子比の変化状態を調べた結果例を示
す。なお、図1は後述する実施例の試験番号2の例、図
2は試験番号8の例、図3は試験番号12の例(比較例)
である。 3) 上記のように測定した各深さでのFe,Cr,Oの原子
比率からCr/Fe比を算出する。
【0022】なお、スパッタリングは少なくとも“酸化
皮膜表層から酸素(O)濃度が30原子%に減少するに
至るまでの範囲”について行えば良い。なぜなら、ワ−
クロ−ルへのロ−ルコ−ティングの生成に影響を及ぼす
のは酸化皮膜層のこの範囲の部位だからである。一般的
なArガスを用いたスパッタリングであれば、最低60秒
までスパッタを行えば上記皮膜層範囲の組成比は十分に
測定が可能である。
【0023】ところで、単に酸化皮膜層の深さ方向に原
子比率を求めるだけではロ−ルコ−ティング生成に有利
な皮膜組成は明らかでないが、図4で示すように、Cr/
Fe原子比をO濃度(原子%)との関係で整理すると、ロ
−ルコ−ティングの生成に有利な皮膜組成を明らかに把
握することができる。即ち、ESCAを用いてFe,Cr,
Oの深さ方向の原子比を求めると「ワ−クロ−ルにロ−
ルコ−ティングが生成するもの」と「ワ−クロ−ルにロ
−ルコ−ティングが生成しないもの」とでその表面酸化
皮膜に明確な差異は認められないが、O濃度とCr/Fe原
子比で測定結果を整理し、これと冷間圧延の結果とを照
らし合わせると、ワ−クロ−ルにロ−ルコ−ティングの
生成しやすい皮膜組成が明らかに浮かび上がる。
【0024】つまり、“皮膜表層から酸素濃度が30原
子%に減少するに至るまでの範囲における酸化皮膜中Cr
/Fe原子比の最大値が0.28に満たないと、母材表面の活
性度が低下して冷間圧延時にロ−ルコ−ティングの生成
に有効な摩耗粉や酸化皮膜の微細粒子が生成しにくくな
り、ロ−ルコ−ティングの生成がロ−ルの幅方向で不均
一となったりロ−ルコ−ティングが全く生成しなくなっ
たりするために好ましくない。
【0025】なお、冷間圧延時のワ−クロ−ル表面に安
定してロ−ルコ−ティングを生成させるためには、表層
からO濃度が30原子%となる範囲の表面酸化皮膜中Cr
/Fe比の最大値は0.30以上であることが好ましい。
【0026】[B] 鋼板化学組成の限定理由 冷間圧延によるフェライト系ステンレス鋼冷延板の製造
性や冷間圧延後のフェライト系ステンレス鋼冷延板の加
工性,耐食性の観点からは、本発明に係る冷間圧延用フ
ェライト系ステンレス鋼板は前記項又は項で示した
化学組成とするのが良い。鋼板の化学組成をこのように
限定する理由は次の通りである。
【0027】C:Cは鋼を硬質化させて加工性を低下さ
せるほか、耐食性を劣化させる元素でもあるので、その
含有量をできるだけ少なくする方が良い。そして、優れ
た加工性を確保するためにはC含有量を0.10%以下にま
で低減するのが好ましい。
【0028】Si:Siは鋼の脱酸剤として有効な成分であ
り、また鋼の耐酸化性を向上させる作用を有している。
しかし、その含有量が 1.5%を超えると含有量の増加と
共に鋼の硬質化が顕著となって加工性が劣化することか
ら、Si含有量は 1.5%以下とするのが良い。 Mn:Mnにも鋼の脱酸作用があり、また高温でのスケ−ル
剥離を抑制する元素でもあるので 1.5%以下の範囲で含
有させるのが良い。なお、Mn含有量が 1.5%を超えると
発錆や孔食の起点となって耐食性が低下するだけでな
く、鋼のコストが高くなり経済面で不利となる。
【0029】P:Pは鋼の耐食性,靭性を低下させる不
純物元素であり、その含有量をできるだけ低くする方が
望ましい。そして、P含有量が0.04%を超えると鋼の加
工性劣化が顕著化することから、その含有量を0.04%以
下とするのが良い。 S:Sは鋼の発錆や孔食の起点となり耐食性を劣化させ
る不純物元素であり、やはりその含有量をできるだけ低
くする方が好ましい。そして、S含有量が0.03%を超え
ると耐食性の劣化が顕著化することから、その含有量の
上限を0.03%とするのが良い。
【0030】N:NはCと同様に鋼の強度を上昇させる
元素であるため、その含有量をできるだけ低減すること
が望まれる。そして、鋼の加工性劣化,耐食性劣化を顕
著化させないという観点からN含有量の上限は 0.050%
とするのが良い。
【0031】Cr:Crは、鋼に表面酸化皮膜を形成させて
耐食性を向上させるための主要成分である。ロ−ルコ−
ティングの生成に有効なCrリッチな表面酸化皮膜を得る
ためにはCrを14%以上含有させることが望まれるが、25
%を超えて含有させると製造性が劣化し、コスト上昇を
招く。
【0032】Cu:Cuには鋼の耐食性や加工性を向上させ
る効果があるため、必要により含有させるのが好ましい
元素である。しかしながら、 1.5%を超えてCuを含有さ
せても、前記効果が飽和するだけでなく熱間加工性の劣
化を招く。
【0033】Ti:TiにはC,Nを析出物として固定し鋼
の耐食性や加工性を向上させる効果があるため、必要に
より含有させるのが好ましい元素であり、それらの効果
を安定して得るためにはその含有量を0.03%以上とする
のが望ましい。しかし、0.15%を超えてTiを含有させる
とTi系の大型介在物が起因となって表面品質を劣化させ
るおそれがあるため好ましくない。
【0034】Nb:NbにもTiと同様にC,Nを析出物とし
て固定し鋼の耐食性や加工性を向上させる効果があるた
め、必要により含有させるのが好ましい元素である。そ
して、これらの効果が顕著化するのはNb含有量が 0.1%
からであるが、 1.0%を超えて含有させると鋼が硬質化
するので望ましくない。
【0035】Al:Alは固溶Nを低減し降伏点を下げて加
工性を改善する効果と鋼の靭性を改善する効果を発揮す
る元素であるので、必要により含有させるのが好ましい
元素である。しかし、Al含有量が 0.2%を超えると固溶
Alが靭性を低下させ、製造性が劣化するという弊害が現
れる。
【0036】V:VはCを析出物として固定し鋼の加工
性を向上させる効果のほか、鋼の焼入れ性を向上させる
効果を発揮する元素であるので、必要により含有させる
のが好ましい元素である。しかしながら、V含有量が
1.0%を超えると鋼の強度が上昇しすぎるので好ましく
ない。
【0037】[C] 酸洗条件の限定理由 冷間圧延に供するフェライト系ステンレス鋼板の表面に
“皮膜表層から酸素濃度が30原子%に減少するに至る
までの範囲における皮膜中のCr/Fe比の最大値が0.28以
上である酸化皮膜”を安定かつ均一に生成させるために
は、熱間圧延後の鋼帯の酸洗処理工程において、通常は
複数の酸洗槽のうちの少なくとも1槽で硝酸あるいは硝
酸混合液での酸洗を行う必要がある(勿論、 酸洗槽が1
槽のみの場合はその酸洗槽で硝酸あるいは硝酸混合液を
用いた酸洗を行う必要がある)。
【0038】ここで、「硝酸混合液」とは、脱スケ−ル
を促進させる目的で硝酸にその他の酸洗液を混合したも
のを言う。このような硝酸混合液としては硝酸に弗酸あ
るいは塩酸を加えた弗硝酸,塩硝酸が挙げられ、弗酸あ
るいは塩酸のそれぞれ好ましい濃度としては弗酸の場合
は5〜150g/L ,塩酸の場合は10〜200g/L であ
る。
【0039】さて、硝酸は、その他の酸洗液に比較する
とステンレス鋼の表面酸化皮膜の成長を促進させ、かつ
Crリッチな皮膜を形成させる働きがある。その作用によ
り、フェライト系ステンレス鋼熱間圧延板に硝酸あるい
は硝酸混合液での酸洗を行うと冷間圧延時のワ−クロ−
ルにロ−ルコ−ティングの生成に有利な組成の表面酸化
皮膜が安定生成するものと考えられる。
【0040】また、複数ある酸洗槽のうち、硝酸あるい
は硝酸混合液による酸洗を行う酸洗槽以外の槽で用いら
れる酸洗液としては、一般的に使用される硫酸,塩酸等
が挙げられる。本発明においては、酸洗槽の少なくとも
1槽に硝酸あるいは硝酸混合液を収容し、熱間圧延後の
フェライト系ステンレス鋼板を少なくともこの酸洗槽に
通して酸洗を行う限りにおいては、その他の酸洗槽にお
ける酸洗は上記の硫酸,塩酸等といった任意の酸洗液を
適宜用いることができる。
【0041】なお、本発明において、酸洗液として用い
られる硝酸(硝酸混合液の場合も含む)の濃度,温度、
並びにそれへの被処理鋼板の浸漬時間を、それぞれ「2
0〜200g/L 」,「30〜70℃」並びに「15秒以
上」と定めたのは、次の理由による。
【0042】酸洗液の硝酸濃度:酸洗に用いられる硝酸
濃度(硝酸混合液中の硝酸濃度も含む)が20g/L に満
たないと、硝酸浸漬による酸化皮膜形成の効果が十分得
られず、フェライト系ステンレス鋼板母材表面に形成さ
れる酸化皮膜が“安定して冷間圧延時のワ−クロ−ルに
ロ−ルコ−ティングが生成する皮膜組成”とはならな
い。一方、酸洗液の硝酸濃度を200g/L を超える高濃
度としても酸化皮膜形成の効果が飽和するばかりか、酸
洗液のコストが嵩むこととなる。従って、酸洗液の硝酸
濃度は20〜200g/L と定めた。
【0043】酸洗液の温度:酸洗液として用いる硝酸あ
るいは硝酸混合液の温度が30℃に満たないと、フェラ
イト系ステンレス鋼板母材表面の反応が不十分となり、
形成される酸化皮膜が“安定して冷間圧延時のワ−クロ
−ルにロ−ルコ−ティングが生成する皮膜組成”とはな
らない。一方、酸洗液として用いる硝酸あるいは硝酸混
合液の温度が70℃を超えている場合には、鋼板の浸漬
によって有害ガスであるNOx の発生が著しくなり、そ
のためNOx 除去装置等の新たな設備投資が必要となる
ので好ましくない。従って、酸洗液として用いる硝酸あ
るいは硝酸混合液の温度は30〜70℃と定めた。
【0044】浸漬時間:酸洗液として用いる硝酸あるい
は硝酸混合液への浸漬時間が15秒に満たないと、やは
りフェライト系ステンレス鋼板母材表面に形成される酸
化皮膜が“安定して冷間圧延時のワ−クロ−ルにロ−ル
コ−ティングが生成する皮膜組成”とはならない。従っ
て、フェライト系ステンレス鋼板を酸洗液として用いる
硝酸あるいは硝酸混合液へ浸漬する時間は15秒以上と
定めた。
【0045】ところで、本発明においては、酸洗液とし
て用いる硝酸あるいは硝酸混合液への浸漬後は、酸洗時
に脱スケ−ルを補助する目的で一般に行われている酸洗
槽間での鋼板表面のブラシ研削や酸洗後に鋼板表面の欠
陥を除去するためあるいは表面の均一化を確保するため
に行われているコイルグラインダ−による手入れ等は省
略しなければならない。これは、鋼板表面を機械的に研
削すると、折角硝酸あるいは硝酸混合液による酸洗で得
られた表面の酸化皮膜の組成が変化してしまい、冷間圧
延時にロ−ルコ−ティングが生成しにくくなるためであ
る。また、ブラシやコイルグラインダ−の研削目が製品
表面にスジ状の欠陥として残存する可能性もあり、この
点からも酸洗槽間でのブラシ研削や酸洗後のコイルグラ
インダ−による手入れは避けるべきである。
【0046】しかしながら、表面欠陥を除去するために
コイルグラインダ−による表面研削が回避できない場合
は、コイルグラインダ−にて鋼板表面を研削した後に、
更に本発明に係る酸洗処理(特定硝酸濃度,温度の硝酸
あるいは硝酸混合液に特定時間以上浸漬して酸洗する処
理)を行えば良い。このような再度の酸洗処理を行うこ
とにより、ロ−ルコ−ティング生成に有利な表面酸化皮
膜を回復させることができる。
【0047】続いて、本発明を実施例により更に具体的
に説明する。
【実施例】〔実施例1〕表1に示す鋼組成を有するフェ
ライト系ステンレス鋼を80ton の電気炉で溶製し、連
続鋳造法にて鋳片とし、1200℃×3時間の加熱を行
い、熱間厚により厚さ 3.0mm,幅1000mmの熱間圧延鋼帯
とした。
【0048】
【表1】
【0049】この熱間圧延鋼帯にバッチ型焼鈍炉にて8
50℃で14時間の焼鈍を施し、次いで連続焼鈍・酸洗
ラインにて焼鈍することなくショットブラストと酸洗に
より酸化スケ−ルの除去を行った。酸洗ラインの酸洗槽
は3槽からなり、第1槽及び第2槽は20%H2
4 ,80℃の同一条件とし、第3槽の酸洗条件を表2
に示す通りに変化させた。
【0050】
【表2】
【0051】このようにして得られた各フェライト系ス
テンレス鋼帯の表面酸化皮膜の組成を確認するために、
各鋼帯の長手方向の中央部から切り板片を採取し、更に
その幅中央の位置からESCAに供試するサンプルを採
取した。サンプルの寸法は厚さ 3.0mm×幅,長さとも5
mmである。これらのサンプルについて、ESCAにてAr
ガスで3秒ピッチで合計60秒のスパッタリングを行
い、各ピッチでのFe,Cr,Oの原子%での組成比を求め
た。そして、各深さでのFe,Crの原子%からCr/Feの最
大値を求めた。
【0052】また、上記の酸洗処理を施したステンレス
鋼帯を冷間圧延した際におけるロ−ルコ−ティングの生
成状況を確認すべく、各鋼帯を冷間圧延に供試した。冷
間圧延は、20段のゼンジマ−圧延機を用い、ワ−クロ
−ル径90mm,圧延速度200mpm の条件で母材厚さ
3.0mmから製品厚さ 0.6mmまで圧延した。圧延ワ−クロ
−ルは、各ステンレス鋼帯の圧延が完了する度に新ロ−
ルと交換し、圧延完了後のワ−クロ−ル交換時にロ−ル
コ−ティングの生成状況を目視にて確認した。
【0053】冷延圧延により製品厚まで圧延された各鋼
帯は、その後連続焼鈍酸洗ラインにて再結晶焼鈍を施し
た後、酸洗処理にてスケ−ルを除去し、その後調質圧延
を施すことにより冷延製品となした。このようにして製
造されたステンレス冷延鋼帯の表面光沢及び均一性を評
価するために、鋼帯の幅方向及び長手方向の外観を目視
で観察すると共に、先後端より切り板サンプルを採取し
圧延90°方向の光沢度の測定を行った。これらの結果
を表3に示す。
【0054】
【表3】
【0055】表3に示される結果からも明らかなよう
に、本発明に係る熱間圧延ステンレス鋼帯は表面酸化皮
膜中のCr/Fe組成比の最大値が0.28以上となりロ−ルコ
−ティングが生成しやすい皮膜構造となっている。その
ため、冷間圧延においてロ−ルコ−ティングが均一に生
成し、高光沢で均一性に優れる冷延製品表面を得ること
ができる。また、光沢度測定結果を見ても、先端部及び
後端部とも安定して光沢度500以上の高光沢の表面と
なっており、先後端の光沢度の差も15以下と非常に小
さくて表面光沢の均一性にも優れていることが分かる。
【0056】これに対して、酸化皮膜中のCr/Fe組成比
の最大値が0.28に満たない試験番号11〜17は、冷間圧延
時にロ−ルコ−ティングが生成しなかったり、生成して
も幅方向で不均一となり、そのため製品表面で光沢が不
均一となっている。光沢度で比較しても、光沢度500
以上の高い光沢を安定して得ることができず、先後端で
の光沢度の差も20以上で本発明例よりも表面の均一性
に劣るものである。
【0057】また、酸洗液温の高い試験番号18及び酸洗
液の硝酸濃度が高い試験番号19は、共に冷延製品表面の
光沢度,均一性に優れるものの、酸洗時のNOx 発生量
が多くて作業環境を著しく汚染したり酸の原単位が上昇
してコスト高を招くため、これらの観点から好ましいと
は言えなかった。
【0058】〔実施例2〕表4に示す化学組成のフェラ
イト系ステンレス鋼を、実施例1と同じ方法で熱間圧延
鋼帯とした。
【0059】
【表4】
【0060】次に、各熱間圧延鋼帯について、バッチ型
焼鈍炉あるいは連続焼鈍酸洗ラインにて表5に示す熱処
理を行った後、表6に示す酸洗条件で酸洗処理を行っ
た。
【0061】
【表5】
【0062】
【表6】
【0063】このようにして得られたフェライト系ステ
ンレス鋼帯について、実施例1と同じ手法にて表面酸化
皮膜の組成比を調査し、冷間圧延時のワ−クロ−ルコ−
ティングの生成状況及び冷延製品の表面評価を行った。
【0064】また、得られた冷延製品の加工性を評価す
るため、各フェライト系ステンレス冷延鋼帯の圧延直角
方向からそれぞれJIS Z 2201に規定されるJ
IS13B号試験片を採取し、JIS Z 2241に
規定される方法で常温の引張試験を行ってその伸びを測
定した。
【0065】更に、冷延製品の耐食性を評価するため、
JIS Z 2371に規定される塩水噴霧試験を連続
7日間行い、7日後の試験片表面を光学顕微鏡の50倍
視野にて観察して発銹の有無を評価した。
【0066】加えて、各製造工程毎に鋼帯の外観観察を
行い、鋼帯の破断,幅部の割れ(以下“耳割れ”と称す
る)の発生の有無を観察し、製造性の評価とした。これ
らの結果を表7に示す。
【0067】
【表7】
【0068】表7に示される結果からも明らかな通り、
本発明に係るフェライト系ステンレス鋼帯は、冷延圧延
時にロ−ルコ−ティングが安定して生成し高光沢で均一
性に優れる冷延製品表面を得ることができ、また製造性
も良好であるほか、冷延製品とした際の加工性,耐食性
にも優れていることが分かる。
【0069】これに対して、鋼板の化学組成が請求項2
及び3に係る発明の規定範囲から外れている試験番号33
〜42では、高光沢かつ均一性に優れる表面性状の冷延製
品を得ることができるものの、製造性並びに冷延製品の
加工性,耐食性を同時に良好な範囲で満足することがで
きない。また、酸洗条件が不適切で所要の表面酸化皮膜
を確保できない試験番号43,44は、冷間圧延時にロ−ル
コ−ティングが生成しなかったり、生成しても幅方向で
不均一となり、そのため製品表面で光沢が不均一となっ
ている。
【0070】
【発明の効果】以上に説明した如く、本発明によれば、
酸洗条件の簡易な調整によるだけで冷間圧延時のワ−ク
ロ−ルにロ−ルコ−ティングを均一に生成させて高光沢
で光沢の均一性に優れた冷延製品を安定製造できるよう
にした冷間圧延用フェライト系ステンレス鋼板を提供す
ることができ、また鋼板組成の調整をも加味することに
より、高光沢でかつ光沢の均一性に優れるだけではな
く、同時に優れた加工性,耐食性をも兼備した冷延製品
が得られる冷間圧延用フェライト系ステンレス鋼板の提
供も可能にするなど、産業上有用な効果がもたらされ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るフェライト系ステンレス鋼板(実
施例1の試験番号2) の表面のESCA分析結果を示し
たグラフである。
【図2】本発明に係るフェライト系ステンレス鋼板(実
施例1の試験番号8) の表面のESCA分析結果を示し
たグラフである。
【図3】比較例に係るフェライト系ステンレス鋼板(実
施例1の試験番号12)の表面のESCA分析結果を示し
たグラフである。
【図4】図1乃至3の結果をCr/Fe原子比とO濃度(原
子%)との関係で整理したグラフである。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 “皮膜表層から酸素濃度が30原子%に
    減少するに至るまでの範囲における皮膜中のCr,Fe組成
    比(Cr/Fe原子比)の最大値が0.28以上である酸化皮
    膜”を表面に有して成ることを特徴とする、冷間圧延後
    の表面光沢の均一性に優れる冷間圧延用フェライト系ス
    テンレス鋼板。
  2. 【請求項2】 母材が、質量%にて、C:0.10%以下,
    Si:1.5 %以下,Mn:1.5 %以下,P:0.040 %以下,
    S:0.030 %以下,N:0.050 %以下,Cr:14.0〜25.0
    %を含み、残部がFe及び不可避的不純物である組成を有
    して成る、請求項1記載の冷間圧延用フェライト系ステ
    ンレス鋼板。
  3. 【請求項3】 母材が、質量%にて、C:0.10%以下,
    Si:1.5 %以下,Mn:1.5 %以下,P:0.040 %以下,
    S:0.030 %以下,N:0.050 %以下,Cr:14.0〜25.0
    %を含むと共に、更にCu:1.5 %以下,Nb:0.1 〜1.0
    %,Ti:0.03〜0.15%,Al:0.2 %以下及びV:1.0 %
    以下のうちの1種又は2種以上を含有し、残部がFe及び
    不可避的不純物である組成を有して成る、請求項1記載
    の冷間圧延用フェライト系ステンレス鋼板。
  4. 【請求項4】 熱間圧延鋼板を酸洗処理するに際して、
    酸洗槽のうちの少なくとも1つの槽を硝酸あるいは硝酸
    混合液による酸洗槽となし、少なくともこの酸洗槽にて
    熱間圧延鋼板を濃度20〜200g/L ,温度30〜70
    ℃の硝酸あるいは硝酸混合液から成る酸洗液に15秒以
    上浸漬すると共に、この硝酸あるいは硝酸混合液への浸
    漬後は機械的表面研削を行うことなく処理製品とするこ
    とを特徴とする、請求項1乃至3の何れかに記載の冷間
    圧延用フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
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