JP7364119B1 - 溶融亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板を用いてなる部材、部材からなる自動車の骨格構造部品用又は自動車の補強部品、ならびに溶融亜鉛めっき鋼板及び部材の製造方法 - Google Patents

溶融亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板を用いてなる部材、部材からなる自動車の骨格構造部品用又は自動車の補強部品、ならびに溶融亜鉛めっき鋼板及び部材の製造方法 Download PDF

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Abstract

高強度であるとともに、高い延性と、高い伸びフランジ性及び曲げ性とを有し、かつ、伸びフランジ割れの異方性を低減した、溶融亜鉛めっき鋼板を提供する。母材鋼板と、前記母材鋼板の表面に形成された溶融亜鉛めっき層と、を備えた溶融亜鉛めっき鋼板であって、前記母材鋼板は、所定の成分組成と、前記母材鋼板の表面から深さ方向に板厚1/4位置において、マルテンサイトの面積率が10%以上80%以下、フェライトの面積率が20%以上90%以下、残留オーステナイトの面積率が10%以下であり、かつ全フェライトの面積率に対する{001}方位を有するフェライトの面積率の割合が0.50以下である鋼組織と、を有し、前記母材鋼板を50℃まで加熱した際に放出される水素量である前記母材鋼板中の低温域拡散性水素量が0.015質量ppm以下である、溶融亜鉛めっき鋼板。

Description

本発明は、溶融亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板を用いてなる部材、部材からなる自動車の骨格構造部品用又は自動車の補強部品、ならびに溶融亜鉛めっき鋼板及び部材の製造方法に関する。
車両の軽量化によるCO排出量削減を図りつつ、耐衝突性能を向上させることを目的として、自動車用鋼板の高強度化が進められている。また、新たな法規制の導入が相次いでいることを背景に、車体強度の増加を目的として、自動車キャビンの骨格を形成する主要な構造部品や補強部品(以下、「自動車の骨格構造部品」などともいう)に対して高強度鋼板を適用する事例が増加しており、特に、引張強さ(以下、「TS」ともいう)で780MPa以上の高強度鋼板の適用事例の増加が顕著である。
自動車の骨格構造部品などに用いられる高強度鋼板には、所望の形状に成形する際に、高い伸びフランジ性を有することが要求される。さらに、自動車の骨格構造部品などの中でも、例えば、クラッシュボックスなどは曲げ加工部を有するため、成形性の観点からは、高い曲げ性を有する鋼板が好適である。
このような高強度鋼板に関する技術として、例えば、特許文献1には、母材鋼板が、所定量のC、Si、Mn、P、S、Al、N、Ca及びCrを含有するとともに、[%Mn]/[%Si]が2.9以上11.7以下の関係を満たし、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成を有し、ベイナイト及びフェライトからなる群より選ばれる1種又は2種、焼戻しマルテンサイト、焼入れマルテンサイト及び残留オーステナイトが所定の量でである鋼組織を有し、母材鋼板の表層のMn濃化量に対するSi濃化量の比が0.7以上1.3以下であり、かつ前記母材鋼板中の拡散性水素量が0.80質量ppm以下である、高強度溶融亜鉛めっき鋼板が開示されている。
国際公開第2020/170542号
しかしながら、特許文献1に記載の溶融亜鉛めっき鋼板では、伸びフランジ割れの異方性について考慮が払われていない。そのため、自動車の骨格構造部品などへの溶融亜鉛めっき鋼板の適用比率を増加させる観点から、高強度であるとともに、高い延性と、高い伸びフランジ性及び曲げ性とを有し、かつ、伸びフランジ割れの異方性を低減した、溶融亜鉛めっき鋼板の開発が求められているのが現状である。
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたものであって、高強度であるとともに、高い延性と、高い伸びフランジ性及び曲げ性とを有し、かつ、伸びフランジ割れの異方性を低減した、溶融亜鉛めっき鋼板をその製造方法とともに提供することを目的とする。
また、本発明は、上記の溶融亜鉛めっき鋼板を用いてなる部材をその製造方法とともに提供することを目的とする。
ここで、「高強度」とは、JIS Z 2241に準拠して測定する引張強さ(以下、「TS」ともいう)が780MPa以上であることを意味する。
「高い延性」とは、JIS Z 2241に準拠して測定するTS及び全伸び(以下、「El」ともいう)の積(TS×El)が13000MPa・%以上であることを意味する。
「高い伸びフランジ性」とは、JIS Z 2256に準拠して測定する穴広げ率(以下、「λ」ともいう)が20%以上であることを意味する。
「高い曲げ性」とは、後述の実施例に記載した曲げ試験において、評価した5サンプルとも割れない場合又は5サンプルのうち一つ以上のサンプルで200μm未満の微小割れが発生する場合を意味する。この曲げ試験は、JIS Z 2248に準拠したものである。
「伸びフランジ割れの異方性の低減」とは、後述の実施例に記載した穴広げ試験において、鋼板の圧延方向(L方向)、鋼板の圧延方向に対して45度方向(D方向)及び鋼板の圧延直角方向(C方向)について、各方向のき裂発生率が60%以下であることを意味する。
本発明者らは、上記の目的を達成するために、鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。
すなわち、高い延性と、高い伸びフランジ性及び曲げ性を有し、かつ、伸びフランジ割れの異方性を低減した高強度の溶融亜鉛めっき鋼板を得るには、母材鋼板について、所定の成分組成としたうえで、マルテンサイト(焼入れマルテンサイト、焼戻しマルテンサイト及びベイナイト)を含む鋼組織とすることが、高強度化の点から重要であり、さらに母材鋼板の鋼組織についてはフェライトを一定量確保することが、延性の制御の上で重要であり、これらに加えて、伸びフランジ割れの異方性を低減するには、全フェライトの面積率に対する{001}方位を有するフェライトの面積率の割合({001}方位を有するフェライトの面積率/全フェライトの面積率)及び母材鋼板を加熱した際の低温域(50℃までの温度域)で放出される水素量(低温域拡散性水素量)を所定の数値範囲にすることが重要である、との知見である。具体的には、本発明者らによって、上記の目的の達成、中でも伸びフランジ割れの異方性低減においては、全フェライトの面積率に対する{001}方位を有するフェライトの面積率の割合を0.50以下とし、低温域拡散性水素量を0.015質量ppm以下とすることが重要であることが見出された。
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)母材鋼板と、前記母材鋼板の表面に形成された溶融亜鉛めっき層と、を備えた溶融亜鉛めっき鋼板であって、
前記母材鋼板は、
質量%で、
C:0.030%以上0.500%以下、
Si:0.01%以上2.50%以下、
Mn:0.10%以上5.00%以下、
P:0.100%以下、
S:0.0200%以下、
Al:1.000%以下、
N:0.0100%以下及び
O:0.0100%以下
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成と、
板厚1/4位置において、
マルテンサイトの面積率が10%以上80%以下、
フェライトの面積率が20%以上90%以下、
残留オーステナイトの面積率が10%以下、かつ
全フェライトの面積率に対する{001}方位を有するフェライトの面積率の割合が0.50以下である鋼組織と、
を有し、
前記母材鋼板を50℃まで加熱した際に放出される水素量である前記母材鋼板中の低温域拡散性水素量が0.015質量ppm以下である、溶融亜鉛めっき鋼板。
(2)前記成分組成は、さらに、質量%で、
Ti:0.200%以下、
Nb:0.200%以下、
V:0.200%以下、
Ta:0.10%以下、
W:0.10%以下、
B:0.0100%以下、
Cr:1.00%以下、
Mo:1.00%以下、
Ni:1.00%以下、
Co:0.010%以下、
Cu:1.00%以下、
Sn:0.200%以下、
Sb:0.200%以下、
Ca:0.0100%以下、
Mg:0.0100%以下、
REM:0.0100%以下、
Zr:0.100%以下、
Te:0.100%以下、
Hf:0.10%以下及び
Bi:0.200%以下
からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含有する、上記(1)の溶融亜鉛めっき鋼板。
(3)前記母材鋼板と前記溶融亜鉛めっき層の間に金属めっき層を備える、上記(1)又は(2)の溶融亜鉛めっき鋼板。
(4)前記母材鋼板が、前記母材鋼板の板厚1/4位置のビッカース硬さに対して、ビッカース硬さが85%以下の領域であって、前記母材鋼板表面から板厚方向に200μm以内の領域である表層軟質層を有する、上記(1)~(3)のいずれかの溶融亜鉛めっき鋼板。
(5)前記母材鋼板表面から前記表層軟質層の板厚方向深さの1/4位置及び板厚方向深さの1/2位置のそれぞれにおける板面の50μm×50μmの領域において、300点以上のナノ硬度を測定したとき、
前記母材鋼板表面から前記表層軟質層の板厚方向深さの1/4位置の板面のナノ硬度が7.0GPa以上の測定数割合が、全測定数に対して0.10以下であり、
前記母材鋼板表面から前記表層軟質層の板厚方向深さの1/4位置の板面のナノ硬度の標準偏差σが1.8GPa以下であり、
さらに、前記母材鋼板表面から前記表層軟質層の板厚方向深さの1/2位置の板面のナノ硬度の標準偏差σが2.2GPa以下である、上記(4)の溶融亜鉛めっき鋼板。
(6)前記溶融亜鉛めっき層が、合金化溶融亜鉛めっき層である、上記(1)~(5)のいずれかの溶融亜鉛めっき鋼板。
(7)上記(1)~(6)のいずれかの溶融亜鉛めっき鋼板を用いてなる、部材。
(8)上記(7)の部材からなる、自動車の骨格構造部品又は自動車の補強部品。
(9)上記(1)又は(2)の成分組成を有する鋼スラブに、
巻取温度:400℃以上700℃以下の条件で、熱間圧延を施して熱延鋼板とし、
次いで、前記熱延鋼板に、酸洗を施し、
次いで、前記熱延鋼板に、総圧下率:40%以上、累積圧下率30%以上となってから総圧下率までのパス数:2パス以上の条件で、冷間圧延を施して冷延鋼板とし、
次いで、前記冷延鋼板に、250℃以上600℃以下の温度域での平均加熱速度:1.0℃/s以上100℃/s以下、焼鈍温度:750℃以上900℃以下の条件で、焼鈍を施し、
次いで、前記冷延鋼板に、溶融亜鉛めっき処理を施してめっき鋼板とし、
次いで、前記めっき鋼板を冷却する、溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(10)前記めっき鋼板の冷却中に、100℃以上450℃以下の温度域で5s以上保熱し、その後冷却する、上記(9)の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(11)前記めっき鋼板の冷却中に、300℃以下の冷却停止点で冷却を停止した後、(冷却停止温度+50℃)以上450℃以下の温度域に再加熱し、この温度域で5s以上保熱し、その後冷却する、上記(9)の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(12)前記焼鈍を露点-25℃以上の雰囲気下で行う,上記(9)~(11)のいずれかの亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(13)前記焼鈍工程の前に、前記冷延鋼板の片面又は両面において、金属めっき処理を施し金属めっき層を形成する金属めっき工程を含む、上記(9)~(12)のいずれかの亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(14)前記溶融亜鉛めっき処理後の鋼板に合金化処理を施す、上記(9)~(13)のいずれかの溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(15)上記(1)~(8)のいずれかの溶融亜鉛めっき鋼板に、成形加工又は接合加工の少なくとも一方を施して部材とする工程を有する、部材の製造方法。
本発明によれば、高強度であるとともに、高い延性と、高い伸びフランジ性及び曲げ性とを有し、かつ、伸びフランジ割れの異方性を低減した溶融亜鉛めっき鋼板を提供することができ、また、上記の溶融亜鉛めっき鋼板を用いてなる部材を提供することができる。
さらに、本発明によれば、上記の溶融亜鉛めっき鋼板及び溶融亜鉛めっき鋼板を用いてなる部材の製造方法を提供することができる。
実施例のV曲げ+直交VDA曲げ試験用サンプルの作製に関する模式図である。図1(a)はV曲げ加工(一次曲げ加工)に関し、図1(b)は直交VDA曲げ(二次曲げ加工)に関する。 実施例の軸圧壊試験用サンプル及び試験に関する模式図である。図2(a)は試験用部材の正面図であり、図2(b)は試験用部材の正面図である。図2(c)は軸圧壊試験を示す概略図である。
本発明を、以下の実施形態に基づき説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されない。
[1]溶融亜鉛めっき鋼板
はじめに、本発明の溶融亜鉛めっき鋼板について説明する。
[1-1]母材鋼板
溶融亜鉛めっき鋼板は、母材鋼板と、前記母材鋼板の表面に形成された溶融亜鉛めっき層と、を備える。溶融亜鉛めっき鋼板における母材鋼板について説明する。
[1-1-1]成分組成
母材鋼板の成分組成の適正範囲及びその限定理由について説明する。なお、以下の説明において、鋼板の成分元素の含有量を表す「%」は、特に明記しない限り「質量%」を意味する。また、本明細書中において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
[C:0.030%以上0.500%以下]
Cは、鋼の重要な基本成分の1つであり、特に本発明では、マルテンサイト及びフェライトの面積率に影響する重要な元素である。Cの含有量が0.030%未満では、マルテンサイトの分率が減少し、所望のTSを実現することが困難になる。一方、Cの含有量が0.500%を超えると、マルテンサイトの面積率が脆化し、所望の延性を実現することが困難になる。したがって、Cの含有量は、0.030%以上0.500%以下とする。Cの含有量は、好ましくは0.050%以上、より好ましくは0.070%以上であり、また、好ましくは0.400%以下、より好ましくは0.300%以下である。
[Si:0.01%以上2.50%以下]
Siは、鋼の重要な基本成分の1つであり、特に本発明では、マルテンサイト及びフェライトの面積率に影響する重要な元素である。Siの含有量が0.01%未満では、フェライトの面積率が減少し、所望の延性を実現することが困難になる。一方、Siの含有量が2.50%を超えると、連続焼鈍中の炭化物生成が抑制され、水素固溶度の大きい相である残留オーステナイトの生成が促進されるため、めっき鋼板からの水素脱離が促進されず、母材鋼板の低温域拡散性水素量が増加し、伸びフランジ割れの異方性が大きくなる。また、打抜き時に残留オーステナイトからマルテンサイトへの変態が生じ、穴広げ時のボイドの生成が増加してしまい、λが減少し、曲げ性を低下させ得る。したがって、Siの含有量は、0.01%以上2.50%以下とする。Siの含有量は、好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.10%以上であり、また、好ましくは2.00%以下、より好ましくは1.80%以下である。
[Mn:0.10%以上5.00%以下]
Mnは、鋼の重要な基本成分の1つであり、特に本発明では、マルテンサイト及びフェライトの面積率に影響する重要な元素である。Mnの含有量が0.10%未満では、マルテンサイトの面積率が減少し、所望のTSを実現することが困難になる。一方、Mnの含有量が5.00%を超えると、フェライトの面積率が減少し、所望の延性を実現することが困難になる。したがって、Mnの含有量は、0.10%以上5.00%以下とする。Mnの含有量は、好ましくは0.80%以上、より好ましくは1.00%以上であり、また、好ましくは4.50%以下、より好ましくは4.00%以下である。
[P:0.100%以下]
Pは、旧オーステナイト粒界に偏析して粒界を脆化させ、鋼板の極限変形能を低下させる元素であり、λが低下し、曲げ性も低下し得る。そのため、Pの含有量は0.100%以下とする。Pの含有量の下限は特に限定されないが、Pは固溶強化元素であり、鋼板の強度を上昇させ得ることから、0.001%以上であることが好ましい。Pの含有量は、好ましくは0.001%以上であり、また、好ましくは0.070%以下である。
[S:0.0200%以下]
Sは、硫化物として存在し、鋼板の極限変形能を低下させる元素であり、λが低下し、曲げ性も低下得る。そのため、Sの含有量は0.0200%以下とする。Sの含有量の下限は特に限定されないが、生産技術上の制約から、0.0001%以上であることが好ましい。Sの含有量は、好ましくは0.0001%以上であり、また、好ましくは0.0050%以下とする。
[Al:1.000%以下]
Alは、A変態点を上昇させる元素であり、鋼組織中のフェライトが多量となり、所望のTSを実現することを困難にし得る。そのため、Alの含有量は1.000%以下とする。Alの含有量の下限は特に限定されないが、連続焼鈍中の炭化物生成を抑制し、残留オーステナイトの生成を促進することから、Alの含有量は0.001%以上であることが好ましい。Alの含有量は、好ましくは0.001%以上であり、また、好ましくは0.100%以下である。
[N:0.0100%以下]
Nは、窒化物として存在し、鋼板の極限変形能を低下させる元素であり、λが低下し、曲げ性も低下し得る。そのため、Nの含有量は0.0100%以下とする。Nの含有量の下限は特に限定されないが、生産技術上の制約から、Nの含有量は0.0001%以上であることが好ましい。Nの含有量は、好ましくは0.0001%以上であり、また、好ましくは0.0050%以下である。
[O:0.0100%以下]
Oは、酸化物として存在し、鋼板の極限変形能を低下させる元素であり、λが低下し、曲げ性も低下し得る。そのため、Oの含有量は0.0100%以下とする。Oの含有量の下限は特に限定されないが、生産技術上の制約から、Oの含有量は0.0001%以上であることが好ましい。Oの含有量は、好ましくは0.0001%以上であり、また、好ましくは0.0050%以下である。
[任意成分]
母材鋼板は、上記の成分組成に加えて、さらに、質量%で、
Ti:0.200%以下、Nb:0.200%以下、V:0.200%以下、
Ta:0.10%以下、W:0.10%以下、
B:0.0100%以下、
Cr:1.00%以下、Mo:1.00%以下、Ni:1.00%以下、
Co:0.010%以下、
Cu:1.00%以下、
Sn:0.200%以下、
Sb:0.200%以下、
Ca:0.0100%以下、Mg:0.0100%以下、REM:0.0100%以下、
Zr:0.020%以下、Te:0.020%以下、
Hf:0.10%以下及び
Bi:0.200%以下
からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含有していてもよい。これらの元素は、単独でも、2種以上の組み合わせでもよい。
Ti、Nb又はVを含有する場合、粗大な析出物や介在物が多量に生成し、鋼板の極限変形能が低下し、ひいてはλが低下し、曲げ性が低下することを回避するため、Ti、Nb又はVの含有量はそれぞれ0.200%以下にすることが好ましく、より好ましくは0.100%以下である。Ti、Nb又はVの含有量の下限は特に限定されないが、熱間圧延時あるいは連続焼鈍時に、微細な炭化物、窒化物もしくは炭窒化物を形成することによって、鋼板の強度を上昇させることから、Ti、Nb又はVの含有量はそれぞれ0.001%以上とすることが好ましい。
Ta又はWを含有する場合、粗大な析出物や介在物が多量に生成し、鋼板の極限変形能が低下し、ひいてはλが低下し、曲げ性が低下することを回避するため、Ta又はWの含有量はそれぞれ0.10%以下にすることが好ましく、より好ましくは0.08%以下である。Ta又はWの含有量の下限は特に限定されないが、熱間圧延時あるいは連続焼鈍時に、微細な炭化物、窒化物もしくは炭窒化物を形成することによって、鋼板の強度を上昇させることから、Ta又はWの含有量はそれぞれ0.01%以上とすることが好ましい。
Bを含有する場合、鋳造時あるいは熱間圧延時において鋼板内部に割れが生成し、鋼板の極限変形能が低下し、ひいてはλが低下し、曲げ性が低下することを回避するため、Bの含有量は0.0100%以下にすることが好ましく、より好ましくは0.0080%以下である。Bの含有量の下限は特に限定されないが、焼鈍中にオーステナイト粒界に偏析し、焼入れ性を向上させる元素であることから、Bの含有量は0.0003%以上とすることが好ましい。
Cr、Mo又はNiを含有する場合、粗大な析出物や介在物が増加し、鋼板の極限変形能が低下し、ひいてはλが低下し、曲げ性が低下することを回避するため、Cr、Mo又はNiの含有量はそれぞれ1.00%以下にすることが好ましく、より好ましくは0.80%以下である。Cr、Mo又はNiの含有量の下限は特に限定されないが、焼入れ性を向上させる元素であることから、Cr、Mo又はNiの含有量はそれぞれ0.01%以上とすることが好ましい。
Coを含有する場合、粗大な析出物や介在物が増加し、鋼板の極限変形能が低下し、ひいてはλが低下し、曲げ性が低下することを回避するため、Coの含有量は0.010%以下にすることが好ましく、より好ましくは0.008%以下である。Coの含有量の下限は特に限定されないが、焼入れ性を向上させる元素であることから、Coの含有量は0.001%以上とすることが好ましい。
Cuを含有する場合、粗大な析出物や介在物が増加し、鋼板の極限変形能が低下し、ひいてはλが低下し、曲げ性が低下することを回避するため、Cuの含有量は1.00%以下にすることが好ましく、より好ましくは0.80%以下である。Cuの含有量の下限は特に限定されないが、焼入れ性を向上させる元素であることから、Cuの含有量は0.01%以上とすることが好ましい。
Snを含有する場合、鋳造時あるいは熱間圧延時において鋼板内部に割れが生成し、鋼板の極限変形能が低下し、ひいてはλが低下し、曲げ性が低下することを回避するため、Snの含有量は0.200%以下にすることが好ましく、より好ましくは0.100%以下である。Snの含有量の下限は特に限定されないが、焼入れ性を向上させる元素であることから、Snの含有量は0.001%以上とすることが好ましい。
Sbを含有する場合、粗大な析出物や介在物が増加し、鋼板の極限変形能が低下し、ひいてはλが低下し、曲げ性が低下することを回避するため、Sbの含有量は0.200%以下にすることが好ましく、より好ましくは0.100%以下である。Sbの含有量の下限は特に限定されないが、表層軟化層の厚さを制御し、強度調整を可能にする元素であることから、Sbの含有量は0.001%以上とすることが好ましい。
Ca、Mg又はREMを含有する場合、粗大な析出物や介在物が増加し、鋼板の極限変形能が低下し、ひいてはλが低下し、曲げ性が低下することを回避するため、Ca、Mg又はREMの含有量はそれぞれ0.0100%以下にすることが好ましく、より好ましくは0.0050%以下である。Ca、Mg又はREMの含有量の下限は特に限定されないが、窒化物や硫化物の形状を球状化し、鋼板の極限変形能を向上する元素であることから、Ca、Mg又はREMの含有量はそれぞれ0.0001%以上とすることが好ましい。
Zr又はTeを含有する場合、粗大な析出物や介在物が増加し、鋼板の極限変形能が低下し、ひいてはλが低下し、曲げ性が低下することを回避するため、Zr又はTeの含有量はそれぞれ0.100%以下にすることが好ましく、より好ましくは0.080%以下である。Zr又はTeの含有量の下限は特に限定されないが、窒化物や硫化物の形状を球状化し、鋼板の極限変形能を向上する元素であることから、Zr又はTeの含有量はそれぞれ0.001%以上とすることが好ましい。
Hfを含有する場合、粗大な析出物や介在物が増加し、鋼板の極限変形能が低下し、ひいてはλが低下し、曲げ性が低下することを回避するため、Hfの含有量は0.10%以下にすることが好ましく、より好ましくは0.08%以下である。Hfの含有量の下限は特に限定されないが、窒化物や硫化物の形状を球状化し、鋼板の極限変形能を向上する元素であることから、Hfの含有量は0.01%以上とすることが好ましい。
Biを含有する場合、粗大な析出物や介在物が増加し、鋼板の極限変形能が低下し、ひいてはλが低下し、曲げ性が低下することを回避するため、Biの含有量は0.200%以下にすることが好ましく、より好ましくは0.100%以下である。Biの含有量の下限は特に限定されないが、偏析を軽減する元素であることから、Biの含有量は0.001%以上とすることが好ましい。
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板の母材鋼板は、必須成分及び場合により任意成分を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成を有する。ここで、不可避的不純物としては、Zn、Pb、As、Ge、Sr及びCsが挙げられる。これらの不可避的不純物は、合計で0.100%以下の量で含有されることが許容される。
[1-1-2]鋼組織
母材鋼板の鋼組織について説明する。
[マルテンサイトの面積率:10%以上80%以下]
マルテンサイトの面積率が10%未満では、780MPa以上のTSを実現することが困難になる。一方、マルテンサイトの面積率が80%を超えると、所望の延性を実現することが困難になる。したがって、マルテンサイトの面積率は10%以上80%以下とする。マルテンサイトの面積率は、好ましくは15%以上、より好ましくは25%以上であり、また、好ましくは75%以下、好ましくは70%以下である。
ここでいうマルテンサイトには、焼入れマルテンサイト(フレッシュマルテンサイト)に加え、焼戻しマルテンサイト及びベイナイトが含まれる。マルテンサイトの面積率の観察位置は、後述のとおり、母材鋼板の板厚の1/4位置とする。
[フェライトの面積率:20%以上90%以下]
フェライトの面積率が20%未満では、所望の延性を実現することが困難となる。一方、フェライトの面積率が90%を超えると、780MPa以上のTSを実現することが困難になる。したがって、フェライトの面積率は20%以上90%以下とする。フェライトの面積率は、好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上であり、また、好ましくは85%以下、より好ましくは80%以下とする。
ここでいうフェライトには、ポリゴナルフェライトに加え、ベイニティックフェライトが含まれる。フェライトの面積率の観察位置は、後述のとおり、母材鋼板の板厚の1/4位置とする。
ここで、マルテンサイト(焼入れマルテンサイト、焼戻しマルテンサイト及びベイナイト)及びフェライト(ポリゴナルフェライト及びベイニティックフェライト)の面積率の測定方法は、以下のとおりである。
母材鋼板から、その圧延方向に平行な板厚断面(板厚1/4位置のL断面)が観察面となるように、サンプルを切り出す。サンプルの観察面を、ダイヤモンドペーストを用いて鏡面研磨し、その後、アルミナを用いて仕上げ研磨を施し、さらに3体積%ナイタールでエッチングし、組織を現出させる。
次いで、サンプルの観察面を、加速電圧10kVの条件で、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて3000倍の倍率で観察し、3視野(1視野40μm×30μm)分のSEM像を得る。
得られたSEM画像から、Adobe Photoshop(Adobe Systems社製)を用いて、各組織(フェライト(ポリゴナルフェライト及びベイニティックフェライト)、マルテンサイト(焼入れマルテンサイト、焼戻しマルテンサイト及びベイナイト))の面積率を算出する。具体的には、各組織の面積を測定面積で除して得られる値を、各組織の面積率とする。各組織の面積率を3視野分算出し、それらの平均値を各組織の面積率とする。
SEM画像において、フェライト(ポリゴナルフェライト及びベイニティックフェライト)は凹部の組織で炭化物を含まない平坦な組織、焼戻しマルテンサイト及びベイナイトは凹部の組織で微細な炭化物を含む組織、焼入れマルテンサイトは凸部でかつ組織内部が微細な凹凸を有した組織であり、互いに識別可能である。焼戻しマルテンサイト及びベイナイトは、マルテンサイトの面積率として合計の面積率を求めることから、互いに識別可能でなくてよい。
[残留オーステナイトの面積率:10%以下]
残留オーステナイトは水素固溶度の大きい相であるため、残留オーステナイトの面積率が10%を超えると、めっき鋼板からの水素脱離が促進されず、母材鋼板の低温域拡散性水素量が増加し、伸びフランジ割れの異方性が大きくなる。また、打抜き時に残留オーステナイトからマルテンサイトに変態し、穴広げ時のボイドの生成が増加してしまい、ひいてはλ及び曲げ性が低下し得る。したがって、残留オーステナイトの面積率は10%以下とする。残留オーステナイトの面積率は少ない程好ましく、好ましくは7%以下、より好ましくは5%以下であり、0%であってもよい。残留オーステナイトの面積率の観察位置は、母材鋼板の板厚1/4位置とし、測定方法は以下のとおりである。
まず、母材鋼板を、その板厚1/4位置(鋼板表面から深さ方向で板厚の1/4に相当する位置)が測定面となるように、母材鋼板を研削し、その後、化学研磨によりさらに0.1mm研磨し、サンプルを得る。
サンプルの測定面について、X線回折装置により、CoのKα線源を用いて、fcc鉄(オーステナイト)の(200)面、(220)面及び(311)面、ならびに、bcc鉄の(200)面、(211)面及び(220)面の積分反射強度を測定する。
bcc鉄の各面の積分反射強度に対するfcc鉄の各面の積分反射強度の強度比を求める。9つの強度比の平均値を、残留オーステナイトの体積率とする。この残留オーステナイトの体積率を、3次元的に均一であるとみなして母材鋼板の板厚1/4位置での残留オーステナイトの面積率とする。
[残部組織]
本発明の鋼組織は、上述したマルテンサイト、フェライト及び残留オーステナイト以外の組織(残部組織)を有していてもよい。
残部組織としては、マルテンサイト、フェライト及び残留オーステナイト以外の組織であって、鋼板の組織として公知の組織が挙げられ、例えば、パーライト、セメンタイト、準安定炭化物(イプシロン(ε)炭化物、イータ(η)炭化物、カイ(χ)炭化物等)等の炭化物が包含される。残部組織の同定は、例えばSEMによる観察により行うことができる。
母材鋼板の板厚1/4位置における残部組織の面積率は5%以下であることが好ましい。残部組織の面積率は、次式により算出することができる。
[残部組織の面積率(%)]=100-[マルテンサイトの面積率(%)]-[フェライトの面積率(%)]-[残留オーステナイトの面積率(%)]
[{001}方位を有するフェライトの面積率/全フェライトの面積率:0.50以下]
全フェライトの面積率に対する{001}方位を有するフェライトの面積率の割合({001}方位を有するフェライトの面積率/全フェライトの面積率)は、本発明における極めて重要な構成である。すなわち、本発明者らは、伸びフランジ割れの異方性は、冷間圧延後の焼鈍板での{001}方位を有するフェライトの面積率に大きく依存しており、この割合({001}方位を有するフェライトの面積率/全フェライトの面積率)が0.50超であると、伸びフランジ割れの異方性を大幅に低減させることが困難であることを見出した。したがって、この割合({001}方位を有するフェライトの面積率/全フェライトの面積率)は0.50以下とする。この割合({001}方位を有するフェライトの面積率/全フェライトの面積率)は小さい程好ましく、好ましくは0.45以下、より好ましくは0.43以下であり、0であってもよい。
ここで、この割合({001}方位を有するフェライトの面積率/全フェライトの面積率)の算出方法は、以下のとおりである。
母材鋼板の圧延方向に平行な板厚断面(L断面)が観察面となるよう試料を切り出す。試料の観察面に、ダイヤモンドペーストによる研磨を施し、次いで、コロイダルシリカ溶液を用いたバフ研磨により表面を平滑化した後、0.1vol.%ナイタールで腐食することで、試料表面の凹凸を極力低減し、かつ、加工変質層を完全に除去する。次いで、板厚1/4位置(鋼板表面から深さ方向で板厚の1/4に相当する位置)について、SEM-EBSD(Electron Back-Scatter Diffraction;電子線後方散乱回折)法を用いて結晶方位を測定し、得られたデータを、AMETEK EDAX社のOIM Analysisを用いて、CI(Confidence Index)及びIQ(Image Quality)でマルテンサイトを含むフェライト以外の相を排除し、フェライトのみの集合組織を抽出する。得られたフェライトのみの方位データから、{001}方位を有するフェライトの面積率を求めることにより、この割合({001}方位を有するフェライトの面積率/全フェライトの面積率)を算出することができる。
[母材鋼板の低温域拡散性水素量:0.015質量ppm以下]
母材鋼板の低温域拡散性水素量は、本発明における極めて重要な構成である。すなわち、本発明者らは、伸びフランジ割れの異方性は、母材鋼板を加熱した際に、高温域で母材鋼板から放出される水素量よりもむしろ、低温域、具体的には50℃までの温度域で放出される水素量(低温域拡散性水素量)に大きく依存しており、母材鋼板中の低温域拡散性水素量が0.015質量ppm超では、高い延性と、高い伸びフランジ性及び曲げ性とを有しながら、伸びフランジ割れの異方性を大幅に低減させることが困難であることを見出した。したがって、母材鋼板の低温域拡散性水素量は0.015質量ppm以下とする。低温域拡散性水素量は少ないほど好ましく、好ましくは0.010質量ppm以下、より好ましくは0.006質量ppm以下であり、0ppmであってもよい。
ここで、母材鋼板の低温域拡散性水素量の測定方法は、以下のとおりである。
溶融亜鉛めっき鋼板のサンプル中央位置より、長さが30mm、幅が5mmの試験片をせん断加工により採取する。採取後、ただちに、試験片を液体窒素に浸漬する。試験片の表面温度が10℃以下となるように処理液の温度を管理しながら、試験片の溶融亜鉛めっき層をアルカリ除去する。次いで、試験片を昇温脱離分析法装置へ装入し、Arガスを流した状態で5分待機した後に昇温を開始する。具体的には、試験片を昇温到達温度:300℃、昇温速度:200℃/hrの条件で加熱し、その後、室温まで冷却する測定条件である。加熱開始時の試験片の表面温度は10℃以下とする。
ここで得られた加熱開始時の温度(室温)から50℃までの温度域で試験片から放出された水素量(以下、累積放出水素量ともいう)を測定し、次式により、母材鋼板の低温域拡散性水素量を算出する。
[母材鋼板の低温域拡散性水素量(質量ppm)]=
[累積放出水素量(g)]÷[試験片の質量(g)]×10
溶融亜鉛めっき鋼板に打ち抜き加工、伸びフランジ成形、及び曲げ加工等の加工を施した鋼板や、前記加工後の鋼板を溶接して製造した製品(部材)についても、上記と同様の要領で母材鋼板部分の低温域拡散性水素量を測定すればよい。
[1-1-3]その他
母材鋼板の板厚は、特に限定されず、最終の溶融亜鉛めっき鋼板の板厚に応じて設定することができる。板厚は、例えば、0.3mm以上3.0mm以下とすることができる。
母材鋼板表層は軟質層(表層軟質層)であることが好ましい。プレス成形時及び車体衝突時に前記表層軟質層が曲げ割れ進展の抑制に寄与するため、耐曲げ破断特性をさらに向上させることができる。
表層とは、母材鋼板表面から板厚方向に200μmまでの厚み200μmに対応する領域をいう。
軟質層は、母材鋼板の板厚1/4位置の断面(鋼板表面に平行な面)のビッカース硬さに対して、85%以下のビッカース硬さの領域をいう。軟質層は、母材鋼板の表層における脱炭層を包含する。
表層軟質層は、表層に含まれる軟質層をいい、表層全体が軟質層であっても、表層の一部が軟質層であってもよい。表層軟質層は、母材鋼板表面から板厚方向に200μm以内の厚みに対応する領域であることができる。
例えば、母材鋼板の板厚1/4位置の断面(鋼板表面に平行な面)のビッカース硬さに対して85%以下の領域が、母材鋼板表面から板厚方向に所定の深さで形成されているとして、所定の深さが板厚方向に200μm以内の場合、表面から板厚方向の所定の深さまでの厚みに対応する領域が表層軟質層であり、所定の深さが板厚方向に200μm超の場合、母材鋼板表面から板厚方向深さ200μmまでの厚み200μmに対応する領域が表層軟質層である。
表層軟質層を有する場合、表層軟質層の厚さの下限は特に限定されず、8μm以上が好ましく、17μm超がより好ましい。
ビッカース硬さは、JIS Z 2244-1(2020)に基づいて、荷重を10gfとして測定する。
表層軟質層を有する場合、母材鋼板表面から表層軟質層の板厚方向深さの1/4位置(母材鋼板表面から深さ方向に表層軟質層の厚さの1/4位置)の板面の50μm×50μmの領域において、300点以上のナノ硬度を測定したとき、ナノ硬度が7.0GPa以上の割合が0.10以下であることが好ましい。ナノ硬度が7.0GPa以上の割合が0.10以下の場合、硬質な組織(マルテンサイトなど)、介在物などの割合が小さいことを意味し,硬質な組織(マルテンサイトなど),介在物などのプレス成形時及び衝突時のボイドの生成や連結、さらには亀裂の進展をより抑制することが可能となり、プレス成形時の優れた曲げ性と衝突時の優れた曲げ破断特性を容易に得ることができる。
本発明において、プレス成形時の優れた曲げ性と衝突時の優れた曲げ破断特性を得るためには、母材鋼板表面から表層軟質層の板厚方向深さの1/4位置の板面のナノ硬度の標準偏差σが1.8GPa以下であり、さらに、母材鋼板表面から表層軟質層の板厚方向深さの1/2位置の板面のナノ硬度の標準偏差σが2.2GPa以下であることが好ましい。母材鋼板表面から表層軟質層の板厚方向深さの1/4位置の板面のナノ硬度の標準偏差σが1.8GPa以下であり、さらに、母材鋼板表面から表層軟質層の板厚方向深さの1/2位置の板面のナノ硬度の標準偏差σが2.2GPa以下の場合、ミクロ領域における組織硬度差が小さいことを意味し、プレス成形時及び衝突時のボイドの生成や連結、さらには亀裂の進展をより抑制することが可能となり曲げ性と衝突時の優れた曲げ破断特性を容易に得ることができる。
また、母材鋼板表面から表層軟質層の板厚方向深さの1/4位置の板面のナノ硬度の標準偏差σのより好ましい範囲は、1.7GPa以下である。母材鋼板表面から表層軟質層の板厚方向深さの1/2位置の板面のナノ硬度の標準偏差σのより好ましい範囲は、2.1GPa以下である。
ここで、板厚方向深さの1/4位置、1/2位置の板面のナノ硬度とは、以下の方法により測定される硬度である。
まず、めっき層が形成されている場合は、めっき層剥離後、母材鋼板表面から表層軟質層の板厚方向深さの1/4位置まで機械研磨を実施し、ダイヤモンド及びアルミナでのバフ研磨を実施し、さらにコロイダルシリカ研磨を実施する。バーコビッチ形状のダイヤモンド圧子により、荷重:500μN、測定領域:50μm×50μm、打点間隔:2μmの条件でナノ硬度を測定する。
また、表層軟質層の板厚方向深さの1/2位置まで機械研磨を実施し、ダイヤモンド及びアルミナでのバフ研磨を実施、さらにコロイダルシリカ研磨を実施する。そして、バーコビッチ形状のダイヤモンド圧子により、荷重:500μN、測定領域:50μm×50μm、打点間隔:2μmの条件でナノ硬度を測定する。
ここで、表層軟質層の厚みは、以下の方法により測定することができる。母材鋼板の圧延方向に平行な板厚断面(L断面)を湿式研磨により平滑化した後、ビッカース硬度計を用いて、荷重10gfで、母材鋼板表面から板厚方向に1μmの位置より、板厚方向100μmの位置まで、1μm間隔で測定を行った。その後は板厚中心まで20μm間隔で測定を行った。硬度が板厚1/4位置の硬度に比して85%以下に減少した領域を軟質層(表層軟質層)と定義し、当該領域の板厚方向の厚さを軟質層の厚さとした。
[1-2]金属めっき層
母材鋼板は、片面又は両面に、金属めっき層を有することが好ましい。プレス成形時及び車体衝突時に金属めっき層が曲げ割れ発生の抑制に寄与するため、耐曲げ破断特性をさらに向上させることができる。
金属めっき層は、母材鋼板表面に直接形成されており、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Ge、As、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Os、Ir、Rt、Au、Hg、Ti、Pb及びBiから選択される1種又は2種以上を合計で50質量%超含む金属めっき層であり、溶融亜鉛めっき層、合金化溶融亜鉛めっき層、電気亜鉛めっき層の亜鉛めっき層は除かれる。第一めっき層は、金属電気めっき層が好ましく、以下では、金属電気めっき層を例に説明する。
金属電気めっき層が鋼板表面に形成されることで、プレス成形時及び車体衝突時に最表層の前記金属電気めっき層が曲げ割れ発生の抑制に寄与するため、耐曲げ破断特性がさらに向上する。
金属電気めっき層の金属種としては、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Ge、As、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Os、Ir、Rt、Au、Hg、Ti、Pb、Biのいずれでもかまわないが、Feであることがより好ましい。以下では、Fe系電気めっき層を例に説明する。
Fe系電気めっき層の付着量は、0g/m超とし、好ましくは2.0g/m以上とする。Fe系電気めっき層の片面あたりの付着量の上限は特に限定されないが、コストの観点から、Fe系電気めっき層の片面あたりの付着量を60g/m以下とすることが好ましい。Fe系電気めっき層の付着量は、好ましくは50g/m以下であり、より好ましくは40g/m以下であり、さらに好ましくは30g/m以下とする。
Fe系電気めっき層の付着量は、以下のとおり測定する。Fe系電気めっき鋼板から10×15mmサイズのサンプルを採取して樹脂に埋め込み、断面埋め込みサンプルとする。同断面の任意の3か所を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)を用いて加速電圧15kVで、Fe系めっき層の厚みに応じて倍率2000~10000倍で観察し、3視野の厚みの平均値に鉄の比重を乗じることによって、Fe系めっき層の片面あたりの付着量に換算する。
Fe系電気めっき層としては、純Feの他、Fe-B合金、Fe-C合金、Fe-P合金、Fe-N合金、Fe-O合金、Fe-Ni合金、Fe-Mn合金、Fe-Mo合金、Fe-W合金等の合金めっき層が使用できる。Fe系電気めっき層の成分組成は特に限定されないが、B、C、P、N、O、Ni、Mn、Mo、Zn、W、Pb、Sn、Cr、V及びCoからなる群から選ばれる1又は2以上の元素を合計で10質量%以下含み、残部はFe及び不可避的不純物からなる成分組成とすることが好ましい。Fe以外の元素の量を合計で10質量%以下とすることで、電解効率の低下を防ぎ、低コストでFe系電気めっき層を形成することができる。Fe-C合金の場合、Cの含有量は0.08質量%以下とすることが好ましい。
溶融亜鉛めっきの下地鋼板は、母材鋼板のみであっても、金属めっき層を備えた母材鋼板であってもよく、好ましくは、表層軟質層を有する母材鋼板の表面に金属めっき層を形成した母材鋼板である。
[1-3]溶融亜鉛めっき層
溶融亜鉛めっき鋼板における溶融亜鉛めっき層について説明する。ここでいう溶融亜鉛めっき層には、合金化溶融亜鉛めっき層(溶融亜鉛めっきに合金化処理を施して得ためっき層)も含むものとする。また、溶融亜鉛めっき層は、母材鋼板の表面の両面に設けられることができ、その際、溶融亜鉛めっき層は母材鋼板の表面に直接形成されていてもよく、母材鋼板が表面に表層軟質層、金属電気めっき層等を備えたものである場合、それらの層上に形成されていてもよい。
溶融亜鉛めっき層は、通常、Zn(亜鉛)を主成分(Zn含有量が50.0質量%以上)とする。組成は特に限定されず、公知の組成であることができる。溶融亜鉛めっき層は、例えば、Znと、20.0質量%以下のFe、0.001質量%以上1.0質量%以下のAlにより構成することが好適である。また、溶融亜鉛めっき層には、任意に、Pb、Sb、Si、Sn、Mg、Mn、Ni、Cr、Co、Ca、Cu、Li、Ti、Be、Bi及びREMからなる群から選ばれる1種又は2種以上の元素を合計で0.0質量%超3.5質量%以下含有させてもよい。また、溶融亜鉛めっき層のFe含有量は、より好ましくは7.0質量%未満である。なお、前記の元素以外の残部は、不可避的不純物である。
また、合金化溶融亜鉛めっき層は、例えば、20質量%以下のFe、0.001質量%以上1.0質量%以下のAlにより構成することが好適である。また、合金化溶融亜鉛めっき層には、任意に、Pb、Sb、Si、Sn、Mg、Mn、Ni、Cr、Co、Ca、Cu、Li、Ti、Be、Bi及びREMからなる群から選ばれる1種又は2種以上の元素を合計で0質量%超3.5質量%以下含有させてもよい。合金化溶融亜鉛めっき層のFe含有量は、より好ましくは7.0質量%以上、さらに好ましくは8.0質量%以上である。また、合金化溶融亜鉛めっき層のFe含有量は、より好ましくは15.0質量%以下、さらに好ましくは12.0質量%以下である。なお、前記の元素以外の残部は、不可避的不純物である。
溶融亜鉛めっき層の片面あたりのめっき付着量は、特に限定されず、例えば20g/m以上80g/m以下であることができる。
上記亜鉛めっき層のめっき付着量は、以下のようにして測定する。10質量%塩酸水溶液1Lに対し、Feに対する腐食抑制剤(朝日化学工業(株)製「イビット700BK」(登録商標))を0.6g添加した処理液を調整する。次いで、該処理液に、亜鉛めっき層を備えた鋼板のサンプルを浸漬し、亜鉛めっき層を溶解させる。そして、溶解前後でのsアンプルの質量減少量を測定し、その値を、素地鋼板の表面積(めっきで被覆されていた部分の表面積)で除することにより、めっき付着量(g/m)を算出する。
溶融亜鉛めっき層は、クラックを有することが好ましい。溶融亜鉛めっき層にクラックを意図的に付与することにより、母材鋼板の低温域拡散性水素量の一層の低減を図ることができる。
ここで、溶融亜鉛めっき層におけるクラックの有無は、以下のようにして判定する。溶融亜鉛めっき鋼板の溶融亜鉛めっき層の表面(おもて面及び裏面)を、SEMにより、倍率:3000倍で各面について2視野(1視野:30μm×40μm)ずつ、計4視野観察する。上記4視野のいずれかにおいて、溶融亜鉛めっきを貫通するクラックが1つ以上存在する場合には、クラック有りと判定する。また、上記4視野全てにおいて、溶融亜鉛めっきを貫通するクラックが存在しない場合には、クラック無しと判定する。
[1-4]その他
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板の板厚は特に限定されず、0.3mm以上3.0mm以下とすることができる。
[2]溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
次に、本発明の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法(以下、便宜的に「本発明の製造方法」ともいう)を説明する。本発明の製造方法は、上述した本発明の溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法でもある。ここで、製造方法に関する温度は、特に断らない限り、いずれも鋼スラブ又は鋼板の表面温度を基準とする。
[2-1]熱延工程
本発明の製造方法は、母材鋼板の成分組成を有する鋼スラブに、巻取温度:400℃以上700℃以下の条件で、熱間圧延を施して熱延鋼板とする工程を含む。鋼スラブは、上記の成分組成を有するものであれば、特に限定されない。例えば、鋼素材を溶製して上記成分組成を有する溶鋼とし、得られた溶鋼を固めることにより得られる鋼スラブを用いることができる。
溶製方法は特に限定されず、転炉溶製、電気炉溶製等の公知の溶製方法を用いることができる。溶鋼から鋼スラブを製造する方法は特に限定されず、連続鋳造法、造塊法、薄スラブ鋳造法等の公知の方法を用いることができる。マクロ偏析を防止する点から、連続鋳造法が好ましい。
鋼スラブを製造した後、一旦室温まで冷却し、その後、再度加熱してから圧延することができる。炭化物の溶解や、圧延荷重の低減の観点から、スラブ加熱温度は1100℃以上であることが好ましい。また、スケールロスの増大を防止するため、スラブ加熱温度は1300℃以下であることが好ましい。ここで、スラブ加熱温度はスラブ表面の温度である。
この工程においては、直送圧延や直接圧延等の省エネルギープロセスを適用して行ってもよい。ここで、直送圧延は、製造した鋼スラブを室温まで冷却せず、温片のままで加熱炉に装入し、圧延するプロセスであり、直接圧延は、製造した鋼スラブにわずかの保熱を行った後に直ちに圧延するプロセスである。
鋼スラブを熱間圧延し、熱延鋼板を得る。熱間圧延は、粗圧延及び仕上げ圧延からなることができる。
例えば、鋼スラブに粗圧延を施し、シートバーとすることができる。粗圧延の条件は、公知の条件とすることができる。
次いでシートバーに仕上げ圧延を施すことができる。スラブ加熱温度を低めにした場合は、圧延時のトラブルを防止する観点から、仕上げ圧延前にバーヒーター等を用いてシートバーを加熱することが好ましい。仕上げ圧延温度は、Ar変態点以上が好ましい。仕上げ圧延温度が過度に低いと、圧延負荷の増大や、オーステナイトの未再結晶状態での圧下率の上昇を招き、これにより、圧延方向に伸長した異常な組織が発達し、その結果、焼鈍後に得られる鋼板の加工性が低下する場合があるためである。ここで、Ar変態点は、次式により求める。
Ar(℃)=868-396×[%C]+24.6×[%Si]-68.1×[%Mn]-36.1×[%Ni]-20.7×[%Cu]-24.8×[%Cr]
上記の式中の[%元素記号]は、上記の成分組成における当該元素の含有量(質量%)を表す。
仕上げ圧延は、シートバー同士を接合して連続的に行ってもよい。また、シートバーを仕上げ圧延前に一旦巻き取ってもよい。さらに、圧延荷重を低減するため、仕上げ圧延の一部又は全部を潤滑圧延としてもよい。潤滑圧延を行うことは、鋼板形状の均一化や材質の均一化の観点からも有効である。潤滑圧延時の摩擦係数は、0.10以上0.25以下の範囲であることが好ましい。
熱延工程では、仕上げ圧延後、熱延鋼板を巻き取って回収し、その後、冷却する。その際、巻取温度を400℃以上700℃以下に制御することが、特に重要である。
巻取温度を400℃以上とすることにより、熱延鋼板での固溶Cを減少し、冷間圧延後の焼鈍時に{001}方位を有するフェライトの面積率を減少することができる。これにより、伸びフランジ割れの異方性を低減することができる。ただし、巻取温度が700℃を超えると、熱延鋼板組織に粗大なパーライトが生成し、焼鈍時のオーステナイトの核生成サイトが減少するため、結果としてマルテンサイトの分率が減少し、所望のTSを実現することが困難になる。したがって、巻取温度は400℃以上700℃以下とする。巻取温度は、好ましくは430℃以上、より好ましくは450℃以上であり、また、好ましくは670℃以下、より好ましくは650℃以下である。
巻取後の冷却条件については、特に限定されず、公知の条件を採用することができる。例えば、冷却速度は0.001℃/s以上1℃/s以下が好ましく、冷却停止温度は20℃以上200℃以下が好ましい。
[2-2]酸洗工程
熱延工程後、熱延鋼板を酸洗する。酸洗によって、鋼板表面の酸化物を除去することができ、良好な化成処理性やめっき品質が確保される。酸洗は、1回のみ行ってもよく、複数回に分けて行ってもよい。酸洗条件については特に限定されず、公知の条件を適用することができる。
[2-3]熱処理工程(任意)
酸洗工程後、熱延鋼板に熱処理を施してもよい。熱延鋼板に熱処理を施すことにより、熱延鋼板の鋼組織中に微細な炭化物が均一に生成し、マルテンサイトの面積率が減少しないため、TSが低下することを抑制することができる。この点から、熱処理温度は450℃以上であることが好ましい。一方、熱処理温度が650℃を超えると、炭化物が球状粗大化したり、粗大なパーライトが生成し、TSが低下し得る。したがって、熱処理温度は450℃以上650℃以下であることが好ましい。熱処理温度は、より好ましくは460℃以上、さらに好ましくは470℃以上であり、また、より好ましくは600℃以下、さらに好ましくは550℃以下である。
熱処理温度での滞留時間は特に限定されないが、熱延鋼板の鋼組織中に微細な炭化物が均一に生成し、マルテンサイトの面積率が減少しないため、TSが低下することを抑制するという熱処理工程の効果を得る点からは、熱処理温度域での滞留時間は10分以上であることが好ましい。熱処理温度域での滞留時間は、より好ましくは100分以上、さらに好ましくは500分以上である。滞留時間の上限は特に限定されないが、熱延鋼板の鋼組織中に微細な炭化物を均一に生成させる観点から、3000分以下が好ましく、より好ましくは2000分以下である。
[2-4]冷延工程
熱延工程後の熱延鋼板又は熱延工程及び熱処理工程後の熱延鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とする。この際、以下の条件を満足させることが重要である。
[総圧下率:40%以上]
鋼スラブの板厚から冷延鋼板の最終の板厚に至るまでの冷間圧延の総圧下率を増加させることで、焼鈍時に{001}方位を有するフェライトの面積率を減少させることができ、これにより、伸びフランジ割れの異方性を低減することができる。そのため、最終の板厚に至るまでの冷間圧延の総圧下率は40%以上とする。総圧下率は、好ましくは45%以上、より好ましくは50%以上である。総圧下率の上限は特に限定されないが、生産技術上の制約から、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下である。
冷延鋼板の最終の板厚は、溶融亜鉛めっき鋼板の板厚に応じて設定することができ、例えば0.3mm以上3.0mm以下とすることができる。
[累積圧下率30%以上総圧下率までのパス数:2パス以上]
累積圧下率30%以上となってから、最終の板厚に至るまでのパス数を増加させることで、焼鈍時に{001}方位を有するフェライトの面積率を減少させることができる。これにより、伸びフランジ割れの異方性を低減することができる。そのため、累積圧下率30%以上総圧下率までのパス数は2パス以上とし、好ましくは3パス以上、より好ましくは4パス以上である。30%以上総圧下率までのパス数の上限は特に限定されないが、生産技術上の制約から、好ましくは100パス以下、より好ましくは50パス以下である。
ここで、累積圧下率30%以上総圧下率までのパス数とは、累積圧下率がはじめて30%以上となるパスを1回目として、最終の板厚となるパスを最終回として、1回目から最終回までのパスの回数(1回目及び最終回を含む)をいう。
その他の冷間圧延条件については特に限定されず、公知の条件を採用することができる。冷間圧延は、例えば、タンデム式の多スタンド圧延又はリバース圧延等により行うことができる。鋼スラブの板厚から最終の板厚に至るまでのトータルのパス数、各パスの圧下率については、特に限定されず、公知の条件を採用することができる。
[2-5]金属めっき処理工程(任意)
上記のようにして得られた冷延鋼板の表面に金属めっき処理を施して、金属めっき層(焼鈍前金属めっき層)が少なくとも片面に形成された焼鈍前金属めっき鋼板としてもよい。焼鈍前金属めっき鋼板は、焼鈍前金属電気めっき層を備えた焼鈍前金属電気めっき鋼板であることが好ましい。
金属電気めっき処理方法は特に限定されないが、前述したように素地鋼板上に形成させる金属めっき層としては、金属電気めっき層とすることが好ましいため、金属電気めっき処理を施すことが好ましい。例えば、Fe系電気めっき浴では硫酸浴、塩酸浴あるいは両者の混合などが適用できる。また、焼鈍前金属電気めっき層の付着量は、通電時間等によって調整することができる。なお、焼鈍前金属電気めっき鋼板とは、金属電気めっき層が焼鈍工程を経ていないことを意味し、金属電気めっき処理前の熱延鋼板、熱延後酸洗処理板又は冷延鋼板について予め焼鈍された態様を除外するものではない。
ここで、電気めっき層の金属種としては、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Ge、As、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Os、Ir、Rt、Au、Hg、Ti、Pb、Biのいずれでもかまわないが、Feであることがより好ましいため、Fe系電気めっきの製造方法を以下に述べる。
通電開始前のFe系電気めっき浴中のFeイオン含有量は、Fe2+として0.5mol/L以上とすることが好ましい。Fe系電気めっき浴中のFeイオン含有量が、Fe2+として0.5mol/L以上であれば、十分なFe付着量を得ることができる。また、十分なFe付着量を得るために、通電開始前のFe系電気めっき浴中のFeイオン含有量は、2.0mol/L以下とすることが好ましい。
また、Fe系電気めっき浴中にはFeイオンに加えて、B、C、P、N、O、Ni、Mn、Mo、Zn、W、Pb、Sn、Cr、V及びCoからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含有することができる。Fe系電気めっき浴中でのこれらの元素の合計含有量は、焼鈍前Fe系電気めっき層中でこれらの元素の合計含有量が10質量%以下となるようにすることが好ましい。なお、金属元素は金属イオンとして含有すればよく、非金属元素はホウ酸、リン酸、硝酸、有機酸等の一部として含有することができる。また、硫酸鉄めっき液中には、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等の伝導度補助剤や、キレート剤、pH緩衝剤が含まれていてもよい。
Fe系電気めっき浴のその他の条件は、特に限定されない。Fe系電気めっき液の温度は、定温保持性の観点から、30℃以上とすることが好ましく、また、85℃以下が好ましい。Fe系電気めっき浴のpHも、特に限定されないが、水素発生による電流効率の低下を防ぐ観点から1.0以上とすることが好ましく、また、Fe系電気めっき浴の電気伝導度の観点から3.0以下が好ましい。電流密度は、生産性の観点から10A/dm以上とすることが好ましく、また、Fe系電気めっき層の付着量制御を容易にする観点から150A/dm以下であることが好ましい。通板速度は、生産性の観点から5mpm以上とすることが好ましく、また、付着量を安定的に制御する観点から150mpm以下とすることが好ましい。
Fe系電気めっき処理を施す前の処理として、冷延鋼板表面を清浄化するための脱脂処理及び水洗、さらには、冷延鋼板表面を活性化するための酸洗処理及び水洗を施すことができる。これらの前処理に引き続いてFe系電気めっき処理を実施する。脱脂処理及び水洗の方法は特に限定されず、通常の方法を用いることができる。
酸洗処理においては、硫酸、塩酸、硝酸及びこれらの混合物等各種の酸が使用できる。中でも、硫酸、塩酸及びこれらの混合物が好ましい。酸の濃度は特に限定されないが、酸化皮膜の除去能力及び過酸洗による肌荒れ(表面欠陥)防止等の観点から、1質量%以上20質量%以下が好ましい。
また、酸洗処理液には、消泡剤、酸洗促進剤、酸洗抑制剤等を含有してもよい。
[2-6]焼鈍工程
上記のようにして得られた冷延鋼板に、焼鈍を施す。冷延鋼板は、金属めっき処理されたものであってもよいが、当該処理を施されていなくてもよい。焼鈍の際、以下の条件を満足させることが重要である。
[250℃以上600℃以下の温度域での平均加熱速度:1℃/s以上100℃/s以下]
焼鈍の際、加熱温度域での平均加熱速度を抑制することにより、焼鈍時に{001}方位を有するフェライトの面積率を減少させることができる。これにより、伸びフランジ割れの異方性を低減することができる。そのため、250℃以上600℃以下の温度域での平均加熱速度は100℃/s以下とする。一方、250℃以上600℃以下の温度域での平均加熱速度が1.0℃/s未満では、マルテンサイトの分率が減少し、所望のTSを実現することが困難になる。そのため、250℃以上600℃以下の温度域での平均加熱速度は1.0℃/s以上とする。したがって、250℃以上600℃以下の温度域での平均加熱速度は、1.0℃/s以上100℃/s以下とする。平均加熱速度は、好ましくは3.0℃/s以上、より好ましくは5.0℃/s以上であり、また、平均加熱速度は、好ましくは80℃/s以下、より好ましくは50℃/s以下である。
[焼鈍温度:750℃以上900℃以下]
冷延鋼板は、750℃以上900℃以下の焼鈍温度まで加熱する。焼鈍温度が750℃以下では、焼鈍時のオーステナイトの分率を十分に確保できず、結果としてマルテンサイトの面積率が減少し、所望のTSを実現することが困難になる。一方、焼鈍温度が900℃を超えると、オーステナイト単相域での焼鈍となるため、フェライトの面積率が減少し、所望の延性を実現することが困難になる。また、母材鋼板中の低温域拡散性水素量が増加し、所望の延性、伸びフランジ性、曲げ性及び伸びフランジ割れの異方性を実現することが困難になる。したがって、焼鈍温度は750℃以上900℃以下とする。焼鈍温度は、好ましくは770℃以上、より好ましくは780℃以上であり、また、好ましくは880℃以下、より好ましくは860℃以下である。
焼鈍温度での保熱時間(以下、焼鈍時間ともいう)は特に限定されないが、母材鋼板のフェライト及びマルテンサイトの面積率を所定の範囲に制御する観点から、10s以上600s以下であることが好ましい。
600℃を超えてから、焼鈍温度までの平均加熱速度は、0.5℃/sであることができ、好ましくは1.0℃/sである。
[焼鈍工程の焼鈍雰囲気の露点:-25℃以上(好適条件)]
焼鈍工程の焼鈍雰囲気の露点は-25℃であることが好ましい。焼鈍工程における焼鈍雰囲気の露点を-25℃以上で行うことで,脱炭反応が促進され,表層軟質層をより深く形成できる。焼鈍工程の焼鈍雰囲気の露点は,より好ましくは-15℃以上,さらに好ましくは-5℃以上である。焼鈍工程の焼鈍雰囲気の露点の上限は特に限定されないが,溶融亜鉛めっき層を設ける際のめっき密着性を良好にする点から、30℃以下であることが好ましい。露点が上記範囲であれば、Fe系電気めっき層を備えた冷延鋼板については、めっき層表面の酸化を好適に防ぐことができる。
[2-7]焼鈍後の冷却工程
上記の焼鈍後、冷延鋼板を冷却する。この際の条件については、特に限定されず、公知の条件を採用することができる。例えば、焼鈍温度から500℃以上の温度域における平均冷却速度は特に限定されないが、母材鋼板のフェライト及びマルテンサイトの面積率を所定の範囲に制御する観点から、3℃/s以上50℃/s以下であることが好ましい。
また、500℃未満の温度域における平均冷却速度は特に限定されず、マルテンサイトの面積率を好適な範囲に制御する観点から、1℃/s以上30℃/s以下であることが好ましい。
[2-8]めっき処理工程
冷延鋼板に溶融亜鉛めっき処理を施す。溶融亜鉛めっき処理後に、合金化処理を施してもよい。
溶融亜鉛めっき処理は、上述の焼鈍温度以下400℃以上の温度域で施すことができる。、冷延鋼板を一旦400℃未満まで冷却し、再度、鋼板温度を400℃以上まで上昇した後に、施してもよい。
焼鈍、冷却及び溶融亜鉛めっき処理を、1ライン(CGL(Continuous Galvanizing Line))で連続して行ってもよい。
例えば、焼鈍後、冷延鋼板を500℃程度の温度域に冷却し、次いで、冷延鋼板を冷却帯の鋼帯出側に通板し、先端部が溶融亜鉛めっき浴に浸漬されたスナウトを介して、溶融亜鉛めっき浴へと移動させつつ、さらに冷却することができる。冷延鋼板の冷却終了から冷延鋼板が溶融亜鉛めっき浴に侵入するまでの時間は、特に限定されないが、フェライト及びマルテンサイトの面積率を所定の範囲に制御する観点から、300s以下とすることが好ましい。冷却帯とスナウトとの連結部の直前に、冷延鋼板の進行方向を変化させてスナウト内に侵入させるためのロールを設け、冷延鋼板が該ロールを通過してから、スナウト内に侵入するようにし、次いで、スナウトを介して、溶融亜鉛めっき浴へと導かれた冷延鋼板を、溶融亜鉛めっき浴中に浸漬させ、溶融亜鉛めっき処理を施し、めっき鋼板とするができる。
溶融亜鉛めっき処理の条件は特に限定されない。例えば、冷延鋼板を440℃以上500℃以下の溶融亜鉛めっき浴中に浸漬させることができる。また、Al量が0.10質量%以上0.23質量%以下であり、残部がZn及び不可避的不純物である組成の溶融亜鉛めっき浴を用いることが好ましい。溶融亜鉛めっき浴には、さらにPb、Sb、Si、Sn、Mg、Mn、Ni、Cr、Co、Ca、Cu、Li、Ti、Be、Bi及びREMからなる群より選ばれる少なくとも1種を合計で0質量%以上3.5質量%以下となる量で含有させてもよい。溶融亜鉛めっき浴には、鋼板から溶け出したFeが含まれ得る。
溶融亜鉛めっき処理は、溶融亜鉛めっき鋼板(GI)の片面あたりのめっき付着量が、20g/m以上80g/m以下となるように行うことが好ましい。めっきの付着量は、溶融亜鉛めっき処理後にガスワイピング等を行うことにより調節することが可能である。
溶融亜鉛めっき処理後に、合金化処理を施してもよい。合金化処理温度が460℃未満では、Zn?Fe合金化速度が過度に遅くなってしまい、生産性が低下するおそれがあり、一方、合金化処理温度が600℃を超えると、未変態オーステナイトがパーライトへ変態し、TS及びElが低下する場合がある。そのため、合金化処理温度を、460℃以上600℃以下とすることが好ましい。合金化処理温度は、好ましくは470℃以上であり、また、好ましくは560℃以下である。
合金化処理後の合金化溶融亜鉛めっき層中のFe濃度は、7質量%15質量%以下であることが好ましく、より好ましくは8質量%以上13質量%以下である。
[2-9]めっき処理後の冷却工程
めっき処理(溶融亜鉛めっき処理、あるいは溶融亜鉛めっき処理及び合金化処理)後、めっき鋼板を、冷却する。
冷却条件は、特に限定されず、公知の条件を採用することができる。例えば、溶融亜鉛めっき処理又は合金化処理終了後、冷却停止温度までの平均冷却速度は特に限定されないが、TSの一層の向上の観点から、好ましくは2℃/s以上、より好ましくは5℃/s以上であり、また、生産技術上の制約から、好ましくは50℃/s以下、より好ましくは40℃/s以下である。冷却方法も特に限定されず、ガスジェット冷却、ミスト冷却、水冷及び空冷等を適用することができる。
[めっき鋼板の冷却中における保熱温度:100℃以上450℃以下(好適条件)]
めっき鋼板の冷却中に、100℃以上450℃以下の温度域で、5s以上保熱し、その後冷却してもよい。めっき鋼板の冷却中に保熱することにより、めっき鋼板からの水素脱離が促進され、母材鋼板の低温域拡散性水素量が減少する。そのため、めっき鋼板の冷却中における保熱温度は100℃以上とすることが好ましい。一方、めっき鋼板の冷却中における保熱温度が450℃を超えると、マルテンサイトの面積率が減少し、TSを低下する。したがって、めっき鋼板の冷却中における保熱温度は100℃以上450℃以下であることが好ましい。めっき鋼板の冷却中における保熱温度はより好ましくは130℃以上、さらに好ましくは150℃以上であり、また、より好ましくは400℃以下、さらに好ましくは350℃以下である。
[めっき鋼板の冷却中における保熱時間:5s以上(好適条件)]
保熱によって、母材鋼板の低温域拡散性水素量の減少を効果的に図る観点から、めっき鋼板の冷却中における保熱時間は5s以上であることが好ましく、より好ましくは10s以上、さらに好ましくは15s以上である。めっき鋼板の冷却中における保熱時間の上限は特に限定されないが、母材鋼板のフェライト及びマルテンサイトの面積率を所定の範囲に制御する観点から、300s以下とすることが好ましく、より好ましくは100s以下である。
[めっき鋼板の冷却中における冷却停止温度:300℃以下(好適条件)]
めっき鋼板の冷却中に、マルテンサイト変態開始温度以下の冷却停止温度まで冷却し、その後再加熱することにより、めっき鋼板からの水素脱離が促進され、母材鋼板の低温域拡散性水素量を減少させることができる。この観点から、めっき鋼板の冷却中における冷却停止温度は300℃以下であることが好ましく、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。めっき鋼板の冷却中における冷却停止温度の下限は特に限定されないが、生産技術上の制約から、10℃以上とすることが好ましく、より好ましくは30℃以上である。
[めっき鋼板の再加熱温度:(冷却停止温度+50℃)以上450℃以下(好適条件)]
冷却停止温度に到達した後、めっき鋼板を再加熱することにより、めっき鋼板からの水素脱離が促進され、母材鋼板の低温域拡散性水素量が減少する。この観点から、めっき鋼板の再加熱温度は(冷却停止温度+50℃)以上であることが好ましい。一方、めっき鋼板の再加熱温度が450℃を超えると、マルテンサイトの面積率が減少し、TSを低下する。したがって、めっき鋼板の再加熱温度は(冷却停止温度+50℃)以上450℃以下が好ましく、より好ましくは(冷却停止温度+80℃)以上、さらに好ましくは(冷却停止温度+100℃)以上であり、また、400℃以下が好ましく、さらに好ましくは350℃以下である。
[めっき鋼板の再加熱温度での保熱時間:5s以上(好適条件)]
再加熱温度で保熱することにより、めっき鋼板からの水素脱離が促進され、母材鋼板の低温域拡散性水素量を減少させることができる。この観点から、めっき鋼板の再加熱温度での保熱時間は5s以上であることが好ましく、より好ましくは10s以上、さらに好ましくは15s以上である。めっき鋼板の再加熱温度での保熱時間の上限は特に限定されないが、母材鋼板のフェライト及びマルテンサイトの面積率を所定の範囲に制御する観点から、300s以下とすることが好ましく、より好ましくは100s以下である。
[冷却後の圧延:伸長率0.05%以上1.00%以下(好適な工程及び条件)]
冷却後、めっき鋼板に伸長率:0.05%以上1.00%以下の圧延を施すことが好ましい。冷却後の圧延での伸長率を0.05%以上とすることにより、溶融亜鉛めっき層にクラックを導入することができ、その結果、母材鋼板の低温域拡散性水素量の一層の低減が期待できる。一方、冷却後の圧延での伸長率が1.00%を超えると、{001}方位を有するフェライトの面積率が増加し、伸びフランジ割れの異方性が悪化する場合がある。したがって、冷却後の圧延の伸長率は、0.05%以上1.00%以下とすることが好ましい。冷却後の圧延の伸長率は、より好ましくは0.10%以上であり、また、より好ましくは0.50%以下である。
冷却後の圧延は、連続溶融亜鉛めっき装置と連続した装置上で(オンラインで)行ってもよいし、連続溶融亜鉛めっき装置とは不連続な装置上によって(オフラインで)行ってもよい。また、一回の圧延で目的の伸長率を達成してもよいし、複数回の圧延を行い、合計で0.05%以上1.00%以下の伸長率を達成してもよい。ここで記載した圧延は、一般的には調質圧延のことを指すが、調質圧延と同等の伸長率を付与できれば、テンションレベラーやロールによる繰り返し曲げ等による加工の方法であっても構わない。
圧延処理については、めっき鋼板を室温付近まで冷却した後に圧延処理を施しても構わないし、めっき鋼板の冷却停止時に圧延処理し、その後、再加熱処理を施しても構わない。
溶融亜鉛めっき鋼板が取引対象となる場合には、通常、室温まで冷却された後、取引対象となる。
上記以外の製造条件については特に限定されず、公知の条件を採用することができる。
[3]部材及びその製造方法
本発明の部材及びその製造方法について説明する。
本発明の部材は、上記した本発明の溶融亜鉛めっき鋼板を用いてなる部材である。部材は、例えば、本発明の溶融亜鉛めっき鋼板を、プレス加工等により、目的の形状に成形することにより製造することができる。
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板は、高い延性と、高い伸びフランジ性及び曲げ性とを有し、かつ、伸びフランジ割れの異方性を低減した高強度の溶融亜鉛めっき鋼板である。そのため、本発明の溶融亜鉛めっき鋼板又は溶融亜鉛めっき鋼板を用いてなる部材を、例えば、自動車の骨格構造部品又は自動車の補強部品に適用することによって、車体軽量化による燃費向上を図ることができ、産業上の利用価値は極めて大きい。
以下、実施例により、さらに本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例により制限されるものではない。
[試験No.1~39]
表1に示す成分組成を有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼スラブ(鋼素材)を転炉にて溶製し、連続鋳造法にて鋼スラブを得た。得られた鋼スラブを1250℃に加熱して、粗圧延し、シートバーを得た。次いで、得られたシートバーに、仕上げ圧延温度:900℃で仕上げ圧延を施し、表2に示す条件で巻取りを行い、熱延鋼板を得た。得られた熱延鋼板に酸洗を施した後、表2に示す条件で冷間圧延を施し、板厚:1.4mmの冷延鋼板を得た。
得られた冷延鋼板に、表2に示す条件で焼鈍を施した。次いで、冷延鋼板に、表2に示す種類のめっき処理を施し、両面に溶融亜鉛めっき層を有するめっき鋼板を得た。
表2中のめっき処理の種類におけるGIは溶融亜鉛めっき処理のみ行い、合金化処理なしを意味する。また、GAは溶融亜鉛めっき処理及び合金化処理を行ったことを意味する。
GIでは、めっき浴として、Al:0.20質量%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる溶融亜鉛めっき浴を使用した。また、GAでは、Al:0.14質量%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる溶融亜鉛めっき浴を使用した。めっき浴温はいずれも470℃とした。
めっき付着量は、GIでは、片面あたり45~72g/m程度とし、また、GAでは、45g/m(両面めっき)程度とし、いずれも両面にめっき処理を行った。GAでは、合金化処理温度を550℃程度とした。
GIの溶融亜鉛めっき層の組成は、Fe:0.1~1.0質量%、Al:0.2~1.0質量%で、残部がZn及び不可避的不純物であった。また、GAの(合金化)溶融亜鉛めっき層の組成は、Fe:7~15質量%、Al:0.1~1.0質量%で、残部がZn及び不可避的不純物であった。
次いで、一部のめっき鋼板では、表2に示す条件で、保熱処理又は冷却後に再加熱処理を施した。明記していない条件については、常法に従うものとした。
このようにして得られた溶融亜鉛めっき鋼板について、上述した方法により、母材鋼板の板厚1/4位置における組織の同定を行い、全フェライトの面積率に対する{001}方位を有するフェライトの面積率の割合({001}方位を有するフェライトの面積率/全フェライトの面積率)及び母材鋼板の低温域拡散性水素量を測定した。結果を表3に示す。
得られた鋼板の母材鋼板の成分組成は、鋼スラブ段階の成分組成と実質的に同一であり、適合鋼についてはいずれも本発明の成分組成の範囲内であり、比較鋼についてはいずれも本発明の成分組成の範囲外であった。
得られた溶融亜鉛めっき鋼板について、以下の試験方法に従い、引張特性及び伸びフランジ性、伸びフランジ割れの異方性及び曲げ性を評価した。結果を表3に示す。
[引張試験]
引張試験は、JIS Z 2241に準拠して行った。すなわち、得られた溶融亜鉛めっき鋼板より、鋼板の圧延直角方向(C方向)が長手方向となるように、JIS5号試験片を採取した。次いで、採取した試験片を用いて、クロスヘッド速度:1.67×10-1mm/sの条件で引張試験を行い、YS、TS及びElを測定した。そして、TSについては、780MPa以上を、合格と判断した。また、測定したTS及びElから、TS及びElの積(TS×El)を計算し、TS×Elを算出した。そして、TS×Elが13000MPa・%以上を、合格と判断した。
[穴広げ試験]
穴広げ試験は、JIS Z 2256に準拠して行った。すなわち、得られた溶融亜鉛めっき鋼板を、100mm×100mmにせん断し、次いで、せん断した鋼板にクリアランス:12.5%で直径:10mmの穴を打ち抜いた。次いで、内径:75mmのダイスを用いてしわ押さえ力:9ton(88.26kN)で鋼板を抑え、その状態で、頂角:60°の円錐ポンチを穴に押し込んでき裂発生限界における穴直径を測定した。そして、次式により、(限界)穴広げ率(%)を求めた。
(限界)穴広げ率:λ(%)={(D-D)/D}×100
ここで、Dはき裂発生時の穴径(mm)、Dは初期穴径(mm)である。せん断した鋼板3枚の(限界)穴広げ率を測定し、その平均値をλとし、そのλが30%以上の場合に、伸びフランジ性が合格と判断した。
穴広げ試験では、き裂発生時のき裂の発生方向及び個数を評価した。き裂の発生方向については、鋼板の圧延方向(L方向)、鋼板の圧延方向に対して45度方向(D方向)及び鋼板の圧延直角方向(C方向)とし、さらにLとDの間をLD方向、DとCの間をDC方向とし、5つの方向に分類する。また、同一方向で1箇所割れていた場合はその方向のき裂の個数は1個、同一方向で2箇所割れていた場合はその方向のき裂の個数は2個として、各方向におけるき裂の個数も評価する。次いで、各方向のき裂発生率は以下の式(1)~(3)で算出する。
L方向の割れ発生率(%)={L方向のき裂の個数+(LD方向のき裂の個数)/2}/(き裂の全個数)×100・・・(1)
D方向の割れ発生率(%)={(LD方向のき裂の個数)/2+D方向のき裂の個数+(DC方向のき裂の個数)/2}/(き裂の全個数)×100・・・(2)
C方向の割れ発生率(%)={(DC方向のき裂の個数)/2+C方向のき裂の個数}/(き裂の全個数)×100・・・(3)
ここで、L、D及びC方向について、各方向のき裂発生率が60%以下である場合に、伸びフランジ割れの異方性が低減した、つまり合格と判断した。
[曲げ試験]
曲げ試験は、JIS Z 2248に準拠して行った。得られた溶融亜鉛めっき鋼板より、鋼板の圧延方向(L方向)に対して平行方向が曲げ試験の軸方向となるように、幅が30mm、長さが100mmの短冊状の試験片を採取した。その後、押込み荷重が100kN、押付け保持時間が5秒とする条件で、90°V曲げ試験を行った。曲げ性は曲げ試験の合格率で評価し、曲げ半径(R)を板厚(t)で除した値R/tが5以下となる最大のR(例えば、板厚が1.4mmの場合、曲げ半径は7.0mm)において、5サンプルの曲げ試験を実施し、次いで、曲げ頂点の稜線部における亀裂発生有無の評価を行い、5サンプルとも割れない場合を、曲げ性が「優」と判断した。また、5サンプルのうち一つ以上のサンプルで200μm未満の微小割れが発生する場合を、曲げ性が「良」と判断した。さらに、5サンプルのうち一つ以上のサンプルで200μm以上の微小割れが発生する場合を、曲げ性が「劣」と判断した。ここで、亀裂発生有無は、曲げ頂点の稜線部をデジタルマイクロスコープ(RH-2000:株式会社ハイロックス製)を用いて、40倍の倍率で測定することにより評価した。
Figure 0007364119000001
Figure 0007364119000002
Figure 0007364119000003
表3に示すように、発明例ではいずれも、TSが780MPa以上であり、高い延性と、高い伸びフランジ性及び曲げ性とを有し、かつ、伸びフランジ割れの異方性が低減されていた。一方、比較例では、TS、延性、伸びフランジ性、曲げ性及び伸びフランジ割れの異方性の少なくとも1つが十分とはいえなかった。
[試験No.40~63]
表1に示す成分組成を有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼スラブ(鋼素材)を転炉にて溶製し、連続鋳造法にて鋼スラブを得た。得られた鋼スラブを1250℃に加熱して、粗圧延し、シートバーを得た。次いで、得られたシートバーに、仕上げ圧延温度:900℃で仕上げ圧延を施し、表4に示す条件で巻取りを行い、熱延鋼板を得た。得られた熱延鋼板に酸洗を施した後、表4に示す条件で冷間圧延を施し、板厚:1.4mmの冷延鋼板を得た。
一部の冷延鋼板に対して、金属電気めっき処理工程を行った。表4の金属電気めっき処理の有無(めっき種)の欄が、有(Fe)とある場合は、Fe系電気めっき処理を行った例であり、(Ni)とある場合は、Ni系電気めっき処理を行った例である。金属電気層の組成は、Fe系電気めっきでは、Fe:95~100質量%、Ni系電気めっきでは、Ni:95~100質量%を含有し、それぞれ残部は不可避的不純物であった。
次いで、冷延鋼板に、表4に示す種類のめっき処理(GI、GA)を施し、両面に溶融亜鉛めっき層を有するめっき鋼板を得た。GI、GAの条件は上記と同様とした。
次いで、一部のめっき鋼板では、表4に示す条件で、保熱処理又は冷却後に再加熱処理を施した。明記していない条件については、常法に従うものとした。
このようにして得られた溶融亜鉛めっき鋼板について、上記の試験方法に従い、母材鋼板の板厚1/4位置における組織の同定を行い、全フェライトの面積率に対する{001}方位を有するフェライトの面積率の割合({001}方位を有するフェライトの面積率/全フェライトの面積率)及び母材鋼板の低温域拡散性水素量を測定した。結果を表5に示す。
得られた鋼板の母材鋼板の成分組成は、鋼スラブ段階の成分組成と実質的に同一であり、適合鋼についてはいずれも本発明の実施形態に係る成分組成の範囲内であった。
得られた溶融亜鉛めっき鋼板について、上記の試験方法に従い、引張特性及び伸びフランジ性、伸びフランジ割れの異方性及び曲げ性を評価した。結果を表5に示す。
さらに、得られた溶融亜鉛めっき鋼板について、表層軟質層の厚さ、金属めっき層付着量を測定した。結果を表5に示す。
[表層軟質層の厚さ]
母材鋼板の圧延方向に平行な板厚断面(L断面)を湿式研磨により平滑化した後、ビッカース硬度計を用いて、荷重10gfで、母材鋼板表面から板厚方向に1μmの位置より、板厚方向100μmの位置まで、1μm間隔で測定を行った。その後は板厚中心まで20μm間隔で測定を行った。硬度が板厚1/4位置の硬度に比して85%以下に減少した領域を軟質層(表層軟質層)と定義し、当該領域の板厚方向の厚さを軟質層の厚さとした。
[金属めっき層付着量]
溶融亜鉛めっき鋼板から10mm×15mmサイズのサンプルを採取して樹脂に埋め込み、断面埋め込みサンプルとする。同断面の任意の3か所を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)を用いて加速電圧15kVで、Fe系めっき層の厚みに応じて倍率2000~10000倍で観察し、3視野の厚みの平均値に鉄の比重を乗じることによって、Fe系めっき層の片面あたりの付着量に換算した。
[表層軟質層に関するナノ硬度]
得られた溶融亜鉛めっき鋼板の母材鋼板の表層軟質層について、ナノ硬度を測定した。結果を表5に示す。
表層軟質層の1/4位置については、以下のとおりである。得られた溶融亜鉛めっき鋼板から、めっき剥離後、母材鋼板表面から表層軟質層の板厚方向深さの1/4位置まで機械研磨、ダイヤモンド及びアルミナでのバフ研磨及びコロイダルシリカ研磨を実施した。ナノインデンテーション装置(Hysitron社のtribo-950)を用いて、バーコビッチ形状のダイヤモンド圧子により、
荷重速度及び除荷速度:50μN/s
最大荷重:500μN
測定領域:50μm×50μm
データ採取ピッチ:5msec
打点間隔:2μm
の条件で計512点のナノ硬度を測定した。
次いで、前記表層軟質層の板厚方向深さの1/2位置まで機械研磨、ダイヤモンド及びアルミナでのバフ研磨及びコロイダルシリカ研磨を実施した。Hysitron社のtribo-950を用い、バーコビッチ形状のダイヤモンド圧子により、上記と同様の条件で計512点のナノ硬度を測定した。
[V曲げ+直交VDA曲げ試験、軸圧壊破断試験]
得られた溶融亜鉛めっき鋼板について、V曲げ+直交VDA曲げ試験、軸圧壊破断試験を行った。結果を表5に示す。
なお、板厚1.2mm超の溶融亜鉛めっき鋼板のV曲げ+直交VDA曲げ試験及び軸圧壊試験では、板厚の影響を考慮し、全て板厚1.2mmの鋼板で実施した。板厚1.2mm超の鋼板は片面研削し、板厚を1.2mmにした。一方、板厚1.2未満の溶融亜鉛めっき鋼板のV曲げ+直交VDA曲げ試験及び軸圧壊試験では、板厚の影響が小さいため、研削処理無しで試験を行った。
V曲げ+直交VDA曲げ試験は以下のようにして実施した。
得られた溶融亜鉛めっき鋼板から、60mm×65mmの試験片を剪断・端面研削加工により採取した。ここで、60mmの辺は圧延(L)方向に平行とする。曲率半径/板厚:4.2で幅(C)方向を軸に圧延(L)方向に90°曲げ加工(一次曲げ加工)を施し、試験片を準備した。90°曲げ加工(一次曲げ加工)では、図1(a)に示すように、V溝を有するダイA1の上に載せた鋼板に対して、パンチB1を押し込んで試験片T1を得た。次に、図1(b)に示すように、支持ロールA2の上に載せた試験片T1に対して、曲げ方向が圧延直角方向となるようにして、パンチB2を押し込んで直交曲げ(二次曲げ加工)を施した。図1(a)及び図1(b)において、D1は幅(C)方向、D2は圧延(L)方向を示している。
V曲げ+直交VDA曲げ試験におけるV曲げの条件は、以下のとおりである。
試験方法:ダイ支持、パンチ押し込み
成型荷重:10ton
試験速度:30mm/min
保持時間:5s
曲げ方向:圧延(L)方向
V曲げ+直交VDA曲げ試験におけるVDA曲げの条件は、以下のとおりである。
試験方法:ロール支持、パンチ押し込み
ロール径:φ30mm
パンチ先端R:0.4mm
ロール間距離:(板厚×2)+0.5mm
ストローク速度:20mm/min
試験片サイズ:60mm×60mm
曲げ方向:圧延直角(C)方向
前記VDA曲げを施した際に得られるストローク-荷重曲線において、荷重最大時のストロークを求める。前記V曲げ+直交VDA曲げ試験を3回実施した際の当該荷重最大時のストロークの平均値をSFmax(mm)とした。求めたSFmaxが、26.0mm以上を満たす場合、衝突時の耐破断性(曲げ破断に対する耐性)に優れると判断した。
[軸圧壊試験]
軸圧壊試験は、以下のようにして実施した。
得られた溶融亜鉛めっき鋼板から、150mm×100mmの試験片をせん断加工により採取した。ここで、150mmの辺は圧延(L)方向に平行とする。パンチ肩半径が5.0mmであり、ダイ肩半径が5.0mmである金型を用いて、深さ40mmとなるように成形加工(曲げ加工)して、図2(a)及び図2(b)に示すハット型部材10を作製した。
また、ハット型部材の素材として用いた鋼板を、80mm×100mmの大きさに別途切り出した。次に、その切り出した後の鋼板20と、ハット型部材10とをスポット溶接し、図2(a)及び図2(b)に示すような試験用部材30を作製した。図2(a)は、ハット型部材10と鋼板20とをスポット溶接して作製した試験用部材30の正面図である。図2(b)は、試験用部材30の斜視図である。スポット溶接部40の位置は、図2(b)に示すように、鋼板の端部と溶接部が10mm、溶接部間が20mmの間隔となるようにした。次に、図2(c)に示すように、試験用部材30を地板50とTIG溶接により接合して軸圧壊試験用サンプルを作製した。次に、作製した軸圧壊試験用サンプルにインパクター60を衝突速度10mm/minで等速衝突させ、軸圧壊試験用のサンプルを70mm圧壊した。図2(c)に示すように、圧壊方向D3は、試験用部材30の長手方向と平行な方向とした。
試験後の試験用部材30の外観を観察し、軸圧壊破断(外観割れ)の有無を確認した。
外観割れが認められなかった場合は「A」を、外観割れが1箇所以下で認められた場合は「B」を、外観割れが2箇所以上で認められた場合は「C」を、下記表5に記載した。「A」又は「B」の場合、衝突時の耐破断性(軸圧壊破断に対する耐性)に優れると判断した。
Figure 0007364119000004
Figure 0007364119000005
表5に示すように、発明例ではいずれも、TSが780MPa以上であり、高い延性と、高い伸びフランジ性及び曲げ性とを有し、かつ、伸びフランジ割れの異方性が低減されていた。さらに、衝突時の耐破断特性(曲げ破断特性及び軸圧壊特性)にも優れていた。
本発明によれば、高強度であるとともに、高い延性と、高い伸びフランジ性及び曲げ性とを有し、かつ、伸びフランジ割れの異方性が低減された溶融亜鉛めっき鋼板が提供される。特に、本発明の溶融亜鉛めっき鋼板は、種々の特性に優れるので、種々の大きさ及び形状の自動車の骨格構造部品等に適用することが可能である。これにより、車体軽量化による燃費向上を図ることができ、産業上の利用価値は極めて大きい。
A1 ダイ
A2 支持ロール
B1 パンチ
B2 パンチ
T1 試験片
D1 幅(C)方向
D2 圧延(L)方向
D3 圧壊方向
10 ハット型部材
20 鋼板
30 試験用部材
40 スポット溶接部
50 地板
60 インパクター

Claims (33)

  1. 母材鋼板と、前記母材鋼板の表面に形成された溶融亜鉛めっき層と、を備えた溶融亜鉛めっき鋼板であって、
    前記母材鋼板は、
    質量%で、
    C:0.050%以上0.500%以下、
    Si:0.01%以上0.69%以下、
    Mn:2.24%以上2.78%以下、
    P:0.100%以下、
    S:0.0200%以下、
    Al:1.000%以下、
    N:0.0100%以下及び
    O:0.0100%以下
    を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成と、
    板厚1/4位置において、
    マルテンサイトの面積率が25%以上70%以下、
    フェライトの面積率が25%以上70%以下、
    残留オーステナイトの面積率が%以下、
    パーライト、セメンタイト及び準安定炭化物から選ばれる1種以上である残部組織の面積率が5%以下、かつ
    全フェライトの面積率に対する{001}方位を有するフェライトの面積率の割合が0.50以下である鋼組織と、
    を有し、
    前記母材鋼板を50℃まで加熱した際に放出される水素量である前記母材鋼板中の低温域拡散性水素量が0.015質量ppm以下である、溶融亜鉛めっき鋼板。
  2. 前記成分組成は、さらに、質量%で、
    Ti:0.100%以下、
    Nb:0.100%以下、
    V:0.100%以下、
    Ta:0.08%以下、
    W:0.08%以下、
    B:0.0080%以下、
    Cr:0.80%以下、
    Mo:0.80%以下、
    Ni:0.80%以下、
    Co:0.008%以下、
    Cu:0.80%以下、
    Sn:0.100%以下、
    Sb:0.100%以下、
    Ca:0.0050%以下、
    Mg:0.0050%以下、
    REM:0.0050%以下、
    Zr:0.080%以下、
    Te:0.080%以下、
    Hf:0.08%以下及び
    Bi:0.100%以下
    からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含有する、請求項1に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
  3. 前記母材鋼板と前記溶融亜鉛めっき層の間に金属めっき層を備える、請求項1又は2に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
  4. 前記母材鋼板が、前記母材鋼板の板厚1/4位置のビッカース硬さに対して、ビッカース硬さが85%以下の領域であって、前記母材鋼板表面から板厚方向に200μm以内の領域である表層軟質層を有する、請求項1又は2に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
  5. 前記母材鋼板が、前記母材鋼板の板厚1/4位置のビッカース硬さに対して、ビッカース硬さが85%以下の領域であって、前記母材鋼板表面から板厚方向に200μm以内の領域である表層軟質層を有する、請求項3に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
  6. 前記母材鋼板表面から前記表層軟質層の板厚方向深さの1/4位置及び板厚方向深さの1/2位置のそれぞれにおける板面の50μm×50μmの領域において、300点以上
    のナノ硬度を測定したとき、
    前記母材鋼板表面から前記表層軟質層の板厚方向深さの1/4位置の板面のナノ硬度が7.0GPa以上の測定数割合が、全測定数に対して0.10以下であり、
    前記母材鋼板表面から前記表層軟質層の板厚方向深さの1/4位置の板面のナノ硬度の標準偏差σが1.8GPa以下であり、
    さらに、前記母材鋼板表面から前記表層軟質層の板厚方向深さの1/2位置の板面のナノ硬度の標準偏差σが2.2GPa以下である、請求項4に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
  7. 前記母材鋼板表面から前記表層軟質層の板厚方向深さの1/4位置及び板厚方向深さの1/2位置のそれぞれにおける板面の50μm×50μmの領域において、300点以上
    のナノ硬度を測定したとき、
    前記母材鋼板表面から前記表層軟質層の板厚方向深さの1/4位置の板面のナノ硬度が7.0GPa以上の測定数割合が、全測定数に対して0.10以下であり、
    前記母材鋼板表面から前記表層軟質層の板厚方向深さの1/4位置の板面のナノ硬度の標準偏差σが1.8GPa以下であり、
    さらに、前記母材鋼板表面から前記表層軟質層の板厚方向深さの1/2位置の板面のナノ硬度の標準偏差σが2.2GPa以下である、請求項5に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
  8. 前記溶融亜鉛めっき層が、合金化溶融亜鉛めっき層である、請求項1又は2に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
  9. 前記溶融亜鉛めっき層が、合金化溶融亜鉛めっき層である、請求項3に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
  10. 前記溶融亜鉛めっき層が、合金化溶融亜鉛めっき層である、請求項4に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
  11. 前記溶融亜鉛めっき層が、合金化溶融亜鉛めっき層である、請求項5に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
  12. 前記溶融亜鉛めっき層が、合金化溶融亜鉛めっき層である、請求項6に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
  13. 前記溶融亜鉛めっき層が、合金化溶融亜鉛めっき層である、請求項7に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
  14. 請求項1又は2に記載の溶融亜鉛めっき鋼板を用いてなる、部材。
  15. 請求項14に記載の部材からなる、自動車の骨格構造部品又は自動車の補強部品。
  16. 請求項1又は2に記載の成分組成を有する鋼スラブに、
    巻取温度:400℃以上700℃以下の条件で、熱間圧延を施して熱延鋼板とし、
    次いで、前記熱延鋼板に、酸洗を施し、
    次いで、前記熱延鋼板に、総圧下率:40%以上、累積圧下率30%以上となってから総圧下率までのパス数:2パス以上の条件で、冷間圧延を施して冷延鋼板とし、
    次いで、前記冷延鋼板に、250℃以上600℃以下の温度域での平均加熱速度:1.0℃/s以上100℃/s以下、焼鈍温度:750℃以上900℃以下の条件で、焼鈍を
    施し、
    次いで、前記冷延鋼板に、溶融亜鉛めっき処理を施してめっき鋼板とし、
    次いで、前記めっき鋼板を冷却する、溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  17. 前記めっき鋼板の冷却中に、100℃以上450℃以下の温度域で5s以上保熱し、その後冷却する、請求項16に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  18. 前記めっき鋼板の冷却中に、300℃以下の冷却停止点で冷却を停止した後、(冷却停止温度+50℃)以上450℃以下の温度域に再加熱し、この温度域で5s以上保熱し、その後冷却する、請求項16に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  19. 前記焼鈍を露点-25℃以上の雰囲気下で行う,請求項16に記載の亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  20. 前記焼鈍を露点-25℃以上の雰囲気下で行う,請求項18に記載の亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  21. 前記焼鈍工程の前に、前記冷延鋼板の片面又は両面において、金属めっき処理を施し金属めっき層を形成する金属めっき工程を含む、請求項16に記載の亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  22. 前記焼鈍工程の前に、前記冷延鋼板の片面又は両面において、金属めっき処理を施し金属めっき層を形成する金属めっき工程を含む、請求項18に記載の亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  23. 前記焼鈍工程の前に、前記冷延鋼板の片面又は両面において、金属めっき処理を施し金属めっき層を形成する金属めっき工程を含む、請求項19に記載の亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  24. 前記焼鈍工程の前に、前記冷延鋼板の片面又は両面において、金属めっき処理を施し金属めっき層を形成する金属めっき工程を含む、請求項20に記載の亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  25. 前記溶融亜鉛めっき処理後の鋼板に合金化処理を施す、請求項16に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  26. 前記溶融亜鉛めっき処理後の鋼板に合金化処理を施す、請求項18に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  27. 前記溶融亜鉛めっき処理後の鋼板に合金化処理を施す、請求項19に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  28. 前記溶融亜鉛めっき処理後の鋼板に合金化処理を施す、請求項20に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  29. 前記溶融亜鉛めっき処理後の鋼板に合金化処理を施す、請求項21に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  30. 前記溶融亜鉛めっき処理後の鋼板に合金化処理を施す、請求項22に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  31. 前記溶融亜鉛めっき処理後の鋼板に合金化処理を施す、請求項23に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  32. 前記溶融亜鉛めっき処理後の鋼板に合金化処理を施す、請求項24に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  33. 請求項1又は2に記載の溶融亜鉛めっき鋼板に、成形加工又は接合加工の少なくとも一方を施して部材とする工程を有する、部材の製造方法。
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