JP3228134B2 - 成形性と耐焼き付き性に優れた純チタン板の製造方法 - Google Patents

成形性と耐焼き付き性に優れた純チタン板の製造方法

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JP3228134B2 JP18904896A JP18904896A JP3228134B2 JP 3228134 B2 JP3228134 B2 JP 3228134B2 JP 18904896 A JP18904896 A JP 18904896A JP 18904896 A JP18904896 A JP 18904896A JP 3228134 B2 JP3228134 B2 JP 3228134B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カメラボディー、
時計、メガネ、レジャー用品等の民生用品、あるいは熱
交換器等の化学工業設備の素材として用いられる純チタ
ン板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】チタンは、軽量で、かつ極めて耐食性に
優れているために様々な用途に活用されている。最近で
は、カメラボディー、時計等の民生用品、あるいは熱交
換器等の化学工業設備の素材として用いられる。これら
の用途には、成形性が要求されるので、おもに軟質の工
業用純チタンが用いられている。工業用純チタン(以
下、純チタンと記す)には、JISH4600に規定さ
れている1種から3種があり、FeとOの含有率で区分
されている。その中でも1種の純チタン板は、高いr値
を持ち、軟鋼などに比べて良好な深絞り特性を有してい
るので、成形性や加工性が要求される用途に適してい
る。
【0003】純チタン板は、一般に次の工程で製造され
る。まず、原料である純度の高いスポンジ状の金属チタ
ンをプレス加工し、円柱状の電極を作る。この電極を消
耗式電極として、真空下でアーク溶解し、インゴットを
作製する。次に、このインゴットを分塊圧延し、熱間圧
延用のスラブを製造する。表面疵の除去等の表面手入れ
が施されたチタンスラブを熱間圧延、冷間圧延後、焼鈍
処理によって軟化させて成形性・加工性を付与してい
る。この焼鈍処理としては、アルゴン雰囲気または真空
下で加熱するバッチ焼鈍法と、大気中で帯状の純チタン
板を連続炉によって加熱する連続焼鈍法がある。連続焼
鈍法の場合には、焼鈍後、純チタン板表面に発生したス
ケールを取り除くために、硝弗酸等の酸を用いて酸洗処
理を施す。この酸洗処理によって、表面性状のよい、光
沢のある純チタン板に仕上げられる。例えば、特公昭6
0−25506号報には、純チタン板に弗酸または硝弗
酸水溶液をスプレー噴射するか、溶液中に浸漬して、純
チタン板のスケールを除去し、表面を綺麗にする技術が
開示されている。
【0004】カメラボディー、時計等の民生用品、ある
いは熱交換器等の化学工業用設備の素材としての純チタ
ン板の用途拡大を図る上で、もっとも強く求められてい
るのは、(a)純チタン板の価格を下げることである。
さらに、(b)純チタン板の成形性が良いこと、(c)
純チタン板のプレス等の成形時に工具との焼き付きが生
じ難いことが求められている。
【0005】(a)純チタン板の製造コストおよび
(b)成形性について 通常、純チタン板の原料としては、JIS H2151
で規定されるスポンジチタンが使用される。しかし、J
IS H2151で規定されるスポンジチタンは、精製
に多大な電力を要するので高価であり、それを使用する
と純チタン板の製造コストが上昇してしまう。純チタン
板の製造コストを低減するためには、純チタン板の原料
に安価なスクラップチタンを活用して、原料に占めるス
ポンジチタンの比率を下げる必要がある。ところがスク
ラップチタンを原料として再利用する場合、Fe、O
(酸素)の混入が避けられない。さらにスクラップチタ
ン中に選別工程で除去しきれなかったオーステナイト系
ステンレス鋼が混入しているために、Ni、Crの含有
量が増大してしまう。また、スポンジチタンの原料費を
下げるためにJIS規格外の純度の低い安価なスポンジ
チタンを利用することも有効であるが、純度の低いスポ
ンジチタンを原料にすると純チタン板中のNi、Crの
含有量が高くなる。純チタン板がFe、O(酸素)、N
iおよびCrを一定量以上含む場合には、純チタン板の
硬度が高くなりすぎて、プレス加工時の成形性が悪くな
る。
【0006】特公昭64−1546号報には、冷間圧延
後の純チタン板に焼鈍処理を施し、ついで酸洗処理を行
うことにより、成形性を向上させて成形時の表面欠陥を
防止した純チタン板の製造方法が開示されている。しか
し、この技術の場合には、純チタン板の成形性は改善さ
れるものの製造コストを下げることはできない。
【0007】このように、(a)純チタン板の製造コス
トの低減と、(b)良好な成形性の付与の両者を両立さ
せることは非常に困難であった。
【0008】(c)プレス時の工具との焼き付きについ
て チタンは、化学的に活性な金属であるために、チタン板
から製品に成形する際の加工中に、工具とチタン板との
間で焼き付きが起きやすい。焼き付きが生じると、成形
加工後にその部分を研磨により除去するか、成形品を廃
棄するなどの処置が必要である。したがって、純チタン
板を素材として成形品を製造する際の工数が増加した
り、歩留まりが低下するという問題がある。
【0009】成形加工中の工具との焼き付きを防止する
ためには、銅系合金工具を使用すればよいが、この工具
は通常用いられる炭素鋼工具に比べて非常に高価であ
る。また、焼き付きを防止する他の方法として、炭素鋼
工具に二硫化モリブデン等の潤滑剤を塗布する方法があ
るが、潤滑剤や塗布装置が必要となる分、製造コストが
上昇してしまう。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、スク
ラップチタンあるいはJIS H2151の規格外の純
度の低いスポンジチタン等の安価な原料を使用した場合
であっても、純チタン板のプレス等の成形性が良好で、
かつ成形の際に焼き付きが生じ難い純チタン板を製造す
る方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために、純チタン板の化学組成、冷間圧
延と焼鈍処理後の純チタン板の結晶粒径、および特定
の組成の硝弗酸水溶液での酸洗処理に着目した。本発明
はこれらの着目点に関する知見を基になされたものであ
ってその要旨は次の通りである。
【0012】「重量割合で、Fe、NiおよびCrの含
有率が下記式(1)、(2)および(3)(単位はいず
れもppm)を満足し、かつO(酸素)の含有率が90
0ppm以下で、残部がTiおよび不可避不純物からな
る純チタン材に、冷間圧延を施し、ついで600〜85
0℃の温度で焼鈍処理を施して純チタン板の平均結晶粒
径を20〜80μmとし、その後下記式(4)、(5)
および(6)を満足する硝弗酸水溶液(単位はいずれも
重量%)で酸洗処理を施すことを特徴とする純チタン板
の製造方法。
【0013】 100≦Fe≦700 式(1) 100≦Ni+Cr≦700 式(2) 200≦Fe+Ni+Cr≦1100 式(3) 2≦弗酸≦7 式(4) 4≦硝酸≦20 式(5) 1≦硝酸/弗酸≦5 式(6)」 ここでいう純チタン材とは、Tiのみではなく、上記の
Fe、Ni、CrおよびO(酸素)を含有し、残部は不
可避的不純物を含んでいる化学組成のものである。
【0014】ここでいう冷間圧延とは、純チタン板を製
造する際に施される通常の冷間圧延でよく、例えばロー
ル圧延機を用いて、圧下率50〜90%程度の圧延を行
う。
【0015】冷間圧延を施す前の工程としては、本発明
の純チタン材の組成成分を満足するように、スクラップ
チタンやスポンジチタンを単独あるいは混合してプレス
加工等を施して電極を作る。その後アーク溶解しインゴ
ットに形成する。さらに、冷間圧延を施すことができる
程度の板厚になるように、通常の鍛造や熱間圧延等を施
す。
【0016】本発明では、冷間圧延後の純チタン板に焼
鈍処理を施す。焼鈍は、重油燃焼、あるいはガス燃焼等
の炉を用いて、純チタン板の温度を600〜850℃の
温度域のある特定温度に加熱し、その後この温度で0.
5〜30分間保持するのが望ましい。この焼鈍処理によ
り、純チタン板の平均結晶粒径は20〜80μmとな
る。なお、本発明における純チタン板の平均結晶粒径と
は、JISH0501に規定されている求積法により求
められる値である。
【0017】ここでいう酸洗処理とは、上記式(4)、
(5)および(6)で規定した硝弗酸水溶液を用いて、
純チタン板を1〜3分程度浸漬する通常の酸洗を行うこ
とを意味している。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明は、スクラップチタンや純
度の低い安価なスポンジチタンを原料とすることで、純
チタン板の製造コストを大幅に下げようとするものであ
る。しかし、スクラップチタンや純度の低いスポンジチ
タンを原料とすると、不純物であるFe、Ni、Cr、
O(酸素)を必要以上に含有してしまう。本発明では、
不純物として含有してよいFe、Ni、Cr、O(酸
素)の量を規定することにより純チタン板の成形性を確
保しつつ、純チタン板の成形の際の工具との焼き付き問
題を焼鈍処理と硝弗酸による酸洗処理により解決したも
のである。
【0019】以下、本発明の純チタン板の製造方法を具
体的に説明する。
【0020】なお、以下で記す、ppmおよび%は重量比
を意味している。
【0021】(1)純チタン材の組成について Fe:Feは純チタン板の硬度に及ぼす影響が大きい元
素である。Feの含有率が700ppmを超えると、純チ
タン板は硬くなりプレス成形性が悪化する。
【0022】また、Feはプレス加工中の工具と純チタ
ン板の焼き付きを防止する元素でもあるので適当な量を
含有させておく必要がある。Feは純チタン板の結晶粒
界に偏析する。この偏析領域は酸洗時に優先的な腐食を
受けるので、純チタン板の表面は凹凸となる。この表面
の凹凸はプレス加工において使用する潤滑剤のピットと
なり、プレス加工中に純チタン板と工具の間に潤滑剤を
引き込む効果を持つ。このためにプレス加工中の潤滑効
果が増大し、純チタン板と工具との焼き付きが防止され
る。Feの含有率が低い純チタン板では、酸洗後の表面
が極めて平滑となる。このためプレス加工中に潤滑剤の
ピットが形成されず、潤滑剤が工具との接触面から排除
されてしまい、純チタン板の表面と工具が焼き付いてし
まう。プレス加工中の純チタン板と工具との焼き付きを
防止するためには、Feの含有率を100ppm以上にす
る必要がある。よってFeの含有率を(1)式のように
規定した。
【0023】O(酸素):O(酸素)は、Feと同様に
純チタン板の硬度に及ぼす影響が大きい元素である。O
の含有率が900ppmを超えると純チタン板は硬くな
り、プレス成形性が悪化するので含有率を900ppm以
下とする。ただし、Oの含有率は200ppm以上とする
のが好ましい。Oの含有率を200ppm未満にするため
には、不純物の少ないJISで規定されている高価なス
ポンジチタンを原料としなければならず、本発明の課題
である安価に純チタン板を製造する目的を達成し難くな
るからである。
【0024】NiおよびCr:NiやCrも純チタン板
の硬度に影響を与える元素であり、それぞれFeの1/
2程度の硬化能を有する。NiとCrの合計の含有率が
700ppmを越えると純チタン板が硬化し、プレス成形
性が悪化してしまう。
【0025】一方、NiおよびCrは、Feと同様にプ
レス加工中の工具と純チタン板の焼き付きを防止する元
素なので適当な量を含有させておく必要がある。Niと
Crは、Feと同様に純チタン板の結晶粒界に偏析し
て、プレス加工中の潤滑効果を増大させて純チタン板と
工具との焼き付きを防止する。その効果を得るために
は、NiとCrの合計の含有率を100ppm以上にする
必要がある。よって、NiとCrの含有率を(2)式の
ように規定した。
【0026】NiとCrの合計の含有率が700ppm以
下であっても、Fe、NiおよびCrの合計の含有率が
1100ppmを超えると純チタン板が硬化し、プレス成
形性が悪化してしまう。一方、Fe、NiおよびCrの
合計の含有率が200ppm未満ではプレス成形時の工具
との焼き付きを防止する効果が少ない。よって、Fe、
NiおよびCrの合計の含有率を(3)式のように規定
した。
【0027】(2)焼鈍処理および純チタン板の結晶粒
径について 純チタン板の結晶粒径は、プレス加工時の成形性と耐焼
き付き性に大きな影響を与える。JISH0501に規
定されている求積法により求められる純チタン板の平均
結晶粒径が80μmを超える場合、結晶粒の面積が大き
くなるために酸洗により生じる結晶粒界の凹凸の間隔が
大きくなり、潤滑剤を保持するピットとしての効果が低
減する。このため、結晶粒径が80μmを超える場合に
は焼き付き防止効果が得られない。
【0028】一方、結晶粒径が20μm未満の場合、純
チタン板の成形性が悪化する。これはチタンの変形機構
として重要な双晶変形が20μm未満の場合は生じない
ことが原因である。
【0029】結晶粒の大きさが20〜80μmの純チタ
ン板を製造するためには、冷間圧延後の純チタン板に焼
鈍処理を施す必要がある。焼鈍は前述したように、重油
燃焼、ガス燃焼等の炉を用いて純チタン板の温度を60
0〜850℃に加熱し焼鈍する。この焼鈍は、600〜
850℃のある温度(±10℃は許容範囲)で0.5〜
30分間保持するのが望ましい。600℃未満では冷間
加工組織を完全に再結晶させることが出来ないので成形
性が悪化する。850℃を超えると結晶が粗大化するた
めに80μm以下の粒径が得られない。また、焼鈍時間
が0.5分未満では再結晶化が不十分で成形性が悪化す
る恐れがある。30分を超えると結晶が粗大化してしま
う恐れがある。
【0030】特定の組成の硝弗酸水溶液での酸洗処理
について 焼鈍後の純チタン板に酸洗を施すのは、焼鈍により生成
した純チタン板の表面のスケールを除去し表面を美しく
するためと、製品としての純チタン板をユーザーがプレ
ス加工等による成形を行う際の工具と純チタン板との焼
き付きを防止するためである。
【0031】酸洗に使用する溶液は、硝弗酸水溶液とす
る。弗酸の濃度が重量%で2%未満の場合には、スケー
ルを溶解して除去する効果が得られない。一方、弗酸の
濃度が7%を超える場合には、酸洗反応が激しく起きる
ために、純チタン板の表面に酸焼けと称するムラが発生
し、純チタン板の商品価値を低下させてしまう。
【0032】また硝酸の濃度が4%未満の場合には、酸
洗後の純チタン板の表面に反応生成物が付着して純チタ
ン板の表面全体が黒っぽく汚れた外観となり、純チタン
板の商品価値が落ちる。逆に硝酸の濃度が20%を超え
ると、酸洗反応が起き難くなり、結晶粒界のFe、Ni
およびCrの偏析領域が優先的には腐食されなくなるの
で、純チタン板の表面はほとんど溶解しないままの平滑
な表面となってしまう。純チタン板の表面が平滑になり
すぎると、プレス加工等の際の潤滑剤を保持する凹凸が
ないので工具と純チタン板が焼き付いてしまう。純チタ
ン板の表面の適切な凹凸、および清浄な表面を形成する
ためには、上記に加えさらに弗酸と硝酸の濃度比を管理
しておくことが必要である。硝酸と弗酸の濃度比(硝酸
/弗酸)が1未満では酸洗後の純チタン板の表面が黒っ
ぽく汚れた状態となり、商品としての純チタン板の価値
が低下してしまう。硝酸と弗酸の濃度比が5を超えると
硝酸の酸洗抑制効果が高まり、チタン表面が平滑となる
ため、焼き付き防止効果が低減してしまう。
【0033】
【実施例】
(実施例1)表1で示した様々な組成を有するチタンを
原料として、本発明方法および本発明で規定する条件か
ら外れる方法で純チタン板を製造し、加工性と耐焼き付
き性を調べた。なお、原料はJISで規定されている高
価なスポンジチタンは使用せず、安価なスクラップチタ
ンを使用した。
【0034】
【表1】
【0035】原料をアルゴン雰囲気中でプラズマアーク
により加熱溶解し、厚み25mm、幅60mm、長さ150
mmのインゴットに鋳造した。次にインゴットを950℃
に加熱して10mmの厚さになるまで鍛造し、その後85
0℃の温度にて、厚さ5mmになるように熱間圧延を施し
た。圧延後の純チタン板に冷間圧延を施すために、ショ
ットブラストを行ってスケールを除去した。次に圧下率
80%の冷間圧延を施して、厚さ1.0mmの純チタン板
を製造した。
【0036】さらに、大気中において純チタン板の温度
が700℃となるように加熱し、その温度で2分間保持
する焼鈍を行った。
【0037】焼鈍後の純チタン板に3%弗酸と10%硝
酸の硝弗酸水溶液(硝酸/弗酸の値は3.33)に1分
20秒間浸漬して、焼鈍により生成した表面スケールの
除去と焼き付き防止のための表面の凹凸を形成した。
【0038】上記の方法で製造した純チタン板から試験
片を採取し、ビッカース硬度を測定することにより成形
性を評価した。測定は荷重1kgfの条件により各試料5
点を行った。5点の平均値が200を超える試験片は硬
度が高すぎて一般的な成形性に劣ると判断し、成形性不
良とした。
【0039】硬度の結果が良好であった試験片のみを対
象として深絞り加工時の耐焼き付き性を調査した。各々
の純チタン板よりφ60の深絞り用の試験片を15枚ず
つ採取し、直径φ30のポンチを用いて15枚ずつ連続
の深絞り試験を行った。また、ダイスとポンチのクリア
ランスは1.2mmとした。ポンチとダイスの材質は工具
鋼である。また潤滑剤はマシン油を用いた。深絞り加工
後の試験片を目で観察し、焼き付きが生じた時点で焼き
付き発生と評価し、深絞り加工を中断した。
【0040】成形性の評価の指標としてのビッカース硬
度と耐焼き付き性の評価を表1にまとめた。ビッカース
硬度が200を越えた試験片は成形性の評価を×、20
0以下のものには評価を○として表した。また、深絞り
試験中に焼き付きが発生したものを×、15枚連続して
深絞り試験を行っても焼き付きを生じなかったものを○
とした。総合評価は、成形性の評価が○でかつ焼き付き
が発生しなかったものを○とした。表1より、本発明で
規定する組成を有する純チタン板は、成形性と耐焼き付
き性の両方に優れていることが分かる。
【0041】(実施例2)焼鈍処理後の純チタン板の結
晶粒径が純チタン板の成形性と耐焼き付き性に及ぼす影
響を調査した。実施例1のNo.8と同じ組成のものを
使用し、実施例1と同様の方法で厚さ1.0ミリの冷間
圧延材を製造した。この純チタン板を550℃から87
5℃までの様々な温度で2分間保持する焼鈍を施した。
【0042】焼鈍後の純チタン板に実施例1と同じ条件
で酸洗して表面スケールを除去した後、結晶粒径を測定
すると共に実施例1と同じ条件で成形性および耐焼き付
き性の評価を行った。結晶粒径の測定は、純チタン板の
圧延方向と平行な縦断面上でミクロ組織を光学顕微鏡を
用いて50または100倍の倍率で観察し、JISH0
501に準拠して算出した。
【0043】表2に試験結果を示した。ビッカース硬度
が200を超えた試験片は加工性が劣悪と判断し評価を
×、200以下のものには評価を○として示した。ま
た、深絞り試験中に焼き付きが発生したものを×、15
枚連続して深絞り試験を行っても焼き付きを生じなかっ
たものを○とした。総合評価は、ビッカース硬度が20
0以下でかつ焼き付きが発生しなかったものを○とし
た。表2より、本発明で規定する焼鈍処理を施した純チ
タン板は、20μm以上、80μm以下の結晶粒が成長
しており、加工性および耐焼き付き性の両方に優れてい
ることが分かる。600℃未満の温度で焼鈍した試験片
は、結晶粒径が20μm未満であり、硬度が高すぎて加
工性が不良であることが分かる。850℃を超える温度
で焼鈍した試験片は、結晶粒径が80μmを超えてお
り、焼き付きが生じていることが分かる。
【0044】
【表2】
【0045】(実施例3)酸洗条件が純チタン板の表面
清浄性と耐焼き付き性に及ぼす影響を調査した。実施例
1のNo.8と同じ組成のものを使用し、実施例1と同
様の方法で厚さ1.0ミリの冷間圧延材を製造した。こ
の純チタン板に700℃で2分間保持する焼鈍を施し
た。
【0046】焼鈍後の純チタン板に、表3で示した様々
な濃度の硝弗酸水溶液を用いて酸洗処理を施した。水溶
液の温度を35℃に保ち、純チタン板を1分20秒間浸
漬した。酸洗後の純チタン板の表面を肉眼観察により、
スケールの残存、表面汚れ、酸焼けについて調査した。
これらの欠陥が確認されたものを表面清浄が不良な純チ
タン板と評価した。さらに、表面が清浄である試験片の
みを対象として実施例1と同じ条件で深絞り試験を行っ
て成形性および耐焼き付き性を調査した。
【0047】表3に試験結果を示した。表面性状の評価
は、表面が清浄であるものを○、スケールの残存等で表
面が清浄でないものを×と表した。また、深絞り試験の
際に焼き付きが発生したものを×、焼き付きが発生しな
かったものを○と表した。総合評価は、表面が清浄で、
かつ焼き付きが発生しなかったものを○とした。表3よ
り、本発明方法で規定する条件を満たす酸洗を施した純
チタン板は、表面が清浄でかつ焼き付きが発生していな
いことが分かる。
【0048】
【表3】
【0049】
【発明の効果】本発明の方法により、プレス等の加工の
際に焼き付きが生じ難く、プレス等の成形性が良好で、
表面が清浄であり、しかも安価な純チタン板を製造する
ことができる。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量割合で、Fe、NiおよびCrの含有
    率が下記式(1)、(2)および(3)(単位はいずれ
    もppm)を満足し、かつO(酸素)の含有率が900
    ppm以下で、残部がTiおよび不可避不純物からなる
    純チタン材に、冷間圧延を施し、ついで600〜850
    ℃の温度で焼鈍処理を施して純チタン板の平均結晶粒径
    を20〜80μmとし、その後下記式(4)、(5)お
    よび(6)(単位はいずれも重量%)を満足する硝弗酸
    水溶液で酸洗処理を施すことを特徴とする純チタン板の
    製造方法。 100≦Fe≦700 式(1) 100≦Ni+Cr≦700 式(2) 200≦Fe+Ni+Cr≦1100 式(3) 2≦弗酸≦7 式(4) 4≦硝酸≦20 式(5) 1≦硝酸/弗酸≦5 式(6)
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Cited By (2)

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