JP7013302B2 - 二次加工性及び耐高温酸化性に優れるAl含有フェライト系ステンレス鋼材および加工品 - Google Patents

二次加工性及び耐高温酸化性に優れるAl含有フェライト系ステンレス鋼材および加工品 Download PDF

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本発明は、二次加工性及び耐高温酸化性に優れるAl含有フェライト系ステンレス鋼材および加工品に関する。
Al含有フェライト系ステンレス鋼は、高温に加熱されると、鋼の表面にAlを主体とする酸化物層が均一に形成されるため、優れた耐高温酸化性を示す。その一方で、大きな変形量で二次加工が施されると、加工割れが生じることがあるため、このステンレス鋼を適用できる加工品の用途が制約されていた。そこで、Al含有フェライト系ステンレス鋼の加工性を向上させる手法が提案されている。
例えば、特許文献1には、C、Nを低減し、Tiを添加し、Al量の低減とSi添加量の最適化を組み合わせることにより、加工性と耐酸化性を両立させたフェライト系ステンレス鋼が開示されている。特許文献2には、AlとSiの添加量を低減し、NbとBを複合添加し、Tiの添加を抑制することにより、二次加工脆性及び耐Cr蒸発性を改善したフェライト系ステンレス鋼が開示されている。
しかし、特許文献1では二次加工による評価が行われていない。二次加工においては、ステンレス鋼に厳しい加工が要求されるため、肌荒れやリジングに起因して加工割れが発生する可能性がある。
また、特許文献2は、絞り加工が施された一次絞り品を用いて種々の温度で落重試験を行って遷移温度を測定し、二次加工脆性に関して評価されている。二次加工においては、肌荒れやリジングに起因して加工割れが発生する場合もあるから、そのような観点での評価も望まれる。
特開2004-307918号公報 特開2012-211379号公報
Al含有フェライト系ステンレス鋼は、耐高温酸化性に優れる一方で、Alの添加量の増加にともない硬質化するため、その加工性が低下する。特に、二次加工を行う際は、リジングや肌荒れにより割れが発生する場合もあり、多段による絞り加工、鋼管製造におけるバルジ加工等の二次加工性に劣るため、Al含有フェライト系ステンレス鋼には、加工性、特に二次加工性に優れる鋼材が求められていた。
また、鋼材を成形加工して得られた所定形状の加工品は、その後の加工を容易にする目的で、軟質化させるための熱処理(本明細書では、「後熱処理」と呼ぶこともある。)が施される。この後熱処理を行うと、加工品の加工歪が除去されることにより、加工品が軟質化する。従来のTi添加をベースとしたAl含有フェライト系ステンレス鋼材を用いた加工品においては、通常、結晶粒の粗大化を回避する観点で、その後熱処理の温度範囲が低温側に設定される。しかし、低温側で後熱処理を施した場合、加工品を十分に軟化できず、その後の二次加工を困難にする。他方、過度に高温で後熱処理を行うと、結晶粒の粗大化した金属組織が形成され、二次加工した際、リジングや肌荒れによって加工割れが発生する場合がある。そのため、後熱処理に適用できる温度範囲が狭く、加工品の製造に制約を与えている。そこで、軟質化を目的とした後熱処理を施しても、結晶粒の粗大化が生じにくいAl含有ステンレス鋼材が求められていた。
そこで、本発明は、二次加工性及び耐高温酸化性に優れるAl含有フェライト系ステンレス鋼材および加工品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題に鑑み、Al含有フェライト系ステンレス鋼材の加工性及び耐高温酸化性について検討し、合金組成及び金属組織の観点から、耐高温酸化性を確保しつつ、二次加工性を改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
(1)本発明は、質量%で、C:0.025%以下、Si:0.1~1.0%、Mn:0.8%以下、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Ni:0.5%以下、Cr:16~24%、Al:1.0~2.6%、N:0.025%以下、Nb:0.05~0.6%、B:0.0005~0.0060%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、平均結晶粒径が、80μm以下であり、Nb系析出物の分布数が、1視野当たり3個以上であり、かつ、10視野当たり40個以上である、二次加工性と耐高温酸化性に優れるAl含有フェライト系ステンレス鋼材である。
ここで、上記のNb系析出物の分布数は、50μmに相当する範囲を1視野として、その視野内に観察される、Nbを20mass%以上含む析出物のうち、(最大長さ+最小長さ)/2により算出された平均寸法が0.5μm以上である析出物の総数を意味する。
(2)本発明は、さらに、質量%で、Ti:0.01~0.5%、V:0.01~0.5%、Mo:0.01~0.5%、Co:0.01~0.5%、Zr:0.01~0.5%、Cu:0.01~0.5%からなる群より選択される1種以上を含む、(1)に記載の二次加工性と耐高温酸化性に優れるAl含有フェライト系ステンレス鋼材である。
(3)本発明は、さらに、質量%で、Hf:0.001~0.05%、Sn:0.001~0.05%、希土類元素:0.001~0.05%からなる群より選択される1種以上を含む、(1)または(2)に記載の二次加工性と耐高温酸化性に優れるAl含有フェライト系ステンレス鋼材である。
(4)(1)~(3)のいずれかに記載の前記Al含有フェライト系ステンレス鋼材を素材とするステンレス鋼製の加工品。
(5)前記加工品が鋼管である、(4)に記載のステンレス鋼製の加工品。
本発明によれば、Al含有フェライト系ステンレス鋼材を素材とする加工品は、二次加工した際、リジングや肌荒れに起因する二次加工割れが抑制されることから、良好な耐高温酸化性を確保しつつ、二次加工性が改善されたAl含有フェライト系ステンレス鋼材および加工品を提供できる。本発明に係るAl含有フェライト系ステンレス鋼材を素材とする加工品は、成形加工した後に軟質化目的の熱処理を高い温度範囲で行った場合でも、結晶粒の粗大化が抑制された金属組織が得られるので、二次加工時においてリジングや肌荒れの発生が抑制されて、良好な二次加工性を得ることができる。本発明に係るAl含有フェライト系ステンレス鋼材および加工品は、燃料電池の改質器、配管等の高温燃焼部位全般、自動車排ガス部、バーナー燃焼筒、チムニー、熱電気の発熱体等の加工性及び耐高温酸化性が要求される用途に好適である。
結晶方位に関する測定を説明するための図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は、これらの記載により限定されるものではない。
Al含有フェライト系ステンレス鋼管の二次加工性について研究した結果、結晶粒を微細化にするとともに、Nb系析出物を一定以上に分布させた金属組織とすることにより、リジングや肌荒れ等の加工欠陥に起因する二次加工割れが抑制され、二次加工性を改善できることが判明した。さらに、適正な成分バランスにより、耐高温酸化性を確保できることが判明した。また、Nb添加を基本とした成分組成において、Nb析出物を分布させる焼鈍条件と冷間圧延との組み合わせにより、結晶方位をランダムに分布させた金属組織とすることで、リジング等に起因する二次加工割れを抑制できる。
(合金成分)
以下、本実施形態に係るAl含有フェライト系ステンレス鋼材に含まれる合金成分とその含有理由について説明する。化学組成の%表示は、質量%を意味する。
Cは、高温強度を向上させる元素である。C含有量が過剰に高いと、高温加熱時に加速酸化が発生しやすくなる。また、Al含有フェライト系ステンレス鋼においては、スラブやホットコイルの靱性が劣化し、製造性が劣化する。そのため、C含有量は、0.025%以下が好ましい。
Siは、フェライト系ステンレス鋼の赤スケール生成を抑制する効果がある。Si含有量が0.1%未満であると、その抑制効果が十分でない。他方、Si含有量が過剰であると、靭性及び加工性が低下する。そのため、Si添加量は、0.1~1.0%が好ましい。
Mnは、Mn系酸化物を生成して、緻密なアルミニウム酸化物層の形成を阻害し、耐高温酸化性を低下させる。そのため、耐高温酸化特性を維持する観点で、Mnの含有量は、0.8%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。
Pは、鋼中に不可避的に含まれる不純物であり、耐高温酸化性及び熱延板の靱性を低下させる。そのため、P含有量は、0.05%以下に制限した。
Sは、鋼中に不可避的に含まれる不純物であり、加工性を低下させる。そのため、S含有量は、0.01%以下に制限した。
Crは、耐高温酸化性を向上させるための必要な成分である。Cr含有量が16%未満であると、耐高温酸化性が十分に得られない。他方、Cr含有量が過剰であると、スラブやホットコイルの靱性を劣化させる。そのため、Cr含有量は、16~24%が好ましい。過剰の添加は加工性を劣化させるため、より好ましくは上限が20%である。
Alは、鋼の表面に緻密なAlの皮膜を形成し、耐高温酸化性を向上させるための必要な成分である。また、酸化の初期においては、酸化アルミ皮膜の迅速形成によって、鋼表面からのCr蒸発が抑制される効果が得られる。Al含有量が1.0%未満であると、十分な耐高温酸化性が得られない。他方、Al含有量が過剰であると、スラブやホットコイルの靱性の劣化を招き、また、二次加工時の脆性温度を上昇させて加工性の低下を招く。そのため、Al含有量は、1.0~2.6%が好ましい。より好ましくは、上限が2.0%である。
Nは、鋼中のAlと結合してAlNを形成して、加速酸化の起点となる場合がある。そのため、耐高温酸化性を維持する観点で、N含有量は、0.025%以下が好ましい。
Nbは、加工性や靭性に悪影響を及ぼす鋼中のC、Nと結合し、それらを化合物として固定することにより、加工性や靭性を向上させる作用を有する。また、Nb添加により、鋼の高温強度が上昇する。また、アルミニウム酸化物皮膜の形成を促進するとともに、酸化皮膜が成長する過程で生じる応力を緩和させて、材料の変形を防止する。Nb含有量が0.05%未満であると、このようなNb添加効果を十分に得られない。他方、Nb含有量が過剰であると、鋼の加工性や靱性が低下する。そのため、Nb含有量は、0.05~0.6%が好ましい。より好ましくは、下限が0.1%、上限が0.30%である。
Bは、成形時の二次加工割れを防止して、二次加工性を改善する効果がある。B含有量が0.0005%未満であると、その効果が十分でない。他方、B含有量が過剰であると、靭性の低下を招く。そのため、B含有量は、0.0005~0.0060%が好ましい。
さらに、必要に応じて、Ti、V、Mo、Co、Zr、Cuからなる群より選択される1種以上を添加してもよい。
Ti、Vは、鋼中の固溶C、Nを化合物として固定し、延性や加工性を向上させる元素である。また、Cr炭化物の粒界析出を抑制し、耐食性を改善する効果もある。他方、過剰に添加すると、加工性を低下させる。そのため、Ti含有量またはV含有量は、0.01~0.5%が好ましい。
Moは、鋼の高温強度を向上させる作用がある一方で、過剰に添加すると、鋼材を硬質化させて靭性の低下を招く。そのため、Mo含有量は、0.01~0.5%が好ましい。
Zrは、耐高温酸化性を向上させる効果がある一方で、過剰に添加すると、鋼材を硬質化させて靭性の低下を招く。そのため、Zr含有量は、0.01~0.5%が好ましい。
Cuは、鋼の高温強度を高める一方で、過剰に添加すると、耐高温酸化性の低下や熱間加工性の低下を招く。そのため、Cu含有量は、0.01~0.5%が好ましい。
さらに、必要に応じて、Hf、Sn、希土類元素からなる群より選択される1種以上を添加してもよい。
Hf、Sn、希土類元素は、耐高温酸化性を改善する効果がある。鋼の表面に形成されるアルミ酸化皮膜を安定化させ、また、マトリックスと酸化皮膜との密着性を改善し、耐高温酸化性を向上させる。他方、これらの元素を過剰に添加すると、熱間加工性や靱性が低下する。また、加速酸化の起点となる介在物を生成し、耐高温酸化性を低下させる。そのため、Hf、Sn、または希土類元素は、それぞれ0.0001~0.05%の範囲で含有することが好ましい。
(平均結晶粒径)
本実施形態に係るAl含有フェライト系ステンレス鋼管は、平均結晶粒径が80μm以下であることが好ましい。結晶粒を微細化することにより、加工後の表面肌荒れが抑制され、二次加工性が改善される。そのため、平均結晶粒径が80μm以下であることが好ましく、50μm以下がより好ましい。他方で、結晶粒が過度に微細であると、硬質化し加工性に悪影響を及ぼす場合があるため、平均結晶粒径は10μm以上でよい。
図1に圧延した鋼板1を示す。鋼板1の圧延面2を基準にすると、圧延方向3、圧延垂直方向4、圧延面2に対する法線方向5に区分される。本明細書に記載された「板厚方向」は、上記の法線方向5に相当し、「板厚方向に垂直な断面」は、圧延方向に沿った圧延面2に相当する。上記の法線方向(normal direction)がNDと略称されることから、本明細書では、上記「板厚方向に垂直な断面」を「ND面」と記載することもある。また、上記の圧延方向(rolling direction)を「RD方向」と記載し、上記の圧延垂直方向(transverse direction)を「TD方向」と記載することもある。
(Nb系析出物の分布数)
本実施形態に係るAl含有フェライト系ステンレス鋼管は、ND面においてEDS(エネルギー分散型X線分光)装置により、50μmに相当する範囲の1視野として、そのような視野をランダムに10箇所(10視野)を選定して測定したとき、その視野内に観察されたNbを20mass%以上含む析出物のうち、「(最大長さ+最小長さ)/2」により算出された平均寸法が0.5μm以上である析出物を選択し、当該視野において当該Nb系析出物が分布する総数を求める。本明細書に記載した「Nb系析出物の分布数」は、上記の測定方法により得られた析出物数を意味する。鋼組織において分布したNb系析出物により、熱延焼鈍及び冷延焼鈍時の結晶粒成長が特定方向へ進行するのが抑制されて、結晶組織の均一性が高まる。そのため、二次加工時にリジングや肌荒れ等の加工欠陥に起因する加工割れの発生が抑制される。その観点で、Nb系析出物の分布数は、1視野当たり3個以上であり、かつ、10視野当たり40個以上であることが好ましい。
(結晶方位)
また、本実施形態に係るAl含有フェライト系ステンレス鋼材は、その板厚方向に垂直な断面における<111>、<001>、<011>の各結晶方位について、当該結晶方位から15°以内に分布する結晶粒が前記断面に占める面積割合を、それぞれ、T<111>、T<001>、T<011>なる符号で表記するとき、下記の式(1)を満足することが好ましい。
<111>/(T<001>+T<011>)≦2.5・・・・・式(1)
式(1)の左辺は、<111>の結晶方位から15°以内に分布する結晶粒が上記断面(圧延面)に占める割合と、<001>及び<011>の各結晶方位から15°以内に分布する結晶粒が前記断面に占める割合との比を示す。この比が1に近いほど、圧延面における個々の結晶粒がランダムに分布する金属組織であることを意味する。式(1)が2.5を超えると、特定の方位を向いた結晶粒の割合が高まり、結晶組織の機械的性質に異方性が顕在化する。その結果、成形加工時の変形が不均一となり、リジング等の加工欠陥が引き起こされて、それらに起因して二次加工割れが発生しやすくなる。そのため、式(1)の数値が2.5以下であることが好ましい。
(製造方法)
本実施形態に係るAl含有フェライト系ステンレス鋼材は、溶解、鋳造、圧延等の公知の製造工程によって製造できる。スラブを熱間圧延した後、焼鈍、酸洗、冷間圧延、最終焼鈍などの工程により製造される。冷間圧延した後は、必要に応じて、中間焼鈍、酸洗、最終冷間圧延、最終焼鈍という工程で製造してもよい。また、出荷品において酸洗または研磨仕上げを行ってもよい。
本実施形態に係るAl含有フェライト系ステンレス鋼材を用いて、所望の形状や寸法等を有する製品を得るため、当該鋼材に対して種々の成形加工が施される。成形加工する際、被加工材の加工形態や変形の程度に応じて、加工工程を複数回に分けて行われる。本明細書では、1回目の成形加工を「一次加工」といい、一次加工を施した一次加工品に対する成形加工を「二次加工」という。鋼管を用いる成形加工の場合、一次加工品に対して、絞り加工やバルジ加工等の二次加工が施される。二次加工では、一般に、一次加工よりも、被加工品に対して厳しい変形を付与することが多いため、二次加工の際、加工割れが生じやすいといえる。
鋼材により得られた加工品は、その後の成形加工を容易に実行できるように、軟質化させるための熱処理(後熱処理)を施してもよい。この後熱処理を行うと、加工歪が除去されるので、硬さが低減して、加工性が向上する。後熱処理の温度範囲は、800℃~1050℃が好ましい。800℃未満であると、十分に硬さが低減しないため、良好な加工性が得られない。1000℃を超えると、結晶粒の粗大化により加工性が低下する恐れがある。
また、鋼管を製造する際は、鋼板に対して、レーザ溶接、高周波溶接、アーク溶接などを利用できる。
(用途)
本実施形態に係るAl含有フェライト系ステンレス鋼材は、圧延、鍛造、引き抜き及び鋳造など公知の各種方法により所望の形状に加工された、種々の加工品の素材に適用できる。例えば、鋼板、鋼帯、鋼管、条鋼、形鋼、棒鋼、線材などの加工品を提供できる。
以下、本発明の実施例について説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学成分を有する供試鋼を真空溶解して、100kgのインゴットを鋳造した。得られたインゴットを分塊し、35mm厚のスラブを作製した。当該スラブを1200℃に加熱した後、熱間圧延を行って、板厚4mmの熱延板を得た。次いで、表1に示す熱延焼鈍温度で当該熱延板を焼鈍した後、酸洗を施して熱延焼鈍板を得た。表1に示す化学組成は、質量%で表示されており、残部がFe及び不可避的不純物である。
得られた熱延焼鈍板の一部は、板厚を減じるため、切削加工により、板厚2.5mm、板厚1.7mmの板材を作製した。次いで、これらの熱延焼鈍板に冷間圧延を施して、いずれも板厚1mmの冷延板を作製した。その後、表1に示す冷延焼鈍温度で仕上げ焼鈍を行い、酸洗を施して冷延焼鈍板を得た。板厚4mm、板厚2.5mm、板厚1.7mmの各熱延焼鈍板から得られた板厚1mmの冷延焼鈍板は、それぞれの冷間圧延率(冷延率)が表2に示すように75%、60%、40%である。
上記の冷延焼鈍板を用いて、レーザ溶接により外径φ27.5mmの鋼管を作製した。その後、800~1150℃の範囲内で歪取り焼鈍を施した。得られた当該鋼管(以下、「溶接鋼管」という。)を以下の評価試験に供した。当該冷延焼鈍板を以下の評価試験に供した。
Figure 0007013302000001
(平均結晶粒径)
上記の溶接鋼管を用いて、長手方向に対して垂直に切断し、その切断面をフッ酸2+硝酸1+グリセリン3の比率とした混合液でエッチングした。その断面を光学顕微鏡により倍率50倍で観察した。ランダムに5視野を観察し、平均結晶粒径をJIS G0551の切断法に準じて測定した。
(Nb系析出物の分布数)
上記の溶接鋼管を用いて、長手方向に対して垂直に切断された断面において、EDS(エネルギー分散型X線分光)装置により濃度分析を行い、Nbを20mass%以上含む析出物の分布を測定した。測定する際、50μmに該当する範囲の視野をランダムに10箇所を選定した。観察されたNbを20mass%以上含む析出物のうち、「(最大長さ+最小長さ)/2」により算出された平均寸法が0.5μm以上である析出物を選択し、10視野について、各視野における当該析出物の分布数を測定した。測定した分布数により、1視野当たりの析出物の最低数を求め、10視野当たりの析出物の総数を求めた。
(結晶方位に関する面積割合:式(1))
上記の溶接鋼管を用いて、長手方向に対して垂直に切断された断面における結晶粒の結晶方位をEBSD装置(後方散乱電子回折装置)により測定した。そして、<111>、<001>及び<011>のそれぞれの結晶方位から15°以内の結晶粒が各ND面に占める面積割合を算出し、式(1)の「T<111>/(T<001>+T<011>)」の数値を求めた。EBSDにより測定するときは、試験体のND面において、ランダムに5箇所の視野を選定し、それらの視野の合計面積が9mm以上となるように選定した。
(一次加工性)
上記の溶接鋼管を長手方向に垂直に切断し、外径φ27.5mmで長さ200mmの試験体を作製した。当該溶接鋼管の一次加工性を評価するため、当該試験体に対して拡管加工による一次加工を施した。拡管加工の部位は、当該試験体の長手方向に中心から前後50mmにわたる長さ100mmの中央部であり、バルジ加工によって外径φ35mmまで拡管させた。拡管加工後の試験体の表面を目視で観察し、加工割れの有無を調べた。一次加工性に関して、加工割れが発生しなかった場合を良好(○)、加工割れが発生した場合を不適(×)と評価した。
(二次加工性)
次いで、当該溶接鋼管の二次加工性を評価するため、上記の一次加工品において加工割れが発生しなかった試験体について、プレス加工による二次加工を施した。具体的には、外径φ35mmの拡管部位に加工割れが発生するまで、プレス機により50mm/minの速度で偏平加工を施して、試験体の外形高さ(これを「偏平厚さ」ともいう。)を縮小させた。加工後の試験体の表面を目視で観察し、二次加工による割れの発生を調べた。二次加工性の評価は、加工割れが発生するまでに成形可能であった偏平厚さに基づいて判定した。二次加工性に関して、この偏平厚さが10mm未満であった場合を良好(○)と評価し、偏平厚さが10mm以上であった場合を不適(×)と評価した。
また、上記の一次加工および二次加工において、加工後の試験体の表面性状を目視で観察し、肌荒れやリジングが発生する程度についても、一次加工性および二次加工性の評価に加えた。
(高温酸化性)
上記の溶接鋼管から外径φ27.5mm、長さ25mmの試験体を切り出し、その切断面を#600で乾式研磨した。次いで、当該試験体をアセトンに5分浸漬して超音波洗浄を行った後、高温酸化性の評価試験に供した。評価試験は、試験体を1000℃の大気雰囲気下に100h曝した後、試験前後の重量変化を測定し、その測定値により高温酸化性を評価した。重量変化が2mg/cm以下である場合を良好(○)、2mg/cmを超える場合を不適(×)と判定した。
(硬さ)
上記の溶接鋼管の長手方向に対して垂直に切断した試験体を用いて、ビッカース硬さ試験装置(荷重1kg)により、試験体の断面の硬さを測定した。断面上の2箇所で測定した。測定位置の一方は、溶接部であり、周方向および板厚方向における中央付近を選定した。他方の測定位置は、鋼管中心からみて、上記の溶接部の測定位置と点対称となる位置の母材部であって、板厚方向で中心付近を選定した。
平均結晶粒径、Nb析出物の分布数、結晶方位に関する式(1)、一次加工性、二次加工性、高温酸化性、硬さについて、測定結果及び評価結果を表2に示す。
Figure 0007013302000002
表1と表2に示すように、鋼No.1~No.16のAl含有フェライト系ステンレス鋼材は、合金組成、平均結晶粒径、Nb系析出物の分布数が本発明の範囲に含まれる鋼材であり、二次加工性及び耐高温酸化性が良好であった。
それに対し、鋼No.17~No.26は、合金組成、平均結晶粒径、Nb析出物の分布数、のいずれかが、本発明の範囲を外れるため、一次加工性、二次加工性または耐高温酸化性のいずれかが不良であった。
鋼No.19は、Cr含有量が24%超であり、また、鋼No.20は、Al含有量が2.6%超であるため、それぞれ鋼材の硬質化を招き、一次加工性が低下した。硬質化した点は、鋼No.19及び鋼No.20のビッカース硬さ(Hv)が鋼No.1~No.16よりも高いことで示されている。
鋼No.19及び鋼No.20を除く試験体に対して二次加工が施された。表2に示すように、鋼No.17、鋼No.18、鋼No.21~No.25は、Nb系析出物を含有しないため、あるいは、Nb系析出物の分布数が1視野当たり3個未満または10視野当たり40個未満であるため、金属組織の異方性の程度が高まり、二次加工の際にリジングを生じて、リジングに起因する加工割れにより二次加工性が低下した。さらに、鋼No.17、鋼No.21~No.23については、平均結晶粒径が80μm超であるため、二次加工の際に肌荒れを併発し、肌荒れに起因する加工割れが生じて二次加工性が低下した。
さらに、鋼No.21、鋼No.24~No.26は、Al含有量が1.0%未満であるため、あるいは、Si含有量が0.1%未満であるため、それぞれ耐高温酸化性が劣っていた。
また、鋼No.1~No.15、鋼No.26は、結晶方位に関する式(1)の値が2.5以下であり、二次加工性が良好であった。
1 鋼板
2 圧延面(ND面)
3 圧延方向(RD方向)
4 圧延直角方向(TD方向)
5 法線方向(ND方向)

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.025%以下、Si:0.1~1.0%、Mn:0.8%以下、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Ni:0.5%以下、Cr:16~24%、Al:1.0~2.6%、N:0.025%以下、Nb:0.05~0.6%、B:0.0005~0.0060%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
    平均結晶粒径が、80μm以下であり、
    Nb系析出物の分布数が、1視野当たり3個以上であり、かつ、10視野当たり40個以上である、二次加工性と耐高温酸化性に優れるAl含有フェライト系ステンレス鋼材。
    ここで、上記のNb系析出物の分布数は、50μmに相当する範囲を1視野として、その視野内に観察される、Nbを20mass%以上含む析出物のうち、(最大長さ+最小長さ)/2により算出された平均寸法が0.5μm以上である析出物の総数を意味する。
  2. さらに、質量%で、Ti:0.01~0.5%、V:0.01~0.5%、Mo:0.01~0.5%、Co:0.01~0.5%、Zr:0.01~0.5%、Cu:0.01~0.5%からなる群より選択される1種以上を含む、請求項1に記載の二次加工性と耐高温酸化性に優れるAl含有フェライト系ステンレス鋼材。
  3. さらに、質量%で、Hf:0.001~0.05%、Sn:0.001~0.05%、希土類元素:0.001~0.05%からなる群より選択される1種以上を含む、請求項1または2に記載の二次加工性と耐高温酸化性に優れるAl含有フェライト系ステンレス鋼材。
  4. 請求項1~3のいずれかに記載の前記Al含有フェライト系ステンレス鋼材を素材とするステンレス鋼製の加工品。
  5. 前記加工品が鋼管である、請求項4に記載のステンレス鋼製の加工品。
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