JP4062188B2 - 原子力用ステンレス鋼およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、原子力発電所で用いられる配管、構造材および構成部品に供される部材に好適であって、耐食性、特に耐粒界腐食性に優れた原子力用ステンレス鋼、およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
原子力発電所で使用される配管には、JISで規定するSUS316やSUS304等のオーステナイト系ステンレス鋼が用いられている。これらのステンレス鋼は、耐食性に優れているものの、原子力発電所での使用環境となる300℃近くの高温水中では、残留応力等による引張り応力の存在下で応力腐食割れを発生し、重大な損傷を発生する恐れがある。粒界腐食は粒界応力腐食割れの発生起点となりうるため、原子力発電所で用いられるステンレス鋼では、優れた耐粒界腐食性を確保することが安全性の観点から重要である。
【0003】
従来から、ステンレス鋼の粒界腐食を抑制する方法には、鋼の成分設計による手法として、例えば、CrやMoといった耐食性に有効な元素の含有量を最適化したり、C添加を低減してCr炭化物の粒界析出によるCr欠乏領域の生成を防止したり、または耐粒界腐食性に有害な元素であるPおよびSの含有量を低減する手法がある。
【0004】
最近では、鋼中の粒界構造に着目して、耐食性に有効な構造を有する粒界の比率を増やす方法が提案されている。例えば、特許文献1では、オーステナイトステンレス合金を対象として、加工度5〜30%の冷間加工工程および900〜1050℃×2〜10分のアニール工程を繰り返すことにより、特別粒界(対応粒界)部分を増加させ、強化された耐粒界腐食性を示すような熱機械的処理が行われている。この処理では対応粒界の比率を60%以上に増加させることで、耐粒界応力腐食割れ性を向上させるようにしている。
【0005】
ここで、対応粒界とは規則的な配列構造を有し、結晶粒界を挟んだ隣り合う結晶粒の片方を結晶軸の周りに回転したときに格子点の一部が隣の結晶粒の格子点と一致する粒界である。そして、粒界での構造の整合性がよく、粒界蓄積エネルギーが一般的な粒界に比べて小さく、共通する副格子を形成する原子数の割合の逆数をΣ値として、Σ値が29までを対応粒界としている。
【0006】
しかしながら、特許文献1による熱機械的処理によれば、金属材料の成形に際し、低い加工度で冷間加工を繰り返す必要があり、冷間加工工程およびアニール工程を多数回繰り返すことによって、製造コストが増大することになる。
【0007】
また、特許文献2および特許文献3では、耐応力腐食割れ性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼を得るため、構成部材を単結晶にして、耐食性の劣る粒界を本質的になくす構造用ステンレス鋼が提案されている。しかし、提案されたステンレス鋼を得るには、単結晶を作製するために高価なプロセスが必要になると同時に、得られたステンレス鋼は十分な機械的特性を確保することが難しい。
【0008】
さらに、特許文献4では、結晶粒界の指標として粒界方位差が15度以上で定義される高角粒界を取り上げて、その粒界割合を規定している。具体的には、オーステナイト系ステンレス鋼薄板の結晶組織を全結晶粒界に占める高角度結晶粒界の割合が85%を超えるように制御し、薄板の表面品質を高めることにしている。
【0009】
ところが、特許文献4に開示されるオーステナイト系ステンレス鋼薄板は、建築物の内装材や、家庭用機器の素材として使用されるステンレス鋼であって、需要者側から表面の平滑度や光沢等が問題とされることから、表面品質の点で、特に、冷間加工時に変形異方性を小さくすることによって、ローピングと呼ばれる肌荒れの発生を防止しようとするものである。
【0010】
したがって、特許文献4のステンレス鋼薄板は、原子力発電所で用いられる配管、構造材および構成部品に適用することができる、耐食性、特に耐粒界腐食性に優れたステンレス鋼を対象としたものではない。
【0011】
【特許文献1】
特許第2983289号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特許第2574927号公報
【特許文献3】
特許第2897694号公報
【特許文献4】
特開2002−1495号公報(特許請求の範囲)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
前述の通り、特許文献1で提案された熱機械的処理方法では、対応粒界が表面に存在する粒界の腐食抑制に対しては有効であることから、対応粒界の比率を増加させることによって耐食性を向上させることができるが、材料の成形に際し、低い加工度での冷間加工を繰り返す必要があり、製造コストが増大する。
【0013】
また、特許文献2および特許文献3に記載のオーステナイト系ステンレス鋼では、粒界を本質的になくすため、単結晶を作製する必要があり、高価なプロセスが必要になる。
【0014】
さらに、特許文献4では、結晶粒界の態様を表す指標として高角粒界に関する知見が開示されているが、建築物の内装材や、家庭用機器の素材として使用されるステンレス鋼であって、原子力発電所で用いられる配管、構造材および構成部品に採用される、耐粒界腐食性に優れたステンレス鋼を対象とするものではない。
【0015】
本発明は、上述した結晶粒界の態様改善に関するものであるが、主に原子力発電所に用いられる配管、構造材および構成部品に使用される部材であって、その使用環境となる高温水中においても耐粒界腐食性に優れたステンレス鋼を提供することを目的としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するため、鋼中の粒界構造と耐粒界腐食性の関係を調査した結果、従来から対応粒界に比べて耐粒界腐食性は低いと認識されていたランダム粒界のうち、方位差の大きい粒界は、逆に耐粒界腐食性に優れることを見出した。
【0017】
すなわち、ランダム粒界のうち方位差50度以上の粒界比率を増加させることにより、耐粒界腐食性が向上する。この理由は、鋼が溶接等により鋭敏化熱処理を受けた場合に、ランダム性の高い粒界では粒界部でCrの拡散が起こり易く、これにともなって結晶粒内でのCr拡散が抑制され、鋭敏化が起こり難くなるためと推測される。
【0018】
本発明は、上記の調査結果に基づいて完成されたものであり、下記(1)および(2)のステンレス鋼、並びに(3)の原子力用ステンレス鋼の製造方法を要旨としている。
(1)質量%で、C:0.001〜0.10%、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、Ni:8〜30%、Cr:15〜30%、N:0.001〜0.15%、P:0.05%以下およびS:0.05%以下を含み、残部がFeおよび不純物からなり、結晶粒界における方位差50度以上のランダム粒界比率が20%を超えることを特徴とする原子力用ステンレス鋼である。
(2)上記(1)の原子力用ステンレス鋼では、さらに耐食性を向上させるため、Mo:0.05〜3.0%を含有させるのが望ましい。また、熱間加工性を向上させるため、Ca:0.0003〜0.010%を含有させることができる。
【0019】
さらに、ステンレス鋼の強度向上を図るため、必要に応じ、Ti:0.001〜1.0%、Nb:0.001〜1.0%、V:0.001〜1.0%およびZr:0.001〜1.0%のいずれか1種以上を含有させることが望ましい。
(3)上記(1)および(2)のいずれかに記載の化学組成を有するステンレス鋼に60%以上の加工度に相当する冷間加工を加えた後、再結晶温度以上で熱処理を施すことを特徴とする原子力用ステンレス鋼の製造方法である。
【0020】
【発明の実施の形態】
上記に規定した本発明の内容を、化学組成、結晶組織および製造方法に区分して説明する。
1.化学組成(以下、%は質量%を示す)
C:0.001〜0.10%
Cは、強度を得るために有効な元素である。その効果を得るには、0.001%以上を含有させる必要がある。その含有量が0.001%未満であると、鋼の強度が不十分となる。一方、含有量が0.10%を超えると、溶接熱影響部の粒界に炭化物が生成し、耐粒界腐食性が低下する。したがって、C含有量は0.001〜0.10%とし、より望ましい上限は0.050%とする。
【0021】
Si:0.1〜1.0%
Siは、脱酸剤として有効な元素であり、この効果を得るには0.1%以上を含有させる必要がある。一方、1.0%を超えて含有させると、溶接性が悪化するとともに清浄度が低下する。このため、Si含有量は0.1〜1%とする。
【0022】
Mn:0.1〜2.0%
Mnは、不純物であるSをMnSとして固定し、熱間加工性を確保するとともに、脱酸剤として有効な元素である。これらの効果を確保するため0.1%以上を含有させる必要がある。しかし、Mn含有量が2.0%を超えて過剰に含有させると、鋼の清浄度が低下する。したがって、Mn含有量は0.1〜2.0%とする。
【0023】
Ni:8〜30%
Niは、鋼が耐食性を確保するのに有効な元素であるとともに、オーステナイト安定化元素でもある。その効果を得るため8%以上を含有させる必要がある。一方、30%を超えて過剰に含有させると高価となる。このため、Ni含有量は8〜30%とする。
【0024】
Cr:15〜30%
Crは、鋼の耐食性を維持するために必要な元素である。その含有率が15%未満では要求される耐食性が確保できない。一方、その含有量が30%を超えると、熱間加工性が著しく悪化する。したがって、Cr含有量を15〜30%とする。
【0025】
N:0.001〜0.15%
Nは、窒化物を形成して鋼強度の向上に有効である。これらの効果を確保するため、0.001%以上を含有させる必要がある。一方、0.15%を超えて含有しすぎると、窒化物を形成して鋼の耐食性を低下させる。このため、N含有量を0.001〜0.15%とする。
【0026】
P、S:0.05%以下
PおよびSは、通常の製銑および製鋼工程において銑鉄やスクラップから不可避的に混入する不純物元素である。PまたはSの含有量が0.05%を超えると、粒界に偏析して耐粒界腐食性に悪影響を及ぼすので、これらの上限を0.05%とする。
【0027】
以上説明した含有成分は、本発明のステンレス鋼を構成する必須元素である。以上の元素の他に、本発明のステンレス鋼は更に下記の任意添加元素を含有することができる。
【0028】
Mo:0.05〜3.0%
Moは、鋼の耐食性に有効な元素であり、必要に応じて添加する。添加する場合にはその効果を得るために、0.05%以上を含有させる必要がある。一方、3.0%を超えて含有してもその効果は飽和する。したがって、添加する場合には、Mo含有量を0.05〜3.0%とする。
【0029】
Ca:0.0003〜0.01%
Caは、Mnと同様にSを固定し、熱間加工性を向上させる効果があるが、その効果を得るには、0.0003%以上の含有が必要である。一方、0.01%を超えて過剰に含有させると清浄度が低下する。したがって、添加する場合には、Ca含有量を0.0003〜0.01%とする。
【0030】
Ti、Nb、V、Zr:0.001〜1.0%
Ti、Nb、VおよびZrのいずれも炭化物を形成して、強度を向上させるのに有効な元素である。その効果を得るには、0.001%以上を含有させることが必要であるが、1.0%を超えて過剰に含有すると清浄度が低下する。したがって、添加する場合は、Ti、Nb、VおよびZrの含有量はそれぞれ0.001〜1.0%とする。
2.結晶組織
前述の通り、対応粒界は、結晶粒界を挟んだ隣り合う結晶粒の片方を結晶軸の周りに回転したときに格子点の一部が隣の結晶粒の格子点と位置して、両結晶に共通する副格子を有する粒界である。そして、共通する副格子を形成する原子数の逆数をΣ値と呼び、Σ値が小さいほどエネルギーも小さいとして、対応粒界はΣ値が29以下のものとしている。そして、対応粒界以外の粒界はランダム性が強く、ランダム粒界と呼ばれる。
【0031】
本発明では、結晶粒界の態様を表す指標としてランダム粒界に着目しており、対象とする結晶組織を方位差50度以上のランダム粒界比率が20%を超える組織と規定している。
【0032】
前述の通り、ランダム粒界のうち方位差50度以上の粒界比率を増加させることにより、溶接等により鋭敏化熱処理を受けた場合に、ランダム性の高い粒界部ではCrの拡散が起こり易く、その結果、粒内でのCr拡散は抑制されて、鋭敏化が起こり難くなる。
【0033】
このように、本発明では、方位差50度以上のランダム粒界比率をなるべく多くすることにより、耐応力腐食割れ性を向上できることから、該当するランダム粒界比率の上限を定めない。
【0034】
対象とする方位差50度以上のランダム粒界比率(%)は、下記(a)式によって算出される。
【0035】
方位差50度以上のランダム粒界比率=(方位差50度以上のランダム粒界長さ)/(全粒界長さ)×100 ・・・(a)
以下に、ランダム粒界長さおよび全粒界長さの算出方法について、その一例を説明する。まず、供試サンプルの表面に電子線を入射して、電子線と結晶との相互作用で非弾性散乱による菊池パターンを形成させ、その菊池パターンを処理、解析することによって、電子線が当てられた結晶粒の結晶方位を求める。
【0036】
次に、粒界を挟んだ隣り合う各結晶の粒界方位差を測定する。その測定結果から、粒界方位差50度以上のランダム粒界を見つけ出し、そのランダム粒界の長さを割り出す。粒界長さ割り出しは、各粒界を点状にスキャンし、その結果を合算して粒界長さを換算する。
【0037】
このとき、粒界方位差50度を超える粒界長さを対象のランダム粒界長さとして把握したが、全方位差の合計を全粒界長さとして把握する。次に、測定されたランダム粒界長さおよび全粒界長さを用いて、上記(a)式により、方位差50度以上のランダム粒界比率(%)を算出する。
3.製造方法
本発明の製造方法では、上記化学組成を満足するステンレス鋼に加工度が60%以上の冷間加工を加えた後、再結晶温度以上で熱処理を施すことにしている。冷間加工後、再結晶温度以上で熱処理を施すことによって、方位差50度以上のランダム粒界比率が20%を超える結晶組織を得ることができる。
【0038】
ここで、加工度は、冷間加工前の板厚または鋼管の厚みをTb、冷間加工後の板厚または鋼管の厚みをTaとしたとき、下記(b)式によって定義する。
【0039】
加工度={(Tb−Ta)/Tb}×100(%) ・・・(b)
本発明のステンレス鋼では、冷間加工後、熱処理を施すことによって鋼表面に再結晶を生じさせて、方位差50度以上のランダム粒界を所定の比率で確保するようにしている。このとき、ステンレス鋼表面に再結晶を生じさせるには、熱処理前に加える冷間加工はできるだけ高加工度にするのが望ましい。加工度が大きい程、再結晶が有効に促進するからである。
【0040】
そこで、本発明の製造方法では、再結晶を促進させるため、加工度が60%以上の冷間加工を加える必要がある。本発明で採用する冷間加工方法は、板材の場合には圧延加工であり、管材の場合には圧延加工または抽伸加工であるが、いずれの場合も、上記の加工度を確保する必要がある。
【0041】
ところで、本発明のステンレス鋼が優れた耐粒界腐食性を発揮するには、鋼が具備すべき特性、すなわち、方位差50度以上のランダム粒界が20%超えの比率を満足するのは、鋼表面のみの場合であってもよい。しかも、鋼表面の加工度の目安は、その表面部分の硬さと同じ鋼を冷間加工したときの硬さとを比較することによっても可能であり、例えば、冷間加工を受けた鋼表面の硬さが加工度60%以上の被加工鋼の硬さとほぼ等しければ、その鋼表面は加工度60%以上の加工を受けたとすることができる。
【0042】
したがって、本発明の製造方法では、ステンレス鋼の表面をグラインダーなどの機械加工によって加工を施した後、加工度60%以上の冷間加工を加えたと等しい硬度を確認して、再結晶温度以上で熱処理を施すようにしてもよい。
【0043】
【実施例】
本発明のステンレス鋼の効果を、実施例を基づいて説明する。表1に示す8種類の化学組成の鋼を真空溶解法で溶製した。表1に示す鋼は、いずれも本発明で規定する組成を満足する本発明鋼とした。
【0044】
【表1】
Figure 0004062188
【0045】
溶製された本発明鋼を供試鋼として、熱間加工および冷間加工を施した。熱間加工として熱間鍛造および熱間圧延を実施し、1100℃で熱処理を施した後、引き続き、表2に示す加工度で冷間圧延を行い、再結晶温度以上の1100℃で最終熱処理を施した。
【0046】
最熱処理を施した後、方位差50度以上のランダム粒界比率の測定および耐粒界腐食性の評価を行った。供試鋼のランダム粒界比率は、SEM−EBSP(Secondary Electron Microscopy-Electron Back Scattering Pattern)を用いて、供試鋼の冷間圧延方向に平行な断面を150倍程度の倍率で観察して測定した。測定した方位差50度以上のランダム粒界比率(%)を表2に示す。
【0047】
供試鋼の耐粒界腐食性の評価は、溶接熱影響部を模擬して650℃×2h空冷熱処理後、蓚酸エッチングを行い、腐食の程度が低い段状粒界の割合を光学顕微鏡を用いて測定し、その結果から粒界腐食性を評価した。腐食の程度が低い段状またはみぞが部分的な粒界の割合が60%以上の場合を◎とし、同じ段状またはみぞが部分的な粒界の割合が40〜60%未満の場合を○とし、同じ段状またはみぞが部分的な粒界の割合が40%未満の場合を×と評価し、その結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
Figure 0004062188
【0049】
表2の結果から明らかなように、本発明例の鋼No.1〜8はいずれも方位差50度以上のランダム粒界比率が20%を超え、優れた耐粒界腐食性を示した。特に、本発明例の鋼No.1〜3では、冷間圧延で高加工度を加えたので、方位差50度以上のランダム粒界比率が22%を確保でき、著しく優れた耐粒界腐食性を得ることができた。
【0050】
一方、比較例では、冷間圧延で加工度が30%または50%と低く、方位差50度以上のランダム粒界比率が20%超えを確保することができず、耐粒界腐食性も不良であった。
【0051】
【発明の効果】
本発明のステンレス鋼によれば、鋼の化学組成を適切な範囲で制御するとともに、結晶粒界における方位差50度以上のランダム粒界比率が20%を超えるように規定することによって、耐粒界腐食性が優れたものとなる。
【0052】
したがって、本発明の製造方法によれば、原子力発電所に用いられる配管、構造材およびボルト等の構成部品に最適なステンレス鋼部材を、効率的に製造することができる。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.001〜0.10%、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、Ni:8〜30%、Cr:15〜30%、N:0.001〜0.15%、P:0.05%以下およびS:0.05%以下を含み、残部がFeおよび不純物からなり、結晶粒界における方位差50度以上のランダム粒界比率が20%を超えることを特徴とする原子力用ステンレス鋼。
  2. さらに、質量%で、Mo:0.05〜3.0%を含むことを特徴とする請求項1に記載の原子力用ステンレス鋼。
  3. さらに、質量%で、Ca:0.0003〜0.010%を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の原子力用ステンレス鋼。
  4. さらに、質量%で、Ti:0.001〜1.0%、Nb:0.001〜1.0%、V:0.001〜1.0%およびZr:0.001〜1.0%のいずれか1種以上を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の原子力用ステンレス鋼。
  5. 前記請求項1〜4のいずれかに記載の化学組成を有するステンレス鋼に60%以上の加工度に相当する冷間加工を加えた後、再結晶温度以上で熱処理を施すことを特徴とする原子力用ステンレス鋼の製造方法。
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