JP5195407B2 - 管体の診断装置及びその方法 - Google Patents
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Description
特許文献1では、複数の超音波探触子を、管体表面の被検査部の両側に接触させ、このうち一方の超音波探触子から管体に超音波を送信し、他方の超音波探触子によって被検査部を通過してきた超音波を受信し、この受信した超音波の強さを基に、被検査部の損傷、腐食状態を検査している。この方法では、被検査部に腐食部で乱反射され、腐食の程度に応じた分だけ弱められた超音波を基に、腐食の有無、及びその程度を検査している。
例えば製鉄所における大型配管の管台部のように、管台が半円筒状に管を包む形状になっている場合には、腐食が面状に広がっており、位置によって腐食量が異なっている場合がある。従来技術では、腐食が管台部において均一か、又は一部分だけが腐食している場合には検査することができたが、前述のような腐食が面状に広がっている場合には、その腐食状態を精度良く推定することは困難であった。
本発明は前記問題点を解決するためになされたものであり、腐食が面状に広がっている場合でも、管台部や埋設部の外表面が覆われた配管の腐食状態を精度良く診断できる装置及び方法を提供することである。
また、本発明に係る請求項3に記載の管体の診断装置は、請求項1又は2に記載の管体の診断装置において、前記超音波探触子の出力信号に基づいて得た参照信号を記憶する参照信号記憶手段と、前記参照信号記憶手段が記憶した参照信号を基に前記反射エコーの信号を相互相関処理する相互相関処理手段と、を備え、前記距離振幅特性補正手段が、前記相互相関処理手段が相互相関処理により得た反射エコーの信号を前記距離振幅特性を基に補正することを特徴とする。
また、請求項2に係る発明によれば、少なくとも1対の超音波探触子を、管体の管周方向に位置を同期しながら走査することで、面状に広がっている腐食状態に適合させて腐食深さ診断することができ、面状に広がっている腐食の分布を精度良く推定できる。
(原理)
本実施形態は、本発明を適用した管体の診断装置である。先ず、管体の診断装置が採用している腐食状態の診断原理を説明する。
先ず、配管(管体)の管台に接触して支持されている部位で、実際に腐食が進んでいるサンプルを採取し、その採取したサンプルの断面方向を観察した。図1は、そのサンプルの観察で確認できた腐食状態を示す。
なお、配管100は、例えば円筒形状である。この配管100は、その管軸方向における一部が管台110に載置され、周方向に沿って管台110により支持されている。図1に示す100a(網目で示す領域)は、管台110に支持され、配管100の外表面にて管台110により覆われている隠蔽部位である管台部を示す。
このように、本願発明者は、腐食状態を詳細に調査し、配管100の管台部100aにおける腐食が、面状の広がりを持ち、かつ周方向によってはその程度が異なっている状態であることを明らかにした。
図3に、前述した面状の腐食状態を診断可能な診断装置の基本構成を示す。
図3に示すように、診断装置として、第1の超音波探触子11と第2の超音波探触子21とを、管台110又は管台部100aを挟んで対向されるように配管100の外周面上に配置している。第1及び第2の超音波探触子11,21はともに、配管100に超音波信号を送信し、かつ超音波信号を受信することができる。
さらに、第1の超音波探触子11から送信されて管台部100aで反射された超音波信号を超音波エコーとして、該第1の超音波探触子11で受信できる。以下、このように、一の超音波探触子だけで、超音波信号を送信し、反射される超音波信号を受信する方法を反射法と呼び、この反射法により得た超音波エコーを反射エコーと呼ぶ。
また、図3(b)に示すように、反射法による超音波信号B,C、すなわち超音波探触子11,12が送信し、該超音波探触子11,12が自ら受信した超音波信号B,Cは、管厚内の進行途中に腐食がある場合、その腐食部位で反射される。
(構成)
実施形態は管体の診断装置である。管体の診断装置は、以上のような腐食状態の診断原理及び基本的な装置構成を採用して構成されている。
図4及び図5は、その管体の診断装置の構成を示す。
図4及び図5中、11は第1の超音波探触子であり、12は配管100の周方向に第1の超音波探触子11を走査するためのスキャナーであり、13は第1の超音波探触子11に接続された超音波送信部であり、14は第1の超音波探触子11に接続された超音波受信部である。同様に、21は第2の超音波探触子であり、22は配管100の周方向に第2の超音波探触子21を走査するためのスキャナーであり、23は第2の超音波探触子21に接続された超音波送信部であり、24は第2の超音波探触子21に接続された超音波受信部である。
また、1は超音波受信部14,24で受信した超音波信号を記憶する記憶部(計測データ記憶部)である。記憶部1には、配管100の周方向の位置に対応させて超音波信号が記憶されている。また、3は、超音波探触子11,21の出力信号に基づいて得た参照信号を記憶する参照信号記憶部である。また、2は、参照信号記憶部3が記憶した参照信号を基に反射エコーの信号を相互相関処理する相関処理部である。また、4は、透過エコーの信号強度(信号振幅)に基づいて距離振幅特性を求める距離振幅特性推定部である。また、5は、距離振幅特性推定部4が取得した距離振幅特性を基に、反射エコーの信号強度を補正する距離振幅特性補正部である。また、6は、距離振幅特性補正部6が補正した反射エコーの信号強度を基に、腐食深さ診断する信号処理部である。7は、各波形や診断結果を表示する表示部である。
以上のような構成において、先ず、超音波送信部13からの送信信号で第1の超音波探触子11を印加し、第1の超音波探触子11から配管100に超音波信号を送信し、配管100の管台部100aを透過した超音波信号を第2の超音波探触子21及び超音波送信部24により透過エコーとして受信する。また、同時に、第1の超音波探触子11から送信されて管台部100aで反射された超音波信号を、該第1の超音波探触子11及び超音波受信部14により反射エコーとして受信する。さらに、超音波送信部23からの送信信号で第2の超音波探触子21を印加し、第2の超音波探触子21から配管100に超音波信号を送信し、配管100の管台部100aで反射された超音波信号を、該第2の超音波探触子21及び超音波受信部24により反射エコーとして受信する。
以下に、これら相関処理部2、距離振幅特性推定部4、距離振幅特性補正部5及び信号処理部6の処理の詳細を説明する。
距離振幅補正に係る処理手順(1)〜(6)を説明する。
(1)先ず、サンプルとして、配管100で確実に腐食がないと考えられる健全部、又は配管100と同じサイズで同じ塗膜状態である健全サンプルを用意する。ここで、配管100で確実に腐食がないと考えられる健全部(健全サンプル)としては、例えば、配管100の管台部100a以外の部位、すなわち、配管100において管台110により支持されていない部位が挙げられる。例えば、配管100の周方向の最上部(前記図4の載置状態の配管100の外周で最上部)が好ましい。そして、超音波探触子11と超音波探触子21とを所定距離離した状態で、健全サンプルに対して透過エコーを測定する。所定距離は、管台部100aを検査するときの距離である。なお、オンラインでこの測定を行うこともでき、オフラインでこの測定を行うこともできる。
(3)続いて、前記手順(1)で得た健全部(健全サンプル)での透過エコーの信号強度及び前記手順(3)で得た被検査部位での透過エコーの信号強度を基に、感度差Δs(dB)を得る。具体的には、下記(1)式により感度差Δsを算出する。
Δs=20・log(p1/p2) ・・・(1)
ここで、p1は健全部で得た透過エコーの信号強度である。p2は被検査部位で得た透過エコーの信号強度である。
dac=Δs/xd ・・・(2)
ここで、補正対象距離xdは、管台部100aの軸方向の距離(管台部100aの軸方向幅、管台100の軸方向幅相当)である。
ro(x)=ri(x)×10(2・dac・(x−xo)/20) ・・・(3)
ここで、xは、超音波探触子からの軸方向距離(cm)である。xoは距離振幅補正開始位置(cm)である。距離振幅補正開始位置とは、距離振幅補正を開始する必要がある位置であり、超音波探触子(基準位置)から管台部100a(超音波探触子からみて手前端部)までの距離になる。このようなことから、距離振幅補正が必要となる領域について計算をすべく、x>xoの領域で計算を行う。なお、前記(3)式の右辺の指数の「2」は、反射エコーの信号に対して距離振幅補正を施すために、反射エコーの信号(超音波探触子の出力信号)の伝播距離を考慮し、往復する信号に対して距離振幅補正することを表す値である。
(6)続いて、前記手順(5)で算出した距離振幅補正を施した反射エコーの信号ro(x)に比例定数を乗じる。これは、反射エコーの信号強度が腐食深さに比例するためであり、別途校正した比例定数を反射エコーの信号ro(x)に乗じて、腐食深さを推定している。この手順(6)により、周方向の1ヶ所で、管軸方向の腐食深さ分布を得ることができる。
なお、以上の処理手順では、距離振幅特性推定部4が手順(1)〜(4)を実施する。また、距離振幅特性補正部5が手順(5)を実施する。また、信号処理部6が手順(6)を実施する。
反射エコーの信号に直流成分が乗っているときに、そのまま前述のような距離振幅補正を行うと、超音波探触子から遠い部位からの反射エコーの信号が発散してしまう。また、反射エコーの信号に電気的なノイズが重畳しているときに、そのまま前述のような距離振幅補正を行うと、ノイズが増幅されて反射エコーの信号に出てしまう。
このような場合は、距離振幅補正を行う前の反射エコーの信号に対して、下記(4)式で数式表現される相互相関処理を行う。
また、以上の説明では、距離振幅補正を計算処理により行っている。しかし、超音波受信部においてアナログ回路を用いて行うこともできる。また、超音波探触子は透過法と反射法とで異なる対を用いても良く、反射法により得た腐食深さのデータは両側から探傷した結果を合成しても良い。
(1)前述のように、本願発明者が、腐食状態を詳細に調査したところ、配管の管台部における腐食が、面状に広がりを持ち、周方向によってその程度が異なっている状態であることを明らかにした。そして、管台部100aを挟んで対向配置した1対の超音波探触子を用いてこの面状の腐食状態を診断している。
これにより、製鉄所における大型配管の管台部が、管台が半円筒状で配管を包むような形状であるところで腐食が面状に広がっている場合でも、その腐食深さを精度良く診断できるようになる。これにより、例えば、ガス漏れ等のトラブルを防止できる。
これにより、腐食が面状に広がっているような配管100でも、その腐食状態を精度良く推定できる。
これにより、面状に広がっている腐食状態に適合させて腐食深さ診断することができ、面状に広がっている腐食の分布を精度良く推定できる。
(5)また、前述のように、超音波探触子の出力信号を基に参照信号を得て、参照信号により反射エコーの信号に相互相関処理を施し、相互相関処理を施した反射エコーの信号を距離振幅特性を基に補正している。
これにより、直流成分や電気的なノイズ等を取り除いた反射エコーの信号に対して距離振幅特性に基づく補正ができる。この結果、腐食状態を精度良く推定できる。
また、参照信号記憶部3は、前記超音波探触子の出力信号に基づいて得た参照信号を記憶する参照信号記憶手段を実現している。なお、参照信号は、前記超音波探触子に印加される超音波送信部の送信信号でも良い。
また、相関処理部2は、前記参照信号記憶手段が記憶した参照信号を基に前記反射エコーの信号を相互相関処理する相互相関処理手段を実現している。この場合、距離振幅特性補正部5は、前記相互相関処理手段が相互相関処理により得た反射エコーの信号を前記距離振幅特性を基に補正する距離振幅特性補正手段を実現している。
実施例として、腐食状態の異なる2つサンプルを用いて透過法及び反射法による測定を行った。1つのサンプルは、健全部のものであり、もう1つのサンプルは、腐食している管台部のものである。いずれのサンプルもφ8mmの貫通穴が距離(超音波探触子からの距離)を変えて加工されている。また、腐食サンプルについては、探触子の当たる部分にもわずかな腐食があり超音波が減衰したため、この減衰分を補正した感度で測定を行った。
図6(a)に示すように健全サンプルの透過エコーの信号強度のピーク値は86%であり、図6(b)に示すように腐食サンプルの透過エコーの信号強度のピーク値は7%である。従って、感度差Δsは、20×log(86/7)となり、22dBとなる。そして、探触子間の距離(xd)を20cmとしているので、距離振幅特性は22/20=1.1dB/cmとなる。
また、チャートには、実際に腐食している部分が反射エコーの信号強度として現れて、その反射エコーの信号強度が、距離(時間)による感度差もなく得られている。また、反射エコーの信号強度と実際のサンプルの腐食深さを対比した結果、反射エコーの信号強度による診断結果と同様の腐食状態を実際のサンプルに確認できた。
Claims (4)
- 管体の被検査部を挟んで管軸方向に対向配置された少なくとも1対の超音波探触子と、
前記1対の超音波探触子を用いて透過エコーの信号を取得するとともに、前記1対の超音波探触子および/または別の超音波探触子を用いて前記被検査部に対して反射エコーの信号をそれぞれ取得する信号取得手段と、
管体の被検査部を挟んで対向配置した前記1対の超音波探触子を用いて取得した透過エコーの信号強度と該透過エコーの信号強度の取得条件と同条件で管体の健全部について取得した透過エコーの信号強度とを比較して、前記超音波探触子が出力する信号の前記被検査部内の伝播距離に依存する距離振幅特性を取得する距離振幅特性取得手段と、
前記距離振幅特性取得手段が取得した距離振幅特性を基に、前記反射エコーの信号強度を該反射エコーの信号の伝播距離に応じて補正する距離振幅特性補正手段と、
前記距離振幅特性補正手段が補正した反射エコーの信号強度を基に、腐食深さ診断する腐食状態推定手段と、
を備えることを特徴とする管体の診断装置。 - 前記少なくとも1対の超音波探触子を、管体の管周方向に位置を同期しながら走査する走査手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の管体の診断装置。
- 前記超音波探触子の出力信号に基づいて得た参照信号を記憶する参照信号記憶手段と、
前記参照信号記憶手段が記憶した参照信号を基に前記反射エコーの信号を相互相関処理する相互相関処理手段と、を備え、
前記距離振幅特性補正手段は、前記相互相関処理手段が相互相関処理により得た反射エコーの信号を前記距離振幅特性を基に補正することを特徴とする請求項1又は2に記載の管体の診断装置。 - 管体の被検査部を挟んで管軸方向に少なくとも1対の超音波探触子を対向配置し、前記1対の超音波探触子を用いて透過エコーの信号を取得するとともに、前記1対の超音波探触子および/または別の超音波探触子を用いて、前記被検査部を挟んで両側から反射エコーの信号をそれぞれ取得し、これら少なくとも2組の信号を基に、前記管体の被検査部の腐食状態を推定する管体の診断方法であって、
管体の被検査部を挟んで対向配置した前記1対の超音波探触子を用いて取得した透過エコーの信号強度と該透過エコーの信号強度の取得条件と同条件で管体の健全部について取得した透過エコーの信号強度とを比較して、前記超音波探触子が出力する信号の前記被検査部内の伝播距離に依存する距離振幅特性を取得し、
取得した距離振幅特性を基に、前記反射エコーの信号強度を該反射エコーの信号の伝播距離に応じて補正し、
補正した反射エコーの信号強度を基に、腐食深さ診断することを特徴とする管体の診断方法。
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