JP5192654B2 - 燃料電池用電極の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池用に好適な電極の構造に係り、金属繊維シート上に薄板金属を接合した構造およびその製造方法に関する。また、この構造の燃料電池用電極を用いた燃料電池に関する。
燃料電池用電極として、メッシュや多孔質の通気性のある導電部材を利用したものが知られている。これは、電極に通気性を持たせることで、燃料および酸化剤の触媒への供給を効率よく行うためである。この通気性のある導電部材として、金属繊維をシート状に成型した金属繊維シートが知られている。燃料電池用電極への金属繊維の適用に関しては、例えば特許文献1や2に記載されている。
特開2005―515604 WO2004―075321
ところで、金属繊維シートは繊維質多孔体であり、ミクロに見た場合、絡み合った金属繊維間の点接触により電気伝導が行われる。一般的に導体においては薄くした場合に面に平行な方向における電気抵抗(シート抵抗)が高くなり、面に垂直な方向における電気抵抗は低くなる。金属繊維シートにおいては、この現象がより顕著に現れる。
このことは、単位発電ユニットを平面的に複数配置し、直列接続する平面スタック型の燃料電池において問題となる。すなわち、平面スタック型の燃料電池の場合、発電時に電極面の面に平行な方向に電流が流れる。このため、電極の面に平行な方向における電気抵抗が高いと、それが発電効率を下げる要因となる。この問題は、薄型化のために金属繊維シートを薄くした場合に顕在化する。なお、単位発電ユニットを面に垂直な方向に積層する垂直スタック構造の場合、電極面に垂直な方向に電流が流れるので、金属繊維シートの面に平行な方向における電気抵抗の高さは問題とならない。
そこで本発明は、平面スタック型の燃料電池に適用可能な金属繊維シートを用いた電極に係り、高発電効率を得ることができる技術を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、シート状の金属繊維ウエブを所定形状に打ち抜くウエブ打ち抜き工程と、金属の薄板から薄板金属パターンを打ち抜く薄板金属パターン打ち抜き工程と、打ち抜かれた前記金属繊維ウエブ1枚の上層または下層、または、前記金属繊維ウエブを複数枚積層するとともにその最上層または最下層に前記薄板金属パターンを積層し積層体を得る積層工程と、前記積層体を焼結する焼結工程とを備え、前記細線パターンは、前記金属繊維シートの周縁上に設けられた環状パターンと、前記環状パターンの内側を仕切るブリッジ部を備えることを特徴とする燃料電池用電極の製造方法である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ウエブ打ち抜き工程と前記薄板金属パターン打ち抜き工程とを一つの金型で行なうことを特徴とする。
本発明によれば、金属繊維シートに重ねて薄板金属パターンを積層することで、金属繊維シートの面に平行な方向における電流経路を確保し、それにより平面スタック型の燃料電池に好適な電極を得ることができる。また本発明の電極を利用することで、発電効率の高い燃料電池を得ることができる。
1.第1の実施形態
(実施形態の構成)
図1は、発明を利用した燃料電池用電極の概要を示す斜視図であり、(A)は分解状態、(B)は接合状態を示す。図1(B)には、燃料電池用電極103が示されている。燃料電池用電極103は、薄板金属102と金属繊維シート101から構成されている。薄板金属102は、主成分がFeとCrであり、矩形状の環状パターン(枠構造パターン)201とその内側を仕切る十字形状のブリッジ部202を備えている。また、環状パターン201とブリッジ部202が配置されておらず、金属繊維シート101の露出している4箇所の矩形状の開口部104が設けられている。金属繊維シート101は、薄板金属と同様の材質のものを線径40μmの繊維にし、それを薄板状に成型した繊維質多孔質である。金属繊維シート101と薄板金属102を構成する材質は、FeCrSi合金が最適であるが、ステンレス鋼やNi−Cr合金を用いることもできる。なお、金属繊維シート101と薄板金属102とを異なる材質とすることもできるが、焼結が可能な組み合わせとすることが望ましい。
金属繊維シート101と薄板金属102とは、焼結により拡散接合されている。薄板金属102は、金属繊維シート101の面に平行な方向に流れようとする電流を集め、それを金属繊維シート101の面に平行な方向に流す集電電極として機能する。このため、金属繊維シート101において、その面に平行な方向に電流を流す場合に、金属繊維シート101が示す比較的高いシート抵抗による発電電力の損失を抑えることができる。また、金属繊維シート101と薄板金属102とが拡散接合されているので、両者間の接触抵抗が問題にならず、また接合部分の腐食による高抵抗化を防止することができる。
図1に示されるように、薄板金属102のパターンは、金属繊維シート101の周囲の縁部分を囲む環状パターン201と、その内側において金属繊維シート101を縦横に十字に横断するブリッジ部202を備えている。この構造によれば、燃料や酸化剤の供給に必要な開口部104の開口率を効果的に確保することができる。また、ブリッジ部202を設けることで、金属繊維シート101の露出面が縦横に仕切られるので、金属繊維シート101からの集電効率を高めることができる。また、ブリッジ部202を設けることで、薄板金属102と金属繊維シート101との接合状態をより強固にすることができる。
(製造方法)
以下、図1に示す燃料電池用電極103の製造工程の一例を説明する。金属繊維シート101を構成する金属繊維は、溶湯抽出法で得られたものであることが望ましい。溶湯抽出法で得られた金属繊維は断面が非円形で、かつ、長手方向で一様ではない。このような金属繊維と、断面が真円で一様な金属繊維とを比較すると、同じ圧縮圧力でも溶湯抽出法で得られた金属繊維からなる金属繊維多孔質体の体積含有率の方が大きい。これは、溶湯抽出法で得られた金属繊維の方が圧縮によって互いに絡まり易く、除荷したときのスプリングバックが小さいためである。
次に、金属繊維シートの製造方法、およびそれを利用した燃料電池用電極の製造方法の一例を工程の順に説明する。
A.金属繊維製造工程
図2は溶湯抽出装置を示す概略図である。また図2(A)のB−Bの線で切った断面の形状が図2(B)に示されている。図2において符号1はロールであり、ロール1の外周にはエッジ1aが形成されている。ロール1の下側には軸線を上下方向に向けた材料ホルダ2が配置されている。材料ホルダ2の内部には、金属の線材が上方へ移動可能に収容されている。材料ホルダ2の上端部には加熱コイル3が配置され、材料ホルダ2の上端から突出する材料Mを溶融するようになっている。そして、溶融した材料Mはロール1のエッジ1aに接触し、ロール1の接線方向へ引き出されるとともに急冷されることで均一な線径の金属繊維Fが製造される。ここでは、金属繊維Fの繊維径を円形換算で40μmに設定する。
B.解繊・ウエブ成形工程
図3は上記のようにして製造された金属繊維からウエブを製造する工程を示す概念図である。図3に示すように、材料コンベア10には金属繊維Fの集合体が供給され、出口側へ搬送される。材料コンベア10の出口には、フィードローラ11が配置され、フィードローラ11の外側には解繊機構12が配置されている。フィードローラ11の外周には多数の歯が形成され、金属繊維Fを噛み込んで送り出すようになっている(図4参照)。また、解繊機構12の外周にも多数の歯が形成され、フィードローラ11に噛み込まれた金属繊維Fからその一部を梳ってコンベア13のベルト14上に落下させる。これが解繊工程であり、その際に金属繊維Fは分断され、ベルト14上でランダムな方向に交錯させられて不織布のようなシート状のウエブWとされる。
材料コンベア10には、溶湯抽出法で製造された金属繊維がそのまま供給されるから、金属繊維の集合体では線径がほぼ一定となっている。本発明は、そのような場合に限定されるものではなく、別工程で製造した線径の異なる金属繊維の集合体を混合して用いることもできる。
C.打抜き・積層工程
図4は、燃料電池用電極の製造工程を示す概念図である。打抜き工程では、図4に示すような金型20を使用する。金型20は、ダイス21と、ダイス21の孔21aに出没自在なパンチ25とからなっている。ウエブWは金型20に搬送され、パンチ25が下降して打抜品Pが打ち抜かれる。打抜品Pは、ダイス21の孔21aの内周との摩擦により、落下することなく孔21a内に留まり、次の打抜品Pに押されて順次下降して行く。
ここで、所定枚数となる最後の打抜品Pが打ち抜かれると、薄板金属板から薄板金属102を上記金型20で打ち抜く。この場合、薄板金属102には、中央の開口104(図1参照)を別の金型で予め打ち抜いておく。そして、打ち抜かれた薄板金属102と孔21a内で積層された打抜品Pは、パンチ25と孔21aの底の間で圧縮される。なお、打ち抜くウエブWは単一の層であっても複数層にしたものであっても良く、それは最終的に得られる金属繊維シートの厚さと嵩密度によって決められる。また、最初に薄板金属102を打ち抜いておき、その後に打抜品Pを所定枚数打ち抜いてもよい。次いで、孔21aの底に設けたリフタ(図示せず)が上昇し、積層された打抜品Pと薄板金属102とをダイス21の上面から突出させる。
1回の打抜きに供するウエブの目付は、100〜2000g/mであることが望ましい。ウエブの目付が100g/m未満であると、打ち抜いたときにウエブの金属繊維がばらばらになり易い。また、ウエブの目付が2000g/mを超えると、ウエブの側面が下方に向けてだれた形状となり易い。
D.焼結工程
次に、積層された打抜品Pおよび薄板金属102は、図示しない搬送機構により金型20から取り出され、焼結炉に搬入される。一方、打抜品Pが打ち抜かれた後のウエブWは、解繊工程に戻され、そこで金属繊維に再生されてウエブWの材料とされる。
焼結炉には連続炉が用いられる。積層された打抜品Pおよび薄板金属102は、無荷重で焼結炉を通過する間に焼結され、金属繊維どうしの接触部と金属繊維と薄板金属102との接触部で互いに拡散接合されて板状の焼結体である金属繊維シートおよび薄板金属102の複合体Sが製造される。次いで、複合体Sには、例えば所定の板厚にするための機械加工が施され、金属繊維シート101と薄板金属102とが接合された燃料電池用電極103が得られる。この製造工程によれば、同じ金型を用いてウエブWの打ち抜きと薄板金属102の打ち抜きを行なうので、製造プロセスの簡素化および低コスト化を追求することができる。
(評価)
次に図1に示す燃料電池用電極を評価した結果を説明する。ここでは、金属繊維シート101の寸法を60mm×60mm×0.2mm厚、金属繊維の径を40μm(円形換算寸法)とし、薄板金属102の寸法を60mm×60mm、薄板金属102の環状パターン201とブリッジ部202の幅を3mmとしたサンプルを用意した。下記「表1」に金属繊維シート101の材質、Cr含有量、熱膨張係数βおよび嵩密度Vf、さらに薄板金属102のCr含有量、熱膨張係数βおよび板厚を示す。なお、上記の寸法を採用した場合、薄板金属102の細線パターンによって金属繊維シート101の表面積の27.75%が被覆されることになる。
Figure 0005192654
下記表2に、表1に示す製造例1〜22に関して、金属繊維シート101と薄板金属102との接合強度と反りの度合について調べた結果を示す。ここで、接合強度は、全面的に両者の接合が強固であり、剥がれが全く見られないものを○判定とした。また、一部に剥がれが観察されるが、接合した部分は強固であり、取り扱い時に剥がれることがないものを△判定とした。また、一部に剥がれが観察され、さらに取り扱い時に接合部が剥がれてしまう可能性が高い状態のものを×判定とした。
また、反りの度合については、殆ど認められなく、触媒塗布方法が容易(刷毛塗り、スプレー塗布、スクリーン印刷など制限無し)、且つ、ホットプレスによるMEA(Membrane Electrode Assembly)作製時に問題が発生しない(0〜0.1mm未満)場合が◎判定、若干反ってはいるが、触媒塗布が容易(但し、スクリーン印刷の場合は触媒層厚さに多少の斑発生)、且つ、ホットプレスによるMEA作製時に問題が発生しない(0.1〜0.3mm未満)場合が○、反りが大きく、スクリーン印刷による触媒塗布が難しくなり、且つ、ホットプレスによるMEA作製時にプレス速度などに注意を要するが、使用上は問題ない(0.3〜1.0mm未満)場合が△、反りが大きく、MEA作製時に触媒層の割れが発生するなどの問題があるため使用できない(1.0mm以上)場合が×判定とした。
Figure 0005192654
表2に示すように、全ての製造例において、接合強度に問題がないという結果を得た。これは、焼結による拡散接合によって、金属繊維シートと薄板金属とが一体化したからであると考えられる。また、製造例1〜9から分かるように、金属繊維シートと薄板金属との熱膨張係数が同じであれば、金属繊維シートのVfさらに薄板金属の板圧によらず反りは殆ど発生しない。また、製造例1〜12、製造例18および製造例21から分かるように、金属繊維シートと薄板金属の熱膨張係数の差が1×10−6/K以下であれば、反りが殆ど発生しない。また、製造例17、製造例19および製造例22から分かるように、金属繊維シートと薄板金属の熱膨張係数の差が3×10−6/K以下であれば、反りは実用上問題のない範囲となる。また、製造例13から分かるように、薄板金属の板厚が0.2mm以下であれば、熱膨張係数の差が大きくても、反りは実用上問題のない範囲となる。また、製造例21および製造例22からは、金属繊維シートおよび薄板金属の主成分をFeおよびCrとし、Cr含有量を約10重量%、または約30重量%とした場合であっても、良好な接合状態が得られることが分かる。このことから、金属繊維シートおよび薄板金属の主成分をFeおよびCrとし、Cr含有量を10〜30重量%の範囲とすることで、良好な接合性を得られることが分かる。
2.第2の実施形態
(単位発電セルの構成)
次に第1の実施形態で説明した燃料電池用電極を利用した燃料電池の一例を説明する。図5は、燃料電池の単位発電セルの構造を示す斜視図であり、(A)は分解状態を示し、(B)は組み上げた状態を示す。
以下、組み立て手順の一例を説明する。まず、図1に示す燃料電池用電極103を2つ用意する。図5には、金属繊維シート101aと薄板金属102aとを接合した燃料電池用電極103a、および同様な構造を有し表裏を反転させた燃料電池用電極103bが示されている。燃料電池用電極103aおよび103bを用意したら、その金属繊維シート側の面に触媒を塗布し、触媒層を形成する。図5には、燃料電池用電極103aに触媒層503を形成し、燃料電池用電極103bに触媒層504を形成した状態が示されている。次に、触媒層を形成した面を向かい合わせにし、間に電解質膜502を挟み、燃料電池用電極103aと103bとをホットプレス法によって貼り合わせる。こうして単位発電セル501を得る。
単位発電セル501において、触媒層503と504とによって電解質膜502が挟まれた積層部分がMEA(Membrane Electrode Assembly)として機能する。単位発電セル501は、電極103aが酸化剤極(カソード電極)として機能し、電極103bが燃料極(アノード電極)として機能する。
上記の構成においては、触媒材料を金属繊維シートの表面に塗布し触媒層を形成することで、触媒層の金属繊維シートに対する密着性を高めることができる。金属繊維シートの表面は、金属繊維が絡んだ構造に起因して細かい凹凸を有しているので、触媒層との接触面積を大きく確保することができ、またアンカー効果により触媒層の密着性を高くすることができる。なお、電解質膜502の表裏に触媒層503および504を形成してMEAを得、このMEAを電極103aと103bの金属繊維シート面で挟む製造工程としてもよい。
(単位発電セルの動作)
以下、燃料としてメタノール水溶液、酸化剤として空気を利用して発電を行う場合の動作を説明する。図5に示す単位発電セル501の電極103b側にメタノール水溶液を供給し、電極103a側に空気を供給すると、メタノール水溶液は、金属繊維シート101bに浸透し、触媒層504に接触し、空気は、金属繊維シート101aに浸透する。触媒層504に触れたメタノールは、水素と炭酸ガスに分解され、さらに水素が水素イオン(H)と電子(e)に電離する。この内、水素イオンは、電解質膜502中および触媒層503中を移動し、金属繊維シート101aに至る。また、水素から電離した電子は、金属繊維シート101bに与えられる。この結果、金属繊維シート101aが金属繊維シート101bに対して高電位となる。
このため、電極103aの薄板金属102aと電極103bの薄板金属102bとを負荷を介して電気的に接続すると、電極103aから電極103bに向かって電流が流れる。またこの時、触媒層503において、空気中の酸素、電解質膜502を透過してきた水素イオン、さらに金属繊維シート101aに電極103b側から供給される電子が反応し、水が生成される。こうして、メタノール水溶液を燃料とした燃料電池発電が行われる。
(水平スタック構造の燃料電池)
図6は、単位発電セルを水平スタックした構造の燃料電池の断面構造を示す概念図である。図6に示す燃料電池60は、同じ構造の単位発電セル600、610および620を平面的に並べて配置し、電気的にはそれらを直列に接続した構造を有している。
まず各単位発電セルの構造を説明する。各単位発電セルは、図5に示す基本構造を有し、例えば単位発電セル600の場合でいうと、電解質膜の表裏に触媒層が接したMEA605の上側に金属繊維シートによって構成される酸化剤極601が配置され、その上には薄板金属によって構成される集電電極602が拡散接合されている。また、MEA605の下面には金属繊維シートによって構成される燃料極603が配置され、その下には、薄板金属によって構成される集電電極604が拡散接合されている。ここで、酸化剤極601が図5に示す金属繊維シート101aに相当し、集電電極602が薄板金属102aに相当し、燃料極603が図5に示す金属繊維シート101bに相当し、集電電極604が薄板金属102bに相当する。
他の単位発電セルも同様であり、単位発電セル610は、MEA615の上面に金属繊維シートによって構成される酸化剤極611が配置され、その上に薄板金属によって構成される集電電極612が拡散接合されている。また、MEA615の下面に金属繊維シートによって構成される燃料極613が配置され、その下に薄板金属によって構成される集電電極614が拡散接合されている。また、単位発電セル620は、MEA625の上面に金属繊維シートによって構成される酸化剤極621が配置され、その上に薄板金属によって構成される集電電極622が拡散接合されている。また、MEA625の下面に金属繊維シートによって構成される燃料極623が配置され、その下に薄板金属によって構成される集電電極624が拡散接合されている。
燃料電池60において、取り出し電極64が、単位発電セル600の集電電極604に接触し、単位発電セル600の集電電極602が接続電極65に接触している。接続電極65は、接続電極66を介して、単位発電セル610の集電電極614に接続されている。単位発電セル610の集電電極612は接続電極67に接触している。さらに、接続電極67は、接続電極68を介して単位発電セル620の集電電極624に接続されている。こうして、単位発電セル600、610および620の燃料極と酸化剤極とが交互に接続された直列接続構造とされている。なお、各単位発電セルの側周囲は、シール部材606、616、626によってシールされている。また符号62は、メタノール水溶液を貯める燃料容器であり、燃料容器内63にメタノール水溶液が充填される。
図6に示す燃料電池を発電させるには、燃料容器62にメタノール水溶液を充填し、酸化剤極側を空気に触れさせた状態において、図示しない負荷を介して取り出し電極64と集電電極622との間を電気的に接続する。すると、各単位発電セルによって前述した発電作用が働き、図示しない負荷を介して集電電極622から取り出し電極64に向かって電流が流れる。
この発電の際、燃料極603、613および623、さらに酸化剤極601、611および621において、面に平行な方向に電流が流れようとする。これは、水平スタック構造を採用した場合に避けることができない。例えば、図示する構造において、集電電極602、612および622を配置しない場合、酸化剤極601、611および621を構成する金属繊維シートにおけるその面に平行な方向に電流が流れることになる。この場合、金属繊維シートの面に平行な方向における電気抵抗(シート抵抗)が比較的高いので、損失が発生する。しかしながら本実施形態においては、酸化剤極601、611および621には、薄板金属によって構成される集電電極602、612および622を接合している。これら集電電極は、図1および図5に示すように、酸化剤極を構成する金属繊維シートの縁部分を覆う環状パターン201と、その内側を十字に仕切るブリッジ部202とを備えている。これら集電電極は、金属繊維シートの面に平行な方向に流れようとする電流のバイパス経路となるため、酸化剤極601、611および621において、その面に平行な方向に大きな電流は流れず、当該面に平行な方向に流れようとする電流は、主に集電電極602、612および622を流れる。このことは、燃料極側においても同様である。したがって、金属繊維シートのシート抵抗が比較的高くても、それに起因する損失を抑えることができ、燃料電池の発電効率の低下を抑えることができる。特に燃料電池の薄型化と軽量化を追及するために、金属繊維シートを薄くした場合、上述したシート抵抗の問題が顕在化するが、本発明を利用した場合、上述した理由により発電効率の低下を抑えることできる。
図6に示すような平面スタック構造の燃料電池は、全体の構造を薄型化できるので、薄型の電子機器の駆動電源に適している。例えば、携帯電話、携帯型情報処理端末、ノート型のパーソナル・コンピュータ、携帯型のオーディオ・ビジュアル機器等の電源に適している。またメタノールを燃料とする燃料電池は、燃料の入手の容易性や取り扱いの容易性からこれら機器への利用に適している。なお、本発明が適用可能な燃料電池は、燃料としてメタノールを利用したものに限定されない。
3.他の実施形態
本発明を利用した燃料電池用電極における集電電極の形状の他の例を説明する。図7は、集電電極の他のパターンの例を示す上面図である。図7(A)は、集電電極となる薄板金属のパターン形状の他の一例を示す上面図である。この例においては、矩形状の薄板金属702に円形状の孔703が複数形成されている。薄板金属702は、図示しない金属繊維シートを重ねられた状態で接合され、円形状の孔703から下層の金属繊維シートが露出する。この構成においては、周囲の縁部分が環状パターンとなり、複数の円形状の孔703の間の部分がブリッジ部となる。図7(A)に示す薄板金属702のパターンは、製造が容易であるという利点がある。
以下、図7(A)に示す薄板金属702のパターンを利用して金属繊維シートが露出する開口率の実用的な範囲を調べた結果を説明する。この実験では、孔703の大きさを変えた電極をアノードおよびカソード電極とした単位発電セルのサンプルを作製し、同一条件における発電電力の値を計測した。また、この実験においては、図6に示す平面スタック型の燃料電池への利用を想定し、電極の面方向に発電電流が流れるようにした。この実験によれば、金属繊維シートが20〜80%露出していれば、発電に問題がないことが判明した。すなわち、薄板金属の被覆面積の割合が80%〜20%であれば、燃料電池の発電能力に支障が出ないことが判明した。金属繊維シートの開口率が20%を下回った場合に発電効率が低下するのは、金属繊維シートを介しての燃料や酸化剤の供給効率が低下するためである。また、金属繊維シートの開口率が80%を超えた場合に発電効率が低下するのは、薄板金属を介した電流経路が狭くなるので、薄板金属による集電作用が小さくなり、金属繊維シートの高シート抵抗の影響が現れるからである。
図7(B)は、集電電極となる薄板金属のパターン形状の他の一例を示す上面図である。この例においては、矩形状の薄板金属705に2種類の矩形状の開口706aおよび706bが形成されている。開口706aおよび706bは、X軸方向に狭く、Y軸方向に長い長方形を有している。そして、開口706aと706bとは、その幅方向(X軸方向)における寸法が異なっている。図7(B)に示す薄板金属のパターン形状によれば、Y軸方向における電流経路をより幅広にすることができる。このため、Y軸方向に電流が流れるように電極の配置をすることで、開口706aおよび706bの開口率を確保し、且つ薄板金属705による低シート抵抗化を実現することができる。
図7(C)は、集電電極となる薄板金属のパターン形状の他の一例を示す上面図である。この例においては、矩形状の薄板金属707に6角形の開口708が規則的に設けられている。このデザインによれば、単位発電セルを構成した際に図示しないMEAに対する燃料や酸化剤の供給をより均一に行うことができる。
本発明は、燃料電池の電極、特に平面スタック構造の燃料電池の電極に利用することができる。
発明を利用した燃料電池用電極の概要を示す斜視図である。 金属繊維の製造工程を示す概念図である。 金属繊維シートの製造工程を示す概念図である。 燃料電池用電極の製造工程を示す概念図である。 燃料電池を構成する基本単位セルを示す斜視図である。 水平スタック型の燃料電池の断面構造を示す概念図である。 薄板金属の形状の他の例を示す上面図である。
101…金属繊維シート、102…薄板金属、103…燃料電池用電極、104…薄板金属に設けたれた開口部、201…環状パターン、202…ブリッジ部。

Claims (2)

  1. シート状の金属繊維ウエブを所定形状に打ち抜くウエブ打ち抜き工程と、
    金属の薄板から薄板金属パターンを打ち抜く薄板金属パターン打ち抜き工程と、
    打ち抜かれた前記金属繊維ウエブ1枚の上層または下層、または、前記金属繊維ウエブを複数枚積層するとともにその最上層または最下層に前記薄板金属パターンを積層し積層体を得る積層工程と、
    前記積層体を焼結する焼結工程と
    を備え、
    前記細線パターンは、前記金属繊維シートの周縁上に設けられた環状パターンと、
    前記環状パターンの内側を仕切るブリッジ部を備えることを特徴とする燃料電池用電極の製造方法。
  2. 前記ウエブ打ち抜き工程と前記薄板金属パターン打ち抜き工程とを一つの金型で行なうことを特徴とする請求項に記載の燃料電池用電極の製造方法。
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