JP2006294404A - 燃料電池用セパレータ - Google Patents
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Abstract
【課題】 ガスを良好に供給するとともに発電された電気を効率よく集電して、燃料電池の発電効率を向上させる燃料電池用セパレータを提供すること。
【解決手段】 燃料電池用セパレータは、コレクタ10とセパレータ本体20とから形成される。コレクタ10は、エキスパンドメタル11の貫通孔が形成された部分から形成される筋状凹部12と貫通孔が形成されていない部分から形成される筋状凸部13とを有している。そして、コレクタ10は、セパレータ本体20に対して、筋状凸部13が接触するように配置されるとともに、一体的に固着される。これにより、コレクタ10は、MEA40に対してガスを良好に供給することができる。また、コレクタ10は、セパレータ本体20との接触面積を大きく確保することにより、接触抵抗を大幅に低減することができ、発電された電気を効率よく集電することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】 燃料電池用セパレータは、コレクタ10とセパレータ本体20とから形成される。コレクタ10は、エキスパンドメタル11の貫通孔が形成された部分から形成される筋状凹部12と貫通孔が形成されていない部分から形成される筋状凸部13とを有している。そして、コレクタ10は、セパレータ本体20に対して、筋状凸部13が接触するように配置されるとともに、一体的に固着される。これにより、コレクタ10は、MEA40に対してガスを良好に供給することができる。また、コレクタ10は、セパレータ本体20との接触面積を大きく確保することにより、接触抵抗を大幅に低減することができ、発電された電気を効率よく集電することができる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、燃料電池、特に、燃料電池に採用されるセパレータに関する。
従来から、例えば、下記特許文献1に示すような燃料電池は知られている。この従来の燃料電池は、集電体に多孔質金属(ニッケル発泡体)を採用して、多孔質金属の孔から燃料ガスを供給するとともに、集電抵抗を低減するようになっている。これにより、ガス供給能が確保されるとともに、集電抵抗が低減され、発電効率の優れた燃料電池を提供するようになっている。
また、従来から、例えば、下記特許文献2に示すような燃料電池用のセパレータは知られている。この従来の燃料電池用のセパレータは、カーボンクロスから形成される導電性多孔体を備えていて、この導電性多孔体を通過してガスが電極層に供給される。そして、導電性多孔体を介して、発電された電気を集電するようになっている。これにより、ガス供給能を確保して効率よく集電するとともに、安価な燃料電池用のセパレータを提供するようになっている。
また、従来から、例えば、下記特許文献3に示すような燃料電池の構造も知られている。この燃料電池の構造におけるメタルセパレータは、アノード電極またはカソード電極を支持する集電部と、燃料ガスまたは酸化剤ガスを各電極に供給するための流路を形成する集電部サポートとを備える構造となっている。また、メタルセパレータの集電部と電極との間には、多数の貫通孔が形成されるとともにその表面に多数の凹凸形状を有するエキスパンドメタルが設けられている。そして、このエキスパンドメタルの厚み(凹凸寸法)を適宜調整することにより、燃料電池のアノード電極またはカソード電極とエキスパンドメタルとの接触を良好に確保することができ、発電された電気の損失を低減するようになっている。
さらに、従来から、例えば、下記特許文献4に示すような燃料電池のセパレータも知られている。この燃料電池のセパレータは、平板状の第1部材(カーボン)と、この第1部材に積層され、燃料電池の電極層に弾性的に接触するとともにガス流路を形成する複数の突片を有する第2部材(金属板)とから構成されている。そして、第2部材の複数の突片によって形成されたガス流路は、突片の周囲や内側に存在する空間とされていて、流入したガスがあらゆる方向に立体的に連通するようになっている。これにより、電極層に対して、ガス流路を流れるガスを良好に拡散させることができ、反応効率を高めることにより、燃料電池の発電効率を向上するようになっている。
特開平6−223836号公報
特開2003−203645号公報
特開平8−138701号公報
特開2002−184422号公報
一般的に、燃料電池の発電効率を向上させるためには、電極反応効率および集電効率を向上させることが重要である。このため、燃料電池に採用されるセパレータに要求される機能として、燃料電池に導入される燃料ガスと酸化剤ガスとを電極層に効率よく供給する機能と、電極反応により発電された電気を効率よく集電する機能が要求される。
ところで、上記特許文献1および特許文献2に示された従来の燃料電池および燃料電池用のセパレータにおいては、発電された電気を効率よく集電する機能については満足するものの、ガス導入に伴う抵抗(圧力損失)が大きく、ガスを充分に電極層に供給できない場合がある。このため、燃料電池の発電効率が低下する可能性がある。また、上記特許文献3に示された従来の燃料電池の構造においては、エキスパンドメタルと電極との接触が良好に確保されるため、発電された電気を効率よく集電する機能は満足する。しかし、気体不透過性の集電部サポートによって燃料ガスまたは酸化剤ガスが電極に供給される。このため、各電極に対して十分な燃料ガスまたは酸化剤ガスを供給できず、言い換えると、ガス拡散性が不均一となり、ガスを効率よく供給する機能を満足しない場合がある。
一方、上記特許文献4に示された従来の燃料電池のセパレータにおいては、ガスを効率よく供給する機能については満足するものの、電極層と接触する部位が突片の頂面付近となることから電気の集電抵抗が増大して集電効率が低下する場合がある。また、薄板の金属板に突片を成形する際には、成形上の制約、例えば、成形可能な突片の高さ制約などによって、燃料電池に要求される発電効率を確保できない場合がある。
このような燃料電池用セパレータに対する要求を満たすために、例えば、多数の貫通孔が網目状に形成されたエキスパンドメタルにガス流路を成形してガス流路を形成すれば、各電極層との接触を良好に確保しつつ、エキスパンドメタルの貫通孔をガスが通過することにより電極層に対するガス拡散性を良好に確保することができる。したがって、燃料電池用セパレータに要求される機能すなわちガスを効率よく供給する機能および発電された電気を効率よく集電する機能を両立できると考えられる。
ところで、例えば、エキスパンドメタルを用いてガスを効率よく供給する場合には、ガスの混流を防止する金属板(セパレータ本体)が設けられ、エキスパンドメタルによって効率よく集電された電気が金属板(セパレータ本体)を介して外部に出力される場合がある。しかしながら、エキスパンドメタルは、一般的に、網目状の多数の貫通孔が一様に形成されているために、金属板(セパレータ本体)との接触部位における接触面積が小さくなり、その結果、接触部位の接触抵抗が増加する可能性がある。したがって、発電された電気を効率よく集電する機能が損なわれる場合がある。また、エキスパンドメタルを用いてガス流路を形成した場合には、機械的強度を確保することが難しく、例えば、燃料電池の組み立て時に付与される締結力(積層荷重)によってエキスパンドメタルが変形し、その結果、ガスを効率よく供給する機能が損なわれる場合がある。さらに、燃料電池が固体高分子型の燃料電池である場合には、一般的に、冷却水を金属板(セパレータ本体)に接触させながら導通させることにより、電極反応によって発生した反応熱を冷却することが行われる。しかし、上述したように、エキスパンドメタルを用いてガス流路を形成した場合には、金属板(セパレータ本体)との接触面積が小さく、効率よく冷却できない場合がある。
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ガスを良好に供給するとともに発電された電気を効率よく集電して、燃料電池の発電効率を向上させる燃料電池用セパレータを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、燃料電池の電極構造体を構成する電極層に対して、燃料ガスと酸化剤ガスとをそれぞれ供給するガス流路を形成する燃料電池用セパレータにおいて、導電性を有する素材から成形されて、前記燃料ガスと酸化剤ガスとを分離して混流を防止する平板状のセパレータ本体と、多数の貫通孔が形成された素材に対して筋状の凹部と筋状の凸部を連続的に成形することにより、前記電極層に接触する第1面と前記セパレータ本体に接触する第2面とを有して、前記燃料ガスまたは酸化剤ガスを前記電極層に供給するためのガス流路を形成するとともに、前記電極層の電極反応によって発電された電気を集電するコレクタとを備え、前記コレクタの第2面の成形面積に対する貫通孔の面積の開口比が前記第1面の成形面積に対する貫通孔の面積の開口比よりも小さいことにある。
この場合、前記コレクタの第1面と前記第2面とを互いに連結する第3面の成形面積に対する貫通孔の面積の開口比は、前記第1面の開口比よりも小さいとよい。また、前記多数の貫通孔が形成された素材は、部分的に貫通孔が形成されるものであり、前記コレクタの第2面は、前記素材のうちの貫通孔が形成されていない部分から形成されていて、前記開口比が、例えば、略「0」であるとよい。また、前記多数の貫通孔が形成された素材は、金属製の薄板に対して網目状の多数の貫通孔が選択的に成形されるとともに、同選択的に成形された多数の貫通孔の孔径が選択的に変更されて形成されるエキスパンドメタルであるとよい。また、前記コレクタの第2面は、前記セパレータ本体に対して一体的に固着されとよい。そして、これらの場合には、前記連続的に成形された筋状の凹部と筋状の凸部の成形方向断面における前記第1面の成形幅は、同成形方向断面における第2面の成形幅に比して大きいとよい。
これらによれば、燃料電池用セパレータは、セパレータ本体と多数の貫通孔を有するコレクタとから構成される。これにより、外部から導入されたガスは、コレクタの貫通孔を通過することにより、電極層に均一に接触する、言い換えれば、ガス濃度勾配を均一とすることができる。したがって、電極層の電極反応領域を大幅に向上させることができ、燃料電池の発電効率を大幅に向上させることができる。
また、コレクタに対して、連続的に筋状の凹部および筋状の凸部を成形して、ガス流路を形成することにより、ガスの導通に伴う抵抗すなわち圧力損失を大幅に低減することができる。このため、ガスをスムーズに導通させることができて、ガスと電極層との反応を促進することができる。したがって、これによっても、燃料電池の発電効率を大幅に向上することができる。一方で、圧力損失を大幅に低減することにより、ガスが導通する部分の開口面積を小さくすることもできる。これにより、燃料電池をコンパクトにすることもできる。
また、電極層に接触する第1面とセパレータ本体に接触する第2面とを連結する第3面、具体的に言い換えれば、コレクタの筋状の凹部と筋状の凸部を形成する立壁面の開口比を、第1面の開口比を小さくすることができる。ここで、燃料電池は、電極層と燃料電池用セパレータとを多数積層するとともに、所定の積層荷重が付与されて組み立てられる。このとき、例えば、コレクタの第3面の開口比が大きい場合には、その機械的強度が不足し、コレクタ自体が変形する可能性がある。これに対して、本発明に係る燃料電池用セパレータおいては、コレクタの第3面の開口比を小さくすることができるため、第3面の機械的強度を向上させることができ、第3面すなわちコレクタ自体の変形を効果的に抑制することができる。したがって、形成されたガス流路を確実に確保することができ、これによっても、ガスを供給する機能を満足することができる。
また、セパレータ本体に接触する第2面の開口比を電極層に接触する第1面の開口比よりも小さく、より好ましくは、第2面の開口比を略「0」とすることができる。そして、第2面をセパレータ本体に対して固着することもできる。これにより、セパレータ本体とコレクタとの接触状態を良好に維持することができ、セパレータ本体とコレクタ間の接触抵抗を大幅に低減できる。したがって、効率よく発電された電気を集電することができる。また、燃料電池に冷却水路が形成されている場合には、セパレータ本体とコレクタ間の接触面積が大きいため、電極反応により発生した反応熱を効率よく冷却することもできる。さらに、セパレータ本体とコレクタを一体的に固設することにより、燃料電池の組み立てを容易とすることができる。
また、燃料電池においては、その発電作動に伴って、導電性を有しない酸化物がセパレータ本体とコレクタとの接触部位、より詳しくは、セパレータ本体とコレクタとの間の僅かな隙間に析出する場合がある。このように、酸化物が析出すると、セパレータ本体とコレクタとの間の接触抵抗が増大するため、効率よく発電された電気を集電できない場合がある。これに対し、セパレータ本体とコレクタとの接触面積を大きくして固着することにより、前記僅かな隙間が存在しないため、前記接触抵抗が増大せず、したがって、燃料電池の発電効率を良好に維持することができる。
また、コレクタの第1面の成形幅を第2面の成形幅よりも大きくすることができる。したがって、コレクタと電極層との接触面積が大きくすることができる。また、コレクタの第1面が多数の小径の貫通孔を有することにより、単位体積当たりの表面積すなわち電極層との接触面積を大きくすることができる。このため、コレクタと電極層との間に生じる集電抵抗を極めて小さくすることができ、電極層の電極反応によって発電された電気の集電効率を大幅に向上させることができる。
さらに、コレクタを、多数の小径の貫通孔が網目状に選択的に形成されたエキスパンドメタルから形成することができる。このエキスパンドメタルは、平板状の金属製の薄板に対して、順次千鳥配置の切れ目を加工するとともに加工した切れ目を押し延ばすことによって、網目状の所定の小径の貫通孔が選択的に形成されるものである。このため、例えば、打ち抜き加工によって形成される他の材料(例えば、パンチングメタルなど)に比して、歩留まり性が極めて良好であり、製造コストを低減することができる。したがって、このエキスパンドメタルからコレクタを形成することにより、燃料電池の製造コストを低減することができる。
また、本発明の他の特徴は、前記コレクタが、その幅方向の寸法が前記セパレータ本体の幅方向の寸法と略同一の寸法に形成されるとともに前記ガス流路を前記セパレータ本体の前記幅方向に形成しており、前記燃料ガスまたは酸化剤ガスの一方を前記セパレータ本体の前記幅方向から前記電極層に対して供給することにもある。これによれば、燃料ガスまたは酸化剤ガスの一方を電極層へ供給するコレクタが、セパレータ本体の幅方向の寸法と略同一の幅方向の寸法とされるため、燃料電池の外部と連通した状態で燃料電池を構成することができる。これにより、外部と連通したコレクタが酸化剤ガスとして例えば空気を電極層に供給する場合には、同コレクタは、燃料電池の側面から直接空気を導入することができ、また未反応の空気を直接外部に排出することができる。このため、燃料電池内に別途空気をコレクタまで供給するためのインナーマニホールドやコレクタから未反応の空気を排出すためのインナーマニホールドを設ける必要がなく、燃料電池を小型化することが可能となる。
以下、図面を用いて本発明の第1実施形態を詳細に説明する。図1は、燃料電池に利用されて、同燃料電池のセパレータを構成するコレクタ10を示している。このコレクタ10は、燃料電池を構成する電極層(アノード電極層およびカソード電極層)に外部から供給される燃料ガスおよび酸化剤ガス(以下、まとめて単にガスともいう)を供給する機能と、これら電極層の電極反応によって発電された電気を集電する機能とを有するものである。このため、コレクタ10の形状としては、外部から供給されたガスを各電極層に効率よく供給することに加え、発電された電気を効率よく集電する形状が要求される。すなわち、外部から供給されたガスを各電極層に効率よく供給するためには、導通するガスの圧力損失を低減する形状であることが要求される。一方、発電された電気を効率よく集電するためには、各電極層との接触面積を大きくし集電抵抗を低減する形状であることが要求される。
したがって、コレクタ10は、図1に示すように、多数の網目状の貫通孔が形成された素材としてのエキスパンドメタル11に対して、導通ガスの圧力損失を低減するための多数の筋状凹部12および筋状凸部13が成形されている。また、集電抵抗を低減するために、筋状凹部12の成形幅に比して筋状凸部13の成形幅が大きくなるように成形されている。以下、このコレクタ10について詳細に説明する。
エキスパンドメタル11は、板厚が0.1mm〜0.2mm程度のスレンレス板(例えば、フェライト系ステンレスなど)から形成されるものである。このエキスパンドメタル11は、図2に一部を拡大して示すように、孔径が0.1mm〜1mm程度とされた多数の小径の貫通孔が網目状に形成されている部分(以下、貫通孔成形部分11aという)と貫通孔が形成されていない部分(以下、貫通孔非成形部分11bという)とを有している。そして、貫通孔成形部分11aは、網目状の貫通孔を形成している部分(以下、この部分をストランドという)がボンド部11cによって順次連結されており、その断面形状が平板状とされている。
このエキスパンドメタル11は、例えば、以下に説明するエキスパンドメタル成形工程を経て製造される。エキスパンドメタル成形工程は、まず、図3(a)に概略的に示すランスカットメタル加工装置Rを用いて、ステンレス板Sに対して、選択的に多数の網目状の貫通孔を成形する。ランスカットメタル加工装置Rは、ステンレス板Sを供給するための送りローラORと、ステンレス板Sを順次せん断加工して網目状の貫通孔を成形する刃型Hとを備えている。なお、ステンレス板Sは、所定の長さに予め切断された板材であってもよいし、コイル状に巻き取られたコイル材であってもよい。刃型Hは、図3(b)に示すように、上下動可能な上刃UHと固設された下刃SHとから構成される。そして、上刃UHおよび下刃SHは、ステンレス板Sに対してせん断加工により千鳥配置に切れ目を形成するために、複数の山谷形状とされた刃を備えている。
このように構成されたランスカットメタル加工装置Rは、まず、図2における貫通孔成形部11aを成形するために、送りローラORがステンレス板Sを所定の加工ピッチだけ刃型Hに送る。刃型Hの上刃UHは、送りローラORによってステンレス板Sが供給されると、下刃SH方向へ降下し、下刃SHとともにその山形状の部分によってステンレス板Sの一部をせん断して千鳥配置の切れ目を加工する。さらに続けて、上刃UHは最下点位置まで降下し、同上刃UHの刃と接触しているステンレス板Sを下方に曲げ伸ばし加工する。この曲げ伸ばし加工において、上刃UHは、ステンレス板Sに板厚以上に降下して最下点位置に到達する。これにより、ストランドが形成されて、小径の貫通孔が成形される。そして、上刃UHは、最下点位置に到達後に上方の原位置まで復帰する。この状態から、再び、送りローラORが加工ピッチだけステンレス板Sを刃型Hに送ると、上刃UHが降下し、切れ目加工および曲げ伸ばし加工が順次施される。
このように、ランスカットメタル加工装置Rが繰り返し動作することによって、ステンレス板Sに多数の網目状の貫通孔が形成されたランスカットメタルが形成される。ここで、上刃UHと下刃SHに谷部分を設けることにより、上刃UHの降下に伴ってステンレス板Sに切れ目が加工されない部分を形成することができる。この切れ目が加工されない部分を有することにより、製造されるランスカットメタルは、図3(a)に示すように、その断面形状が段形状として成形される。
続いて、ランスカットメタル加工装置Rは、図2における貫通孔非成形部分11bを成形するために、送りローラORがステンレス板Sを貫通孔非成形部分11bの成形寸法分だけ刃型Hに送る。このように、貫通孔非成形部分11bの成形寸法分だけスレンレス板Sを刃型Hに送って、貫通孔非成形部分11bを成形することにより、部分的に形成された貫通孔を有するランスカットメタルの成形が極めて容易であるとともに、成形速度を大きくすることができる。そして、ランスカットメタル加工装置Rは、上述したように、再び、貫通孔成形部11aを成形するために、送りローラORがステンレス板Sを所定の加工ピッチだけ刃型Hに送る。これにより、ランスカットメタル加工装置Rは、ステンレス板Sに対して、選択的に多数の貫通孔を網目状に形成する。
次に、製造されたランスカットメタルを圧延することにより、エキスパンドメタル11を製造する。以下、この圧延工程を説明する。圧延工程は、図4に概略的に示す圧延成形機Aを用いて、上記のように製造されたランスカットメタルを圧延する。圧延成形機Aは、上下一対の圧延ローラARを備えていて、供給されたランスカットメタルを連続的に圧延する。これにより、ランスカットメタルの段形状部分すなわちボンド部11cが圧延ローラARによって圧延されて(引き伸ばされて)、貫通孔成形部分11aと貫通孔非成形部分11bとを有するエキスパンドメタル11が製造される。このように、ステンレス板Sに対し、貫通孔成形部分11aと貫通孔非成形部分11bとを選択的に成形してエキスパンドメタル11を製造することができるため、例えば、部分的に孔径を異ならせた(変化させた)貫通孔の成形されたエキスパンドメタルを製造する場合に比して、極めて容易にエキスパンドメタル11を製造することができる。なお、エキスパンドメタル11の製造に関しては、上述した方法に限定されることなく、他の製造方法によって製造可能であることはいうまでもない。
次に、上述したように製造されたエキスパンドメタル11に対して、多数の筋状凹部12および筋状凸部13を成形して、コレクタ10を最終的に製造する筋状凹凸成形工程について詳細に説明する。ここで、この筋状凹凸成形工程においては、エキスパンドメタル11の貫通孔成形部分11aに対して筋状凹部12が形成され、貫通孔非成形部分11bに対して筋状凸部13が形成される。
図5(a)〜(c)は、エキスパンドメタル11に筋状の凹凸部を成形する筋状凹凸部成形工程を概略的に示している。この筋状凹凸部成形工程は、エキスパンドメタル11の幅方向(図5において紙面垂直方向)全体に対して、幅広の筋状凹部12を成形するための凹部および幅狭の筋状凸部13を成形するための凸部が形成された下型SGと、上下動可能とされて下型SGに形成された凹部に進入してエキスパンドメタル11に筋状凹部12および筋状凸部13を成形するパンチPと、同パンチPの成形中においてエキスパンドメタル11を固定する先行パッドSPとを備える筋状凹凸部成形機を利用する。
筋状凹凸部成形工程は、まず、図5(a)に示すように、前回の成形サイクルにより成形された筋状凹部12および筋状凸部13を一段送り、下型SG上に載置する。続いて、図5(b)に示すように、先行パッドSPを、前回の成形サイクルにより成形した筋状凹部12方向に下降させて、エキスパンドメタル11を下型SGとともに狭持して固定する。このように、エキスパンドメタル11を固定した状態で、図5(c)に示すように、パンチPを、下型SGに形成された凹部方向に、エキスパンドメタル11(詳しくは、貫通孔成形部分11a)とともに下降させることによって、エキスパンドメタル11に筋状凹部12および筋状凸部13が成形される。これにより、エキスパンドメタル11の貫通孔成形部分11aに筋状凹部12が成形され、貫通孔非成形部分11bに筋状凸部13が成形される。ここで、筋状凸部13は、その成形面積に対する貫通孔の面積の開口比が略「0」とされている。
このように、図5(a)〜(c)によって概略的に示される成形サイクルを繰り返すことにより、エキスパンドメタル11に筋状凹部12および筋状凸部13を連続的に成形することができる。なお、図5(c)に示す工程において、矢印で示す方向にエキスパンドメタル11を送ることによって、筋状凹部12および筋状凸部13の成形に際して、例えば、エキスパンドメタル11の割れや破れを効果的に防止することができる。また、略平板状としたエキスパンドメタル11に筋状凹部12および筋状凸部13を成形することにより、筋状凹部12および筋状凸部13を正確に成形することができる。そして、上記した筋状凹凸部成形工程によって筋状凹部12および筋状凸部13が連続的に成形されたエキスパンドメタル11は、所定長さおよび所定幅となるように、詳しくは、後述するMEA40のアノード電極層AEまたはカソード電極層CEの大きさと略同一の大きさの正方形となるように切断されて、コレクタ10が形成される。
このように製造されたコレクタ10は、固体高分子型燃料電池を構成するセパレータとして用いられる。以下、コレクタ10を採用した固体高分子型燃料電池について説明する。固体高分子型燃料電池は、一般的に、単セルが多数積層された燃料電池スタックから形成される。そして、この第1実施形態に係る単セルは、図6にその構成を示すように、上述したコレクタ10およびセパレータ本体20から構成されるセパレータを上下に配し、同セパレータ間に2枚の樹脂フレーム30およびMEA40(Membrane−Electrode Assembly:膜−電極アッセンブリ)を備えて構成される。このように構成された単セルに対して、例えば水素ガスなどの燃料ガスと、例えば空気などの酸化剤ガスとが燃料電池スタックの外部から導入されることにより、MEA40での電極反応によって電気が発電される。ここで、以下の説明においては、燃料ガスと酸化剤ガスとをまとめて単にガスともいう。なお、酸化剤ガスには、MEA40による電極反応に伴って発生する反応熱を冷却するとともにMEA40が適度な水分を有するように水のミストが含まれる場合がある。
セパレータ本体20は、図6に示すように、略正方形の平板状に形成されて、燃料電池スタック内に導入されたガスの混流を防ぐものである。そして、セパレータ本体20は、薄肉金属板(例えば、板厚が0.1mm程度のステンレス板など)から形成されている。なお、薄肉金属板としては、他に、例えば、金めっきなどの防食処理を施した鋼板などを採用することができる。また、薄肉金属板から形成されるセパレータ本体20に代えて、平板状のカーボンなど導電性を有する他の材料からセパレータ本体20を形成することもできる。
また、セパレータ本体20の周縁部分には、ガス導入口21と、同ガス導入口21と対向する位置にガス導出口22が2対形成されている。ここで、各対は、互いに略直交するように形成されている。ガス導入口21は、略長楕円状の貫通孔に形成されていて、燃料電池スタックの外部から供給された燃料ガスまたは酸化剤ガスを単セル内に導入するとともに、積層された他の単セルに対して、供給された燃料ガスまたは酸化剤ガスを流通する。ガス導出口22も、略長楕円状の貫通孔に形成されていて、単セル内にガス導入口21から導入されたガスのうちMEA40にて未反応のガスを外部に排出するとともに、積層された他の単セルからの未反応のガスを流通する。
ここで、コレクタ10は、セパレータ本体20に対して一体的に固着される。このコレクタ10の固設について、以下に説明する。コレクタ10は、図7に示すように、セパレータ本体20に対して、筋状凸部13が接触するように配置される。そして、筋状凸部13とセパレータ本体20の接触部分は、例えば、ロー付け工法により、一体的に固着される。具体的に説明すると、まず、コレクタ10の筋状凸部13に対して、例えば、銅やニッケルなどのペースト状のロー材を塗布する。そして、ロー材を塗布したコレクタ10をセパレータ本体20の所定位置に仮止めする。次に、還元ガス雰囲気中にて、仮止めしたコレクタ10とセパレータ本体20とを所定温度で所定時間だけ加熱し、その後冷却する。これにより、図7に示すように、ロー材に含まれる金属の融解および凝固によって、筋状凸部13の周囲に接合部分が形成され、コレクタ10とセパレータ本体20とが一体的に固着される。なお、コレクタ10とセパレータ本体20とを一体的に固着する工法については、上述したロー付け工法に限定されるものではない。したがって、例えば、溶接工法や拡散接合工法などを採用することができる。
樹脂フレーム30は、図6に示すように、同一の構造とされた2枚一対の樹脂板から形成されていて、2枚のセパレータ本体20にそれぞれの一面側が固着される。そして、樹脂フレーム30は、セパレータ本体20の外形寸法と略同一の外形寸法とされるとともに、コレクタ10の筋状凹部12および筋状凸部13の成形高さよりも僅かに小さい板厚とされている。ここで、2枚の樹脂フレーム30は、一の樹脂フレーム30に対して、他の樹脂フレーム30が同一平面方向にて略90°回転した状態で配置されて積層される。なお、樹脂フレーム30を形成する樹脂板は、種々の樹脂材料を採用することができ、好ましくは、ポリカーボネートやガラスエポキシ樹脂などを採用するとよい。
また、樹脂フレーム30には、その周縁部分にて、単セルを構成した状態でセパレータ本体20に形成されたガス導入口21およびガス導出口22の各貫通孔に対応する位置に同各貫通孔の形状と略同一の形状の貫通孔31および貫通孔32が形成されている。さらに、樹脂フレーム30には、その略中央部分にて、コレクタ10を収容する収容孔33が形成されている。この収容孔33は、固着されるセパレータ本体20に形成された一対のガス導入口21およびガス導出口22と、積層される他の樹脂フレーム30に形成された貫通孔31および貫通孔32とを収容するように形成されている。ここで、樹脂フレーム30の貫通孔31,32および収容孔33は、板厚管理された樹脂板に対して、例えば、打ち抜き成形を施すことにより形成される。なお、樹脂フレーム30は、貫通孔31,32および収容孔33を有するように、例えば、射出成形によって成形可能であることはいうまでもない。
このように、収容孔33を形成することにより、固着されるセパレータ本体20の下面(または上面)、収容孔33の内周面およびMEA40の上面(または下面)によって空間(以下、この空間をガス導通空間という)が形成される。そして、ガス導通空間に対して、例えば、燃料ガスを一方のガス導入口21から、また、酸化剤ガスを他方のガス導入口21および貫通孔31から導入することができる。また、ガス導通空間を通過した未反応のガスは、一方のガス導出口22を介して、また、他方のガス導出口22および貫通孔32を介して外部に導出することができる。
電極構造体としてのMEA40は、図6に示すように、電解質膜EFを備えている。電解質膜EFは、樹脂フレーム30を積層した際に形成される略正方形の開口部分に比して大きく、かつ、樹脂フレーム30を積層した状態で貫通孔31,32を塞がない大きさに成形されている。このように、電解質膜EFを成形することにより、ガス導通空間に導入されたガスが他側に形成されたガス導通空間に漏れることを防止することができる。そして、電解質膜EF上には、図7に詳細に示すように、燃料ガスが導入されるガス導通空間側に配置されるアノード電極層AEと、酸化剤ガスが導入されるガス導通空間側に配置されるカソード電極層CEとが、所定の触媒を層状に積層することにより形成される。このように、電解質膜EF上に形成されるアノード電極層AEおよびカソード電極層CEは、その大きさが樹脂フレーム30を積層した際に形成される略正方形の開口部分に比して僅かに小さい外形寸法とされている。なお、MEA40における電極反応については、本発明に直接関係しないため、その詳細な説明を省略する。
また、MEA40のアノード電極層AEおよびカソード電極層CEのそれぞれの表面側は、導電性を有した繊維としてのカーボンクロスCCで覆われる。このカーボンクロスCCは、アノード電極層AEまたはカソード電極層CEとコレクタ10との接触面積を大きく確保するとともに、単セルを構成した際の各構成部品の寸法誤差を吸収するものである。なお、MEA40は、このカーボンクロスCCを省略して構成することも可能である。
そして、2枚のセパレータ本体20間に、コレクタ10、樹脂フレーム30およびMEA40を積層することによって単セルが構成される。具体的に説明すると、互いに同一平面内にて略90°回転して配置される樹脂フレーム30間にMEA40を挟持し、例えば、接着剤などを塗布することにより、樹脂フレーム30間にMEA40の電解質膜EFを一体的に固着する。このように一体的に固着された樹脂フレーム30およびMEA40に対して、コレクタ10が一体的に固設された2枚のセパレータ本体20を、例えば、接着剤などを塗布することにより、一体的に固着する。
このとき、コレクタ10は、図7に示すように、成形幅が幅広の筋状凹部12とMEA40(詳しくは、カーボンクロスCC)とが接触するように配置される。また、樹脂フレーム30の板厚が筋状凹部12および筋状凸部13の成形高さよりも僅かに小さい寸法とされているため、筋状凹部12がセパレータ本体20によってMEA40側に若干押圧された状態で固着される。これにより、コレクタ10とMEA40との接触状態を良好に保つことができる。そして、このように形成された単セルは、多数積層された後、例えば、図示しないボルトとナットによって所定の締結力(積層荷重)で固定されることによって、燃料電池スタックを構成する。
このように構成された燃料電池スタックを有する固体高分子型燃料電池においては、上述した各工程を経て製造されたコレクタ10によって、MEA40のアノード電極層AEおよびカソード電極層CEに燃料ガスおよび酸化剤ガスを効率よく供給することができる。具体的に説明すると、コレクタ10は、薄肉のエキスパンドメタル11に筋状凹部12および筋状凸部13が形成されて構成されている。このため、外部からガス導入口21を介してガス導通空間内に導入されたガスは、筋状凹部12または筋状凸部13を導通することにより、圧力損失を大幅に低減することができる。したがって、ガス導通空間内を導通するガスは、スムーズに導通することができるため、ガスと電極層との反応を促進することができ、燃料電池の発電効率を向上させることができる。
また、コレクタ10は、セパレータ本体20と接触する筋状凸部13の頂面(または底面)を除いて多数の貫通孔が形成されている。このため、ガス導通空間内に導入されたガスは、ガス導通空間内全体に均一に広がることができる。したがって、ガス導通空間内のガス濃度勾配が均一化され、電極層の電極反応領域は、形成したアノード電極層AEおよびカソード電極層CEの全面となる。すなわち、ガス導通空間内に導入されたガスは、コレクタ10の筋状凹部12に形成された貫通孔を介して、電極層に供給される。この結果、有効な電極反応領域が増大することにより、アノード電極層AEおよびカソード電極層CEは、供給された燃料ガスまたは酸化剤ガスと効率よく電極反応することができ、電極反応効率を大幅に向上させることができる。したがって、燃料電池は、効率よく電気を発電することができる。
そして、MEA40によって効率よく発電された電気は、コレクタ10によって集電される。このとき、コレクタ10が、MEA40(詳しくは、カーボンクロスCC)に対して、筋状凹部12にて接触するように単セルが構成されている。これにより、MEA40との接触面積が大きくなる。また、筋状凹部12に多数の小径の貫通孔が形成されていることによっても、MEA40との接触面積が大きくなる。このように、MEA40との接触面積を大きくすることにより、電気を集電する際の抵抗(集電抵抗)を極めて小さくすることができ、発電された電気を効率よくすなわち集電効率を大幅に向上させて集電することができる。
このように、コレクタ10によって集電された電気は、セパレータ本体20を介して、外部に出力される。このとき、コレクタ10は、セパレータ本体20に対して、貫通孔が形成されていない筋状凸部13にて一体的に固着されている。これにより、セパレータ本体20との接触面積を大きくすることができるとともに、コレクタ10とセパレータ本体20間の接触抵抗を低下させることができる。したがって、効率よく発電された電気を外部に出力することができる。
また、燃料電池においては、発電に伴って、導電性を有しない酸化物がガス導通空間内に析出する場合がある。この酸化物が、特に、コレクタ10とセパレータ本体20との接触部分における隙間に析出すると、接触抵抗が増大し、燃料電池の発電効率が低下する可能性がある。これに対し、コレクタ10は、セパレータ本体20に対して、一体的に固着されるため、接触部分における隙間が存在せず、コレクタ10とセパレータ本体20との接触抵抗の増大を防止することができる。したがって、燃料電池の発電効率を良好に維持することもできる。
また、固体高分子型燃料電池においては、図8に示すように、セパレータ本体20の背面側に冷却水路50を設けて、MEA40の電極反応に伴う発熱を冷却する場合がある。この場合には、コレクタ10の筋状凸部13とセパレータ本体20とが一体的に固着されていることにより、効果的にMEA40を冷却することができる。すなわち、冷却水路50に冷却水を循環させると、セパレータ本体20が優先的に冷却される。このとき、セパレータ本体20とコレクタ10との接触部分における接触面積が大きいため、筋状凸部13も冷却される。これにより、MEA40に発生した熱が、コレクタ10の筋状凹部12を介して、筋状凸部13に伝熱しやすくなり、その結果、MEA40の発熱を効果的に冷却することができる。したがって、MEA40の発熱による電極反応効率の低下を防止することができるため、燃料電池の発電効率を良好に維持することができる。
上記第1実施形態においては、単セルに燃料ガスと酸化剤ガスとをそれぞれ導入するためのガス導入口21およびMEA40にて未反応のガスをそれぞれ導出するためのガス導出口22とを形成して、燃料電池スタック内にそれぞれのガスのインナーマニホールドを形成するように実施した。この場合、燃料電池スタックに供給される酸化剤ガスが空気であり、特に、空気を直接単セルのカソード電極層CE側に導入可能に燃料電池を設置する場合には、酸化剤ガスのガス供給インナーマニホールドおよびガス排出インナーマニホールドを省略することが可能である。以下、この第2実施形態について詳細に説明する。
この第2実施形態においては、燃料電池用セパレータが、図9に示すように構成される。そして、第2実施形態における単セルは、図10に示すように、2つのセパレータ間にMEA140を狭持することによって構成される。さらに、単セルを多数積層することによって、燃料電池スタックが形成される。
この第2実施形態に係るセパレータは、上述した第1実施形態と同様に構成されたコレクタ110と、導入されたガスの混流を防ぐセパレータ本体120とを備えている。セパレータ本体120は、薄肉金属板(例えば、板厚が0.1mm程度のステンレス板など)から形成されており、その略中央部分には、所定深さ(例えば、0.5mm程度)の略長方形とされた窪み部123が形成されている。なお、薄肉金属板としては、他に、例えば、金めっきなどの防錆処理を施した鋼板などを採用することができる。
そして、窪み部123内には、上述した第1実施形態と同様のガス導入口121と、同ガス導入口121と対向する位置にガス導出口122とが一対形成されている。ガス導入口121は、略長楕円とされた貫通孔であり、例えば、燃料電池スタックに燃料ガスを供給するための図示しない燃料ガス供給装置から供給された燃料ガス(水素ガスなど)を窪み部123内に導入するとともに、積層された他のセパレータに対して燃料ガスを流通する。ガス導出口122も、略長楕円とされた貫通孔であり、窪み部123内を導通した未反応の燃料ガスを窪み部123外に導出するとともに、積層された他のセパレータからの未反応の燃料ガスを外部に流通する。
次に、第2実施形態に係る単セルの構成について具体的に説明する。第2実施形態においては、コレクタ110が、図9に示すように、セパレータ本体120の窪み部123に収容される。そして、コレクタ110は、ガス導入口121から導入された燃料ガスがガス導出口122方向へ導通可能となるように、すなわち、ガス導入口121とガス導出口122の配置方向に対して筋状凹部113および筋状凸部114が略平行となるように収容されて固着される。一方、窪み部123の裏面側(空気導入側)に配置されるコレクタ110は、その幅がセパレータ本体120の幅と略同一とされるとともに、燃料電池スタックの側面方向から空気を導通可能となるように、言い換えると、窪み部123に収容されるコレクタ110の筋状凹部113および筋状凸部114と略直交するように配置されて固着される。そして、コレクタ110は、窪み部123に収容される際、または、窪み部123の裏面側に配置される際には、セパレータ間に配置されるMEA140のアノード電極層AEまたはカソード電極層CEに対して、筋状凹部113が接触するように収容または配置される。
また、単セルは、フレーム130と2個一対のスペーサ134を備えている。フレーム130は、セパレータ本体120にその一側にて固着されるものである。このフレーム113は、セパレータ本体120の外形寸法と略同一の外形寸法とされるとともに、窪み部123の所定深さと略同一の板厚とされた薄肉の樹脂板から成形されている。そして、フレーム130の略中央部分には、窪み部123の外形と相似形であり、窪み部123の外形寸法に比して僅かに大きい収容孔133が形成されている。そして、フレーム130がセパレータ本体120の窪み部123を収容して固着することにより、セパレータ本体120が略平板状に形成される。
スペーサ134は、セパレータ本体120およびフレーム130にその一側にて固着されて、酸化剤ガスとしての空気を導通するための空間を形成するとともに、他のセパレータを介して供給される燃料ガスをシールものである。このスペーサ134は、その長手方向寸法がセパレータ本体120の幅寸法と略同一で所定の幅寸法とされるとともに、コレクタ110の筋状凹部113および筋状凸部114の成形高さに比して、僅かに小さい板厚とされた薄肉の樹脂板から成形されている。そして、スペーサ134の略中央部分には、セパレータ本体120のガス導入口121およびガス導出口122の各貫通孔の形状と略同一の形状とされた貫通孔134aが形成されている。
ここで、フレーム130の収容孔133およびスペーサ134の貫通孔134aは、板厚管理された樹脂板に対して、例えば、打ち抜き成形を施すことにより形成される。なお、フレーム130およびスペーサ134は、収容孔133および貫通孔134aを有するように、例えば、射出成形によって成形可能であることはいうまでもない。
さらに、セパレータは、積層される他のセパレータとの間のシール性を確保するために4枚2対のバックアッププレート160を備えている。バックアッププレート160は、薄肉の樹脂板から成形されており、コレクタ110にその一側にて固着されるとともに、セパレータ本体120またはスペーサ134に固定される。そして、セパレータがMEA140とともに単セルを形成した際には、コレクタ110とMEA140との間に狭持されることにより、シール性を確保するようになっている。
そして、図10に示すように、単セルが形成される。ここで、MEA140は、上記第1実施形態と同様に構成されるものであるが、その形状が略長方形とされたコレクタ110に合わせて略長方形形状とされている。このように、単セルを形成した状態においては、セパレータ本体120の窪み部123の所定深さおよびスペーサ134の板厚がコレクタ110の筋状凹部112および筋状凸部113の成形高さよりも僅かに小さいため、筋状凹部112がセパレータ本体120によってMEA140側に若干押圧された状態で固着される。これにより、コレクタ110とMEA140との接触状態を良好に保つことができる。そして、形成された単セルは、多数積層されることによって、燃料電池スタックを構成する。
このように構成された燃料電池スタックを有する燃料電池においても、上記第1実施形態と同様の効果が期待できる。さらに、このように構成された燃料電池スタックにおいては、コレクタ110の幅寸法がセパレータ本体120の幅寸法と略同一とされており、筋状凹部113および筋状凸部114が幅方向に形成されているため、コレクタ110が外部と連通した状態であり、燃料電池スタックの側面から酸化剤ガスとしての空気を供給して排出することができる。このため、燃料電池スタック内に空気を直接供給するためのガス供給インナーマニホールドや空気を排出すためのガス排出インナーマニホールドを設ける必要がなく、燃料電池スタックを小型化することが可能となる。
また、本発明は、上記各実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。例えば、上記第1実施形態においては、貫通孔成形部分11aと貫通孔非成形部分11bとを形成しておき、コレクタ10の筋状凹部12を貫通孔成形部分11aから成形し、筋状凸部13を貫通孔非成形部分11bから成形するように実施した。これに対し、例えば、図11に一部を拡大して示すように、貫通孔成形部分11aの孔径よりも小さい孔径を有する小径貫通孔成形部分11dを成形しておき、筋状凹部12を貫通孔成形部分11aから成形するとともに、筋状凸部13を小径貫通孔成形部分11dから成形して実施してもよい。この場合、エキスパンドメタル11に小径貫通孔成形部分11dを形成するために、例えば、ランスカットメタル加工装置Rの上刃UHの最下点位置を、貫通孔成形部分11aを形成するときよりも小さく設定する。
これにより、小径貫通孔成形部分11dが形成される。このとき、貫通孔成形部分11aと小径貫通孔成形部分11dとは、形成された貫通孔の孔径が異なる。このため、筋状凹部12の成形面積に対する貫通孔の開口比に比して、筋状凸部13の成形面積に対する貫通孔の開口比が小さくなる。そして、このように成形されたコレクタ10においても、セパレータ本体20との接触面積が、上記第1実施形態の場合に比して若干小さくなるものの、貫通孔成形部分11aをそのまま用いたよりも大きくすることができるため、接触抵抗を低減することができる。また、上記第1実施形態の場合と同様に、固着することができる。したがって、上記第1実施形態と同様の効果が期待できる。
さらに、小径貫通孔成形部分11dから、筋状凹部12の底面(頂面)と筋状凸部13の頂面(底面)とを連結する第3面としての立壁面を形成することにより、上記各実施形態の場合に比して、コレクタ10,110の機械的強度を向上させることができる。すなわち、小径貫通孔成形部分11dに形成される貫通孔の孔径は、貫通孔成形部分11aに形成される貫通孔の孔径よりも小さい。このため、コレクタ10,110の立壁面の開口比が小さくなるため、機械的強度が向上する。したがって、燃料電池の組み立て時に付与される締結力(積層荷重)による立壁面すなわちコレクタ自体の変形を効果的に抑制することができる。したがって、コレクタ10,110によって形成されたガス流路を確実に確保することができ、ガスをMEA40に供給する機能を良好に満足することができる。
なお、この変形例においては、小径貫通孔成形部分11dをランスカットメタル加工装置Rの上刃UHの最下点位置を変更することにより成形して、筋状凸部13の開口比を小さくするように実施した。これに代えて、例えば、ランスカットメタル加工装置Rの最下点位置を上記第1実施形態と同様に設定しておき、加工ピッチを上記第1実施形態に比して大きくすることによっても、筋状凸部13の開口比を小さくすることができる。この場合には、最終的に形成されるエキスパンドメタル11のストランドの成形幅が大きくなるため、貫通孔成形部分11aと同様の孔径を有する貫通孔が形成されても、筋状凸部13の開口比を小さくすることができる。したがって、上記各実施形態と同様の効果が期待できるとともに、機械的強度を十分に確保することができて、コレクタ自体の変形を効果的に抑制することができる。
また、上記各実施形態においては、コレクタ10,110とセパレータ本体20,120とを固着して実施したが、固着することなく、すなわち、コレクタ10,110の筋状凸部13,113とセパレータ本体20,120とが互いに接触した状態として実施することも、もちろん可能である。この場合においても、上記各実施形態と同様に、コレクタ10,110とセパレータ本体20,120との接触抵抗を大幅に低減することができるため、上記各実施形態と同様の効果が期待できる。
10,110…コレクタ、11…エキスパンドメタル、13…筋状凹部、14…筋状凸部、20,120…セパレータ本体、40,140…MEA
Claims (7)
- 燃料電池の電極構造体を構成する電極層に対して、燃料ガスと酸化剤ガスとをそれぞれ供給するガス流路を形成する燃料電池用セパレータにおいて、
導電性を有する素材から成形されて、前記燃料ガスと酸化剤ガスとを分離して混流を防止する平板状のセパレータ本体と、
多数の貫通孔が形成された素材に対して筋状の凹部と筋状の凸部を連続的に成形することにより、前記電極層に接触する第1面と前記セパレータ本体に接触する第2面とを有して、前記燃料ガスまたは酸化剤ガスを前記電極層に供給するためのガス流路を形成するとともに、前記電極層の電極反応によって発電された電気を集電するコレクタとを備え、
前記コレクタの第2面の成形面積に対する貫通孔の面積の開口比が前記第1面の成形面積に対する貫通孔の面積の開口比よりも小さいことを特徴とする燃料電池用セパレータ。 - 請求項1に記載した燃料電池用セパレータにおいて、
前記コレクタの第1面と第2面とを互いに連結する第3面の成形面積に対する貫通孔の面積の開口比は、前記第1面の開口比よりも小さいことを特徴とする燃料電池用セパレータ。 - 請求項1または請求項2に記載した燃料電池用セパレータにおいて、
前記多数の貫通孔が形成された素材は、部分的に貫通孔が形成されるものであり、
前記コレクタの第2面は、前記素材のうちの貫通孔が形成されていない部分から形成されていて、前記開口比が略「0」であることを特徴とする燃料電池用セパレータ。 - 請求項1ないし請求項3のうちのいずれか一つに記載した燃料電池用セパレータにおいて、
前記多数の貫通孔が形成された素材は、
金属製の薄板に対して網目状の多数の貫通孔が選択的に成形されるとともに、
同選択的に成形された多数の貫通孔の孔径が選択的に変更されて形成されるエキスパンドメタルであることを特徴とする燃料電池用セパレータ。 - 請求項1ないし請求項3のうちのいずれか一つに記載した燃料電池用セパレータにおいて、
前記コレクタの第2面は、前記セパレータ本体に対して一体的に固着されたことを特徴とする燃料電池用セパレータ。 - 請求項1ないし請求項3のうちのいずれか一つに記載した燃料電池用セパレータにおいて、
前記連続的に成形された筋状の凹部と筋状の凸部の成形方向断面における前記第1面の成形幅は、同成形方向断面における第2面の成形幅に比して大きいことを特徴とする燃料電池用セパレータ。 - 請求項1ないし請求項3のうちのいずれか一つに記載した燃料電池用セパレータにおいて、
前記コレクタは、
その幅方向の寸法が前記セパレータ本体の幅方向の寸法と略同一の寸法に形成されるとともに前記ガス流路が前記セパレータ本体の前記幅方向に成形されており、前記燃料ガスまたは酸化剤ガスの一方を前記セパレータ本体の前記幅方向から前記電極層に対して供給することを特徴とする燃料電池用セパレータ。
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