JP2006294329A - 燃料電池用セパレータ - Google Patents
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Abstract
【課題】 ガスを良好に供給するとともに発電された電気を効率よく集電して、燃料電池の発電効率を向上させる燃料電池用セパレータを提供すること。
【解決手段】 セパレータ10は、セパレータ本体11とガス流路形成部材12とから構成される。ガス流路形成部材12は、多数の小径の貫通孔が網目状に形成されたエキスパンドメタルEMに、成形幅が幅広の筋状凹部12aと成形幅が小幅の筋状凸部12bが成形されて形成されている。これにより、ガス濃度勾配を均一化して、ガスをMEA30に効率よく供給できる。また、筋状凸部12bは、セパレータ本体11に対して、接合部13により金属的に接合される。これにより、セパレータ本体11とガス流路形成部材12間の接触抵抗を大幅に低減でき、発電された電気を効率よく外部に出力できる。したがって、燃料電池の発電効率を向上させることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】 セパレータ10は、セパレータ本体11とガス流路形成部材12とから構成される。ガス流路形成部材12は、多数の小径の貫通孔が網目状に形成されたエキスパンドメタルEMに、成形幅が幅広の筋状凹部12aと成形幅が小幅の筋状凸部12bが成形されて形成されている。これにより、ガス濃度勾配を均一化して、ガスをMEA30に効率よく供給できる。また、筋状凸部12bは、セパレータ本体11に対して、接合部13により金属的に接合される。これにより、セパレータ本体11とガス流路形成部材12間の接触抵抗を大幅に低減でき、発電された電気を効率よく外部に出力できる。したがって、燃料電池の発電効率を向上させることができる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、燃料電池、特に、燃料電池に採用されるセパレータに関する。
従来から、例えば、下記特許文献1に示すような燃料電池は知られている。この従来の燃料電池は、集電体に多孔質金属(ニッケル発泡体)を採用して、多孔質金属の孔から燃料ガスを供給するとともに、集電抵抗を低減するようになっている。これにより、ガス供給能が確保されるとともに、集電抵抗が低減され、発電効率の優れた燃料電池を提供するようになっている。
また、従来から、例えば、下記特許文献2に示すような燃料電池用のセパレータは知られている。この従来の燃料電池用のセパレータは、カーボンクロスから形成される導電性多孔体を備えていて、この導電性多孔体を通過してガスが電極層に供給される。そして、導電性多孔体を介して、発電された電気を集電するようになっている。これにより、ガス供給能を確保して効率よく集電するとともに、安価な燃料電池用のセパレータを提供するようになっている。
また、従来から、例えば、下記特許文献3に示すような燃料電池の構造も知られている。この燃料電池の構造におけるメタルセパレータは、アノード電極またはカソード電極を支持する集電部と、燃料ガスまたは酸化剤ガスを各電極に供給するための流路を形成する集電部サポートとを備える構造となっている。また、メタルセパレータの集電部と電極との間には、多数の貫通孔が形成されるとともにその表面に多数の凹凸形状を有するエキスパンドメタルが設けられている。そして、このエキスパンドメタルの厚み(凹凸寸法)を適宜調整することにより、燃料電池のアノード電極またはカソード電極とエキスパンドメタルとの接触を良好に確保することができ、発電された電気の損失を低減するようになっている。
さらに、従来から、例えば、下記特許文献4に示すような燃料電池のセパレータも知られている。この燃料電池のセパレータは、平板状の第1部材(カーボン)と、この第1部材に積層され、燃料電池の電極層に弾性的に接触させられるとともにガス流路を形成する複数の突片を有する第2部材(金属板)とから構成されている。そして、第2部材の複数の突片によって形成されたガス流路は、突片の周囲や内側に存在する空間とされていて、流入したガスがあらゆる方向に立体的に連通するようになっている。これにより、電極層に対して、ガス流路を流れるガスを良好に拡散させることができ、反応効率を高めることにより、燃料電池の発電効率を向上するようになっている。
特開平6−223836号公報
特開2003−203645号公報
特開平8−138701号公報
特開2002−184422号公報
一般的に、燃料電池の発電効率を向上させるためには、電極反応効率および集電効率を向上させることが重要である。このため、燃料電池に採用されるセパレータに要求される機能として、燃料電池に導入される燃料ガスと酸化剤ガスとを電極層に効率よく供給する機能と、電極反応により発電された電気を効率よく集電する機能が要求される。
ところで、上記特許文献1および特許文献2に示された従来の燃料電池および燃料電池用のセパレータにおいては、発電された電気を効率よく集電する機能については満足するものの、ガス導入に伴う抵抗(圧力損失)が大きく、ガスを充分に電極層に供給できない場合がある。このため、燃料電池の発電効率が低下する可能性がある。また、上記特許文献3に示された従来の燃料電池の構造においては、エキスパンドメタルと電極との接触が良好に確保されるため、発電された電気を効率よく集電する機能は満足する。しかし、気体不透過性の集電部サポートによって燃料ガスまたは酸化剤ガスが電極に供給される。このため、各電極に対して十分な燃料ガスまたは酸化剤ガスを供給できず、言い換えると、ガス拡散性が不均一となり、ガスを効率よく供給する機能を満足しない場合がある。
一方、上記特許文献4に示された従来の燃料電池のセパレータにおいては、ガスを効率よく供給する機能については満足するものの、電極層と接触する部位が突片の頂面付近となることから電気の集電抵抗が増大して集電効率が低下する場合がある。また、薄板の金属板に突片を成形する際には、成形上の制約、例えば、成形可能な突片の高さ制約などによって、燃料電池に要求される発電効率を確保できない場合がある。
このような燃料電池用セパレータに対する要求を満たすために、例えば、多数の貫通孔が網目状に形成されたエキスパンドメタルにガス流路を成形すれば、各電極層との接触を良好に確保しつつ、エキスパンドメタルの貫通孔をガスが通過することにより電極層に対するガス拡散性を良好に確保することができる。したがって、燃料電池用セパレータに要求される機能すなわちガスを効率よく供給する機能および発電された電気を効率よく集電する機能を両立できると考えられる。
しかしながら、エキスパンドメタルは、網目状の多数の貫通孔が形成されているために、機械的な強度を確保することが難しく、例えば、燃料電池の組み立て時に付与される締結力によってエキスパンドメタルが変位し、その結果、変形が生じる可能性がある。このため、ガスを効率よく供給する機能が損なわれる場合がある。また、エキスパンドメタルが変形することにより、例えば、ガスの混流を防止する金属板(セパレータ本体)との接触状態が悪化し、接触抵抗が増加する場合もある。したがって、発電された電気を効率よく集電する機能が損なわれる場合がある。
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ガスを良好に供給するとともに発電された電気を効率よく集電して、燃料電池の発電効率を向上させる燃料電池用セパレータを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、燃料電池の電極構造体を構成する電極層に対して、燃料ガスと酸化剤ガスとをそれぞれ供給するガス流路を形成する燃料電池用セパレータにおいて、導電性を有し、前記燃料ガスと酸化剤ガスとを分離して混流を防止する平板状のセパレータ本体と、多数の貫通孔を有し、前記セパレータ本体と前記電極層との間にて前記ガス流路を形成するとともに前記電極構造体によって発電された電気を集電する金属製のガス流路形成部材とを備え、前記セパレータ本体に対して前記ガス流路形成部材を一体的に固設して構成したことにある。
この場合、前記ガス流路形成部材は、多数の小径の貫通孔が網目状に形成された後に平板状に成形されたエキスパンドメタルから形成されるとよい。また、前記ガス流路形成部材は、連続的に成形された筋状の凹部と筋状の凸部とを有して構成されるとよい。また、前記連続的に成形された筋状の凹部と筋状の凸部は、成形方向断面における前記筋状の凹部と筋状の凸部の成形幅のうちの一方が小さく形成されており、前記セパレータ本体に対し、前記成形幅が小さく形成された筋状の凹部または筋状の凸部を接触させて、前記ガス流路形成部材を一体的に固設するとよい。そして、この場合には、前記セパレータ本体に対して、例えば、前記成形幅が小さく形成された筋状の凹部または筋状の凸部に対応した窪みを形成するとよい。
これらによれば、燃料電池用セパレータは、セパレータ本体と多数の貫通孔を有するガス流路形成部材とから構成される。これにより、外部から導入されたガスは、ガス流路形成部材の貫通孔を通過することにより、電極層に均一に接触する、言い換えれば、ガス濃度勾配を均一とすることができる。したがって、電極層の電極反応領域を大幅に向上させることができ、燃料電池の発電効率を大幅に向上させることができる。
また、ガス流路形成部材に対して、連続的に筋状の凹部および筋状の凸部を成形して、ガス流路を形成することにより、ガスの導通に伴う抵抗すなわち圧力損失を大幅に低減することができる。このため、ガスをスムーズに導通させることができて、ガスと電極層との反応を促進することができる。したがって、これによっても、燃料電池の発電効率を大幅に向上することができる。一方で、圧力損失を大幅に低減することにより、ガスが導通する部分の開口面積を小さくすることもできる。これにより、燃料電池をコンパクトにすることができる。
また、セパレータ本体とガス流路形成部材とを一体的に固設することができる。この場合、ガス流路形成部材において、成形幅が小さく形成された筋状の凹部または筋状の凸部を接触させて、前記ガス流路形成部材を固設することができる。このように、セパレータ本体とガス流路形成部材とを一体的に固設することにより、ガス流路形成部材のセパレータ本体に対する相対的な変位を規制することができ、燃料電池の組み立て時におけるガス流路の変形を防止することができる。これにより、ガス流路の変形に伴う圧力損失の増加や偏流の発生を防止することができる。また、セパレータ本体とガス流路形成部材との接触状態を良好に維持することができるため、セパレータ本体とガス流路形成部材間の接触抵抗の増加も防止できる。したがって、効率よく発電された電気を集電することができる。さらに、セパレータ本体とガス流路形成部材を一体的に固設することにより、燃料電池の組み立て作業を容易とすることができて、生産効率を向上することができる。
一方で、ガス流路形成部材の筋状の凹部および筋状の凸部の成形幅のうち、幅広に成形された筋状の凹部または筋状の凸部と電極層とを接触させることができる。したがって、ガス流路形成部材と電極層との接触面積が大きくすることができる。また、ガス流路形成部材が多数の小径の貫通孔を有することにより、単位体積当たりの表面積すなわち電極層との接触面積を大きくすることができる。このため、ガス流路形成部材と電極層との間に生じる集電抵抗を極めて小さくすることができ、電極層の電極反応によって発電された電気の集電効率を大幅に向上させることができる。
さらに、ガス流路形成部材を、多数の小径の貫通孔が網目状に形成されたエキスパンドメタルから形成することができる。このエキスパンドメタルは、平板状の金属製の薄板に対して、順次千鳥配置の切れ目を加工するとともに加工した切れ目を押し延ばすことによって、網目状の小径の貫通孔が形成されるものである。このため、例えば、打ち抜き加工によって形成される他の材料(例えば、パンチングメタルなど)に比して、歩留まり性が極めて良好であり、製造コストを低減することができる。したがって、このエキスパンドメタルからガス流路形成部材を形成することにより、燃料電池の製造コストを低減することもできる。
また、本発明の他の特徴は、前記セパレータ本体が、金属製の薄板から形成されており、前記ガス流路形成部材を、前記セパレータ本体に対して、金属的に接合して固設することにもある。この場合、前記ガス流路形成部材と前記セパレータ本体は、溶接工法、ロー付け工法および拡散接合工法のうちのいずれか一つの接合工法により、金属的に接合されるとよい。これらによれば、周知の接合工法を採用してセパレータ本体とガス流路形成部材とを金属的に接合することができるため、極めて容易にセパレータ本体とガス流路形成部材を一体的に固設することができる。
また、燃料電池においては、その発電作動に伴って、導電性を有しない酸化物がセパレータ本体とガス流路形成部材との接触部位、より詳しくは、セパレータ本体とガス流路形成部材との間の僅かな隙間に析出する場合がある。このように、酸化物が析出すると、セパレータ本体とガス流路形成部材との間の接触抵抗が増大するため、効率よく発電された電気を集電できない場合がある。これに対し、セパレータ本体とガス流路形成部材とを金属的に接合することにより、前記僅かな隙間が存在しないため、前記接触抵抗が増大せず、したがって、燃料電池の発電効率を良好に維持することができる。
また、本発明の他の特徴は、前記セパレータ本体が、カーボン粒子と導電性を有するバインダとにより構成される薄板から形成されており、前記ガス流路形成部材を、前記薄板を構成する前記バインダを融解および凝固することにより、前記セパレータ本体に対して一体的に固設することにもある。これによっても、セパレータ本体とガス流路形成部材との間に隙間が存在しないため、前記接触抵抗が増大せず、したがって、燃料電池の発電効率を良好に維持することができる。
また、本発明の他の特徴は、前記ガス流路形成部材が、その幅方向の寸法が前記セパレータ本体の幅方向の寸法と略同一の寸法に形成されるとともに前記ガス流路を前記セパレータ本体の前記幅方向に形成しており、前記燃料ガスまたは酸化剤ガスの一方を前記セパレータ本体の前記幅方向から前記電極層に対して供給することにもある。これによれば、燃料ガスまたは酸化剤ガスの一方を電極層へ供給するガス流路形成部材が、セパレータ本体の幅方向の寸法と略同一の幅方向の寸法とされるため、燃料電池の外部と連通した状態で燃料電池を構成することができる。これにより、外部と連通したガス流路形成部材が酸化剤ガスとして例えば空気を電極層に供給する場合には、同ガス流路形成部材は、燃料電池の側面から直接空気を導入することができ、また未反応の空気を直接外部に排出することができる。このため、燃料電池内に別途空気をガス流路形成部材まで供給するためのインナーマニホールドやガス流路形成部材から未反応の空気を排出すためのインナーマニホールドを設ける必要がなく、燃料電池を小型化することが可能となる。
以下、図面を用いて本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る燃料電池用セパレータ10(以下、単にセパレータ10という)を用いて構成された固体高分子型燃料電池のスタックの一部を概略的に示した断面図である。燃料電池スタックは、2つのセパレータ10と、これらセパレータ10間に配置されて積層されるフレーム20およびMEA30(Membrane−Electrode Assembly:膜−電極アッセンブリ)とからなる単セルが多数積層されて構成される。そして、各単セルに対して、例えば水素ガスなどの燃料ガスと、例えば空気などの酸化剤ガスとが燃料電池スタック外部から導入されることにより、MEA30による電極反応によって電気が発電される。ここで、本明細書では、以下の説明において、燃料ガスと酸化剤ガスとをまとめて単にガスともいう。なお、酸化剤ガスには、MEA30による電極反応に伴って発生する反応熱を冷却するとともにMEA30が適度な水分を有するように水のミストが含まれる場合がある。
セパレータ10は、図2に示すように、略正方形の平板状に形成されて燃料電池スタック内に導入されたガスの混流を防ぐセパレータ本体11と、外部から供給された燃料ガスまたは酸化剤ガスをMEA30に導入するとともに電極反応によって発電された電気を集電するガス流路形成部材12とから構成される。セパレータ本体11は、金属製の薄板(例えば、板厚が0.1mm程度のステンレス板など)から形成されている。なお、金属製の薄板としては、他に、例えば、金めっきなどの防錆処理を施した鋼板などを採用することができる。
また、セパレータ本体11の周縁部分には、ガス導入口11aと、同ガス導入口11aと対向する位置にガス導出口11bが2対形成されている。ここで、各対は、互いに略直交するように形成されている。ガス導入口11aは、略長楕円状の貫通孔に形成されていて、燃料電池スタックの外部から供給された燃料ガスまたは酸化剤ガスを単セル内に導入するとともに、積層された他の単セルに供給された燃料ガスまたは酸化剤ガスを流通する。ガス導出口11bも、略長楕円状の貫通孔に形成されていて、単セル内にガス導入口11aから導入されたガスのうちMEA30にて未反応のガスを外部に排出するとともに、積層された他の単セルからの未反応のガスを流通する。
ガス流路形成部材12は、図3に示すように、多数の小径の貫通孔が網目状に形成された金属製の薄板(以下、この金属製の薄板をエキスパンドメタルEMという)から形成される。このエキスパンドメタルEMは、例えば、板厚が0.1mm〜0.2mm程度のステンレス板(例えば、フェライト系ステンレス)であって、多数形成される孔径が0.1mm〜1mm程度とされている。ここで、このエキスパンドメタルEMについては、周知の成形方法によって製造されるものであるが、以下に簡単に説明しておく。
図4(a)〜図4(c)は、エキスパンドメタルEMの製造工程を概略的に示している。エキスパンドメタルEMは、図4(a)に示すように、素材S(金属製の薄板)を送りローラORによって上刃UDおよび下刃LDからなる刃型Dに送る。刃型Dの上刃UDおよび下刃LDの刃部は、図4(b)に拡大して示すように、素材Sに対して千鳥配置に切れ目を順次加工するように形成されている。そして、上刃UDは、上下動することにより、素材Sに対して順次千鳥配置の切れ目を加工するとともに、下降位置にて加工した切れ目を押し延ばし、素材Sに段状の網目を形成する(この段状の網目が形成された素材SをランスカットメタルRMという)。
次に、段状の網目が形成されたランスカットメタルRMは、図4(c)に示すように、圧延ローラARによって平面状に圧延される。このように、ランスカットメタルRMが圧延されることにより、ランスカットメタルRMの段を形成しているストランドやボンド部が略平板状とされる。これにより、図3に示すような、所定の孔径を有したエキスパンドメタルEMが製造される。なお、エキスパンドメタルEMの製造については、上記製造方法に限定されることなく、他の製造方法を利用して製造可能であることはいうまでもない。
そして、ガス流路形成部材12は、図1および図2に示すように、上記したエキスパンドメタルEMに対して、成形幅が幅広の筋状凹部12aと、同筋状凹部12aの成形幅に比して小幅の筋状凸部12bとが成形されて構成される。以下、この筋状凹部12aおよび筋状凸部12bの成形について説明する。図5(a)〜(c)は、エキスパンドメタルEMに筋状の凹凸部を成形する筋状凹凸部成形工程を概略的に示している。この筋状凹凸部成形工程は、エキスパンドメタルEMの幅方向(図5において紙面垂直方向)全体に対して、筋状凹部12aを成形するための凹部および筋状凸部12bを成形するための凸部が形成された下型SGと、上下動可能とされて下型SGに形成された凹部に進入してエキスパンドメタルEMに筋状凹部12aおよび筋状凸部12bを成形するパンチPと、同パンチPの成形中においてエキスパンドメタルEMを固定する先行パッドSPとを備える筋状凹凸部成形機を利用する。
筋状凹凸部成形工程は、まず、図5(a)に示すように、前回の成形サイクルにより成形された筋状凹部12aおよび筋状凸部12bを一段送り、下型SG上に載置する。続いて、図5(b)に示すように、先行パッドSPを、前回の成形サイクルにより成形した筋状凹部12a方向に下降させて、エキスパンドメタルEMを下型SGとともに狭持して固定する。このように、エキスパンドメタルEMを固定した状態で、図5(c)に示すように、パンチPを、下型SGに形成された凹部方向に、エキスパンドメタルEMとともに下降させることによって、エキスパンドメタルEMに筋状凹部12aおよび筋状凸部12bが成形される。
このように、図5(a)〜(c)によって概略的に示される成形サイクルを繰り返すことにより、エキスパンドメタルEMに筋状凹部12aおよび筋状凸部12bを連続的に成形することができる。なお、図5(c)に示す工程において、矢印で示す方向にエキスパンドメタルEMを送ることによって、筋状凹部12aおよび筋状凸部12bの成形に際して、例えば、エキスパンドメタルEMの割れや破れを効果的に防止することができる。また、略平板状としたエキスパンドメタルEMに筋状凹部12aおよび筋状凸部12bを成形することにより、筋状凹部12aおよび筋状凸部12bを正確に成形することができる。そして、上記した筋状凹凸部成形工程によって筋状凹部12aおよび筋状凸部12bが連続的に成形されたエキスパンドメタルEMは、所定長さおよび所定幅となるように、詳しくは、後述するMEA30のアノード電極層AEまたはカソード電極層CEの大きさと略同一の大きさの正方形となるように切断されて、ガス流路形成部材12が形成される。
そして、形成されたガス流路形成部材12は、図6に示すように、セパレータ本体11に対して一体的に固設される。このガス流路形成部材12の固設について、以下に説明する。ガス流路形成部材12は、図6(a)に示すように、セパレータ本体11の略中央部分にて、筋状凸部12bがセパレータ本体11に接触するように配置される。そして、筋状凸部12bとセパレータ本体11の接触部分は、例えば、ロー付け工法により、金属的に接合されて一体的に固設される。
具体的に説明すると、まず、ガス流路形成部材12の筋状凸部12bに対して、例えば、銅やニッケルなどのペースト状のロー材を塗布する。そして、ロー材を塗布したガス流路形成部材12をセパレータ本体11の所定位置に仮止めする。次に、還元ガス雰囲気中にて、仮止めしたガス流路形成部材12とセパレータ本体11とを所定温度で所定時間だけ加熱し、その後冷却する。これにより、図6(b)に示すように、ロー材に含まれる金属の融解および凝固によって、筋状凸部12bの周囲に接合部13が形成され、ガス流路形成部材12とセパレータ本体11とが一体的に固設される。このように、接合部13が形成されることにより、ガス流路形成部材12(詳しくは、筋状凸部12b)とセパレータ本体11とが、金属的に接合される。
ここで、ガス流路形成部材12とセパレータ本体11とを金属的に接合する接合工法については、上述したロー付け工法に限定されるものではない。すなわち、ガス流路形成部材12とセパレータ本体11とを金属的に接合することができる他の工法、例えば、溶接工法や拡散接合工法を採用することができる。
溶接工法を用いて接合する場合には、例えば、スポット溶接のように、ガス流路形成部材12(詳しくは、筋状凸部12b)とセパレータ本体11との間の接触抵抗を利用する電気抵抗溶接を採用することができる。この場合には、筋状凸部12bとセパレータ本体11との間における接触抵抗に電流を流すことにより発熱し、この発熱によって筋状凸部12bとセパレータ本体11の接触部分が融解する。そして、溶解部分が凝固することにより、筋状凸部12bとセパレータ本体11とが金属的に接合される。このように、溶接工法を採用した場合には、筋状凸部12bとセパレータ本体11との接触面積が小さいため、低電流で容易に接合することができる。
また、拡散接合工法を採用して接合する場合には、筋状凸部12bとセパレータ本体11とを接触した状態とし、所定の荷重を付与しながら所定の温度雰囲気中に放置することにより、接触部分で相互拡散が生じる。これにより、筋状凸部12bとセパレータ本体11とが金属的に接合される。このように、拡散接合工法を採用する場合には、筋状凸部12bとセパレータ本体11の接触部位における板厚が共に小さいため、付加する荷重を小さくすることができ、簡便な設備で容易に接合することができる。
フレーム20は、図1および図2に示すように、同一の構造とされた2枚一対の樹脂板本体21,22から構成されていて、2枚のセパレータ本体11にそれぞれの一面側が固着される。これら樹脂板本体21,22は、セパレータ本体11の外形寸法と略同一の外形寸法とされるとともに、ガス流路形成部材12の筋状凹部12aおよび筋状凸部12bの成形高さよりも僅かに小さい板厚とされている。そして、樹脂板本体21に対して、樹脂板本体22は、同一平面方向にて略90度回転して配置されて積層される。なお、樹脂板本体21,22は、種々の樹脂材料を採用することができ、好ましくは、ポリカーボネートやガラスエポキシ樹脂などを採用するとよい。
また、樹脂板本体21,22には、その周縁部分にて、単セルを形成した状態でセパレータ本体11に形成されたガス導入口11aおよびガス導出口11bの各貫通孔に対応する位置に同各貫通孔の形状と略同一の形状の貫通孔21a,21bおよび貫通孔22a,22bが形成されている。また、樹脂板本体21,22には、その略中央部分にて、セパレータ本体11に接合されたガス流路形成部材12を収容する収容孔21c、22cが形成されている。この収容孔21c、22cは、固着されるセパレータ本体11に形成された一対のガス導入口11aおよびガス導出口11bと、積層される他方の樹脂板本体21または22に形成された貫通孔21a,21bまたは貫通孔22a,22bとを収容するように形成されている。
このように、収容孔21c、22cを形成することにより、固着されるセパレータ本体11の下面(または上面)、収容孔21cまたは22cの内周面およびMEA30の上面(または下面)により空間(以下、この空間をガス導通空間という)が形成される。そして、ガス導通空間内に対して、例えば、燃料ガスを一方のガス導入口11aから、また、酸化剤ガスを他方のガス導入口11aおよび貫通孔21aから導入することができる。また、ガス導通空間を通過した未反応のガスは、一方のガス導出口11bを介して、また、他方のガス導出口11bおよび貫通孔21bを介して外部に導出することができる。ここで、樹脂板本体21に形成される貫通孔21a,21bおよび収容孔21cと、樹脂板本体22に形成される貫通孔22a,22bおよび収容孔22cは、板厚管理された樹脂板本体21,22に対して、例えば、打ち抜き成形を施すことにより形成される。また、樹脂板本体21,22は、それぞれ貫通孔21a,21bおよび収容孔21c、貫通孔22a,22bおよび収容孔22cを有するように、例えば、射出成形によって成形可能であることはいうまでもない。
電極構造体としてのMEA30は、図1および図2に示すように、電解質膜EFと、同電解質膜EF上にて所定の触媒を層状に積層することにより形成されて、燃料ガスが導入されるガス導通空間側に配置されるアノード電極層AEと、酸化剤ガスが導入されるガス導通空間側に配置されるカソード電極層CEとを主要構成部品としている。なお、これら電解質膜EF、アノード電極層AEおよびカソード電極層CEの作用(電極反応)については、本発明に直接関係しないため、その詳細な説明を省略する。電解質膜EFは、フレーム20の樹脂板本体21,22を積層した際に形成される略正方形の開口部分に比して大きく、かつ、樹脂板本体21,22を積層した状態で貫通孔21a,21bおよび貫通孔22a,22bを塞がない大きさに形成されている。このように電解質膜EFを形成することにより、ガス導通空間に導入されたガスが他側に形成されたガス導通空間に漏れることが防止される。電極層としてのアノード電極層AEおよびカソード電極層CEは、その大きさがフレーム20の樹脂板本体21,22を積層した際に形成される略正方形の開口部分に比して僅かに小さい外形寸法とされている。
また、MEA30のアノード電極層AEおよびカソード電極層CEのそれぞれの表面側は、導電性を有した繊維としてのカーボンクロスCCで覆われる。このカーボンクロスCCは、アノード電極層AEまたはカソード電極層CEすなわちそれぞれの電極を構成する電極層とガス流路形成部材12との接触面積を大きく確保するとともに、単セルを構成した際の各構成品の寸法誤差を吸収するものである。なお、MEA30は、このカーボンクロスCCを省略して構成することも可能である。
そして、セパレータ本体11に金属的に接合されたガス流路形成部材12とから構成される2枚のセパレータ10間に、フレーム20およびMEA30を積層することによって単セルが構成される。具体的に説明すると、互いに同一平面内にて略90度回転されて配置される樹脂板本体21,22間にMEA30を配置し、例えば、接着剤などを塗布することにより、樹脂板本体21,22間にてMEA30の電解質膜EFを狭持した状態で一体的に固着する。このように一体的に固着されたフレーム20およびMEA30に対して、2枚のセパレータ10を、例えば、接着剤などを塗布することにより、一体的に固着する。このとき、ガス流路形成部材12は、図1および図2に示すように、成形幅が幅広の筋状凹部12aとカーボンクロスCCとが接触するように配置される。また、樹脂板本体21,22の板厚が筋状凹部12aおよび筋状凸部12bの成形高さよりも僅かに小さい寸法とされている。このため、筋状凹部12aがセパレータ本体11によってMEA30側に若干押圧された状態で固着される。これにより、ガス流路形成部材12とMEA30との接触状態を良好に保つことができる。そして、このように形成された単セルは、多数積層されることによって、燃料電池スタックを構成する。
このように構成された燃料電池スタックにおいては、図1に示すように、積層された単セル間でガス導入口11a同士およびガス導出口11b同士がフレーム20の貫通孔21a,21bおよび貫通孔22a,22bを介してすべて連通した状態となる。なお、本明細書中の以下の説明においては、各単セルのガス導入口11aおよびフレーム20の貫通孔21a,22aによって形成される連通路をガス供給インナーマニホールド、ガス導出口11bおよびフレーム20の貫通孔21b,22bによって形成される連通路をガス排出インナーマニホールド、あるいは、これらガス供給インナーマニホールドとガス排出インナーマニホールドをまとめて単にインナーマニホールドという。
このガス供給インナーマニホールドを介して燃料ガスまたは酸化剤ガスがそれぞれ外部から供給されると、供給された燃料ガスまたは酸化剤ガスは、ガス導通空間内に導入される。このように導入された燃料ガスまたは酸化剤ガスは、ガス流路形成部材12によって、そのガス濃度勾配が均等化されてガス導通空間内を導通する。
すなわち、ガス流路形成部材12は、多数の小径の貫通孔が網目状に形成されたエキスパンドメタルEMから成形されており、同エキスパンドメタルEMに筋状凹部12aおよび筋状凸部12bを連続的に成形して形成されている。このため、ガス流路形成部材12がガス導通空間内に収容された状態では、例えば、筋状凹部12aに導入された燃料ガスまたは酸化剤ガスが、多数の小径の貫通孔を通過してガス導通空間内全体に広がることができる。これにより、ガス導通空間内のガス濃度勾配が均一化され、アノード電極層AEおよびカソード電極層CEの電極反応領域は、形成したアノード電極層AEおよびカソード電極層CEの全面となる。この結果、有効な電極反応領域が増大することにより、アノード電極層AEおよびカソード電極層CEが供給された燃料ガスまたは酸化剤ガスと効率よく電極反応して電極反応効率を大幅に向上させることができる。また、供給されたガスを有効に利用することができるため、未反応ガスが減少する。したがって、燃料電池は、効率よく電気を発電することができる。
また、ガス流路形成部材12は、薄肉のエキスパンドメタルEMに筋状凹部12aおよび筋状凸部12bが形成されているため、ガス導通空間内を導通する際のガスの抵抗すなわち圧力損失を低減することができる。さらに、ガス導通空間内に導入されたガスが多数の小径の貫通孔を通過する際の抵抗も小さくすることができる。これらにより、ガス導通空間内を導通するガスは、スムーズに導通することができるため、ガスとアノード電極層AEおよびカソード電極層CEとの反応を促進することができ、燃料電池の発電効率を向上させることができる。
一方で、電極反応の反応効率が向上すると、MEA30によって、効率よく電気が発電される。この発電された電気は、ガス流路形成部材12およびセパレータ本体11を介して、燃料電池外部に取り出される。このとき、ガス流路形成部材12は、MEA30(詳しくは、カーボンクロスCC)に対して、接触面積が大きくなるように筋状凹部12aにて接触するように単セルが構成されている。また、ガス流路形成部材12に多数の小径の貫通孔が形成されていることによっても、単位体積当たりの表面積すなわちMEA30との接触面積が大きくなる。このように、MEA30との接触面積を大きくすることにより、MEA30で発電された電気を集電する際の抵抗(集電抵抗)を極めて小さくすることができ、発電された電気を効率よくすなわち集電効率を向上させて集電することができる。
ところで、ガス流路形成部材12は、上述したように、セパレータ本体11に対して、一体的に固設されている。これにより、単セル形成時に付与される締結力によって、ガス流路形成部材12の筋状凹部12aおよび筋状凸部12bが変形することが防止される。このことを、図7および図8を用いて以下に説明する。
図7は、セパレータ本体11に対して、ガス流路形成部材12が一体的に固設されていない場合を概略的に示している。図7(a)は、前記締結力が付与される前のガス流路形成部材12の状態を示しており、セパレータ本体11とMEA30との間の距離がH1であり、筋状凸部12b間の中心間距離がL1となっている。なお、以下の説明において、締結力を付与する前の状態を初期状態という。ガス流路形成部材12は、多数の貫通孔が網目状に形成されたエキスパンドメタルEMから形成されているため、同一の板厚であっても、貫通孔を有しない金属薄板に比較してその機械的な強度が低下している。また、ガス流路形成部材12においては、筋状凸部12bの成形幅が、筋状凹部12aの成形幅に比して小さくなるように成形されている。このため、セパレータ本体11に対してガス流路形成部材12が一体的に固設されていない場合においては、初期状態から締結力が付与されると、例えば、図7(b)に示すように、筋状凸部12bが変形することが考えられる。
すなわち、筋状凸部12bがセパレータ本体11に一体的に固設されていないため、セパレータ10の積層方向に締結力が付与されると、機械的な強度の低下と成形幅の狭さによって、筋状凸部12bがセパレータ本体11の表面を滑るように変形することが考えられる。このように、筋状凸部12bが変形すると、セパレータ本体11とMEA30との間の距離が初期状態のH1よりも小さいH2に変化し、また、筋状凸部12b間の中心間距離が初期状態のL1よりも大きなL2に変化する。これにより、ガス導通空間が小さくなって、ガスを効率よく供給する機能が損なわれる。また、筋状凸部12bが変形することにより、ガス導通空間内に偏流が発生し、ガス濃度勾配が不均一となる。さらに、筋状凸部12bが変形することにより、セパレータ本体11との接触状態が悪化し、その結果、接触抵抗が増大して、電気を効率よく集電する機能も損なわれる。
一方、図8は、セパレータ本体11に対して、上述したように、ガス流路形成部材12が一体的に固設された場合を概略的に示している。図8(a)は、図7(a)と同様に、ガス流路形成部材12が固設された場合の初期状態を示しており、セパレータ本体11とMEA30との間の距離がH1であり、筋状凸部12b間の中心間距離がL1となっている。そして、初期状態から締結力が付与されると、図8(b)に示すように、セパレータ本体11とMEA30との間の距離が初期状態のH1よりも僅かに小さいH2’に変化するのみであり、筋状凸部12b間の中心間距離L1は変化しない。これは、筋状凸部12bとセパレータ本体11とが一体的に固設されているため、上述したような筋状凸部12bの変形が防止される。これによって、積層方向の締結力によるセパレータ本体11とMEA30との相対変位が、筋状凸部12bに形成された貫通孔の変形によって吸収されるためである。また、筋状凸部12bが図7(b)に示すように変形しないため、セパレータ本体11との接触状態が良好に確保される。
また、燃料電池においては、発電に伴って、導電性を有しない酸化物がガス導通空間内に析出する場合がある。この酸化物が、特に、セパレータ本体11とガス流路形成部材12との接触部分における隙間に析出すると、接触抵抗が増大し、燃料電池の発電効率が低下する可能性がある。これに対し、ガス流路形成部材12は、セパレータ本体11に対して、金属的に接合して一体化される。このため、接触部分における隙間が存在せず、ガス流路形成部材12とセパレータ本体11との接触抵抗の増大を防止することができる。したがって、燃料電池の発電効率を良好に維持することができる。
このように、セパレータ本体11に対してガス流路形成部材12が一体的に固設されることにより、ガス流路形成部材12の変位を伴う好ましくない変形が効果的に防止される。したがって、ガスを効率よく供給する機能および電気を効率よく集電する機能を両立して確保することができる。これにより、燃料電池の発電効率を大幅に向上することができる。
上記第1実施形態においては、単セルに燃料ガスと酸化剤ガスとをそれぞれ導入するためのガス導入口11aおよびMEA30にて未反応のガスをそれぞれ導出するためのガス導出口11bとを形成して、燃料電池スタック内にそれぞれのガスのインナーマニホールドを形成するように実施した。この場合、燃料電池スタックに供給される酸化剤ガスが空気であれば、酸化剤ガスのガス供給インナーマニホールドおよびガス排出インナーマニホールドを省略することが可能である。以下、この第2実施形態について詳細に説明する。
この第2実施形態においては、燃料電池用セパレータ110(以下、単にセパレータ110という)が、図9に示すように構成される。そして、第2実施形態における単セルは、図10に示すように、2つのセパレータ110間にMEA130を狭持することによって構成される。さらに、単セルを多数積層することによって、燃料電池スタックが形成される。
セパレータ110は、導入されたガスの混流を防ぐセパレータ本体111と、外部から導入された燃料ガスまたは酸化剤ガスとしての空気をMEA130に導入するとともに電極反応によって発電された電気を集電するガス流路形成部材112を備えている。セパレータ本体111は、金属製の薄板(例えば、板厚が0.1mm程度のステンレス板など)から形成されており、その略中央部分には、所定深さ(例えば、0.5mm程度)の略長方形とされた窪み部111aが形成されている。なお、金属製の薄板としては、他に、例えば、金めっきなどの防錆処理を施した鋼板などを採用することができる。
そして、窪み部111a内には、ガス導入口111bと、同ガス導入口111bと対向する位置にガス導出口111cとが一対形成されている。ガス導入口111bは、略長楕円とされた貫通孔であり、例えば、燃料電池スタックに燃料ガスを供給するための図示しない燃料ガス供給装置から供給された燃料ガス(水素ガスなど)を窪み部111a内に導入するとともに、積層された他のセパレータ110に対して燃料ガスを流通する。ガス導出口111cも、略長楕円とされた貫通孔であり、窪み部111a内を導通した未反応の燃料ガスを窪み部111a外に導出するとともに、積層された他のセパレータ110からの未反応の燃料ガスを外部に流通する。
ガス流路形成部材112は、上述した第1実施形態のガス流路形成部材12と同様に、多数の小径の貫通孔が網目状に形成されたエキスパンドメタルEMから形成される。そして、上述した筋状凹凸部成形工程により、このエキスパンドメタルEMに筋状凹部112aおよび筋状凸部112bを連続的に成形する。ここで、成形される筋状凹部112aおよび筋状凸部112bの成形高さは、セパレータ本体111の窪み部111aの所定深さに比して、僅かに大きな高さとされている。なお、筋状凹部112aおよび筋状凸部112bの成形に関しては、上述した第1実施形態の筋状凹部12aおよび筋状凸部12bと同様に形成されるため、その詳細な説明を省略する。このように、筋状凹部112aおよび筋状凸部112bが成形されたエキスパンドメタルEMは、所定の大きさに成形されて、ガス流路形成部材112が形成される。
具体的に説明すると、図9に示すように、セパレータ本体111の窪み部111aに収容されるガス流路形成部材112は、ガス導入口111bから導入された燃料ガスがガス導出口111c方向へ導通可能となるように、すなわち、ガス導入口111bとガス導出口111cの配置方向に対して筋状凹部112aおよび筋状凸部112bが略平行となるように成形される。一方、窪み部111aの裏面側(空気導入側)に配置されるガス流路形成部材112は、その幅がセパレータ本体111の幅と略同一とされるとともに、燃料電池スタックの側面方向から空気を導通可能となるように、言い換えると、窪み部111aに収容されるガス流路形成部材112の筋状凹部112aおよび筋状凸部112bと略直交するように成形される。
そして、形成されたガス流路形成部材112は、上記第1実施形態と同様に、セパレータ本体111に一体的に固設される。このとき、ガス流路形成部材112は、窪み部111a内に収容される際、または、窪み部111aの裏面側に配置される際には、筋状凸部112bがセパレータ本体111に接触するように収容または配置される。そして、筋状凸部112bとセパレータ本体111は、上記第1実施形態と同様の接合工法、例えば、ロー付け工法、溶接工法や拡散接合工法などによって、金属的に接合される。
また、セパレータ110は、フレーム113と2個一対のスペーサ114を備えている。フレーム113は、セパレータ本体111にその一側にて固着されるものである。このフレーム113は、セパレータ本体111の外形寸法と略同一の外形寸法とされるとともに、窪み部111aの所定深さと略同一の板厚とされた薄肉の樹脂板から成形されている。そして、フレーム113の略中央部分には、窪み部111aの外形と相似形であり、窪み部111aの外形寸法に比して僅かに大きい収容孔113aが形成されている。そして、フレーム113は、セパレータ本体111の窪み部111aを収容して固着される。
スペーサ114は、セパレータ本体111およびフレーム113にその一側にて固着されて、酸化剤ガスとしての空気を導通するための空間を形成するとともに、他のセパレータ110を介して供給される燃料ガスをシールものである。このスペーサ114は、その長手方向寸法がセパレータ本体111の幅寸法と略同一で所定の幅寸法とされるとともに、ガス流路形成部材112の筋状凹部112aおよび筋状凸部112bの成形高さに比して、僅かに小さい板厚とされた薄肉の樹脂板から成形されている。そして、スペーサ114の略中央部分には、セパレータ本体111のガス導入口111bおよびガス導出口111cの各貫通孔の形状と略同一の形状とされた貫通孔114aが形成されている。
ここで、フレーム113の収容孔113aおよびスペーサ114の貫通孔114aは、板厚管理された樹脂板に対して、例えば、打ち抜き成形を施すことにより形成される。なお、フレーム113およびスペーサ114は、収容孔113aおよび貫通孔114aを有するように、例えば、射出成形によって成形可能であることはいうまでもない。
さらに、セパレータ110は、積層される他のセパレータ110との間のシール性を確保するために4枚2対のバックアッププレート115を備えている。バックアッププレート115は、薄肉の樹脂板から成形されており、ガス流路形成部材112にその一側にて固着されるとともに、セパレータ本体111またはスペーサ114に固定される。そして、セパレータ110がMEA130とともに単セルを形成した際には、ガス流路形成部材112とMEA130との間に狭持されることにより、シール性を確保するようになっている。
以上のように構成されたセパレータ110は、図10に示すように、他のセパレータ110とともにMEA130を狭持した状態で、例えば、接着剤などによって一体的に固着されることにより、単セルを形成する。ここで、MEA130は、上記第1実施形態と同様に構成されるものであるが、その形状が略長方形とされたガス流路形成部材112に合わせて略長方形形状とされている。このように、単セルを形成した状態においては、セパレータ本体111の窪み部111aの所定深さおよびスペーサ114の板厚がガス流路形成部材112の筋状凹部112aおよび筋状凸部112bの成形高さよりも僅かに小さいため、筋状凹部112aがセパレータ本体111によってMEA130側に若干押圧された状態で固着される。これにより、ガス流路形成部材112とMEA130との接触状態を良好に保つことができる。そして、形成された単セルは、多数積層されることによって、燃料電池スタックを構成する。
このように構成された燃料電池スタックにおいては、積層された単セル間で、スペーサ114の貫通孔114aを介して、ガス導入口111bがガス供給インナーマニホールドを形成し、ガス導出口111cがガス排出インナーマニホールドを形成している。このため、ガス供給インナーマニホールドから燃料ガスが供給されると、供給された燃料ガスは、セパレータ本体111の窪み部111a内に導入される。また、空気は、燃料電池スタックの側面すなわちセパレータ本体111およびフレーム113から形成されるセパレータ本体の幅方向側から直接導入される。導入された燃料ガスおよび空気は、上記第1実施形態と同様に、ガス流路形成部材112によってそのガス濃度勾配が均一とされることにより、MEA130のアノード電極層AEにおける電極反応の反応効率が高められる。
また、電極反応の反応効率が向上すると、MEA130によって、効率よく電気が発電される。この発電された電気は、ガス流路形成部材112およびセパレータ本体111を介して、燃料電池外部に取り出される。このとき、ガス流路形成部材112は、MEA130(詳しくは、カーボンクロスCC)に対して、接触面積が大きくなるように筋状凹部112aにて接触するように単セルが構成されている。このように、MEA130に接触面積を大きくして接触することにより、MEA130で発電された電気の集電抵抗を極めて小さくすることができ、発電された電気を効率よくすなわち集電効率を向上させて集電することができる。
また、この第2実施形態におけるガス流路形成部材112も、上記第1実施形態と同様に、セパレータ本体111に対して金属的に接合し、一体的に固設されている。これにより、この第2実施形態においても、単セル形成時に付与される締結力によって、ガス流路形成部材112の筋状凹部112aおよび筋状凸部112bが変形することが防止される。また、金属的に接合して一体化されているため、燃料電池の発電に伴って析出する酸化物による接触抵抗の増大を防止することもできる。したがって、この第2実施形態においても、ガスを効率よく供給する機能および電気を効率よく集電する機能を両立して確保することができる。
さらに、上記のように構成された燃料電池スタックにおいては、ガス流路形成部材112の幅寸法がセパレータ本体111の幅寸法と略同一とされており、筋状凹部112aおよび筋状凸部112bが幅方向に形成されているため、ガス流路形成部材112が外部と連通した状態であり、燃料電池スタックの側面から酸化剤ガスとしての空気を供給して排出することができる。このため、燃料電池スタック内に空気を直接供給するためのガス供給インナーマニホールドや空気を排出すためのガス排出インナーマニホールドを設ける必要がなく、燃料電池スタックを小型化することが可能となる。
また、本発明は、上記各実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。例えば、上記第1実施形態においては、ガス流路形成部材12とセパレータ本体11とを金属的に接合することによって、一体的に固設して実施した。しかし、ガス流路形成部材12とセパレータ本体11とを機械的に固設して実施可能であることはいうまでもない。この場合には、例えば、ガス流路形成部材12の筋状凸部12bの先端形状および成形間隔に合わせて、セパレータ本体11に窪みを成形しておく。そして、ガス流路形成部材12をセパレータ本体11に成形した窪みに合わせて設置する。これにより、締結力が付与された場合には、筋状凸部12bと前記窪みとが機械的に係合するため、図7(b)で示したような変形が防止される。この場合、上述した酸化物が析出した場合には、若干接触抵抗が増加することが想定されるが、この点を除けば、ガスを効率よく供給する機能および電気を効率よく集電する機能を両立して確保することができる。
また、上記各実施形態においては、セパレータ本体11,111を金属製の薄板としてのステンレス板から形成して実施した。しかしながら、セパレータ本体11,111が導電性を有することができれば、他の非金属製の薄板を用いて実施することができる。非金属製の薄板としては、例えば、カーボン粒子が導電性を有するバインダ(例えば、ポリプロピレン樹脂など)によって凝固されたカーボン製の薄板が挙げられる。このカーボン製の薄板からセパレータ本体11,111形成した場合においては、以下に示すように、ガス流路形成部材12,112とセパレータ本体11,111とを一体的に固設するとよい。
すなわち、ガス流路形成部材12,112を、前記バインダの融点以上に加熱する。そして、加熱したガス流路形成部材12,112をセパレータ本体11,111の所定位置(固設位置)に接触させる。これにより、バインダが融解するため、ガス流路形成部材12,112の筋状凸部12b,112bの先端部分が、セパレータ本体11,111に対して埋め込まれる。この状態から冷却することにより、バインダが再び凝固し、ガス流路形成部材12,112とセパレータ本体11,111とが一体的に固設される。したがって、この場合においても、上記各実施形態と同様の効果が期待できる。
10,110…燃料電池用セパレータ、11,111…セパレータ本体、12,112…ガス流路形成部材、12a,112a…筋状凹部、12b,112b…筋状凸部、13…接合部、20…フレーム、21,22…樹脂板本体、30,130…MEA、EM…エキスパンドメタル
Claims (9)
- 燃料電池の電極構造体を構成する電極層に対して、燃料ガスと酸化剤ガスとをそれぞれ供給するガス流路を形成する燃料電池用セパレータにおいて、
導電性を有し、前記燃料ガスと酸化剤ガスとを分離して混流を防止する平板状のセパレータ本体と、
多数の貫通孔を有し、前記セパレータ本体と前記電極層との間にて前記ガス流路を形成するとともに前記電極構造体によって発電された電気を集電する金属製のガス流路形成部材とを備え、
前記セパレータ本体に対して前記ガス流路形成部材を一体的に固設して構成したことを特徴とする燃料電池用セパレータ。 - 前記ガス流路形成部材は、多数の小径の貫通孔が網目状に形成された後に平板状に成形されたエキスパンドメタルから形成される請求項1に記載した燃料電池用セパレータ。
- 請求項1に記載した燃料電池用セパレータにおいて、
前記ガス流路形成部材は、連続的に成形された筋状の凹部と筋状の凸部とを有して構成されることを特徴とする燃料電池用セパレータ。 - 請求項3に記載した燃料電池用セパレータにおいて、
前記連続的に成形された筋状の凹部と筋状の凸部は、成形方向断面における前記筋状の凹部と筋状の凸部の成形幅のうちの一方が小さく形成されており、
前記セパレータ本体に対し、前記成形幅が小さく形成された筋状の凹部または筋状の凸部を接触させて、前記ガス流路形成部材を一体的に固設することを特徴とする燃料電池用セパレータ。 - 請求項4に記載した燃料電池用セパレータにおいて、
前記セパレータ本体に対して、前記成形幅が小さく形成された筋状の凹部または筋状の凸部に対応した窪みを形成したことを特徴とする燃料電池用セパレータ。 - 請求項1に記載した燃料電池用セパレータにおいて、
前記セパレータ本体は、金属製の薄板から形成されており、
前記ガス流路形成部材を、前記セパレータ本体に対して、金属的に接合して固設することを特徴とする燃料電池用セパレータ。 - 請求項6に記載した燃料電池用セパレータにおいて、
前記ガス流路形成部材と前記セパレータ本体は、
溶接工法、ロー付け工法および拡散接合工法のうちのいずれか一つの接合工法により、金属的に接合されることを特徴とする燃料電池用セパレータ。 - 請求項1に記載した燃料電池用セパレータにおいて、
前記セパレータ本体は、カーボン粒子と導電性を有するバインダとにより構成される薄板から形成されており、
前記ガス流路形成部材を、
前記薄板を構成する前記バインダを融解および凝固することにより、前記セパレータ本体に対して一体的に固設することを特徴とする燃料電池用セパレータ。 - 請求項1に記載した燃料電池用セパレータにおいて、
前記ガス流路形成部材は、
その幅方向の寸法が前記セパレータ本体の幅方向の寸法と略同一の寸法に形成されるとともに前記ガス流路を前記セパレータ本体の前記幅方向に形成しており、前記燃料ガスまたは酸化剤ガスの一方を前記セパレータ本体の前記幅方向から前記電極層に対して供給することを特徴とする燃料電池用セパレータ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005110788A JP2006294329A (ja) | 2005-04-07 | 2005-04-07 | 燃料電池用セパレータ |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007035527A (ja) * | 2005-07-29 | 2007-02-08 | Equos Research Co Ltd | 集電体及びその製造方法 |
JP2008177048A (ja) * | 2007-01-18 | 2008-07-31 | Mitsubishi Materials Corp | 燃料電池用ガス拡散部材及びその製造方法 |
JP2012199090A (ja) * | 2011-03-22 | 2012-10-18 | Toppan Printing Co Ltd | 燃料電池 |
JP2013541810A (ja) * | 2010-09-08 | 2013-11-14 | プリマス パワー コーポレイション | フロー電池用金属電極組立品 |
-
2005
- 2005-04-07 JP JP2005110788A patent/JP2006294329A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2007035527A (ja) * | 2005-07-29 | 2007-02-08 | Equos Research Co Ltd | 集電体及びその製造方法 |
JP2008177048A (ja) * | 2007-01-18 | 2008-07-31 | Mitsubishi Materials Corp | 燃料電池用ガス拡散部材及びその製造方法 |
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