JP2006294327A - 燃料電池用セパレータ - Google Patents
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Abstract
【課題】 ガスを良好に供給するとともに発電された電気を効率よく集電して、燃料電池の発電効率を向上させる燃料電池用セパレータを提供すること。
【解決手段】 燃料電池用セパレータは、コレクタ10とセパレータ本体20とから構成される。コレクタ10は、多数の小径の貫通孔が網目状に形成されたエキスパンドメタル11と、より小径の貫通孔が網目状に形成されたエキスパンドメタル12とを積層した積層エキスパンドメタルEMに、筋状凹部13と筋状凸部14が成形されて構成されている。この構成により、供給されたガスは小径の貫通孔を通過して拡散できるため、MEA40の反応効率が向上する。また、MEA40とエキスパンドメタル12とが接触することにより、集電抵抗を低減でき、集電効率が大幅に向上する。したがって、燃料電池の発電効率を向上させることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】 燃料電池用セパレータは、コレクタ10とセパレータ本体20とから構成される。コレクタ10は、多数の小径の貫通孔が網目状に形成されたエキスパンドメタル11と、より小径の貫通孔が網目状に形成されたエキスパンドメタル12とを積層した積層エキスパンドメタルEMに、筋状凹部13と筋状凸部14が成形されて構成されている。この構成により、供給されたガスは小径の貫通孔を通過して拡散できるため、MEA40の反応効率が向上する。また、MEA40とエキスパンドメタル12とが接触することにより、集電抵抗を低減でき、集電効率が大幅に向上する。したがって、燃料電池の発電効率を向上させることができる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、燃料電池、特に、燃料電池に採用されるセパレータに関する。
従来から、例えば、下記特許文献1に示すような燃料電池は知られている。この従来の燃料電池は、集電体に多孔質金属(ニッケル発泡体)を採用して、多孔質金属の孔から燃料ガスを供給するとともに、集電抵抗を低減するようになっている。これにより、ガス供給能が確保されるとともに、集電抵抗が低減され、発電効率の優れた燃料電池を提供するようになっている。
また、従来から、例えば、下記特許文献2に示すような燃料電池用のセパレータは知られている。この従来の燃料電池用のセパレータは、カーボンクロスから形成される導電性多孔体を備えていて、この導電性多孔体を通過してガスが電極層に供給される。そして、導電性多孔体を介して、発電された電気を集電するようになっている。これにより、ガス供給能を確保して効率よく集電するとともに、安価な燃料電池用のセパレータを提供するようになっている。
また、従来から、例えば、下記特許文献3に示すような燃料電池の構造も知られている。この燃料電池の構造におけるメタルセパレータは、アノード電極またはカソード電極を支持する集電部と、燃料ガスまたは酸化剤ガスを各電極に供給するための流路を形成する集電部サポートとを備える構造となっている。また、メタルセパレータの集電部と電極との間には、多数の貫通孔が形成されるとともにその表面に多数の凹凸形状を有するエキスパンドメタルが設けられている。そして、このエキスパンドメタルの厚み(凹凸寸法)を適宜調整することにより、燃料電池のアノード電極またはカソード電極とエキスパンドメタルとの接触を良好に確保することができ、発電された電気の損失を低減するようになっている。
さらに、従来から、例えば、下記特許文献4に示すような燃料電池のセパレータも知られている。この燃料電池のセパレータは、平板状の第1部材(カーボン)と、この第1部材に積層され、燃料電池の電極層に弾性的に接触するとともにガス流路を形成する複数の突片を有する第2部材(金属板)とから構成されている。そして、第2部材の複数の突片によって形成されたガス流路は、突片の周囲や内側に存在する空間とされていて、流入したガスがあらゆる方向に立体的に連通するようになっている。これにより、電極層に対して、ガス流路を流れるガスを良好に拡散させることができ、反応効率を高めることにより、燃料電池の発電効率を向上するようになっている。
特開平6−223836号公報
特開2003−203645号公報
特開平8−138701号公報
特開2002−184422号公報
一般的に、燃料電池の発電効率を向上させるためには、電極反応効率および集電効率を向上させることが重要である。このため、燃料電池に採用されるセパレータに要求される機能として、燃料電池に導入される燃料ガスと酸化剤ガスとを電極層に効率よく供給する機能と、電極反応により発電された電気を効率よく集電する機能が要求される。
ところで、上記特許文献1および特許文献2に示された従来の燃料電池および燃料電池用のセパレータにおいては、発電された電気を効率よく集電する機能については満足するものの、ガス導入に伴う抵抗(圧力損失)が大きく、ガスを充分に電極層に供給できない場合がある。このため、燃料電池の発電効率が低下する可能性がある。また、上記特許文献3に示された従来の燃料電池の構造においては、エキスパンドメタルと電極との接触が良好に確保されるため、発電された電気を効率よく集電する機能は満足する。しかし、気体不透過性の集電部サポートによって燃料ガスまたは酸化剤ガスが電極に供給される。このため、各電極に対して十分な燃料ガスまたは酸化剤ガスを供給できず、言い換えると、ガス拡散性が不均一となり、ガスを効率よく供給する機能を満足しない場合がある。
一方、上記特許文献4に示された従来の燃料電池のセパレータにおいては、ガスを効率よく供給する機能については満足するものの、電極層と接触する部位が突片の頂面付近となることから電気の集電抵抗が増大して集電効率が低下する場合がある。また、薄板の金属板に突片を成形する際には、成形上の制約、例えば、成形可能な突片の高さ制約などによって、燃料電池に要求される発電効率を確保できない場合がある。
このような燃料電池用セパレータに対する要求を満たすために、例えば、多数の貫通孔が網目状に形成されたエキスパンドメタルにガス流路を成形すれば、各電極層との接触を良好に確保しつつ、エキスパンドメタルの貫通孔をガスが通過することにより電極層に対するガス拡散性を良好に確保することができる。したがって、燃料電池用セパレータに要求される機能すなわちガスを効率よく供給する機能および発電された電気を効率よく集電する機能を両立できると考えられる。
しかしながら、エキスパンドメタルに貫通孔を形成する場合には、素材としての金属薄板の板厚未満の孔径で貫通孔を成形できないという製造上の制約がある。このため、電気を効率よく集電する機能を向上させるために、例えば、微細な貫通孔を多数形成する場合には、板厚の小さい金属薄板を用いる必要がある。しかし、板厚の小さい金属薄板から製造されたエキスパンドメタルは、機械的な強度が不足するために、燃料電池の組み立て時においてセパレータ自体に変形が生じ、ガスを効率よく供給する機能が損なわれる場合がある。その結果、燃料電池用セパレータに要求される機能が満足できない可能性がある。
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ガスを良好に供給するとともに発電された電気を効率よく集電して、燃料電池の発電効率を向上させる燃料電池用セパレータを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、燃料電池の電極構造体を構成する電極層に対して、燃料ガスと酸化剤ガスとをそれぞれ供給するとともに、前記電極層における電極反応によって発電された電気を集電する燃料電池用セパレータにおいて、導電性を有する素材から成形されて、前記燃料ガスと酸化剤ガスとを分離して混流を防止する平板状のセパレータ本体と、所定の孔径を有する多数の貫通孔が網目状に形成された第1の金属薄板から成形されて、前記セパレータ本体と前記電極層との間にて、前記燃料ガスまたは酸化剤ガスを前記電極層に供給するためのガス流路を形成するガス流路形成部材と、前記第1の金属薄板に形成された貫通孔の所定の孔径よりも小さな所定の孔径を有する多数の貫通孔が網目状に形成された第2の金属薄板から成形されて、前記ガス流路形成部材と前記電極層との間にて、前記電極層の電極反応によって発電された電気を集電する集電部材とを備えたことにある。この場合、前記第1の金属薄板および第2の金属薄板は、それぞれ、所定の孔径を有する多数の貫通孔が網目状に形成された後に平板状に成形されたエキスパンドメタルであるとよい。そして、この場合には、前記第2の金属薄板の板厚は、前記第1の金属薄板の板厚よりも小さいとよい。
また、前記ガス流路形成部材は、前記第1の金属薄板に対して、例えば、連続的に筋状の凹部と筋状の凸部とを成形することによって、前記ガス流路を形成するとよい。また、前記第1の金属薄板と前記第2の金属薄板とを積層し、同積層した第1の金属薄板および第2の金属薄板に対して、連続的に筋状の凹部と筋状の凸部とを成形することによって、前記ガス流路形成部材と前記集電部材とを一体的に形成するとよい。そして、これらの場合、前記連続的に成形された筋状の凹部と筋状の凸部は、成形方向断面における前記筋状の凹部と筋状の凸部の成形幅のうちの一方が幅広に成形され、この幅広に成形された筋状の凹部または筋状の凸部が前記電極層側に配置されるとよい。さらに、前記集電部材と前記電極層との間にて、導電性を有する繊維を設けるとよい。
これらによれば、燃料電池用セパレータは、セパレータ本体と、多数の貫通孔を有するガス流路形成部材と、ガス流路形成部材の貫通孔の孔径よりも小さな孔径の貫通孔を有する集電部材とから構成される。これにより、外部から導入されたガスは、ガス流路形成部材および集電部材の貫通孔を通過することにより、電極層に均一に接触する、言い換えれば、ガス濃度勾配を均一とすることができる。したがって、電極層の電極反応領域を大幅に向上させることができ、燃料電池の発電効率を大幅に向上させることができる。また、集電部材に形成された貫通孔の孔径は、ガス流路形成部材に形成された貫通孔の孔径よりも小さいため、例えば、ガス流路形成部材を直接電極層に接触させた場合の接触面積に比して、集電部材の電極層に対する接触面積を大幅に大きくすることができる。したがって、電気の集電抵抗を大幅に低減することができて、発電された電気を極めて効率よく集電することができる。
また、第1の金属薄板および第2の金属薄板として、エキスパンドメタルを採用することにより、網目状の多数の貫通孔を極めて容易にかつ安価に製造することができる。すなわち、このエキスパンドメタルは、平板状の薄肉金属板に対して、順次千鳥配置の切れ目を加工するとともに加工した切れ目を押し延ばすことによって、網目状の小径の貫通孔が連続的に形成されるものである。このため、例えば、打ち抜き加工によって形成される他の材料(例えば、パンチングメタルなど)に比して、歩留まり性が極めて良好であり、製造コストを低減することができる。したがって、このエキスパンドメタルからガス流路形成部材を形成することにより、燃料電池の製造コストを低減することができる。
そして、この場合、ガス流路形成部材は、より板厚の大きなエキスパンドメタルから形成することができるため、機械的な強度を十分に確保することができる。これにより、例えば、燃料電池の組み立て時に付与される締結力に対して、ガス流路形成部材の変形を防止することができ、常に、ガスを効率よく供給することができる。一方、集電部材は、より板厚の小さなエキスパンドメタルから形成することができるため、網目状の貫通孔を微細に形成できる。これにより、電極層との接触面積を大きく確保することができ、電気の集電抵抗を大幅に低減することができる。したがって、発電された電気を極めて効率よく集電することができる。
また、ガス流路形成部材に対して、連続的に筋状の凹部および筋状の凸部を成形して、ガス流路を形成することにより、ガスの導通に伴う抵抗すなわち圧力損失を大幅に低減することができる。このため、ガスをよりスムーズに導通させることができて、ガスと電極層との反応を促進することができる。したがって、これによっても、燃料電池の発電効率を大幅に向上することができる。一方で、圧力損失を大幅に低減することにより、ガスが導通する部分の開口面積を小さくすることもできる。これにより、燃料電池をコンパクトにすることができる。また、ガスの圧力損失が低減されることにより、電極層の電極反応によって生成される水が、電極反応で利用されなかった未反応ガスによって効率よく外部に排出される。このため、生成された水によってガス流路が塞がれることを防止でき、燃料電池に要求される発電効率を十分に確保することができる。
また、この場合、第1の薄肉金属と第2の薄肉金属とを積層して、連続的に筋状の凹部と筋状の凸部とを成形することができ、ガス流路形成部材と集電部材とを一体的に形成することができる。これにより、燃料電池の組み立てを効率よく行うことができるため、生産性を大幅に向上することもできる。
また、特に、ガス流路形成部材と集電部材とを一体的に形成した場合には、筋状の凹部および筋状の凸部の成形幅のうち、幅広に成形された筋状の凹部または筋状の凸部を電極層側に配置することにより、集電部材と電極層との接触面積が大きくすることができる。これにより、電極層との接触面積を大きくすることができ、電極層の電極反応によって発電された電気の集電効率を向上させることができる。また、電極層と集電部材との間に導電性を有する繊維を設けることにより、発電された電気が導電性を有する繊維を介して集電部材に移動しやすくなる。これによっても、集電効率を向上させることができる。さらに、導電性を有する繊維を設けることにより、導電性を有する繊維の弾性が筋状の凹部または筋状の凸部の成形誤差を吸収することができる。このため、燃料電池の組み立てを容易とすることができる。
また、本発明の他の特徴は、前記ガス流路形成部材は、その幅方向の寸法が前記セパレータ本体の幅方向の寸法と略同一の寸法に形成されるとともに前記ガス流路が前記セパレータ本体の前記幅方向に成形されており、前記燃料ガスまたは酸化剤ガスの一方を前記セパレータ本体の前記幅方向から前記電極層に対して供給することにもある。これによれば、燃料ガスまたは酸化剤ガスの一方を電極層へ供給するガス流路形成部材が、セパレータ本体の幅方向の寸法と略同一の幅方向の寸法とされるため、燃料電池の外部と連通した状態で燃料電池を構成することができる。これにより、外部と連通したガス流路形成部材が酸化剤ガスとして例えば空気を電極層に供給する場合には、同ガス流路形成部材は、燃料電池の側面から直接空気を導入することができ、また未反応の空気を直接外部に排出することができる。このため、燃料電池内に別途空気をガス流路形成部材まで供給するためのインナーマニホールドやガス流路形成部材から未反応の空気を排出すためのインナーマニホールドを設ける必要がなく、燃料電池を小型化することが可能となる。
以下、図面を用いて本発明の第1実施形態を詳細に説明する。図1は、燃料電池のセパレータを構成するガス流路形成部材としてのコレクタ10を示している。このコレクタ10は、燃料電池の電極構造体を構成する電極層(アノード電極層およびカソード電極層)に外部から供給される燃料ガスおよび酸化剤ガス(以下、まとめて単にガスともいう)を供給する機能と、これら電極層の電極反応によって発電された電気を集電する機能とを有するものである。このため、コレクタ10の形状としては、外部から供給されたガスを各電極層に効率よく供給することに加え、発電された電気を効率よく集電する形状が要求される。すなわち、外部から供給されたガスを各電極層に効率よく供給するためには、導通するガスの圧力損失を低減する形状であることが要求される。一方、発電された電気を効率よく集電するためには、各電極層との接触面積を大きくし集電抵抗を低減する形状であることが要求される。
したがって、コレクタ10は、図1に示すように、多数の網目状の貫通孔が形成されたエキスパンドメタル11,12に対して、導通ガスの圧力損失を低減するための多数の筋状凹部13および筋状凸部14が成形されている。また、集電抵抗を低減するために、筋状凹部13の成形幅に比して筋状凸部14の成形幅が大きくなるように成形されている。以下、このコレクタ10について詳細に説明する。
第1の金属薄板としてのエキスパンドメタル11は、板厚が0.1mm〜0.2mm程度のスレンレス板(例えば、フェライト系ステンレスなど)から形成されるものである。そして、エキスパンドメタル11は、図2(a)に示すように、孔径が0.1mm〜1mm程度とされた多数の小径の貫通孔が網目状に形成されている。また、エキスパンドメタル11は、図2(b)にて図2(a)のX−X断面を示すように、網目状の貫通孔を形成している部分(以下、この部分をストランドという)がボンド部11aによって順次連結されており、その断面形状が平板状とされている。
また、第2の金属薄板としてのエキスパンドメタル12は、板厚が0.05mm〜0.1mm程度のエキスパンドメタル11よりも小さな板厚のステンレス板(例えば、フェライト系ステンレスなど)から形成されるものである。そして、エキスパンドメタル12は、図3(a)に示すように、孔径が0.05mmから0.1mm程度とされた多数の小径の貫通孔が網目状に形成されている。なお、エキスパンドメタル12も、図3(b)にて図3(a)のY−Y断面を示すように、ストランドがボンド部12aによって順次連結されており、その断面形状が平板状とされている。
ここで、本実施形態においては、エキスパンドメタル12を、エキスパンドメタル11と同様に、例えば、フェライト系ステンレスから形成するように実施するが、エキスパンドメタル11,12の形成材料を互いに異ならせて実施可能であることはいうまでもない。この場合、エキスパンドメタル12は、エキスパンドメタル11の形成材料よりも板厚の小さな形成材料を用いて、後述するように形成される。このため、エキスパンドメタル12の形成材料としては、例えば、成形性の低い安価な材料を採用することができる。これにより、コレクタ10の製造コストを低減することができる。
これらのエキスパンドメタル11,12は、以下に説明するエキスパンドメタル成形工程を経て製造される。なお、エキスパンドメタル11およびエキスパンドメタル12は、同様のエキスパンドメタル成形工程を経て製造されるものである。このため、以下の説明においては、エキスパンドメタル11を製造する場合を例示して、エキスパンドメタル成形工程を説明する。
エキスパンドメタル成形工程は、まず、図4(a)に概略的に示すランスカットメタル加工装置Rを用いて、ステンレス板S1(上述した第1の金属薄板に相当)に多数の網目状の貫通孔を成形する。ランスカットメタル加工装置Rは、ステンレス板S1を供給するための送りローラORと、ステンレス板S1を順次せん断加工して網目状の貫通孔を成形する刃型Hとを備えている。なお、ステンレス板S1は、所定の長さに予め切断された板材であってもよいし、コイル状に巻き取られたコイル材であってもよい。刃型Hは、図4(b)に示すように、上下動可能な上刃UHと固設された下刃SHとから構成される。そして、上刃UHおよび下刃SHは、ステンレス板S1に対してせん断加工により千鳥配置に切れ目を形成するために、複数の山谷形状とされた刃を備えている。
このように構成されたランスカットメタル加工装置Rは、まず、送りローラORがステンレス板S1を所定の加工長さ(加工ピッチ)だけ刃型Hに送る。刃型Hの上刃UHは、送りローラORによってステンレス板S1が供給されると、下刃SH方向へ降下し、下刃SHとともにその山形状の部分によってステンレス板S1の一部をせん断して千鳥配置の切れ目を加工する。さらに続けて、上刃UHは最下点位置まで降下し、同上刃UHの刃と接触しているステンレス板S1を下方に曲げ伸ばし加工する。この曲げ伸ばし加工において、上刃UHは、ステンレス板S1に板厚以上に降下して最下点位置に到達する。これにより、ストランドが形成されて、小径の貫通孔が成形される。そして、上刃UHは、最下点位置に到達後に上方の原位置まで復帰する。この状態から、再び、送りローラORが加工ピッチだけステンレス板S1を刃型Hに送ると、上刃UHが降下し、切れ目加工および曲げ伸ばし加工が順次施される。
このように、ランスカットメタル加工装置Rが繰り返し動作することによって、ステンレス板S1に多数の網目状の貫通孔が形成されたランスカットメタルが形成される。ここで、上刃UHと下刃SHに谷部分を設けることにより、上刃UHの降下に伴ってステンレス板S1に切れ目が加工されない部分を形成することができる。この切れ目が加工されない部分を有することにより、製造されるランスカットメタルは、図4(a)に示すように、その断面形状が段形状として成形される。
次に、製造されたランスカットメタルを圧延することにより、エキスパンドメタル11を製造する。以下、この圧延工程を説明する。圧延工程は、図5に概略的に示す圧延成形機Aを用いて、上記のように製造されたランスカットメタルを圧延する。圧延成形機Aは、上下一対の圧延ローラARを備えていて、供給されたランスカットメタルを連続的に圧延する。これにより、ランスカットメタルの段形状部分が圧延ローラARによって圧延されて(引き伸ばされて)、エキスパンドメタル11が製造される。
ここで、エキスパンドメタル12も、上述したエキスパンドメタル11と同様に製造される。ただし、エキスパンドメタル12を製造するためのスレンレス板S2(第2の金属薄板に相当)の板厚は、エキスパンドメタル11を製造するためのステンレス板S1の板厚に比して小さく設定されている。このため、エキスパンドメタル12を製造するに際し、ランスカットメタル加工装置Rの刃型Hの上刃UHが到達する最下点位置を、エキスパンドメタル11を製造する場合に比して小さくする。これにより、エキスパンドメタル12の貫通孔の孔径を、エキスパンドメタル11の貫通孔の孔径よりも小さくして形成することができる。すなわち、上述したように、ランスカットメタル加工装置Rを用いて、ステンレス板に網目状の貫通孔を形成する場合には、ステンレス板に対して、板厚以上の切れ目を加工するとともに板厚以上に曲げ伸ばし加工する必要がある。このため、板厚の大きなステンレス板S1を用いて、エキスパンドメタル11を製造した場合には、網目状の貫通孔の孔径が大きくなる。言い換えれば、用いるステンレス板の板厚に応じて形成可能な貫通孔の孔径が異なる。したがって、板厚の大きなステンレス板S1を用いたエキスパンドメタル11は、形成される網目状の貫通孔の孔径が大きくなり、板厚の小さなステンレス板S2を用いたエキスパンドメタル12は、形成される網目状の貫通孔の孔径が小さくなる。
次に、上述したように製造されたエキスパンドメタル11およびエキスパンドメタル12に対して、多数の筋状凹部13および筋状凸部14を成形して、コレクタ10を最終的に製造する筋状凹凸成形工程について詳細に説明する。ここで、この第1実施形態においては、エキスパンドメタル11を用いて本発明のガス流路形成部材が成形され、エキスパンドメタル12を用いて本発明の集電部材が成形される。この筋状凹凸成形工程は、エキスパンドメタル11とエキスパンドメタル12とを積層し(以下、この積層したエキスパンドメタルを積層エキスパンドメタルEMという)、この積層エキスパンドメタルEMに対して、緩やかな凹凸形状(以下、この凹凸形状を波形形状という)を予備成形する予備成形工程と、波形形状が予備成形された積層エキスパンドメタルEMに筋状凹部13および筋状凸部14を成形する最終成形工程とから構成される。これにより、本発明のガス流路形成部材と集電部材とが一体的に形成される。
予備成形工程は、図6に示すようなコルゲート成形機Kを用いて、積層エキスパンドメタルEMに波形形状を成形する。このコルゲート成形機Kは、ピニオンギア形状のピニオンツールPTとラック形状のラックツールRTとを備えている。ピニオンツールPTは、供給される積層エキスパンドメタルEMの幅寸法に比して大きな軸線方向寸法を有していて、図示しない駆動装置に連結されたシャフトJに対して同軸的かつ相対回転不能に組み付けられている。ラックツールRTは、平板状に形成されており、ピニオンツールPTと対向する面には、ピニオンツールPTのピニオンギア形状と歯合するラック形状が形成されている。そして、ラックツールRTは、図示しない送り装置によって、ピニオンツールPTの回動に合わせてその軸線方向(図6において左右方向)に正確に変位するようになっている。また、ピニオンツールPTに形成されたピニオンギア形状とラックツールRTに形成されたラック形状の歯の高さは、予備成形工程にて成形される波形形状の凹凸の成形寸法(以下、予備成形寸法という)が後述する最終成形工程にて成形される筋状凹部13および筋状凸部14の最終成形寸法Lよりも所定寸法ΔLだけ大きくなるように設定されている。
このように構成されたコルゲート成形機Kを用いた予備成形工程においては、上述のように製造されたエキスパンドメタル11とエキスパンドメタル12とが供給途中で積層され、ピニオンツールPTとラックツールRTとの歯合部分に積層エキスパンドメタルEMとして連続的に供給される。これにより、積層エキスパンドメタルEMを効率よく製造することができる。そして、積層エキスパンドメタルEMが供給されると、ピニオンツールPTは、駆動装置からシャフトJを介して伝達された駆動力によって回動を開始する。また、ラックツールRTは、送り装置により、ピニオンツールPTの回動に合わせて軸線方向への変位を開始する。これにより、積層エキスパンドメタルEMは、図7(a)に示すように、ピニオンツールPTとラックツールRTの噛み合わせ部分(詳しくは、ピニオンギア形状とラック形状の歯の噛み合わせ部分)にて連続的に波形形状が成形される。そして、予備成形工程によって積層エキスパンドメタルEMに成形される波形形状の高さ方向における予備成形寸法は、図7(b)に示すように、最終成形寸法LよりもΔLだけ大きく成形される。言い換えれば、コレクタ10の筋状凹部13および筋状凸部14の形成方向における断面の断面長に比して、予備成形された積層エキスパンドメタルEMの波形形状の形成方向における断面の断面長が大きく(長く)なるように成形される。
このように、予備成形工程によって連続的に波形形状が成形された積層エキスパンドメタルEMは、コレクタ10に製品寸法と等しくなるように切断されて、最終成形工程に供給される。最終成形工程は、波形形状が予備成形された積層エキスパンドメタルEMに対し、最終形状としての筋状凹部13および筋状凸部14を成形して最終的にコレクタ10を製造する工程である。この最終成形工程は、図8(a)に概略的に示すように、プレス成形機Oを用いて筋状凹部13と筋状凸部14をプレス成形する。プレス成形機Oは、床面に固設された下型SOと、同下型SOの上方に配置されて上下動可能な上型UOとを備えている。そして、これら下型SOと上型UOの対向する面には、筋状凹部13および筋状凸部14を成形するための凹凸形状が形成されている。ここで、下型SOと上型UOに形成される凹形状と凸形状の形成幅については、凹形状の形成幅が凸形状の形成幅よりも大きくなるように設定されている。また、凹形状の形成深さと凸形状の形成高さについては、最終成形寸法Lと略等しくなるように設定されている。
このように構成されたプレス成形機Oを用いた最終成形工程においては、まず、予備成形された積層エキスパンドメタルEMが凹凸形状の形成された下型SOの上面に載置される。この載置においては、図8(a)に示すように、積層エキスパンドメタルEMに成形された波形形状の凹凸が下型SOに形成された凹凸形状と一致するように載置される。この状態にて、上型UOが下型SOの方向に降下すると、下型SOおよび上型UOに形成された凹凸形状によって、図8(b)に示すように、積層エキスパンドメタルEMに筋状凹部13および筋状凸部14が形成される。
ここで、上述したように、予備成形工程によって成形された波形形状の予備成形寸法はL+ΔLであり、最終成形寸法によって成形された筋状凹部13および筋状凸部14の最終成形寸法はLとなっている。このため、最終成形工程においては、積層エキスパンドメタルEMを圧縮しながら、言い換えれば、波形形状の成形方向における断面の断面長を縮めながら筋状凹部13および筋状凸部14を成形する。これにより、特に、略直角に曲げ加工される筋状凹部13および筋状凸部14の角部分が過度に延ばされる(引っ張られる)ことを効果的に防止することができる。このため、積層エキスパンドメタルEMのように、加工硬化の生じた薄肉の素材であっても、割れや破断の発生を防止して容易に曲げ加工を施すことができる。
すなわち、積層エキスパンドメタルEM、より詳しくは、エキスパンドメタル11およびエキスパンドメタル12は、その製造時において、網目状の貫通孔を成形するためのせん断加工や曲げ伸ばし加工や圧延加工によって、ボンド部11a,12aの周辺に加工硬化が生じている。このため、上述した予備成形を行わずに筋状凹部13および筋状凸部14を成形した場合には、例えば、ボンド部11a,12aが筋状凹部13や筋状凸部14の角部分に存在していると、曲げ加工に伴う伸びが不足して割れや破断が発生する場合がある。これに対して、積層エキスパンドメタルEMに波形形状を予備成形しておき、圧縮しながら筋状凹部13および筋状凸部14を成形すれば、積層エキスパンドメタルEMすなわちエキスパンドメタル11およびエキスパンドメタル12の余肉(詳しくは、ストランド)を角部分に向けて流動させることができる。したがって、曲げ加工に伴ってボンド部11a,12aが過度に延ばされないため、良好に曲げ可能を施すことができる。
このように製造されたコレクタ10は、固体高分子型燃料電池を構成するセパレータとして用いられる。以下、コレクタ10を採用した固体高分子型燃料電池について説明する。固体高分子型燃料電池は、一般的に、単セルが多数積層された燃料電池スタックから形成される。そして、この第1実施形態に係る単セルは、図9にその構成を示すように、上述したコレクタ10およびセパレータ本体20から構成されるセパレータを上下に配し、同セパレータ間に2枚の樹脂フレーム30およびMEA40(Membrane−Electrode Assembly:膜−電極アッセンブリ)を備えて構成される。このように構成された単セルに対して、例えば水素ガスなどの燃料ガスと、例えば空気などの酸化剤ガスとが燃料電池スタックの外部から導入されることにより、MEA40での電極反応によって電気が発電される。ここで、以下の説明においては、燃料ガスと酸化剤ガスとをまとめて単にガスともいう。なお、酸化剤ガスには、MEA40による電極反応に伴って発生する反応熱を冷却するとともにMEA40が適度な水分を有するように水のミストが含まれる場合がある。
セパレータ本体20は、図9に示すように、略正方形の平板状に形成されて、燃料電池スタック内に導入されたガスの混流を防ぐものである。そして、セパレータ本体20は、薄肉金属板(例えば、板厚が0.1mm程度のステンレス板など)から形成されている。なお、薄肉金属板としては、他に、例えば、金めっきなどの防食処理を施した鋼板などを採用することができる。また、薄肉金属板から形成されるセパレータ本体20に代えて、平板状のカーボンなど導電性を有する他の材料からセパレータ本体20を形成することもできる。
また、セパレータ本体20の周縁部分には、ガス導入口21と、同ガス導入口21と対向する位置にガス導出口22が2対形成されている。ここで、各対は、互いに略直交するように形成されている。ガス導入口21は、略長楕円状の貫通孔に形成されていて、燃料電池スタックの外部から供給された燃料ガスまたは酸化剤ガスを単セル内に導入するとともに、積層された他の単セルに対して、供給された燃料ガスまたは酸化剤ガスを流通する。ガス導出口22も、略長楕円状の貫通孔に形成されていて、単セル内にガス導入口21から導入されたガスのうちMEA40にて未反応のガスを外部に排出するとともに、積層された他の単セルからの未反応のガスを流通する。
樹脂フレーム30は、図9に示すように、同一の構造とされた2枚一対の樹脂板から形成されていて、2枚のセパレータ本体20にそれぞれの一面側が固着される。そして、樹脂フレーム30は、セパレータ本体20の外形寸法と略同一の外形寸法とされるとともに、コレクタ10の筋状凹部13および筋状凸部14の成形高さよりも僅かに小さい板厚とされている。ここで、2枚の樹脂フレーム30は、一の樹脂フレーム30に対して、他の樹脂フレーム30が同一平面方向にて略90°回転した状態で配置されて積層される。なお、樹脂フレーム30を形成する樹脂板は、種々の樹脂材料を採用することができ、好ましくは、ポリカーボネートやガラスエポキシ樹脂などを採用するとよい。
また、樹脂フレーム30には、その周縁部分にて、単セルを構成した状態でセパレータ本体20に形成されたガス導入口21およびガス導出口22の各貫通孔に対応する位置に同各貫通孔の形状と略同一の形状の貫通孔31および貫通孔32が形成されている。さらに、樹脂フレーム30には、その略中央部分にて、コレクタ10を収容する収容孔33が形成されている。この収容孔33は、固着されるセパレータ本体20に形成された一対のガス導入口21およびガス導出口22と、積層される他の樹脂フレーム30に形成された貫通孔31および貫通孔32とを収容するように形成されている。ここで、樹脂フレーム30の貫通孔31,32および収容孔33は、板厚管理された樹脂板に対して、例えば、打ち抜き成形を施すことにより形成される。なお、樹脂フレーム30は、貫通孔31,32および収容孔33を有するように、例えば、射出成形によって成形可能であることはいうまでもない。
このように、収容孔33を形成することにより、固着されるセパレータ本体20の下面(または上面)、収容孔33の内周面およびMEA40の上面(または下面)によって空間(以下、この空間をガス導通空間という)が形成される。そして、ガス導通空間に対して、例えば、燃料ガスを一方のガス導入口21から、また、酸化剤ガスを他方のガス導入口21および貫通孔31から導入することができる。また、ガス導通空間を通過した未反応のガスは、一方のガス導出口22を介して、また、他方のガス導出口22および貫通孔32を介して外部に導出することができる。
電極構造体としてのMEA40は、図9に示すように、電解質膜EFを備えている。電解質膜EFは、樹脂フレーム30を積層した際に形成される略正方形の開口部分に比して大きく、かつ、樹脂フレーム30を積層した状態で貫通孔31,32を塞がない大きさに成形されている。このように、電解質膜EFを成形することにより、ガス導通空間に導入されたガスが他側に形成されたガス導通空間に漏れることを防止することができる。そして、電解質膜EF上には、図10に詳細に示すように、燃料ガスが導入されるガス導通空間側に配置されるアノード電極層AEと、酸化剤ガスが導入されるガス導通空間側に配置されるカソード電極層CEとが、所定の触媒を層状に積層することにより形成される。このように、電解質膜EF上に形成されるアノード電極層AEおよびカソード電極層CEは、その大きさが樹脂フレーム30を積層した際に形成される略正方形の開口部分に比して僅かに小さい外形寸法とされている。なお、MEA40における電極反応については、本発明に直接関係しないため、その詳細な説明を省略する。
また、MEA40のアノード電極層AEおよびカソード電極層CEのそれぞれの表面側は、導電性を有した繊維としてのカーボンクロスCCで覆われる。このカーボンクロスCCは、アノード電極層AEまたはカソード電極層CEとコレクタ10との接触面積を大きく確保するとともに、単セルを構成した際の各構成部品の寸法誤差を吸収するものである。なお、MEA40は、このカーボンクロスCCを省略して構成することも可能である。
そして、2枚のセパレータ本体20間に、コレクタ10、樹脂フレーム30およびMEA40を積層することによって単セルが構成される。具体的に説明すると、互いに同一平面内にて略90°回転して配置される樹脂フレーム30間にMEA40を挟持し、例えば、接着剤などを塗布することにより、樹脂フレーム30間にMEA40の電解質膜EFを一体的に固着する。このように一体的に固着された樹脂フレーム30およびMEA40に対して、コレクタ10を樹脂フレーム30の収容孔33内に収容した状態で、2枚のセパレータ本体20を、例えば、接着剤などを塗布することにより、一体的に固着する。このとき、コレクタ10は、図10に示すように、成形幅が幅広の筋状凹部13とMEA40(詳しくは、カーボンクロスCC)とが接触するように配置される。また、樹脂フレーム30の板厚が筋状凹部13および筋状凸部14の成形高さよりも僅かに小さい寸法とされているため、筋状凹部13がセパレータ本体20によってMEA40側に若干押圧された状態で固着される。これにより、コレクタ10とMEA40との接触状態を良好に保つことができる。そして、このように形成された単セルは、多数積層された後、例えば、図示しないボルトとナットによって所定の締結力で固定されることによって、燃料電池スタックを構成する。
このように構成された燃料電池スタックを有する固体高分子型燃料電池においては、上述した各工程を経て製造されたコレクタ10によって、MEA40のアノード電極層AEおよびカソード電極層CEに燃料ガスおよび酸化剤ガスを効率よく供給することができる。具体的に説明すると、コレクタ10は、薄肉のエキスパンドメタル11およびエキスパンドメタル12が積層された積層エキスパンドメタルEMに筋状凹部13および筋状凸部14が形成されて構成されている。このため、外部からガス導入口21を介してガス導通空間内に導入されたガスは、筋状凹部13または筋状凸部14を導通することにより、圧力損失を大幅に低減することができる。したがって、ガス導通空間内を導通するガスは、スムーズに導通することができるため、ガスと電極層との反応を促進することができ、燃料電池の発電効率を向上させることができる。
また、コレクタ10を構成する積層エキスパンドメタルEMは、大きな孔径の貫通孔が形成されたエキスパンドメタル11に対し、小さな孔径の貫通孔が形成されたエキスパンドメタル12を積層して形成される。このため、ガス導通空間内に導入されたガスは、エキスパンドメタル12に形成された小さな孔径の貫通孔を介して、容易に拡散することができる。これにより、導入されたガスは、ガス導通空間内全体に均一に広がることができる。したがって、ガス導通空間内のガス濃度勾配が均一化され、電極層の電極反応領域は、形成したアノード電極層AEおよびカソード電極層CEの全面となる。この結果、有効な電極反応領域が増大することにより、アノード電極層AEおよびカソード電極層CEは、供給された燃料ガスまたは酸化剤ガスと効率よく電極反応することができ、電極反応効率を大幅に向上させることができる。また、供給されたガスを有効に利用することができるため、未反応のガスが減少する。これらにより、燃料電池は、効率よく電気を発電することができる。
ところで、上述したように、MEA40によって効率よく発電された電気は、コレクタ10およびセパレータ本体20を介して、燃料電池外部に取り出される。このとき、コレクタ10が、MEA40(詳しくは、カーボンクロスCC)に対して、筋状凹部13にて接触するように単セルが構成されている。これにより、接触面積が大きくなる。また、コレクタ10を構成する積層エキスパンドメタルEMに多数の小径の貫通孔が形成されていることによっても、MEA40との接触面積が大きくなる。すなわち、コレクタ10が積層エキスパンドメタルEMから構成される場合には、MEA40の電極層に対してエキスパンドメタル12が接触するため、例えば、コレクタ10をエキスパンドメタル11のみから構成した場合に比して、接触面積を大幅に大きくすることができる。このように、MEA40との接触面積を大きくすることにより、MEA40で発電された電気を集電する際の抵抗(集電抵抗)を極めて小さくすることができ、発電された電気を効率よくすなわち集電効率を大幅に向上させて集電することができる。
ここで、コレクタ10が積層エキスパンドメタルEMから形成されることにより、単セルが燃料電池スタックを構成する際の締結力に対して、コレクタ10の変形が効果的に防止される。すなわち、上述したように、コレクタ10とMEA40との接触面積を大きくして集電抵抗を低減するためには、エキスパンドメタル12のように、形成される網目状の貫通孔の孔径をより小さくして、単位面積当たりの貫通孔の割合、言い換えれば、開口率を大きくすることが望ましい。しかしながら、エキスパンドメタルにおいては、金属薄板の板厚を小さくして開口率を大きくしなければならず、これにより、エキスパンドメタルの機械的な強度が大幅に低下する。したがって、例えば、エキスパンドメタル12のみからコレクタ10を形成した場合には、前記締結力によって、コレクタ10が変形することにより、ガス導通空間内のガスの良好な導通が阻害されたり、MEA40との接触面積が減少して集電抵抗が増大したりする。
これに対して、エキスパンドメタル11上にエキスパンドメタル12を積層した積層ラエキスパンドメタルEMを用いてコレクタ10を形成することによって、上記問題が解決することができる。すなわち、板厚の大きな第1の金属薄板から形成されたエキスパンドメタル11により、前記締結力に対するコレクタ10の機械的強度が十分に確保されて、ガス流路の変形が防止され、ガス導通空間内のガスの導通を良好に確保することができる。また、上述したように、板厚の小さな第2の金属薄板から形成されたエキスパンドメタル12により、MEA40との接触面積が十分に確保されて、集電抵抗を低減することができる。したがって、コレクタ10を積層エキスパンドメタルEMから形成することにより、燃料電池の発電効率を大幅に向上することができる。
上記第1実施形態においては、単セルに燃料ガスと酸化剤ガスとをそれぞれ導入するためのガス導入口21およびMEA40にて未反応のガスをそれぞれ導出するためのガス導出口22とを形成して、燃料電池スタック内にそれぞれのガスのインナーマニホールドを形成するように実施した。この場合、燃料電池スタックに供給される酸化剤ガスが空気であり、特に、空気を直接単セルのカソード電極層CE側に導入可能に燃料電池を設置する場合には、酸化剤ガスのガス供給インナーマニホールドおよびガス排出インナーマニホールドを省略することが可能である。以下、この第2実施形態について詳細に説明する。
この第2実施形態においては、燃料電池用セパレータが、図11に示すように構成される。そして、第2実施形態における単セルは、図12に示すように、2つのセパレータ間にMEA140を狭持することによって構成される。さらに、単セルを多数積層することによって、燃料電池スタックが形成される。
この第2実施形態に係るセパレータは、上述した第1実施形態と同様に構成されたコレクタ110と、導入されたガスの混流を防ぐセパレータ本体120とを備えている。セパレータ本体120は、薄肉金属板(例えば、板厚が0.1mm程度のステンレス板など)から形成されており、その略中央部分には、所定深さ(例えば、0.5mm程度)の略長方形とされた窪み部123が形成されている。なお、薄肉金属板としては、他に、例えば、金めっきなどの防食処理を施した鋼板などを採用することができる。
そして、窪み部123内には、上述した第1実施形態と同様のガス導入口121と、同ガス導入口121と対向する位置にガス導出口122とが一対形成されている。ガス導入口121は、略長楕円とされた貫通孔であり、例えば、燃料電池スタックに燃料ガスを供給するための図示しない燃料ガス供給装置から供給された燃料ガス(水素ガスなど)を窪み部123内に導入するとともに、積層された他のセパレータに対して燃料ガスを流通する。ガス導出口122も、略長楕円とされた貫通孔であり、窪み部123内を導通した未反応の燃料ガスを窪み部123外に導出するとともに、積層された他のセパレータからの未反応の燃料ガスを外部に流通する。
次に、第2実施形態に係る単セルの構成について具体的に説明する。第2実施形態においては、コレクタ110が、図11に示すように、セパレータ本体120の窪み部123に収容される。そして、コレクタ110は、ガス導入口121から導入された燃料ガスがガス導出口122方向へ導通可能となるように、すなわち、ガス導入口121とガス導出口122の配置方向に対して筋状凹部113および筋状凸部114が略平行となるように収容される。一方、窪み部123の裏面側(空気導入側)に配置されるコレクタ110は、その幅がセパレータ本体120の幅と略同一とされるとともに、燃料電池スタックの側面方向から空気を導通可能となるように、言い換えると、窪み部123に収容されるコレクタ110の筋状凹部113および筋状凸部114と略直交するように配置される。そして、コレクタ110は、窪み部123に収容される際、または、窪み部123の裏面側に配置される際には、セパレータ間に配置されるMEA140のアノード電極層AEまたはカソード電極層CEに対して、筋状凹部113が接触するように収容または配置される。
また、単セルは、フレーム130と2個一対のスペーサ134を備えている。フレーム130は、セパレータ本体120にその一側にて固着されるものである。このフレーム113は、セパレータ本体120の外形寸法と略同一の外形寸法とされるとともに、窪み部123の所定深さと略同一の板厚とされた薄肉の樹脂板から成形されている。そして、フレーム130の略中央部分には、窪み部123の外形と相似形であり、窪み部123の外形寸法に比して僅かに大きい収容孔133が形成されている。そして、フレーム130がセパレータ本体120の窪み部123を収容して固着することにより、セパレータ本体120が略平板状に形成される。
スペーサ134は、セパレータ本体120およびフレーム130にその一側にて固着されて、酸化剤ガスとしての空気を導通するための空間を形成するとともに、他のセパレータを介して供給される燃料ガスをシールものである。このスペーサ134は、その長手方向寸法がセパレータ本体120の幅寸法と略同一で所定の幅寸法とされるとともに、コレクタ110の筋状凹部113および筋状凸部114の成形高さに比して、僅かに小さい板厚とされた薄肉の樹脂板から成形されている。そして、スペーサ134の略中央部分には、セパレータ本体120のガス導入口121およびガス導出口122の各貫通孔の形状と略同一の形状とされた貫通孔134aが形成されている。
ここで、フレーム130の収容孔133およびスペーサ134の貫通孔134aは、板厚管理された樹脂板に対して、例えば、打ち抜き成形を施すことにより形成される。なお、フレーム130およびスペーサ134は、収容孔133および貫通孔134aを有するように、例えば、射出成形によって成形可能であることはいうまでもない。
さらに、セパレータは、コレクタ110の脱落を防止するために4枚2対のバックアッププレート150を備えている。バックアッププレート150は、コレクタ110にその一側にて固着されるとともに、セパレータ本体120またはスペーサ134に固定される。また、バックアッププレート150は、薄肉の樹脂板から成形されており、セパレータがMEA140とともに単セルを形成した際には、コレクタ110とMEA140との間に狭持されることにより、シール性を確保するようになっている。
そして、図12に示すように、単セルが形成される。ここで、MEA140は、上記第1実施形態と同様に構成されるものであるが、その形状が略長方形とされたコレクタ110に合わせて略長方形形状とされている。このように、単セルを形成した状態においては、セパレータ本体120の窪み部123の所定深さおよびスペーサ134の板厚がコレクタ110の筋状凹部113および筋状凸部114の成形高さよりも僅かに小さいため、筋状凹部113がセパレータ本体120によってMEA140側に若干押圧された状態で固着される。これにより、コレクタ110とMEA140との接触状態を良好に保つことができる。そして、形成された単セルは、多数積層されることによって、燃料電池スタックを構成する。
このように構成された燃料電池スタックにおいては、積層された単セル間で、スペーサ134の貫通孔134aを介して、ガス導入口121がガス供給インナーマニホールドを形成し、ガス導出口122がガス排出インナーマニホールドを形成している。このため、ガス供給インナーマニホールドから燃料ガスが供給されると、供給された燃料ガスは、セパレータ本体120の窪み部123内に導入される。また、空気は、燃料電池スタックの側面すなわちセパレータ本体120の幅方向側から直接導入される。導入された燃料ガスおよび空気は、上記第1実施形態と同様に、コレクタ110によってそのガス濃度勾配が均一とされることにより、MEA140のアノード電極層AEにおける電極反応の反応効率が高められる。
また、電極反応の反応効率が向上すると、MEA140によって、効率よく電気が発電される。この発電された電気は、上記第1実施形態と同様に、コレクタ110およびセパレータ本体120を介して、燃料電池外部に取り出される。このとき、コレクタ110は、MEA140(詳しくは、カーボンクロスCC)に対して、接触面積が大きくなるように筋状凹部113にて接触するように単セルが構成されている。また、コレクタ110を構成する積層エキスパンドメタルEMに多数の小径の貫通孔が形成されていることによっても、MEA140との接触面積が大きくなる。すなわち、コレクタ110が積層エキスパンドメタルEMから構成される場合には、MEA140の電極層に対してエキスパンドメタル112が接触するため、例えば、コレクタ110をエキスパンドメタル111のみから構成した場合に比して、接触面積を大幅に大きくすることができる。このように、MEA140との接触面積を大きくすることにより、MEA140で発電された電気を集電する際の抵抗(集電抵抗)を極めて小さくすることができ、発電された電気を効率よくすなわち集電効率を大幅に向上させて集電することができる。
さらに、上記のように構成された燃料電池スタックにおいては、コレクタ110の幅寸法がセパレータ本体120の幅寸法と略同一とされており、筋状凹部113および筋状凸部114が幅方向に形成されているため、コレクタ110が外部と連通した状態であり、燃料電池スタックの側面から酸化剤ガスとしての空気を供給して排出することができる。このため、燃料電池スタック内に空気を直接供給するためのガス供給インナーマニホールドや空気を排出すためのガス排出インナーマニホールドを設ける必要がなく、燃料電池スタックを小型化することが可能となる。
また、本発明は、上記各実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。例えば、上記各実施形態においては、エキスパンドメタル11,12を積層した積層エキスパンドメタルEMを用いて、コレクタ10,110を製造するように実施した。しかしながら、ランスカットメタル加工装置Rによって製造した段形状のランスカットメタルをそのまま用いて、コレクタ10,110を製造するように実施してもよい。この場合、上述した第1実施形態のエキスパンドメタル11,12と同様に、形成される孔径が異なるランスカットメタルを製造しておく。そして、これらのランスカットメタルを積層し、この積層したランスカットメタルに対して、予備成形および最終成形を施して、コレクタ10,110を製造する。このように製造されるコレクタにおいても、上記各実施形態と同様に、ガス導入空間内におけるガス濃度勾配を均一とすることができ、また、MEA40,140における電極反応により発電された電気を効率よく集電することができるため、上記各実施形態と同様の効果が期待できる。
また、上記各実施形態においては、積層エキスパンドメタルEMを用い、ガス流路形成部材と集電部材とを一体的に形成したコレクタ10,110を製造するように実施した。しかしながら、コレクタ10,110をガス流路形成部材と集電部材とに分離して構成することも可能である。この場合においては、例えば、第1実施形態を例に説明すると、エキスパンドメタル11に筋状凹部13と筋状凸部14を形成してガス流路形成部材を成形しておく。また、エキスパンドメタル12を平板状に形成して集電部材を成形しておく。そして、ガス流路形成部材とMEA40との間に集電部材を配置する。これにより、エキスパンドメタル11から成形したガス流路形成部材によって、ガス導入空間内におけるガス濃度勾配を均一とすることができ、また、エキスパンドメタル12から成形した集電部材によって、MEA40における電極反応により発電された電気を効率よく集電することができる。したがって、上記各実施形態と同様の効果が期待できる。
さらに、上記各実施形態においては、MEA40,140のアノード電極層AE側とカソード電極層CE側に配置されるコレクタ10,110およびセパレータ本体20,120は、ともに同様の材料から形成されるように実施した。ところで、燃料電池においては、MEA40の電極反応に伴って、コレクタ10,110およびセパレータ本体20,120が材料劣化する場合があり、この材料劣化は、アノード電極層AE側とカソード電極層CE側とで、その劣化メカニズムが異なる場合がある。すなわち、アノード電極層AE側においては、コレクタ10,110およびセパレータ本体20,120の形成材料(金属材料)から、例えば、金属イオンが溶出することによって、材料劣化が発生する場合がある。一方、カソード電極層CE側においては、コレクタ10,110およびセパレータ本体20,120の形成材料(金属材料)の表面に、例えば、厚い酸化皮膜が形成されることによって、材料劣化が発生する場合がある。
このため、本発明の実施においては、アノード電極層AE側に配置されるコレクタ10,110の形成材料およびアノード電極層AE側に面するセパレータ本体20,120の形成材料(より詳しくは、同本体20,120の表面の形成材料)と、カソード電極層CE側に配置されるコレクタ10,110の形成材料およびカソード電極層CE側に面するセパレータ本体20,120の形成材料(より詳しくは、同本体20,120の表面の形成材料)とを互いに異ならせて実施することも可能である。この場合においては、アノード電極層AE側に配置されるコレクタ10,110およびセパレータ本体20,120の形成材料として、例えば、クロム合金など、金属イオンが溶出しにくい材料を採用するとよい。一方、カソード電極層CE側に配置されるコレクタ10,110およびセパレータ本体20,120の形成材料として、例えば、ニッケル合金など、酸化皮膜を形成しにくい材料を採用するとよい。これにより、コレクタ10,110およびセパレータ本体20,120の材料劣化が大幅に低減され、上記実施形態と同様の効果を長期に渡り維持することができる。
10,110…コレクタ、11…エキスパンドメタル、12…エキスパンドメタル、13…筋状凹部、14…筋状凸部、20,120…セパレータ本体、40,140…MEA
Claims (8)
- 燃料電池の電極構造体を構成する電極層に対して、燃料ガスと酸化剤ガスとをそれぞれ供給するとともに、前記電極層における電極反応によって発電された電気を集電する燃料電池用セパレータにおいて、
導電性を有する素材から成形されて、前記燃料ガスと酸化剤ガスとを分離して混流を防止する平板状のセパレータ本体と、
所定の孔径を有する多数の貫通孔が網目状に形成された第1の金属薄板から成形されて、前記セパレータ本体と前記電極層との間にて、前記燃料ガスまたは酸化剤ガスを前記電極層に供給するためのガス流路を形成するガス流路形成部材と、
前記第1の金属薄板に形成された貫通孔の所定の孔径よりも小さな所定の孔径を有する多数の貫通孔が網目状に形成された第2の金属薄板から成形されて、前記ガス流路形成部材と前記電極層との間にて、前記電極層の電極反応によって発電された電気を集電する集電部材とを備えたことを特徴とする燃料電池用セパレータ。 - 前記第1の金属薄板および第2の金属薄板は、それぞれ、所定の孔径を有する多数の貫通孔が網目状に形成された後に平板状に成形されたエキスパンドメタルである請求項1に記載した燃料電池用セパレータ。
- 請求項2に記載した燃料電池用セパレータにおいて、
前記第2の金属薄板の板厚は、前記第1の金属薄板の板厚よりも小さいことを特徴とする燃料電池用セパレータ。 - 請求項1に記載した燃料電池用セパレータにおいて、
前記ガス流路形成部材は、前記第1の金属薄板に対して連続的に筋状の凹部と筋状の凸部とを成形することによって、前記ガス流路を形成することを特徴とする燃料電池用セパレータ。 - 請求項1に記載した燃料電池用セパレータにおいて、
前記第1の金属薄板と前記第2の金属薄板とを積層し、同積層した第1の金属薄板および第2の金属薄板に対して、連続的に筋状の凹部と筋状の凸部とを成形することによって、前記ガス流路形成部材と前記集電部材とを一体的に形成したことを特徴とする燃料電池用セパレータ。 - 請求項4または請求項5に記載した燃料電池用セパレータにおいて、
前記連続的に成形された筋状の凹部と筋状の凸部は、成形方向断面における前記筋状の凹部と筋状の凸部の成形幅のうちの一方が幅広に成形され、
この幅広に成形された筋状の凹部または筋状の凸部が前記電極層側に配置されることを特徴とする燃料電池用セパレータ。 - 請求項1に記載した燃料電池用セパレータにおいて、さらに、
前記集電部材と前記電極層との間にて、導電性を有する繊維を設けたことを特徴とする燃料電池用セパレータ。 - 請求項1に記載した燃料電池用セパレータにおいて、
前記ガス流路形成部材は、
その幅方向の寸法が前記セパレータ本体の幅方向の寸法と略同一の寸法に形成されるとともに前記ガス流路が前記セパレータ本体の前記幅方向に成形されており、前記燃料ガスまたは酸化剤ガスの一方を前記セパレータ本体の前記幅方向から前記電極層に対して供給することを特徴とする燃料電池用セパレータ。
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