JP5191299B2 - ヒートパイプ用ステンレス鋼並びにヒートパイプおよび高温排熱回収装置 - Google Patents

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Description

本発明は、水の蒸発潜熱を利用して熱交換を行うヒートパイプに使用するためのステンレス鋼、並びにそのヒートパイプおよびそれを用いた高温排熱回収装置に関する。
近年、自動車の燃費向上を目的として、運転時に高温で放出されるエンジン排気ガスの熱を回収してエネルギー源として再利用することを目的とした、高温排熱回収装置が実用化されつつある。排熱を回収するためには排熱と冷却水もしくは何らかの熱媒体との間で熱交換する熱交換器を適用するのが一般的であるが、効率の高い熱交換を実現する手法としてヒートパイプと呼ばれる熱伝達手段を用いた熱交換器が自動車の高温排熱回収装置等の用途で注目されている。
図1に、一般的な自動車の排ガス経路に高温排熱回収装置を組み込んだ場合の排ガス経路構成を例示する。排熱回収装置は多くの場合、この図のように床下コンバーターの後方に配置されるのが普通である。高温排熱回収装置で回収された熱は運転開始時のエンジン冷却水の加熱や冬場の暖房などに有効利用され、ガソリン車、ディーゼル車、ハイブリッド車などの燃費向上やバッテリーの節約に貢献する。
図2に、ヒートパイプの原理を模式的に示す。
〔0.初期状態〕
ヒートパイプ10は高真空(10-5Pa以下)の状態で純水が封入された金属製の密閉容器であり、その容器の内部には液体の水からなる液相部11と、空間部12とが形成されている。
〔1.加熱/冷却状態〕
ヒートパイプ10の液相部11を含む部位(加熱帯)が排ガスによって加熱されると液相部11の水が活発に蒸発する。蒸発は吸熱反応であるから排ガスの熱を効率的に吸収することができる。すなわち、排ガスの熱エネルギーは、大部分が蒸発潜熱として水蒸気に伝達される(加熱)。ヒートパイプ10の空間部12の一部(冷却帯)が冷却水などで冷却されると、水蒸気は冷却されたヒートパイプの容器内面で凝縮し、凝縮した水は液相部11に戻る。凝縮は発熱反応であるから水蒸気の潜熱に相当する熱エネルギーが放出され、冷却水へと伝達される(冷却)。熱エネルギーを受けた冷却水は昇温し、温水としての利用に供される。この加熱と冷却が連続的に起こり、水の蒸発潜熱を利用した効率的な熱交換が実現される。
図3に、ヒートパイプ型高温排熱回収装置の代表的な形態を模式的に示す。排ガスが通る加熱帯22と冷却水31が通る冷却帯32があり、加熱帯22の中にはカップ23が並列に配置されている。隣接するカップ23の間には集熱フィン24が設けられ、カップ23にロウ付け接合されている。排ガスは集熱フィン24の間を通るようになっている。カップ23は上部(蒸気流路)および下部(液還流路)で冷却帯32と連結されており、カップ23の内部には前述のように真空引き後に水が封入されている。冷却帯32の下部には液還流路を開閉できるモード切替弁33が設けられている。モード切替弁33を開(熱回収モード)にした状態で排ガスによりカップ23中の水が加熱されると、水は沸騰(蒸気)→凝縮(凝縮液)のサイクルで循環し、排ガスの排熱を回収する。カップ23は比表面積を高め、かつ排ガスの排気抵抗を極力小さくするために扁平形状とされる場合が多く、一般的には耐熱性および耐食性の良好なステンレス鋼板をプレス加工して造られる。加熱帯22に供給される排ガスは、コンバータの触媒作用によって温度が上昇していることが多く、800℃以上の温度になっていることがある。加熱帯22の材料温度はモード切替弁33が閉(熱遮断モード)の状態で最も高くなり、600〜900℃の温度域に達することが想定される。
このようにヒートパイプは900℃程度の高温域まで昇温することから、高温強度(耐クリープ性、耐高温疲労性、耐熱疲労性)に優れ、かつ耐高温酸化性に優れた材料で構成する必要がある。また、加工性、溶接性、ロウ付け性に優れることが要求される。さらに低コストであることも重要である。これらの要求を総合すると、現在のところヒートパイプ材料にはオーステナイト系ステンレス鋼が最も適していると考えられる。
特開平7−243784号公報
ところが、ステンレス鋼を用いたヒートパイプでは、運転初期に水素が内部で多量に発生することがある。種々検討の結果、水素の発生により内部圧力が1MPaを超えてしまう場合があることが明らかになった。その場合、圧力容器として厳しい法規制の対象となる。汎用性の高い排熱回収システムとして手軽に利用できるようにするには、ヒートパイプの内部圧力が1MPaを超えることのない高温排熱回収装置を構築することが望ましい。
加えて、ヒートパイプ内での水素の発生は冷却水への熱伝達効率を低下させる要因となるとともに、装置に過大なストレスを与える要因ともなることから、システムの破損や重大災害の遠因になりかねない。
本発明は、ヒートパイプを構成する容器として使用したときに、水素発生に伴う圧力上昇を安定して抑制することができる性質を付与したステンレス鋼を開発し、汎用性の高いヒートパイプ型排熱回収システムを構築可能な技術を提供しようというものである。
上記目的は、質量%で、Cr:16〜30%、Ni:7〜20%、C:0.08%以下、N:0.15%以下、Mn:0.1〜3%、S:0.008%以下、Si:0.1〜5%であり、必要に応じてMo:2%以下、Cu:3%以下、Nb:0.7%以下、Ti:1%以下の1種以上、あるいはさらにY:0.1%以下、REM(希土類元素):0.1質量%以下、Ca:0.01質量%以下の1種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物であり、下記(1)式および(2)式を満たす組成を有する高温排熱回収装置のヒートパイプ用ステンレス鋼。
Cr+1.5Si≧21 ……(1)
0.009Ni+0.014Mo+0.005Cu−(0.085Si+0.008Cr+0.003Mn)≦−0.25 ……(2)
ただし(1)式および(2)式において元素記号の箇所には当該元素の質量%で表される含有量の値が代入され、無添加の元素については0(ゼロ)が代入される。
また本発明では、上記ステンレス鋼からなる厚さ0.5〜2mmの鋼材で構成される容器の中に、真空引き後に水を封入して液相部と空間部を形成してなる、高温排熱回収装置のヒートパイプが提供される。また、前記ヒートパイプを、その材料温度が600〜900℃となる部位に設けた高温排熱回収装置が提供される。
本発明によれば、ステンレス鋼製ヒートパイプで問題となる水素発生に伴う内部圧力の上昇が顕著に緩和される。これを用いることにより汎用性の高い高温排熱回収装置が低コストで実現可能になると考えられ、自動車等への排熱回収システムの普及に寄与しうる。
ヒートパイプ内で生じる水素発生による圧力上昇を抑制するためには、まずそのメカニズムを知る必要がある。ヒートパイプには真空引き後に純水が封入されているので、中に存在するのは純水とヒートパイプ(容器)自体の金属のみである。ヒートパイプ内での水素発生はヒートパイプ(容器)を構成する金属が水(水蒸気)により酸化されることによって起きる。その反応は主として以下のようなものであると考えられる。
xM + yH2O → Mxy + yH2↑ (M;金属、x,y;係数)
発明者らの検討によれば、ヒートパイプ内で発生した水素は、ヒートパイプ材料(容器)を透過して外部にある程度逃げ出していくことがわかった。このため、水素発生に伴うヒートパイプ内部の圧力上昇を軽減するためには、ヒートパイプを以下の2点を満たす材料で構成することが有効となる。
[1]水素が発生し難い材料
[2]水素が透過しやすい材料
上記[1]については、ヒートパイプを構成するステンレス鋼の耐水蒸気酸化性を向上させることが必要である。耐水蒸気酸化性はステンレス鋼表面に緻密なCr23皮膜が形成されると向上する。そのための手段として、Cr、Siの含有量を増大させたりREM(希土類元素)を添加したりすることが有効であることが知られている。また、初期に緻密なCr23皮膜を形成させるためにショットブラストや研磨などで鋼の表層に加工歪みを付与したりすることが有効である。さらに、予備酸化処理を施しておくことも有効である。種々検討の結果、本発明の場合、下記(1)式を満たす成分設計によって運転初期に特に問題となる水素発生量を大幅に抑制することが可能であることがわかった。
Cr+1.5Si≧21 ……(1)
一方、上記[2]の水素が透過しやすい性質(以下「水素透過能」ということがある)を付与する手段については、これまでほとんど検討された例がなかった。本発明者らはこの点について鋭意検討を行った結果、以下の知見を得た。
(a)比重が小さいステンレス鋼ほど水素透過速度が大きくなる。
(b)原子量が小さい元素の配合量が多くなるほどステンレス鋼の比重は小さくなる。
オーステナイト系ステンレス鋼の比重は通常7.9〜8.0×103kg/m3程度となるが、本発明では7.80×103kg/m3以下となるように合金設計を行うことで、水素透過能が大幅に向上することがわかった。このような比重の低減化は、下記(2)式を満たす成分設計によって実現されることが明らかになった。
0.009Ni+0.014Mo+0.005Cu−(0.085Si+0.008Cr+0.003Mn)≦−0.25 ……(2)
本発明では加工性などの観点からオーステナイト系ステンレス鋼を採用する。各元素については以下のとおりである。
Crは、ステンレス鋼に必要な耐食性、耐酸化性を付与する上で重要な合金成分である。600〜900℃での耐水蒸気酸化性を確保するためには、16質量%以上のCrが必要である。また、Crの量が多いほど、添加するSiの量を低減させることができる。一方で30質量%を超えるCr含有はオーステナイト系ステンレス鋼の加工性、耐シグマ脆化性を大幅に低下させる。したがって、Cr含有量は16〜30質量%の範囲とする。
Niは、オーステナイト組織を得る上で必要な元素であり、フェライト組織よりも優れた高温強度(クリープ強度)および加工性(伸び)を付与する上で重要である。その作用を十分に得るためには7質量%以上のNi含有が必要である。ただし多量のNi添加は製造性、特に熱間加工性の低下を招くとともにコスト面でも不利となる。したがって、Ni含有量は7〜20質量%の範囲に制限される。
C、Nは、高温強度、特にクリープ特性を改善する元素であるが、いずれも水素との反応によって鋼中でメタンまたはアンモニアを形成し、高温強度、靭性、水素透過能を低減させる。種々検討の結果、C含有量は0.08質量%までは許容され、0.01〜0.08質量%の範囲で含有させることがより好ましい。Nは0.15質量%まで許容されるが、0.05質量%以下の範囲とすることが好ましく、0.01〜0.05質量%の範囲に調整することがより好ましい。
Mnは、ステンレス鋼の耐スケール剥離性を向上させる元素であり、0.1質量%以上でその効果を発揮するが、3質量%を超える過剰量のMnが含まれると鋼材が硬質化し、加工性、低温靭性が低下する。したがってMn含有量は0.1〜3質量%の範囲に規定される。
Sは、熱間加工性、耐溶接高温割れ性に悪影響を及ぼす成分であり、異常酸化の起点にもなる。そのため、S含有量は可能な限り低くすることが望ましく、上限は0.008質量%に規定される。0.005質量%以下とすることがより好ましい。
Siは、本発明で特に重要な元素であり、耐水蒸気酸化性を向上させるとともに、オーステナイト系ステンレス鋼の比重を低減させ水素透過能の向上にも大きく寄与する。これらの作用を引き出すには0.1質量%以上のSi含有が必要であるが、1質量%以上のSi含有量を確保することがより有利であり、2質量%以上とすることが一層好ましい。しかし、5質量%を超える多量のSi含有は熱間延性を低下させ、また鋼表面に疵の発生を招くなど、製造性および溶接性を大幅に低下させる要因となる。したがって、Si含有量は0.1〜5質量%に規定され、1〜5質量%とすることがより好ましく、2〜4質量%が一層好ましい。
Mo、Cuは、いずれも固溶強化によりオーステナイト系ステンレス鋼の高温強度を向上させる元素である。本発明では強度向上のためにC、Nを多量に添加する手法が採れないため、特に強度を重視する場合はMo、Cuを添加することが望ましい。ただし、Moの過剰添加は鋼の比重を増大させるので好ましくない。またCuの過剰添加は熱間加工性を低下させるので好ましくない。これらの元素を添加する場合はMo:2質量%以下、Cu:3質量%以下の範囲で行う。Mo、Cuの添加はそれぞれ単独で行っても良いし、複合添加しても良いが、Mo、Cuとも、0.1質量%以上の含有量とすることがより効果的である。
Nb、Tiは、析出強化によりオーステナイト系ステンレス鋼の高温強度を向上させる元素であり、必要に応じて添加される。Nbは0.7質量%以下、Tiは1質量%以下の範囲で添加すればよいが、Nb:0.001〜0.70質量%、Ti:0.005〜0.70の範囲で、これらの1種以上を添加することがより効果的である。
Y、REM(希土類元素)、Caは、耐スケール剥離性に有害となるSを固定し、スケール/母材界面へのSの濃化を抑制する作用、および酸化皮膜中の欠陥密度を減少させることで酸化皮膜を強化する作用を呈し、耐酸化性を大幅に向上させる。このため本発明ではこれらの1種以上を必要に応じて添加することができる。ただし、これらの元素を過剰に添加すると鋼材が過度に硬質化するばかりでなく、製造時に表面疵が生じやすくなり製造コストの上昇を招く。種々検討の結果、これらの元素を添加する場合はY:0.1%以下、REM:0.1質量%以下、Ca:0.01質量%以下の範囲で行うことが望ましい。Y:0.0005〜0.1質量%、REM:0.0005〜0.1質量%、Ca:0.0005〜0.01質量%の範囲で、これらの1種以上を添加することがより効果的である。
本発明では、各元素の含有量を上記の範囲とし、なおかつ前述の(1)式および(2)式を満たすように成分調整されたオーステナイト系ステンレス鋼をヒートパイプの容器材料として適用する。
このオーステナイト系ステンレス鋼を用いたヒートパイプを製造するには、まず一般的なオーステナイト系ステンレス鋼板の製造プロセスによって上記所定の成分組成を有するステンレス鋼板を作り、その鋼板から切り出した板材を成形し、溶接して容器としたのち、容器内部を真空引きした状態で内部に純水を封入する。鋼板から溶接鋼管を作るか、あるいはビレットから継目なし鋼管を作り、それらの鋼管を加工して容器とする方法も採用できる。「純水を封入する」とは、純水を入れた容器を溶接や溶断によって密閉することをいう。容器の肉厚が薄すぎると十分な耐久性を確保しにくい。一方、厚すぎると、水素が肉厚を透過するために必要な拡散距離が長くなり、内部の圧力を低減させる上で不利となる。また、鋼材中の伝熱距離が大きくなるのに伴って熱伝導の抵抗が大きくなり、水蒸気の蒸発潜熱による効率の高い熱交換を実施する上で不利となる。種々検討の結果、ヒートパイプの肉厚は0.5〜2mmの範囲とすることが望ましい。
《水素発生試験》
表1に示す鋼を30kg真空溶解炉で溶製し、通常のオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法にしたがって熱間圧延、焼鈍、酸洗、冷間圧延、仕上げ焼鈍の工程で、JIS G4305に規定されるNo.2D酸洗仕上げを施した板厚1.0mmの冷延焼鈍酸洗材(供試材)を得た。
各供試材から切削加工により10mm×50mm×1.0mmの水素発生試験片を作成した。板面はNo.2D酸洗仕上げのままであり、切断端面は#600乾式研磨仕上げとした。
図4に、水素発生試験装置の構成を模式的に示す。石英管の中に試験片を入れ、これを電気炉に装入する。石英管には石英蓋を取り付けて外界から遮断する。ただし、石英保護管に収容したシース熱電対により、試料近傍の温度が測定できるようにしてある。また、石英管にはパイレックス(登録商標)管が接続され、そのパイレックス管は真空ポンプおよび純水タンクにつながっている。石英管、石英蓋、パイレックス管および石英保護管はすべてすり合わせにより接続されており、適宜真空グリースを用いてすり合わせ部の密閉性を高めている。初めは全てのバルブ(A〜D)は閉じた状態である。
まず、常温の状態でバルブDのみを開く。このとき、バルブC−D間の管内に純水約30mLが溜まるようになっている。その後、バルブDを再び閉じる。次に、真空ポンプを作動させ、バルブBを開いて石英管内部を真空引きするとともに、バルブAを開いて圧力を測定する。1×10-9Paまで真空引きした後、バルブBを閉じる。次いでバルブCを開く。このとき、バルブC−D間に溜まっていた純水がパイレックス管を通って石英管内に導入される。真空中に勢いよく引き込まれることにより、C−D管に溜まっていた水の大部分が試験片近傍に到達する。
その後、電気炉により石英管内部を昇温する。シース熱電対で測温して石英管内部の温度を800℃に維持する。800℃で10時間保持しているあいだの圧力変化をモニターし、10時間経過時点での圧力変化から試料表面の単位時間・単位面積あたりの水素発生速度を算出する。10時間経過時点での水素発生速度が4.0×10-6mol/(h・cm2)以下であるものは、後述の試験方法による水素透過速度が2.0×10-5mol/(h・cm2)以上であることを条件に、従来のオーステナイト系ステンレス鋼と比べヒートパイプの内部圧力の上昇を顕著に緩和することのできる特性を有していると判断される。したがって、10時間経過時点での水素発生速度が4.0×10-6mol/(h・cm2)以下のものを○(水素発生速度の低減効果;良好)、それを超えるものを×(水素発生速度の低減効果;不十分)と評価した。結果を表2中に示す。
《水素透過試験》
図5に、水素透過試験に供する試験体の部材構成を模式的に示す。供試材を使用した部材は、プレート(2枚)およびカップ(4個)である。カップはプレス成形されたものであり、外形寸法は概ね縦100×横30×高さ5(mm)である。図5ではカップの横および高さを縦に比べて誇張して描いてある。カップの底には2箇所の穴が設けられ、その穴から連結パイプを通して隣のカップに内部空間がつながるようになる。連結パイプはSUS310Sの1/2インチ管を扁平加工したものであり、連結パイプを挟んだ両側のカップの距離は8mmとなる。中央の2枚のカップは一体化されて袋状になる。端部のカップはプレートで蓋をされる。一方の端部に取り付けられるプレートには中央に穴が設けられ、その穴から水素ガスが導入されるようになる。これら各部材はNi系ろう材(BNi−5)によりろう付接合され、試験体が組み立てられる。接合部はガスが漏れないように密封される。
図6に、水素透過試験装置の構成を模式的に示す。図6中の試験体は、高さ方向(積層方向)を誇張して描いてある。試験体は電気炉内に設置される。試験体にろう付けにより取り付けたSUS316の1/4インチ管を通して、水素発生装置から水素ガスを試験体内部に導入することができるようになっている。初め、試験体内部は真空ポンプにより10-9Paまで真空引きされている。バルブYを閉じた状態で、バルブXを開いて水素発生装置から水素ガスを導入し、ゲージ圧が120kPaを超えた時点でバルブXを閉じる。これにより、試験体内部には水素分圧が約120kPaを超える水素ガスが封入される。その後、電気炉を昇温し、試験体を800℃で保持する。800℃に保持している間、内部の圧力変化をモニターし、ゲージ圧が100kPa(すなわち水素分圧が約100kPa)の時点での圧力変化から、水素透過速度を算出する。そして、その水素透過速度の値を、供試材で構成されるカップ4個およびプレート2枚の、内部雰囲気に曝されている部分の表面積で除することにより、供試材についての単位時間・単位面積あたりの水素透過速度を求める。炉内に存在する供試材以外の部材(1/4インチ管の一部および連結パイプ)からも水素の透過が生じるが、供試材以外の部材の表面積は供試材の表面積に比べ十分に小さいので、ここでは供試材以外の部材からの水素透過は無視することができる。
このようにして求めた水素透過速度が2.0×10-5mol/(h・cm2)以上であるものは、前述の試験方法による水素発生速度が4.0×10-6mol/(h・cm2)以下であることを条件に、従来のオーステナイト系ステンレス鋼と比べヒートパイプの内部圧力の上昇を顕著に緩和することのできる特性を有していると判断される。したがって、上記の水素透過速度が2.0×10-5mol/(h・cm2)以上のものを○(水素透過速度の増大効果;良好)、それより低いものを×(水素透過速度の増大効果;不十分)と評価した。結果を表1中に示す。
Figure 0005191299
表1から判るように、本発明例のものは、水素発生速度低減効果、および水素透過速度増大効果に優れ、従来のオーステナイト系ステンレス鋼と比べヒートパイプの内部圧力の上昇を顕著に緩和することのできる特性を有している。
これに対し、比較例のものは鋼組成が(2)式を満たさないことにより、鋼の比重が十分に低減されず、水素透過速度の増大が不十分であった。No.22、24、25はさらに(1)式を満たさないものであり、水素発生速度の低減効果にも劣った。
自動車の排ガス経路に高温排熱回収装置を組み込んだ場合の排ガス経路構成を模式的に例示した図。 ヒートパイプの原理を模式的に示した概念図。 高温排熱回収装置の代表的な形態を模式的に示した図。 水素発生試験装置の構成を模式的に示した図。 水素透過試験に供する試験体の部材構成を模式的に示した図。 水素透過試験装置の構成を模式的に示した図。
符号の説明
10 ヒートパイプ
11 液相部
12 空間部
22 加熱帯
23 カップ
24 集熱フィン
31 冷却水
32 冷却帯
33 モード切替弁

Claims (5)

  1. 質量%で、Cr:16〜30%、Ni:7〜20%、C:0.08%以下、N:0.15%以下、Mn:0.1〜3%、S:0.008%以下、Si:0.1〜5%、残部がFeおよび不可避的不純物であり、下記(1)式および(2)式を満たす組成を有する高温排熱回収装置のヒートパイプ用ステンレス鋼。
    Cr+1.5Si≧21 ……(1)
    0.009Ni+0.014Mo+0.005Cu−(0.085Si+0.008Cr+0.003Mn)≦−0.25 ……(2)
    ただし(1)式および(2)式において元素記号の箇所には当該元素の質量%で表される含有量の値が代入され、無添加の元素については0(ゼロ)が代入される。
  2. さらに、Mo:2%以下、Cu:3%以下、Nb:0.7%以下、Ti:1%以下の1種以上を含有する請求項1に記載のヒートパイプ用ステンレス鋼。
  3. さらに、Y:0.1%以下、REM(希土類元素):0.1質量%以下、Ca:0.01質量%以下の1種以上を含有する請求項1または2に記載のヒートパイプ用ステンレス鋼。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のステンレス鋼からなる厚さ0.5〜2mmの鋼材で構成される容器の中に、真空引き後に水を封入して液相部と空間部を形成してなる、高温排熱回収装置のヒートパイプ。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載のステンレス鋼からなる厚さ0.5〜2mmの鋼材を用いたヒートパイプを、その材料温度が600〜900℃となる部位に設けた高温排熱回収装置。
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