JP6807221B2 - Niろう付け接合熱交換器部材 - Google Patents

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Description

本発明は、Niろうを用いたろう付け接合により組み立てられる熱交換器部材用オーステナイト系ステンレス鋼およびNiろう付け接合熱交換器部材に関する。自動車用熱交換器としては、EGR(Exhaust Gas Recirculation)クーラ、オイルクーラ、排熱回収器が挙げられる。また、給湯機分野においては、潜熱回収ガス型ガス給湯機の二次熱交換器やCO2冷媒ヒートポンプ式給湯器(通称:エコキュート(登録商標))の熱交換器が挙げられる。その他、Niろうを用いたろう付け接合により組み立てられる熱交換器部材に使用されるオーステナイト系ステンレス鋼およびそのろう付け接合部材が対象となる。
近年、自動車分野においては、環境問題に対する意識の高まりから、排ガス規制の強化が進むと共に、炭酸ガス排出抑制に向けた取り組みが進められている。また、バイオエタノールやバイオディーゼル燃料といった燃料面からの取り組みに加え、より一層の軽量化や、EGR、DPF(Diesel Particulate Filter)、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムといった排ガス処理装置を設置するといった取り組みが実施されている。さらに、燃費向上を目的として、排気熱を熱回収する排熱回収器も搭載されはじめている。
このなかで、EGRクーラは、エンジンの排ガスをエンジン冷却水を用いて冷却した後、吸気側に戻して再燃焼させることで燃焼温度を下げ、有毒ガスであるNOxを低減させることを目的としている。また、排熱回収器は、排ガスでエンジン冷却水を加熱してヒータやエンジンの暖機に活用するシステムであり、排気熱再循環システムとも呼ばれる。これにより、ハイブリッド車では、コールドスタートからエンジンストップまでの時間が短縮され、特に冬季において、燃費向上に寄与している。
更に給湯機器分野においても環境対応型の機器の普及に応じて、熱交換器の適用が広がっている.ガス給湯器では、従来そのまま排気していた150〜200℃程度の高温排ガスからの潜熱を回収するために、ステンレス鋼製の二次熱交換器を追加した潜熱回収型ガス給湯器の普及が進んでいる。また電気温水器も従来はヒータを内蔵するタイプであったが、電気エネルギーを1/3以下に低減可能なCO2冷媒ヒートポンプ式給湯器;通称エコキュート(登録商標)への切換が進んでおり、ここにも熱交換器が使用されている。
このような熱交換器に、良好な熱効率が要求され熱伝導性が良好であるとともに、排ガスと接するため排ガス凝縮水に対して優れた耐食性が要求される。自動車部品の場合、冷却水の漏れという重大な事故につながる可能性のあるEGRクーラや排熱回収器には、より一層の安全性が求められ、より優れた耐食性が要求される。また、熱交換部の構造は複雑なことから、溶接接合により組み立てられる場合もあるが、ろう付け接合により組み立てられる場合もある。ろう付け接合により組み立てられる熱交換部の材料には、良好なろう付け性が必要となる。
熱交換器に用いられる材料は、その耐食性や強度を生かして一般にSUS304やSUS316といったオーステナイト系ステンレス鋼が用いられる。最近熱効率向上のため、使用される熱交換器の温度は高温化する傾向にあり、優れた高温強度が必要とされる。また、同様に熱効率向上の観点から、主流であるプレート/フィン型熱交換器においてはプレートやフィンの形状が複雑化する傾向にあり、良好な成形性が求められている。さらに、500〜700℃といった温度域ではCr炭化物の析出に伴い鋭敏化して粒界腐食を発生する場合があるので、耐粒界腐食性も必要である。
一方、ろう付け継手に関しても良好な耐食性や耐熱性が求められるが、この点においてNiろうはCuろうに比べ優れるため、耐食性や耐熱性が重要視される用途に好適である。加えて継手部には強度と靭性が求められるが、Cuろうに比べNiろうにより形成されたろう継手部は靭性に劣るという課題がある。
特許文献1には、リン含有ニッケル合金をステンレス鋼材よりなる熱交換器部品の表面に無電解メッキにより被覆した後、このリン含有ニッケル皮膜を高温真空中で溶融させてろう材として用いるろう付け工程が開示されている。用いるステンレス鋼の一例としてSUS304が開示されている。
オーステナイト系ステンレス鋼を用いたろう付け接合部材として、特許文献2にはエンジン排気ガス浄化装置の一部で排気ガス浄化触媒を担持した金属担体を収容する筒状構造体が、特許文献3には低圧燃料用コモンレールが開示されているが、その鋼種は開示されていない。同様に、特許文献4にはEGRガス冷却装置の熱交換器用伝熱管が開示され、伝熱管の波形フィン構造体に使用されるオーステナイト系ステンレス鋼としてSUS304、SUS304L、SUS316、SUS316Lが開示されている。
特許文献5には、FeまたはFe合金層、TiまたはTi合金層、およびNiまたはNi合金層を重ねた複層構造のろう材層を、Niを含む合金からなる基材の表面に形成させたろう付け用複合材が開示されている。ここで、Niを含む合金からなる基材としてオーステナイト系ステンレス鋼または2相ステンレス鋼が開示されており、一例としてSUS304を挙げている。
特許文献6には、C:0.080%以下、Si:1.2〜3.0%、Mn:0.4〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.003%以下、Ni:6.0〜12.0%、Cr:16.0〜20.0%、Cu:0.2〜3.0、Mo:0.1〜1.0%、Al:0.002〜0.10%、N:0.030〜0.150%、かつ1.6≦Cu×Si≧4.4と0.16≦2N+Mo≦1.0を満足する耐食性およびろう付け性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼が開示されている。
特許文献7には、C:0.001〜0.03%、Si:0.10〜0.70%、Mn:0.10〜1.00%、P:0.005〜0.045%、S:0.003%以下、Ni:18.00〜40.00%、Cr:20.00〜30.00%、Cu:2.00%以下、Mo:3.00〜8.00、Al:0.13%以下、N:0.05〜0.30%を含有し、さらにCr+2Mo+0.5Ni≧40を満足する排ガス流路部材用オーステナイト系ステンレス鋼が開示されている。
特許文献8には、粉末状Niろうに、Ni、Cr、Ni−Cr合金、ステンレス鋼のうち選ばれた金属粉末を1〜10%未満添加することで、ぬれ性が良好で、連続した脆化相が生じることなく、クラックの発生を防止することができるNiろう材が開示されている。
特開2004−205059号公報 特開2004−100598号公報 特開2005−171938号公報 特開2008−202846号公報 特開2006−334602号公報 特開2012−207259号公報 特開2013−199661号公報 特開1999−114692号公報
熱交換器類には、一般にSUS304やSUS316といった汎用のオーステナイトステンレス鋼が用いられているが、その用途および使用量共に拡大する動きにあり、生産性の向上や製造コスト低減が求められている。特に耐熱性や耐食性が要求される熱交換器類は、Niろうを用いてろう付け接合により組み立てられる場合が多いが、ろう付け継手部の信頼性の観点から靭性の向上が求められている。
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、ろう付け接合により組み立てられる熱交換器部材に好適に用いることができ、SUS304やSUS316といった汎用のオーステナイト系ステンレス鋼に比べさらにろう付け性に優れ、Niろうのろう付け継手部の靭性向上に有用な熱交換器部材用オーステナイト系ステンレス鋼、およびNiろう付け接合熱交換器部材を提供することを目的とする。
上記課題を解決することを目的とした本発明の要旨は、以下のとおりである
〔1〕質量%で、
C:0.005〜0.2%、Si:1.5超え〜4.0%、Mn:0.2〜4.0%、Cr:16〜30%、Ni:8〜34%、N:0.005〜0.4%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
Niろう付け部を有し、ステンレス鋼に隣接するNiろう付け部のNiリッチ相率が40%以上であることを特徴とする熱交換器部材用オーステナイト系ステンレス鋼を用いたNiろう付け接合熱交換器部材
]更に、質量%で、Mo:0.1〜4%、W:0.1〜4%、V:0.05〜0.5%、Nb:0.01〜0.5%、Cu:0.1〜3%、Co:0.01〜1%のうち何れか1種又は2種以上を含有することを特徴とする〔1〕に記載の熱交換器部材用オーステナイト系ステンレス鋼を用いたNiろう付け接合熱交換器部材
〕更に、質量%で、Ti:0.001〜0.03%、Al:0.001〜0.1%、Ca:0.0002〜0.005%、Mg:0.0002〜0.005%、REM:0.005〜0.1%、Bi:0.001〜0.01%、B:0.0002〜0.005%のうち何れか1種又は2種以上を含有することを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の熱交換器部材用オーステナイト系ステンレス鋼を用いたNiろう付け接合熱交換器部材
以上のように、本発明によればNiろうを用いてろう付け接合により組み立てられる熱交換器部材に好適なオーステナイト系ステンレス鋼およびろう付け接合熱交換器部材を提供することができる。本発明の熱交換器部材用オーステナイト系ステンレス鋼は、自動車部品のなかではEGRクーラ、オイルクーラ、排熱回収器等の部品に、また給湯関係の熱交換器としては、ガスでは潜熱回収型給湯器の二次熱交換器に、電気ではエコキュート(登録商標)のプレート型熱交換器等に好適である。
ろう付け部の評価方法について、ろう付け加熱前を示す図であり、(A)はA−A矢視断面図、(B)は平面図である。 ろう付け部の評価方法について、ろう付け加熱後を示す図であり、(A)はA−A矢視断面図、(B)は平面図である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明で対象にしている熱交換器類は、プレート、フィンおよびケースなど各種形状に成形後、Niろうを用いて真空中もしくは水素雰囲気中でろう付け接合されて製造される。
まず、ろう付けについて述べる。ステンレス鋼の表面には、Crに富む(Fe、Cr)酸化物皮膜が形成されており、これにより優れた耐食性を発現している。ろう付けのためにぬれ性を確保するにはこの皮膜を除去する必要があり、皮膜を還元するために真空度もしくは露点の低い条件でろう付けされる。具体的には、ろう付け温度において、少なくともCrとCr23とが平衡する真空度もしくは露点よりも低い条件にて実施される。したがって、皮膜が還元されるろう付け雰囲気において、ろう付け部に接する母材中にろう付け性に有効な元素を含有させることができれば、ろう付け性の向上が図れると考えた。その結果、ステンレス鋼に1.5%を超えるSiを含有させることが、ろう付け性に有効であることを知見した。鋼中のSi量を増加させるほどろう付け性は向上するが、4%を超えるSiを含有させてもその効果は飽和する。Siがろう付け性を向上させる理由については明らかになっていないが、Siにはステンレス鋼とろうとの界面張力を下げる効果があること、SiはNiろうおよびCuろうに固溶しやすい元素であることがろう付け性を向上させた一因と推定している。
次に、ろう付け継手部の靭性について述べる。Niろうの場合、ろう付け時にまず母材との境界からNiリッチな初相(以下「Niリッチ相」という。)が晶出したのち、共晶反応によりNiリッチ相とCrリッチ相が晶出して共晶部を形成する。後者の共晶部が脆く破壊の起点になり、ろう付け時に亀裂が生じ、その結果として靱性を低下させやすい。また、ろう付け時に亀裂が生じると、亀裂部が腐食の起点となり耐食性を劣化させる要因となる。そのため、通常はろう付け接合されるすきま部の間隔を狭く制御することでろう付け部の体積を必要最小限として靭性を確保している。しかしながら部品の形状によってはすきま間隔を狭く制御することが難しい場合がある。そこで、発明者らは、初晶のNiリッチ相を増加させることでろう付け部のNiリッチ相率を増加させて、靭性を確保することを考えた。前記のように、SiはNiろうに固溶しやすい元素であるが、特にNiリッチ相に固溶しやすいことをろう付け部の分析結果から知見した。すなわち、母材中のSi含有量を本発明で規定する含有量とすることにより、ろう付け時に母材中のSiがNiろう中に拡散し固溶することでNiリッチ相を増加させて、継ぎ手部の靭性向上に寄与させるというものである。ろう付け時に亀裂が生じないような初晶のNiリッチ相率としては40%以上必要であり、45%以上あることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。また、Niリッチ相中のSi量としては、0.7×(Niろう材のSi量)+0.5%以上あることが好ましく、0.7×(Niろう材のSi量)+1%以上あることがより好ましい。
なお、初晶のNiリッチ相への鋼中Siの固溶を促進させてNiリッチ相を増加させるには、ろう付け温度から900℃程度までの冷却速度をできるだけ遅くすることが望ましく、20℃/分以下とするのが望ましい。より望ましくは15℃/分以下、さらに望ましくは10℃/分以下である。そこで本発明の熱交換器部材用オーステナイト系ステンレス鋼においては、Niろう付けを行い、ろう付け温度から900℃までの冷却速度を20℃/分以下としたとき、Niろう付け部のNiリッチ相率が40%以上となることと規定する。また、当該条件でNiろう付け部のNiリッチ相率が40%以上となる場合には、Niリッチ相中のSi量としては、0.7×(Niろう材のSi量)+0.5%以上を実現することができる。
前述のように、母材中のSiにはステンレス鋼とろうとの界面張力を下げる効果がある。母材中のSi含有量を本発明で規定する含有量とすることにより、ステンレス鋼とろうとの界面張力を下げ、ろうの拡がり性を向上するという効果を得ることもできる。
本発明は、以上の検討を考慮してなされた熱交換器部材用オーステナイト系ステンレス鋼を提供するものであり、その要旨とするところは、特許請求の範囲に記載した通りの内容である。
以下、熱交換器部材用オーステナイト系ステンレス鋼の各組成を限定した理由について説明する。なお、以下の説明では、特に断らない限り、各成分の%は、質量%を表すものとする。
(C:0.005〜0.2%)
Cは、高温強度を確保するために0.005%以上含有させることが必要である。しかしながら過剰の添加は鋼を硬質化させると共に耐粒界腐食性を低下させるため、Cの含有量を0.2%以下とする。好ましくは0.008%以上、0.15%以下、より好ましくは0.01%以上、0.1%以下である。
(Si:1.5超え〜4.0%)
Siは、本発明において最も重要な元素であり、ろう付け性とろう付け継手の靭性を向上させる。耐酸化性および耐高温塩害性にも効果があり、1.5%を超えて含有させることが必要である。しかしながら、過剰な添加は、ろう付け性への効果が飽和するとともに鋼を硬質化させ成形性を低下させるため、Siの含有量を4.0%以下とする。好ましくは1.7%以上、3.7%以下、より好ましくは1.9%以上、3.4%以下である。
(Mn:0.2〜4.0%)
Mnは、脱酸元素として有用な元素であり、少なくとも0.2%以上含有させることが必要である。しかしながら、過剰に含有させると耐食性を劣化させるので、Mnの含有量を4.0%以下とする。好ましくは、0.3%以上、3.0%以下である。
(Cr:16〜30%)
Crは、耐食性を確保する上で基本となる元素である。熱交換器類の場合、多くの場合燃焼排ガスが経路内を流れ、冷却水等により冷却されて結露し、腐食性の凝縮水が生成する。そのため熱交換器に用いる鋼板には排ガス凝縮水に対する耐食性が求められる。また、屋外で使用される熱交換器の場合には、外面からの塩害耐食性も必要である。このような観点から、Crの含有量として少なくとも16%以上必要である。Crの含有量を増加させるほど耐食性を向上させることができるが、成形性、製造性を低下させるため30%以下とした。好ましくは16.5%以上、27%以下である。より好ましくは17%以上、24%以下である。
(Ni:8〜34%)
Niは、耐食性を向上させる元素であると共に、オーステナイト相を安定化させるのに重要な元素である。しかし、過剰の添加は製造を低下させるとともに高価なためコストアップにもつながるため8%以上、34%以下とする。好ましくは9%以上、30%以下、より好ましくは10%以上、26%以下である。
(N:0.005〜0.4%)
Nは、高温強度および耐孔食性に有用な元素であるため、0.005%以上含有させることが必要である。しかしながら過剰の添加は、鋼を硬質化させるため、Nの含有量は0.4%以下とする。好ましくは0.02〜0.3%である。より好ましくは0.04〜0.1%、さらに好ましくは0.05〜0.08%である。高温強度の観点からCとNの合計含有量は0.05%以上とすることが好ましい。
さらに必要に応じて、以下に示す成分を選択的に含有させても良い。
(Mo:0.1〜4%)
Moは、高温強度および耐食性を向上させる上で、必要に応じて0.1%以上、4%以下含有させることができる。また、排ガス凝縮水に対する耐食性や外面からの塩害耐食性において、その耐銹性ならびに耐孔あき性を向上させる効果を有する。しかし、過剰の添加は製造性を低下させるとともに、鋼を硬質化させ成形性を低下させる。また、高価なためコストアップにもつながる。好ましくは0.4〜3.2%である。より好ましくは0.8〜2.3%である。
(W:0.1〜4%)
Wは、耐食性を向上させる上で、必要に応じて0.1%以上、4%以下含有させることができる。特に、排ガス凝縮水に対する耐食性や外面からの塩害耐食性において、その耐銹性ならびに耐孔あき性を向上させる効果を有する。しかし、過剰の添加は、製造性を劣化させると共に、鋼を硬質化させ成形性を低下させる。また、高価であるためコストアップにもつながる。好ましくは0.5〜3.6%である。
(V:0.05〜0.5%)
Vは、耐食性を向上させる上で、必要に応じて0.05%以上含有させることができる。過剰の添加は、成形性を劣化させると共に、高価であるためコストアップにつながるので、0.5%以下含有させることが好ましい。
(Nb:0.01〜0.5%)
Nbは、CおよびNを固定し耐粒界腐食性を向上させると共に、高温強度を向上させるので、0.01%以上含有させるのが好ましい。しかしながら、過剰の添加は、成形性を低下させるため、Nbの含有量の上限を0.5%とした。好ましくは0.03〜0.3%、より好ましくは0.05〜0.2%である。
(Cu:0.1〜3%)
Cuは、耐食性、特に耐応力腐食割れ性を向上させる上で、必要に応じて0.1%以上含有させることができる。過剰の添加は、成形性を低下させるので3%以下含有させることが好ましい。好ましくは0.3〜2.5%、より好ましくは0.5〜2.0%である。
(Co:0.01〜1%)
Coは、ろう付け性を向上させる上で、必要に応じて0.01%以上含有させることができる。過剰の添加はコストアップにつながるため1%以下含有させるのが好ましい。より好ましくは0.03%以上、0.4%以下である。
(Ti:0.001〜0.03%)
Tiは、CおよびNを固定し耐粒界腐食性を向上させるうえで有用な元素であるため、0.001%以上含有させることができる。しかしながら、ろう付け性を劣化させるため、その含有量を0.03%以下に制限することが好ましい。より好ましくは0.002%以上、0.025%以下、さらに好ましくは0.003%以上、0.02%以下である。
(Al:0.001〜0.1%)
Alは、脱酸効果等を有するので精練上有用な元素であるため、必要に応じて0.001%以上含有させることができる。しかしながら、ろう付け性を劣化させるため、その含有量を0.1%以下に制限することが好ましい。より好ましくは0.003%以上、0.05%以下、さらに好ましくは0.005%以上、0.03%以下である。
(Ca:0.0002〜0.005%)
Caは、脱酸効果等精練上有用な元素であると共に、熱間加工性に有効であるため、必要に応じて0.0002%以上、0.005%以下含有させることができる。好ましくは、0.0005〜0.003%である。
(Mg:0.0002〜0.005%)
Mgは、脱酸効果等を有するので精練上有用な元素であることから、必要に応じて0.0002%以上、0.005%以下含有させることができる。好ましくは0.0004〜0.002%である。
(REM:0.005〜0.1%)
REMは、脱酸効果等を有するので精練上有用な元素であると共に、ろう付け性と耐酸化性にも有用であるため、必要に応じて0.005%以上、0.1%以下含有させることができる。好ましくは0.008%以上、0.08%以下である。
(Bi:0.001〜0.01%)
Biは、ろう付け性を向上させる上で、必要に応じて0.001%以上、含有させることができる。過剰の添加は製造性を低下させるので0.01%以下含有させるのが好ましい。より好ましくは0.002%以上、0.008%以下である。
(B:0.0002〜0.005%)
Bは、ろう付け性を向上させる上で、必要に応じて0.0002%以上含有させることができる。Bの添加は2次加工性の向上にも有効である。しかしながら、過剰の添加は耐粒界腐食性を低下させるので0.005%以下含有させるのが好ましい。より好ましくは0.0004〜0.004%である。
なお、不可避不純物のうち、Pについては、溶接性の観点から0.05%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.04%以下である。また、Sについては、耐食性の観点から0.02%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.01%以下である。
以上説明した各元素の他にも、本発明の効果を損なわない範囲で含有させることができる。一般的な不純物元素である前述のP、Sを始め、Zn、Pb、Se、Sn、Sb、H、Ga、Ta、Zr、等は可能な限り低減することが好ましい。一方、これらの元素は、本発明の課題を解決する限度において、その含有割合が制御され、必要に応じて、Zn≦100ppm、Pb≦100ppm、Se≦100ppm、Sn≦500ppm、Sb≦500ppm、H≦100ppm、Ga≦500ppm、Ta≦500ppm、Zr≦120ppmの1種以上を含有する。
以上、本発明で規定する成分を含有するオーステナイト系ステンレス鋼であれば、当該ステンレス鋼を対象としてNiろう付けを行い、ろう付け温度から900℃までの冷却速度を20℃/分以下としたとき、Niろう付け部のNiリッチ相率が40%以上となる。そしてその結果、Niろう付け部として高い靱性のろう付け部とすることができ、また、ろうの拡がり性も向上するので、熱交換器部材用オーステナイト系ステンレス鋼として好適に用いることができる。
また、Niろう付け部を有する本発明の熱交換器部材用オーステナイト系ステンレス鋼において、ステンレス鋼に隣接するNiろう付け部のNiリッチ相率を40%以上とすることにより、Niろう付け部として高い靱性のろう付け部とすることができ、また、ろうの拡がり性も向上するので、熱交換器部材用オーステナイト系ステンレス鋼として好適に用いることができる。本発明のステンレス鋼を対象としてNiろう付けを行い、ろう付け温度から900℃までの冷却速度を20℃/分以下とすることにより、上記Niろう付け部とすることができる。
上記本発明の熱交換器部材用オーステナイト系ステンレス鋼を用いたNiろう付け接合熱交換器部材は、ろう付け部の靱性に優れ、ろう拡がり性に優れた部材とすることができる。
本発明のオーステナイト系ステンレス鋼は、基本的にはステンレス鋼を製造する一般的な工程をとって製造される。例えば、電気炉で上記の化学組成を有する溶鋼とし、AOD炉やVOD炉などで精練して、連続鋳造法又は造塊法で鋼片とした後、熱間圧延−熱延板焼鈍−酸洗−冷間圧延−仕上げ焼鈍−酸洗の工程を経て製造される。必要に応じて、熱延板の焼鈍を省略してもよいし、冷間圧延−仕上げ焼鈍−酸洗を繰り返し行ってもよい。
このような工程を経て製造されたオーステナイト系ステンレス鋼は、プレートやフィンなど熱交換器に使用される部材に成形された後、Niろうを用いて接合される。Niろうには、JIS Z3265で規定されるろう材以外に、Ni−29Cr−4Si−6Pからなるろう材もある。雰囲気としては真空中もしくは水素中が一般的で、1050℃から1200℃の範囲でろう付けされる場合が多い。初晶のNiリッチ相を増加させるには、ろう付け温度から900℃程度までの冷却速度をできるだけ遅くすることが望ましい。20℃/分以下とするのが望ましい。より望ましくは15℃/分以下、さらに望ましくは10℃/分以下である。
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
表1に示す化学組成を有する溶鋼を30kg真空溶解炉にて溶製して17kg扁平鋼塊を作製後、加熱温度1200℃にて厚さ4.5mmまで熱延した。1050℃にて熱延板焼鈍を行った後、アルミナショットによりスケールを除去して板厚1mmまで冷延した。その後、1080℃にて仕上焼鈍を行い、ろう拡がり性評価、ろう付け部の断面観察および耐食性評価を行った。
[ろう拡がり性]
冷延圧延焼鈍板より幅70mm、長さ70mmを3枚ずつ切り出した。エメリー紙を用いて#600まで湿式研磨後、有機溶剤を用いて脱脂した。その後、板の中央にNiろう(BNi−5系)を0.5g載せ、真空炉に入れて1130℃にて10分加熱した。真空度は約50Paであった。加熱終了後冷却し、画像解析により熱処理後のろう面積を求めた。得られたろう面積を基に、次の式よりろう拡がり係数を算出した。
ろう拡がり係数=熱処理後ろう面積/初期ろう面積
[ろう付け部の断面観察および耐食性評価]
冷間圧延焼鈍板から幅30mm、長さ50mmの大板1と幅15mm、長さ30mmの小板2を1枚ずつ切り出した。大板1、小板2ともに、エメリー紙を用いて#600まで湿式研磨後、有機溶剤を用いて脱脂した。図1に示すように、大板1と小板2との間に厚さ100μmのステンレス箔3をはさんで重ね、大板1と小板2との間に100μmのすきま4を形成した。この状態で、小板2の長辺にNiろう5(BNi−5系)を5g塗布した。その後、真空炉に入れて1130℃にて10分加熱した。真空度は約50Pa、1130℃から900℃までの冷却速度を20℃/分とし、参考例1のみ1130℃から900℃までの冷却速度を22℃/分とした。熱処理終了後、図2に示すようにろうが濡れ拡がったすきま部断面(図2(A)参照)を観察して、ろう拡がり部6におけるボイドや割れの有無ならびにNiリッチ相率を求めた。ろう拡がり部6には初晶のNiリッチ相と共晶部が存在するが、画像解析により2値化してNiリッチ相率(面積率)を求めた。
また、熱処理終了後のろう付け品を用いて凝縮水耐食性を評価した。溶液組成は熱交換器を通過する排ガスの凝縮水を模擬して、pH4の100ppmCl+1000ppmSO4+1000ppmSO3とした。幅15mm、長さ30mmの小板2側を上にして複合サイクル試験機内に設置して、35℃での溶液噴霧を30分、60℃での乾燥を30分を1サイクルとしたサイクルを500サイクル実施した。試験終了後、断面観察によりろう付け部における腐食の有無を観察した。
Figure 0006807221
Figure 0006807221
表2に、試験結果を示す。ここで、ろう拡がり係数はN数3の平均で示し、発明例4〜13については、試験片中央部から端部までろうが拡がったため、ろう拡がり係数を不等号で示した。
ろう拡がり係数において20以上を良好であるとすると、発明例1〜13はろう拡がり性に優れる。特に1.9%以上のSiを含有する発明例4〜12は、試験片中央部から端部までろうが拡がり、特にろう拡がり性に優れる。また、発明例1〜12は、Niリッチ相率が40%以上と本発明範囲にあり、ろう部にボイドや割れが認められないと共に、腐食も認められなかった。一方、Si量が本発明範囲外である比較例1およびSUS304に相当する比較例2は、ろう拡がり係数が低くろう拡がり性に劣ると共に、Niリッチ相率が本発明範囲外でありろう部にボイドや割れが認められた。また、ろう付けされた母材部に腐食が認められた。
参考例1は、化学組成は本発明範囲内にあるが、1130℃から900℃までの冷却速度が本発明で規定する評価条件から外れるため、Niリッチ相率が不足し、ろう部にボイドや割れが認められると共に、ろう付けされた母材部に腐食が認められた。ろう部のボイドや割れから凝縮水が侵入して母材部を腐食させたと考えられる。
本発明の熱交換器部材用オーステナイト系ステンレス鋼は、自動車部品のEGRクーラや排熱回収器、潜熱回収型給湯器の二次熱交換器やエコキュート(登録商標)のプレート型熱交換器などNiろう付け接合で組み立てられる熱交換器の素材として好適である。
1 大板
2 小板
3 ステンレス箔
4 すきま
5 Niろう
6 ろう拡がり部

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C:0.005〜0.2%、Si:1.5超え〜4.0%、Mn:0.2〜4.0%、Cr:16〜30%、Ni:8〜34%、N:0.005〜0.4%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
    Niろう付け部を有し、ステンレス鋼に隣接するNiろう付け部のNiリッチ相率が40%以上であることを特徴とする熱交換器部材用オーステナイト系ステンレス鋼を用いたNiろう付け接合熱交換器部材
  2. 更に、質量%で、Mo:0.1〜4%、W:0.1〜4%、V:0.05〜0.5%、Nb:0.01〜0.5%、Cu:0.1〜3%、Co:0.01〜1%のうち何れか1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱交換器部材用オーステナイト系ステンレス鋼を用いたNiろう付け接合熱交換器部材
  3. 更に、質量%で、Ti:0.001〜0.03%、Al:0.001〜0.1%、Ca:0.0002〜0.005%、Mg:0.0002〜0.005%、REM:0.005〜0.1%、Bi:0.001〜0.01%、B:0.0002〜0.005%のうち何れか1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱交換器部材用オーステナイト系ステンレス鋼を用いたNiろう付け接合熱交換器部材
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