この従来の引戸装置のように、扉体に対して不動となっている上枠部材にガイドレールをビス等の止着具で止着し、これによってガイドレールを上枠部材に支持させるようにすると、上枠部材にガイドレールを支持させるための作業に多くの手間と時間がかかることになり、このため、上枠部材等の不動部材にガイドレール等のガイド部材を支持させるための作業を容易に行える工夫が求められる。
本発明の目的は、不動部材にガイド部材を支持させるための作業を容易に行えるようになる引戸装置のガイド部材支持構造を提供するところにある。
本発明に係る引戸装置のガイド部材支持構造は、ガイド部材と、このガイド部材に案内されて開閉移動する扉体と、この扉体に対して不動となっているとともに、前記ガイド部材を取り付けるための不動部材と、を含んで構成され、この不動部材に、前記ガイド部材の長手方向の少なくとも一方の端部を支持するための引戸装置のガイド部材支持構造であって、前記不動部材に支持部材が取り付けられ、この支持部材と前記ガイド部材とのうち、一方に空洞部が形成されているとともに、他方にこの空洞部に挿入される挿入部が設けられ、この挿入部が前記空洞部に挿入されることにより、前記ガイド部材の長手方向の少なくとも一方の端部が前記支持部材を介して前記不動部材で支持されることを特徴とするものである。
この引戸装置のガイド部材支持構造によると、不動部材に取り付けられた支持部材と、ガイド部材とのうち、一方に空洞部が形成されているとともに、他方にこの空洞部に挿入される挿入部が設けられ、この挿入部が空洞部に挿入されることにより、ガイド部材の長手方向の少なくとも一方の端部が支持部材を介して前記不動部材で支持されるため、ガイド部材の長手方向の少なくとも一方の端部を支持部材を介して不動部材で支持させるための作業を、空洞部に挿入部を挿入するという簡単な作業によって行うことができ、このため、作業の簡単化を達成することができる。
以上の本発明において、空洞部に挿入される挿入部を任意な形態の形状とすることができる。その一例は、挿入部を、空洞部に向かって先細りのテーパー形状とすることである。
これによると、空洞部に挿入部を挿入する作業を、先細りのテーパー形状によって一層容易に行えるようになる。
また、前記他方に設けられる挿入部の個数は、1個でもよく、2個等の複数個でもよい。そして、挿入部の個数を2個とし、これらの挿入部を前記他方に並設する場合には、同じ方向へ延びているこれらの挿入部の間隔を、空洞部に向かって次第に小さくすることが好ましい。
これによると、支持部材によるガイド部材の長手方向の少なくとも一方の端部の支持を、2個の挿入部によって一層確実に行えるようになるとともに、2個の挿入部の間隔は空洞部に向かって次第に小さくなっているため、空洞部へのこれらの挿入部の挿入も一層容易に行えるようになる。
また、本発明において、空洞部への挿入部の挿入方向は、ガイド部材の長手方向でもよく、ガイド部材の厚さ方向等でもよく、任意な方向でよい。
空洞部への挿入部の挿入方向がガイド部材の長手方向である場合には、不動部材に、ガイド部材の長手方向の少なくとも一方の端部をガイド部材の厚さ方向に挟持するための挟持部材を取り付けることが好ましい。
これによると、支持部材によるガイド部材の支持が、空洞部への挿入部の挿入によって行われても、ガイド部材の長手方向の少なくとも一方の端部を挟持部材によってガイド部材の厚さ方向に挟持することにより、ガイド部材がこのガイド部材の厚さ方向に振れることを防止できる。
このように不動部材に、ガイド部材の長手方向の少なくとも一方の端部をガイド部材の厚さ方向に挟持するための挟持部材を取り付ける場合には、この挟持部材に、一例として、ガイド部材の長手方向の少なくとも一方の端部をガイド部材の厚さ方向に挟持する2個の挟持部が設けられる。それぞれがガイド部材の長手方向に延びるこれらの挟持部は、挟持部の全長に渡って互いに平行となっているものでもよく、あるいは、これらの挟持部の先端部がガイド部材の厚さ方向に拡開した傾斜部となっているものでもよい。
後者によると、2個の挟持部材の間にガイド部材を挿入するための作業を、ガイド部材の厚さ方向に拡開した傾斜部によって容易に行えるようになる。
本発明において、前記空洞部に挿入された挿入部によってガイド部材を支持することは、ガイド部材の長手方向の一方の端部だけについて行ってもよく、両方の端部について行ってもよい。
空洞部に挿入された挿入部によってガイド部材を支持することを、ガイド部材の長手方向の一方の端部だけについて行う場合には、言い換えると、ガイド部材の長手方向の一方の端部だけを前記支持部材を介して前記不動部材で支持する場合には、ガイド部材の長手方向の他方の端部又はこの端部の周辺部を、一例として、前記不動部材又はこの不動部材に取り付けられた部材に結合してもよい。
また、以上の本発明は、開き移動した扉体が収納される戸袋を備えている引戸装置に適用できるとともに、このような戸袋を備えない引戸装置にも適用できる。
本発明が、開き移動した扉体が収納される戸袋を備えている引戸装置に適用され、しかも、ガイド部材の長手方向の一方の端部だけを上述のように支持部材を介して前記不動部材で支持し、ガイド部材の長手方向の他方の端部又はこの端部の周辺部を不動部材又はこの不動部材に取り付けられた部材に結合する場合には、支持部材を介して不動部材で支持されているガイド部材の長手方向の一方の端部を、戸袋の内部に配置し、不動部材又はこの不動部材に取り付けられた部材に結合されるガイド部材の長手方向の他方の端部又はこの端部の周辺部を、戸袋の外部に配置することが好ましい。
これによると、引戸装置の設置施工現場において戸袋の施工が終了した後であっても、ガイド部材の長手方向の一方の端部を支持部材が配置されている戸袋の内部に挿入する作業を行うだけにより、挿入部を簡単に空洞部へ挿入させることができるため、支持部材にガイド部材の長手方向の一方の端部を支持させる作業を、戸袋が支障とならずに容易に行うことができ、言い換えると、戸袋が施工された後であっても、ガイド部材の長手方向の一方の端部を支持部材を介して不動部材で支持させる作業を行うことができ、また、ガイド部材の長手方向の他方の端部又はこの端部の周辺部は、戸袋の外部に配置されているため、ガイド部材の長手方向の他方の端部又はこの端部の周辺部を、不動部材又はこの不動部材に取り付けられた部材に結合する作業も容易に行えることになる。
なお、この結合作業は、ビスやリベット等の止着具によるものでもよく、溶接によるものでもよく、フック部材等の係止手段によるものでもよく、凹凸部等の嵌合手段によるものでもよく、孔と突起等の係合手段等によるものでもよい。
また、前述した戸袋の形式は任意であり、この戸袋は、例えば、外部から視認できる外部露出式の戸袋でもよく、壁の内部に収納された壁収納式の戸袋でもよい。そして、これらの戸袋は、戸袋の内部に収納された扉体の厚さ方向両側を覆う部分を有している両面式の戸袋でもよく、扉体の厚さ方向片側のみを覆う部分を有している片面式戸袋でもよい。
戸袋が壁の内部に収納された壁収納式の戸袋の場合には、この壁が施工された後であっても、ガイド部材の長手方向の一方の端部を支持部材が配置されている戸袋の内部に挿入する作業を行うことにより、挿入部を簡単に空洞部へ挿入させることができるため、支持部材を介して不動部材にガイド部材の長手方向の一方の端部を支持させる作業を、壁が支障とならずに容易に行えることになり、言い換えると、壁が施工された後であっても、支持部材を介して不動部材にガイド部材の長手方向の一方の端部を支持させる作業を容易に行えることになる。
また、前記空洞部をガイド部材に形成する場合には、このガイド部材を、空洞部がガイド部材の全長に渡って連続して形成された引き抜き成形品又は押し出し成形品とすることが好ましい。
これによると、扉体の開閉移動距離が異なるそれぞれの引戸装置のためのガイド部材を得るために、引き抜き成形品又は押し出し成形品となっているガイド部材用素材を任意な長さに切断することにより、必要長さとなっていて空洞部を備えているそれぞれのガイド部材を容易に生産することができる。
以上説明した本発明は、扉体の個数が1個となっている引戸装置にも、扉体の個数が2個等の複数個となっている引戸装置にも、適用することができる。そして、扉体の個数が2個等の複数個となっている引戸装置は、複数個の扉体の開閉方向が異なっている引戸装置、言い換えると、複数個の扉体が引き分け式となっている引戸装置でもよく、複数個の扉体の開閉方向が同じになっている引戸装置、言い換えると、複数個の扉体が引き分け式となっていない引戸装置でもよく、引き分け式となっている扉体と引き分け式となっていない扉体との両方の扉体を備えている引戸装置でもよい。
さらに本発明が、引き分け式となっていない少なくとも2個の扉体を備えている引戸装置に適用される場合には、この少なくとも2個の扉体の開閉方向を同じにする構造は、任意な構造でよい。
その一例は、第1扉体と第2扉体とによる2個の扉体のうちの少なくとも1個の扉体に、開口部を開いた位置まで第1扉体と共に後退していた第2扉体を閉じ側へ所定距離移動させたときに第1扉体と第2扉体とが互いに連結係止された状態となる係止部材を設け、それ以上に第2扉体を閉じ側へ移動させると、両方の扉体がこの係止部材によって一体となって移動するように構成することである。
また、他の例は、第1扉体と第2扉体とを常時連結し、これらの扉体を連動させて開閉移動させるための連動機構を用いることである。このような連動機構の一例は、開閉方向に離れて第1扉体に配置された2個の回転体と、これらの回転体に掛け回され、かつ不動部材に結合されているとともに、2個の回転体を間に挟んで不動部材との結合箇所とは反対側において第2扉体に結合されている紐状部材とを含んで構成されているものである。
この連動機構によると、第1扉体と第2扉体のうちのいずれか一方を手動操作又は自動移動手段で移動させると、紐状部材と2個の回転体を介して第1扉体と第2扉体が連動移動することになるとともに、第1扉体が低速で移動する低速扉体となり、第2扉体が高速で移動する高速扉体となる。
この連動機構における紐状部材は、金属製ワイヤーでもよく、合成樹脂製紐でもよく、繊維製紐でもよく、これらの複合材でもよく、さらには、平ベルトでもよく、タイミングベルトでもよく、チェーン等でもよく、任意である。
また、引き分け式となっていない2個の扉体は、これらの扉体の厚さ方向(前記ガイド部材の厚さ方向)にずれて配置されていてもよく、これらの扉体の厚さ方向に同じ位置に配置され、一方の扉体が他方の扉体の内部に出入り自在となった入れ子式のものでもよい。
さらに、以上のように本発明が複数個の扉体を備えている引戸装置に適用される場合には、本発明に係るガイド部材支持構造が適用されるガイド部材は、これらの扉体ごとに設けられるガイド部材のうち、1個等の一部のガイド部材でもよく、全部のガイド部材でもよい。
また、本発明に係る引戸装置におけるガイド部材は、扉体の上部を案内するものでもよく、下部を案内するものでもよく、上部と下部の両方を案内するものでもよい。すなわち、本発明は、ガイド部材による扉体の移動案内をこれらの扉体の上部で行う上部案内方式の引戸装置にも適用でき、扉体の下部で行う下部案内方式の引戸装置にも適用でき、扉体の上下部両方で行う上下部両方案内方式の引戸装置にも適用できる。
また、本発明は、扉体がガイド部材から吊り下げられた上吊り式の引戸装置にも適用することができる。
また、本発明に係る引戸装置をこの上吊り式の引戸装置とする場合には、この上吊り式とする方式は、ガイド部材としてのガイドレールを用いたガイドレール方式でもよく、ガイドとしてのスライドレールを用いたスライドレール方式でもよい。
なお、ガイドレール方式とは、不動部材に取り付けるガイド部材をガイドレールとし、このガイドレールに、扉体に設けたローラを転動自在に係合させたものであり、スライドレール方式とは、不動部材に取り付けるガイド部材をスライドレールとし、このスライドレールに、扉体に設けたスライドベアリングをスライド自在に係合させたものである。
また、本発明は、扉体の開き移動及び/又は閉じ移動が自動閉鎖装置で行われるようになっている引戸装置に適用することができ、また、扉体の開き移動及び/又は閉じ移動が手動操作で行われるようになっている引戸装置にも適用することができる。
さらに、ガイド部材で案内される扉体の開閉移動形態は任意である。すなわち、扉体を案内するガイド部材は、扉体を直線的に案内するものでもよく、曲線的に案内するものでもよく、さらに、例えば、扉体を建物躯体等に近づけながら全閉とさせるために、ガイド部材は、扉体を扉体の厚さ方向に略平行移動させながら扉体の幅方向(扉体の開閉移動方向)に移動させるものでもよい。
本発明によると、不動部材にガイド部材を支持させるための作業を容易に行えるという効果を得られる。
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。本実施形態に係る引戸装置は、第1扉体と第2扉体の2個の扉体によって開口部が開閉される多重引き式の引戸装置であって、この開口部を開いたこれらの扉体が収納される戸袋を有している装置であり、この戸袋は、壁の内部に収納された壁収納式の戸袋となっている。
図1は、本実施形態に係る多重引き式引戸装置の全体を示す正面図であり、この多重引き式引戸装置は、例えば、建物内における廊下と部屋との間に設置されており、開閉移動方向が同じになっている第1扉体1と第2扉体2により、上記開口部となっている出入口3が開閉される。この引戸装置の外枠組みは、無目である上枠部材10と、扉体1,2が全閉位置に達して出入口3を閉じたときに第1扉体1の先端が当接する戸先側の竪枠部材11と、この戸先側の竪枠部材11とは扉体1,2の移動方向反対側に配置されている戸尻側の竪枠部材12と、これらの竪枠部材11と12の間に配置されているとともに、出入口3を開けたときの扉体1,2が収納される戸袋4における出入口3の側の端部に配置された竪額縁部材13と、床5における戸袋4の下端に配置された幅木14とにより形成され、板材の折り曲げ品となっているこれらの上枠部材10と戸先側の竪枠部材11と戸尻側の竪枠部材12と竪額縁部材13と幅木14は、多重引き式引戸装置の外枠組みを形成する枠部材になっているとともに、開閉移動する扉体1,2に対して不動となった不動部材にもなっている。
出入口3は、これらの枠部材10〜14で形成された外枠組みの内側の一部の空間となっており、この出入口3は扉体1,2で開閉され、この出入口3を開けたときの扉体1,2が収納される戸袋4は、壁6の内部に収納された壁収納式の戸袋である。上枠部材10は、戸先側の竪枠部材11から戸尻側の竪枠部材12まで延びる長さを有し、上記枠部材10〜14のうちの1つとなっている竪額縁部材13は、戸袋4における出入口2側の見切り部材となっている。また、戸袋4は、上枠部材10と幅木14の長手方向(図1では左右方向)に連続している補強部材15によって補強された構造となっており、この補強部材15は、扉体1の厚さ方向でもある戸袋4の厚さ方向の両側に設けられているとともに、竪枠部材11,12と竪額縁部材13の長手方向でもある上下方向に複数個配設されている。そして、これらの補強部材15の上下において、内側壁材が接着テープ等による結合具で補強部材15に結合され、これらの内側壁材の外側に大面積の外側壁材が配置され、補強部材15にステープル等の止着具で止着されたこれらの外側壁材の表面にクロス等の壁仕上げ材が取り付けられることにより、内部に戸袋4が設けられた壁6の表面が仕上げられている。
戸先側の竪枠部材11から戸尻側の竪枠部材12まで延びる長さを有している上枠部材10のうち、出入口3と対応する部分における扉体1,2の厚さ方向片側(図1の表面側)には、通常時は点検カバー16で塞がれている図3の点検用開口部10Aが設けられている。上枠部材10の上面部10Bの係止部10Cに上端が係止されている点検カバー16を図1の竪枠部材11のブラケット及び竪額縁部材13のブラケットに止めている止着具17,18を取り外し、これによって上枠部材10から点検カバー16を取り除くことにより、扉体1,2を移動させるために上枠部材10の内部に配置されている扉体移動機構についての各種作業を行えるようになっている。
次に、この扉体移動機構について説明する。図2は、点検カバー16を取り外して示したこの扉体移動機構の正面図である。上枠部材10の内部には、この上枠部材10の全長よりも短い長さを有している第1ガイドレール21が配置され、戸袋4側に片寄って配置されているこの第1ガイドレール21は、第1扉体1の開閉移動を案内するための第1ガイド部材になっている。また、上枠部材10の内部には、第1ガイドレール21よりも下側において、上枠部材10の略全長に渡る長さを有している第2ガイドレール22が配置され、この第2ガイドレール22は、第2扉体2の開閉移動を案内するための第2ガイド部材となっている。
図3は、図2のS3−S3線断面図であり、この図3で示されているように、上枠部材10には、扉体1,2の厚さ方向における前記点検用開口部10Aとは反対側の側部において、上面部10Bから垂下した垂下部10Dが設けられており、上枠部材10の全長に渡って形成されているこの垂下部10Dにおける上枠部材10の内部側の面には、補強部材23が溶接等で結合されている。上枠部材10の一部を形成する部材となっていて、図2で示されているように上枠部材10の長手方向に延びているこの補強部材23には、第1ガイドレール21がビス等の止着具24によって取り付けられている。図3で示すとおり、アルミ製又はアルミ合金製の引き抜き成形品又は押し出し成形品である第1ガイドレール21は、補強部材23に止着具24で取り付けられた基部21Aと、この基部21Aから扉体1,2の厚さ方向に水平に延びているアーム部21Bと、このアーム部21Bの先端から立ち上がった案内部21Cとを有している。
案内部21Cには、第1扉体1の上部のブラケット25に取り付けられているローラ26が転動自在に載せられ、このようなブラケット25とローラ26は、図2に示されているように、第1扉体1の開閉移動方向に2個設けられている。このため、第1扉体1は、2個のローラ26と2個のブラケット25を介して第1ガイドレール21から吊り下げられた上吊り式の扉体となっているとともに、前記出入口3を開閉するために第1ガイドレール21に案内されて開閉移動自在となっている。
図3に示されているように、第1扉体1の下面には、下向きに開口した凹部1Aが形成され、第1扉体1の移動方向に連続しているこの凹部1Aには、床5に立設された支柱27に水平回転自在に取り付けられた第1ガイドローラ28が挿入されており、第1ガイドレール21で案内される第1扉体1の上記開閉移動は、第1扉体1の下端がこの第1ガイドローラ28で案内されることによって行われる。
また、図3に示されているとおり、第2ガイドレール22も、第1ガイドレール21と同様に、基部22Aと、この基部22Aから扉体1,2の厚さ方向に水平に延びているアーム部22Bと、このアーム部22Bの先端から立ち上がった案内部22Cとを有しているとともに、基部22Aの上部は、縦断面形状が四角形の筒形状となった筒部22Dとなっており、この筒部22Dの内部は空洞部22Eとなっている。第2ガイドレール22は、第1ガイドレール21と同じく、アルミ製又はアルミ合金製の引き抜き成形品又は押し出し成形品であるため、筒部22Dと空洞部22Eは、基部22Aとアーム部22Bと案内部22Cと同じく、第2ガイドレール22に全長に渡って連続して形成されている。
図3に示されているように、上枠部材10の垂下部10Dには、第2ガイドレール22を取り付けるための取付部材30が溶接等で結合されており、板金の折り曲げ品となっていて、垂下部10Dから扉体1,2の厚さ方向への突出量を有しているこの取付部材30は、図2で示されているように、垂下部10Dにおける前記戸袋4から離れた位置、言い換えると、垂下部10Dにおける戸袋4から露出している位置に設けられている。取付部材30には、第2ガイドレール22の基部22Aがビス等の止着具31で取り付けられ、この止着具31は、本実施形態では扉体1,2の開閉移動方向の複数設けられている。
このように第2ガイドレール22の戸先側の端部又はこの端部の周辺部、言い換えると、第2ガイドレール22の扉体1,2の閉じ側の部分は、取付部材30を介して前述の不動部材となっている上枠部材10に結合されている。また、戸袋4の内部に挿入配置されている第2ガイドレール22の戸尻側の端部、言い換えると、第2ガイドレール22の扉体1,2の開き側の部分は、戸尻側の竪枠部材12に結合された支持部材32で支持されている。図8は、この支持部材32の部分を示す図2の一部拡大正面図であり、図9は、図8のS9−S9線断面図である。
板金の折り曲げ品である支持部材32は、上枠部材10と同じく前述の不動部材となっている戸尻側の竪枠部材12にビス等の止着具33又は溶接で結合されたベース部32Aと、このベース部32Aの扉体1,2の厚さ方向両端から戸先側へ延出した2個の挿入部32Bとからなり、第2ガイドレール22の長手方向に延びているこれらの挿入部32Bが第2ガイドレール22の空洞部22Eに挿入されることにより、第2ガイドレール22の戸尻側の端部が支持部材32によって支持されている。これらの挿入部32Bは、図8で示されているように、空洞部22Eに向かって先細りのテーパー形状に形成され、言い換えると、これらの挿入部32Bは、上下寸法が戸先側へ次第小さくなったテーパー形状に形成されている。また、これらの挿入部32B同士の間隔は、図9で示されているように、空洞部22Eに向かって小さくなっており、言い換えると、挿入部32B同士の間隔は、戸先側へ次第に小さくなっている。このような状態は、第2ガイドレール22と支持部材32との関係を示している側面図となっている図7にも表われている。
また、図8に示されているとおり、戸尻側の竪枠部材12には、支持部材32の下側において、挟持部材34が取り付けられており、この挟持部材34は、第2ガイドレール22の戸尻側の端部が扉体1,2の厚さ方向に振れることを防止するために、言い換えると、第2ガイドレール22の戸尻側の端部を第2ガイドレール22の厚さ方向に位置決めするために、第2ガイドレール22の戸尻側の端部を扉体1,2の厚さ方向に挟持するためのものである。挟持部材34は、図7と、図8と、図8のS10−S10断面図である図10とに示されているように、戸尻側の竪枠部材12にビス等の止着具35又は溶接で結合されたベース部34Aと、このベース部34Aの扉体1,2の厚さ方向両端から戸先側へ延出した2個の挟持部34Bとからなり、第2ガイドレール22の長手方向に延びているこれらの挟持部34Bが第2ガイドレール22の基部22Aと案内部22Cとを扉体1,2の厚さ方向に挟持している。
そして、それぞれの挟持部34Bの先端部は、戸先側に向かって扉体1,2の厚さ方向に拡開した傾斜部34Cとなっている。
これらの挟持部34Bを、第2ガイドレール22の基部22Aと案内部22Cとを扉体1,2の厚さ方向に挟持するものとせず、第2ガイドレール22の基部22Aだけを扉体1,2の厚さ方向に挟持するものとしてもよい。
また、支持部材32のベース部32Aと挟持部材34のベース部34Aとを共通一体化してもよい。これによると、支持部材32と挟持部材34を戸尻側の竪枠部材12に結合するための止着具の個数の削減や、この結合作業の作業工数の削減を図ることができる。
図3に示されているように、第2ガイドレール22の前述の案内部22Cには、第2扉体2の上部のブラケット36に取り付けられているローラ37が転動自在に載せられ、このようなブラケット36とローラ37は、図2に示されているように、第2扉体2の開閉移動方向に2個設けられている。このため、第2扉体2は、2個のローラ37と2個のブラケット36を介して第2ガイドレール22から吊り下げられた上吊り式の扉体となっているとともに、前述の出入口3を開閉するために第2ガイドレール22に案内されて開閉移動自在となっている。
図3に示されているように、第2扉体2の下面には、下向きに開口した凹部2Aが形成され、第2扉体2の移動方向に連続しているこの凹部2Aには、第1扉体1の下端部材1Bに立設された支柱38に水平回転自在に取り付けられた第2ガイドローラ39が挿入されており、第2ガイドレール22で案内される第2扉体2の上記開閉移動は、第2扉体2の下端がこの第2ガイドローラ39で案内されることによって行われる。なお、下端部材1Bは、第1扉体1の前述した凹部1Aを形成する部材となっている。
また、図3に示されているとおり、第1扉体1は、この扉体1の厚さ方向両側のパネル部材1C,1Dと、これらのパネル部材1C,1Dの上端同士を連結する上端部材1Eと、パネル部材1C,1Dの下端同士を連結する上述の下端部材1Bとを含んで構成されており、パネル部材1C,1Dの間、すなわち、第1扉体1の内部は空間部となっている。この空間部に第2ガイドレール22が貫通挿入されており、また、この空間部に第2扉体2が侵入可能となっており、このため、第2扉体2は、第1扉体1の内部に侵入する入れ子式の扉体となっている。
この入れ子式の第2扉体2は、図1に示されているとおり、前述の出入口3を2個の扉体1,2が全閉としたときには、第1扉体1から略全体が突出しており、また、出入口3を2個の扉体1,2が全開としたときには、第1扉体1の内部に略全体が侵入することになる。この全開時に、第1扉体1は前述の戸袋4の内部に収納されるため、第1扉体1の内部に収納される第2扉体2の略全体も、この全開時には戸袋4の内部に収納されることになる。
本実施形態に係る多重引き式引戸装置は、第1扉体1と第2扉体2を常時連結していて、これらの扉体1,2を連動させて同一方向へ開閉移動させるための連動機構40を備えたものとなっている。図4は、この連動機構40を示す第1扉体1の概略平面図である。連動部材40は、第1扉体1の戸尻側の端部の上面に回転自在に配置された第1回転体41と、第1扉体1に戸先側へ延長されて固定されている延長体43(図2も参照)の先端の上面に回転自在に配置された第2回転体42と、これらの回転体41と42に掛け回された紐状部材44とを含んで構成されており、この紐状部材44は、上枠部材10の前述の垂下部10Dに結合部材45で結合されている。また、紐状部材44には、結合部材45による垂下部10Dとの結合箇所とは2個の回転体41,42を間に挟んで反対側の箇所において、紐状部材44を第2扉体2に結合するための結合部材46が設けられている。
この結合部材46は、図2で示されている第2扉体2に2個設けられたブラケット36のうち、戸先側のブラケット36に取り付けられている支柱47に紐状部材44を結合するものとなっており、このため、結合部材46と支柱47を介して紐状部材44は第2扉体2にも結合されている。
このため、第1扉体1と第2扉体2が、前記出入口3を閉じた全閉位置に達している図1の状態において、第2扉体2に設けられている把持部材48を把持した手によって第2扉体2を開き移動させると、この第2扉体2の開き移動は、紐状部材44が2個の回転体41,42を回転させながら回転運動することによって第1扉体1に伝達され、第1扉体1も開き移動するとともに、この第1扉体1は、第2扉体2の半分の速度で開き移動する。したがって、第1扉体1は低速扉体であり、第2扉体2は高速扉体である。
第1扉体1が閉じ移動したときにも、第2扉体2は、連動機構40により、第1扉体1よりも高速で閉じ移動し、第1扉体1は低速で閉じ移動する。2個の扉体1,2が出入口3を全閉としたとき、図1で示されているように、第2扉体2の戸先側の端部は戸先側竪枠部材11に当接しており、第1扉体1の位置は、第2扉体2よりも戸袋4側の位置となっている。
なお、前述の延長体43は、図2に示されているように、第1延長部材43Aと、この第1延長部材43Aに取り付けられた第2延長部材43Bとからなり、図4で示されているとおり、第2延長部材43Bの上面には、スライダ50が第1扉体1の開閉移動方向にスライド自在に配置され、このスライダ50に固定された中心軸51を中心に第2回転体42が回転自在となっており、中心軸51の下部は、第2延長部材43Bに第1扉体1の開閉移動方向に長く形成された長孔43Cに挿入され、この長孔43Cから突出した中心軸51の下端部は、長孔43Cからの中心軸51の抜け出しを防止する大径端部となっている。このため、スライダ50を第1扉体1の開閉移動方向に移動させることにより、スライダ50と一体に移動する第2回転体42によって紐状部材44の緊張力を適正の大きさに調整可能できるようになっており、この調整後、スライダ50の起立部50Aと第2延長部材43Bの起立部43Dとに挿通したボルト52にダブルナット53を螺合して締め付けることにより、スライダ50及び第2回転体42を、第1扉体1の開閉移動方向のその調整後の位置に不動に配置することができるようになっている。
また、本実施形態に係る多重引き式引戸装置には、第2扉体2を自動的に閉じ移動させるための、すなわち、連動機構40を介して第1扉体1と第2扉体2を自動的に閉じ移動させるための渦巻きばね式の閉鎖装置60が備えられており、図2で示されているように、この閉鎖装置60は、上枠部材10における戸先側の竪枠部材11に近い端部の近傍において、上枠部材10の垂下部10Dにビス等の結合具で結合されている。閉鎖装置60からは、この閉鎖装置60の内部に設けられている渦巻きばね機構に一端が連結された合成樹脂製等の紐状部材61が導出され、この紐状部材61の他端は、第2扉体2の前述の2個のブラケット36のうち、戸先側のブラケット36に連結されている。第1及び第2扉体1,2が全閉位置に達しているときに、図1の把持部材48を把持した手によって第2扉体2を開き移動させると、閉鎖装置60から繰り出される紐状部材61により、上記渦巻きばね機構の渦巻きばねにばね力が蓄圧され、把持部材48から手を離すと、この蓄圧されたばね力によって第2扉体2が自動的に全閉位置まで閉じ移動し、第1扉体1も連動機構40によって全閉位置まで閉じ移動する。このため、本実施形態に係る引戸装置は、自動閉鎖式の引戸装置となっている。
このように第1及び第2の2個の扉体1,2が図1で示されている出入口3を閉じる全閉位置に達したとき、第1扉体1の位置は、第2扉体2の位置よりも前述の戸袋4側の位置、言い換えると、戸尻側の位置となっている。
また、図2に示されているように、上枠部材10の内部空間には、第1扉体1が全閉位置に近づいたときに第1扉体1の閉じ移動速度を減速させるための、すなわち、連動機構40を介して第1扉体1と第2扉体2の閉じ移動速度を減速させるためのシリンダ式の制動装置65がピストンロッド65Aを戸尻側に向けて配置され、この制動装置65は、第1ガイドレール21に取り付けられている。扉体1の前述の2個のブラケット25のうち、戸尻側のブラケット25には、ピストンロッド65Aの先端部と第1扉体1の開閉移動方向に対向する当接部材66が取り付けられ、これらのピストンロッド65Aの先端部と当接部材66とのうち、ピストンロッド65Aの先端部には、当接部材66と吸着力等で接離自在となったマグネット等による接離部材67が設けられている。
第1扉体1が全閉位置に達しているときには、図2のとおり、接離部材67に当接部材66が当接しており、第1扉体1が開き移動を開始すると、当接部材66に接離部材67の吸着力で接続状態となっているピストンロッド65Aは伸び作動し、ピストンロッド65Aの伸び作動長さの限度を越えて第1扉体1が開き移動すると、当接部材66はピストンロッド65Aから分離する。また、第1扉体1が閉じ移動すると、その途中で当接部材66はピストンロッド65Aの先端部の接離部材67に当接し、第1扉体1が閉じ移動を継続することにより、ピストンロッド65Aは縮み作動を始め、制動装置65には、このときにシリンダ式の制動装置65の内部の空気を絞りながら排出するバルブが設けられているため、これ以後の第1扉体1は、このバルブの絞り作用による制動力を受けながら、減速されて全閉位置まで前述の閉鎖装置60により自動移動し、第2扉体2も減速されて連動機構40により全閉位置まで自動移動する。
なお、上記バルブは、ピストンロッド65Aが伸び作動するときには、空気を絞らずにシリンダ式の制動装置65の内部に空気を流入させるタイプのものであるため、全閉位置からの第1扉体1及び第2扉体2の開き移動を、閉鎖装置60の上記渦巻きばね機構の渦巻きばねにばね力を蓄圧させるだけの小さな力によって行える。
なお、以上のように、全閉位置へ向かって閉じ移動しているときの2個の扉体1,2に制動力を作用させるための装置は、上記シリンダ式の制動装置65に限定されず、例えば、2個の扉体1,2と上枠部材10とのうちの一方に取り付けられたラック部材と、他方に取り付けられ、このラック部材に噛合するピニオン部材を有するロータリー式のダンパー装置とを含んで構成されたものとし、2個の扉体1,2の全閉位置へ向かう閉じ移動によってピニオン部材がラック部材で回転することにより、ロータリー式のダンパー装置の内部に充填されている粘状物質等によって制動力が生ずるものでもよい。
また、図2で示されているとおり、戸尻側の竪枠部材12には、ストップ部材70が取り付けられている。ゴム等の弾性材料からなるこのストップ部材70は、第1扉体1の開き移動限位置である後退限位置を規定するものであり、第1扉体1の戸尻側の端部がストップ部材70に当接したときに、第1扉体1は後退限位置に達する。
さらに、第1ガイドレール21の戸尻側の端部には、板ばねで形成されている第1係止部材71が取り付けられ、戸先側へ延びているこの第1係止部材71の戸先側の端部には、V字形状部71Aが設けられている。また、第1扉体1の前述の当接部材66には、回転自在なローラによる第1被係止部材81が取り付けられている。第1扉体1が開き移動し、第1被係止部材81が、第1係止部材71のV字形状部71Aの上側への弾性変形によってこのV字形状部71Aに係止されたときに、第1扉体1はストップ部材70で規定される後退限位置に達し、V字形状部71Aによる第1被係止部材81の係止によって第1扉体1は後退限位置に停止する。
また、図2に示されているように、第1ガイドレール21には、第2扉体2を後退限位置に停止させるための第2係止部材72が取り付けられている。そして、図5に示されているように、第2扉体2に結合されている前述の支柱47には、第2係止部材72に係止される第2被係止部材82が配置されている。第2係止部材72は、戸尻側への傾き角度を有している第1傾斜面72Aと、この第1傾斜面72Aよりも戸尻側に形成され、戸先側への傾き角度を有している第2傾斜面72Bとを備えている。また、第2被係止部材82は、支柱47に設けられたベース部材83に取り付けられている。この第2被係止部材82は、ベース部材83にビス等の止着具84で結合された基板部82Aと、この基板部82Aから第2係止部材72側かつ戸先側へ斜めに延びる延出部82Bとを有し、弾性変形可能な板ばね作用を有しているこの延出部82Bの先端は、V字形状部82Cとなっている。
第2扉体2が開き移動し、第2被係止部材82の延出部82BのV字形状部82Cが第2係止部材72の第1傾斜面72Aを延出部82Bの弾性変形で乗り越えて、図5で示すように、V字形状部82Cが第2傾斜面72Bに係止することにより、第2扉体2は後退限位置に停止する。
そして、図1で示した第1扉体1の把持部材48を把持した手によって第2扉体2に閉じ移動力を付与すると、第2被係止部材82の延出部82BのV字形状部82Cが第2係止部材72の第2傾斜面72Bを延出部82Bの弾性変形によって乗り越えることになり、また、第1被係止部材81が第1係止部材71の弾性変形によってこの第1係止部材71のV字形状部71Aを通過することになり、これにより、2個の扉体1、2は、前述したように、閉鎖装置60の渦巻きばね機構の渦巻きばねに蓄圧されたばね力及び把持部材48に付与された手動力により、前述したように全閉位置まで閉じ移動することになる。
なお、以上のようにこの実施形態では、第1扉体1を後退限位置に停止されるための第1係止部材71及び第1被係止部材81が用いられているとともに、第2扉体2を後退限位置に停止されるための第2係止部材72及び第2被係止部材82も用いられているが、第1扉体1と第2扉体2は連動機構40で連結されているため、第1係止部材71及び第1被係止部材81と、第2係止部材72及び第2被係止部材82とのうち、いずれか一方のみとしてもよい。
図6は、第2ガイドレール22を取り付けるために、上枠部材10の前記垂下部10Dに配置されている取付部材30についての扉体1,2の厚さ方向への突出量A等を示す平断面図である。この突出量A、すなわち、取付部材30が配置されている垂下部10Dの上枠部材10の内部側の面から、第2ガイドレール22が取り付けられる取付部材30の前面までの距離Aは、垂下部10Dの上枠部材10の内部側の面から第1扉体1までの距離Bよりも大きい。このように突出量Aが距離Bよりも大きくなっている理由は、前述したとおり、第2ガイドレール22が第1扉体1の内部を貫通するからである。
また、扉体1,2の開閉移動方向における取付部材30から戸袋4までの間隔Cは、第1扉体1の開閉移動方向の寸法D、言い換えると、第1扉体1の幅寸法Dよりも大きくなっている。このため、第1扉体1を取付部材30と戸袋4との間に配置したときには、取付部材30と第1扉体1との間に寸法Eとなった間隔と、第1扉体1と戸袋4との間に寸法Fとなった間隔とが生ずるようになっている。これらの寸法E,Fは、後述するように、作業者が両手で第1扉体1を持ったときに、左手を取付部材30と第1扉体1との間の間隔に、右手を第1扉体1と戸袋4との間の間隔に、それぞれ挿入できる大きさとなっている。このような寸法E,Fは、それぞれ2cm以上、好ましくは4cm以上である。
本実施形態に係る多重引き式引戸装置の前述した外枠組みを構成する上枠部材10等の枠部材は、工場からこの多重引き式引戸装置が設置施工される現場へ搬送され、この現場においてそれぞれの枠部材が組み立てられることにより、上記現場で上記外枠組みが形成される。また、この現場において、戸袋4が内部に収納された前述の壁6も施工される。さらに、第1扉体1や第2扉体2等の所要部材は、工場から現場へ搬送される。
この現場では、上枠部材10に上記工場又は現場で取り付けられた第1ガイドレール21に第1扉体1を配置される作業が行われる。この作業を行うとき時には、上枠部材10の取付部材30にまだ第2ガイドレール22は取り付けられていない。また、この作業を行う時には、前述した点検カバー16を上枠部材10から取り外しておく。
第1扉体1を第1ガイドレール21に配置する作業は、作業者が両手で第1扉体1を持ち、この第1扉体1を、上枠部材10の垂下部10Dに取り付けられている取付部材30と戸袋4との間に配置した後に、第1扉体1の前述した2個のローラ26を第1ガイドレール21の案内部21Cに載置係合させること、すなわち、上吊り式になっている第1扉体1を第1ガイドレール21に吊り込むことによって行われ、この吊り込み作業時に、第1扉体1の下端に設けられている凹部1Aに図1及び図3で示されている第1ガイドローラ28が挿入される。
このように作業者が両手で持った第1扉体1を取付部材30と戸袋4との間に配置した後に第1ガイドレール21に吊り込む際において、上述したように、取付部材30と第1扉体1との間の間隔と、第1扉体1と戸袋4との間の間隔は、作業者の手を挿入できる大きさとなっているため、この吊り込み作業を所定どおり行える。
以上の作業後、第1扉体1を第1ガイドレール21に案内移動させて戸袋4の内部に入れ、この後、第2ガイドレール22の長手方向の一方の端部となっている第2ガイドレール22の戸尻側の端部を第1扉体1の内部空間に挿入する作業を行う。この挿入作業を行うことにより、第2ガイドレール22の戸尻側の端部から、戸尻側の竪枠部材12に結合されている前述の支持部材32の2個の挿入部32Bを第2ガイドレール22の前記空洞部22Eに挿入させるとともに、前記挟持部材34の2個の挟持部34Bの間に第2ガイドレール22の戸尻側の端部を挿入させ、これにより、この端部を支持部材32の2個の挿入部32Bで支持させるとともに、この端部を挟持部材34の2個の挟持部34Bによって第2ガイドレール22の厚さ方向に挟持させる。
以上のように第2ガイドレール22の戸尻側の端部を支持部材32で支持させかつ挟持部材34で挟持させた後に、第2ガイドレール22の戸先側の部分を、図2で示されているように、止着具31で取付部材30に取り付ける。これにより、第2ガイドレール22の他方の端部となっている第2ガイドレール22の戸先側の端部やこの端部の周辺部は、取付部材30を介して不動部材となっている上枠部材10に結合されることになる。なお、本実施形態では、図6で示されているように、第2ガイドレール22の戸先側の端部22Fが取付部材30の戸先側の端部30Aと一致した状態で、第2ガイドレール22は取付部材30に止着具31で取り付けられている。
このように止着具31によって取付部材30に第2ガイドレール22の戸先側の部分を取り付けた後に、第2ガイドレール22に第2扉体2を配置される作業が行われ、この作業は、作業者が両手で第2扉体2を持ち、第2扉体2の前述した2個のローラ37を第2ガイドレール22の案内部22Cに載置係合させること、すなわち、上吊り式になっている第2扉体2を第2ガイドレール22に吊り込むことによって行われ、この吊り込み作業時に、第2扉体2の下端に設けられている凹部2Aに図1及び図3で示されている第2ガイドローラ39が挿入される。
次いで、前述した連動機構40の紐状部材44を第1扉体1に配置されている2個の回転体41,42に掛け回し、この紐状部材44を図4の結合部材45で上枠部材10の垂下部10Dに結合する作業や、紐状部材44を結合具46で第2扉体2の支柱47に結合する作業、さらには、上枠部材10に前記工場又は現場で取り付けられた前述の閉鎖装置60の紐状部材61を、第2扉体2の2個のブラケット36のうちの戸先側のブラケット36に連結する作業などの残余の作業が行われ、これにより、前記現場において本実施形態に係る多重引き式引戸装置が出来上がる。
以上説明した本実施形態によると、第2ガイドレール22の戸尻側の端部を、不動部材となっている戸尻側の竪枠部材12に取り付けられた支持部材32によって支持させる作業は、第2ガイドレール22に形成されている空洞部22Eに、支持部材32に第2ガイドレール22の長手方向に延びて形成されている挿入部32Bを挿入することによって行われるため、この作業を、第2ガイドレール22を第2ガイドレール22の長手方向に移動させることにより、空洞部22Eに挿入部32Bを挿入するという簡単な作業によって行うことができ、このため、作業の容易化を達成することができる。
また、挿入部32Bは、空洞部22Eに向かって先細りのテーパー形状になっているため、空洞部22Eへの挿入部34Bの挿入を容易に行える。
また、支持部材32には挿入部32Bが2個設けられているため、支持部材32による第2ガイドレール22の戸尻側の端部の支持を、これらの挿入部32Bによって一層確実に行える。
さらに、第2ガイドレール22の長手方向にそれぞれが延びている2個の挿入部32Bの間隔は、空洞部22Eに向かって次第に小さくなっているため、これらの挿入部32Bを空洞部22Eに挿入するための作業を容易に行える。
また、戸尻側の竪枠部材12には、第2ガイドレール22の戸尻側の端部を第2ガイドレール22の厚さ方向に挟持する挟持部材34が取り付けられているため、この挟持部材により、第2ガイドレール22の戸尻側の端部を第2ガイドレール22の厚さ方向に位置決めし、この端部が第2ガイドレール22の厚さ方向に振れることを防止することができる。
また、第2ガイドレール22の戸尻側の端部を第2ガイドレール22の厚さ方向に挟持するために、第2ガイドレール22の長手方向にそれぞれが延びて挟持部材32に設けられている2個の挟持部32Bには、第2ガイドレール22の厚さ方向に拡開した傾斜部32Cとなっている先端部が設けられているため、これらの傾斜部34Cにより、2個の挟持部34Cの間に第2ガイドレール22の戸尻側の端部を挿入する作業を容易に行える。
また、本実施形態に係る引戸装置は、出入口3を開けるために開き移動した2個の扉体1,2を収納するための戸袋4を有するものとなっているが、この戸袋4の内部に配置される第2ガイドレール22の戸尻側の端部は、空洞部22Eに挿入部32Bが挿入されることによって支持部材32で支持されるため、この支持させる作業を、戸袋4の施工後であっても、さらに、本実施形態の戸袋4は壁6の内部に収納された壁収納式戸袋であるため、この壁6の施工後であっても、容易に行うことができる。
また、本実施形態では、第2ガイドレール22の戸先側の端部又はこの端部の周辺部は戸袋4の外部に配置されており、第2ガイドレール22の戸先側の端部又はこの端部の周辺部は、不動部材となっている上枠部材10に設けられた取付部材30に止着具31で結合されるため、止着具31によるこの結合により、第2ガイドレール22を上枠部材10に大きな取付力での取り付けることができるとともに、止着具31による結合作業を、戸袋4の外部において容易に行える。
さらに、第2ガイドレール22の戸尻側の端部を支持部材32によって支持させることは、第2ガイドレール22に形成されている空洞部22Eに、支持部材32に第2ガイドレール22の長手方向に延びて形成されている挿入部32Bを挿入することによって行われているため、例えば、第2ガイドレール22のメンテナンス作業のために、この第2ガイドレール22を取り外すときには、この取り外し作業を、取付部材30に第2ガイドレール22を取り付けていた止着具31を取り外した後に、第2ガイドレール22を戸先側へ引き出すことによって容易に行え、また、挟持部材34は、第2ガイドレール22の戸尻側の端部を第2ガイドレール22の厚さ方向に挟持するものであるため、第2ガイドレール22を戸先側へ引き出すことにより、挟持部材34から第2ガイドレール22を容易に分離させることができる。
また、空洞部22Eを有している第2ガイドレール22は、アルミ又はアルミ合金の引き抜き成形品又は押し出し成形品であるため、空洞部22Eは第2ガイドレール22の全長に渡って連続しており、このため、アルミ又はアルミ合金の引き抜き成形品又は押し出し成形品として生産した第2ガイドレール用素材を任意な長さで切断することにより、所定長さとなった第2ガイドレール22を得ることができ、このため、それぞれ長さが異なっている各種の第2ガイドレールを容易に得ることができる。
図11は、第2ガイドレール22の戸尻側の端部を支持する別実施形態に係る支持部材132を示す。
板金の折り曲げ品であるこの支持部材132は、前記実施形態の支持部材32と同様に、戸尻側の竪枠部材12にビス等の止着具33又は溶接で結合されたベース部132Aと、このベース部132Aの扉体1,2の厚さ方向両端から戸先側へ延出した2個の挿入部132Bとからなり、これらの挿入部132Bが第2ガイドレール22の空洞部22Eに挿入されることにより、第2ガイドレール22の戸尻側の端部が支持部材132によって支持される。また、それぞれの挿入部132Bは、図11で示されているように、上下寸法が戸先側へ次第に小さくなったテーパー形状に形成されているとともに、これらの挿入部132B同士の間隔は、図9で示されている前記実施形態の支持部材32の挿入部32B同士の間隔と同様に、戸先側へ次第に小さくなっている。
この実施形態において、支持部材132のそれぞれの挿入部132Bの上面は、ベース部132A側の水平面132Cと、この水平面132Cから戸先側へ延びた傾斜面132Dとからなり、この傾斜面132Dは、戸先側へ下り傾斜している。
このため、この実施形態によると、第2ガイドレール22の戸尻側の端部を支持部材132で支持させるために、第2ガイドレール22の空洞部22Eへ2個の挿入部132Bを挿入することは、傾斜面132Dによって円滑に行うことができ、また、水平面132Cは空洞部22Eの上面に面接触するため、挿入部132Bによる第2ガイドレール22の戸尻側の端部の支持を安定させて行うことができる。