戸袋を壁の内部に配置し、戸袋の外面を形成する面材に壁材を取り付けてこの面材を壁材のための下地材とする場合には、大きな面材強度が必要となるため、面材として、例えば1.6mm程度の大きな板厚を有する金属板を使用しなければならない。このような場合に、戸袋の同じ側の外面を1枚の面材で形成しようとすると、その面材は大重量となり、戸袋施工現場等での面材の持ち運び等の取り扱いが面倒で困難となるため、戸袋の同じ側の外面を複数の面材の並設で形成し、1枚の面材の重量を小さくすることが望ましく、特開平10−46923号でも、2枚の面材の並設で戸袋の同じ側の外面を形成している。
しかし、特開平10−46923号では、2枚の面材を左右方向に並設している。引戸を収納するための戸袋は、天井の高さ、引戸の高さ、引戸の幅に応じた上下寸法、左右寸法に形成され、左右寸法よりも上下寸法の方が大きい。このため、戸袋の同じ側の外面を左右方向に並設した2枚の面材で形成した場合には、それぞれの面材は、左右寸法に比べて上下寸法が大きい細長の長方形のものとなってしまう。
これによると、戸袋施工現場等において面材を持ち運ぶときなどに面材が大きく撓むことになり、また、戸袋の外枠を形成する上枠、下枠への面材の取付作業が面倒になる。このため、1枚の面材が軽量化されても、面材の取り扱いや取付作業に手間がかかることになり、戸袋施工作業上、好ましくない。
これと同様な問題は、戸袋が壁の内部に配置されず、したがって外部から視認できるタイプの戸袋の場合にも生じ、この戸袋の同じ側の外面を左右方向に並設した複数の面材で形成すると、それぞれの面材は上下寸法の大きい細長のものとなり、その取り扱いや取付作業に手間がかかることになる。
本発明の目的は、戸袋の外面を形成する外面形成部材を容易に取り扱うことができるようになる戸袋構造を提供するところにある。
また、本発明の目的は、戸袋の外面を形成する外面形成部材の取付作業を容易に行えるようになる戸袋の組立方法を提供するところにある。
本発明に係る戸袋構造は、移動式開閉体を収納する戸袋の少なくとも同じ側の外面が複数の外面形成部材により形成されている戸袋構造において、複数の外面形成部材を上下方向に並設することにより戸袋の少なくとも同じ側の外面を形成していることを特徴とするものである。
本発明では、複数の外面形成部材を上下方向に並設することにより戸袋の少なくとも同じ側の外面を形成しているため、左右寸法よりも上下寸法が大きくなっている戸袋では、それぞれの外面形成部材は正方形又は正方形に近い形状になる。このため、戸袋施工現場等において外面形成部材を持ち運びなどの取り扱いを行うとき、外面形成部材の撓みを少なくでき、取り扱いが容易になる。
本発明に係る戸袋は壁の内部に配置されるものでもよく、壁の内部に配置されないものでもよい。すなわち、外面形成部材の外面に壁を形成するための壁材を取り付けてもよく、取り付けなくてもよい。
戸袋を壁の内部に配置するために外面形成部材の外面に壁材を取り付ける場合には、必要とされる強度を確保するため外面形成部材は厚さの大きなものが使用される。このように厚さが大きく、このため重量が重くなった外面形成部材を使用するとき、本発明では、外面形成部材を細長のものとさせず、上述のように正方形又は正方形に近い形状にさせることができるため、重量が重い外面形成部材でも取り扱いを容易にできるという効果を得られる。
また、戸袋の少なくとも同じ側の外面に上下方向に並設する複数の外面形成部材には、上下寸法が同じになっている複数の外面形成部材を含ませてもよい。このようにすると、これらの外面形成部材を生産するとき、所定の上下寸法(幅寸法)となっている長尺の材料を用意し、この材料を必要長さに切断することにより上記複数の外面形成部材を生産できるようになり、材料の共通化を図ることができる。この場合、長尺の材料の切断長さは、上記複数の外面形成部材の全部について同じとしてもよく、異ならせてもよく、その切断長さはこれらの外面形成部材に求められる長さに任意に設定できる。
さらに、戸袋の少なくとも同じ側の外面に上下方向に並設する複数の外面形成部材に面積が異なるものを設け、面積の小さい外面形成部材を面積の大きい外面形成部材よりも上方に配置してもよい。このようにすると、面積が大きく、したがって重量が重い外面形成部材を取付作業時に高い位置まで持ち上げることが不要になり、高い位置に持ち上げるのは、面積が小さく、したがって重量が軽い外面形成部材でよいため、外面形成部材の取付作業を容易に行えるようになる。
外面形成部材は板材等による平坦な部材でもよく、あるいは、戸袋の外面形成後等における充分な強度を確保するために、凹凸等による補強部を備えたものでもよい。
補強部を設ける場合には、補強部を戸袋内側に突出した突出部として形成することが好ましい。この補強部は、外面形成部材を面材とした場合には、この面材の一部折り曲げで形成してもよく、面材とは別の部材による補強部材を溶接等で面材に固設することにより形成してもよい。
外面形成部材に戸袋内側に突出した補強部を設けると、外面形成部材の戸袋外側の面の大部分又は全部が平坦となるため、戸袋を壁の内部に配置する場合には、その面を壁材の取付面としてそのまま利用できて、壁材の下地材としての外面形成部材の機能を確保でき、戸袋を壁の内部に配置しない場合には、戸袋外面の触り感触を良好にできる。
この補強部は、上下方向に延びるものとしてもよいが、左右方向に延びるものとすることがより好ましい。左右方向に延びるものとすると、各種の戸袋において、一般的に戸袋高さ寸法はほぼ一定で、左右寸法だけが異なる場合が多いため、外面形成部材の材料として補強部が長さ方向両端まで達する長尺のものを生産し、この長尺材料を戸袋の種類に応じた長さ寸法に切断することにより所望の外面形成部材を得ることができる。したがって、同じ長尺材料から、補強部を備えかつ任意な左右寸法の外面形成部材を簡単に製造できるため、その長尺材料を各種の戸袋のための外面形成部材を製造するために共通使用できるようになる。
以上の本発明に係る戸袋構造において、複数の外面形成部材を上下方向に並設するとは、これらの外面形成部材を、外面形成部材同士を互いに突き合わせる場合とオーバーラップさせる場合とを含む密接させて配置する場合と、これらの外面形成部材の間に間隔を開けて配置する場合との両方を含む。また。これらの両方において、最上段の外面形成部材の上方、最下段の外面形成部材の下方に開口部を設けてもよい。
本発明に係る戸袋の組立方法は、移動式開閉体を収納するための戸袋の少なくとも同じ側の外面を外面形成部材を複数並設することにより形成する戸袋の組立方法において、複数の外面形成部材の並設方向を上下方向とし、これらの外面形成部材のうちの少なくとも1つの外面形成部材の取付作業を、この外面形成部材の下に配置されている部材に載せながら行うことを特徴とするものである。
この戸袋の組立方法によると、複数の外面形成部材のうちの少なくとも1つの外面形成部材の取付作業を、この外面形成部材の下に配置されている部材に載せながら行うため、この外面形成部材の取付作業時に作業者は外面形成部材の重量を支持しなくてもよくなる。このため、外面形成部材の取付作業を容易に行え、作業効率の向上、作業者数の削減を図ることができる。
ここで、外面形成部材を下に配置されている部材に載せるとは、下に配置されている部材に単に載せることでもよく、あるいは、これらの部材の少なくとも一方に、外面形成部材を下の部材に対して戸袋内外方向に位置決めする位置決め部材を設け、この位置部材で位置決めしながら載せることでもよい。
後者を採用した場合には、作業者は外面形成部材の重量を支持しなくてよいとともに、外面形成部材を戸袋内外方向に位置決めしなくてもよくなるため、外面形成部材の取付作業を一層容易に行える。
外面形成部材を載せる下の部材は、上下方向に複数並設される外面形成部材のうちの一つでもよく、最下段の外面形成部材を載せときの下の部材は、例えば、戸袋の下枠でもよく、この下枠に取り付けたブラケット等でもよい。
また、位置決め部材は、外面形成部材と下の部材とのうちの一方と共に他方を戸袋内外方向に挟着するタイプのものでもよく、あるいは、外面形成部材と下の部材のうちのいずれか一方に取り付けられ、それ自身だけで外面形成部材を下の部材に対して戸袋内外方向に挟着するタイプのものでもよく、その構造、形状は任意である。
また、本発明に係る他の戸袋の組立方法は、移動式開閉体を収納するための戸袋の少なくとも同じ側の外面を外面形成部材を複数並設することにより形成する戸袋の組立方法において、前記複数の外面形成部材の並設方向を上下方向とし、これらの外面形成部材のうちの少なくとも1つの外面形成部材の取付作業を、この外面形成部材の上に配置されている部材に吊り下げながら行うことを特徴とするものである。
この戸袋の組立方法によると、複数の外面形成部材のうちの少なくとも1つの外面形成部材の取付作業を、この外面形成部材の上に配置されている部材に吊り下げながら行うため、この組立方法でも、作業者は外面形成部材の取付作業時に外面形成部材の重量を支持しなくてもよくなり、外面形成部材の取付作業を容易に行え、作業効率の向上、作業者数の削減を図ることができる。
この組立方法において、外面形成部材を吊り下げる上の部材は、上下方向に複数並設される外面形成部材のうちの一つでもよく、最上段の外面形成部材を吊り下げるときの上の部材は、例えば、戸袋の上枠でもよく、この上枠に取り付けたブラケット等でもよい。
また、この組立方法において、外面形成部材を、この外面形成部材の上に配置されている部材に吊り下げるとは、引っ掛けることや保持させること等を含み、要するに、上の部材に外面形成部材の重量を支持させることができるものであればよい。
本発明に係る戸袋の組立方法において、戸袋を壁の内部に配置してもよく、壁の内部に配置しなくてもよい。すなわち、外面形成部材の外面に壁を形成するための壁材を取り付けてもよく、取り付けなくてもよい。
前者とする場合には、外面形成部材への壁材の取付作業は外面形成部材を戸袋の所定位置に取り付けた後に行ってもよく、外面形成部材を戸袋の所定位置の取り付ける前に行ってもよい。
以上の本発明において、戸袋に収納される移動式開閉体は引戸でもよく、間仕切りパネルでもよく、任意な開閉体のための戸袋に本発明を適用できる。また、引戸は上吊り式のものでもよく、上下のレールに摺動自在に係合し、これらのレールに案内されて移動する一般的な引戸でもよい。間仕切りパネルも上吊り式のものでもよく、上下のレールに案内されて移動する間仕切りパネルでもよい。
本発明によると、戸袋の外面を形成する外面形成部材を容易に取り扱うことができるという効果を得られる。
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る戸袋が適用された引戸装置1の一部破断の正面図が示されている。建物内に設置されているこの引戸装置1は、左右動することにより出入口用の開口部2を開閉する移動式開閉体である引戸3を有し、引戸3は、建物躯体等に結合されて開口部2の上縁を形成している上枠4の内部のレールから吊り下げられた上吊り式である。開口部2における引戸移動方向に対して直角をなす戸先側の縁部は戸先側竪枠5で形成され、開口部2における引戸移動方向に対して直角をなす戸尻側の縁部は竪額縁6で形成され、開口部2における下縁は床7で形成されている。戸先側竪枠5に引戸3の戸先が当接することにより、引戸3は閉じ側の移動限に達する。
竪額縁6の後側は壁8になっており、この壁8の内部に、後退移動して開口部2を開けたときの引戸3を収納するための戸袋9が配置されている。戸袋9の後端は上下方向を長さ方向とする戸尻側竪枠10で形成され、上枠4は戸先側竪枠5から戸尻側竪枠10までの長さを有している。戸袋9の下端は下枠11で形成され、この下枠11は竪額縁6から戸尻側竪枠10までの長さを有する。
図1のIV−IV線断面図である図4に示すように、壁8は、戸袋9の両側に配置された壁材である壁ボード12と、この壁ボード12の表面に貼られた壁仕上げ材である壁クロス13とで形成されている。この壁8は戸先側竪枠5の後側にも設けられ、また、図1のII−II線断面図である図2に示すように、壁8は、上枠4の一方の面である上枠4の正面の上部と、上枠4の他方の面の表面にも設けられている。図1で示した上枠4の正面と、戸先側竪枠5と、竪額縁6は、壁8から露出しており、これらは、開口部2と壁8との間の見切り材となっている。
図2及び図3には、上枠4の内部に配置されている引戸3のための移動機構が示されている。図3は、上枠4の内部に配置されているこの移動機構の正面図である。図2で示すとおり、上枠4の閉鎖面部4Aの内面には補強部材14が取り付けられ、この補強部材14は、図3で示すように、引戸3の移動方向に複数設けられている。これらの補強部材14には上枠4とほぼ同じ長さのレール15が結合され、このレール15は図2のように縦断面L字状であり、水平部15Aの先端に引戸3の移動を案内するガイド部15Bが設けられている。図3で示すとおり、上枠4内に挿入されている引戸3の上部にはローラ16がローラ保持部材17に取り付けられて回転自在に支持され、複数個あるローラ16がレール15のガイド部15Bに係合されている。これにより引戸3はレール15に吊り下げ支持されているとともに、レール15に沿って移動自在になっている。
また、図1で示す床7にはガイドローラ18が配置され、図2で示すとおり、このガイドローラ18は引戸3の下向きに開口した下フレーム3A内に挿入され、開口部2を開閉する引戸3の移動は、引戸3の下端がガイドローラ18で案内されながら行われる。
図3で示す複数のローラ保持部材17のうち、最後部のローラ保持部材17にはゴム等による緩衝部材19が後ろ向きに取り付けられ、この緩衝部材19が引戸3の後退移動によりレール15に結合されているストップ部材20に当接することにより引戸3は後退限に達する。また、レール15の先端に連結された連結部材21にはピン22が垂下固定され、このピン22にはワイヤー23の一端が結合され、ワイヤー23の他端は、複数個のローラ保持部材17のうちの最前部のローラ保持部材17に連結されているブラケット24内の図示されていない渦巻きばね機構に結合されている。
このため、図1で示す把持部3Bを握った手で引戸3を後退移動させると、ワイヤー23が渦巻きばね機構から繰り出されるとともに、ワイヤー23からの引っ張り力で渦巻きばね機構の渦巻きばねが蓄圧され、把持部3Bから手を離すと、この渦巻きばねの蓄圧力により引戸3が自動的に前進移動し、開口部2を閉じるようになっている。このため、本実施形態に係る上吊り式引戸装置1は、半自動式(自閉式)である。
また、図3で示すように上枠4内のレール15にはブラケット25でエアシリンダ26が後ろ向きに取り付けられ、このエアシリンダ26のピストンロッド27の先端部は、最後部のローラ保持部材17に設けられているキャッチ部材28で把持されている。このため、引戸3の往復動によりピストンロッド27はエアシリンダ26に対して伸縮動する、エアシリンダ26には、引戸3が後退移動したとき、すなわちピストンロッド27が伸び作動したときに多量の空気をエアシリンダ26内部に吸引し、引戸3が前進移動したときはこの空気を絞りながら排出するバルブが設けられているため、上記渦巻きばねの蓄圧力により開口部2を閉じるときの引戸3の前進移動は、エアシリンダ26のダンパー作用で低速で行われるようになっている。
上枠4の内部に配置されている以上の機構、構造を点検できるように、上枠4には図2で示す点検口29が設けられ、図1で示した開口部2の真上に設けられているこの点検口29は、通常時、点検カバー30で塞がれている。図2に示すとおり、上枠4には斜め上向きの傾斜突片4Bが設けられ、点検カバー30の上辺にはこの傾斜突片4Bに係止する係止部30Aが形成されている。係止部30Aを傾斜突片4Bに係止し、図1で示した戸先側竪枠5と竪額縁6のそれぞれに設けられている図示しないブラケットのねじ孔に点検カバー30を挿通させたローレットねじ31をねじ込むことにより、点検カバー30は上枠4に点検口29を塞いで取り付けられる。また、ローレットねじ31の取り外しを行い、係止部30Aを傾斜突片4Bから外すことにより、点検カバー30を上枠4から取り除いて点検口29を開放でき、これにより、上枠4の内部に配置されている上記機構、構造の点検が可能になる。
図5は図4の一部拡大図で、図6は図5のVI−VI線断面図である。これらの図は、前記壁8と、この壁8の内部に配置されている前記戸袋9の構造を示している。図6に示すように、戸袋9の一方の外面(図6では右側の外面)は、外面形成部材である2枚の金属製面材41,42を上下に並設することにより形成され、戸袋9の他方の外面も、2枚の金属製面材43,44を上下に並設することにより形成されている。図6において、上枠4の左側には右側に存在しない垂下部4Cが形成されているため、これら合計4枚の面材41〜44のうち、右側の面材41と42の合計上下寸法は、左側の面材43と44の合計上下寸法よりも大きい。
図6の右側上部の面材41は、上枠4の上面に結合したブラケット45にビス46で取り付けられ、右側下部の面材42は、チャンネル材からなる前記下枠11の右側起立部11Aにビス46で取り付けられている。また、図6の左側上部の面材43は、上枠4の垂下部4Cに結合したアングル材からなるブラケット47にビス46で取り付けられ、左側下部の面材44は、下枠11の左側起立部11Bにビス46で取り付けられている。さらに、図5に示すように、これらの面材41〜44は、いずれも上下方向に延びている竪額縁6の後方延出部6Aと前記戸尻側竪枠10に結合したブラケット48とにビス46で取り付けられている。
面材41〜44の外側には前記壁8の構成材である壁ボード12が配置され、この壁ボード12は、図5で示すステープル、ビス等の止め具49で面材41〜44に取り付けられている。このため、面材41〜44は、壁ボード12の下地材として利用されている。壁ボード12には前記壁クロス13が貼られ、壁8の仕上げ材となっている壁クロス13で止め具49が隠されている。
以上において、図1及び図5に示すように、面材41〜44の左右寸法は、戸袋9の幅寸法と対応したWである。また、図6の右側の2枚の面材41,42の上下寸法は、戸袋9の高さ寸法の半分と対応したH1であり、左側の2枚の面材43,44の上下寸法は、戸袋9の高さ寸法から垂下部4Cの垂下長さを差し引いた寸法の半分と対応したH2である。
戸袋9の高さ寸法は建物の天井高さ等に応じて決定され、この高さ寸法は戸袋9の幅寸法よりも大きい。このため、戸袋9の外面を上下2枚の面材41と42、43と44の並設で形成すると、上下寸法H1,H2を左右寸法Wと同じ値又は左右寸法Wに近い値にすることができ、面材41〜44は正方形又は正方形に近い形状になる。
このため、引戸装置1の生産工場から建物の建築現場である引戸装置施工現場へ面材41〜44を運ぶとき、あるいは施工現場で面材41〜44の取付作業のために面材41〜44を取り扱うとき、面材41〜44の撓みを少なく抑えることができ、このため、面材41〜44の取扱作業が容易となる。
また、面材41と42、面材43と44は、それぞれ上下寸法H1,H2と左右寸法Wが同じになっている。このため、同じ材料から生産されるこれらの4個の面材41〜44のうち、2個ずつが共通化されることになり、その生産作業を合理化することができる。
また、面材41〜44の取付作業を行って戸袋9を施工現場で組み立てるときには、図6の右側下部の面材42を下枠11の右側起立部11A等にビス46で固定した後、この面材42の上面に右側上部の面材41を載せ、そしてこの面材41をブラケット45等にビス46で固定する。図6の左側の面材43,44についても同様で、面材44を下枠11の左側起立部11B等にビス46で固定した後、この面材44の上面に面材43を載せ、そしてこの面材43をブラケット47等にビス46で固定する。
このため、左右両側の上部の面材41,43は、その下の面材42,44に載せられながらビス46による取付作業が行われ、したがって、作業者は面材41,43の重量を支持することなく取付作業を行え、作業の容易化、作業性の向上を図ることができる。
図7〜図9は、本発明に係る第2実施形態に係る戸袋構造を示す。図7は前記実施形態における図5と同様の図で、図7のVIII−VIII線断面図である図8に示すように、戸袋9の右側外面は上下寸法が同じになっている上下2枚の金属製面材51,52の並設で形成され、左側の外面も上下寸法が同じになっている上下2枚の金属製面材53,54の並設で形成されている。面材51の下端と面材53の上下端には折り曲げによる補強部51A,53A,53Bが形成され、上下方向中央部にも補強部51B,53Cが形成されている。また、面材52と54の上端には折り曲げによる補強部52A,54Aが形成され、上下方向中央部にも補強部52B,54Bが形成されている。
これらの補強部は戸袋9の内側に突出するものとなっているとともに、面材51〜54の左右両端まで連続して延びている。
図7に示すように、戸尻側竪枠10の戸袋内側左右には、面材51〜54の後端を取り付けるための断面コ字状のブラケット55が固定され、このブラケット55の外側フランジ55Aには、図9に示すとおり、面材51〜54の上記補強部と対応する位置に切欠部56が形成され、これらの切欠部56に補強部が挿入可能になっている。これと同様な切欠部は、図7で示されている竪額縁6の外側後方延出部6Aにも形成されている。
図8で示された左右両側の下部の面材52,54の内面には、面材52,54を下枠11に対して戸袋9の内外方向に位置決めするための位置決め部材になっている挟着部材57が取り付けられている。この挟着部材57は板金の折り曲げで形成され、面材52,54との間に下枠11の起立部11A,11Bを挿入できる隙間を有している。また、この挟着部材57は引戸移動方向の寸法が短い短寸法のもので、面材52,54に引戸移動方向に複数設けられている。
面材52,54の取付作業を行うときは、先ず下枠11の起立部11A,11Bを面材52,54と挟着部材57との間の隙間に挿入しながら、面材52、54の補強部52A,52B,54A,54Bの左右端部をブラケット55と竪額縁6の切欠部56に挿入する。次いで、面材52,54の下端を図8のビス46で下枠11の起立部11A,11Bに固定するとともに、補強部52B,54Bの左右端部を図7で示すブラケット55の内側フランジ55B、竪額縁6の内側後方延出部6Bに図9で示すビス58で固定し、さらに、補強部が設けられていない面材52,54の左右端部をブラケット55の外側フランジ55A、竪額縁6の外側後方延出部6Aにビス46で固定する。これにより、面材51〜54のうち、下部の面材52,54の取付作業が終了する。
この後、上部の面材51,53の補強部51A,51B,53A,53B,53Cをブラケット55と竪額縁6の切欠部56に挿入し、面材51,53の下端を面材52,54の上端の補強部52A,54Aの上面に載せる。この状態で上下の面材51と52、53と54のそれぞれの重ね合わせ端部を図8、図9のビス58で結合するとともに、これらの重ね合わせ端部の左右端部ではビス58をブラケット55の内側フランジ55Bと竪額縁6の内側後方延出部6Bに螺入する。また、面材51,53の補強部が設けられていない左右端部をビス46でブラケット55の外側フランジ55Aと竪額縁6の外側後方延出部6Aに固定する。さらに、右側の面材51の上端を図8で示されている上枠4のブラケット45にビス46で固定し、左側の面材53の上端を上枠4の垂下部4Cに結合したブラケット59にビス58で固定する。
この実施形態でも、戸袋9の外面は上下2枚の面材51と52,53と54で形成されているため、面材51〜54を取扱時に撓みの少ない正方形又は正方形に近い形状にできるとともに、上部の面材51,53は下部の面材52,54の上端の補強部52A,54Aに載せられて取付作業が行われるため、作業者は上部の面材51,53の重量を支持することなく、取付作業を簡単に行える。
また、この実施形態によると、下部の面材52,54には下枠11の起立部11A,11Bを挟着する挟着部材57が設けられ、この挟着部材57により面材52,54の重量を下枠11の起立部11A,11Bで支持させることができるとともに、面材52,54を起立部11A,11Bに対して戸袋9の内外方向に位置決めできるため、面材52,54の取付作業を、作業者が面材52,54の重量を支持せず、そして面材52,54を戸袋9の内外方向の所定位置に位置決めした状態で行え、取付作業の効率を向上させることができる。
また、面材51〜54には補強部51A,51B,52A,52B,53A,53B,53C,54A,54Bが形成されているため、取付作業前及び後の面材強度を大きくでき、壁8の壁ボード12を取り付けるための下地材としての必要な充分の強度を確保できる。また、これらの補強部は戸袋9の内部に突出したものとなっているため、面材51〜54の外面の大部分を、壁ボード12を当てがってステープル等の止め具49で取り付けるための取付面として利用でき、補強部を設けたにもかかわらず壁ボード12の下地材としての面材51〜54の機能を充分確保できる。
ここで、止め具49で壁ボード12を面材に取り付けるとき、戸袋内側へ窪んだ凹部となっている上記補強部を避けて止め具49の打ち込みを行うが、止め具49の打ち込みが誤って補強部の位置で行われても、止め具49の打ち込みは多数行われるため、面材への壁ボード12の取り付けを確実に行える。また、使用する止め具49を補強部の底部まで達する長いものとすることにより、補強部の位置を気にせずに止め具49の打ち込みを行えるようになる。
また、この実施形態によると、補強部51A,51B,52A,52B,53A,53B,53C,54A,54Bは左右方向に延びるものとなっているため、予め長尺に形成され、その長さ方向に補強部が連続して形成されている面材用の材料を生産しておき、この材料を面材の左右寸法として必要な所望長さ(図1、図5ではW)に切断することにより、補強部を備えた面材を容易に製造できる。すなわち、戸袋の高さ寸法は各種の戸袋においてほぼ同じであるが、これらの戸袋は一般的に幅寸法が異なっており、これらの戸袋の外面形成部材として補強部を有する面材を使用する場合に、この実施形態のように、補強部を左右方向に延びるものとすることにより、予め生産しておいた長尺の材料を切断することによって左右寸法が必要長さになっ各種の面材を容易に用意することが可能になる。
もちろんこれに限らず、左右寸法が必要長さになっていて補強部が設けられていない平坦な面材を予め生産し、この平坦な面材に後加工による折り曲げで又は別に用意した補強部材を固着することにより、左右方向に延びる補強部を有する面材を製作するようにしてもよい。
なお、この実施形態において、図8で示されているとおり、上記補強部51A,51B,52A,52B,53A,53B,53C,54A,54Bの戸袋内側への突出量は、戸袋9に収納されたときの引戸3と干渉しない長さに設定されているため、止め具49による壁ボード12の面材51〜54への取付強度を大きくするために止め具49の長さを上記補強部と同じ程度に戸袋内側に突出するものとしても、止め具49が引戸3と干渉することはない。
また、この実施形態と同じく、図6の実施形態において、上下2枚の面材41と42,43と44のうちの下部の面材42,44に挟着部材57を設け、これにより、面材42,44の取付作業を、面材42,44の重量を下枠11で支持させ、かつ面材42,44を戸袋内外方向に位置決めしながら行えるようにしてもよい。
図10は、第3実施形態に係る戸袋構造を示す。この実施形態では、戸袋9の外面を形成する上下2枚の金属製面材61と62,63と64のうち、下部の面材62,64だけではなく、上部の面材61,63にも挟着部材57を設けている。これにより、この挟着部材57で上部の面材61,63の重量を下部の面材62,64に支持させ、かつ上部の面材61,63を戸袋内外方向に位置決めしながら面材61,63の取付作業を行える。
なお、この実施形態と同じく、上部の面材にも挟着部材57を設けることは図6の実施形態でも実施可能である。このためには、図6の下部の面材42,44の上端と上部の面材41,43の下端とのうち、少なくともいずれか一方に戸袋内外方向に折れ曲がって上下方向に延びる延出部を設ければよい。
図11は、第4実施形態を示す。この実施形態では、戸袋9の右側の外面は上下に並設された3枚の金属製面材81〜83で形成され、左側の外面は上下に並設された2枚の金属製面材84,85で形成されている。これらの面材81〜85のうち、右側最上部の面材81の上下寸法は上枠4の垂下部4Cの垂下量と対応している。このため、この実施形態によると、左右に互いに対向する面材82と84,83と85は同じ上下寸法のものにでき、したがって、面材82と84,83と85を同じ材料から製造でき、用意しなければならない材料の種類を削減できる。
また、右側の面材81〜83の左右寸法は全部同じであるが、上下寸法は最上段の面材81のものが小さく、その下の面材82,83のものが大きい。したがって、面材81の面積は面材82,83の面積よりも小さい。これらの面材は同じ材料が形成され、その厚さは同じであるため、最上段の面材81の重量は面材82,83の重量よりも小さい。
このように面積が小さくて軽い面材81の配置位置を面積が大きくて重い面材82,83の配置位置よりも上方にすることにより、面材の取付作業時に所定高さまで持ち上げる作業を容易に行えるようになり、作業性が向上する。
なお、この実施形態のように戸袋9の外面を合計5枚の面材で形成した場合でも図10の実施形態のように、全部の面材に、その下に配置されている下枠11、面材を挟着して戸袋内外方向に位置決めするための挟着部材57を設けてもよい。
また、戸袋9の外面を合計5枚の面材で形成することは、図6で示した実施形態のように補強部を有しない面材を使用する場合にも適用できる。この場合にも、下枠11とその上の面材との結合及び面材同士の結合を図11のようにビスで行ってもよく、図10と同様に、全部の面材に、その下に配置されている下枠11、面材を挟着して戸袋内外方向に位置決めするための挟着部材57を設け、この挟着部材57で面材の重量を支持しかつ面材を戸袋内外方向に位置決めするようにしてもよい。
また、前述したように戸袋9の外面が合計5枚の金属製面材81〜85で形成されているこの実施形態では、上枠4の垂下部4Cに結合されたブラケット86は断面コ字状であり、その下端は戸袋外側へ延びた係止部87となっている。このブラケット86の真下に配置される面材84の上部には、戸袋内側へ延びていて係止部87へ係止可能なフック部88が形成されている。
これ以外にも、係止部87は、その下に面材が配置される全部の面材81,82,84の下端にも設けられており、フック部88は係止部87が形成されている面材の下に配置される面材82,83,85の上部にも形成されている。
このため、この実施形態によると、右側の面材81〜83については、最上部の面材81を上枠4のブラケット45にビス46で取り付けた後は、その下の面材82,83の取付作業を、係止部87にフック部88を係止して順次面材82,83を吊り下げながら行え、左側の面材84,85についても、ブラケット86に吊り下げた面材84の取付作業を行った後、面材84に面材85を吊り下げ、面材85の取付作業を行える。
この実施形態によっても、作業者が面材の重量を支持せずに取付作業を行え、この取付作業を容易に行える。
なお、この実施形態のように、面材の取付作業を上に配置された部材に面材を吊り下げて行うことは、係止部87とフック部88の他には補強部が設けられていない平坦な面材により戸袋9の外面を形成するようにした場合にも適用できる。
なお、以上の各実施形態において、面材同士を結合するためや、面材を下枠やブラケット等に結合するためにビスを使用したが、この結合手段はこれ以外に、例えば、溶接、接着、リベット、ボルト及びナット等でもよく、任意である。