JP5189323B2 - 難燃性ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents

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Description

本発明は、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品に関する。より詳しくは、優れた難燃性を有するとともに、導電性、耐衝撃性、成形品外観のバランスに優れ、自動車用部品、電気・電子用部品、通信機器用部品及び光学部品等の薄肉の成形品や、フィルム又はシート用等として好適な難燃性ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品に関する。
ポリカーボネート樹脂は、OA機器、電気・電子用部品、光学部品、家庭用品、建築部品、自動車用部品等の材料等として広く用いられているが、OA機器、電気・電子部品等の分野を中心に、より高い難燃性が要求され、各種難燃剤の添加によりその改善が図られている。
例えば、有機ハロゲン系化合物や有機リン系化合物が従来から添加されている。しかし、これらの難燃剤の多くは毒性面で問題があり、特に有機ハロゲン系化合物は、燃焼時に腐食性ガスを発生するという問題があった。そのため、近年、非ハロゲン・非リン系難燃剤による難燃化の要求が高まっている。
非ハロゲン・非リン系難燃剤によりポリカーボネート樹脂の難燃性を高める技術として、シリコーン化合物や金属塩を添加することが知られている(特許文献1参照)。しかし、これら難燃剤の添加によって、該難燃剤の二次凝集が生じやすくなり、その結果、難燃性や耐衝撃性が低下するおそれがある。また、カーボンファイバー等を添加したポリカーボネート樹脂組成物に関しては、熱伝導性に優れた材料の検討がなされているが、非ハロゲン・非リン系での薄肉難燃化技術は確立されていない(特許文献2参照)。
さらに、カーボン繊維複合ポリカーボネート樹脂組成物は、有機金属塩化合物を添加することで0.8mm厚におけるV−0化の難燃性が可能と報告されており(特許文献3参照)、またカーボンナノチューブを複合化した難燃性ポリカーボネート樹脂組成物についても検討されている(特許文献4参照)。しかし、いずれの技術においても、難燃フィルム及び難燃シート分野で要求される薄肉(特に0.5mm厚以下)での難燃性の記載はなく、さらに上記の難燃技術では薄肉化の達成が困難であり、難燃化の技術躍進が必要とされる。
特開2005−263909号公報 特開2007−31611号公報 特開2007−100023号公報 特許第3892307号
本発明は、0.5mm以下の薄い肉厚においても難燃性に優れ、各種用途に用いられる薄肉成形品に対応可能な、導電性、耐衝撃性、成形品外観のバランスに優れた難燃性ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、芳香族ポリカーボネート樹脂に、難燃性成分として、カーボンナノチューブ及びポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
1.(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、(B)カーボンナノチューブを0.1〜5質量部、(C)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を0.1〜10質量部含むことを特徴とする難燃性ポリカーボネート樹脂組成物、
2.さらに(D)フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンを0.05〜2質量部含む上記1に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物、
3.カーボンナノチューブの非晶カーボン粒子の含有量が10質量%以下である上記1又は2に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物、
4.上記1〜3のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品、
5.自動車用部品、電気・電子用部品又は通信用機器用部品に用いられる上記4に記載の成形品、
6.フィルム又はシートである上記4に記載の成形品、
を提供するものである。
本発明によれば、0.5mm以下の薄肉化においても難燃性に優れ、導電性、耐衝撃性及び成形品外観に優れた難燃性ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品を得ることが可能となった。
以下、本発明について、詳細に説明する。
[(A)芳香族ポリカーボネート樹脂]
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂(以下、単に「(A)成分」ということがある)を含む組成物である。
(A)成分としては、特に制限はなく種々のものが挙げられる。通常、二価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法あるいは溶融法により反応させて製造された芳香族ポリカーボネートを用いることができる。具体的には、二価フェノールとホスゲンの反応、二価フェノールとジフェニルカーボネート等とのエステル交換法により反応させて製造されたものを使用することができる。
二価フェノールとしては、様々なものが挙げられるが、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等が挙げられる。特に好ましい二価フェノールとしては、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系、特にビスフェノールAを主原料としたものである。
また、カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カルボニルエステル、ハロホルメート等であり、具体的にはホスゲン、二価フェノールのジハロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等である。この他、二価フェノールとしては、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール等が挙げられる。これらの二価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、(A)成分は、分岐構造を有していてもよく、分岐剤としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α’,α”−トリス(4−ビドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、フロログリシン、トリメリット酸、イサチンビス(o−クレゾール)等がある。また、分子量の調節のためには、フェノール、p−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−クミルフェノール等が用いられる。
本発明の(A)成分としては、ポリカーボネート部とポリオルガノシロキサン部を有する共重合体、あるいはこの共重合体を含有するポリカーボネート樹脂であってもよい。また、テレフタル酸等の2官能性カルボン酸、またはそのエステル形成誘導体等のエステル前駆体の存在下でポリカーボネートの重合を行うことによって得られるポリエステル−ポリカーボネート樹脂であってもよい。また、種々のポリカーボネート樹脂の混合物を用いることもできる。
さらに、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、機械的強度および成形性の点から、10,000〜100,000のものが好ましく、特に14,000〜40,000のものが好適である。
[(B)カーボンナノチューブ]
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、(B)カーボンナノチューブ(以下、単に「(B)成分」ということがある)を含む組成物である。
(B)成分は、ポリカーボネート樹脂組成物の難燃性、導電性、耐衝撃性を向上させるために添加される成分であり、カーボンナノチューブの該特性を発揮させるためにはポリカーボネート樹脂組成物中で十分に分散させる必要がある。本発明の(B)成分は、炭素からなる、平均繊維径が5〜80nmで、平均繊維長が1〜50μmの円筒状の中空繊維状物質であり、好ましくは、平均繊維径が5〜20nm、平均繊維長が1〜10μmである。カーボンナノチューブの平均繊維径が5nm未満では、分散が困難であり、導電性が低下し、直径が80nmを超えると、成形品の外観が不良で、導電性も低下する。また、カーボンナノチューブの長さが1μm未満では、導電性が低下し、50μmを超えると、分散が困難となり、成形品の外観が不良となる。
さらに、燃焼残渣の増量、ドリップの防止の観点より、カーボンナノチューブに不純物として含まれる非晶カーボン粒子は10質量%以下が好ましい。非晶カーボン粒子を10質量%以下にすることにより、燃焼残渣量が増加するとともに、ドリップの防止に効果がある。
本発明の(B)成分としては、公知の種々のカーボンナノチューブ及びカーボンマイクロコイルを用いることができる。
カーボンナノチューブは、ゼオライトの細孔に鉄やコバルト系触媒を導入した触媒化学気相成長法(CCVD法)、気相成長法(CVD法)、レーザーアブレーション法、炭素棒・炭素繊維等を用いたアーク放電法等によって製造することができる。
カーボンナノチューブの末端形状は、必ずしも円筒状である必要はなく、例えば、円錐状等変形していても差し支えない。また、カーボンナノチューブの末端が閉じた構造でも、開いた構造のどちらでも用いることができるが、好ましくは末端が開いた構造のものが良い。カーボンナノチューブの末端が閉じた構造のものは、硝酸等化学処理をすることにより開口することができる。さらに、カーボンナノチューブの構造は、多層でも単層でも良い。
また、カーボンマイクロコイルは、機械的強度・弾性力等に優れた特性を有し、特異な二重らせん構造のマイクロメートルサイズの非晶質コイル状炭素繊維である。
(B)カーボンナノチューブの配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.1〜5質量部であり、好ましくは0.5〜3質量部、さらに好ましい配合量は、0.7〜1.5質量部である。配合量が、0.1質量部未満では難燃性、導電性が不十分であり、5質量部を超えると燃焼時にドリップを生じ、難燃性が低下するほか、耐衝撃性が低下する。
[(C)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体]
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、(C)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(以下、単に「(C)成分」ということがある)を含む組成物である。
(C)成分は、ポリカーボネート樹脂組成物に難燃性を付与するために難燃剤として添加される成分である。本発明の(C)成分には特に制限はないが、好ましい具体例としては、(E)ポリオルガノシロキサン粒子40〜90質量部の存在下に、(F)多官能性単量体(f−1)100〜50質量%及びその他の共重合可能な単量体(f−2)0〜50質量%からなるビニル系単量体0.5〜10質量部を重合し、さらに(G)ビニル系単量体5〜50質量部[(E)、(F)及び(G)合わせて100質量部に対し]を重合して得られるポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体が挙げられる。
さらに、好ましい(C)成分は、(E)ポリオルガノシロキサン粒子60〜80質量部の存在下に、(F)ビニル系単量体1〜5質量部を、さらに(G)ビニル系単量体15〜39質量部を合計量が100質量部になるように重合して得られるものである。
前記多官能性単量体(f−1)は、分子内に重合性不飽和結合を2つ以上含む化合物であり、具体例として、メタクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、フタル酸ジアリル、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。これらの中では、経済性及び効果の点で、メタクリル酸アリルの使用が好ましい。
前記共重合可能な単量体(f−2)の具体例としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、パラブチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のカルボキシル基含有ビニル系単量体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
前記(G)ビニル系単量体は、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を得るために使用される成分であり、さらに該グラフト共重合体を芳香族ポリカーボネート樹脂に配合して難燃性及び耐衝撃性を改良する場合に、グラフト共重合体と芳香族ポリカーボネート樹脂との相溶性を確保して芳香族ポリカーボネート樹脂にグラフト共重合体を均一に分散させるために使用される成分でもある。このため、(G)ビニル系単量体としては、該ビニル系単量体の重合体の溶解度パラメーターが9.15〜10.15[(cal/cm31/2]であり、さらには9.17〜10.10[(cal/cm31/2]、特には9.20〜10.05[(cal/cm31/2]であるように選ばれることが好ましい。溶解度パラメーターが前記範囲にあると難燃性が向上する。かかる溶解度パラメーターの詳細については、特開2003−238639号公報に記載されている。
(C)成分の平均粒子径は、電子顕微鏡観察から求めた値で0.1〜1.0μmであり、この平均粒子径が0.1〜1.0μmであると、十分な難燃性、剛性及び衝撃強度が得られる。
上記(C)成分は、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
(C)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部であり、好ましくは1〜5質量部であり、より好ましくは1〜4質量部である。配合量が、0.1質量部未満では、難燃性、耐衝撃性が不十分であり、10質量部を超えると(C)成分の分散性が低下し難燃性が低下する。
[(D)フィビリル形性能を有するポリテトラフルオロエチレン]
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物には、難燃性を向上させるために、(D)フィビリル形性能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(以下、単に「(D)成分」ということがある)を配合することができる。この(D)成分は、本発明の樹脂組成物に溶融滴下防止効果を付与し、優れた難燃性を発現させる。
(D)成分は、フィブリル形成能を有するものであれば特に制限はない。ここで、「フィブリル形成能」とは、せん断力等の外的作用により、樹脂同士が結合して繊維状になる傾向を示すことをいう。本発明の(D)成分としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン系共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等)等を挙げることができる。これらの中では、ポリテトラフルオロエチレンが好ましい。
フィブリル形成能を有するPTFEは、極めて高い分子量を有し、標準比重から求められる数平均分子量で、通常50万以上、好ましくは50万〜1500万、より好ましく100万〜1000万である。具体的には、テトラフルオロエチレンを水性溶媒中で、ナトリウム、カリウムあるいはアンモニウムパーオキシジスルフィドの存在下で、7〜700kPa程度の圧力下、温度0〜200℃程度、好ましくは20〜100℃で重合することによって得ることができる。
また、固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能であり、ASTM規格によりタイプ3に分類されるものを用いることができる。このタイプ3に分類される市販品としては、例えば、テフロン6−J(商品名、三井デュポンフロロケミカル株式会社製)、ポリフロンD−1及びポリフロンF−103(商品名、ダイキン工業株式会社製)等が挙げられる。また、タイプ3以外では、アルゴフロンF5(商品名、モンテフルオス社製)及びポリフロンMPAFA−100(商品名、ダイキン工業株式会社製)等が挙げられる。
上記フィブリル形成能を有するPTFEは、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
(D)フィブリル形成能を有するPTFEの配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.05〜2質量部であり、好ましくは0.05〜1質量部、より好ましくは0.05〜0.5質量部である。その配合量が0.05質量部未満では、十分な溶融滴下防止効果が得られにくく、2質量部を超えると、樹脂組成物の耐衝撃性、成形性(成形品の外観)に悪影響を及ぼすおそれがあるだけでなく、混練押出し時にストランドの吐出が脈動し、安定したペレット製造が困難となり好ましくない。
[難燃性ポリカーボネート樹脂組成物]
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物には、上記(A)〜(D)成分以外に、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じ、その他の合成樹脂やエラストマー、さらには各種添加剤、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、他の難燃性剤、滑剤、各種無機充填剤等を適宜含有させることができる。
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、上記(A)芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)カーボンナノチューブ及び(C)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体、必要に応じて用いられる、(D)フィブリル形性能を有するポリテトラフルオロエチレンや各種の添加剤を常法により配合し、溶融混練することにより得ることができる。例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等を用いて行うことができる。溶融混練における加熱温度は、通常250〜300℃が適当である。
[難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を用いた成形品]
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、公知の成形方法、例えば、中空成形、射出成形、押出成形、真空成形、圧空成形、熱曲げ成形、圧縮成形、カレンダー成形、回転成形等を適用することにより、難燃性の優れた薄肉の成形品とすることができる。
とりわけ、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、使用時に薄い肉厚(0.5mm以下)で難燃性が要求される部位に用いられる成形品、例えば、自動車用部品、電気・電子用部品、通信機器用部品等あるいは薄い肉厚(0.5mm以下)のフィルム及びシートの製造に好適に使用される。
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
なお、樹脂組成物の物性測定及び評価は、以下の方法により行った。
(1)難燃性
UL規格94に準じて作製した厚さ1/64インチ(0.4mm)の試験片を用いて垂直燃焼試験を行った。試験の結果に基づいてUL94V−0、V−1、又はV−2の等級に評価し、V−2に達しないものをV−2outとした。
なお、UL規格94とは、鉛直に保持した所定の大きさの試験片にバーナーの炎を10秒間接炎した後の残炎時間から難燃性を評価する方法である。
(2)ノッチ付きアイゾット衝撃強度(IZOD)
射出成形機で作製した厚さ3.2mm(1/8インチ)の試験片を用いて、ASTM規格D−256に準拠して、測定温度23℃及び−30℃にて衝撃強度を測定した。
(3)曲げ弾性率
射出成形機で作製した厚さ4mm、長さ130mmの試験片を用いて、ASTM規格D−790に準拠し、支点間距離90mm、荷重速度20mm/minで3点曲げ試験を行い、その荷重―歪曲線の勾配より、曲げ弾性率を算出した。
(4)体積固有抵抗値
JIS K6911に準拠して測定した(試験平板:80×80×3mm)。
(5)成形品外観
100×100×2mm角板を成形し、目視観察した。評価基準は、成形体表面に凝集体を確認できるものをブツ、成形体表面に気泡が確認できるものをシルバー、上記いずれも無いものを良とした。
製造例<ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体>
(ポリオルガノシロキサン粒子の製造)
純水251質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)1質量部、オクタメチルシクロテトラシロキサン95質量部、メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン5質量部からなる水溶液をミキサーにより10000rpmで5分間撹拌してエマルジョンを調製した。このエマルジョンを撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口、温度計を備えた5口フラスコに一括して仕込んだ。系を撹拌しながら、10質量%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液1質量部(固形分)を添加し、約40分かけて80℃に昇温後、さらに6時間反応させた。その後、25℃に冷却して、20時間放置後、系内のpHを水酸化ナトリウムで6.5として重合を終了させ、ポリオルガノシロキサン粒子を含むラテックスを得た。
重合転化率は88%、ポリオルガノシロキサン粒子のラテックスの平均粒子径は、0.14μmであり、トルエン不溶分量(ラテックスから乾燥させて得られたポリオルガノシロキサン粒子の固体0.5gを室温にてトルエン80mlに24時間浸漬し、12000rpmにて60分間遠心分離してポリオルガノシロキサン粒子のトルエン不溶分の重量分率(%)を測定したもの。)は0%であった。
(ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の製造)
撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口および温度計を備えた5口フラスコに、純水300質量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.2質量部、エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム(EDTA)0.01質量部、硫酸第一鉄0.0025質量部及び上記の製造で得られたポリオルガノシロキサン粒子70質量部を仕込み、系を撹拌しながら窒素気流下、60℃まで昇温させた。60℃到達後、ビニル系単量体としてメタクリル酸アリル3質量部とラジカル重合開始剤としてクメンハイドロパーオキサイド0.01質量部の混合物を、一括で追加したのち、60℃で1時間撹拌を続けた。
その後、さらにビニル系単量体のメタクリル酸メチル及びラジカル重合開始剤のクメンハイドロパーオキサイド0.06質量部を3時間かけて滴下追加し、追加終了後1時間撹拌を続けることによってグラフト共重合体のラテックスを得た。つづいて、ラテックスを純水で希釈し、固形分濃度を15質量%にした後、10質量%塩化カルシウム水溶液2質量部(固形分)を添加して、凝固スラリーを得た。凝固スラリーを80℃まで加熱した後、50℃まで冷却して脱水、乾燥させてポリオルガノシロキサン系グラフト共重合体の粉体を得た。
得られたグラフト共重合体の重合転化率は99%であり、平均粒子径は0.5μm、アセトン不溶分量は88質量%であった。
<実施例1〜15>
表1に示した難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の各成分(A)〜(D)をそれぞれ乾燥した。次に、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、(B)カーボンナノチューブ、(C)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体及び(D)フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンを表1に示した割合で配合し、タンブラーを用いて均一ブレンドした後、径35mmのベント付き二軸押出成形機(東芝機械株式会社、機種名:TEM35)に供給し、温度300℃で混練し、ペレット化した。
得られたペレットを、100℃で10時間乾燥した後、射出成形機を用いて、シリンダー温度280℃、金型80℃で射出成形し、所望の試験片を得た。この試験片を用いて、上記(1)〜(4)の物性測定及び評価を行い、結果を表1に示した。
<比較例1〜24>
表2及び表3に示した割合で各成分を配合し、実施例と同様に試験片を成形し、物性測定及び評価を行い、結果を表2及び表3に示した。
表1〜3において、用いた成分(A)〜(D)は以下の通りである。
(A)成分
A−1:粘度平均分子量17,500のビスフェノールAポリカーボネート(商品名:A1700、出光興産株式会社製)
A−2:分岐構造を有する芳香族ポリカーボネート(商品名:FB2500、出光興産株式会社製)
(B)成分
B−1:マルチウォールカーボンナノチューブ、平均繊維径10〜30nm、平均繊維長1〜10μm(透過型電子顕微鏡、日立H-600、電圧75kVにて観察)、両端開口、非晶カーボン粒子量5質量%未満(サンナノテック社製)
B−2:マルチウォールカーボンナノチューブ、平均繊維径7〜13nm、平均繊維長5〜15μm、両端開口、非晶カーボン粒子量2質量%未満(商品名:Aligned-MWNTs-10、NTP社製)
B−3:カーボンファイバー、平均繊維径6μm、平均繊維長1.3mm(商品名:HTA-C6-SRS、東邦テナックス株式会社製)
(C)成分
C−1:ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体型難燃剤(商品名:MR-01、株式会社カネカ製)
C−2:製造例により製造されたポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体
C−3:パーフルオロブチルスルホン酸塩(商品名:メガファックF-114、大日本インキ化学工業株式会社製)
C−4:ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート(商品名:PX-200、大八化学工業株式会社製)
(D)成分
D(PTFE):フィブリル形成能を有するPTFE(商品名:CD-076、旭硝子株式会社製)
Figure 0005189323
Figure 0005189323
Figure 0005189323
表1〜3より下記のことが判明した。
〈1〉実施例1〜15より、厚さ0.4mmで、難燃性(V−0)、衝撃強度、剛性、導電性に優れた材料となることが分かった。また、(B)カーボンナノチューブを用いることで難燃性、導電性、耐衝撃性に優れた成形品が得られた。
〈2〉比較例1〜6より、(B)カーボンナノチューブの添加量が、0.1質量部よりも少ないと、難燃性がV−0とならず、体積抵抗値が低下しないことが分かった。
〈3〉比較例7〜10より、(B)カーボンナノチューブの添加量が、5質量部よりも多いと、難燃性がV−2outとなり、耐衝撃性が低いことが分かった。
〈4〉比較例11〜17より、(C)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の添加量が0.1質量部よりも少ないと、難燃性がV−2outとなり、耐衝撃性が低いことが分かった。一方、10質量部よりも多いと、(C)成分の分散不良が生じ、成形品表面にブツが発現し、さらに難燃性がV−2outとなり耐衝撃性も低いことが分かった。
〈5〉比較例18〜20より、(B)カーボンナノチューブの代わりにカーボンファイバーを用いると、難燃性、耐衝撃性が低下することが分かった。
〈6〉比較例21〜24より、(C)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の代わりに、難燃剤としてパーフルオロブチルスルホン酸塩やリン酸エステルを用いると、厚さ0.4mmのV−0が困難であり耐衝撃性も低下することが分かった。
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、0.5mm以下の薄肉においてもV−0を可能とする高い難燃性を有し、導電性、耐衝撃性、成形品外観のバランスに優れている。このため、薄肉の成形品として、OA機器、電気・電子部品等の分野を中心に薄肉軽量化と高い難燃性を要求される分野に有効に利用できる。

Claims (7)

  1. (A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、(B)カーボンナノチューブを0.1〜5質量部、(C)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を0.1〜10質量部含むことを特徴とする難燃性ポリカーボネート樹脂組成物であって、
    前記(B)カーボンナノチューブ中の非晶カーボン粒子の含有量が10質量%以下であり、
    前記(C)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体が、(E)ポリオルガノシロキサン粒子40〜90質量部の存在下に、(F)多官能性単量体(f−1)100〜50質量%及びその他の共重合可能な単量体(f−2)0〜50質量%からなるビニル系単量体0.5〜10質量部を重合し、さらに(G)ビニル系単量体5〜50質量部を重合して得られるポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体である(ただし、(E)、(F)及び(G)の合計量が100質量部である)、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物
  2. さらに(D)フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンを0.05〜2質量部含む請求項1に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
  3. 前記(A)芳香族ポリカーボネート樹脂が、分岐構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂を含む、請求項1又は2に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 前記(C)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体が、(E)ポリオルガノシロキサン粒子60〜80質量部の存在下に、(F)ビニル系単量体1〜5質量部を重合し、さらに(G)ビニル系単量体15〜39質量部を重合して得られるポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体である(ただし、(E)、(F)及び(G)の合計量が100質量部である)、請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
  6. 自動車用部品、電気・電子用部品又は通信用機器用部品に用いられる請求項に記載の成形品。
  7. フィルム又はシートである請求項に記載の成形品。
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