JP4122160B2 - ポリカーボネート樹脂組成物および成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なポリカーボネート樹脂組成物に関し、更に詳しくは、芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体およびカーボンナノチューブ等からなる難燃性、衝撃性、導電性および成形外観等に優れたポリカーボネート樹脂組成物に関するものである。また、該樹脂組成物の成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、エレクトロニクス技術の発展により、情報処理装置および電子事務機器が急速に普及しつつある。電子機器の普及に伴い、電子部品から発生するノイズが周辺機器に影響を与える電磁波障害、静電気による誤作動等のトラブルが増加し、大きな問題となりつつある。これらの問題の解決のため、導電性や制電性に優れた材料が要求されている。
従来より、導電性の低い高分子材料に導電性フィラー等を配合した導電性高分子材料が広く利用されている。導電性フィラーとしては、金属繊維、金属粉末、カーボンブラックおよび炭素繊維等が一般に用いられているが、金属繊維および金属粉末を導電性フィラーとして用いると、優れた導電性付与効果はあるが、耐蝕性に劣り、機械的強度が得難い欠点がある。
カーボンブラックを導電性フィラーとして用いる場合、少量の添加で高い導電性が得られるケッチェンブラック、バルカンXC72およびアセチレンブラック等の導電性カーボンブラックが用いられているが、これらは、樹脂への分散性が不良である。
カーボンブラックの分散性が樹脂組成物の導電性に影響するため、安定した導電性を得るには独特の配合並びに混合技術が必要とされる。
また、炭素繊維を導電性フィラーして使用する場合、一般の補強用炭素繊維により、所望の強度、弾性率を得ることができるが、導電性を付与するには高充填を必要とし、樹脂本来の物性が低下する。さらに、複雑な形状の成形品を得ようとする場合、導電性フィラーの片寄りが生じるため、導電性にバラツキが発生し、満足できない。
炭素繊維では、繊維径の細い方が同量の繊維を添加した場合、樹脂と繊維間の接触面積が大きくなるため導電性付与に優れることが期待される。
特表昭62−500943号公報には、優れた導電性を有する極細炭素フィブリルが開示されている。しかし、樹脂と混合した場合、樹脂への分散性に劣り、成形品表面外観が損なわれ、満足できるものではない。また、樹脂を着色する場合、公知の顔料用カーボンブラックを着色剤として用いる場合、黒色を発現させるには多量に用いる必要があり、樹脂への分散性および成形品の表面外観の点で問題がある。
特開平3−74465号公報にも、極細炭素フィブリルを添加する方法が開示されているが、難燃性については記載がなく、また、開示された方法では難燃性が不十分であり、高い難燃性を必要とする製品には使用することができない。
また、炭素フィブリルの分散に問題があり、導電性を向上するためには添加量を増加する必要がある。
また、特開平4−268362号公報には、ポリカーボネート−ポリジメチルシロキサン共重合体(PC−PDMS)に導電性カーボンを添加する方法が開示されているが、カーボンブラックを使用しているため、導電性に限度があり、カーボンの脱落等使用時に問題になることもある。さらに難燃性に対しては何の記載もない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、成形体の外観が良好で、機械的強度が向上した難燃性の高い導電性ポリカーボネート樹脂組成物および該組成物の成形体を提供することを課題とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題について鋭意検討を行った結果、芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体に、カーボンナノチューブおよび必要に応じ、芳香族ポリカーボネート樹脂および/またはポリテトラフルオロエチレン樹脂を配合することにより、難燃性を付与した高衝撃導電性材料が得られることを見出した。
さらに、検討を進め、ポリカーボネート系樹脂については、芳香族ポリカーボネート樹脂−ポリオルガノシロキサン共重合体が難燃性と少量のカーボンナノチューブ量で導電性が得られることを見出すとともに、成形性や機械的強度が向上し、また、カーボンナノチューブの構造や純度を選択することにより、従来技術に比較して、さらに少ない添加量で導電性を付与することが可能となり、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(A)一般式(1)
【0005】
【化3】
【0006】
(式中、R1 は炭素数10〜35のアルキル基を示し、aは0〜5の整数を示す。)
で表わされる末端基を有する芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体0.1〜99.9質量%、(B)一般式(2)
【0007】
【化4】
【0008】
(式中、R2 は炭素数1〜35のアルキル基を示し、bは0〜5の整数を示す。)
で表わされる末端基を有する芳香族ポリカーボネート樹脂0〜99.8質量%、(C)カーボンナノチューブ0.1〜30質量%からなり、(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計量100質量部に対して、(D)ポリテトラフルオロエチレン樹脂0〜2質量部を配合してなるポリカーボネート樹脂組成物に関するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物において、(A)一般式(1)で表わされる芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体としては、例えば、特開昭50−29695号公報、特開平3−292359号公報、特開平4−202465号公報、特開平8−81620号公報、特開平8−302178号公報および特開平10−7897号公報に開示されている共重合体を挙げることができ、R1は炭素数1〜35のアルキル基であり、直鎖状のものでも分岐状のものでもよく、結合の位置は、p位、m位、o位のいずれもよいがp位が好ましい。
芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体は、好ましくは、一般式(3)で表される構造単位からなる芳香族ポリカーボネート部と一般式(4)で表される構造単位からなるポリオルガノシロキサン部を分子内に有する共重合体を挙げることができる。
【0010】
【化5】
【0011】
ここで、R3及びR4は炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基を示し、同一でも異なっていてもよい。
R5〜R8は炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基を示し、好ましくはメチル基である。R5〜R8はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
R9は脂肪族または芳香族を含む有機残基を示し、好ましくは、o−アリルフェノール残基、p−ヒドロキシスチレン残基またはオイゲノール残基である。
【0012】
Zは単結合、炭素数1〜20のアルキレン基または炭素数1〜20のアルキリデン基、炭素数5〜20のシクロアルキレン基または炭素数5〜20のシクロアルキリデン基、あるいは−SO2−、−SO−、−S−、−O−、−CO−結合を示す。
好ましくは、イソプロピリデン基である。cおよびdは0〜4の整数で好ましくは0である。nは1〜500の整数で、好ましくは5〜200である。
【0013】
芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体は、例えば、予め製造された芳香族ポリカーボネート部を構成する芳香族ポリカーボネートオリゴマー(以下、PCオリゴマーと略称する。)と、ポリオルガノシロキサン部を構成する末端にo−アリルフェノール基、p−ヒドロキシスチレン基、オイゲノール残等の反応性基を有するポリオルガノシロキサン(反応性PORS)とを、塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルム等の溶媒に溶解させ、二価フェノールの苛性アルカリ水溶液を加え、触媒として、第三級アミン(トリエチルアミン等)や第四級アンモニウム塩(トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等)を用い、一般式(5)
【0014】
【化6】
【0015】
(式中、R1、aは前記と同じである。)
で表されるフェノール化合物からなる一般の末端停止剤の存在下、界面重縮合反応することにより製造することができる。
上記の末端停止剤としては、具体的には、例えば、フェノール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、p−ノニルフェノール、p−tert−アミルフェノール、ブロモフェノール、トリブロモフェノール、ペンタブロモフェノール等を挙げることができる。
なかでも、環境問題からハロゲンを含まない化合物が好ましい。
芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の製造に使用されるPCオリゴマーは、例えば塩化メチレンなどの溶媒中で、一般式(6)
【0016】
【化7】
【0017】
(式中、R3、R4、Z、cおよびd、前記と同じである。)
で表される二価フェノールとホスゲンまたは炭酸エステル化合物等のカーボネート前駆体とを反応させることによって容易に製造することができる。
すなわち、例えば、塩化メチレン等の溶媒中において、二価フェノールとホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応により、または二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体とのエステル交換反応等によって製造される。
【0018】
一般式(6)で表される二価フェノールとしては、4,4'−ジヒドロキシジフェニル;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル;ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等を挙げることができる。なかでも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が好ましい。これらの二価フェノールはそれぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
また、炭酸エステル化合物としては、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネートやジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネートを挙げることができる。
芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の製造に供されるPCオリゴマーは、前記の二価フェノール一種を用いたホモポリマーであってもよく、また二種以上を用いたコポリマーであってもよい。
さらに、多官能性芳香族化合物を上記二価フェノールと併用して得られる熱可塑性ランダム分岐ポリカーボネートであってもよい。
その場合、分岐剤(多官能性芳香族化合物)として、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α',α"−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1−[α−メチル−α−(4'−ヒドロキシフェニル)エチル]−4−[α',α'−ビス(4"−ヒドロキシルフェニル)エチル]ベンゼン、フロログルシン、トリメリット酸、イサチンビス(o−クレゾール)等を使用することができる。
【0020】
(A)成分の芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体は、上記のように製造することができるが、一般に芳香族ポリカーボネートが副生し、芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を含む芳香族ポリカーボネート樹脂として製造され、全体の粘度平均分子量は10,000〜40,000が好ましく、さらに好ましくは12,000〜30,000である。
また、ポリオルガノシロキサンの割合は(A)成分を含むポリカーボネート樹脂全体の0.5〜10質量%であることが好ましい。
なお、上記の方法によって製造される重合体は、実質的に分子の片方又は両方に一般式(1)で表される末端基を有するものである。
【0021】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物において、一般式(1)の芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の含有量は、0.1〜99.9質量%である。
含有量を、0.1質量%以上とすることにより、難燃性が向上し、さらにカーボンナノチューブの分散性が向上するため、導電性が上昇する。
含有量を、99.9質量%以下にすることにより、耐熱性、剛性および一般式(2)で表わされる末端基を有する芳香族ポリカーボネート樹脂を配合した場合の相溶性が十分となる。
また、芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体中のポリオルガノシロキサンシロキサン量は、共重合体に対して0.1〜10質量%、好ましくは0.3〜5質量%である。
ポリオルガノシロキサンシロキサン量を0.1質量%以上にすると、難燃性および耐衝撃性が向上する。
10質量%以下にすることにより、耐熱性および難燃性が向上する。
ポリオルガノシロキサンシロキサンは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)が特に好ましい。
【0022】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の(B)一般式(2)で表わされる芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は10,000〜40,000が好ましく、さらに好ましくは12,000〜30,000である。
一般式(2)において、R2は炭素数1〜35のアルキル基であり、直鎖状のものでも分岐状のものでもよい。
【0023】
また、結合の位置は、p位、m位、o位のいずれもよいがp位が好ましい。
この一般式(2)の芳香族ポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとホスゲン又は炭酸エステル化合物とを反応させることにより容易に製造することができる。
【0024】
すなわち、例えば、塩化メチレンなどの溶媒中において、トリエチルアミン等の触媒と特定の末端停止剤の存在下、二価フェノールとホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応により、または二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体とのエステル交換反応等によって製造される。
ここで、二価フェノールとしては、前記の一般式(6)で表される化合物と同じものでもよく、また異なるものでもよい。
また、前記の二価フェノール一種を用いたホモポリマーでも、二種以上用いたコポリマーであってもよい。さらに、多官能性芳香族化合物を上記二価フェノールと併用して得られる熱可塑性ランダム分岐ポリカーボネートであってもよい。
【0025】
炭酸エステル化合物としては、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネートやジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネートが挙げられる。
末端停止剤としては、一般式(2)で表される末端基が形成されるフェノール化合物を使用すればよい。
すなわち、一般式(7)で表されるフェノール化合物で、R2の記載は前記と同様である。
【0026】
【化8】
【0027】
これらのアルキルフェノールとしては、フェノール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、p−ノニルフェノール、ドコシルフェノール、テトラコシルフェノール、ヘキサコシルフェノール、オクタコシルフェノール、トリアコンチルフェノール、ドトリアコンチルフェノール、テトラトリアコンチルフェノール等を挙げることができる。これらは一種でもよく、二種以上を混合したものでもよい。
また、これらのアルキルフェノールは、効果を損ねない範囲で他のフェノール化合物等を併用しても差し支えない。
なお、上記の方法によって製造される芳香族ポリカーボネートは、実質的に分子の片末端又は両末端に一般式(2)で表される末端基を有するものである。
【0028】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物において、一般式(2)の芳香族ポリカーボネート樹脂の含有量は、0〜99.8質量%である。
芳香族ポリカーボネート樹脂を含有することにより、耐熱性及び耐衝撃性が上昇する。
含有量を、99.8質量%以下にすることにより、難燃性が十分となる。
また、高流動化のためには、芳香族ポリカーボネート樹脂の分子末端は、炭素数10〜35のアルキル基であるものが好ましい。
分子末端を炭素数10以上のアルキル基にすると、ポリカーボネート樹脂組成物の流動性が向上する。
しかし、分子末端が炭素数35以上のアルキル基では、耐熱性及び耐衝撃性が低下する。
【0029】
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の(C)カーボンナノチューブは、炭素からなる、外径が0.5〜120nmで、長さが500nm以上の円筒状の中空繊維状物質であり、好ましくは、外径が1〜100nm、長さが800〜15,000nmである。
カーボンナノチューブの外径が0.5nm以下では、分散性が不良で、導電性も低下する。また、外径を120nm以上にすると、成形品の外観が不良で、導電性も低下する。
カーボンナノチューブの長さが800nm以下では、導電性が不十分である。また、長さが15,000nm以上にすると、成形品の外観が不良で、分散が困難となる。
熱可塑性樹脂組成物の導電性および難燃性の観点より、カーボンナノチューブに不純物として含まれる非晶カーボン粒子は、20質量%以下が好ましい。
非晶カーボン粒子を20質量%以下にすることにより、導電性能が向上するとともに、成形時においてポリカーボネート樹脂に対し熱劣化防止効果がある。
【0030】
カーボンナノチューブの含有量は、0.1〜30質量%であり、好ましい含有量は、0.1〜15質量%である。
含有量を、0.1質量%以上とすることにより、熱可塑性樹脂組成物の導電性および難燃性が向上し、30質量%以下とすることにより、含有量に応じて性能が向上し、衝撃強度や成形性が上昇する。
【0031】
本発明のカーボンナノチューブとしては、公知の種々カーボンナノチューブおよびカーボンマイクロコイルを用いることができる。
カーボンナノチューブは、ゼオライトの細孔に鉄やコバルト系触媒を導入した触媒化学気相成長法(CCVD法)、気相成長法(CVD法)、レーザーアブレーション法、炭素棒・炭素繊維等を用いたアーク放電法等によって製造することができる。
カーボンナノチューブの末端形状は、必ずしも円筒状である必要はなく、例えば、円錐状等変形していても差し支えない。
また、カーボンナノチューブの末端が閉じた構造でも、開いた構造のどちらでも用いることができるが、好ましくは末端が開いた構造のものが良い。
カーボンナノチューブの末端が閉じた構造のものは、硝酸等化学処理をすることにより開口することができる。
さらに、カーボンナノチューブの構造は、多層でも単層でも良い。
【0032】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の(D)ポリテトラフルオロエチレン樹脂は、フィブリル形成能を有する平均分子量500,000以上のポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと略称する。)であり、溶融滴下防止効果を有し、高い難燃性を付与することができる。
その平均分子量は500,000以上であることが必要であり、好ましくは500,000〜10,000,000、さらに好ましくは1,000,000〜10,000,000である。
【0033】
フィブリル形成能を有するPTFEとしては、特に制限はないが、具体的には、テフロン6−J(三井・デュポンフロロケミカル社製)、ポリフロンD−1、ポリフロンF−103、ポリフロンF201、ポリフロンMPA FA−100(ダイキン工業社製)、CD076(旭硝子フロロポリマーズ社製)およびアルゴフロンF5(モンテフルオス社製)等を挙げることができる。
【0034】
上記のようなフィブリル形成能を有するPTFEは、例えば、テトラフルオロエチレンを水性溶媒中で、ナトリウム、カリウムあるいはアンモニウムパーオキシジスルフィドの存在下で、7〜700kPaの圧力下、温度0〜200℃、好ましくは20〜100℃で重合させることによって得ることができる。
【0035】
PTFEの含有量は、(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計量100質量部に対して、0〜2質量部であり、好ましくは0.05〜1質量部である。
PTFEを含有することにより、目的とする難燃性における溶融滴下防止性が十分となる。
含有量が2質量部以上では、耐衝撃性が低下するとともに成形品外観が不良である。
従って、それぞれの成形品に要求される難燃性の程度および肉厚により、使用量等を考慮して適宜決定することができる。
【0036】
【実施例】
以下に実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1〜5および比較例1〜4
表1および表2に示す割合で各成分を配合〔(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分は、質量%で示す。〕し、ベント式二軸押出成形機(機種名:TEM35、東芝機械社製)に供給し、280℃で溶融混練し、ペレット化した。なお、すべての実施例および比較例において、安定剤としてリン系酸化防止剤PEP36を0.1質量部配合した。
得られたペレットを、120℃で10時間乾燥した後、成形温度280℃、(金型温度80℃)で射出成形して試験片を得た。得られた試験片を用いて性能を下記各種試験によって評価し、その結果を表1および表2に示した。
【0037】
用いた配合成分および性能評価方法を次に示す。
〔配合成分〕
(A)芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体PC−PDMS:下記参考例1で調製したものを使用した。粘度平均分子量;17,000、PDMS含有率;4.0質量%
(B)芳香族ポリカーボネート樹脂PC−1:FN1700A(出光石油化学 社製)、粘度平均分子量=17,500。分子末端はp−tert−ブチルフェノール、芳香族ポリカーボネート樹脂PC−2:下記参考例2で調製したものを使用した。粘度平均分子量=17,500。分子末端はp−n−ドデシルフェノール
(C)カーボンナノチューブ1:マルチウォール、直径10〜30nm、長さ1,000〜10,000nm、両端開口、非晶カーボン粒子量15質量%(サンナノテック社製)、カーボンナノチューブ2:マルチウォール、直径50〜100nm、長さ1,000〜10,000nm、両端開口、非晶カーボン粒子量15質量%(サンナノテック社製)
(D)PTFE:CD076(旭硝子フロロポリマーズ社製)
【0038】
〔性能評価方法〕
(1)IZOD(アイゾット衝撃強度):ATM D256に準拠、23℃(肉厚1/8インチ)、単位:kJ/m2 、(2)曲げ弾性率:ASTM D−790に準拠(試験条件等:23℃、4mm)、単位:MPa(3)体積固有抵抗値:JIS K6911に準拠(試験平板:80×80×3mm)、(4)難燃性UL94燃焼試験に準拠(試験片厚み:1.5mm)、(5)メルトインデックス(MI):JIS K7210に準拠(300℃、1.2kg荷重)
【0039】
表1および表2より下記のことが判明した。
(A)PC―PDMS単独では、難燃性が不良で、導電性も付与することができない。
(B)PC単独では、難燃性がなく、導電性も付与することができない。
(C)カーボンナノチューブの含有量により導電性が上昇するが、含有量が多いと、衝撃強度が低下する。(C)成分の直径が大きくなると弾性率が向上する。(D)PTFEを含有することにより、高い衝撃強度を保持したまま、難燃性が向上し、導電性も付与することができる。
(E)アルキル末端基が長いポリカーボネート樹脂では、他の特性を保持したまま、流動性が向上する。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
[参考例1:PC−PDMS共重合体の製造]
▲1▼PCオリゴマーの製造
400リットルの5質量%水酸化ナトリウム水溶液に、60kgのビスフェノールAを溶解し、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。
次いで、室温に保持したビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液を138リットル/時間の流量で、また、塩化メチレンを69リットル/時間の流量で、内径10mm、管長10mの管型反応器にオリフィス板を通して導入し、これにホスゲンを並流して10.7kg/時間の流量で吹き込み、3時間連続的に反応させた。ここで用いた管型反応器は二重管となっており、ジャケット部分には冷却水を通して反応液の排出温度を25℃に保った。また、排出液のpHは10〜11となるように調整した。
このようにして得られた反応液を静置することにより、水相を分離、除去し、塩化メチレン相(220リットル)を採取して、PCオリゴマー(濃度317g/リットル)を得た。ここで得られたPCオリゴマーの重合度は2〜4であり、クロロホーメイト基の濃度は0.7規定であった。
【0043】
▲2▼末端変性ポリカーボネートの製造
内容積50リットルの攪拌付き容器に、上記▲1▼で得られたPCオリゴマー10リットルを入れ、p−ドデシルフェノール(分岐状ドデシル基含有)〔油化スケネクタディ社製〕162gを溶解させた。次いで、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム53g、水1リットル)とトリエチルアミン5.8ミリリットルを加え、1時間、300rpmで攪拌し、反応させた。その後、上記系にビスフェノールAの水酸化ナトリウム溶液(ビスフェノールA:720g、水酸化ナトリウム412g、水5.5リットル)を混合し、塩化メチレン8リットルを加え、1時間500rpmで攪拌し、反応させた。反応後、塩化メチレン7リットルおよび水5リットルを加え、10分間、500rpmで攪拌し、攪拌停止後静置し、有機相と水相を分離した。得られた有機相を5リットルのアルカリ(0.03規定−NaOH)、5リットルの酸(0.2規定−塩酸)及び5リットルの水(2回)の順で洗浄した。その後、塩化メチレンを蒸発させ、フレーク状のポリマーを得た。粘度平均分子量は17,500であった。
【0044】
▲3▼反応性PDMSの製造
1,483gのオクタメチルシクロテトラシロキサン、96gの1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン及び35gの86%硫酸を混合し、室温で17時間攪拌した。その後、油相を分離し、25gの炭酸水素ナトリウムを加え1時間攪拌した。濾過した後、150℃、3torr(4×102 Pa)で真空蒸留し、低沸点物を除き油状物を得た。
60gの2−アリルフェノールと0.0014gの塩化白金−アルコラート錯体としてのプラチナとの混合物に、上記▲2▼で得られた油状物294gを90℃の温度で添加した。この混合物を90〜115℃の温度に保ちながら3時間攪拌した。生成物を塩化メチレンで抽出し、80%の水性メタノールで3回洗浄し、過剰の2−アリルフェノールを除いた。その生成物を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、真空中で115℃に加熱して溶剤を留去した。
得られた末端フェノールPDMSは、NMRの測定により、ジメチルシラノオキシ単位の繰り返し数は30であった。
【0045】
▲4▼PC−PDMS共重合体の製造
上記▲3▼で得られた反応性PDMS182gを塩化メチレン2リットルに溶解させ、上記▲1▼で得られたPCオリゴマー10リットルを混合した。そこへ、水酸化ナトリウム26gを水1リットルに溶解させたものと、トリエチルアミン5.7ccを加え、500rpmで室温にて1時間攪拌、反応させた。
反応終了後、上記反応系に、5.2重量%の水酸化ナトリウム水溶液5リットルにビスフェノールA600gを溶解させたもの、塩化メチレン8リットル及びp−tert−ブチルフェノ−ル96gを加え、500rpmで室温にて2時間攪拌、反応させた。
反応後、塩化メチレン5リットルを加え、さらに、水5リットルで水洗、0.03規定水酸化ナトリウム水溶液5リットルでアルカリ洗浄、0.2規定塩酸5リットルで酸洗浄、及び水5リットルで水洗2回を順次行い、最後に塩化メチレンを除去し、フレーク状のPC−PDMS共重合体を得た。得られたPC−PDMS共重合体を120℃で24時間真空乾燥した。粘度平均分子量は17,000であり、PDMS含有率は4.0質量%であった。
【0046】
なお、粘度平均分子量、PDPS含有率は下記の要領で行った。
(1)粘度平均分子量 (Mv)
ウベローデ型粘度計にて、20℃における塩化メチレン溶液の粘度を測定し、これより極限粘度[η]を求めた後、次式にて算出した。
[η]=1.23×10-5Mv0.83
(2)PDMS含有率
1H−NMRで1.7ppmに見られるビスフェノールAのイソプロピルのメチル基のピークと、0.2ppmに見られるジメチルシロキサンのメチル基のピークとの強度比により計算した。
【0047】
[参考例2:末端p−n−ドデシルフェノールポリカーボネート樹脂の製造]
内容積50リットルの攪拌付き容器に、参考例1で得られたPCオリゴマー10リットルを入れ、p−n−ドデシルフェノール162gを溶解させた。
次いで、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム53g、水1リットル)とトリエチルアミン5.8ccを加え、1時間300rpmで攪拌し、反応させた。その後、上記系にビスフェノールAの水酸化ナトリウム溶液(ビスフェノール:720g、水酸化ナトリウム412g、水5.5リットル)を混合し、塩化メチレン8リットルを加え、1時間500rpmで攪拌し、反応させた。
反応後、塩化メチレン7リットル及び水5リットルを加え、10分間500rpmで攪拌し、攪拌停止後静置し、有機相と水相を分離した。
得られた有機相を5リットルのアルカリ(0.03規定−NaOH)、5リットルの酸(0.2規定−塩酸)及び5リットルの水(2回)の順で洗浄した。その後、塩化メチレンを蒸発させ、フレーク状のポリマーを得た。
粘度平均分子量は17,500であった。
【0048】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、難燃性、衝撃性、導電性および成形外観等に優れている。また、カーボンの脱落による半導体等の汚染を起こすことがない。従って、OA機器、情報機器、家庭電化機器等の電気・電子機器のハウジング又は部品、さらには自動車部品等その応用分野の拡大が期待される。
Claims (10)
- (A)下記一般式(3)で表される構造単位からなる芳香族ポリカーボネート部と下記一般式(4)で表される構造単位からなるポリオルガノシロキサン部
を分子内に有し、下記一般式(1)
で表わされる末端基を有する芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体0.1〜99.9質量%、(B)一般式(2)
で表わされる末端基を有する芳香族ポリカーボネート樹脂0〜99.8質量%、(C)カーボンナノチューブ0.1〜30質量%からなり、(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計量100質量部に対して、(D)ポリテトラフルオロエチレン樹脂0〜2質量部を配合してなるポリカーボネート樹脂組成物。 - 芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体のポリオルガノシロキサンが、ポリジメチルシロキサン(PDMS)骨格である、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 芳香族ポリカーボネート−ポリジメチルシロキサン(PDMS)中のポリジメチルシロキサン(PDMS)の含有量が0.1〜10質量%である、請求項2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の粘度平均分子量が10,000〜40,000である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が10,000〜40,000である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 芳香族ポリカーボネート樹脂の分子末端が炭素数10〜35のアルキル基である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 一般式(1)においてaが1及びR 1 の置換位置がパラ位であり、一般式(2)においてbが1及びR 2 の置換位置がパラ位であり、且つ一般式(3)においてc及びdが0である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- カーボンナノチューブの、非晶カーボン粒子の含有量が20質量%以下で、直径が0.5〜120nm、長さが500nm以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- カーボンナノチューブの先端が開口している、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1〜9のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形体。
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