JP5186677B2 - フッ素樹脂チューブおよび定着器用回転体 - Google Patents

フッ素樹脂チューブおよび定着器用回転体 Download PDF

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Description

本発明は、複写機やプリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置における定着器用回転体を被覆する熱収縮性フッ素樹脂チューブ及びそのフッ素樹脂チューブを用いた定着器用回転体に関する。
画像形成装置において、定着器は、紙や合成樹脂シートなどの被転写材上に転写されたトナー像を加熱・加圧することで該被転写材に定着させる。この定着には、ローラやベルトといった回転体が用いられる。例えば、定着ローラとその定着ローラに圧接される加圧ローラとの間に被転写材を通しつつ加熱する。これによって、未定着トナーを被転写材上に融着固定する。定着ローラもしくは定着ベルト、または加圧ローラもしくは加圧ベルトといった定着器用回転体には、(1)トナー離型性や(2)熱伝導性、(3)耐久性が求められる。
このような特性を確保するために、定着器用回転体の最外層にフッ素樹脂層を形成することが行われている。特許文献1は、熱硬化型ポリイミドチューブを用いた加圧ベルトの表面を熱収縮性テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)チューブを被覆することで、フッ素樹脂層を形成することを記載している。
フッ素樹脂チューブには、少なくとも径方向にチューブを延伸することで、熱収縮性が付与される。チューブを延伸する方法には、例えば、延伸管内に未延伸のチューブを連続的に送り込み、そのチューブに内圧をかけて膨張させ、膨張したチューブを延伸管内壁に接触させてその膨張径を規制する方法がある。
特開2008−200954号公報
従来の熱収縮性フッ素樹脂チューブは、その製造時に延伸管や案内板等の固定部材に擦れて生じた擦り傷や擦れ跡を内外面に有する。擦れ跡を含む擦り傷は、チューブの割れや裂けの原因となる。特にチューブの肉厚が薄い場合、その擦り傷により破れ易くなり製造が難しくなる。さらに擦り傷は熱収縮や焼成により目立たなくなったとしても、被覆時や実使用時に割れや裂けを生じさせるおそれがある。定着器用回転体にそのチューブを用いた場合には、画像劣化を招いてしまう。
本発明は、このような問題を解決するために、割れや裂けの要因となる擦り傷を抑えたフッ素樹脂チューブ、およびそのフッ素樹脂チューブを用いた定着器用回転体を提供する。
本発明によれば、画像形成装置の定着器用回転体を被覆して当該回転体の最外層を構成するための熱収縮性フッ素樹脂チューブであって、
(i)前記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)であり、
(ii)前記フッ素樹脂チューブ表面の線状擦り傷の最大深さが0.8μm以下であり、
(iii)前記線状擦り傷の最大長さが1mm以下であり、
(iv)前記フッ素樹脂チューブの厚みが100μm以下であり、
(v)前記線状擦り傷が当該フッ素樹脂チューブの軸方向と平行か軸方向に対する傾きが20°以下であり、かつ、
(vi)前記フッ素樹脂チューブが、膨張させたフッ素樹脂チューブの表面を固定部材に擦れさせずに延伸することで得たものであり、かつ、前記フッ素樹脂チューブが、内部に空気を送り込んで膨張させたチューブを2対のピンチローラで挟むことにより空気を封入し、そのピンチローラ間の距離を短縮することでチューブの内圧を高めチューブを膨張させるとともにその膨張径を調整する方法により延伸して得たものであるフッ素樹脂チューブが提供される。
このフッ素樹脂チューブは線状擦り傷(以下、「線状傷」ともいう)の最大深さが0.8μm以下であり、製造時の擦り傷は実質的にない。このため、製造時や定着器用回転体の被覆時、実使用時にも割れや裂けが生じ難い。したがって、このフッ素樹脂チューブにより定着器用回転体を被覆して最外層にフッ素樹脂層を形成すれば、その定着器用回転体によって良好な画像が得られる。
線状傷の深さは、フッ素樹脂チューブの外表面を構成する円周線を基準とした深さで表すことができる。線状傷の最大深さは、一または複数の線状傷がフッ素樹脂チューブ表面に形成されている場合に、それら線状傷の深さのうち最大のものをいう。最大深さを基準とすることで、割れや裂けの要因となる傷を良好に評価することができる。
定着器用回転体には、円筒状もしくは円柱状の剛性基材、またはエンドレスベルト型の可撓性基材を用いることができる。円筒状または円柱状の剛性基材は、例えば金属またはセラミックスを用いた成形体である。エンドレスベルト型の可撓性基材は、金属または樹脂から形成された成形体である。
このフッ素樹脂チューブにおいて、線状傷の最大長さは1mm以下であることが好ましい。チューブ表面が製造時に固定部材と擦れた場合、少なくともいずれかの擦り傷の長さは1mmを超える。このような擦り傷を有さないことで、割れや裂けの発生が抑えられる。
フッ素樹脂チューブの厚み(平均厚み)は例えば100μm以下であり、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは5μm以上20μm以下である。このような薄肉のチューブの場合でも、擦り傷が原因となった破れ等がない。
線状傷は、当該フッ素樹脂チューブの軸方向と平行か軸方向に対する傾きが20°以下である。このような線状傷は、製造時においてフッ素樹脂チューブの膨張前後で外径を規制する規制部材やその他の固定部材にチューブの表面が擦れて発生し、使用時におけるチューブの割れや裂けの要因となる。
本発明の他の観点によれば、上述のフッ素樹脂チューブを用いて画像形成装置の定着器用回転体が提供される。この定着器用回転体では、割れや裂けの要因となる擦り傷を抑えたフッ素樹脂チューブが用いられるので、良好な画像を得ることができる。
本発明によれば、フッ素樹脂チューブに製造時の擦り傷がほとんどなく、製造時や定着器用回転体の被覆時、定着器用回転体の実使用時にも割れや裂けの発生が抑えられる。
フッ素樹脂チューブにより被覆される定着器用回転体の一例を示す図である。 2層構造の定着ベルトを用いた定着器の概略構成を示す図である。 定着ベルトおよび加圧ベルトを用いた定着器の概略構成を示す図である。 フッ素樹脂チューブの線状傷の深さについて説明する図である。 2対のピンチローラを用いて延伸した熱収縮性PFAチューブの表面状態を示す図である。 従来のPFAチューブの表面状態を示す図である。
本発明のフッ素樹脂チューブは、画像形成装置の定着器における定着器用回転体を被覆するための熱収縮性チューブである。定着器用回転体は、円筒状または円柱状の成形体や、エンドレスベルト(シームレスベルトともいう)型の成形体を基材とすることができる。
円筒状または円柱状の成形体(剛性基材)は、熱伝導性の良好なアルミニウム、アルミニウム合金、鉄、ステンレスなどの金属;アルミナ、炭化ケイ素などのセラミックス;などから形成され、用途によって内部が中空であっても、中実であってもよい。円筒状または円柱状の成形体は、両端に軸受け部を有するシャフト形状であってもよい。円筒状または円柱状の成形体が金属製である場合、一般に芯金と呼ばれている。
エンドレスベルト型の成形体(可撓性基材)は、金属または耐熱性樹脂から形成されたチューブである。金属チューブの材質としては、例えば、鉄、ニッケル、これらの合金などが挙げられる。定着ベルトの加熱に電磁誘導加熱方式を採用する場合は、金属チューブの材質として、鉄、ニッケル、これらの合金、フェライト系ステンレスなどが好ましい。定着ベルトのように、ベルト部材全体を効率よく加熱する必要がある場合には、金属チューブとして、熱容量が小さく、電磁誘導加熱により更にヒートアップが早いニッケルベルトやステンレスベルトを用いることが好ましい。
耐熱性樹脂チューブの材質としては、熱容量が小さく、使用時にヒーターの加熱により急速に昇温するものが好ましく、一般に、融点、熱変形温度、熱分解温度などの耐熱温度が250℃以上の耐熱性樹脂が使用される。
耐熱性樹脂の具体例としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンズイミダゾールなどが挙げられる。これらの中でも、耐熱性と耐久性の観点から、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾールが好ましく、ポリイミドがより好ましく、熱硬化型ポリイミドが特に好ましい。
熱硬化型ポリイミドは、ポリイミド前駆体(「ポリアミド酸」または「ポリアミック酸」ともいう)ワニスを円柱状金型または円筒状金型の外面に塗布し、乾燥後、加熱して硬化させることにより得ることができる。ポリイミド前駆体ワニスを円筒状金型の内面に塗布して、チューブを形成してもよい。塗布方法としては、特に限定されず、例えば、金型の外面にポリイミド前駆体ワニスを塗布した後、金型の外側に金型の外径よりも大きな内径を有するダイスを通過させて、所望の膜厚の被膜を形成する方法が挙げられる。
ポリイミド前駆体ワニスを乾燥後、ポリイミド前駆体チューブを金型表面に付着した状態で加熱硬化するか、あるいは管状物としての構造を保持し得る強度となった時点で、金型からポリイミド前駆体チューブを取り外し、加熱硬化する。ポリイミド前駆体は、最高温度として350℃から450℃まで加熱すると、ポリアミド酸が脱水閉環してポリイミド化する。
熱硬化型ポリイミドとしては、耐熱性や機械的強度などの観点から縮合型の全芳香族ポリイミドが好ましい。熱硬化型ポリイミドチューブとしては、例えば、ピロメリット酸二無水化物、3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物などの酸二無水物と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノベンズアニリドなどのジアミンとを有機溶媒中で重合反応させてポリイミド前駆体を合成し、このポリイミド前駆体の有機溶媒溶液(ワニス)を用いてチューブの形状に賦形した後、加熱して脱水閉環したものを挙げることができる。このようなポリイミドワニスとしては、独自に合成したものの他、市販品を用いることができる。
耐熱性樹脂チューブには、必要に応じて無機フィラーや、カーボン、カーボンナノチューブ(CNT)、黒鉛等の導電性フィラーや金属フィラーを含有してもよい。無機フィラーとしては、例えばシリカ、アルミナ、炭化ケイ素、炭化ホウ素、チタンカーバイド、タングステンカーバイド、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、マイカ、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、タルクが挙げられる。これらの中でも、高熱伝導率を有する点で、アルミナ、炭化ケイ素、炭化ホウ素、及び窒化ホウ素が好ましい。耐熱性樹脂チューブに無機フィラーを含有させる場合、通常50容量%以下、多くの場合40容量%以下の割合で使用される。その下限値は、多くの場合5容量%である。
定着ベルト、定着ローラ、加圧ベルト、または加圧ローラといった定着器用回転体の基材の厚み、径、長さなどは適宜選択される。回転体の長さは、被転写材の幅に応じて定められる。回転体の直径は、通常10〜150mmφ、好ましくは13〜100mmφ、より好ましくは15〜40mmφの範囲から選ばれることが多い。回転体の厚みは、定着ベルトの場合、通常20〜100μm、好ましくは25〜80μmの範囲から選ばれる。
フッ素樹脂チューブの材質としては、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などが挙げられる。これらの中でも、押出成形性、耐熱性、トナー離型性などの点で、PFAが好ましい。本発明では、PFAを用いる。
PFAとしては、例えば、三井デュポンフロロケミカル社製350−J、451HP−J、950HP−Plus、951HP−PlusなどのHPシリーズ、PF−059などの各種市販品を使用することができる。カーボン入り樹脂として、三井デュポンフロロケミカル社製C−9050、C−9058、C−9068、C−9075を用いることもできる。フッ素の導電化は市販の配合品でも、イオン導電剤、電子導電剤、金属粉等を配合したものでもよい。
フッ素樹脂チューブの厚み(平均厚み)は例えば100μm以下であり、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは5μm以上20μm以下である。フッ素樹脂チューブの長さは、基材の長さに応じて適宜設定することができる。多くの場合、フッ素樹脂チューブの収縮後の長さは、基材の両端部が5〜10mm程度露出する長さとすることが好ましい。
フッ素樹脂チューブは1重でも2重以上の複層でもよい。複層の場合は、各々の層に、導電性や耐磨耗性などの特性が互いに異なるフッ素樹脂チューブを用いてもよい。導電性については、内側の層をその外側よりも低抵抗にすることが可能である。耐磨耗性についは、たとえばPTFEを配合したチューブやガラスビーズを配合したチューブを用いて異ならせることができる。複層にする部位は全長にわたっても一部分でもよく、一部分の場合は、たとえば磨耗し易い両端部がよい。両端部のみ複層にする場合は、短く切断したチューブを端部に入れても良いし、端部のみチューブを折り返しても良い。
フッ素樹脂チューブには、押出成形されたチューブを膨張させて少なくとも径方向に延伸することで熱収縮性が付与される。この熱収縮性チューブで定着器用回転体の外周面を被覆した状態で結晶化温度以上に加熱して、フッ素樹脂チューブを外周面に融着させる。結晶化温度は例えばデュポン社製950HP−plusであれば、270℃であり、この温度に達するとPFA分子は半溶融状態となり、フッ素樹脂が配合されたプライマと接着する。また、このチューブは押出品であり押出により軸方向に分子の配向が強く残ることから、使用環境によっては配向方向に沿って亀裂が入る可能性がある。この場合、再度融点以上に加熱(再焼成)することにより、配向状態を緩和することが出来る。または、最初から融点以上に加熱し、プライマとの接着と、配向の緩和を同時に行うことも選択できる。このフッ素樹脂チューブの融着によって、定着器用回転体の最外層にフッ素樹脂層を形成する。延伸倍率は、所望の熱収縮率に応じて適宜設定することができる。例えば軸方向および径方向とも1.00〜2.0倍であり、好ましくは1.02倍〜1.3倍である。
チューブの接着方法としては、たとえばPFAチューブを被せたゴムローラを300℃の恒温槽に入れ収縮と接着を行う方法や、300℃のホットプレートに加圧しながら回転させ接着を行う方法がある。また、これらの接着を行う前にたとえば250℃の恒温槽に30分間入れ予備収縮させてもよい。
さらにフッ素樹脂チューブは、電子線照射によって架橋密度を上げることにより耐熱性や耐磨耗性の改質を行っても良い。電子線照射は未膨張品でも膨張品であってもよく、また予備収縮後や接着後に行っても良い。
図1はフッ素樹脂チューブにより被覆される定着器用回転体の一例を示す図である。この例に係る定着器用回転体は定着ローラとして用いられるゴムローラであり、図1はそのゴムローラの断面を示す。ゴムローラ101は、ローラ基材102、ローラ基材102上に形成されたゴム層103、および最外層に形成されたフッ素樹脂層104を備える。各層間には、それぞれに適合したプライマを用い接着層を設けることができるが、ここでは省略している。フッ素樹脂層104は、ゴム層103の外周面をフッ素樹脂チューブで被覆した状態で加熱し、その外周面にフッ素樹脂チューブを熱融着することで形成される。
ゴム層の材質としては、定着温度での連続使用に耐えるだけの耐熱性を有する耐熱性ゴムが好ましい。耐熱性ゴムとしては、シリコーンゴムおよびフッ素ゴムが好ましい。これらの耐熱性ゴムは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。ゴム層は、シリコーンゴムまたはフッ素ゴムのそれぞれの単層だけではなく、例えばシリコーンゴム層とフッ素ゴム層を積層したものであってもよい。
耐熱性ゴムとしては、耐熱性が特に優れている点で、ミラブルまたは液状のシリコーンゴム、フッ素ゴム、またはこれらの混合物が好ましい。具体的には、ジメチルシリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴム、ビニルシリコーンゴムなどのシリコーンゴム;フッ化ビリニデンゴム、テトラフルオロエチレンープロピレンゴム、テトラフルオロエチレンーパーフルオロメチルビニルエーテルゴム、ホスファゼン系フッ素ゴム、フルオロポリエーテルなどのフッ素ゴム;などが挙げられる。これらのゴムは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。シリコーンゴムとフッ素ゴムとをブレンドして用いてもよい。
これらの中でも、液状のシリコーンゴムおよびフッ素ゴムは、熱伝導性フィラーを高充填して、熱伝導率が高いゴム層を形成することが容易であるため、好ましい。液状シリコーンゴムとしては、縮合型液状シリコーンゴムおよび付加型シリコーンゴムがある。そのうち付加型シリコーンゴムが好ましい。
付加型シリコーンゴムは、ビニル基を有するポリシロキサンとSi−H結合を有するポリシロキサンとを、白金触媒を用いて付加反応することにより、シロキサン鎖を架橋させる機構を用いたものである。白金触媒の種類や量を変えたり、反応抑制剤(遅延剤)を使用したりすることにより、硬化速度を自由に変えることができる。2成分型で室温での硬化が速いものが室温硬化型であり、白金触媒量を調整したり、反応抑制剤を使用したりして、100〜200℃の温度で加熱硬化させるようにしたものが加熱硬化型であり、さらにそれらの抑制作用を強くして、1成分に混合しておいても低温で保管している限り液状を保っており、使用時に加熱して硬化させるとゴム状になるものが1成分加熱型である。これらの付加型液状シリコーンゴムの中でも、熱伝導性フィラーとの混合作業やゴム層形成作業の容易さ、層間接着性などの観点から、1成分付加型液状シリコーンゴムが好ましい。
ゴム層には、熱伝導性フィラーを含有させて熱伝導率を高めることができる。定着ローラ(または定着ベルト)の場合、ゴム層の熱伝導率を、通常0.6〜4.0W/(m・K)、好ましくは0.9〜3.0W/(m・K)、より好ましくは1.0〜2.5W/(m・K)とする。特に高熱伝導率のゴム層が必要とされる場合には、ゴム層の熱伝導率を、好ましくは1.1W/(m・K)以上、より好ましくは1.2W/(m・K)以上とすることが望ましい。
ゴム層の熱伝導率を高くするには、シリコーンゴムおよびフッ素ゴムからなる群より選ばれる少なくとも一種の耐熱性ゴムに熱伝導性フィラーを配合したゴム組成物を用いて、ゴム層を形成する方法を採用することが好ましい。ゴム層の熱伝導率が低すぎると、定着ローラ(または定着ベルト)として使用するとき、加熱効率が低下し、高速印字やフルカラー印字における定着性を十分に向上さえることが困難になる。ゴム層の熱伝導率が高すぎると、熱伝導性フィラーの配合割合が高くなりすぎて、ゴム層の機械的強度や弾力性が低下する可能性がある。
熱伝導性フィラーとしては、炭化ケイ素、ボロンナイトライド、アルミナ、窒化アルミニウム、チタン酸カリウム、マイカ、シリカ、酸化チタン、タルク、炭酸カルシウムなどの電気絶縁性の無機フィラーが挙げられる。これらの熱伝導性フィラーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、炭化ケイ素、ボロンナイトライド、アルミナ、窒化アルミニウムが好ましい。ケイ素等の金属粉、カーボン、カーボンナノチューブ、黒鉛等をフィラーに用いてもよい。
ゴム組成物中の熱伝導性フィラーの配合割合は、組成物全体基準で、通常5〜60容量%、好ましくは10〜50容量%、より好ましくは15〜45容量%である。熱伝導性フィラーの配合量が少なすぎると、ゴム層の熱伝導率を十分に高くすることが困難になる。熱伝導性フィラーの配合量が多すぎると、ゴム層の機械的強度や弾力性が低下傾向を示す。
熱伝導性フィラーを含有するゴム組成物は、ゴム材料に熱伝導性フィラーを配合して調製してもよいが、必要に応じて、市販品を用いてもよい。このような市販品としては、炭化ケイ素などの熱伝導性フィラーを含有する1成分型液状シリコーンゴム(信越化学社製X32−2020)が例示される。
ゴム層の厚みは、通常、10μm以上5mm以下、好ましくは50μm以上800μm、特に好ましくは100μm以上500μm以下であり、多くの場合、150μm以上350μm以下で満足できる結果が得られる。ローラを基材に用いる場合には、基材が硬いため、ゴム層の厚みは、好ましくは50μm以上5mm以下、より好ましくは100μm以上1mm以下である。ベルトを基材に用いる場合には、基材自体の弾力を考慮すると、ゴム層の厚みは、好ましくは10μm以上1mm以下、より好ましくは50〜900μm、特に好ましくは100〜800μmであり、多くの場合、200〜350μmで満足できる結果が得られる。
ゴム層の硬度は、定着ローラ(または定着ベルト)の場合、弾力性を付与するために低いことが好ましい。ゴム層の硬度(JIS K6301に規定するスプリング式固さ試験A形により測定した硬度)は、好ましくは90°未満、より好ましくは10〜70°、さらに好ましくは10〜50°、特に好ましくは20〜40°である。
ゴム層の厚みが薄すぎたり硬度が高すぎたりすると、定着ローラ(または定着ベルト)が未定着トナーを包み込むようにして溶融することができなくなり、定着性が低下する。特に、カラートナーを用いた場合に、定着不良が起き易くなる。ゴム層の厚みが厚すぎたり、硬度が低すぎたりすると、耐久性に問題が生じる可能性がある。
このようなゴム層を有するゴムローラの外周面をフッ素樹脂チューブで被覆することによりそのゴムローラの最外層にフッ素樹脂層を形成することができる。本発明のフッ素樹脂チューブはゴムローラだけでなく、例えば上述の熱硬化型ポリイミドチューブの外周面に接着層を介してフッ素樹脂層を形成した3層構造の定着ベルトにも利用することができる。
図2は3層構造の定着ベルトを用いた定着器の概略構成を示す図である。この定着器201は、回転可能に支持された薄い定着ベルト202を備える。定着ベルト202には、エンドレスベルト状の熱硬化型ポリイミドチューブのほか、上述のように金属チューブを用いることができる。定着ベルト202と加圧ローラ203は被転写材204の搬送路を挟むように互いに圧接される。定着ベルト202のニップ部内側にはヒーター205が配置されている。ヒーター205と被転写材204との間にあるのは薄い定着ベルト202のみになるため、ヒーター205からの熱が被転写材204上の未定着トナー206に実質的に直接伝わる。このため、ウォーミングアップタイムを極めて僅かにすることができる。加圧ローラ203としては、図1で説明したようなゴムローラを用いることができる。この定着ベルト202および加圧ローラ203のいずれについても本発明のフッ素樹脂チューブで被覆することにより、その最外層にフッ素樹脂層を形成することができる。熱硬化型ポリイミドチューブや金属チューブ、またはゴム層の外周面をフッ素樹脂チューブで被覆した状態で加熱してフッ素樹脂チューブを熱収縮させ、その外周面にフッ素樹脂チューブを熱融着させる。
図3は定着ベルトおよび加圧ベルトを用いた定着器の概略構成を示す図である。この定着器301は、図2の例と同様に定着ベルト302を備える一方、加圧ローラに代えて加圧ベルト303を備える。エンドレスベルト状の加圧ベルト303は、2つのローラ304に回転可能に張られており、定着ベルト302に圧接される。このような定着器301における加圧ベルトの最外層にフッ素樹脂層を形成するのにも本発明のフッ素樹脂チューブを利用することができる。熱硬化型ポリイミドチューブや金属チューブの外周面をフッ素樹脂チューブで被覆した状態で加熱して熱収縮させ、その外周面にフッ素樹脂チューブを熱融着させる。
フッ素樹脂チューブの熱収縮率は、試料を250℃の恒温槽中(乾燥雰囲気中)に30分間放置して測定したとき、通常3〜15%、好ましくは5〜10%である。測定試料としては、例えばフッ素樹脂チューブを軸方向と円周方向に沿って10cm四方の大きさに切り取ったものを用いることができる。10cm四方の大きさを確保できない場合、軸方向は10cmの長さでチューブを切断したものを用い、径方向は折径の変化で測るようにしてもよい。
フッ素樹脂チューブの内径は、被覆対象の外径に対して、通常0.5〜5%、好ましくは1〜3%大きくなるように調整する。被覆対象の外径に対するフッ素樹脂チューブの内径の割合が小さすぎると、フッ素樹脂チューブで当該対象を円滑に被覆するのが難しくなる。逆にその割合が大きすぎると、被覆作業性は比較的良好となるものの、被覆対象に対する融着性が低下したり、熱収縮と融着後の被覆層に凹凸やシワなどの乱れが発生し易くなったりする。
本発明のフッ素樹脂チューブは、チューブ表面の線状傷の深さが大きくとも0.8μmである。フッ素樹脂チューブ表面に付いた線状傷の最大深さが0.8μm以下であれば、その傷によるチューブの割れや裂けの発生を抑制することができる。その割れや裂けの発生をフッ素樹脂チューブ全体にわたって十分に抑えるには、線状傷を全くなくすか、線状傷のいずれについてもその深さを0.8μm以下にとどめる。
線状傷は、フッ素樹脂チューブの軸方向に対して略平行かまたは最大で例えば20°以下の角度で傾くものである。この傾きは線状傷を直線近似することで定めてもよい。線状傷の長さは少なくとも製造時点において1mm以下であることが好ましい。これらの測定には光学顕微鏡を用いることができる。チューブの割れや裂けの要因となる線状傷として特に対象となるのは、フッ素樹脂チューブの膨張前後で外径を規制する規制部材やその他の固定部材にフッ素樹脂チューブの表面が擦れて発生する擦り傷である。この擦り傷は、チューブの軸方向に平行かそれから多少傾いた角度に形成されチューブの円周方向には形成されない。さらに連続的に送られるチューブの表面にはほぼその全長にわたって擦り傷が形成され、その擦り傷の長さは1mmを超える。フッ素樹脂チューブの表面には、この擦り傷のほか、研磨時などに傷が生じる可能性がある。研磨はチューブの円周方向に行われるので、通常それによって軸方向に沿った線状傷は生じない。
図4はフッ素樹脂チューブの線状傷の深さについて説明する図である。図1ではチューブの外周面を構成する円周線401を基本とする断面曲線の一部を示しており、その一部には線状傷402が一つ形成されている。線状傷402の深さは、その円周線401から傷402の最深部403までの深さ404として測定することができる。傷形成時に円周線401より突出する部分405が生じても、その部分の頂上406から最深部403までではなく、円周線401から最深部403までの深さで線状傷402の深さを表す。円周線401を基準とすることで、チューブにおける割れや裂けの要因となる傷を評価できる。フッ素樹脂チューブ表面に一または複数の線状傷402が形成されている場合には、それら線状傷402の深さで最大のものが最大深さとなる。
このフッ素樹脂チューブは、例えば2つの方法で延伸することができる。一つは、バッチ方式で未延伸のチューブをパイプ内に配置し、チューブに内圧をかけて膨張させる方法である。もう一つは、その内部に空気を送り込んで膨張させたチューブを2対のピンチローラで挟むことにより空気を封入し、そのピンチローラ間の距離を短縮することでチューブの内圧を高めチューブを膨張させるとともにその膨張径を調整する方法である。これらの方法では、膨張したフッ素樹脂チューブの表面が固定部材に擦れない。後者の方法では、チューブの両端がピンチローラで挟まれる。しかしながら、そのピンチローラによりチューブが送られるため、チューブの表面は擦られない。必要に応じてチューブの経路にリールを用いる場合でも、そのリールが連れ廻りするので擦られない。チューブの内面にも擦り傷は生じない。これによって、線状傷があっても、その最大深さが0.8μm以下のフッ素樹脂チューブが得られる。
なお、ピンチローラで挟む場合、チューブがつぶされるため折り目が付く場合があるが、その折り目を軽減または無くすために、チューブに過剰な圧力が加わらないように、挟持圧力を一定値以下にとどめたり、ローラを正クラウン形状にしたりするのが好ましい。
図5は2対のピンチローラを用いて延伸した熱収縮性PFAチューブの表面状態を示す図である。この表面状態は20倍の光学顕微鏡で撮像したものであり、図5Aは上記方法によって製造されたPFAチューブの表面状態を示し、図5Bはゴムローラ上に被覆したPFAチューブの表面状態を示す。図5AおよびBにおける横方向がチューブの軸方向であり、縦方向が円周方向である。図5Aに示すように、製造されたPFAチューブの表面には線状傷が全く観察されない。図5Bに示すように、ゴムローラをそのPFAチューブで被覆した後においても、PFAチューブの表面に線状傷は観察されない。したがって、このPAFチューブを定着器用回転体に用いたときには、フッ素樹脂層に割れや裂けが生じ難く良好な画像が長期間安定して得られる。
図6は従来のPFAチューブの表面状態を示す図である。図6Aは従来の使用前のPFAチューブの表面状態を示し、図6Bはゴムローラ上に被覆した従来のPFAチューブの表面状態を示す。図6AおよびBにおいても横方向はチューブの軸方向であり、縦方向が円周方向である。このチューブは、膨張したチューブを延伸管内壁に接触させてその膨張径を規制する方法で製造したものである。このような従来のPFAチューブでは、図6Aの矢印で示すように、延伸時に生じた線状傷が横方向にのびている。その線状傷の深さは0.8μmを超え、長さは1mmを大きく超える。図6Bに示すように、被覆後においてもその線状傷は残っている。収縮により目立たなくなっても深い傷が内在することになる。この状態では定着器用回転体の使用時においても割れや裂けが発生する可能性があり、画質劣化の原因ともなる。
以上説明した実施の形態は本発明の技術的範囲を制限するものではなく、本発明の範囲内で種々の変形や応用が可能である。
本発明のフッ素樹脂チューブおよび定着器用回転体は、上述のように割れや裂けの容易となる線状傷が実質的になく、複写機やプリンタ、ファクシミリなどの各種の画像形成装置において広く利用することができる。
101 ゴムローラ
102 ローラ基材
103 ゴム層
104 フッ素樹脂層
201、301 定着器
202、302 定着ベルト
203 加圧ローラ
204 被転写材
205 ヒーター
206 未定着トナー
303 加圧ベルト
304 加圧ローラ
401 円周線
402 線状傷
403 線状傷の最深部
404 線状傷の深さ
405 線状傷の突出部分
406 線状傷の突出部分の頂上

Claims (2)

  1. 画像形成装置の定着器用回転体を被覆して当該回転体の最外層を構成するための熱収縮性フッ素樹脂チューブであって、
    (i)前記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)であり、
    (ii)前記フッ素樹脂チューブ表面の線状擦り傷の最大深さが0.8μm以下であり、
    (iii)前記線状擦り傷の最大長さが1mm以下であり、
    (iv)前記フッ素樹脂チューブの厚みが100μm以下であり、
    (v)前記線状擦り傷が当該フッ素樹脂チューブの軸方向と平行か軸方向に対する傾きが20°以下であり、かつ、
    (vi)前記フッ素樹脂チューブが、膨張させたフッ素樹脂チューブの表面を固定部材に擦れさせずに延伸することで得たものであり、かつ、前記フッ素樹脂チューブが、内部に空気を送り込んで膨張させたチューブを2対のピンチローラで挟むことにより空気を封入し、そのピンチローラ間の距離を短縮することでチューブの内圧を高めチューブを膨張させるとともにその膨張径を調整する方法により延伸して得たものであるフッ素樹脂チューブ。
  2. 請求項1に記載のフッ素樹脂チューブを用いて最外層が形成された画像形成装置の定着器用回転体。
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