JP5179115B2 - 低屈折率被膜形成用樹脂組成物、低屈折率被膜、反射防止基材 - Google Patents

低屈折率被膜形成用樹脂組成物、低屈折率被膜、反射防止基材 Download PDF

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本発明は、低屈折率被膜形成用の樹脂組成物、及びこの低屈折率被膜形成用樹脂組成物をコーティングして形成される低屈折率被膜、及びこの低屈折率被膜が形成された反射防止基材に関するものである。
反射防止膜など、低屈折率被膜を形成するコーティング樹脂組成物として、低屈折率粒子とマトリクス形成材料とを含有して調製されたものが使用されている。例えば特許文献1では、低屈折率粒子として、細孔を有する外殻内部に空洞が形成された中空シリカ系微粒子が用いられている。
近年、プラズマや液晶に代表されるフラットパネルディスプレイの高性能化に伴ない、最表面に形成される反射防止膜にもより高性能化が要求されており、高反射防止能に加えて高表面強度も必要とされるようになっている。
特開2001−233911号公報
そして反射防止能を高めるためには、反射防止膜中の低屈折率粒子の割合を増やしてより低屈折率にする必要があるが、特許文献1のような中空シリカ系微粒子は反射防止膜中での割合が増えると、外力によって中空シリカ系微粒子が容易に剥がれ易くなり、反射防止膜の表面の耐摩耗性など表面強度が低下することになる。
このように特許文献1など従来の低屈折率粒子を含有する樹脂組成物では、表面強度を保持しつつ低屈折率の被膜を形成することは難しく、高反射防止能と高表面強度の両性を両立させることは困難であるという問題があった。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、高い表面強度を保持しつつより屈折率の低い低屈折率被膜を形成することができる樹脂組成物を提供することを目的とするものであり、また表面強度が高く屈折率が低い低屈折率被膜を提供し、さらに表面強度が高く屈折率が低い反射防止膜を有する反射防止基材を提供することを目的とするものである。
本発明に係る低屈折率被膜形成用樹脂組成物は、低屈折率粒子とマトリクス形成材料とを含有する低屈折率被膜形成用樹脂組成物において、低屈折率粒子が、テトラアルコキシシラン、アミノ基を有するアルコキシシラン、4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤、2つ以上の水酸基を有する多価アルコール、及び水を含有する混合液中で、テトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランをアルカリ存在下で共加水分解反応させることにより、メソ孔を表面に有する球状のシリカナノ粒子を生成させた後、酸溶液中で4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤を抽出することによって調製されたメソポーラスシリカ微粒子であることを特徴とするものである。
上記のように調製されたメソポーラスシリカ微粒子は、メソ孔がヘキサゴナル状に規則的に配列して形成されているものであって、空隙率が高く、屈折率が低いものであり、このメソポーラスシリカ微粒子を用いて屈折率がより低い被膜を形成することができるものである。しかも上記のようにして得られたメソポーラスシリカ微粒子は、アルコキシシランに起因するアミノ基による化学修飾でマトリクス形成材料と架橋させることが容易であって、被膜のマトリクス中に強固にメソポーラスシリカ微粒子を結合させることができ、耐摩耗性など表面強度の高い被膜を形成することができるものである。
また本発明は、上記低屈折率粒子が、メソポーラスシリカ微粒子の表面に存在するアミノ基を介して、反応性の官能基で表面修飾したメソポーラスシリカ微粒子であり、上記マトリクス形成材料が、この反応性の官能基と反応性を有する材料であることを特徴とするものである。
この発明によれば、メソポーラスシリカ微粒子の表面の反応性官能基がマトリクス形成材料と反応することによって、メソポーラスシリカ微粒子を被膜のマトリクス中に強固に結合させることができ、表面強度の高い被膜を形成することができるものである。
また本発明は、メソポーラスシリカ微粒子の表面修飾した反応性の官能基が、シリコーンアルコキシド基であり、マトリクス形成材料が、シリコーンアルコキシド基を有する材料あるいはその部分加水分解物であることを特徴とするものである。
この発明によれば、メソポーラスシリカ微粒子とマトリクス形成材料のシリコーンアルコキシド基が加水分解縮合反応して、メソポーラスシリカ微粒子を表面修飾した官能基でマトリクス形成材料に架橋結合させることができ、メソポーラスシリカ微粒子を被膜のマトリクス中に強固に結合させて、表面強度の高い被膜を形成することができるものである。
本発明に係る低屈折率被膜は、上記の低屈折率被膜形成用樹脂組成物を、製膜して硬化して成ることを特徴とするものであり、低屈折率粒子として上記のようなメソポーラスシリカ微粒子を用いることによって、屈折率が低く、かつ表面強度が高い被膜として形成することができるものである。
本発明に係る反射防止基材は、上記の低屈折率被膜形成用樹脂組成物の硬化被膜を、基材の表面に形成して成ることを特徴とするものであり、低屈折率粒子として上記のようなメソポーラスシリカ微粒子を用いることによって、屈折率が低く、かつ表面強度が高い反射防止膜を形成した反射防止基材を得ることができるものである。
本発明において低屈折率微粒子として用いるメソポーラスシリカ微粒子は、メソ孔がヘキサゴナル状に規則的に配列して形成されているものであって、空隙率が高く、屈折率が低いものであり、このメソポーラスシリカ微粒子を用いて屈折率がより低い被膜を形成することができるものであり、しかもこのメソポーラスシリカ微粒子は、アルコキシシランに起因するアミノ基による化学修飾でマトリクス形成材料と架橋させることが容易であって、被膜のマトリクス中に強固にメソポーラスシリカ微粒子を結合させることができ、耐摩耗性など表面強度の高い被膜を形成することができるものである。
従って、高い表面強度を保持しつつより屈折率の低い低屈折率被膜を形成することができるものであり、また表面強度が高く屈折率が低い反射防止膜を有する反射防止基材を得ることができるものである。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明においてマトリクス形成材料としては、基材の表面に被膜のマトリクスを形成することができるものであれば特に限定されることなく任意の材料を用いることができるものであり、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、フェノール樹脂、酢酸ビニル樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂、エマルジョン樹脂、水溶性樹脂、親水性樹脂、これら樹脂の混合物、さらにはこれら樹脂の共重合体や変性体、さらにアルコキシシラン等の加水分解性有機珪素化合物等を挙げることができる。
これらのなかでも、高反射防止能や高表面強度の被膜を形成することができる点で、シリコーン系樹脂あるいはフッ素・シリコーン系樹脂が好ましく、例えば次に示すものを用いることができる。
すなわち、加水分解物(A)と共重合加水分解物(B)の少なくとも一方と、シリコーンジオール(C)からなるものであり、加水分解物(A)とシリコーンジオール(C)の組み合わせからなるもの、共重合加水分解物(B)とシリコーンジオール(C)の組み合わせからなるもの、加水分解物(A)と共重合加水分解物(B)とシリコーンジオール(C)の組み合わせからなるものを、マトリクス形成材料として用いることができる。
上記の加水分解物(A)は、一般式が
SiX(Xは加水分解基)…(1)
で表わされる4官能加水分解性オルガノシランを加水分解して得られる4官能加水分解物(4官能シリコーンレジン)である。この4官能加水分解性オルガノシランとしては、下記式(2)に示されるようなシリコーンアルコキシド基を有する4官能オルガノアルコキシシランを挙げることができる。
Si(OR)…(2)
上記式(2)のアルコキシド基(アルコキシル基)「OR」中の「R」は1価の炭化水素基であれば特に限定されるものではないが、炭素数1〜8の1価の炭化水素基が好適であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基等を例示することができる。アルコキシド基中に含有されるアルキル基のうち、炭素数が3以上のものについては、n−プロピル基、n−ブチル基等のように直鎖状のものであってもよいし、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基等のように分岐を有するものであってもよい。
また4官能加水分解性オルガノシランの加水分解基Xとしては、上記のアルコキシド基の他に、アセトキシ基、オキシム基(−O−N=C−R(R'))、エノキシ基(−O−C(R)=C(R')R”)、アミノ基、アミノキシ基(−O−N(R)R')、アミド基(−N(R)−C(=O)−R')(これらの基においてR、R'、R”は、例えばそれぞれ独立に水素原子又は一価の炭化水素基等である)や、ハロゲン等を挙げることができる。
そして、4官能シリコーンレジンである加水分解物(A)を調製するにあたっては、上記4官能オルガノアルコキシシラン等の4官能加水分解性オルガノシランを加水分解(部分加水分解も含む)することによって行なうことができる。ここで、得られる4官能シリコーンレジンである加水分解物(A)の重量平均分子量は特に限定されるものではないが、低屈折率粒子に対して、より少ない割合のマトリクス形成材料によって硬化被膜の機械的強度を得るためには、重量平均分子量は200〜2000の範囲にあることが好ましい。重量平均分子量が200より小さいと被膜形成能力に劣るおそれがあり、逆に2000を超えると硬化被膜の機械的強度に劣るおそれがある。
また、上記の共重合加水分解物(B)は、加水分解性オルガノシランと、フッ素置換アルキル基を有する加水分解性オルガノシランとの共重合加水分解物である。加水分解性オルガノシランとしては、上記の式(1)の4官能加水分解性オルガノシランを用いるものであり、この4官能加水分解性オルガノシランとしては上記の式(2)の4官能オルガノアルコキシシランを挙げることができる。またフッ素置換アルキル基含有加水分解性オルガノシランとしては、下記式(3)〜(5)で表される構成単位を有するものが好適である。
(上記の式中、Rは炭素数1〜16のフルオロアルキル基またはパーフルオロアルキル基を示し、Rは炭素数1〜16のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、またはアルコキシ基、水素原子あるいはハロゲン原子を示す。またXは−(C)−を示し、aは1〜12の整数、b+cは2aであり、bは0〜24の整数、cは0〜24の整数である。このようなXとしては、フルオロアルキレン基とアルキレン基とを有する基が好ましい。)
そして加水分解性オルガノシランとフッ素置換アルキル基を有する加水分解性オルガノシランとを混合し、加水分解させて共重合することによって、共重合加水分解物(B)を得ることができるものである。加水分解性オルガノシランとフッ素置換アルキル基を有する加水分解性オルガノシランの混合比率(共重合比率)は、特に限定されるものではないが、縮合化合物換算の質量比率で、加水分解性オルガノシラン/フッ素置換アルキル基を有する加水分解性オルガノシラン=99/1〜50/50の範囲が好ましい。共重合加水分解物(B)の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、200〜5000の範囲が好ましい。200未満であると被膜形成能力が劣り、逆に5000を超えると被膜強度が低下するおそれがある。
また、上記シリコーンジオール(C)は、下記の式(6)で表わされるジメチル型のシリコーンジオールである。式(6)において、ジメチルシロキサンの繰り返し数nは特に限定されるものではないが、n=20〜100の範囲が好ましい。nが20未満であると、摩擦抵抗の低減の効果を十分に得ることができず、逆にnが100を超えると、他のマトリクス形成材料との相溶性が悪くなる傾向があり、硬化被膜の透明性に悪影響を及ぼしたり、硬化被膜に外観ムラが発生するおそれがある。
そして上記の加水分解物(A)と共重合加水分解物(B)の少なくとも一方と、シリコーンジオール(C)とを含有してマトリクス形成材料が形成されるものである。マトリクス形成材料において、シリコーンジオール(C)の配合量は特に限定されるものではないが、コーティング材組成物の全固形分(低屈折率粒子やマトリクス形成材料の縮合化合物換算固形分)に対して1〜10質量%の範囲が好ましい。
一方、本発明では低屈折率粒子として、メソポーラスシリカ微粒子を用いるものである。メソポーラスシリカ微粒子は、界面活性剤の集合体を構造規定剤(Structure−directing agent:SDA)として用いて製造することができる(例えば特開2002−53773号公報参照)。メソポーラスシリカ微粒子は細孔サイズが均一であり、50%程度の大きな空隙率をもっている点に特徴があり、このような構造の特徴から低屈折率(Low−n)である。このため、メソポーラスシリカ微粒子を低屈折率粒子として含有する被膜を形成することによって、例えば既述の特許文献1のような空隙率が30%程度の中空シリカ系微粒子を用いる場合と比較すると、同じ含有率ではより低屈折率の被膜を形成することができる。
そしてメソポーラスシリカ微粒子を含有する被膜を形成するにあたっては、メソポーラスシリカ微粒子を上記のマトリクス形成材料と混合してコーティング用の樹脂組成物を調製し、これを基材に塗布して製膜する必要があり、メソポーラスシリカ微粒子をマトリクス形成材料に均一に分散し、またメソポーラスシリカ微粒子をマトリクス形成材料に結合させるために、メソポーラスシリカ微粒子にマトリクス形成材料に適応した表面修飾を行なうことが望ましい。
しかし従来のメソポーラスシリカ微粒子は通常、シリカ骨格を形成した後に、焼成(通常450℃)してSDAを取り除くことによって、細孔が形成されるものであり、このように高温で焼成すると、メソポーラスシリカ微粒子の表面の表面修飾するためのサイトが減少することになり、表面修飾を行なうことが困難になる。また通常、メソポーラスシリカ微粒子はロッド形状に形成されたり、粒子径が100nm以上に形成されたりすることが多いが、反射防止膜などの被膜の膜厚は100nm前後であり、ロッド形状や100nm以上の粒径のメソポーラスシリカ微粒子を用いる場合には、このような薄い膜厚の被膜を表面平滑に形成することは困難である。
そこで本発明では、テトラアルコキシシラン、アミノ基を有するアルコキシシラン、4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤、2つ以上の水酸基を有する多価アルコール、及び水を含有する混合液中で、テトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランをアルカリ存在下で共加水分解反応させることにより、メソ孔を表面に有する球状のシリカナノ粒子を生成させた後、酸溶液中で4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤を抽出することによって、メソポーラスシリカ微粒子を調製するようにしたものである。
本発明において上記のテトラアルコキシシランとしては、一般式が
Si(OR …(7)
で示されるものを用いることができる。
式(7)においてRは炭素数1〜10のアルキル基であり、このようなテトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランなどを例示することができ、なかでもテトラエトキシシラン(Si(OC)が好ましい。
また本発明において上記のアミノ基を有するアルコキシシランとしては、一般式が
(HN)(R4−nSi(OR …(8)
で示されるものを用いることができる。
式(8)において、mは1〜3の整数、nは1〜3の整数、Rは炭素数1〜10のアルキレン基、Rは炭素数1〜10のアルキル基である。このアミノ基を有するアルコキシシランの具体例としては、特に限定されるものではないが、アミノプロピルトリエトキシシラン(HN−(C)−Si−(OC)などのアミノプロピルトリアルコキシシランを挙げることができる。
さらに本発明ではSDAとして、4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤を用いるものである。このような4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、デシルトリメチルアンモニウムブロマイド、オクチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキシルトリメチルアンモニウムブロマイドなどを挙げることができる。
上記のテトラアルコキシシラン、アミノ基を有するアルコキシシラン、4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤を水中に分散乃至溶解させ、テトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランを反応させるのであるが、テトラアルコキシシランやアミノ基を有するアルコキシシランを水中に分散させるために、さらに、2つ以上の水酸基を有する多価アルコールを添加する。この2つ以上の水酸基を有する多価アルコールとしては任意のものを用いることができるものであり、例えば2価アルコールのエチレングリコール、プロピレングリコール、3価アルコールのグリセリンなどを例示することができる。そして反応触媒としてアンモニアなどのアルカリの存在下、上記の混合液を攪拌することによって、テトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランを共加水分解反応させることができるものである。
ここで、上記の混合液において、テトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランの配合比率は、モル比で100:10〜100:30の範囲に設定するのが好ましい。テトラアルコキシシラン100モルに対して、アミノ基を有するアルコキシシランが10モル未満であると、生成物の構造の規則性が低下し易くなって、メソ孔がヘキサゴナル状に規則的に配列して形成されたメソポーラスシリカ微粒子を得ることが難しくなる。逆に40モルを超えると、生成物が無定形になり易くなる。
また4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤の配合量は、特に制限されるものではないが、テトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランの合計量に対して、75〜100質量%程度に設定するのが好ましい。さらに多価アルコールの配合量も、特に制限されるものではないが、テトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランの合計量に対して、2200〜6700質量%程度に設定するのが好ましい。
そして、上記の混合液を40〜70℃程度の加温下、30分〜5時間程度攪拌することによって、テトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランが共加水分解反応し、アルコキシシランの縮合化合物からなるシリカナノ粒子1を、図2(a)に示すように混合液2中に生成させることができる。このシリカナノ粒子1は、層間に4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤5がインターカーレートされた状態でシリカ骨格3が成長し、メソ孔4を有するメソポーラスシリカ微粒子1として形成されるものである。このメソ孔4は4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤5がSDAとして充填された状態で生成されるものであり、メソ孔4の直径は1〜10nm程度である。そして図1(a)(b)に模式的に示すように、メソ孔4はシリカ骨格3間にヘキサゴナル状に規則的に配列して形成されており、メソポーラスシリカ微粒子1は直径が20〜200nmの球状に形成されるものである。このメソポーラスシリカ微粒子1のシリカ骨格3の表面には、アミノ基を有するアルコキシシランに起因するアミノ基が多数存在している。
尚、上記のように共加水分解反応する際に、多価アルコールを含有していることが重要であり、多価アルコールが含有されていないと、得られる粒子が微小な球状にならず、ロッド状になってしまい、生成物の構造の規則性も低下してしまうものである。また、アミノ基を有するアルコキシシランを含有していることも重要であり、テトラアルコキシシランのみを上記と同様に加水分解した場合には、生成物は無定形になってしまうものである。
ここで、上記の反応混合液2中のテトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランの濃度は、テトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランが共加水分解反応して得られる縮合化合物の質量が、混合液2の全体の質量に対して5質量%以下(下限は特に設定されないが、実用上、0.1質量%程度が下限である)となるような、希薄濃度になるようにするのが好ましく、このため混合液2中には大量の水が含有されるようにするのが好ましい。このようにテトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランを混合液2中に希薄に存在させた状態で共加水分解反応させることによって、反応速度を抑制することができ、メソポーラスシリカ微粒子1に形成されるメソ孔4を、両末端がオープンで且つ規則的に配列されたヘキサゴナル状に形成することが容易になるものである。
上記のように混合液2中でテトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランを共加水分解反応させて、メソポーラスシリカ微粒子1を生成させた後、40〜70℃程度の加温下、10〜100時間程度静置して熟成する。
次に、メソ孔4に4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤5が充填されたメソポーラスシリカ微粒子1を混合液2から分離して回収する。メソポーラスシリカ微粒子1の回収は、例えば遠心分離や濾過などで行なうことができる。
このようにメソポーラスシリカ微粒子1を分離・回収した後、メソポーラスシリカ微粒子1のメソ孔4から4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤5を抽出して除去する。4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤5の抽出は、図2(b)のようにメソポーラスシリカ微粒子1を酸溶液6中に浸漬して、イオン交換させることによって行なうことができる。この酸溶液6としては、例えば酸とアルコールの混合溶液を用いることができるものであり、酸としては硝酸アンモニウムなどを、アルコールとしてはエタノールやメタノールなどを用いることができる。そしてメソ孔4から4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤5を抽出して除去したメソポーラスシリカ微粒子1を、遠心分離や濾過などして酸溶液6から回収し、乾燥することによって、図1(c)(d)に示すようなヘキサゴナル状の空隙として形成されたメソ孔4を有する、メソポーラスシリカ微粒子1の粉体を得ることができるものである。
このようにして得られるメソポーラスシリカ微粒子には、アミノ基を有するアルコキシシランに起因して、シリカ骨格の表面に多数のアミノ基が存在している。従って、このアミノ基に各種の化合物を化学反応させて結合させることによって、アミノ基を介してメソポーラスシリカ微粒子の表面を各種の化合物で修飾することができる。この表面修飾に用いる修飾剤としては、アミノ基と化学反応して結合する基を有するものであれば、任意のものを用いることができるものであり、例えばビニル化合物、エポキシ化合物、カルボン酸化合物、イソシアネート化合物などを挙げることができる。この表面修飾の反応の条件としては、用いた修飾剤とアミノ基が化学反応する温度・時間であれば特に制限されるものではなく、例えば30〜100℃程度の温度で10〜50時間程度反応させればよい。
ここで上記のようにメソポーラスシリカ微粒子の表面にアミノ基を介して化学修飾するにあたって、修飾する材料を、マトリクス形成材料の種類に応じて選定するのが好ましい。すなわち、マトリクス形成材料と化学反応して結合する官能基をメソポーラスシリカ微粒子の表面に修飾することによって、マトリクス形成材料によって形成される被膜のマトリクスにメソポーラスシリカ微粒子を結合させることができ、被膜に外力が作用した場合にメソポーラスシリカ粒子が剥がれたりすることを防ぐことができるものであり、耐摩耗性など表面強度の高い被膜を形成することができるものである。
例えばマトリクス形成材料として上記のようなシリコーンアルコキシド基を有する材料あるいはその部分加水分解物を用いる場合、メソポーラスシリカ微粒子の表面のアミノ基にビニル変性シリコーンアルコキシドやグリシジル変性シリコーンアルコキシドを化学反応させて修飾し、メソポーラスシリカ微粒子の表面にシリコーンアルコキシドを導入することが好ましい。このものでは、メソポーラスシリカ微粒子の表面のシラノール基あるいはアルコキシド基が、マトリクス形成材料のシラノール基あるいはアルコキシド基と加水分解縮合反応し、マトリクス形成材料とメソポーラスシリカ微粒子の架橋が形成され、マトリクス形成材料によって形成される被膜のマトリクスにメソポーラスシリカ微粒子を強固に結合させて、耐摩耗性など表面強度がより高い被膜を形成することができるものである。
尚、メソポーラスシリカ微粒子を表面修飾する工程は、上記のようにメソ孔から4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤を抽出して除去した後であってもよいが、メソ孔から4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤を抽出する前であってもよい。
そして本発明に係る低屈折率被膜形成用樹脂組成物は、上記のマトリクス形成材料に低屈折率粒子としてメソポーラスシリカ微粒子を配合することによって調製することができるものである。この組成物において、メソポーラスシリカ微粒子とマトリクス形成材料との質量割合は、特に限定されるものではないが、メソポーラスシリカ微粒子/マトリクス形成材料(固形分)=95/5〜50/50の範囲になるように設定するのが好ましく、より好ましくは95/5〜75/25である。メソポーラスシリカ微粒子の比率が95より多いと、得られる硬化被膜の機械的強度が低下するおそれがあり、逆にメソポーラスシリカ微粒子の比率が50より少ないと、硬化被膜の低屈折率を発現させる効果が小さくなるおそれがある。
本発明の低屈折率被膜形成用樹脂組成物には、外殻の内部が空洞ではないシリカ粒子を添加することができる。このシリカ粒子を配合することによって、低屈折率被膜形成用樹脂組成物によって形成される硬化被膜の機械的強度を向上させることができるものであり、さらには表面平滑性と耐クラック性をも改善することができるものである。このシリカ粒子の形態としては、特に限定されるものではなく、例えば、粉体状の形態でもゾル状の形態でもよい。シリカ粒子をゾル状の形態、すなわちコロイダルシリカとして使用する場合、特に限定されるものではないが、例えば、水分散性コロイダルシリカあるいはアルコール等の親水性の有機溶媒分散性コロイダルを使用することができる。一般にこのようなコロイダルシリカは、固形分としてのシリカを20〜50質量%含有しており、この値からシリカ配合量を決定することができる。このシリカ粒子の添加量は、低屈折率被膜形成用樹脂組成物中における固形分全量に対して、0.1〜30質量%であることが好ましい。0.1質量%未満ではこのシリカ粒子の添加による効果が得られないおそれがあり、逆に30質量%を超えると硬化被膜の屈折率を高くするように悪影響を及ぼすおそれがある。
そして、上記のようにして調製した低屈折率被膜形成用樹脂組成物を基材の表面に塗装して被膜を製膜すると共にこの被膜を乾燥硬化させることによって、低屈折率被膜を形成することができるものである。またこの低屈折率被膜は、例えば反射防止膜として基材の表面に形成することができるものである。低屈折率被膜形成用樹脂組成物が塗装される基材は、特に限定されるものではないが、例えば、ガラスに代表される無機系基材、金属基材、ポリカーボネートやポリエチレンテレフタレートに代表される有機系基材を挙げることができ、また基材の形状としては、板状やフィルム状等を挙げることができる。さらに、基材の表面に低屈折率被膜を1層以上の層数で形成することもできる。
低屈折率被膜形成用樹脂組成物を基材の表面に塗装するにあたって、その方法は特に限定されるものではないが、例えば、刷毛塗り、スプレーコート、浸漬(ディッピング、ディップコート)、ロールコート、フローコート、カーテンコート、ナイフコート、スピンコート、テーブルコート、シートコート、枚葉コート、ダイコート、バーコート等の通常の各種塗装方法を選択することができる。
また、基材の表面に形成した被膜を乾燥させた後に、これに熱処理を行うのが好ましい。この熱処理によって、硬化被膜の機械的強度をさらに向上させることができるものである。熱処理の際の温度は、特に限定されるものではないが、100〜300℃の比較的低温で5〜30分処理することが好ましい。このように低温で熱処理を行っても、高温で熱処理を行うときと同等の機械的強度を得ることができるので、製膜コストを低減することが可能となり、また高温による熱処理の場合のように、基材の種類が制限されることがなくなるものである。しかも、例えばガラス基材の場合には熱伝導率が低いため、温度の上昇と冷却に時間がかかり、高温による熱処理ほど処理スピードが遅くなるのに対し、低温による熱処理では逆に処理スピードを早めることができるものである。
基材の表面に形成する硬化被膜の膜厚は、使用用途や目的に応じて適宜選択することができ、特に限定されるものではないが、50〜150nmの範囲が好ましい。ここで、硬化被膜の屈折率と膜厚の積が光学膜厚であり、波長λの光が最低反射率になるためには、硬化被膜の光学膜厚が1/4λに設定される必要がある。そして反射防止の対象となる波長λ=540nmの光が最低反射率になるためには、硬化被膜の屈折率が1.35の場合には、硬化被膜の膜厚は100nmであることが必要である(光学膜厚=1.35×100=135nm≒1/4λ)。また硬化被膜の屈折率が1.42の場合には、硬化被膜の膜厚は95nmであることが必要である(光学膜厚=1.42×95=134.9nm≒1/4λ)。このように反射防止膜として光学設計する場合、硬化被膜の膜厚は50〜150nmの範囲が好ましいものである。
しかして、本発明に係る低屈折率被膜形成用樹脂組成物を用いれば、低屈折率の硬化被膜を容易に形成することができ、反射防止用途に好適である。例えば、基材の屈折率が1.60以下の場合には、この基材の表面に屈折率が1.60以上の硬化被膜を形成してこれを中間層とし、さらにこの中間層の表面に、本発明に係る低屈折率被膜形成用樹脂組成物による硬化被膜を形成するのが有効である。中間層を形成するための硬化被膜は、公知の高屈折率材料を用いて形成することができ、またこの中間層の屈折率は1.60以上であれば、本発明に係る低屈折率被膜形成用樹脂組成物による硬化被膜との屈折率の差が大きくなり、反射防止性能に優れた反射防止基材を得ることができるものである。また反射防止基材の硬化被膜の着色を緩和するために、中間層を屈折率の異なる複数の層で形成してもよい。反射防止の用途としては、例えば、ディスプレイの最表面、自動車のサイドミラー、フロントガラス、サイドガラス、リアガラスの内面、その他車両用ガラス、建材ガラス等を挙げることができる。
また、上記のように基材の表面に低屈折率の硬化被膜を形成するにあたって、マトリクス形成材料の一部として上記のようにシリコーンジオールを含有するようにすれば、硬化被膜にこのシリコーンジオールを導入することができ、硬化被膜の表面摩擦抵抗を小さくすることができる。従って、硬化被膜の表面への引っ掛かりを低減して、傷が入り難くなるようにすることができ、耐擦傷性を向上することができるものである。特に上記のようなジメチル型のシリコーンジオールは、被膜を形成した際には被膜の表面にシリコーンジオールが局在し、被膜の透明性を損なわないものである(ヘーズ率が小さい)。またジメチル型のシリコーンジオールはマトリクス形成材料と相溶性に優れ、しかもマトリクス形成材料のシラノール基と反応性を有するために、マトリクスの一部として硬化被膜の表面に固定されるものであり、単にシリコーンオイル(両末端もメチル基)を混入しただけの場合のように硬化被膜の表面を拭くと除去されてしまうようなことがなく、長期に亘って硬化被膜の表面摩擦抵抗を小さくして耐擦傷性を長期間維持することができるものである。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(実施例1)
冷却管、攪拌機、温度計を取り付けた1Lのセパラブルフラスコに、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドを1.3g、蒸留水を180g、エチレングリコールを30g、25質量%濃度のアンモニア水溶液を8.0mL、室温で順次仕込み、攪拌を行ないながら昇温して50℃まで加温し、この温度で30分間攪拌した。次にこれにテトラエトキシシラン1.5mLとγ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.29mLとをすばやく加えた。このときのテトラエトキシシランとγ−アミノプロピルトリエトキシシランのモル比は100:20である。そして反応温度を50℃に保ったまま、混合液を2時間攪拌し、さらに攪拌を停止した後に、50℃の温度を保持して20時間静置した。
この工程において、混合液中では、テトラエトキシシランとγ−アミノプロピルトリエトキシシランが共加水分解反応し、メソ孔にヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドが充填された状態のメソポーラスシリカ微粒子が生成される。
次に、加温を停止し、混合液の温度が室温に戻ってから、混合液を遠心分離機にセットし、20000rpmで20分間遠心分離することによって、固体成分を液体から分離して回収した。
このように回収した固体成分をエタノールで洗浄した後、硝酸アンモニウムを1質量%濃度で溶解したエタノール溶液に、約1gの固体成分を加えて分散させ、30分間還流した。
この工程において、メソ孔内のヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドはイオン交換反応で硝酸アンモニウム/エタノール溶液に抽出され、メソ孔内から除去される。
次に、硝酸アンモニウム/エタノール溶液に固体成分を分散させた分散液を遠心分離機にセットし、2000rpmで20分間遠心分離することによって、固体成分を液体から分離して回収した。
そしてこのように回収した固体成分をエタノールで洗浄した後、80℃で24時間乾燥することによって、白色粉末のメソポーラスシリカ微粒子を得た。
このようにして得たメソポーラスシリカ微粒子のX線回折チャートにはd値=3.5nmにピークがみられ、ヘキサゴナル構造の特性がみられるものであった。X線回折チャートを図3に示す。図3においてaはヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドを抽出する前、bは抽出した後である。
またこのメソポーラスシリカ微粒子のメソ孔を窒素吸着BET法により測定したところ、比表面積1530m/g、細孔容量1.97mL/g、平均細孔径2.54nmであった。図4に細孔分布を示す。
また図5にこのメソポーラスシリカ微粒子の走査型電子顕微鏡写真(3万倍)を、図6にこのメソポーラスシリカ微粒子の透過型電子顕微鏡写真((a)は10万倍)を示す。これらの電子顕微鏡写真にみられるように、メソポーラスシリカ微粒子は粒子径70〜100nmの球形であり、ヘキサゴナル状の空隙が規則正しく配列していることが確認される。
上記のようにして得られたメソポーラスシリカ微粒子を、超音波分散器を用いてイソプロピルアルコール(IPA)に固形分濃度が3質量%になるように分散し、メソポーラスシリカIPA分散ゾルを得た。
一方、テトラエトキシシラン208質量部にメタノール356質量部を加え、さらに水18質量部及び0.01Nの塩酸水溶液18質量部(「HO」/「OR」=0.5)を混合し、これをディスパーを用いてよく混合した。この混合液を25℃恒温槽中で2時間撹拌して、重量平均分子量を850に調整した加水分解物(A)(4官能シリコーンレジン)を得た。尚、分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、測定機として東ソー(株)の「HLC8020」を用いて、標準ポリスチレンで検量線を作成し、その換算値として測定したものである。
そしてこの4官能シリコーンレジンに、上記のメソポーラスシリカIPA分散ゾルを、メソポーラスシリカ微粒子/4官能シリコーンレジン(縮合化合物換算)が固形分基準で50/50の質量比となるように添加し、さらに全固形分が1質量%になるようにIPA/酢酸ブチル/ブチルセロソルブ混合液(希釈後の溶液の全量中の5質量%が酢酸ブチル、全量中の2質量%がブチルセロソルブになるように予め混合された溶液)で希釈した。
次に、ジメチルシリコーンジオール(式(6)のn≒40)を酢酸エチルで固形分1質量%になるように希釈した溶液を、メソポーラスシリカ微粒子と4官能シリコーンレジン(縮合物換算)の固形分の和に対して、ジメチルシリコーンジオールの固形分が2質量%になるように添加することによって、低屈折率被膜形成用樹脂組成物の塗布液を得た。
(実施例2)
実施例1と同様にして、テトラエトキシシランとγ−アミノプロピルトリエトキシシランを共加水分解反応させた後、反応後の混合液を遠心分離して固体成分を分離回収し、固体成分をエタノールで洗浄した。
次に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(CH=C(CH)−COO−(CH−Si(OCH)を0.50質量%濃度になるように添加したメタノール溶液に、この回収した固体成分を分散させ、50℃で24時間、マイケル付加重合を行なった。
この工程おいて、メソポーラスシリカ微粒子の表面のアミノ基に3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが次の反応式のように反応し、メソポーラスシリカ微粒子の表面が修飾された。
−Si−(C36)−NH2 + CH2=C(CH3)−COO−(CH23−Si(OCH33
→ −Si−(C36)−N[CH2−C(CH3)−COO−(CH23−Si(OCH332
次に、この反応後の混合液を遠心分離機にセットし、2000rpmで20分間遠心分離することによって、固体成分を液体から分離して回収し、固体成分をエタノールで洗浄した。
後は、実施例1と同様にして、メソ孔内のヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドを抽出して除去し、エタノールで洗浄した後に乾燥することによって、白色粉末のメソポーラスシリカ微粒子を得た。
このメソポーラスシリカ微粒子をIRで分析したところ、1724cm−1にエステル結合に起因する吸収がみられ、表面装飾されていることが確認された。
上記のようにして得られたメソポーラスシリカ微粒子を、超音波分散器を用いてイソプロピルアルコール(IPA)に固形分濃度が3質量%になるように分散し、メソポーラスシリカIPA分散ゾルを得た。
そしてこのメソポーラスシリカIPA分散ゾルを用い、後は実施例1と同様に、4官能シリコーンレジンにメソポーラスシリカIPA分散ゾルを添加すると共にIPA/酢酸ブチル/ブチルセロソルブ混合液で希釈し、さらにジメチルシリコーンジオールの酢酸エチル希釈溶液を添加することによって、低屈折率被膜形成用樹脂組成物の塗布液を得た。
(比較例1)
中空シリカ微粒子として中空シリカIPA分散ゾル(固形分20%、平均一次粒子径約60nm、外殻厚み約10nm、触媒化成工業社製)を用いた。そして実施例1で得た4官能シリコーンレジンからなるマトリクス形成材料に、中空シリカ微粒子/4官能シリコーンレジン(縮合化合物換算)が固形分基準で50/50の質量比となるように中空シリカ微粒子を添加し、さらに全固形分が1質量%になるようにIPA/酢酸ブチル/ブチルセロソルブ混合液(希釈後の溶液の全量中の5質量%が酢酸ブチル、全量中の2%がブチルセロソルブになるように予め混合された溶液)で希釈した。後は実施例1と同様にジメチルシリコーンジオールの酢酸エチル希釈溶液を添加することによって、低屈折率被膜形成用樹脂組成物の塗布液を得た。
(比較例2)
4官能シリコーンレジンに比較例1と同じ中空シリカ微粒子を、中空シリカ微粒子/4官能シリコーンレジン(縮合化合物換算)が固形分基準で70/30の質量比となるように添加するようにした他は、比較例1と同様にして、低屈折率被膜形成用樹脂組成物の塗布液を得た。
上記の実施例1〜2及び比較例1〜2で得た低屈折率被膜形成用樹脂組成物の塗布液を1時間放置した後に、予めUV−オゾン洗浄機(ウシオ電機社製エキシマランプ「型式H0011」)で表面洗浄した、アクリル板(旭化成工業社製「デラグラスTMHA」、両面ハードコート処理、ハードコート屈折率1.52、ヘーズ0.10)のハードコート面に、ワイヤーバーコーターによって塗装して膜厚が約100nmの被膜を形成し、被膜を酸素雰囲気で80℃で1時間熱処理することによって、硬化被膜を得た。
上記の実施例1〜2及び比較例1〜2で得た硬化被膜について、反射率、ヘーズ率、屈折率及び機械的強度を測定し、硬化被膜の性能評価を行なった。結果を表1に示す。
(5°相対反射率)
分光光度計(日立製作所製「U−4100」)を使用して、最小反射率を測定した。
(ヘーズ率)
ヘーズメータ(日本電色工業社製「NDH2000」)を使用して測定した。
(屈折率)
簡易エリプソメーター(FILMTRICS社製「F20」)で屈折率を導出した。
(機械的強度)
摩耗試験機(新束科学社製「HEIDON−14DR」、スチールウール#0000、250g荷重又は500g荷重、10往復)で硬化被膜の表面を擦り、硬化被膜に発生する本数を測定した。
表1にみられるように、実施例1,2は、微粒子を同じ重量比率で配合した比較例1と比べて最小反射率が小さいと共に屈折率が小さいことが確認された。また実施例1は、最小反射率や屈折率が同じ程度になるよう微粒子を配合した比較例2と比べて表面強度が優れている。従って本発明に係るメソポーラスシリカ微粒子を用いることによって、低屈折率と高表面強度を兼ね備えた低屈折率被膜を形成できることが確認された。特に表面修飾したメソポーラスシリカ微粒子を用いた実施例2のものは耐摩耗性が高く、表面強度がより向上することが確認される。
本発明で用いるメソポーラスシリカ微粒子を模式的に示すものであり、(a)(b)はメソ孔から4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤を抽出する前の、正面断面図と側面断面図、(c)(d)はメソ孔から4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤を抽出した後の、正面断面図と側面断面図である。 メソポーラスシリカ微粒子を製造する工程を示すものであり、(a)(b)はそれぞれ概略図である。 実施例1で得たメソポーラスシリカ微粒子のX線回折チャートである。 実施例1で得たメソポーラスシリカ微粒子の細孔分布を示す図である。 実施例1で得たメソポーラスシリカ微粒子の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例1で得たメソポーラスシリカ微粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
符号の説明
1 メソポーラスシリカ微粒子
3 シリカ骨格
4 メソ孔
5 界面活性剤

Claims (3)

  1. 低屈折率粒子とマトリクス形成材料とを含有する低屈折率被膜形成用樹脂組成物において、低屈折率粒子が、テトラアルコキシシラン、アミノ基を有するアルコキシシラン、4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤、2つ以上の水酸基を有する多価アルコール、及び水を含有する混合液中で、テトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランをアルカリ存在下で共加水分解反応させることにより、メソ孔を表面に有する球状のシリカナノ粒子を生成させた後、酸溶液中で4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤を抽出することによって調製されたメソポーラスシリカ微粒子であり、
    前記メソポーラスシリカ微粒子が、その表面に存在するアミノ基を介して、−CH 2 −CH(CH 3 )−COO−(CH 2 3 −Si(OCH 3 3 で表面修飾されており、
    前記マトリクス形成材料が、シリコーンアルコキシド基を有する材料あるいはその部分加水分解物である
    ことを特徴とする低屈折率被膜形成用樹脂組成物。
  2. 請求項1記載の低屈折率被膜形成用樹脂組成物を、製膜して硬化して成ることを特徴とする低屈折率被膜。
  3. 請求項1又は2に記載の低屈折率被膜形成用樹脂組成物の硬化被膜を、基材の表面に形成して成ることを特徴とする反射防止基材。
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