JP5176279B2 - 太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法、および、太陽電池モジュールの製造方法 - Google Patents

太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法、および、太陽電池モジュールの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、太陽電池モジュールの製造に用いられる太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法に関するものであり、より詳しくは表面にエンボス加工が施された太陽電池モジュール用充填材シートを高効率で生産することができる太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法に関するものである。
近年、環境問題に対する意識の高まりから、クリーンなエネルギー源としての太陽電池が注目されている。一般的な太陽電池に用いられる太陽電池モジュールは、太陽光を受光することにより発電する発電素子として、単結晶シリコン基板や多結晶シリコン基板から構成された太陽電池素子が用いられている。そして一般的な太陽電池モジュールは、このような太陽電池素子の太陽光を受光する面側に前面充填材と前面透明基板とがこの順で積層され、さらに上記太陽光を受光する面とは反対面側に裏面充填材と、裏面保護シートが積層された構成を有するものである。
このような太陽電池モジュールは、一般に加熱圧着方法により製造されている。加熱圧着法とは、上記前面透明基板、前面充填材シート、太陽電池素子、裏面充填材シート、および、裏面保護シートをこの順で積層した後、加熱圧着することにより、これらを接合する方法である。このような方法は、単一の工程で太陽電池モジュールを製造できる点において利点を有しているが、加熱圧着する際に、上記各部材の境界に空気が封入されてしまうという問題点があり、これに起因して製造される太陽電池モジュールの耐久性が低下してしまうという問題点があった。
このような問題点に対し、例えば、特許文献1には、上記前面充填材シートおよび上記裏面充填材シートとして表面がエンボス加工された充填材シートを用い、上記加熱圧着時に空気が入り込むことを防止する方法が開示されている。このような方法によれば上記太陽電池モジュールの各部材の境界に空気が入ってしまうことを効果的に防止できることから、例えば、上記充填材シートとして加熱時に気体を発生させることが指摘されていたエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂を用いる場合等において好適に用いられている。
ところで、上記のような表面がエンボス加工された充填材シートを作製する方法としては、例えば、特許文献2に開示されているように、表面に凹凸形状が形成された型部材を用い、上記型部材を充填材シートの表面に圧着または加熱圧着することによって、上記凹凸形状を充填材シートの表面に転写する方法が一般的に用いられている。
しかしながら、上記充填材シートとしては熱可塑性樹脂を含有するものが広く用いられており、このような充填材シートに対して上記のような方法を用いると、転写される凹凸形状にムラが生じたり、また、凹凸形状を転写する際に充填材シートと上記型部材とが接着してしまい、これによって充填材シートの生産効率が低下してしまうという問題点があった。
特開2003−204074号公報 特開平10−65194号公報
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、表面にムラの少ない凹凸形状が形成された太陽電池モジュール用充填材シートを高効率で生産することができる、太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法を提供することを主目的とするものである。
上記課題を解決するために本発明は、熱可塑性樹脂を含む充填材形成用組成物を溶融押出成型することにより樹脂シートを形成する溶融押出工程と、表面に凹凸形状を有する賦型ローラーおよび上記賦型ローラーよりも表面温度が低い加圧ローラーを用い、上記溶融押出工程により製造された樹脂シートを、上記賦型ローラーの表面に上記加圧ローラーで押し付けることにより、上記樹脂シートの表面に凹凸形状を形成するエンボス加工工程と、を有する太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法であって、上記賦型ローラーの表面温度(Te)と、上記加圧ローラーの表面温度(Tp)との温度差(Te−Tp)が2℃〜40℃の範囲内であることを特徴とする、太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法を提供する。
本発明によれば、上記温度差(Te−Tp)が2℃〜40℃の範囲内であることにより、上記エンボス加工工程において、上記樹脂シートの表面に凹凸形状を形成する際に、上記樹脂シートが上記賦型ローラーの表面に接着してしまうこと防止することができる。
また本発明によれば、上記温度差(Te−Tp)が上記範囲内であることにより上記エンボス加工工程において上記樹脂シートの表面に形成される凹凸形状にムラが生じることを抑制することができる。
このようなことから、本発明の太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法によれば、表面にムラの少ない凹凸形状が形成された太陽電池モジュール用充填材シートを高効率で生産することができる。
本発明においては、上記賦型ローラーの表面温度(Te)が30℃〜75℃の範囲内であることが好ましい。上記賦型ローラーの表面温度(Te)が上記範囲よりも低いと、上記エンボス加工工程において上記樹脂シートの表面に形成される凹凸形状にムラが生じやすくなる場合があるからである。また、表面温度が上記範囲よりも高いと上記エンボス加工工程において上記樹脂シートの表面に凹凸形状を形成する際に、上記樹脂シートが上記賦型ローラーの表面に接着しやすくなる場合があるからである。
また本発明においては、上記賦型ローラーの表面が金属材料からなることが好ましい。上記賦型ローラーの表面が金属材料からなることにより、上記エンボス加工工程において上記樹脂シートの表面に凹凸形状を形成する際に、上記樹脂シートが上記賦型ローラーの表面に接着することを防止できるからである。
また本発明においては、上記加圧ローラーの表面が弾性材料または金属材料からなることが好ましい。加圧ローラーの表面が弾性材料からなることにより、上記エンボス加工工程において、上記樹脂シートを均一な圧力で上記賦型ローラーに押し付けることが容易になるため、上記樹脂シートの表面にムラの少ない凹凸形状を形成することが容易になるからである。
また、金属材料は放熱性に優れることから、上記加圧ローラーの表面が金属材料からなることにより、上記エンボス加工工程において加圧ローラーに樹脂シートが巻きつくことを効果的に防止できるからである。
さらに、本発明においては上記熱可塑性樹脂が、エチレン性不飽和シラン化合物と重合用ポリエチレンとを重合させてなるシラン変性樹脂であることが好ましい。上記熱可塑性樹脂がこのようなシラン変性樹脂であることにより、例えば、本発明により製造される太陽電池モジュール用充填材シートと他の部材とを加熱圧着することによって太陽電池モジュールを製造した際に、上記充填材シートと上記他の部材との密着性を向上することができるからである。
本発明は、前面透明基板、前面充填材シート、太陽電池素子、裏面充填材シート、および、裏面保護シートをこの順で積層した後、これらを加熱圧着することにより太陽電池モジュールを製造する太陽電池モジュールの製造方法であって、上記前面充填材シート、または、上記裏面充填材シートの少なくとも一方が上記本発明の太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法により製造された太陽電池モジュール用充填材シートであることを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法を提供する。
本発明によれば、上記前面充填材シート、または、上記裏面充填材シートの少なくとも一方が、上記本発明の太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法により製造された太陽電池モジュール用充填材シートであることにより、上記加熱圧着時に上記前面充填材シートまたは上記裏面充填材シートの界面に存在する空気を排除することができため、内部に空気が封入されることにより性能の低下が生じることが少ない太陽電池モジュールを製造することができる。
本発明は、表面にムラの少ない凹凸形状が形成された太陽電池モジュール用充填材シートを高効率で生産することができるという効果を奏する。
以下、本発明の太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法、および、太陽電池モジュールの製造方法について詳細に説明する。
A.太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法
まず、本発明の太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法(以下、単に「充填材シートの製造方法」と称する場合がある。)について説明する。本発明の充填材シートの製造方法は、熱可塑性樹脂を含む充填材形成用組成物を溶融押出成型することにより樹脂シートを製造する溶融押出工程と、表面に凹凸形状を有する賦型ローラーおよび上記賦型ローラーよりも表面温度が低い加圧ローラーを用い、上記溶融押出工程により製造された樹脂シートを、上記賦型ローラーの表面に上記加圧ローラーで押し付けることにより上記樹脂シートの表面に凹凸形状を形成するエンボス加工工程とを有するものであって、上記賦型ローラーの表面温度(Te)と、上記加圧ローラーの表面温度(Tp)との温度差(Te−Tp)が2℃〜40℃の範囲内であることを特徴とするものである。
このような本発明の充填材シートの製造方法について図を参照しながら説明する。図1は本発明の充填材シートの一例を示す概略図である。図1に例示するように本発明の充填材シートの製造方法は、熱可塑性樹脂を含む充填材形成用組成物1’を押出ダイAを用いて溶融押出成型することによって樹脂シート1を製造する溶融押出工程(図1(a))と、上記溶融押出工程後に、上記樹脂シート1の表面に凹凸形状を形成するエンボス加工工程(図1(b))とを有するものである。
このような例において本発明の充填材シートの製造方法は、上記エンボス加工工程(図1(b))が、上記樹脂シート1を、表面に凹凸形状を有する賦型ローラー2の表面に加圧ローラー3で押し付けることにより、上記樹脂シート1の表面に凹凸形状を形成するものであり、かつ、上記賦型ローラー2の表面温度(Te)と、上記加圧ローラー3の表面温度(Tp)との差(Te−Tp)が2℃〜40℃の範囲内であることを特徴とするものである。
本発明によれば、上記温度差(Te−Tp)が2℃〜40℃の範囲内であることにより、上記エンボス加工工程において樹脂シートの表面に凹凸形状を形成する際に、上記樹脂シートが上記賦型ローラーの表面に接着してしまうこと防止することができる。
また本発明によれば、上記温度差(Te−Tp)が上記範囲内であることにより上記エンボス加工工程において上記樹脂シートの表面に形成される凹凸形状にムラが生じることを抑制することができる。
このようなことから、本発明の太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法によれば、表面にムラの少ない凹凸形状が形成された太陽電池モジュール用充填材シートを高効率で生産することができる。
本発明の太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法は、上記溶融押出工程および上記エンボス加工工程を有するものである。以下、このような本発明の太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法を構成する各工程について詳細に説明する。
1.エンボス加工工程
まず、本発明におけるエンボス加工工程について説明する。本工程は、表面に凹凸形状を有する賦型ローラーおよび加圧ローラーを用い、後述する溶融押出工程により製造された樹脂シートを、上記賦型ローラーの表面に上記加圧ローラーで押し付けることにより上記樹脂シートの表面に凹凸形状を形成する工程であり、上記賦型ローラーの表面温度(Te)と、上記加圧ローラーの表面温度(Tp)との温度差(Te−Tp)が2℃〜40℃の範囲内であることを特徴とするものである。
本工程において、上記賦型ローラーの表面温度(Te)と、上記加圧ローラーの表面温度(Tp)との温度差(Te−Tp)を、2℃〜40℃の範囲内とするのは次のような理由に基づくものである。すなわち、上記表面温度差(Te−Tp)が上記範囲よりも小さいと、本工程において上記樹脂シートの表面に凹凸形状を形成する際に、上記樹脂シートが上記加圧ローラーの表面に接着しやすくなり、連続的に凹凸形状を形成することが極めて困難となるからである。また、温度差(Te−Tp)が上記範囲よりも小さいと、たとえ上記樹脂シートの表面に連続的に凹凸形状を形成できた場合であっても、凹凸形状にムラが生じてしまうことを避けられないからである。
一方、上記温度差が上記範囲よりも大きいと、本工程において上記樹脂シートの表面に凹凸形状を形成する際に、樹脂シートの両面に表面温度の差が急激に生じること等に起因して、横じわが発生してしまうからである。
なお、本発明における上記「表面温度」とは、本工程において上記樹脂シートの表面に凹凸形状を形成している際の表面温度の実測値を意味するものである。このような表面温度は非接触型温度計等を用いて測定することができる。
以下、このようなエンボス加工工程について説明する。
(1)賦型ローラー
まず、本工程に用いられる賦型ローラーについて説明する。本工程に用いられる賦型ローラーは表面に凹凸形状を有するものであり、後述する溶融押出工程により製造される樹脂シートの表面に、上記凹凸形状を転写することによって上記樹脂シートの表面に凹凸形状を形成する機能を有するものである。
本工程に用いられる賦型ローラーの表面温度(Te)としては、後述する加圧ローラーの表面温度(Tp)に応じて、温度差(Te−Tp)を本発明で規定する範囲内にすることができる範囲であれば特に限定されるものではない。なかでも、本工程においては賦型ローラーの表面温度(Te)が30℃〜75℃の範囲内であることが好ましく、特に40℃〜70℃の範囲内であることが好ましく、さらには50℃〜60℃の範囲内であることが好ましい。表面温度(Te)が上記範囲よりも低いと、本工程において上記樹脂シートの表面に形成される凹凸形状にムラが生じやすくなる場合があるからである。また、表面温度(Te)が上記範囲よりも高いと本工程において上記樹脂シートの表面に凹凸形状を形成する際に、上記樹脂シートが賦型ローラーの表面に接着しやすくなる場合があるからである。
本工程において賦型ローラーの表面温度(Te)を制御する方法としては、所望の温度に均一に制御できる方法であれば特に限定されるものでない。なかでも本工程においては、賦型ローラーの内部に、温度制御された液体を通液する方法を好適に用いることができる。このような方法によれば、回転する賦型ローラーの表面温度を常に一定に維持することが容易になる等の利点を有するからである。
上記賦型ローラーとしては、表面に所望の凹凸形状が形成されており、かつ、所望の耐熱性を有するものであれば特に限定されない。このような賦型ローラーとしては、表面が金属材料からなるもの、および、表面が樹脂材料からなるもの等を用いることができる。
なかでも本工程においては、表面が金属材料からなるものを用いることが好ましい。表面が金属材料からなることにより、本工程において樹脂シートの表面に凹凸形状を形成する際に、上記樹脂シートが賦型ローラーの表面に接着することを防止できるからである。また、金属材料は耐熱性に優れているからである。
上記賦型ローラーの表面に用いられる金属材料としては、例えば、鉄系材料、アルミ系材料、クロムめっき、鋼等を挙げることができる。
また、本工程に用いられる賦型ローラーは、表面を構成する材料と、内部を構成する材料とが同一材料であるものであっても良く、または、異なる材料であるものであっても良い。
本工程に用いられる賦型ローラーの表面に形成されている凹凸形状としては、本工程において樹脂シートの表面に所望の凹凸形状を転写できる形状であれば特に限定されない。このような凹凸形状の例としては、例えば、ピラミッド型(四角錐)、格子型(台形)、ロトフロー(隣接するセル壁間に溝が彫られている)ピラミッド型、ロトフロー格子型等を挙げることができる。
(2)加圧ローラー
次に、本工程に用いられる加圧ローラーについて説明する。本工程に用いられる加圧ローラーは、表面温度(Tp)が上記賦型ローラーの表面温度(Te)よりも低いものであり、本工程において樹脂シートを、上記賦型ローラーの表面に押し付ける機能と、本工程において上記樹脂シートを冷却する機能とを有するものである。
本工程に用いられる加圧ローラーの表面温度(Tp)としては、上記賦型ローラーの表面温度(Te)よりも低く、かつ、上述した賦型ローラーの表面温度(Te)に応じて、温度差(Te−Tp)を本発明で規定する範囲内にすることができる範囲であれば特に限定されるものではない。なかでも、本工程においては5℃〜70℃の範囲内であることが好ましく、特に35℃〜65℃の範囲内であることが好ましく、さらには40℃〜55℃の範囲内であることが好ましい。加圧ローラーの表面温度(Tp)が上記範囲よりも低いと、本工程により凹凸形状が形成される樹脂シートの表面温度が低くなりすぎてしまい、本工程においてムラの少ない凹凸形状を形成することが困難となる可能性があるからである。また、表面温度(Tp)が上記範囲よりも高い、本工程により凹凸形状が形成される樹脂シートの表面温度が高くなりすぎてしまい、本工程において凹凸形状を形成する際に、上記樹脂シートが賦型ローラーの表面に接着しやすくなる場合があるからである。
本工程において加圧ローラーの表面温度(Tp)を制御する方法としては、所望の温度に均一に制御できる方法であれば特に限定されるものでない。このような方法としては、上記「(1)賦型ローラー」の項に記載した方法と同様であるため、ここでの説明は省略する。
上記加圧ローラーとしては、表面が、本工程において上記樹脂シートを、上記ローラーの表面に均一に押し付けることができる材料からなるものであり、かつ、所望の耐熱性を有するものであれば特に限定されない。本工程においては、このような加圧ローラーとして、表面が金属材料からなるもの、または、表面が樹脂材料からなるものを好適に用いることができる。
特に、上記樹脂シートの厚みが厚い場合、より具体的には厚みが500μm程度以上である場合においては、上記加圧ローラーとして表面が金属材料からなるものを用いることが好ましい。樹脂材料は金属材料と比較して熱伝導性が劣るため、シートの膜厚が厚い場合に表面が樹脂材料からなる加圧ローラーを用いると、放熱性が不足し、本工程において加圧ローラーにシートが巻きつくという問題が発生する可能性があるが、金属材料であればそのような問題が少ないからである。また、厚みが大きい樹脂シートは、それ自体に弾力性を備えるため、表面が金属材料からなる加圧ローラーを用いた場合であっても均一な圧力で上記賦型ローラーに押し付けることが可能だからである。
上記加圧ローラーとして表面が樹脂材料からなるものを用いる場合、上記樹脂材料としては、本工程において上記樹脂シートを上記賦型ローラーに均一に押し付けることが可能な材料であれば特に限定されるものではないが、特に弾性材料を用いることが好ましい。表面が弾性材料からなる加圧ローラーを用いることにより、上記樹脂シートを均一な圧力で上記賦型ローラーに押し付けることが容易になるため、本工程において上記樹脂シートの表面にムラの少ない凹凸形状を形成することが容易になるからである。
このような弾性材料としては、例えば、シリコンゴムやテフロン(登録商標)ゴム等を挙げることができる。
一方、上記加圧ローラーとして表面が金属材料からなるものを用いる場合、上記金属材料としては、例えば、鉄系材料、アルミ系材料、クロムめっき、鋼等を挙げることができる。
また、本工程に用いられる加圧ローラーは、表面を構成する材料と、内部を構成する材料とが同一材料であるものであっても良く、または、異なる材料であるものであっても良い。
(3)エンボス加工工程
本工程における上記賦型ローラーの表面温度(Te)と、上記加圧ローラーの表面温度(Tp)との温度差(Te−Tp)としては、上述した本発明で規定する範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本工程においては、上記温度差(Te−Tp)が2℃〜40℃の範囲内であることが好ましく、特に5℃〜30℃の範囲内であることが好ましく、さらには5℃〜20℃の範囲内であることが好ましい。
なお、上記温度差(Te−Tp)は、上記賦型ローラーの表面温度(Te)、または、上記加圧ローラーの表面温度(Tp)の少なくとも一方を変化させることにより上記範囲内とすることができる。
本工程は、後述する溶融押出工程により形成される樹脂シートを冷却しながら、上記樹脂シートの表面に凹凸形状を形成するものである。したがって、本工程を実施するタイミングとしては、上記樹脂シートの表面温度が、上記賦型ローラーの表面温度(Te)よりも高いタイミングであれば特に限定されるものではなく、本工程により上記樹脂シートの表面に形成する凹凸形状等の種類に応じて、上記樹脂シートの表面温度が所望の範囲内であるタイミングで実施することができる。
2.溶融押出工程
次に、本工程に用いられる溶融押出工程について説明する。本工程は、熱可塑性樹脂を含む充填材形成用組成物を溶融押出成型することにより樹脂シートを形成する工程である。また、本工程により形成される樹脂シートは、上述したエンボス加工工程により表面に凹凸形状が形成されるものである。
以下、このような溶融押出工程について詳細に説明する。
(1)充填材形成用組成物
まず、本工程に用いられる充填材形成用組成物について説明する。上記充填材形成用組成物は、熱可塑性樹脂を含むものであり、必要に応じて他の化合物が含まれるものである。
上記熱可塑性樹脂としては、溶融押出成型法によりシート状に加工できるものであれば特に限定されるものではない。なかでも本工程に用いられる上記熱可塑性樹脂は、融点が50℃〜200℃の範囲内であるものが好ましく、特に60℃〜180℃の範囲内であるものが好ましく、さらには65℃〜150℃の範囲内であるものが好ましい。融点がこのような範囲内であることにより、本工程において充填材形成用組成物から樹脂シートを形成することがより容易になるからである。
本工程に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、フッ素系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、シラン変性樹脂、エチレンーアクリル酸、または、メタクリル酸共重合体、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等を挙げることができる。本工程においては、このような熱可塑性樹脂のいずれであっても好適に用いることができるが、なかでも本工程においてはシラン変性樹脂を用いることが好ましい。シラン変性樹脂を用いることにより、本発明により製造される太陽電池モジュール用充填材シートを、他部材との接着性に優れたものにできるからである。
上記シラン変性樹脂としては、190℃でのメルトマスフローレートが0.5g/10分〜10g/10分であるものが好ましく、1g/10分〜8g/10分であるものがより好ましい。このようなシラン変性樹脂を用いることにより、本工程における樹脂シートの成形性を向上することができるからである。
また、本工程においては、上記シラン変性樹脂としてポリオレフィン化合物とエチレン性不飽和シラン化合物との共重合体を用いることが好ましい。このようなシラン変性樹脂はポリオレフィン化合物またはエチレン性不飽和シラン化合物の種類を随時変更することにより、充填材形成用組成物の諸物性を調整することが容易になるからである。
なお、上記共重合体は、シラノール触媒による架橋をしていてもしていなくてもどちらでもよい。
本工程に用いられる上記共重合体としては、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、および、グラフト共重合体のいずれであっても好適に用いることができるが、なかでもグラフト共重合体を用いることが好ましく、さらには、ポリエチレンを主鎖とし、エチレン性不飽和シラン化合物が側鎖として重合されたグラフト共重合体が好ましい。このようなグラフト共重合体は、接着力に寄与するシラノール基の自由度が高くなるため、本発明により製造される太陽電池モジュール用充填材シートの接着力をより強固にすることができるからである。
上記ポリオレフィン化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン等の炭素数2〜8程度のα-オレフィンの単独重合体、それらのα-オレフィンとエチレン、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン等の炭素数2〜20程度の他のα-オレフィンや、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等との共重合体等を上げることができる。より具体的には、例えば、低・中・高密度ポリエチレン等(分岐状又は直鎖状)のエチレン単独重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体等のエチレン系樹脂、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体等のプロピレン系樹脂、及び、1-ブテン単独重合体、1-ブテン-エチレン共重合体、1-ブテン-プロピレン共重合体等の1-ブテン系樹脂等が挙げることができる。なかでも本工程においてはポリエチレン系樹脂(以下、重合用ポリエチレンと称する。)を用いることが好ましい。
このような重合用ポリエチレンとしては、ポリエチレン系のポリマーであれば特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、極超低密度ポリエチレン、または直鎖状低密度ポリエチレン等のいずれであっても好適に用いることができる。なかでも本工程においては、上記ポリエチレン系ポリマーの中でも密度が低いものを用いることが好ましい。密度が低いポリエチレン系ポリマーは、一般的に側鎖を多く含有しているため、グラフト重合に好適に用いることができるからである。より具体的には、密度が0.850g/cm〜0.960g/cmの範囲内であるものが好ましく、特に0.865g/cm〜0.930g/cmの範囲内であるものが好ましい。密度が上記範囲よりも高いとグラフト重合が不十分になり、本発明により製造される太陽電池モジュール用充填材シートに所望の接着力を付与することができない場合があるからである。また、密度が上記範囲よりも低いと、本発明により製造される太陽電池モジュール用充填材シートの機械強度が損なわれる可能性があるからである。
なお、本工程においては、上記ポリエチレン系ポリマーとして、1種類を単体として用いても良く、また、2種類以上を混合して用いても良い。
上記エチレン性不飽和シラン化合物としては、上記ポリオレフィン化合物と重合して、シラン変性樹脂を形成できるものであれば特に限定されない。このようなエチレン性不飽和シラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリオペンチロキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリベンジルオキシシラン、ビニルトリメチレンジオキシシラン、ビニルトリエチレンジオキシシラン、ビニルプロピオニルオキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、および、ビニルトリカルボキシシラン等を挙げることができる。
上記エチレン性不飽和シラン化合物とのグラフト共重合体の製造方法としては、所望の収率を得ることができる方法であれば特に限定されることなく、公知の重合手段により製造することができる。
なお、本工程に用いられる充填材形成用組成物には、上記熱可塑性樹脂が1種類のみ用いられていても良く、または、2種類以上が混合されて用いられていても良い。
本工程に用いられる充填材形成用組成物には、上記熱可塑性以外に他の化合物が含まれていても良い。なかでも本工程においては、このような他の化合物としてポリオレフィン化合物が含まれていることが好ましい。また、上記熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン化合物とエチレン性不飽和シラン化合物との共重合体を用いる場合には、このような他の化合物として、上記共重合体に用いられるポリオレフィン化合物を用いることが好ましく、さらには、ポリエチレンを用いることが好ましい。
上記充填材形成用組成物にポリオレフィン化合物が含まれる場合の含有量は、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.01重量部〜9900重量部の範囲内であること好ましく、特に0.1重量部〜2000重量部の範囲内であることがより好ましい。添加用ポリオレフィン化合物の含有量が上記範囲よりも少ないと、本発明により太陽電池モジュール用充填材シートを製造する際に、コスト面において不利となってしまう場合があり、また上記範囲よりも多いと、本発明より製造される太陽電池モジュール用充填材シートの接着力が不十分となる可能性があるからである。
また、上記他の化合物としては上記ポリオレフィン化合物以外に、例えば、架橋剤、分散剤、レベリング剤、可塑剤、消泡剤光安定化剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、熱安定剤および酸化防止剤等を挙げることができる。
(2)樹脂シートの製造方法
本工程において、上記充填材形成用組成物を溶融押出することによって、樹脂シートを形成する方法としては、所望の厚みの樹脂シートを形成できる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、(共)押出成形法,インフレーション成形法,射出成形法,熱プレス成形法,カレンダー成形法等を挙げることができる。
(3)樹脂シート
本工程において形成される樹脂シートの厚みとしては、本発明により製造される太陽電池モジュール用充填材シートを用いて太陽電池モジュールを作製する際に、太陽電池素子を被覆できる範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本工程においては50μm〜2000μmの範囲内であることが好ましく、特に10μm〜200μmの範囲内であることが好ましい。厚みが上記範囲よりも薄いと、本発明により製造される太陽電池モジュール用充填材シートに所望の接着力を付与できない場合があり、また厚みが上記範囲よりも厚いと太陽電池モジュールを作製する際に、過剰な加熱が必要となり、太陽電池モジュールを構成する他の部材への熱ダメージが大きくなる場合があるからである。
また本工程において、上記熱可塑性樹脂としてシラン変性樹脂を用いる場合、本工程により形成される樹脂シート中のSi(珪素)含有量は8ppm〜3500ppmの範囲内であることが好ましく、なかでも10ppm〜3000ppmの範囲内であることが好ましく、特に50ppm〜2000ppmの範囲内であることが好ましい。Si量が上記範囲よりも少ないと、本発明により製造される太陽電池モジュール用充填材シートの接着力が不十分になり、密着性の経時安定性に優れた太陽電池モジュールを作製することができない恐れがあるからである。また、Si量が上記範囲よりも多いとコスト面において不利となる場合があるからである。
ここで、上記重合Si量は、上記樹脂シートの灰分をアルカリ融解して純水に溶解後定容し、高周波プラズマ発光分析装置((株)島津製作所製 ICPS8100)を用いてICP発光分析法により重合Si量の定量を行うことにより測定した値とする。
3.太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法
本発明の太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法は、上記エンボス加工工程と、上記溶融押出工程とを有するものであるが、本発明は上記エンボス加工工程を複数有するものであっても良い。上記エンボス加工工程が複数用いられていることにより、本発明によって両面に凹凸形状が形成された太陽電池モジュール用充填材シートを製造することが可能になるからである。
また、本発明の太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法には、上記エンボス加工工程、および、上記溶融押出工程以外の他の工程が用いられていても良い。このような他の工程としては、例えば、太陽電池モジュール用充填材シートを所望のサイズに裁断する裁断工程、太陽電池モジュール用充填材シートに端子ボックス取り付け用の貫通孔を形成する貫通孔形成工程等を挙げることができる。
4.太陽電池モジュール用充填材シート
本発明により製造される太陽電池モジュール用充填材シートは、少なくとも片面に凹凸形状が形成されたものである。
本工程において製造される太陽電池モジュール用充填材シートは、片面のみに凹凸形状が形成されたものであっても良く、または、両面に凹凸形状が形成されたものであっても良いが、両面に凹凸形状が形成されたものであることが好ましい。両面に凹凸形状が形成されていることにより、本発明により製造される太陽電池モジュール用充填材シートを用いて太陽電池モジュールを製造する際に、両面において空気が封入されることを防止できるからである。
なお本発明においては、上述したように上記エンボス加工工程を2以上用いることにより、両面に凹凸形状が形成された太陽電池モジュール用充填材シートを製造することができる。
また、本発明によって両面に凹凸形状が形成された太陽電池モジュール用充填材シートを製造する場合、両面に形成される凹凸形状の形態は同一の形態であっても良く、または、異なる形態であっても良い。
本発明により製造される太陽電池モジュール用充填材シートに付与される凹凸形状は、凹凸形状の最大深さが、本発明により製造される太陽電池モジュール用充填材シートの厚みよりも小さいものであれば特に限定されるものではなく、本発明により製造される太陽電池モジュール用充填材シートの用途等に応じて任意に決定することができる。なかでも本発明においては上記凹凸形状の最大深さが200μm〜3μmの範囲内であることが好ましく、特に50μm〜3μmの範囲内であることが好ましく、さらには、30μm〜5μmの範囲内であることが好ましい。
ここで、上記最大深さは、表面粗さ形状測定器(商品名 HANDY SURF E−35A:東精エンジニアリング社製)を用い、当該表面粗さ形状測定器を本発明により製造される太陽電池モジュール用充填材シートの表面に水平に配置して測定することにより求めることができる。
また、上記凹凸形状の平均間隔は、1000μm〜2μmの範囲内であることが好ましく、特に800μm〜50μmの範囲内であることが好ましく、さらには500μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
ここで、上記平均間隔は、JIS B0601における輪郭曲線要素の平均長さを意味し、表面粗さ形状測定器(商品名 HANDY SURF E−35A:東精エンジニアリング社製)を用い、当該表面粗さ形状測定器を本発明により製造される太陽電池モジュール用充填材シートの表面に水平に配置して測定することにより求めた表面のプロファイルから、JIS B0601に準じて求めることができる。
本発明により製造される太陽電池モジュール用充填材シートのゲル分率は、太陽電池モジュールを作製した後に熱溶融性や溶媒溶解性を損なわない範囲内であれば特に限定されない。なかでも、本発明においては、上記ゲル分率が、30%以下であることが好ましく、特に10%以下であることが好ましく、さらには0%であることが好ましい。ゲル分率が上記範囲よりも高いと、本発明により製造される太陽電池モジュール用充填材シートを用いて太陽電池モジュールを作製した際に、充填材層の熱溶融性や溶媒溶解性が不十分となるため、充分なリサイクル性が得られない可能性があるからである。
なお、上記ゲル分率は、(1)上記太陽電池モジュール用充填材シートを1g秤量し、80メッシュの金網袋に入れる(2)ソックスレー抽出器内に金網ごとサンプル投入し、キシレンを沸点下において還流させる(3)10時間連続抽出したのち、金網ごとサンプルごと取出し乾燥処理後秤量し、抽出前後の重量比較を行い残留不溶分の質量%を測定する、ことにより得られた値とする。
また、本発明により製造される太陽電池モジュール用充填材シートの密度は、0.890g/cm〜0.935g/cmの範囲内であることが好ましく、なかでも0.890g/cm〜0.930g/cmの範囲内であることが好ましく、特に0.890g/cm〜0.920g/cmの範囲内であることが好ましい。
なお、上記密度は、JIS K 7112に規定の密度勾配管法により測定した値とする。具体的には、比重の異なる液体を入れた試験管の中へサンプルを投入し、止まった位置を読み取ることにより密度を測定した値とする。
さらに、本発明により製造される太陽電池モジュール用充填材シートは、全光線透過率が、70%〜100%の範囲内であることが好ましく、なかでも80%〜100%の範囲内であることが好ましく、特に90%〜100%の範囲内であることが好ましい。上記全光透過率が、上記範囲内であることにより本発明により製造される太陽電池モジュール用充填材シートを用いて製造された太陽電池モジュールの発電効率が損なわれることを防止できるからである。
なお、上記全光線透過率は、通常の方法により測定することができ、例えばカラーコンピュータにより測定することができる。
B.太陽電池モジュールの製造方法
次に、本発明の太陽電池モジュールの製造方法について説明する。本発明の太陽電池モジュールの製造方法は、前面透明基板、前面充填材シート、太陽電池素子、裏面充填材シート、および、裏面保護シートをこの順で積層した後、これらを加熱圧着することにより太陽電池モジュールを製造する方法であって、上記前面充填材シート、または、上記裏面充填材シートの少なくとも一方が上記本発明の太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法により製造された太陽電池モジュール用充填材シートであることを特徴とするものである。
このような本発明の太陽電池モジュールの製造方法について図を参照しながら説明する。図2は、本発明の太陽電池モジュールの製造方法の一例を示す概略図である。図2に例示するように、本発明の太陽電池モジュールの製造方法は、前面透明基板11、前面充填材シート12、太陽電池素子13、裏面充填材シート14、および、裏面保護シート15をこの順で積層した後、これらを加熱圧着することにより(図2(a))、上記各部材が密着してなる太陽電池モジュール10を製造するものである(図2(b))。
このような例において、本発明の太陽電池モジュールの製造方法は、上記前面充填材シート12または上記裏面充填材シート14の少なくとも一方に上記本発明の太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法により製造された太陽電池モジュール用充填材シートを用いることを特徴とするものである。
本発明によれば、上記前面充填材シート、または、上記裏面充填材シートの少なくとも一方が、上記本発明の太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法により製造された太陽電池モジュール用充填材シートであることにより、上記加熱圧着時に上記太陽電池モジュール用充填材シートと他の部材との界面に存在する空気を、上記太陽電池モジュール用充填材シートの表面に形成された凹凸形状の隙間から排除することができる。
したがって、本発明によれば内部に空気が封入されることにより性能の低下が生じることが少ない太陽電池モジュールを製造することができる。
以下、このような太陽電池モジュールの製造方法について説明する。
1.前面充填材シートおよび裏面充填材シート
まず、本発明に用いられる前面充填材シートおよび裏面充填材シートについて説明する。本発明に用いられる前面充填材シートおよび裏面充填材シートは、少なくとも一方に上記本発明の太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法によって製造された太陽電池モジュール用充填材シート(以下、単に「本発明の充填材シート」と称する場合がある。)が用いられるものである。
本発明に用いられる上記本発明の充填材シートは、少なくとも片面に凹凸形状が形成されたものであるが、なかでも本発明においては両面に凹凸形状が形成されたものを用いることが好ましい。これによって、本発明の太陽電池モジュールの製造方法により太陽電池モジュールを製造する際に、前面充填材シートおよび裏面充填材シートの両方において空気が封入されることを防止できるからである。
本発明においては、上記前面充填材シートまたは上記裏面充填材シートのいずれか一方のみに本発明の充填材シートが用いられていても良く、または、両方に本発明の充填材シートが用いられていても良いが、なかでも本発明においては上記前面充填材シートおよび上記裏面充填材シートの両方に本発明の充填材シートが用いられていることが好ましい。これによって、本発明の太陽電池モジュールの製造方法により太陽電池モジュールを製造する際に上記前面充填材シートおよび裏面充填材シートの両方において、その界面に空気が封入されることを防止できるからである。
本発明において、上記前面充填材シートおよび上記裏面充填材シートの両方に本発明の充填材シートを用いる場合、上記前面充填材シートおよび上記裏面充填材シートとして用いられる本発明の充填材シートは、同一の充填材シートであっても良く、または、異なる充填材シートであっても良い。
上記前面充填材シートおよび上記裏面充填材シートとして異なる充填材シートを用いる態様としては、本発明により製造される太陽電池モジュールの用途等に応じて任意の態様とすることができる。このような態様としては、例えば、同一材料からなり表面の凹凸形状の形態が異なる態様や、表面の凹凸形状の形態が同一であり、構成材料が異なる態様等を例示することができる。
なかでも、本発明においては生産効率の面から上記前面充填材シートおよび上記裏面充填材シートとして同一の充填材シートを用いることが好ましい。
本発明に用いられる充填材シートについては、上記「A.太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法」の項において記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
なお、本発明において上記前面充填材シートまたは上記裏面充填材シートの片方のみに、本発明の充填材シートを用いる場合、他方に用いられる充填材シートは特に限定されるものではなく、一般的に太陽電池モジュールに用いられている充填材シートを用いることができる。
2.透明前面基板
本発明に用いられる透明前面基板としては、太陽光の透過性を有する基板であれば特に限定されず、例えば、ガラス板、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂(各種のナイロン)、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカ−ボネ−ト系樹脂、アセタ−ル系樹脂、セルロ−ス系樹脂等の各種の樹脂フィルムを用いることができる。
また、本発明に用いられる透明前面基板の厚みは、所望の強度を実現できる範囲内であれば特に限定されないが、樹脂フィルムの場合は12μm〜200μmの範囲内が好ましく、特に25μm〜150μmの範囲内が好ましく、ガラス板の場合は、0.5〜5mmの範囲が好ましい。
3.太陽電池素子
本発明に用いられる太陽電池素子としては、特に限定されず一般的な太陽電池素子を用いることができる。具体的には、単結晶シリコン型太陽電池素子、多結晶シリコン型太陽電池素子等の結晶シリコン太陽電子素子、シングル接合型あるいはタンデム構造型等からなるアモルファスシリコン太陽電池素子、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電子素子、カドミウムテルル(CdTe)や銅インジウムセレナイド(CuInSe )等のII−VI族化合物半導体太陽電子素子、有機太陽電池素子等を用いることができる。
また本発明に用いられる太陽電池素子としては、薄膜多結晶性シリコン太陽電池素子、薄膜微結晶性シリコン太陽電池素子、薄膜結晶シリコン太陽電池素子とアモルファスシリコン太陽電池素子とのハイブリット素子等も使用することができる。
4.裏面保護シート
本発明に用いられる裏面保護シートとしては、所望の耐熱性、耐光性、耐水性等の耐候性を有する下のであれば特に限定されない。このような裏面保護シートとしては、例えば、絶縁性の樹脂フィルムや、金属板等が好適に用いられる。なかでも本発明においては上記絶縁性の樹脂フィルムを用いることが好ましい。
上記樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリルル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカ−ボネ−ト系樹脂、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリ−ルフタレ−ト系樹脂、シリコ−ン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエ−テルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタ−ル系樹脂、セルロ−ス系樹脂からなるフィルムを挙げることができる。なかでも本発明においては、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリカ−ボネ−ト系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、または、ポリエステル系樹脂からなるフィルムを用いることが好ましい。
また、このような樹脂フィルムとしては2軸延伸した樹脂フィルムを用いることもできる。
さらに、上記樹脂フィルムとしては、複数のフィルムが積層された構成を有するものであっても良い。このような複数のフィルムが積層された構成としては、例えば、無機蒸着膜を有するガスバリア性フィルムが積層された構成や、強靭性フィルムが積層された構成を例示することができる。
本発明に用いられる裏面保護シートの厚みとしては、通常、12μm〜200μmの範囲内であることが好ましく、なかでも25μm〜150μmの範囲内であることが好ましい。
5.その他
本発明の太陽電池モジュールにおいては、太陽光の吸収性、補強、その他等の目的のもとに、さらに、他の層を任意に加えて積層することができるものである。このような他の層としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマ−樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸共重合体、メチルペンテンポリマ−、ポリブテン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアクリルニトリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS系樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS系樹脂)、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカ−ボネ−ト系樹脂、ポリビニルアルコ−ル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、フッ素系樹脂、ジエン系樹脂、ポリアセタ−ル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ニトロセルロ−ス等の公知の樹脂のフィルムから任意に選択して使用することができる。
6.太陽電池モジュールの製造方法
本発明において前面透明基板、前面充填材シート、太陽電池素子、裏面充填材シート、および、裏面保護シートをこの順で積層した後、これらを加熱圧着する方法としては、上記各構成を密着できる方法であれば特に限定されず、一般的に公知の方法を用いることができる。このような方法としては、例えば、前面透明基板、前面充填材シート、太陽電池素子、裏面充填材シート、および、裏面保護シートをこの順で積層した後、これらを一体として、真空吸引して加熱圧着するラミネーション法等を例示することができる。
上記ラミネーション法を用いた際のラミネート温度は、通常、90℃〜230℃の範囲内であることが好ましく、特に110℃〜190℃の範囲内であることが好ましい。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、実施例を用いることにより、本発明をより具体的に説明する。
1.実施例
(1)溶融押出工程
(シラン変性樹脂の調製)
密度0.898g/cmのメタロセン直鎖状低密度ポリエチレン100重量部に対し、ビニルトリメトキシシラン2.5重量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.1重量部とを混合し、200℃で溶融、混練し、シラン変性樹脂を得た。
(マスターバッチの調製)
密度0.935g/cmのチーグラー直鎖状低密度ポリエチレンを粉砕したパウダー100重量部に対して、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤3.75重量部と、ヒンダードアミン系光安定化剤5重量部と、リン系熱安定化剤0.5重量部とを混合して溶融、加工し、ペレット化したマスターバッチを得た。
(樹脂シートの作製)
上記シラン変性樹脂20重量部に対して、上記マスターバッチ5重量部と、添加用ポリエチレンとしての密度0.900g/cmのメタロセン直鎖状低密度ポリエチレン80重量部とをタンブラーミキサーでドライブレンドした。このドライブレンド物をTダイ押し出し成型機(モダンマシンナリー社製、単軸、口径φ120mm、ダブルフライトタイプスクリュー、ストレートマニホールドタイプ)に供給し、ダイ設定温度230℃、スクリュー回転数30rpmで押出成型することにより樹脂シートを作製した。
(2)エンボス加工工程
上記樹脂シートをダイヤ格子が表面に刻設された賦型ローラーと、当該賦型ローラーと対になる鉄製の加圧ローラーを用い、上記加圧ローラーで上記賦型ローラーの表面に上記樹脂シートを押し付けることにより、深さ平均30μm、最大深さ60μm、最小深さ10μmの王凸形状が片面に形成された、厚み600μmの太陽電池モジュール用充填材シートを作製した。このとき、賦型ローラーの表面温度は50℃、加圧ローラーの表面温度は40℃、引き取り速度は3m/minとした。
(3)太陽電池モジュールの作製
前面充填材シートおよび裏面充填材シートとして、上記により作製した太陽電池モジュール用充填材シートを用い、また、厚み3mmのガラス板(透明前面基板)と、前面用充填材シートと、多結晶シリコンからなる太陽電池素子と、裏面充填材シートと、厚み38μmのポリフッ化ビニル系樹脂シート(PVF)、厚み30μmのポリエチレンテレフタレートシートおよび厚み38μmのポリフッ化ビニル系樹脂シート(PVF)からなる積層シート(裏面保護シート)とをこの順に積層し、太陽電池素子面を上に向けて、太陽電池モジュールの製造用の真空ラミネータにて150℃で15分間圧着して、太陽電池モジュールを作製した。
2.実施例2
溶融押出工程におけるスクリュー回転数を20rpmに設定したこと、および、上記エンボス加工工程に用いられる加圧ローラーとしてテフロン(登録商標)ゴムで被覆されているローラー用いたこと以外は実施例1と同様の方法で厚み400μm太陽電池モジュール用充填材シートを作製した。
3.実施例3
エンボス加工工程に用いられる賦型ローラーの表面温度を30℃、加圧ローラーの表面温度を28℃としたこと以外は実施例1と同様の方法により厚み600μmの太陽電池モジュール用充填材シートを作製した。
4.実施例4
エンボス加工工程に用いられる賦型ローラーの表面温度を70℃、加圧ローラーの表面温度を65℃としたこと以外は実施例1と同様の方法により厚み600μmの太陽電池モジュール用充填材シートを作製した。
5.実施例5
エンボス加工工程における引き取り速度を10m/minとしたこと以外は実施例2と同様の方法により厚み100μmの太陽電池モジュール用充填材シートを作製した。
6.実施例6
溶融押出工程におけるスクリュー回転数を40rpmとしたこと以外は実施例1と同様の方法で厚み1000μmの太陽電池モジュール用充填材シートを作製した。
7.実施例7
エンボス加工工程に用いられる賦型ローラーの表面温度を65℃、加圧ローラーの表面温度を25℃としたこと以外は、実施例1と同様の方法により厚み600μmの太陽電池モジュール用充填材シートを作製した。
8.比較例1
エンボス加工工程において上記賦型ローラーの替わりに表面に凹凸形状が形成されていない鏡面ローラーを使用した以外は実施例1と同様の方法で厚み600μmの太陽電池モジュール用充填材シートを作製した。
9.比較例2
エンボス加工工程における賦型ローラーの表面温度を15℃、加圧ローラーの表面温度を15℃としたこと以外は実施例1と同様の方法により厚み600μmの太陽電池モジュール用充填材シートを作製し、これを用いて実施例1と同様の方法により太陽電池モジュールを作製した。
10.比較例3
エンボス加工工程における賦型ローラーの表面温度を80℃、加圧ローラーの表面温度を80℃としたこと以外は実施例1と同様の方法で厚み600μmの太陽電池モジュール用充填材シートを作製することを試みた。しかしながら、賦型ローラー、又は加圧ローラーへの巻き付きが数回にわたり発生し、安定して作製することはできなかった。このため、本比較例においては太陽電池モジュールを作製することができなかった。
11.比較例4
エンボス加工工程における賦型ローラーの表面温度を70℃、加圧ローラーの表面温度を20℃としたこと以外は実施例1と同様の方法で厚み600μmの太陽電池モジュール用充填材シートを作製することを試みた。しかしながら、横じわが数回にわたり発生し、安定して作製することはできなかった。このため、本比較例においては太陽電池モジュールを作製することができなかった。
12.まとめ
上記実施例および比較例における太陽電池モジュール用充填材シートの作製条件をまとめたものを表1に示す。
Figure 0005176279
13.評価
(1)ブロッキング
上記実施例および比較例において作製した幅1mの太陽電池モジュール用充填材シート100mを3インチ紙管に張力10kgf、テーパー0.21、テーパー開始径260mmで巻き取り、60℃の環境下に1ヶ月保存し、巻内面と巻外面が接着している部分があるかどうかを目視で評価した。巻内面と巻外面が接着している部分があった場合、ブロッキングありと判定した。
(2)収縮性
上記実施例および比較例において作製した太陽電池モジュール用充填材シートを離型フィルムとしてのETFEフィルム上に凹凸形状が形成された面を下にして載せ、150℃、30分間後の流れ方向および幅方向の加熱収縮率を測定した。
(3)モジュールの泡噛み
上記実施例および比較例において作製した太陽電池モジュールを透明前面基板側から目視観察することにより、空気泡があるかどうかを評価した。空気泡があった場合、泡噛みありと判定した。
上記評価結果を表2に示す。
Figure 0005176279
本発明の太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法の一例を示す概略図である。 本発明の太陽電池モジュールの製造方法の一例を示す概略図である。
符号の説明
1 … 樹脂シート
1’ … 充填材形成用組成物
2 … 賦型ローラー
3 … 加圧ローラー
10 … 太陽電池モジュール
11 … 前面透明基板
12 … 前面充填材シート
13 … 太陽電池素子
14 … 裏面充填材シート
15 … 裏面保護シート
A … 押出ダイ

Claims (5)

  1. 熱可塑性樹脂を含む充填材形成用組成物を溶融押出成型することにより樹脂シートを形成する溶融押出工程と
    表面に凹凸形状を有する賦型ローラーおよび前記賦型ローラーよりも表面温度が低い加圧ローラーを用い、前記溶融押出工程により製造された樹脂シートを前記賦型ローラーの表面に前記加圧ローラーで押し付けることにより、前記樹脂シートの表面に凹凸形状を形成するエンボス加工工程と、を有する太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法であって、
    前記賦型ローラーの表面温度(Te)と、前記加圧ローラーの表面温度(Tp)との温度差(Te−Tp)が2℃〜40℃の範囲内であり、
    前記熱可塑性樹脂が、エチレン性不飽和シラン化合物と重合用ポリエチレンとを重合させてなるシラン変性樹脂であることを特徴とする、太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法。
  2. 前記賦型ローラーの表面温度(Te)が30℃〜75℃の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法。
  3. 前記賦型ローラーの表面が金属材料からなることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法。
  4. 前記加圧ローラーの表面が弾性材料または金属材料からなることを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法。
  5. 前面透明基板、前面充填材シート、太陽電池素子、裏面充填材シート、および、裏面保護シートをこの順で積層した後、これらを加熱圧着することにより太陽電池モジュールを製造する太陽電池モジュールの製造方法であって、
    前記前面充填材シート、または、前記裏面充填材シートの少なくとも一方が請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法により製造された太陽電池モジュール用充填材シートであることを特徴とする、太陽電池モジュールの製造方法。
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