JP5175892B2 - 超電導磁石装置 - Google Patents

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Description

本発明は、高温超電導コイルを極低温冷凍機により伝導冷却する方式の高温超電導磁石装置に関する。
近年、高温超電導テープ線材は、その特性の向上、長尺化、および量産化が飛躍的に進んでおり、各種機器への応用が期待されている。例えばシリコン単結晶引上げ用マグネットや磁気浮上式鉄道などの機器に、高温超電導テープ線材を用いた超電導コイルを適用するメリットは大きいと予想される。また、超電導コイルを超電導状態に保つための冷却手段としては、液体ヘリウム等の極低温の冷媒に浸漬するのではなく、真空容器に収納して極低温冷凍機により伝導冷却する方式が採られ始めている。
金属系超電導コイルを使用する場合のみならず、臨界温度が比較的高い酸化物超電導コイルを使用する場合にも、真空容器側からの輻射を遮蔽するためにシールド板を設ける。シールド板と超電導コイルとの間隙は、特許文献1,2,3に示されるように真空空間である。超電導コイルへの熱負荷を減らすためには、シールド板を貫通させて断面積の小さい繊細な構造のコイル支持部材を使って超電導コイルを固定し、シールド板の位置で熱アンカーをとらなければなければならないため、機械強度は弱く、また、コイル支持部材は繊細な構造であるために製作に時間や費用がかかる。
また、高温超電導コイルを冷凍機で伝導冷却する装置が特許文献4に開示されている。この装置において室温からの輻射や電流リードからの熱侵入を低減するためには、シールド板を設け、二段冷凍機を用いてシールド板を一段部で冷やす必要がある。超電導コイルには高温超電導線材を使用しているものの、やはり上述したような問題は回避できない。
特許第2756551号公報 特許第4095742号公報 特許第3486868号公報 特許第3082397号公報
前述したように、超電導コイルを冷凍機により伝導冷却する方式の超電導磁石装置では、一般に到達温度が4K程度以下となる二段冷凍機を使うが、この二段冷凍機では熱負荷の変化により冷凍能力が大きく影響されて長期運転時の信頼性に問題があるとともに、極低温部の熱負荷低減の必要性から繊細な支持構造が用いられて、機械強度が弱く、製作においても時間や費用がかかる。また、到達温度は20K程度であるが数倍の効率が得られ冷凍能力の高い単段冷凍機により超電導コイルを冷却しようとすると、電流リードや支持材からの熱伝導、輻射など、超電導コイルへの熱負荷が増加し、巻線内部で温度差が生じてしまう。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、支持構造が簡略で信頼性が高く、低コスト化を実現する超電導磁石装置を提供することを目的とする。
本発明の一態様による超電導磁石装置は、真空容器に収納した超電導コイルを冷凍機により伝導冷却する超電導磁石装置において、前記冷凍機の冷却ステージと前記超電導コイルとを熱的に接続する熱伝導材と、前記超電導コイルの周囲に設けられる輻射遮蔽層と、前記超電導コイルをその表面の一部分で接触して支持しており、その支持部が前記超電導コイルの経験磁場の最も高い部分を避けて接触しているコイル支持体とを具備することを特徴とする。
本発明によれば、支持構造が簡略で信頼性が高く、低コスト化を実現する超電導磁石装置を提供することができる。
本発明の第1の実施形態に係る超電導磁石装置の構成の一例を示す概略縦断面図。 本発明の第2の実施形態に係る超電導磁石装置の構成の一例を示す概略縦断面図。 本発明の第3の実施形態に係る超電導磁石装置の構成の一例を示す概略縦断面図。 本発明の第4の実施形態に係る超電導磁石装置の構成の一例を示す概略縦断面図。 本発明の第5の実施形態に係る超電導磁石装置の構成の一例を示す概略縦断面図。 図2乃至図5に示した超電導磁石装置中の、超電導コイル、高熱伝導材、コイル支持体、および輻射遮蔽層における熱伝導を、電気伝導のアナロジーで示した等価回路のモデルを示す模式図。 図6のモデルにおいて各種の条件を設定した場合の各部の温度分布を示すグラフ。 図6のモデルにおいて別の条件を設定した場合の各部の温度分布を示すグラフ。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
(第1の実施形態)
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る超電導磁石装置の構成の一例を示す概略縦断面図である。
第1の実施形態に係る超電導磁石装置は、真空容器に収納した超電導コイルを冷凍機により伝導冷却する方式を採用した高温超電導マグネットであり、主な構成要素として、超電導コイル1、二段冷凍機2、真空容器3、輻射遮蔽層4、支持部材5、電流導入端子7、およびコイル支持体9を有する。上記超電導コイル1は、高熱伝導材11を備えている。また、冷凍機2は、二段冷凍機一段部21、一段部用伝熱部材22A,22B、二段冷凍機二段部23、および二段部用伝熱部材24A,24Bを備えている。電流導入端子7は、フィーダ(電流リード)71、酸化物超電導電流リード72、およびフィーダ(電流リード)73を備えている。
なお、超電導コイル1は、円筒形状を成しており、これを中心軸に沿って切ると中心軸を挟んで2つの分離したコイル断面部分が見られるが、図1では図面が複雑になることを避けるため、片方のコイル断面部分のみを図示している(後述する図2乃至図5についても同様)。
この超電導磁石装置においては、特に、コイル支持体9により、該コイル支持体9を含めて超電導コイル1と高熱伝導材11と輻射遮蔽層4とが一体となるよう結合されている。この結合は、樹脂による接着、含浸、圧接、蒸着、ネジ止め、凹凸はめ込みのうちの少なくともいずれか1つを用いて実現されている。これにより、結合を強固なものとし、組み立てが簡易で機械的に安定したものとすることができる。
超電導コイル1は、例えばテープ形状の金属基板上に中間層を介して超電導層および良導電性安定化金属層を形成させた高温超電導テープ線材を巻回してなる高温超電導コイルである。この超電導コイル1は、二段冷凍機二段部23にて生成される極低温により高熱伝導材11を通じて冷却される。高熱伝導材11は、超電導コイル1に取り付けられており、超電導コイル1と二段部用伝熱部材24A,24Bとの間の高熱伝導を担うものである。この高熱伝導材11は、例えば純度の高い金属や窒化アルミニウムなどの熱伝導率の高い部材で構成される。
二段冷凍機2は、二段の冷却ステージを通じて極低温の寒冷を生成する冷凍機であり、例えば4K程度以下の低い到達温度を実現可能な二段4K−GM(ギフォード・マクマホン)冷凍機である。二段冷凍機一段部21は、最終段に至る途中で生成される寒冷により、一段部用伝熱部材22A,22Bを通じて、フィーダ71および輻射遮蔽層4を伝導冷却するものである。一段部用伝熱部材22A,22Bは、フィーダ71(および酸化物超電導電流リード72)と二段冷凍機一段部21との間の熱伝導、および、輻射遮蔽層4と二段冷凍機一段部21との間の熱伝導を担うものある。二段冷凍機二段部23は、最終段として生成される寒冷により、二段部用伝熱部材24A,24Bを通じて、フィーダ73(および酸化物超電導電流リード72)、および、超電導コイル1を伝導冷却するものである。二段部用伝熱部材24A,24Bは、フィーダ73(および酸化物超電導電流リード72)と二段冷凍機二段部23との間の熱伝導、および、超電導コイル1(および高熱伝導材11)と二段冷凍機二段部23との間の熱伝導を担うものである。特に、超電導コイル1(および高熱伝導材11)と二段冷凍機二段部23との間にある二段部用伝熱部材24Aを、24Bと比べて伝熱経路の断面積を大きく、あるいは経路を短く、あるいは純度の高い金属材料で構成することにより、超電導コイル1と二段冷凍機二段部23との間の冷却経路の熱抵抗が小さくなるようにしている。
真空容器3は、内部が真空の状態に保たれ、当該超電導磁石装置を構成する各種の要素を収容する容器である。
輻射遮蔽層4は、超電導コイル1を取り囲むコイル支持体9を包み込むように設けられる層であり、真空容器3側からの室温の輻射を遮蔽する。この輻射遮蔽層4は、例えば、アルミニウムあるいはアルミニウムと繊維強化プラスチックとを厚さ方向に複合してなる材料から構成され、前記アルミニウムの純度は99%以上であることが望ましい。これにより、輻射遮蔽の性能を向上させることが可能となる。この輻射遮蔽層4の外側には、MLI(多層断熱材)を施工しても良い。
支持部材5は、一端が真空容器3の一部に取り付けられると共に他端が輻射遮蔽層4(もしくはコイル支持体9)の一部に取り付けられ、超電導コイル1、高熱伝導材11、コイル支持体9、および輻射遮蔽層4が一体化したものを支持する部材である。
電流導入端子7は、電流導入用の端子である。フィーダ71,73は、端子から導入される電流を酸化物超電導電流リード72を介して超電導コイル1へ供給する電流リードである。酸化物超電導電流リード72は、特に熱侵入低減に有効な電流リードである。
コイル支持体9は、超電導コイル1と輻射遮蔽層4との間に設けられ、一定以上の大きな熱抵抗を有する断熱層としての機能だけでなく、超電導コイル1を機械的に支持する機能をも兼ね備えている。このコイル支持体9は、例えば、樹脂あるいは繊維強化プラスチックからなる材料を含んで構成されていることが望ましい。図1の例では、超電導コイル1と輻射遮蔽層4との間の空いた空間全体に、コイル支持体9が充填されている。すなわち、本実施形態のコイル支持体9は、超電導コイル1をその表面全体に接触して支持している。これにより、超電導コイル1の支持を強固なものとしている。
なお、超電導コイル1と高熱伝導材11とコイル支持体9と輻射遮蔽層4とは、樹脂等により接着するか、あるいはネジ止めにより結合されていても良い。また、輻射遮蔽層4は、板材であってもよいし、あるいは板材ではなくコイル支持体9に蒸着されたものであってもよい。これにより、超電導コイル1の支持を更に強固なものとし、振動などの外力に対する強度を増強させることができる。
このような構成において、超電導磁石装置の運転中は、超電導コイル1の交流損失や微小な抵抗(フラックスフロー抵抗)による熱が生じると共に、フィーダ71,73や酸化物超電導電流リード72からも熱が生じ、また、真空容器3側からの室温の輻射なども発生する。このとき、輻射遮蔽層4は、真空容器3側からの室温の輻射を遮蔽し、また、コイル支持体9は、真空容器3側の室温部と超電導コイル1との間の熱伝導を妨げる。この結果、輻射遮蔽層4と超電導コイル1との間で大きな温度勾配が生じる。
輻射遮蔽層4で受けた熱は、一段部用伝熱部材22Aを通じて二段冷凍機一段部21へ伝わる。また、フィーダ71(および酸化物超電導電流リード72)の熱も一段部用伝熱部材22Bを通じて二段冷凍機一段部21へ伝わる。一方、超電導コイル1から発生した熱は、高熱伝導材11および二段部用伝熱部材24Aを通じて二段冷凍機二段部23へ伝わる。このときの超電導コイル1と二段冷凍機二段部23との間の冷却経路の熱抵抗は小さい。また、フィーダ73(および酸化物超電導電流リード72)の熱も、二段部用伝熱部材24Bを通じて二段冷凍機二段部23へ伝わる。
従来であれば超電導コイル1とこの超電導コイル1を取り囲む輻射シールドとの間の空間を真空とし、超電導コイル1を支持する手段として、熱侵入を低減するために断面積の小さい繊細な構造のコイル支持部材を超電導コイル1と真空容器3とに取り付ける構成としていたが、この第1の実施形態では、そのような構成とはせず、代わりにコイル支持体9を設けることにより支持構造を簡略化するとともに超電導コイル1と輻射遮蔽層4との間の大きな温度勾配を生じさせて熱伝導を抑制し、また、二段部用伝熱部材24Aの伝熱経路の断面積を大きくあるいは経路を短く構成するなどして超電導コイル1と二段冷凍機二段部23との間の冷却経路のみ熱抵抗が小さくなるようにすることにより、超電導コイル1への熱負荷を低減し、巻線内部の温度差を低減させることができるほか、コイル支持体9を設けることにより従来のコイル支持部材よりも機械強度が増大するため、超電導コイル1を安定して支持することができ、また、従来のような繊細な構造のコイル支持部材を省くことができるため、部品コストの削減や、作業に係る工数の削減を図ることができる。
(第2の実施形態)
次に、図2を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、この第2の実施形態においては、図1に示した第1の実施形態の構成と共通する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。以下では、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
図2は、本発明の第2の実施形態に係る超電導磁石装置の構成の一例を示す概略縦断面図である。前述の第1の実施形態に係る超電導磁石装置は二段冷凍機2を備えたものであったが、この第2の実施形態に係る超電導磁石装置は代わりに単段冷凍機8を備えている。これに伴い、前述の酸化物超電導電流リード72は不要となる。単段冷凍機8は、冷却ステージ81および伝熱部材82A,82Bを備えている。
単段冷凍機8は、単段の冷却ステージにて極低温の寒冷を生成する冷凍機であり、例えば40K〜50K程度の到達温度を実現可能なGM冷凍機もしくはパルスチューブ型冷凍機である。冷却ステージ81は、本冷凍機に備えられる唯一の冷却ステージであり、生成される寒冷により、伝熱部材82A,82Bを通じて、フィーダ71、輻射遮蔽層4、および超電導コイル1のすべてを伝導冷却する。伝熱部材82A,82Bは、フィーダ71と冷却ステージ81との間の熱伝導、輻射遮蔽層4と冷却ステージ81との間の熱伝導、および、超電導コイル1(および高熱伝導材11)と冷却ステージ81との間の熱伝導を担うものである。すなわち、超電導コイル1と高熱伝導材11とコイル支持体9と輻射遮蔽層4とが、すべて同一の冷却ステージ81に熱的に接続された構成となっている。
また、冷却ステージ81と超電導コイル1とを熱的に接続する第一の冷却経路(伝熱部材82Aを通る経路)の熱抵抗は、冷却ステージ81と輻射遮蔽層4とを熱的に接続する第二の冷却経路(伝熱部材82Bを通る経路)の熱抵抗よりも小さい。
このような構成において、超電導磁石装置の運転中は、超電導コイル1の交流損失や微小な抵抗(フラックスフロー抵抗)による熱が生じると共に、フィーダ71からも熱が生じ、また、真空容器3側からの室温の輻射が超電導コイル1側へ与えられる。このとき、輻射遮蔽層4は、真空容器3側からの室温の輻射を遮蔽し、また、コイル支持体9は、真空容器3側の室温部と超電導コイル1との間の熱伝導を妨げる。この結果、輻射遮蔽層4と超電導コイル1との間で大きな温度勾配が生じる。
輻射遮蔽層4で受けた熱は、伝熱部材82Bを通じて冷却ステージ81へ伝わる。また、フィーダ71の熱も伝熱部材82Bを通じて冷却ステージ81へ伝わる。また、超電導コイル1から発生した熱も高熱伝導材11および伝熱部材82Aを通じて冷却ステージ81へ伝わる。なお、輻射遮蔽層4の外側には、MLI(多層断熱材)を施工しても良い。
この第2の実施形態によれば、前述の第1の実施形態と同様の効果が得られるほか、一段GM冷凍機もしくは一段パルスチューブ型冷凍機を使用していることから、温度40K〜50Kレベルで数十Wの冷凍能力を発揮させることができ、超電導コイルを効果的に冷却することができる。加えて、熱侵入低減には有効であるが高価で機械的に脆い酸化物超電導リード72を使用せずとも実現できるため、初期コストを低減しつつ装置の信頼性を向上させることができる。
(第3の実施形態)
次に、図3を参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。なお、この第3の実施形態においては、図2に示した第2の実施形態の構成と共通する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。以下では、第2の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
図3は、本発明の第3の実施形態に係る超電導磁石装置の構成の一例を示す概略縦断面図である。前述の第2の実施形態に係る超電導磁石装置では、コイル支持体9が、超電導コイル1と輻射遮蔽層4との間の空いた空間全体に充填される構成であったが、この第3の実施形態に係る超電導磁石装置ではコイル支持体9が超電導コイル1と輻射遮蔽層4との間の一部のみに設けられる。本実施形態のコイル支持体9は、超電導コイル1をその表面の一部分で接触して支持しており、その支持部が超電導コイル1の負荷率の最も高い部分を避けて接触している。
超電導コイル1にはその経験磁場に応じて温度マージン(常電導転移までの温度的余裕)の分布が生じる。すなわち、高い経験磁場により臨界電流値の下がった部分は温度マージンが小さく(負荷率が高く)、磁場が比較的低いために臨界電流値の高い部分は、同じ運転電流値に対して温度マージンが大きい。この温度マージンの高い部分でコイル支持体9が接していれば、室温の輻射や支持部材の熱伝導などによる熱が超電導コイル1に伝わったとしても超電導コイル1の運転電流値を律する負荷率最大部には影響することがなく、超電導磁石装置の安定した運転が可能となる。
また、本実施形態のコイル支持体9は、材料として例えばGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)、ベークライトなどの繊維強化プラスチック、あるいは樹脂を使用し、また、ハニカム構造などの中空部を有する中空構造体を構成していてもよい。これにより、超電導コイル1との高い熱抵抗を保ちつつ、機械的な支持の強度を維持することが可能となる。
また、高熱伝導材11および輻射遮蔽層4に純度の高い金属材料を使用してもよい。この場合、外部磁場の変動に対して渦電流が生じるが、高熱伝導材11および輻射遮蔽層4に、磁束が鎖交する面に大きな電流のループを遮るようにスリットを設けることにより、渦電流による発熱を低減させることが可能となる。また、この輻射遮蔽層4の外側には、MLI(多層断熱材)を施工しても良い。
この第3の実施形態によれば、前述の第2の実施形態と同様の効果が得られるほか、コイル支持体を構成する材料の使用量を低減し、装置の重量を軽減することが可能となる。また、超電導コイル1の温度マージンの高い部分でコイル支持体9が接する構成とすることにより、超電導コイル1の運転電流値を律する負荷率最大部に影響を与えずに、超電導磁石装置を安定して運転することが可能となる。また、コイル支持体9を中空構造体とすることにより、超電導コイル1との高い熱抵抗を保ちつつ、機械的な支持の強度を維持することが可能となる。また、高熱伝導材11および輻射遮蔽層4において純度の高い金属材料を使用した場合、磁束が鎖交する面に大きな電流のループを遮るようにスリットを設けることにより、渦電流による発熱を低減させることが可能となる。
(第4の実施形態)
次に、図4を参照して、本発明の第4の実施形態について説明する。なお、この第4の実施形態においては、前述の各図に示した各実施形態の構成と共通する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。以下では、第2および第3の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
図4は、本発明の第4の実施形態に係る超電導磁石装置の構成の一例を示す概略縦断面図である。前述の第2および第3の実施形態に係る超電導磁石装置では、超電導コイル1と輻射遮蔽層4との間にコイル支持体9のみが設けられる構成であったが、この第4の実施形態に係る超電導磁石装置では、あらかじめ超電導コイル1が容器91にコイル支持体9を介して収納され、容器91と輻射遮蔽層4との間の空間全体にコイル支持体9が充填される。超電導コイル1は、当該超電導コイル1と容器91との間に部分的に設けられたコイル支持体9により支持される。容器91は、例えば、図示のようにアルミニウムなどの金属、あるいは樹脂からなる材料を用いて構成される。
この第4の実施形態によれば、前述の第2および第3の実施形態と同様の効果が得られるほか、コイル支持体を構成する材料の使用量を低減しつつ、容器91外側のコイル支持体9によって超電導コイル1と輻射遮蔽層4とを隔離させることができ、さらに、重要部品である超電導コイル1へ外力を直接与えずに、容器91の外側にコイル支持体9を施工することが可能になる。なお、図4では容器91の外側に輻射遮蔽層4が1枚のみ設けられているが、この外側にさらにコイル支持体9を介して輻射遮蔽層4を設けても良い。輻射遮蔽層4の外側には、MLI(多層断熱材)を施工しても良い。
(第5の実施形態)
次に、図5を参照して、本発明の第5の実施形態について説明する。なお、この第5の実施形態においては、前述の各図に示した各実施形態の構成と共通する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。以下では、第4の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
図5は、本発明の第5の実施形態に係る超電導磁石装置の構成の一例を示す概略縦断面図である。前述の第4の実施形態に係る超電導磁石装置では、超電導コイル1と容器91との間にコイル支持体9が部分的に設けられ、容器91と輻射遮蔽層4との間の空間全体にコイル支持体9が充填される構成であったが、この第5の実施形態に係る超電導磁石装置では、超電導コイル1と容器91との間の空間全体にコイル支持体9が充填され、容器91と輻射遮蔽層4との間にコイル支持体9が部分的に設けられる。
この第5の実施形態によれば、前述の第2および第3の実施形態と同様の効果が得られるほか、コイル支持体を構成する材料の使用量を低減しつつ、容器91内側のコイル支持体9によって超電導コイル1と輻射遮蔽層4とを隔離させることができ、さらに、あらかじめ容器91に超電導コイル1を収納して樹脂などでモールドしてこの部分で温度勾配を生じさせ、超電導コイル1を入れた容器91を部分的に支持して施工を簡略化し全体を軽量化することが可能になる。なお、図5では輻射遮蔽層4を1枚のみ設けられているが、さらにコイル支持体9を介して複数枚の輻射遮蔽層4を設けても良い。輻射遮蔽層4の外側には、MLI(多層断熱材)を施工しても良い。
(第6の実施形態)
次に、図6〜図8を参照して、本発明の第6の実施形態について説明する。この第6の実施形態では、熱伝導を電気伝導のアナロジーで表した等価回路のモデルを用いて超電導磁石装置の好適な設計を行う手法について説明する。
図6は、図2乃至図5に示した超電導磁石装置中の、超電導コイル1、高熱伝導材11、コイル支持体9、および輻射遮蔽層4における熱伝導を、電気伝導のアナロジーで示した等価回路のモデルを示す模式図である。なお、図6においては、前述した図に示した実施形態の構成と共通する要素には同一の符号を付している。
図6中に示される超電導コイル1の上側の矢印は、超電導コイル1の交流損失や微小な抵抗(フラックスフロー抵抗)による発熱を示し、輻射遮蔽層4の下側の矢印は、真空容器3側からの室温の輻射による熱負荷を示している。また、図6の右側には、支持部材5からの熱がコイル支持体9に入る様子が示されている。そして図6の中央には、これらの熱により超電導コイル1、高熱伝導材11、コイル支持体9、および輻射遮蔽層4の中のあらゆる場所に生じる熱抵抗が複数の抵抗器の形で表現されている。さらに図6中の左側には、高熱伝導材11から伝熱部材82を通じて冷却ステージ81へ熱が伝導する様子が示されている。
図6のモデルにおける高熱伝導材11の断面、コイル支持体9の断面、および輻射遮蔽層4の厚さのそれぞれの寸法の比率をパラメータとした二通りの設計例(例1,例2)を表1に示す。
Figure 0005175892
表1においては、3種類のパラメータとして、高熱伝導材11の断面比、コイル支持体9の断面比、および輻射遮蔽層4の厚さ比が示されている。その下に、これら3つのパラメータを定めたときの各部の熱抵抗の値(等価回路における抵抗に相当)、すなわち、超電導コイル1、高熱伝導材11、コイル支持体9、輻射遮蔽層4、およびコイル支持体9(厚さ方向)の各熱抵抗の値が示されている。さらにその下に、超電導コイル1の温度最大値および超電導コイル1内部の温度差が示されている。
ここで、表1に示される例1,例2の条件で、図6の等価回路に基づく所定のモデル式から、超電導コイル1、コイル支持体9、輻射遮蔽層4の温度分布を計算した結果を図7,図8のグラフにそれぞれ示す。
例1と例2とでは各部の熱負荷の合計はほぼ同じであるが、表1に示されるように条件を切り換え、図6の等価回路の各部の抵抗値を変えることで、図7や図8のグラフに示されるように超電導コイル1、コイル支持体9、輻射遮蔽層4についての異なる温度分布を確認することができるため、好適な設計条件を見出すことができる。
また、表1に示されるように、コイル支持体9が高熱伝導材の100倍以上の熱抵抗を有するように熱伝導率、断面積、経路長さを設定することによって、超電導コイル1を効果的に冷却して温度ピーク値を下げ、十分な温度マージンを確保することができ、巻線量を増やすことなく、また安定性を損なわずに効果的に超電導磁石装置に磁場を発生させることが可能となる。
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
1…超電導コイル、11…高熱伝導材、2…二段冷凍機、21…二段冷凍機一段部、22A,22B…二段冷凍機一段部への伝熱部材、23…二段冷凍機二段部、24A,24B…二段冷凍機二段部への伝熱部材、3…真空容器、4…輻射遮蔽層、5…支持部材、7…電流導入端子、71…フィーダ、72…酸化物超電導電流リード、8…単段冷凍機、81…単段冷凍機冷却ステージ、82A,82B…伝熱部材、9…コイル支持体、91…容器。

Claims (9)

  1. 真空容器に収納した超電導コイルを冷凍機により伝導冷却する超電導磁石装置において、
    前記冷凍機の冷却ステージと前記超電導コイルとを熱的に接続する熱伝導材と、
    前記超電導コイルの周囲に設けられる輻射遮蔽層と、
    前記超電導コイルをその表面の一部分で接触して支持しており、その支持部が前記超電導コイルの経験磁場の最も高い部分を避けて接触しているコイル支持体と
    を具備することを特徴とする超電導磁石装置。
  2. 前記コイル支持体は前記超電導コイルを取り囲み、かつこの超電導コイルと前記輻射遮蔽層との間隙に設けられ、該コイル支持体を含めて前記超電導コイルと前記熱伝導材と前記輻射遮蔽層とが一体となるよう結合され、
    前記超電導コイルと前記輻射遮蔽層とが前記コイル支持体によって隔離されていることを特徴とする請求項1に記載の超電導磁石装置。
  3. 前記結合が、樹脂による接着、含浸、圧接、蒸着、ネジ止め、凹凸はめ込みのうちの少なくともいずれか1つを用いて実現されていることを特徴とする請求項2に記載の超電導磁石装置。
  4. 前記超電導コイルと前記熱伝導材と前記コイル支持体と前記輻射遮蔽層とが、すべて前記冷凍機の同一の冷却ステージに熱的に接続され、
    前記冷凍機の冷却ステージと前記超電導コイルとを熱的に接続する第一の冷却経路と、前記冷凍機の冷却ステージと前記輻射遮蔽層とを熱的に接続する第二の冷却経路と、が分離されており、前記第一の冷却経路の熱抵抗は前記第二の冷却経路の熱抵抗よりも小さいことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超電導磁石装置。
  5. 前記冷凍機は、冷凍ステージが一段で構成されるGM冷凍機もしくはパルスチューブ型冷凍機であることを特徴とする請求項4に記載の超電導磁石装置。
  6. 前記コイル支持体は、中空部を有する中空構造体であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の超電導磁石装置。
  7. 前記熱伝導材および前記輻射遮蔽層は、外部磁場の変動に対して生じる渦電流のループを遮るように設けられたスリットを有することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の超電導磁石装置。
  8. 前記輻射遮蔽層は、アルミニウムあるいはアルミニウムと繊維強化プラスチックとを厚さ方向に複合してなる材料からなり、前記アルミニウムの純度が99%以上であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか1項に記載の超電導磁石装置。
  9. 前記超電導コイルは、テープ形状の金属基板上に中間層を介して超電導層および良導電性安定化金属層を形成させた高温超電導テープ線材を巻回してなるものであることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の超電導磁石装置。
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