JP5172534B2 - ゴム製品の成型加硫用離型剤組成物およびゴム製品の製造方法 - Google Patents

ゴム製品の成型加硫用離型剤組成物およびゴム製品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ゴム製品の成型加硫用離型剤組成物およびゴム製品の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、自転車、自動車等の車両や航空機のタイヤ等のゴム製品を成型加硫して製造する際に用いられるブラダーの表面に短時間で良好な離型性被膜を形成することによって、同一ブラダーを用いて行われる成型加硫の回数が増加し、得られるゴム製品の不良率を低減することができるゴム製品の成型加硫用離型剤組成物およびゴム製品の製造方法に関する。
ゴム製品の成型加硫に際して、ブラダーまたはエアバッグと称するゴム製の袋(以下、ブラダーと称する場合がある。)を成型加硫前のゴム製品である原料ゴムの内側に挿入し、ブラダーの内部に高温高圧の気体(たとえば、約180℃の蒸気など)や液体を導入することによって、ブラダーを膨張させて、原料ゴムを金型に押し付けて加熱加圧し、成型加硫を行ってゴム製品を製造する場合がある。
ゴム製品がタイヤの場合は、ブラダーを成型加硫前のタイヤ(以下、グリーンタイヤと称する場合がある。)の内側に挿入し、ブラダーを膨張させて、グリーンタイヤを金型に押し付けて加熱加圧し、成型加硫を行っている。この場合、ブラダーとグリーンタイヤ内面は、何れもゴムを素材としているために、両者の間に離型剤が必要である。
従来、タイヤの成型加硫では、たとえば、インサイドペイントと称する水系または溶剤系の離型剤をグリーンタイヤの内面にその都度塗布する方法や、グリーンタイヤとブラダーの間の剥離を良くするためにブラダー表面にシリコーン系の離型剤を塗布する方法が行われてきた。
特許文献1には、たとえば、インサイドペイントとして、有機珪素化合物との反応により表面が疎水化された無機珪酸塩が分散されている水性ジオルガノポリシロキサン乳濁液が提案されている。また、特許文献2には、ジアルキルポリシロキサンとポリアルキレングリコールとの共重合体および雲母またはタルクからなる粉末離型剤組成物が提案されている。しかしながら、インサイドペイントをグリーンタイヤの内面にその都度塗布する方法は、工程が煩雑になるとともに、塗布時に機器周辺の汚れが発生するという問題がある。また、この問題点よりも大きな問題として、インサイドペイントがタイヤインナーライナーの接合部に入り込み、インナーライナー接合部の剥離を起こしてタイヤ不良が発生するといったトラブルが生じたり、インサイドペイント塗布後のタイヤを成型工程に投入するまでのストックポイントに、膨大なスペースを要するという問題がある。
特開昭53−42243号公報 特開昭52−86477号公報
そこで、インサイドペイントとは異なる方法として、グリーンタイヤとブラダーの間の剥離を良くするためにブラダー表面にシリコーン系の離型剤を塗布する方法がある。ブラダー用離型剤組成物としては、たとえば、特許文献3には、アミノアルキル基変性オルガノポリシロキサンと界面活性剤を含有する炭酸ガスにより自己架橋する潤滑剤組成物が提案されている。また、特許文献4には、水分または熱の作用下に重合するシリコーンゴムとシリコーン離型剤の混合物をブラダーに施し、水分を含有する空気または熱にさらすことにより、ブラダー上に離型剤フィルムを構成する方法が提案されている。さらに、特許文献5には、最内層にブラダーとの接着性を有する室温硬化型シリコーン層が施され、最外層に縮合型のシリコーン樹脂層が形成されてなる2層以上の離型潤滑層を有するブラダーが提案されている。特許文献6には、オルガノポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、シリカおよび金属の有機酸塩を含有するシリコーン組成物により表面処理された加硫用ブラダーを用いる方法が提案されている。しかしながら、ブラダー表面にシリコーン系の離型剤を塗布する方法においては、シリコーン系の水系離型剤を使用する技術では、離型剤被膜とブラダーとの接着性が充分でなく、溶剤系の離型剤を用いる技術においても、密着効果は若干向上するものの、使用中の剥離が起きるという問題がある。
特開昭60−229719号公報 特開昭59−106948号公報 特開平6−339927号公報 特開昭62−275711号公報
このように、特許文献1〜6の離型剤ではそれぞれについて問題がある。しかしながら、離型性の問題、作業性の問題、およびVOCの問題を抱えつつも、従来のインサイドペイント離型剤やブラダー用離型剤組成物を使用せざるを得ないというのが現状であった。
本発明の目的は、ブラダー表面に迅速に弾性被膜を形成し、ゴム製品の成型加硫工程時におけるブラダーの離型性に優れ、さらに連続成型加硫できるゴム製品の成型加硫用離型剤組成物と、この成型加硫用離型剤組成物を使用して、効率よく行われるゴム製品の製造方法とを提供することにある。
本発明にかかるゴム製品の成型加硫用離型剤組成物は、下記に示す成分(A)〜(E)と、界面活性剤と、水とを含有する離型剤であって、成分(A)の配合量を100重量部としたときに、それぞれの配合量が、成分(B)が50〜200重量部、成分(C)が100〜300重量部、成分(D)が100〜300重量部、成分(E)が1〜50重量部、界面活性剤が1〜50重量部、水が300〜5000重量部である。
成分(A):ハイドロジェンポリシロキサン
成分(B):ヒドロキシ基を有するオルガノポリシロキサン
成分(C):アミノアルキル基を有するオルガノポリシロキサン
成分(D):エポキシ基を有するオルガノポリシロキサン
成分(E):オルガノアルコキシシラン
ゴム製品の成型加硫用離型剤組成物が、以下の構成要件(1)〜(4)をさらに有すると好ましい。
(1)前記成分(E)のオルガノアルコキシシランが、アミノアルコキシシラン、エポキシアルコキシシランおよびメルカプトアルコキシシランから選ばれる少なくとも1種である。
(2)前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤および/またはアニオン性界面活性剤である。ここで、前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンひまし油およびポリオキシアルキレン硬化ひまし油から選ばれる少なくとも1種であり、前記アニオン性界面活性剤が、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩および長鎖スルホコハク酸塩から選ばれる少なくとも1種であるとさらに好ましい。
(3)少なくとも2つの剤の組合せから構成される離型剤組成物であって、前記組合せが、水を含有して成分(E)を含有しない第1A剤と、成分(E)を含有して水を含有しない第2A剤とを必須とし、水と成分(E)とを同時に含有する剤を含まない組合せであると好ましい。ここで、前記第1A剤が前記成分(A)〜(D)、界面活性剤および水を含有し、前記第2A剤が前記成分(E)を含有するとさらに好ましい。
(4)少なくとも2つの剤の組合せから構成される離型剤組成物であって、前記組合せが、水を含有してアミノアルコキシシラン以外の成分(E)を含有する第1B剤と、アミノアルコキシシランを含有して水を含有しない第2B剤とを必須とし、水とアミノアルコキシシランとを同時に含有する剤を含まない組合せであると好ましい。ここで、前記第1B剤が前記成分(A)〜(D)、前記アミノアルコキシシラン以外の前記成分(E)、界面活性剤および水を含有し、前記第2B剤が前記アミノアルコキシシランを含有するとさらに好ましい。
本発明にかかるゴム製品の製造方法は、原料ゴムを成型加硫してゴム製品を製造する方法であって、上記離型剤組成物をブラダー表面のゴムに付着させ、離型被膜を形成する処理工程と、ゴム製品の金型と前記処理工程で得られる処理済ブラダーとの間に原料ゴムを配置し、前記処理済ブラダーを加熱膨張させて、前記処理済ブラダーの離型被膜を介して前記原料ゴムを加熱しながら前記金型に押しつけることによって、前記原料ゴムを成型加硫する成型加硫工程とを含む。ここで、前記ゴム製品がタイヤであると好ましい。
本発明のゴム製品の成型加硫用離型剤組成物は、ブラダー表面に迅速に弾性被膜を形成し、ゴム製品の成型加硫工程時におけるブラダーの離型性に優れ、さらに、連続成型加硫でゴム製品を製造できる。
本発明のゴム製品の製造方法は、上記ゴム製品の成型加硫用離型剤組成物を使用するために、ゴム製品を効率よく製造することができる。
本発明のゴム製品の成型加硫用離型剤組成物は、下記に示す成分(A)〜(E)と、界面活性剤と、水とを含有する離型剤である。
成分(A):ハイドロジェンポリシロキサン
成分(B):ヒドロキシ基を有するオルガノポリシロキサン
成分(C):アミノアルキル基を有するオルガノポリシロキサン
成分(D):エポキシ基を有するオルガノポリシロキサン
成分(E):オルガノアルコキシシラン
まず、ゴム製品の加硫用離型剤組成物を構成する各成分を詳しく説明する。各構成成分のうち、成分(A)〜(D)は化学構造に着目するといずれも変性ポリシロキサンに分類されるので、これらの成分で共通する点を最初にまとめて説明する。以下では、「ゴム製品の成型加硫用離型剤組成物」を単に「成型加硫用離型剤組成物」ということがある。
〔成分(A)〜(D);変性ポリシロキサン〕
成分(A)〜(D)は変性ポリシロキサンであり、シロキサン結合(−Si−O−)を主骨格とするオリゴマーおよびポリマー(シリコーン)において、その一部の炭化水素基が、官能基や置換された炭化水素基等で置換えられた構造を有するポリシロキサンである。変性ポリシロキサンは、典型的には、両末端がトリメチルシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサンにおいて、その一部のメチル基が、官能基(たとえば、OH基、H基)や、置換された炭化水素基(たとえば、アミノアルキレン基、グリシジルオキシ基)等で置換えられた構造を有するポリシロキサンである。変性ポリシロキサンはメチル基等の炭化水素基が置き換えられたことによって、有機物との化学反応性、柔軟性、ペインタブル性、潤滑性などの物性が付与される。成分(A)〜(D)の変性ポリシロキサンは、有機基の導入位置によって、以下の1)〜4)に示す4種類の構造に分類される。
1)ポリシロキサンの側鎖の一部に有機基を導入した側鎖型変性ポリシロキサン(たとえば、下記一般式(1)で示される変性ポリシロキサン)
2)ポリシロキサンの両方の末端に有機基を導入した両末端型変性ポリシロキサン(たとえば、下記一般式(2)で示される変性ポリシロキサン)
3)ポリシロキサンのいずれか片方の末端に有機基を導入した片末端型変性ポリシロキサン(たとえば、下記一般式(3)で示される変性ポリシロキサン)
4)ポリシロキサンの側鎖の一部と両方の末端に有機基を導入した側鎖両末端型変性ポリシロキサン(たとえば、下記一般式(4)で示される変性ポリシロキサン)
Figure 0005172534
Figure 0005172534
Figure 0005172534
Figure 0005172534
(但し、一般式(1)〜(4)において、Xは、官能基や置換された炭化水素基である。また、mは1〜10000の整数であり、nは1〜10000の整数である。)
成分(A)〜(D)は、上記1)〜4)で分類される変性ポリシロキサンのいずれであってもよい。
成分(A)〜(D)の変性ポリシロキサンの分子量は、通常、数平均分子量または重量平均分子量のいずれでも表すことができる。また、数平均分子量と重量平均分子量との比を分散比と呼び、これが1に近いほど分子量分布が狭いことを示し単分散に近くなるが、成分(A)〜(D)の分子量分布について、特に限定はなく、単分散であってもよく、多分散であってもよい。
成分(A)〜(D)の変性ポリシロキサンの数平均分子量は、好ましくは1000〜10000000であり、さらに好ましくは1500〜8000000であり、特に好ましくは2000〜6000000であり、最も好ましくは3000〜5000000である。数平均分子量が10000000超であると、成型加硫用離型剤組成物のハンドリング性が低下することがある。一方、数平均分子量が1000未満であると、成型加硫用離型剤組成物の被膜強度が優れず、離型性が低下することがある。
成分(A)〜(D)の変性ポリシロキサンは全て良好な離型性を付与する成分である。特に、成分(A)および(B)は特に反応性に富み、強固な被膜を形成することができる。成分(C)は特にゴム表面への吸着性に優れる。成分(D)の被膜は特に弾性に優れる。また、成分(C)および(D)は互いに反応性に富み、両成分の被膜は成型加硫用離型剤組成物に柔軟性を付与し、ブラダーが伸縮する際にも追随可能な優れた被膜を形成することができる。
以下に、成分(A)〜(D)の変性ポリシロキサンを詳しく説明する。
〔成分(A):ハイドロジェンポリシロキサン〕
成分(A)のハイドロジェンポリシロキサンは離型性を付与する成分であり、さらに、反応性に富み被膜形成に優れる。成分(A)が一般式(1)〜(4)で示される場合、XはHであり、いずれにおいても、ケイ素原子に水素原子が直接結合した構造、すなわち、Si−H構造を有する。
成分(A)の官能基当量としては、特に限定はないが、好ましくは3〜3000g/molであり、より好ましくは3〜2000g/mol、さらに好ましくは3〜1000g/mol、特に好ましくは3〜500g/mol、最も好ましくは3〜100g/molである。成分(A)の官能基当量とは、Si−H構造を形成するHが1mol含まれる成分(A)の質量を示すことになる。ここでは、官能基当量が小さい値であるほど、変性ポリシロキサンの単位質量当たり含まれるSi−H構造を形成するHの量が多いことを意味する。
成分(A)の粘度(測定温度:20℃)としては、特に限定はないが、好ましくは10〜20000mPa・s、さらに好ましくは10〜15000mPa・s、特に好ましくは10〜10000mPa・s、最も好ましくは10〜5000mPa・sである。
〔成分(B):ヒドロキシ基を有するオルガノポリシロキサン〕
成分(B)のヒドロキシ基を有するオルガノポリシロキサンも、成分(A)と同様に、離型性を付与する成分であり、さらに、反応性に富み被膜形成に優れる。成分(B)が一般式(1)〜(4)で示される場合、Xとしては以下に示すものを挙げることができる。
Figure 0005172534
(但し、上記式でRおよびRは2価の有機基であり、Rは1価の有機基である。R、RおよびRの炭素数は、好ましくは1〜30、さらに好ましくは1〜20である。)
成分(B)の官能基当量としては、特に限定はないが、好ましくは3〜3000g/molであり、より好ましくは3〜2500g/mol、さらに好ましくは3〜2000g/mol、特に好ましくは3〜1500g/mol、最も好ましくは3〜1000g/molである。成分(B)の官能基当量とは、ヒドロキシ基が1mol含まれる成分(B)の質量を示すことになる。
成分(B)の粘度(測定温度:20℃)としては、特に限定はないが、好ましくは10〜20000mPa・s、さらに好ましくは10〜15000mPa・s、特に好ましくは10〜10000mPa・s、最も好ましくは10〜5000mPa・sである。
成分(B)の配合量については、成分(A)の配合量を100重量部としたときに、50〜200重量部であり、好ましくは60〜180重量部、さらに好ましくは70〜150重量部、特に好ましくは80〜130重量部である。成分(B)の配合量が200重量部超であると、ハンドリング性が優れず好ましくない。一方、成分(B)の配合量が50重量部未満であると、反応性に乏しくなり被膜形成能が低下する。
〔成分(C):アミノアルキル基を有するオルガノポリシロキサン〕
成分(C)のアミノアルキル基を有するオルガノポリシロキサンは、優れた反応性、吸着性および離型性を付与する成分である。特に、アミノアルキル基のアミノ基は吸着能力に優れるため、ブラダーのゴム表面への吸着力を高めることができる。成分(C)が一般式(1)〜(4)で示される場合、Xとしては以下に示すものを挙げることができる。
Figure 0005172534
(但し、上記式でRは2価の有機基であり、その炭素数は、好ましくは1〜30、さらに好ましくは1〜20である。)
成分(C)の官能基当量としては、特に限定はないが、好ましくは100〜20000g/molであり、より好ましくは100〜15000g/mol、さらに好ましくは100〜10000g/mol、特に好ましくは100〜5000g/mol、最も好ましくは100〜3000g/molである。成分(C)の官能基当量とは、アミノ基が1mol含まれる成分(C)の質量を示すことになる。
成分(C)の粘度(測定温度:20℃)としては、特に限定はないが、好ましくは10〜20000mPa・s、さらに好ましくは10〜15000mPa・s、特に好ましくは10〜10000mPa・s、最も好ましくは10〜5000mPa・sである。
成分(C)の配合量については、成分(A)の配合量を100重量部としたときに、100〜300重量部であり、好ましくは120〜280重量部、さらに好ましくは140〜260重量部、特に好ましくは160〜240重量部である。成分(C)の配合量が300重量部超であると、ハンドリング性が優れず好ましくない。一方、成分(C)の配合量が100重量部未満であると、反応性に乏しくなり被膜形成能が低下する。
〔成分(D):エポキシ基を有するオルガノポリシロキサン〕
成分(D)のエポキシ基を有するオルガノポリシロキサンも、優れた反応性、吸着性および離型性を付与する成分である。特に、エポキシ基の効果により、形成した被膜は弾性に優れる。さらに、成分(C)と併用して使用すると、反発弾性、耐久性、耐候性に優れた特性を付与することができる。成分(D)が一般式(1)〜(4)で示される場合、Xとしては以下に示すものを挙げることができる。
Figure 0005172534
(但し、上記式でRは2価の有機基であり、その炭素数は、好ましくは1〜30、さらに好ましくは1〜20である。)
成分(D)の官能基当量としては、特に限定はないが、好ましくは100〜20000g/molであり、より好ましくは100〜15000g/mol、さらに好ましくは100〜10000g/mol、特に好ましくは100〜5000g/mol、最も好ましくは100〜3000g/molである。成分(D)の官能基当量とは、エポキシ基が1mol含まれる成分(D)の質量を示すことになる。
成分(D)の粘度(測定温度:20℃)としては、特に限定はないが、好ましくは10〜20000mPa・s、さらに好ましくは10〜15000mPa・s、特に好ましくは10〜10000mPa・s、最も好ましくは10〜5000mPa・sである。
成分(D)の配合量については、成分(A)の配合量を100重量部としたときに、100〜300重量部であり、好ましくは120〜280重量部、さらに好ましくは140〜260重量部、特に好ましくは160〜240重量部である。成分(D)の配合量が300重量部超であると、ハンドリング性が優れず好ましくない。一方、成分(D)の配合量が100重量部未満であると、反応性に乏しくなり被膜形成能が低下する。
〔成分(E):オルガノアルコキシシラン〕
成分(E)のオルガノアルコキシシランは、ポリシロキサンの被膜形成能を向上させる成分である。オルガノアルコキシシランのアルコキシシリル基は、水の存在下で分解され、シラノール基に変換され、次いでポリシロキサンと架橋反応する。成分(E)が成型加硫用離型剤組成物に含まれることによって、成分(A)〜(D)の各変性ポリシロキサンが被膜を形成するまでの時間を大幅に短縮することができる。また、低温雰囲気下でも短時間で被膜を形成させることができる。成分(E)が成分(A)〜(D)の各変性ポリシロキサンと架橋反応することで、被膜の強度、耐熱性、耐膨張安定性、加硫耐久性を向上させることができる。
成分(E)の数平均分子量としては、特に限定はないが、好ましくは50〜999、さらに好ましくは60〜900、特に好ましくは70〜800、最も好ましくは100〜700である。オルガノアルコキシシランの数平均分子量が999超であると、成型加硫用離型剤組成物の被膜形成能が低下することがある。一方、成分(E)の数平均分子量が50未満であると、離型性が低下することがある。
成分(E)のアルコキシ基としては、特に限定はないが、たとえば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、メトキシエトキシ基等が挙げられる。
成分(E)のオルガノアルコキシシランは、通常、官能基を有する。このような官能基としては、特に限定はないが、たとえば、アミノ基、ウレイド基、エポキシ基、スルフィド基、ビニル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、メルカプト基、アルキル基、フェニル基、フルオロ基等が挙げられる。
成分(E)としては、特に限定はないが、たとえば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノメチルジメトキシシラン、1,2−エタンジアミン,N−{3−(トリメトキシシリル)プロピル}−,N−{(エテニルフェニル)メチル}、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノアルコキシシラン;3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシアルコキシシラン;ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド等のスルフィドアルコキシシラン;ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン等のビニルアルコキシシラン;メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリロキシアルコキシシラン;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトアルコキシシラン等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。これらの中でも、成分(E)が、アミノアルコキシシラン、エポキシアルコキシシラン、メルカプトアルコキシシランから選ばれる少なくとも1種からなると、成分(A)〜(D)の各変性ポリシロキサンとの反応性に優れるという理由から好ましい。
成分(E)の配合量については、成分(A)の配合量を100重量部としたときに、1〜50重量部、好ましくは5〜50重量部、さらに好ましくは10〜50重量部、特に好ましくは20〜50重量部である。成分(E)の配合量が50重量部超であると、ハンドリング性が優れず好ましくない。一方、成分(E)の配合量が1重量部未満であると、反応性に乏しくなり被膜形成能が低下する。
〔その他のポリシロキサン〕
ゴム製品の成型加硫用離型剤組成物は、成分(A)〜(E)以外の有機ケイ素化合物として、その他のポリシロキサンを含有していてもよい。その他のポリシロキサンとしては、特に限定はないが、たとえば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のストレートポリシロキサン;導入有機基がポリエーテル基、フロロアルキル基、長鎖アルキル基、高級脂肪酸エステル基、メルカプト基、メトキシ基、ビニル基等で変性されたポリシロキサン等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
その他のポリシロキサンの数平均分子量は、好ましくは1000〜10000000であり、さらに好ましくは1500〜8000000であり、特に好ましくは2000〜6000000であり、最も好ましくは3000〜5000000である。
〔界面活性剤〕
界面活性剤は、ブラダー表面のゴムに対して「濡れ」を補助する成分である。界面活性剤が本発明のゴム製品の成型加硫用離型剤組成物に含まれることによって、成分(A)〜(E)を均一にブラダー表面のゴムに被膜化することが実現できる。
ここで、「濡れ」とは、界面化学では固体または液体の表面にある一つの流体を他の液体で置換する現象と定義される。たとえば、固体/気体の界面が固体/液体の界面に置き換えられたとき、その固体は液体で濡れたという。したがって、本発明のゴム製品の成型加硫用離型剤組成物がブラダー表面のゴムに対して濡れたと表現するときは、ブラダー表面のゴム/空気の界面が、ブラダー表面のゴム/成型加硫用離型剤組成物の界面に置き換えられたことを意味する。本発明のゴム製品の成型加硫用離型剤組成物がブラダー表面のゴムに対して十分濡れていないと表現するときは、ブラダー表面のゴム/空気の界面が、ブラダー表面のゴム/成型加硫用離型剤組成物の界面に完全に置き換えられていないことを意味する。
界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられ、1種または2種以上を含んでいてもよい。界面活性剤が非イオン界面活性剤および/または陰イオン界面活性剤であると好ましい。
非イオン界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセリンモノステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノラウレート等のグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレンひまし油;ポリオキシアルキレン硬化ひまし油;ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル;ポリグリセリン脂肪酸エステル;アルキルグリセリンエーテル;ポリオキシアルキレンコレステリルエーテル;アルキルポリグルコシド;ショ糖脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレンアルキルアミン;オキシエチレンーオキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。なかでも、非イオン性界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルおよびポリオキシアルキレン硬化ひまし油から選ばれる少なくとも1種であると、ブラダー表面のゴムに対して優れた濡れを発現するので好ましい。
陰イオン界面活性剤としては、たとえば、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、オレイン酸トリエタノールアミン等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩;ステアロイルメチルタウリンNa、ラウロイルメチルタウリンNa、ミリストイルメチルタウリンNa、パルミトイルメチルタウリンNa等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩;ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン塩;モノステアリルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩;ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩;ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の長鎖スルホコハク酸塩、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウムモノナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ジナトリウム等の長鎖N−アシルグルタミン酸塩等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。なかでも、アニオン性界面活性剤が、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩および長鎖スルホコハク酸塩から選ばれる少なくとも1種であると、ブラダー表面のゴムに対して優れた濡れを発現するので好ましい。
陽イオン界面活性剤としては、たとえば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩;ジアルキルジメチルアンモニウム塩;トリアルキルメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
両性界面活性剤としては、たとえば、2−ウンデシル−N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤;2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系両性界面活性剤;N−ラウリルグリシン、N−ラウリルβ−アラニン、N−ステアリルβ−アラニン等のアミノ酸型両性界面活性剤等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
成型加硫用離型剤組成物に含まれる界面活性剤の配合量は、成分(A)の配合量を100重量部としたときに、1〜50重量部であり、好ましくは5〜50重量部、さらに好ましくは10〜50重量部、特に好ましくは15〜50重量部である。界面活性剤の配合量が、50重量部超であると、起泡が発生し易くなり好ましくない。一方、界面活性剤の配合量が1重量部未満であると、ブラダー表面のゴムに対する濡れを向上させる効果が少なくなることがある。
〔水〕
本発明のゴム製品の成型加硫用離型剤組成物が含有する水は、水道水、イオン交換水、蒸留水等のいずれでもよい。
本発明のゴム製品の成型加硫用離型剤組成物に含まれる水の配合量は、成分(A)の配合量を100重量部としたときに、300〜5000重量部、好ましくは300〜4500重量部、さらに好ましくは300〜4000重量部、特に好ましくは300〜3500重量部である。水の配合量が5000重量部超であると、ゴムに対する濡れが不十分で離型性が低下することがある。一方、水の配合量が300重量部未満であると、ブラダー表面のゴムに対する被膜量が多くなり水分の乾燥に要する時間が長くなり実用的でない。
〔その他の成分等〕
本発明のゴム製品の成型加硫用離型剤組成物は、上記で説明した各成分以外に、消泡剤や金属触媒、無機粒子等をさらに含有していてもよい。
消泡剤としては特に限定はないが、たとえば、ヒマシ油、ゴマ油、アマニ油、動植物油などの油脂系消泡剤;ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸などの脂肪酸系消泡剤;ステアリン酸イソアミル、こはく酸ジステアリル、エチレングリコールジステアレート、ステアリン酸ブチルなどの脂肪酸エステル系消泡剤;ポリオキシアルキレンモノハイドリックアルコールジ−t−アミルフェノキシエタノール、3−ヘプタノール、2−エチルヘキサノールなどのアルコール系消泡剤;ジ−t−アミルフェノキシエタノール3−ヘプチルセロソルブノニルセロソルブ3−ヘプチルカルビトールなどのエーテル系消泡剤;トリブチルオスフェート、トリス(ブトキシエチル)フオスフェートなどのリン酸エステル系消泡剤;ジアミルアミンなどのアミン系消泡剤;ポリアルキレンアミド、アシレートポリアミンなどのアミド系消泡剤;ラウリル硫酸エステルナトリウムなどの硫酸エステル系消泡剤;鉱物油等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
金属触媒としては、特に限定はないが、たとえば、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ、ビス(ネオデカノエート)スズ、ジ−n−ブチルスズ(2−エチルヘキシルマレート)スズ、ジ−n−ブチルスズ(2,4−ペンタンジオネート)スズ、ジ−n−ブチルブトキシクロロスズ、ジ−n−ブチルジアセトキシスズ、ジ−n−ブチルジラウリル酸スズ、ジメチルジネオデカノエートスズ、ジメチルヒドロキシ(オレエート)スズ、ジオクチルジラウリル酸スズなどのスズ触媒;ヘキサクロロ白金(IV)酸6六和物、ジニトロジアンミン白金(II)、テトラアンミンジクロロ白金(II)、ビス(アセチルアセトナト)白金(II)、トランス−ジアンミンジクロロ白金(II)、シス−ジアンミンジクロロ白金(II)、テトラアンミン白金(II)塩化物一水和物、塩化白金(II)、塩化白金(IV)(五水和物)、テトラクロロ白金(II)酸アンモニウム、テトラクロロ白金(II)酸カリウム、テトラクロロ白金(II)酸ナトリウム、テトラクロロ白金(IV)酸カリウム、テトラクロロ白金(IV)酸アンモニウム、テトラクロロ白金(IV)酸ナトリウム、テトラクロロ白金(IV)酸水素六水和物、テトラシアノ白金(II)酸カリウム、テトラシアノ白金(II)酸セシウム、テトラシアノ白金(II)酸ナトリウム、テトラシアノ白金(II)酸バリウム、テトラシアノ白金(II)酸ルビジウム、テトラニトロ白金(II)酸カリウム、ヘキサブロモ白金(IV)酸カリウムなどの白金触媒などが挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
無機粒子としては、特に限定はないが、たとえば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩;カオリン、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、クレー、タルク、マイカ、セリサイト、ベントナイト等のケイ酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、ホワイトカーボン、酸化鉄等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄等の金属水酸化物;ベンガラ;カーボンブラック;グラファイト等が挙げられる。これらの中でも、無機粒子が、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、マイカ、セリサイトから選ばれる少なくとも1種からなると、ブラダー表面のゴムへの付着性に優れるという理由から好ましい。
〔成型加硫用離型剤組成物の物性〕
成型加硫用離型剤組成物の25℃における粘度については、特に限定はないが、好ましくは0.1〜20000mPa・s、さらに好ましくは0.1〜10000mPa・s、特に好ましくは0.1〜5000mPa・s、最も好ましくは0.1〜3000mPa・sである。成型加硫用離型剤組成物の粘度が20000mPa・s超であると、ゴム表面に被膜する成分の量が多くなり水分の乾燥に要する時間が長くなり実用的でないことがある。一方、その粘度が0.1mPa・s未満であると、ブラダー表面のゴムに対する濡れが悪くなり、離型性が低下することがある。
成型加硫用離型剤組成物のpHとしては、特に限定はないが、好ましくは3〜12、さらに好ましくは3〜10、特に好ましくは3〜7、最も好ましくは3〜6である。成型加硫用離型剤組成物のpHが3未満または12超であると、成型加硫用離型剤組成物のハンドリング性に欠ける場合がある。
〔成型加硫用離型剤組成物の形態および製造方法〕
成分(E)であるオルガノアルコキシシランは、水と接触すると加水分解してシラノール基が生成するので、成分(A)〜(D)のいずれかの変性ポリシロキサンと直ちに反応を開始して液安定性が悪化する場合がある。成型加硫用離型剤組成物の液安定性を考慮すると、成型加硫用離型剤組成物は、好ましくは、少なくとも2つの剤の組合せから構成される離型剤組成物であって、その組合せが、水を含有して成分(E)を含有しない第1A剤と、成分(E)を含有して水を含有しない第2A剤とを必須とし、水と成分(E)とを同時に含有する剤を含まない組合せである組成物(以下、組成物1と称する場合がある。)である。組成物1が、2つの剤の組合せから構成される離型剤組成物であって、第1A剤が成分(A)〜(D)、界面活性剤および水を含有し、第2A剤が成分(E)を含有するとさらに好ましい。
また、アミノアルコキシシランを含む成分(E)では、アミノアルコキシシランは成分(E)の中でも特に加水分解が速く、他のアルコキシシランと共存すると加水分解がさらに促進されシラノールが生成して液の安定性に優れない場合があるので、成型加硫用離型剤組成物は、好ましくは、少なくとも2つの剤の組合せから構成される離型剤組成物であって、その組合せが、水を含有してアミノアルコキシシラン以外の成分(E)を含有する第1B剤と、アミノアルコキシシランを含有して水を含有しない第2B剤とを必須とし、水とアミノアルコキシシランとを同時に含有する剤を含まない組合せである組成物(以下、組成物2と称する場合がある。)である。組成物2が、2つの剤の組合せから構成される離型剤組成物であって、第1B剤が成分(A)〜(D)、アミノアルコキシシラン以外の成分(E)、界面活性剤および水を含有し、第2B剤がアミノアルコキシシランを含有するとさらに好ましい。
ゴム製品の成型加硫用離型剤組成物の製造方法は、特に限定はなく、成分(A)〜(E)、界面活性剤、水やその他の成分等を混合する方法等を挙げることができる。ゴム製品の成型加硫用離型剤組成物の製造方法において、混合順序等については特に限定はなく、全成分を同時に混合してもよく、成分ごとに順番に混合してもよく、予めいくつかの成分を混合しておいて残りの成分を後で添加混合してもよい。
成型加硫用離型剤組成物が上記で説明した組成物1である場合は、水と成分(E)とを同時に含有する剤を調製しないように、少なくとも2つの剤の組合せとする。組成物1が2つの剤の組合せの場合は、成分(A)〜(D)、界面活性剤および水を混合して第1A剤を調製し、成分(E)をそのまま第2A剤とすればよい。
成型加硫用離型剤組成物が上記で説明した組成物2である場合は、水とアミノアルコキシシランとを同時に含有する剤を調製しないように、少なくとも2つの剤の組合せとする。組成物2が2つの剤の組合せの場合は、成分(A)〜(D)、アミノアルコキシシラン以外の成分(E)、界面活性剤および水を混合して第1B剤を調製し、アミノアルコキシシランをそのまま第2B剤とすればよい。
混合については、特に限定はなく、容器と攪拌羽根といった極めて簡単な機構を備えた装置を用いて行うことができる。また、一般的な揺動または攪拌を行える粉体混合機を用いてもよい。粉体混合機としては、たとえば、リボン型混合機、垂直スクリュー型混合機等の揺動攪拌または攪拌を行える粉体混合機を挙げることができる。また、近年、攪拌装置を組み合わせたことにより効率のよい多機能な粉体混合機であるスーパーミキサー(株式会社カワタ製)およびハイスピードミキサー(株式会社深江製)、ニューグラムマシン(株式会社セイシン企業製)、SVミキサー(株式会社神鋼環境ソリューション社製)等を用いてもよい。他には、たとえば、ジョークラッシャー、ジャイレトリークラッシャー、コーンクラッシャー、ロールクラッシャー、インパクトクラッシャー、ハンマークラッシャー、ロッドミル、ボールミル、振動ロッドミル、振動ボールミル、円盤型ミル、ジェットミル、サイクロンミルなどの乾式粉砕機を用いてもよい。
〔ゴム製品の製造方法〕
本発明のゴム製品の製造方法は、処理工程と成型加硫工程と含む。ここで、ゴム製品がタイヤであると好ましい。
処理工程は、成型加硫用離型剤組成物をブラダー表面のゴムに付着させ、離型被膜を形成する工程である。
ブラダーは、後述する原料ゴム(ゴム製品がタイヤの場合は、グリーンタイヤという。)を成型加硫する際に、原料ゴムの内側に挿入して、ブラダーの内部に高温高圧の気体(たとえば、約180℃の蒸気など)や液体を導入し、ブラダーを膨張させて、原料ゴムを金型に押し付けて加熱加圧し、成型加硫を行うのに用いられるゴム製の袋である。
ブラダーの形状等について、特に限定はない。その形状としては、たとえば、シート状、フィルム状、ホース状、チューブ状、スポンジ状、パッキン、ベルト等を挙げることができ、加硫成形時に空気を外に逃がすための溝が刻まれていてもよい。
成型加硫用離型剤組成物をブラダー表面のゴムに付着させる方法としては、特に限定はないが、たとえば、ブラダー表面のゴムにスプレーガンを用いて射出して霧状にして塗布する方法、細流にてブラダー表面のゴムに吹きつける方法、刷毛でブラダー表面のゴムに塗布する方法、成型加硫用離型剤組成物にブラダー表面のゴムを浸漬する方法等が挙げられる。
また、成型加硫用離型剤組成物が少なくとも2つの剤の組合せから構成される場合は、たとえば、成型加硫用離型剤組成物が上記で説明した組成物1または2である場合は、ブラダー表面のゴムに塗布する前に構成される剤を混合して、得られた成型加硫用離型剤組成物をスプレーガンや刷毛を用いて塗布しても構わないし、少なくとも2つの剤のうちの1つをブラダー表面のゴムにスプレーガンや刷毛を用いて塗布した後、他の剤をスプレーガンや刷毛を用いてさらにブラダー表面のゴムに上塗りして混合してもよい。成型加硫用離型剤組成物が少なくとも2つの剤の組合せから構成される場合は、作業効率の良好性を考慮すると、剤をそれぞれ個別に液滴状に射出するスプレーガンを用いて霧状に射出して、ブラダーの表面に付着させる方法が好ましい。この場合、ブラダー表面のゴムに付着させる順番について特に限定はない。
成型加硫用離型剤組成物が塗布されたブラダーは、その表面に完全な被膜が形成されるまで養生期間を取ってもよい。完全な被膜が形成されるまでの養生期間としては、特に限定はないが、好ましくは0.01〜168時間、さらに好ましくは0.01〜48時間、特に好ましくは0.01〜10時間、最も好ましくは0.01〜2時間である。被膜を完全に形成するまでの養生期間が168時間超であると、作業効率が悪く好ましくない。一方、養生期間が0.1時間未満であると、完全に被膜化されていない場合があり離型性に優れず好ましくない。
単位面積当たりの成型加硫用離型剤組成物の塗布量としては、特に限定はないが、好ましくは1〜150g/m、さらに好ましくは5〜130g/m、特に好ましくは5〜100g/m、最も好ましくは10〜100g/mである。単位面積当たりの成型加硫用離型剤組成物の塗布量が150g/m超であると、コスト高となり好ましくない。単位面積当たりの成型加硫用離型剤組成物の塗布量が1g/m未満であると、離型性に優れず好ましくない。
完全な被膜が形成されるまでにブラダー表面を養生させる雰囲気温度としては、特に限定はないが、好ましくは−20〜200℃、さらに好ましくは0〜150℃、特に好ましくは20〜140℃、最も好ましくは40〜120℃である。雰囲気温度が200℃超であると、高温の恒温槽設備を準備する必要があり好ましくない。雰囲気温度が−20℃未満であると、被膜の乾燥性が優れず好ましくない。
養生後の被膜の厚みとしては、特に限定は無いが、好ましくは0.01〜1000μm、さらに好ましくは0.01〜500μm、特に好ましくは0.01〜250μm、最も好ましくは0.1〜100μmである。養生後の被膜の厚みが1000μm超であると、コスト高となり好ましくない。養生後の被膜の厚みが0.01μm未満であると、離型性に優れず好ましくない。
養生後の単位面積当たりの被膜重量としては、特に限定はないが、好ましくは1〜100g/m、さらに好ましくは1〜80g/m、特に好ましくは1〜60g/m、最も好ましくは5〜40g/mである。養生後の単位面積当たりの被膜重量が100g/m超であると、コスト高となり好ましくない。養生後の単位面積当たりの被膜重量が1g/m未満であると、離型性に優れず好ましくない。
このように、処理工程で得られる処理済ブラダーは、次の成型加硫工程で用いて、良好な離型性を発現し、同一ブラダーを用いてのゴム製品の成型加硫回数を増加し、ゴム製品の不良率を低減することができる。
成型加硫工程は、ゴム製品の金型と処理工程で得られる処理済ブラダーとの間に原料ゴムを配置し、処理済ブラダーを加熱膨張させて、処理済ブラダーの離型被膜を介して原料ゴムを加熱しながら金型に押しつけることによって、原料ゴムを成型加硫する工程である。
成型加硫工程における成形加工方法としては、たとえば、カレンダーロールシート成形法、ローラーヘッドシート成形法、押出シート成形法、ラム押出成形法、スクリュー押出成形法、圧縮成形法、注入成形法、射出成形法等を挙げることができる。
本発明の製造方法で得られるゴム製品としては、特に限定はないが、タイヤ、ホース、防振ゴム、自動車用ベルト、シール、防舷剤、コンベヤベルト、弾性まくらぎ、ゴムパッド、ゴムマット、免震ゴム、シーリング材、防水剤、ゴム電線、ゴムケーブル、コンドーム、ゴム手袋、ゴム風船、ガスケット、パッキン、ゴムボール等を挙げることができ、タイヤが好ましい。
タイヤとしては、特に限定はないが、乗用車向け自動車用タイヤ、トラック・バス向け自動車用タイヤ、スポーツ車向け自動車用タイヤ、レーシングカー用タイヤ、航空機用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、自転車用タイヤ、バギー用タイヤ、農業用タイヤ、ゴムクローラ等を挙げることができる。
タイヤ成型時の温度としては、特に限定はないが、好ましくは100〜300℃、さらに好ましくは120〜280℃、特に好ましくは140〜260℃、最も好ましくは160〜240℃である。
タイヤ成型時の圧力としては、特に限定はないが、好ましくは10〜300kgf/cm、さらに好ましくは20〜280kgf/cm、特に好ましくは40〜260kgf/cm、最も好ましくは60〜240kgf/cmである。
以下に、ゴム製品の成型加硫用離型剤組成物の実施例および比較例について、具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下で、特に断りのない限り、「%」は「wt%」を示す。
最初に、成型加硫用離型剤組成物の物性評価方法を説明する。
〔成型加硫用離型剤組成物の不揮発分濃度〕
成型加硫用離型剤組成物のa(g)をアルミシートに秤取し(但し、a(g)は2〜3gの範囲)、110℃で0.5時間保った後の恒量に達した残留物の質量がb(g)である。成型加硫用離型剤組成物の不揮発分濃度を下式にしたがって算出する。
成型加硫用離型剤組成物の不揮発分濃度(wt%)=(b/a)×100
〔被膜形成性の評価〕
ブラダー表面のゴムに成型加硫用離型剤組成物を15g/m塗布して、100℃の温度に加熱して反応を促進させブラダー表面のゴムに被膜を形成し乾燥するまでの時間を目視にて測定する。被膜を形成し乾燥するまでの時間が2時間未満であれば、被膜を形成するまでの待ち時間が少なく、被膜形成性が良い。被膜を形成し乾燥するまでの時間が5時間以上であれば、被膜を形成するまでの待ち時間が長く、作業性に支障をきたすため、被膜形成性が良くない。被膜形成性の評価基準は以下のとおり。
〇:被膜を形成し乾燥するまでの時間が2時間未満である。
△:被膜を形成し乾燥するまでの時間が2時間以上5時間未満である。
×:被膜を形成し乾燥するまでの時間が5時間以上である。
〔離型性の評価〕
ブラダー表面のゴムに成型加硫用離型剤組成物を15g/m塗布して、100℃の温度に加熱して反応を促進させ、ブラダー表面のゴムに被膜を形成して、処理済ブラダーを得た。処理済ブラダーと未加硫SBRゴムとを重ね合わせ、180℃、200kgf/cmの条件で20分間プレス加硫した。加硫後にブラダーを室温まで空冷し、引張り試験機テンシロン(PT−200N型、ミネベア株式会社)を用いて100mm/minの速度下で剥離抗力(N/mm)を測定した。離型性の評価基準は以下のとおり。
〇:剥離抗力が0.01N/mm未満である。
×:剥離抗力が0.01N/mm以上である。
〔繰り返し離型性の評価〕
上記離型性の評価の使用した処理済ブラダーを用いて、上記の同様の方法で加硫を繰り返して行い、離型性が何回まで持続するかを測定した。繰り返して加硫できる回数が多いほど、繰り返し離型性に優れる。繰り返し離型性の評価基準は以下のとおり。
〇:30回以上繰り返し加硫を行っても、持続して離型性が良好である。
△:10回以上30回未満の間、良好な離型性で繰り返し加硫を行える。
×:10回未満の間、良好な離型性で繰り返し加硫を行える。
〔乗用車用タイヤの成型加硫テストの評価〕
乗用車用タイヤの成型加硫用ブラダー表面(表面積:6000cm)のゴムに成型加硫用離型剤組成物を15g/m塗布して、100℃の温度に加熱して反応を促進させブラダー表面のゴムに被膜を形成して、処理済ブラダーを得た。この処理済ブラダーを用いて、乗用車用タイヤの成型加硫テストを繰り返し行い、タイヤを不具合無く生産できる回数を計測した。乗用車用タイヤの成型加硫テストの評価基準は以下のとおり。
〇:100回以上繰り返し成型加硫を行っても、持続して離型性が良好である。
△:30回以上100回未満の間、良好な離型性で繰り返し成型加硫を行える。
×:30回未満の間、良好な離型性で繰り返し成型加硫を行える。
〔自転車用タイヤの成型加硫テストの評価〕
自転車用タイヤの成型加硫用ブラダー表面(表面積:1500cm)のゴムに成型加硫用離型剤組成物を15g/m塗布して、100℃の温度に加熱して反応を促進させブラダー表面のゴムに被膜を形成して、処理済ブラダーを得た。この処理済ブラダーを用いて、自転車用タイヤの成型加硫テストを繰り返し行い、タイヤを不具合無く生産できる回数を計測した。自転車用タイヤの成型加硫テストの評価基準は以下のとおり。
〇:100回以上繰り返し成型加硫を行っても、持続して離型性が良好である。
△:30回以上100回未満の間、良好な離型性で繰り返し成型加硫を行える。
×:30回未満の間、良好な離型性で繰り返し成型加硫を行える。
〔測定用ブラダーの組成〕
上記測定に用いたブラダーは、以下に示す成分および所定量をそれぞれ混合して製造した。
IIRゴム:100部
ZnO:3部
:2部
ステアリン酸:1部
オイルファーネスブラック:50部
促進剤TT(テトラメチルチウラムジスルフィド):1部
〔測定用未加硫SBRゴムの組成〕
上記測定に用いた未加硫SBRゴムは、以下に示す成分および所定量をそれぞれ混合して製造した。
SBRゴム:100部
ZnO:3部
:2部
ステアリン酸:1部
カーボンブラック:50部
促進剤NS(N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド):1部
〔成分(A)〜(E)等の準備〕
実施例および比較例で用いた成分(A)〜(E)等の物性を以下に示す。
1)成分(A)
ハイドロジェンポリシロキサン1:一般式(1)でXがHである変性ポリシロキサン、粘度20mPa・s、官能基当量60g/mol
ハイドロジェンポリシロキサン2:一般式(1)でXがHである変性ポリシロキサン、粘度20mPa・s、官能基当量150g/mol
2)成分(B)
ヒドロキシ基を有するポリシロキサン1:一般式(2)でXにヒドロキシ基を含む変性ポリシロキサン、粘度35mPa・s、官能基当量500g/mol
ヒドロキシ基を有するポリシロキサン2:一般式(1)でXにヒドロキシ基を含む変性ポリシロキサン、粘度90mPa・s、官能基当量1000g/mol
3)成分(C)
アミノアルキル基を有するポリシロキサン1:一般式(2)でXにアミノアルキル基を含む変性ポリシロキサン、粘度100mPa・s、官能基当量2200g/mol
アミノアルキル基を有するポリシロキサン2:一般式(1)でXにアミノアルキル基を含む変性ポリシロキサン、粘度800mPa・s、官能基当量1500g/mol
4)成分(D)
エポキシ基を有するポリシロキサン1:一般式(4)でXにエポキシ基を含む変性ポリシロキサン、粘度1000mPa・s、官能基当量5000g/mol
エポキシ基を有するポリシロキサン2:一般式(1)でXにエポキシ基を含む変性ポリシロキサン、粘度30mPa・s、官能基当量500g/mol
5)成分(E)
アミノアルコキシシラン:分子量222.4
エポキシアルコキシシラン:分子量236.3
メルカプトアルコキシシラン:分子量238.4
スルフィドアルコキシシラン:分子量539.0
ビニルアルコキシシラン:分子量190.3
アクリロキシアルコキシシラン:分子量234.3
6)ポリシロキサン
ジメチルポリシロキサン:粘度1000mPa・s
メチルフェニルポリシロキサン:粘度1000mPa・s
ポリエーテル基を有するポリシロキサン:一般式(2)でXにポリエーテル基を含む変性ポリシロキサン、粘度1600mPa・s、官能基当量10000g/mol
メルカプト基を有するポリシロキサン:一般式(2)でXにメルカプト基を含む変性ポリシロキサン、粘度60mPa・s、官能基当量1700g/mol
〔実施例1〕
成分(A)であるハイドロジェンポリシロキサン1の100g、成分(B)であるヒドロキシ基を有するポリシロキサン1の100g、成分(C)であるアミノアルキル基を有するポリシロキサン1の200g、成分(D)であるエポキシ基を有するポリシロキサン1の200g、成分(E)であるアミノアルコキシシラン10g、POE(25)ラウリルエーテル5g、ジセチルスルフォサクシネートソーダ塩5g、イオン交換水1300gを混合して成型加硫用離型剤組成物を得た。この成型加硫用離型剤組成物は、不揮発分濃度32.3wt%であった。
ブラダー表面のゴムに成型加硫用離型剤組成物を15g/m塗布して、100℃の温度に加熱して反応を促進した。ブラダー表面に被膜を形成し乾燥するまでの時間は1時間であり、被膜形成性(評価:○)が良好な処理済ブラダーを得た。
得られた処理済ブラダーと未加硫SBRゴムとを重ね合わせ、180℃、200kgf/cmの条件で20分間プレス加硫した後、処理済ブラダーを室温まで空冷した。剥離抗力は0.005N/mmであり、負荷なく剥離することができ、離型性が優れていた(評価:○)。その後続けて、処理済ブラダーを用いて繰り返して連続加硫を行い、30回以上離型性を持続することができ、繰り返し離型性が優れていた(評価:○)。
〔実施例2〜20〕
実施例2〜20では、実施例1において、表1〜2に示すように組成をそれぞれ変更する以外は、実施例1と同様に成型加硫用離型剤組成物をそれぞれ得て、物性等も実施例1と同様に評価した。その結果をそれぞれ表1〜2に示す。それらは皮膜形成性、離型性、滑性、繰り返し離型性に優れていた。
〔実施例21〕
実施例21は、2つの剤(X剤およびY剤)の組合せから構成される成型加硫用離型剤組成物に関する実施例である。
成分(A)であるハイドロジェンポリシロキサン1の100g、成分(B)であるヒドロキシ基を有するポリシロキサン1の100g、成分(C)であるアミノアルキル基を有するポリシロキサン1の200g、成分(D)であるエポキシ基を有するポリシロキサン1の200g、POE(25)ラウリルエーテル5g、ジセチルスルフォサクシネートソーダ塩5g、イオン交換水1300gを混合してX剤を得た。X剤の不揮発分濃度31.9wt%であった。次に、成分(E)であるアミノアルコキシシラン1000gとエポキシアルコキシシラン1000gとを混合してY剤を得た。
X剤およびY剤を10:1の割合で混合して得られた成型加硫用離型剤組成物をブラダー表面のゴムに15g/m塗布して、100℃の温度に加熱して反応を促進した。ブラダー表面に被膜を形成し乾燥するまでの時間は1時間であり、被膜形成性(評価:○)が良好な処理済ブラダーを得た。
得られた処理済ブラダーと未加硫SBRゴムとを重ね合わせ、180℃、200kgf/cmの条件で20分間プレス加硫した後、処理済ブラダーを室温まで空冷した。剥離抗力は0.004N/mmであり、負荷なく剥離することができ、離型性が優れていた(評価:○)。その後続けて、処理済ブラダーを用いて繰り返して連続加硫を行い、30回以上離型性を持続することができ、繰り返し離型性が優れていた(評価:○)。
〔実施例22〕
実施例21において、X剤およびY剤の混合比を1:1に変更する以外は、実施例21と同様に成型加硫用離型剤組成物を得て、処理済ブラダーを得た。なお、被膜を形成し乾燥するまでの時間は0.5時間であり、被膜形成性が良好であった(評価:○)。
得られた処理済ブラダーの物性も実施例21と同様に評価した。剥離抗力は0.004N/mmであり、負荷なく剥離することができ、離型性が優れていた(評価:○)。その後続けて、処理済ブラダーを用いて繰り返して連続加硫を行い、30回以上離型性を持続することができ、繰り返し離型性が優れていた(評価:○)。
〔実施例23〕
実施例22において、X剤およびY剤をスプレーガンでそれぞれ10g/m塗布する以外は実施例22と同様にして、処理済ブラダーを得た。なお、被膜を形成し乾燥するまでの時間は0.5時間であり、被膜形成性が良好であった(評価:○)。
得られた処理済ブラダーの物性も実施例22と同様に評価した。剥離抗力は0.005N/mmであり、負荷なく剥離することができ、離型性が優れていた(評価:○)。その後続けて、処理済ブラダーを用いて繰り返して連続加硫を行い、30回以上離型性を持続することができ、繰り返し離型性が優れていた(評価:○)。
〔実施例24〕
実施例24は、2つの剤(M剤およびN剤)の組合せから構成される成型加硫用離型剤組成物に関する実施例である。
成分(A)であるハイドロジェンポリシロキサン1の100g、成分(B)であるヒドロキシ基を有するポリシロキサン1の100g、成分(C)であるアミノアルキル基を有するポリシロキサン1の200g、成分(D)であるエポキシ基を有するポリシロキサン1の200g、成分(E)であるエポキシアルコキシシラン10g、POE(25)ラウリルエーテル5g、ジセチルスルフォサクシネートソーダ塩5g、イオン交換水1300gを混合してM剤を得た。M剤の不揮発分濃度32.0wt%であった。成分(E)であるアミノアルコキシシラン2000gをN剤とした。
実施例23において、X剤およびY剤をそれぞれM剤およびN剤に変更する以外は実施例23と同様にして、処理済ブラダーを得た。なお、被膜を形成し乾燥するまでの時間は0.5時間であり、被膜形成性が良好であった(評価:○)。
得られた処理済ブラダーの物性も実施例23と同様に評価した。剥離抗力は0.005N/mmであり、負荷なく剥離することができ、離型性が優れていた(評価:○)。その後続けて、処理済ブラダーを用いて繰り返して連続加硫を行い、30回以上離型性を持続することができ、繰り返し離型性が優れていた(評価:○)。
〔実施例25〕
成分(A)であるハイドロジェンポリシロキサン1の100g、成分(B)であるヒドロキシ基を有するポリシロキサン1の100g、成分(C)であるアミノアルキル基を有するポリシロキサン1の200g、成分(D)であるエポキシ基を有するポリシロキサン1の200g、成分(E)であるアミノアルコキシシラン10g、POE(25)ラウリルエーテル5g、ジセチルスルフォサクシネートソーダ塩5g、イオン交換水1300gを混合して成型加硫用離型剤組成物を得た。
この成型加硫用離型剤組成物は、不揮発分濃度32.3wt%であった。
乗用車用タイヤの成型加硫用ブラダーと自転車用タイヤの成型加硫用ブラダーの各々に成型加硫用離型剤組成物を15g/m塗布して、100℃の温度に加熱し、被膜を形成して、各々の処理済ブラダーを得た。
各々の処理済ブラダーを用いて、タイヤの成型加硫テストを繰り返し行ったところ、タイヤを不具合無く生産できる回数は、乗用車用タイヤでは110回、自転車用タイヤでは210回であり、離型性に優れていた。
〔実施例26〕
実施例26は、2つの剤(K剤およびL剤)の組合せから構成される成型加硫用離型剤組成物に関する実施例である。
成分(A)であるハイドロジェンポリシロキサン1の100g、成分(B)であるヒドロキシ基を有するポリシロキサン1の100g、成分(C)であるアミノアルキル基を有するポリシロキサン1の200g、成分(D)であるエポキシ基を有するポリシロキサン1の200g、POE(25)ラウリルエーテル5g、ジセチルスルフォサクシネートソーダ塩5g、イオン交換水1300gを混合してK剤を得た。K剤の不揮発分濃度31.9wt%であった。次に、成分(E)であるアミノアルコキシシラン1000g、エポキシアルコキシシラン1000gを混合してL剤を得た。
K剤およびL剤を10:1の割合で混合して得られた成型加硫用離型剤組成物を乗用車用タイヤの成型加硫用ブラダーと自転車用タイヤの成型加硫用ブラダーの各々の表面のゴムに15g/m塗布して、100℃の温度に加熱して反応を促進して、各々の処理済ブラダーを得た。
各々の処理済ブラダーを用いて、タイヤの成型加硫テストを繰り返し行ったところ、タイヤを不具合無く生産できる回数は、乗用車用タイヤでは110回、自転車用タイヤでは220回であり、離型性に優れていた。
〔実施例27〕
実施例26において、K剤およびL剤をスプレーガンでそれぞれ10g/m塗布する以外は実施例26と同様にして、各々の処理済ブラダーを得た。
各々の処理済ブラダーを用いて、タイヤの成型加硫テストを繰り返し行ったところ、タイヤを不具合無く生産できる回数は、乗用車用タイヤでは120回、自転車用タイヤでは210回であり、離型性に優れていた。
〔比較例1〕
成分(B)であるヒドロキシ基を有するポリシロキサン1の100g、成分(C)であるアミノアルキル基を有するポリシロキサン1の200g、成分(D)であるエポキシ基を有するポリシロキサン1の200g、成分(E)であるアミノアルコキシシラン10g、POE(25)ラウリルエーテル5g、ジセチルスルフォサクシネートソーダ塩5g、イオン交換水1300gを混合して比較成型加硫用離型剤組成物を得た。比較成型加硫用離型剤組成物は、不揮発分濃度28.6wt%であった。
ブラダー表面のゴムに比較成型加硫用離型剤組成物を15g/m塗布して、100℃の温度に加熱して反応を促進した。ブラダー表面に被膜を形成し乾燥するまでの時間は7時間であり、被膜形成性が不良(評価:×)である比較処理済ブラダーを得た。
得られた比較処理済ブラダーと未加硫SBRゴムとを重ね合わせ、180℃、200kgf/cmの条件で20分間プレス加硫した後、比較処理済ブラダーを室温まで空冷した。剥離抗力は0.1N/mmであり、離型性が不良であった(評価:×)。その後続けて、比較処理済ブラダーを用いて繰り返して連続加硫を行い、わずか4回しか離型性を持続することができず、繰り返し離型性も良くなかった(評価:×)。
比較例1は、実施例1〜24と比較して、被膜形成性、離型性、繰り返し離型性の点でいずれも劣っていた。
〔比較例2〜22〕
比較例2〜22では、比較例1において、表3〜5に示すように組成をそれぞれ変更する以外は、比較例1と同様に比較成型加硫用離型剤組成物をそれぞれ得て、物性等も比較例1と同様に評価した。得られた物性等の結果も、それぞれ表3〜5に示す。実施例1〜24と比較して、被膜形成性、離型性、繰り返し離型性の点でいずれも劣っていた。
〔比較例23〕
成分(B)であるヒドロキシ基を有するポリシロキサン1の100g、成分(C)であるアミノアルキル基を有するポリシロキサン1の200g、成分(D)であるエポキシ基を有するポリシロキサン1の200g、成分(E)であるアミノアルコキシシラン10g、POE(25)ラウリルエーテル5g、ジセチルスルフォサクシネートソーダ塩5g、イオン交換水1300gを混合して比較成型加硫用離型剤組成物を得た。比較成型加硫用離型剤組成物は、不揮発分濃度28.6wt%であった。
乗用車用タイヤの成型加硫用ブラダーと自転車用タイヤの成型加硫用ブラダーの各々に比較成型加硫用離型剤組成物を15g/m塗布して、100℃の温度に加熱し、被膜を形成して、各々の比較処理済ブラダーを得た。
各々の比較処理済ブラダーを用いて、タイヤの成型加硫テストを繰り返し行ったところ、タイヤを不具合無く生産できる回数は、乗用車用タイヤでは4回、自転車用タイヤでは7回であり、実施例25〜27と比較して離型性が劣っていた。
〔比較例24〕
ジメチルポリシロキサン600g、マイカ10g、POE(25)ラウリルエーテル5g、ジセチルスルフォサクシネートソーダ塩5g、イオン交換水1300gを混合してゴム製品の比較成型加硫用離型剤組成物を得た。比較成型加硫用離型剤組成物は、不揮発分濃度32.3wt%であった。
乗用車用タイヤ成型加硫用ブラダーゴムと自転車用タイヤ成型加硫用ブラダーゴムの各々に成型加硫用離型剤組成物を15g/m塗布して、100℃の温度に加熱し、被膜を形成して、各々の比較処理済ブラダーを得た。
各々の比較処理済ブラダーを用いて、タイヤの成型加硫テストを繰り返し行ったところ、タイヤを不具合無く生産できる回数は、乗用車用タイヤでは1回、自転車用タイヤでは2回であり、実施例25〜27と比較して離型性が著しく劣っていた。
Figure 0005172534
Figure 0005172534
Figure 0005172534
Figure 0005172534
Figure 0005172534
上記表において、「POE(n)」とは、「オキシエチレン基の繰り返し数がnであるポリオキシエチレン」を意味しており、たとえば、「POE(25)ラウリルエーテル」とは、「オキシエチレン基の繰り返し数が25であるポリオキシエチレンラウリルエーテル」を意味する。

Claims (10)

  1. 下記に示す成分(A)〜(E)と、界面活性剤と、水とを含有する離型剤であって、成分(A)の配合量を100重量部としたときに、それぞれの配合量が、成分(B)が50〜200重量部、成分(C)が100〜300重量部、成分(D)が100〜300重量部、成分(E)が1〜50重量部、界面活性剤が1〜50重量部、水が300〜5000重量部である、ゴム製品の成型加硫用離型剤組成物。
    成分(A):ハイドロジェンポリシロキサン
    成分(B):ヒドロキシ基を有するオルガノポリシロキサン
    成分(C):アミノアルキル基を有するオルガノポリシロキサン
    成分(D):エポキシ基を有するオルガノポリシロキサン
    成分(E):オルガノアルコキシシラン
  2. 前記成分(E)のオルガノアルコキシシランが、アミノアルコキシシラン、エポキシアルコキシシランおよびメルカプトアルコキシシランから選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のゴム製品の成型加硫用離型剤組成物。
  3. 前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤および/またはアニオン性界面活性剤である、請求項1または2に記載のゴム製品の成型加硫用離型剤組成物。
  4. 前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンひまし油およびポリオキシアルキレン硬化ひまし油から選ばれる少なくとも1種であり、前記アニオン性界面活性剤が、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩および長鎖スルホコハク酸塩から選ばれる少なくとも1種である、請求項3に記載のゴム製品の成型加硫用離型剤組成物。
  5. 少なくとも2つの剤の組合せから構成される離型剤組成物であって、前記組合せが、水を含有して成分(E)を含有しない第1A剤と、成分(E)を含有して水を含有しない第2A剤とを必須とし、水と成分(E)とを同時に含有する剤を含まない組合せである、請求項1〜4のいずれかに記載のゴム製品の成型加硫用離型剤組成物。
  6. 前記第1A剤が前記成分(A)〜(D)、界面活性剤および水を含有し、前記第2A剤が前記成分(E)を含有する、請求項5に記載のゴム製品の成型加硫用離型剤組成物。
  7. 少なくとも2つの剤の組合せから構成される離型剤組成物であって、前記組合せが、水を含有してアミノアルコキシシラン以外の成分(E)を含有する第1B剤と、アミノアルコキシシランを含有して水を含有しない第2B剤とを必須とし、水とアミノアルコキシシランとを同時に含有する剤を含まない組合せである、請求項2〜4のいずれかに記載のゴム製品の成型加硫用離型剤組成物。
  8. 前記第1B剤が前記成分(A)〜(D)、前記アミノアルコキシシラン以外の前記成分(E)、界面活性剤および水を含有し、前記第2B剤が前記アミノアルコキシシランを含有する、請求項7に記載のゴム製品の成型加硫用離型剤組成物。
  9. 原料ゴムを成型加硫してゴム製品を製造する方法であって、
    請求項1〜8のいずれかに記載の離型剤組成物をブラダー表面のゴムに付着させ、離型被膜を形成する処理工程と、
    ゴム製品の金型と前記処理工程で得られる処理済ブラダーとの間に原料ゴムを配置し、前記処理済ブラダーを加熱膨張させて、前記処理済ブラダーの離型被膜を介して前記原料ゴムを加熱しながら前記金型に押しつけることによって、前記原料ゴムを成型加硫する成型加硫工程とを含む、
    ゴム製品の製造方法。
  10. 前記ゴム製品がタイヤである、請求項9に記載のゴム製品の製造方法。
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