パソコンやワープロ等のOA機器が広く普及している現在、これら機器で入力した情報を種々の被記録媒体に記録するために、様々な記録装置および記録方法が開発されている。特にOA機器では、その情報処理能力の向上に伴って処理する映像情報などがカラー化される傾向にあり、処理情報を出力する記録装置にあってもカラー化が進んでいる。カラー画像を記録可能な記録装置としては、コストおよび機能などに応じた様々なものがあり、比較的単純な機能を有する安価なものから、記録すべき画像の種類や使用目的などに応じて記録速度や画質などを選択可能な多機能なものまで、種々存在している。
また、インクジェット記録装置は、低騒音、低ランニングコスト、小型化が可能であり、また記録画像のカラー化が容易であるため、プリンタ、複写機、ファクシミリ等に広く利用されている。一般に、カラーインクジェット記録装置は、シアン、マゼンタ、イエローの3色のカラーインク、または、これらのインクにさらに黒を加えた4色のインクを使用してカラー画像の記録を行う。また、従来のインクジェット記録装置においては、インクが滲まずに高発色のカラー画像を記録するために、被記録媒体として、インク吸収層を有する専用紙を使用するのが一般的であった。現在では、インクの改良により、プリンタや複写機等で大量に使用される「普通紙」に対して記録適性を持たせたインクも実用化されている。
また、いわゆるシリアルスキャンタイプのインクジェット記録装置においては、複数色のインクを用いてカラー記録などを行うための記録手段として、記録に使用する各インク色に対応するノズル郡を配設したインクジェット記録ヘッドが用いられる。その記録ヘッドは、ノズルを構成する吐出口からインクの吐出が可能である。シリアルスキャンタイプのインクジェット記録装置は、記録ヘッドを主走査方向に移動させつつ、その吐出口からインクを吐出する動作と、被記録媒体を主走査方向と交差する副走査方向に搬送する動作、とを交互に繰り返すことにより、被記録媒体上に順次画像を記録する。そのため、記録ヘッドとしては、記録に使用する各インク色毎に対応するノズル群(使用ノズル群)を主走査方向に沿って順次横並びに配設した所謂横並び記録ヘッドが用いられている。この横並び記録ヘッドは、同一の記録走査において、各ノズル群のそれぞれから同一のラスター上にインク滴を吐出可能である。
この横並び記録ヘッドを用いたインクジェット記録装置において、より高画質の画像を記録すべく高解像度記録を実現するためには、ノズルを含む記録ヘッドの記録素子の集積密度を高めた高密度記録ヘッドを用いることが有効である。最近では、半導体プロセスを用いた高密度記録ヘッドも登場し、ノズル列が600dpi(約42.3μm)の高密度記録ヘッドも製造されるようになっている。
更に、ノズルをより高密度に配置するために、1つのインク色に対応するノズル列を互いに平行な複数のノズル列に分け、それらのノズル列におけるノズルの位置を副走査方向に所定量オフセットした記録ヘッドも製造されるようになった。例えば、1つのノズル列におけるノズルの配置密度が600dpiの場合、このノズル列を2つ並列に配置して、それら2つのノズル列におけるノズルの位置を副走査方向に1200dpi(約21.2μm)分だけずらすことによって、1200dpiの高密度記録ヘッドとして用いることができる。
また、より高画質記録を行うための他の方法としては、画像を記録するインク滴の小液滴化が挙げられる。その小液滴化のためには、ノズルを含む記録ヘッドの記録素子の小サイズ化を図り、小液滴のインクを吐出可能な記録ヘッドを用いることが有効である。最近では、インクの吐出量が4〜5plの記録ヘッドも登場して、高精細記録に有利な記録ヘッドが製造されるようになっている。
このように、高密度配置したノズルから吐出する小液滴のインクを吐出することにより、より高画質の画像を記録することが可能となる。
しかし、横並び記録ヘッドを用いる場合には、主走査方向に並ぶ複数のノズル列において、それぞれのノズルからのインクの吐出が互いに影響し合うおそれがある。すなわち、ノズルから吐出されたインク滴が周囲の空気を引き込むため、多数のインク滴の吐出と同時に記録ヘッドが主走査方向に高速移動することにより、空気の流れ(気流)が発生し、それがインクの吐出に悪影響を及ぼすおそれがある。
ここで具体的に、そのような気流の発生メカニズムについて説明する。まず図1を用いて、記録ヘッドの動作に応じた気流の発生について説明をする。
図1は、記録ヘッドHの吐出口形成面を上部から見た図であり、この吐出口形成面には、ノズルNを構成する吐出口が形成されている。L1、L2はノズルの列(ノズル列)であり、それぞれのノズルNから、図1の紙面に直交する方向にインクが吐出される。記録ヘッドHは、図1中矢印Xの主走査方向に移動しながら、ノズル列L1、L2のノズルNからインクを吐出して記録を行う。その際、ノズル列L1のノズルNの鉛直下に吐出されるインク滴が周囲の空気を引き込み、あたかも矢印X方向に移動する「気体の壁」をつくる。その「気体の壁」が矢印X方向に移動することにより、その「気体の壁」の後方に空気の回り込みが生じて、それが図1中の矢印A方向の気流となる。その気流がノズル列L2の前方に流れ込む結果、そのノズル列L2のノズルNから吐出されるインク滴が悪影響を受け、その吐出方向にずれが生じるおそれがある。
図2は、記録ヘッドHを横方向から見た図であり、ここでは「気体の壁」の後方における空気の流れを示す。ノズル列L1、L2のノズルNから矢印B方向にインク滴を吐出することにより、上方から下方へと空気の流れができ、その流れの向きは、矢印Aのように被記録媒体Wの付近で後方に変わるおそれがある。
図3は、記録ヘッドHを主走査方向の正面から見た図であり、ノズル列L2に着目している。図3において、ノズル列L2の端部に位置するノズル(端部ノズル)から吐出されたインク滴は、矢印A方向の気流の影響により、被記録媒体Wに近付くにしたがって吐出方向がノズル列L2の内側へ曲がるおそれがある。そのような曲がりが生じた場合、端部ノズルから吐出されたインク滴は、被記録媒体W上における本来の着弾位置からノズル列L2の内側にずれた位置に着弾してしまい、インク滴の吐出方向のずれ(ヨレ)やインク滴の不吐出が生じた場合と同様に、画像弊害として認識されてしまう。この原因は、図1で説明した「気体の壁」の後方に流れ込む気流と、図2で説明したインク吐出による気流と、の双方が影響して、端部ノズルから吐出されたインク滴の吐出方向を曲げてしまうためである。
このように、従来の横並びの記録ヘッドを用いた記録装置にあっては、インク滴の吐出に伴う気流によって、画像弊害を引き起こすおそれがあった。
インクジェット記録装置における気流の影響に関する技術として、例えば、特許文献1には、所定の記録領域を記録ヘッドの複数回の走査によって完成させるマルチパス記録方式において、その走査回数(パス数)と気流の悪影響度との関係を考慮して、インク付与量を制御する方法が記載されている。すなわち、気流の悪影響を回避すべく、パス数に応じてインクの付与量を制御する。そして、特許文献1には、特に気流の影響を受けやすいノズル列間のインク滴の記録条件を制限をすることによって、特許文献1にあったようにパス数を増やすことなく気流による画像への悪影響の発生を回避している。特許文献1には、同一色で異なるインク滴の場合の例が示されている。図18のように、記録ノズル列1(大ドット)と記録ノズル列2(小ドット)の間に曲線801より左下の領域に該当するように記録ドットを制限する方法が記されている。
さらに、近年の記録速度の高速化の要望に応える手段として、記録ヘッドの駆動周波数の向上、つまり記録ヘッドの主走査方向への移動速度を上げる方法が考えられる。その場合、記録ヘッドの移動速度に応じて、上述したような気流の影響度も変化する。例えば、同じパス数で記録をする場合であっても、記録ヘッドの移動速度が異なれば、吐出されるインク滴に対する気流の影響度も大きく変わってくる。もちろん、気流の影響度は記録ヘッドが高速で移動する場合に大きくなり、被記録媒体上におけるインクの着弾精度が悪化して、画像品位の低下を招くおそれがある。
特許文献2には、記録速度に応じて記録ヘッドの複数のノズル列から吐出されるインク滴の単位領域当たりの紙面へのインク塗布量を異ならせる手法が開示されている。この際、各々記録速度においては、図10のようなことなる気流制御条件がしめされている。これを実現すために、図21に示したような各記録速度において、異なる記録データの生成曲線が開示されている。
特開2004−142452号明細書
特開2006−21532号明細書
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本例は、複数の記録ヘッドを有するシリアルプリンタ型のインクジェット記録装置としての適用例である。
(記録装置の構成)
図4は、本発明を適用可能なインクジェット記録装置の要部の模式的斜視図である。
図4において、複数(4個)のヘッドカートリッジ1A、1B、1C、1Dがキャリッジ2に交換可能に搭載されている。カートリッジ1A〜1Dのそれぞれには、インクを吐出可能な記録ヘッドと、その記録ヘッドにインクを供給するインクタンク部と、記録ヘッドを駆動する信号を受けるためのコネクターと、が含まれている。以下の説明では、ヘッドカートリッジ1A〜1Dの全体または任意の1つを記録ヘッド1ともいう。
ヘッドカートリッジ1A〜1Dは、それぞれ異なる色のインクを用いて記録をするためのものであり、それらのインクタンク部には、例えばシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、黒(Bk)などの異なるインクが収納されている。各ヘッドカートリッジ1A〜1Dはキャリッジ2に交換可能に搭載され、そのキャリッジ2には、カートリッジ1A〜1D側のコネクターを介して各記録ヘッドに駆動信号等を伝達するためのコネクタホルダ(電気接続部)が設けられている。
キャリッジ2は、装置本体に設置されたガイドシャフト3によって、矢印Xの主走査方向に移動可能にガイドされている。このキャリッジ2は、主走査モータ4により、モータプーリ5、従動プーリ6、及びタイミングベルト7を介して駆動され、その位置及び移動が制御される。用紙やプラスチック薄板等の被記録媒体8は、2組の搬送ローラ9、10及び11、12の回転により、記録ヘッド1の吐出口面と対向する位置(記録部)を通して搬送(紙送り)される。記録ヘッド1の吐出口面はノズルを構成する吐出口が形成される面であり、記録ヘッド1は、その吐出口からインク滴の吐出が可能である。被記録媒体8は、記録部において平坦な記録面を形成するように、その裏面がプラテン(不図示)により支持される。キャリッジ2に搭載された各カートリッジにおける記録ヘッド1の吐出口面は、キャリッジ2から下方へ突出して、2組の搬送ローラ9、10及び11、12の間の被記録媒体8の記録面と対向する。
本例の記録ヘッド1は、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット記録ヘッドであり、熱エネルギーを発生するための電気熱変換体(ヒーター)を備えている。すなわち、電気熱変換体から発生する熱エネルギーによってノズル内のインクに膜沸騰を生じさせ、そのときの気泡の成長、収縮によって生じる圧力変化を利用して、吐出口からインク滴を吐出させる。記録ヘッド1におけるインクの吐出方式は何ら特定されず、例えば、ピエゾ素子などを用いてインクを吐出する方式であってもよい。
図5は、本例の記録ヘッド1におけるインク吐出部13の主要部の模式的斜視図である。図5において、被記録媒体8と所定の隙間(約0.5〜2[mm]程度)をおいて対面する吐出口面21には、所定のピッチで複数の吐出口22が形成されている。インクが供給される共通液室23と各吐出口22とは各流路24によって連通され、インクの吐出エネルギーを発生するための電気熱変換体(発熱抵抗体など)25が各流路24の壁面に沿って配設されている。記録ヘッド1は、各吐出口22がキャリッジ2の走査方向(矢印X方向)と交差する方向に列状に並ぶように、キャリッジ2に搭載される。画像信号または吐出信号に基づいて電気熱変換体25を駆動(通電)することにより、それに対応する流路24内のインクを膜沸騰させ、そのときに発生する圧力を利用して吐出口22からインク滴を吐出させることができる。
(記録システムの構成)
図6は、本発明の適用対象の一例である記録システムのハードウェア構成を示すブロック図である。本実施形態に係るシステムは、概して、記録データの生成、及びその生成のためのUI(ユーザインタフェース)設定等を行うホスト装置1000と、その記録データに基づいて被記録媒体に画像を形成するインクジェット記録装置2000と、によって構成される。
ホスト装置(ホストコンピュータ)1000は、CPU1001、ROM1002、RAM1003、システムバス1004、種々の入出力機器のためのI/Oコントローラ(CRTC、HDC、FDCなど)1005、外部インタフェース(I/F)1006、ハードディスクドライブ(HDD)やフロッピー(登録商標)ディスクドライブ(FDD)などの外部記憶装置(HDD/FDD)1007、リアルタイムクロック(RTC)1008、CRT1009、およびキーボードやマウスなどの入力装置(KeyBoard/Mouse)1010等を備える。
CPU1001は、外部記憶装置1007等からRAM1003に読み込んだアプリケーションプログラムや、通信プログラム、プリンタドライバ、オペレーティングシステム(OS)等に基づいて動作する。電源投入時は、ROM1002によりブートし、外部記憶装置1007等からOSをRAM1003にロードした後、アプリケーションプログラムやドライバソフトウェア等も同様にロードすることにより、システムとして機能する。外部I/F1006は、RAM1003や外部記憶装置1007(HDD)内にスプールした記録データを順次記録装置2000に送信する。入力装置1010は、I/Oコントローラ1005を介して、ユーザからの指示データをホストコンピュータ内に取り込む。RTC1008は、システム時間を計時するためのものであり、I/Oコントローラ1005を介して時間情報の取得や設定等を行う。CRT1009は表示装置であり、I/Oコントローラ1005内のCRTCにより制御される。これらのCRT1009および入力装置1010のブロックにより、ユーザインタフェースが構成される。
図7は、図6のインクジェット記録装置2000における制御系のブロック構成図である。
図7においてコントローラ100は主制御部であり、例えば、マイクロコンピュータ形態のCPU101、プログラムや所要のテーブルその他の固定データを格納したROM103、記録データを展開する領域や作業用の領域等を設けたRAM105、および後述する図13に示される記録制御部1010を有する。記録データ、その他のコマンド、ステータス信号等は、不図示のインタフェース(I/F)を介して、前述したホスト装置1000とコントローラ100との間にて送受信される。
操作部120は操作者による指示入力を受容するスイッチ群であり、電源スイッチ122、プリント開始を指示するためのスイッチ124、吸引回復の起動を指示するための回復スイッチ126等を含む。ヘッドドライバ140は、記録データ等に応じて、記録ヘッド1の電気熱変換体(以下、「吐出ヒータ」ともいう)25を駆動するドライバである。ヘッドドライバ140は、記録データを吐出ヒータ25の位置に対応させて整列させるシフトレジスタ、記録データを適宜のタイミングでラッチするラッチ回路、駆動タイミング信号に同期して吐出ヒータ25を作動させる論理回路素子の他、インクドットの形成位置を合わせるために駆動タイミング(吐出タイミング)を適切に設定するタイミング設定部等を有する。
本例においては、記録ヘッド1にサブヒータ142が設けられている。サブヒータ142は、記録ヘッド1におけるインクの吐出特性を安定させるための温度調整を行うものであり、例えば、吐出ヒータ25と同時に記録ヘッド1の基板上に形成される形態、または記録ヘッドの本体ないしはヘッドカートリッジに取り付けられる形態とすることができる。
モータ・ドライバ150は、キャリッジ2を主走査方向に移動させるための主走査モータ4を駆動するドライバである。モータ・ドライバ160は、被記録媒体8を副走査方向に搬送するための副走査モータ162を駆動するドライバである。
図8は、本発明の適用対象の一例である記録システムを記録データの流れに沿って示した機能ブロック図である。本実施形態の記録装置2000は、前述したように、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの4色のインクを用いて記録を行うものである。
ホスト装置1000のオペレーティングシステムで動作するプログラムとしては、アプリケーションやプリンタドライバがある。アプリケーションJ0001は、記録装置2000によって記録する記録データの作成処理を実行する。この記録データ、もしくは、その編集等がなされる前のデータは、種々の媒体を介してパーソナルコンピュータ(PC)形態のホスト装置1000に取り込むことができる。本例のPC形態のホスト装置1000は、デジタルカメラで撮像した例えばJPEG形式の画像データを、CFカードを介して取り込むことができる。また、スキャナで読み取った例えばTIFF形式の画像データや、CD−ROMに格納される画像データをも取り込むことができる。さらには、インターネットを介してWEB上のデータを取り込むこともできる。これらの取り込まれたデータは、ホスト装置1000のモニタに表示され、アプリケーションJ0001を介して編集、加工等がなされることによって、例えばsRGB規格の記録データR、G、Bが作成される。そして記録の指示に応じて、この記録データがプリンタドライバに渡される。
本実施形態のプリンタドライバは、前段処理J0002、後段処理J0003、階調補正J0004、ハーフトーニングJ0005、および印刷データ作成J0006の処理部を有している。前段処理J0002は、色域(Gamut)のマッピングを行う処理である。
本実施形態の前段処理J0002は、3次元LUTと補間演算を併用して、8ビットの画像データR、G、Bを記録装置2000の色域内のデータR、G、Bにデータ変換する。3次元LUTは、sRGB規格の画像データR、G、Bによって再現される色域を本プリントシステムの記録装置2000によって再現される色域内に写像する関係を内容とするルックアップテーブルである。
後段処理J0003は、前段処理J0002によって色域のマッピングがなされたデータR、G、Bに基づき、このデータが表す色を再現するインク毎の分解データを求める処理である。本例においては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインク色毎、さらにシアンおよびマゼンタのインク色に関してはドットサイズ毎の分解データ、つまり分解データY、M、C、K、SC、SMを求める。Y、M、C、Kは、後述するように、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインクによって形成される大ドット用の分解データであり、またSCおよびSMは、後述するように、シアンおよびマゼンタのインクによって形成される小ドット用の分解データである。本実施形態の後段処理J0003では、前段処理J0002と同様に3次元LUTと補間演算を併用する。
階調補正J0004は、後段処理J0003によって求められたインク色およびドットサイズ毎の分解データのそれぞれに対して、階調値変換を行う。具体的には、記録装置2000において用いられる各色のインクの階調特性に応じた1次元LUTを用いて、インク色およびドットサイズに対応した分解データを記録装置2000の階調特性に線形的に対応付けるように変換する。
ハーフトーニングJ0005は、8ビットの色分解データY、M、C、K、SC、SMのそれぞれを量子化して、2ビットのデータに変換する。本実施形態では、誤差拡散法を用いて8ビットデータを2ビットデータに変換する。この2ビットデータは、後述する記録装置2000のドット配置パターン化処理における配置パターンを示すためのインデックスデータである。記録情報作成処理J0006は、その2ビットのインデックスデータを内容とする記録データに記録制御情報を加えて記録情報を作成する。
なお、上述したアプリケーションおよびプリンタドライバの処理は、それらのプログラムに従ってCPU1001(図6参照)により行われる。そのプログラムは、ROM1002もしくはハードディスクなどの外部記憶装置1007から読み出されて用いられ、また、そのプログラムに従う処理の実行に際しては、RAM1003がワークエリアとして用いられる。
記録装置2000は、データ処理に関しては、ドット配置パターン化処理J0007とマスクデータ変換処理J0008を行う。ドット配置パターン化処理J0007は、実際の記録画像に対応する画素毎に、記録データである2ビットのインデックスデータ(階調値情報)に対応したドット配置パターンに従って、ドット配置を行う。このように、2ビットデータで表現される各画素に対して、その画素の階調値に対応したドット配置パターンを割当てることにより、画素内の複数のエリア毎にドットのオン・オフ、つまりドットを形成するか否かが定義されて、1画素内の各エリアに対して「1」または「0」の吐出データが配置される。
このようにして得られる1ビットの吐出データは、マスクデータ変換処理J0008によってマスク処理がなされる。すなわち、記録ヘッド1の記録走査毎の吐出データを生成する。所定領域の記録画像を記録ヘッド1の複数回の走査によって完成させるマルチパス記録においては、それぞれの走査に対応したマスクを用いた処理によって、それぞれの走査毎の吐出データを生成する。走査毎の吐出データY、M、C、K、SC、SMは適切なタイミングでヘッド駆動回路(ヘッドドライバ)140に送られ、それらの吐出データに基づいて、記録へッド1が駆動されてインクが吐出される。
なお、記録装置2000における上述のドット配置パターン化処理J0007やマスクデータ変換処理J0008は、記録装置2000の制御部を構成するCPU101(図7参照)の制御下において、専用のハードウェア回路を用いて実行される。これらの処理は、プログラムに従ってCPU101により実行されてもよく、または、パーソナルコンピュータ(PC)形態のホスト装置100において例えばプリンタドライバによって実行されてもよい。本発明を適用する上において、これら処理の形態が問われないことは、以下の説明からも明らかである。
また、本明細書において「画素」とは、階調表現できる最小単位のことであり、複数ビットの多値データの画像処理(上述した前段処理、後段処理、γ補正(階調補正)、ハーフトーニング等の処理)の対象となる最小単位である。また、ハーフトーニング処理において、1つの画素はm×n(例えば2×2)のマスで構成されるパターンに対応し、この1画素内の各マスは「エリア」と定義する。この「エリア」は、ドットのオン・オフが定義される最小単位である。これに関連して、上述した前段処理、後段処理、γ補正にいう「画像データ」は、処理対象である画素の集合を表しており、各画素は、本実施形態では8ビットの階調値を内容とするデータである。また、上述したハーフトーニングにいう「画素データ」は、処理対象である画素データそのものを表しており、本実施形態のハーフトーニングでは、上記の8ビットの階調値を内容とする画素データが2ビットの階調値を内容とする画素データ(インデックスデータ)に変換される。
(気流制御)
図9、図10、図11(a)、(b)は、記録ヘッド1の移動速度に応じた気流制御の手法について説明する図である。ここでは、記録媒体上の所定領域に記録すべき画像を記録ヘッド1の4回の走査によって完成させる、いわゆる4パス記録の例をとって説明する。
図9は、本例において用いる記録ヘッドの説明図であり、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)のインクを吐出するためのノズル列が形成されている。シアンインク吐出用のノズル列としては、大ドット形成用のノズル列C1、C2と、小ドット形成用のノズル列C3、C4が形成されており、それらは主走査方向において対称的となるように形成されている。ノズル列C1、C3は共通液室を挟んで隣接し、またノズル列C2、C4は共通液室を挟んで隣接する。同様に、マゼンタインク吐出用のノズル列として、大ドット形成用のノズル列M1、M2と、小ドット形成用のノズル列M3、M4が形成されている。また、イエローインク吐出用のノズル列としては大ドット形成用のノズル列Y1、Y2が形成され、同様に、ブラックインク吐出用のノズル列として大ドット形成用のノズル列K1、K2が形成されている。
このような記録ヘッドを用いた場合には、矢印X(X1、X2)の主走査方向において双方向記録を実施して、カラー画像を記録することができる。以下、矢印X1を往路方向、矢印X2を復路方向ともいう。このような双方向記録において、例えば、往路記録時にノズル列C1、C3、M1、M3、K1、K2、Y1、Y2を用い、復路記録時にノズル列C2、C4、M2、M4、K1、K2、Y1、Y2を用いることにより、それぞれの記録時におけるインクの打ち込み順序を合わせることができる。
本例においては、往路記録時および復路記録時に全てのノズル列を用いて記録する。これにより、記録速度を高めることができる。その際には、略等しい量の同色インク滴を吐出する対のノズル列(大ドット形成用の対のノズル列、または小ドット形成用の対のノズル列)に対して、記録データをほぼ等しく割り振り(振りまき処理)、それらの対のノズル列の一方に記録データが偏らないようにする。このように対のノズル列を均等に使用することにより、インクの打ち込み順序が異なる部分を均等に分散させて、色ムラの発生を抑制することができると共に、それぞれのノズル内の吐出ヒータに掛かる負担を分散させることができる。例えば、シアンインクを比較的多く吐出させる大ドット形成用の記録データは、ノズル列C1、C2に均等に振りまくように展開し、シアンインクを比較的少なく吐出させる小ドット形成用の記録データは、ノズル列C3、C4に均等に振りまくように展開する。
本例においては、大ドットを形成するノズル列を第1ノズル列L1、小ドットを形成するノズル列を第2ノズル列L2とする。ノズル列の間の距離が小さければ小さいほど、それらのノズル間における気流の影響が大きくなるため、共通液室を挟むように配されたノズル列の間における気流の影響は大きい。また、インクの吐出量が少ないノズル列、つまり運動エネルギーが小さい小インク滴を吐出するノズル列に対しては、気流の影響度が大きくなる。さらに、記録ヘッドの移動速度が高いほど、気流の影響度は大きくなる。
本例においては、図10のように、4パス記録において記録ヘッドの移動速度が異なる場合に、第1ノズル列L1と第2ノズル列L2との間における気流の影響を抑制するための気流制御ライン1401、1402、1403を実験的に得た。
図10において、縦軸および横軸は1画素当たりにおけるドットの形成数である。また図9のように、同一のラスター(R0〜R15)上に位置する大ドット形成用のノズルは各インク色において1つずつであり、同様に、同一のラスター(R0〜R15)上に位置する小ドット形成用のノズルは各インク色において1つずつである。そのため、例えば、ノズル列C1によって1画素内に形成される大ドットは、図11(a)のように偶数ラスター上における2ドットが最大となり、またノズル列C3によって1画素内に形成される小ドットは、図11(b)のように奇数ラスター上における2ドットが最大となる。したがってシアンインク吐出用のノズル列に関しては、図10における横軸は、第1ノズル列L1としてのノズル列C1、C2による1画素内の合計の形成ドット数(最大数4)であり、図10における縦軸は、第2ノズル列L2としてのノズル列C3、C4による1画素内の合計の形成ドット数(最大数4)である。大ドット形成用の記録データはノズル列C1、C2に対して均等に振り分けられ、また小ドット形成用の記録データはノズル列C3、C4に対して均等に振り分けられる。
気流制御ライン1401、1402、1403は、1画素内において、第1ノズル列によって形成されるドット数と、第2ノズル列によって形成されるドット数と、比率を表すことになる。
まず、気流制御ライン1401に基づいて、第1ノズル列と第2ノズル列によって形成される1画素当たりのドット数について考察する。気流制御ライン1401の上側の領域は、インクの吐出に伴う気流の影響が大きく、高品位の画像の記録が難しいNG領域である。一方、第1ノズル列と第2ノズル列による形成ドット数の合計が少ない領域、つまり気流制御ライン1401の下側の領域は、インクの吐出に伴う気流の影響が小さく、高品位の画像の記録が可能なOK領域である。記録制御するときには、第1および第2ノズル列によって形成されるドット数がOK領域内となるような記録データに基づいて、記録しなければならない。
3本の気流制御ライン1401、1402、1403は、4パス記録において記録ヘッドの移動速度が異なる場合の気流制御ラインである。記録ヘッドの移動速度が35[インチ/秒]のときには、気流制御ライン1401のOK領域内においてドットを形成するような記録データを生成し、その記録データに基づいて画像を記録する。また、記録ヘッドの移動速度が25[インチ/秒]のときには、気流制御ライン1402のOK領域内においてドットを形成するような記録データを生成し、その記録データに基づいて画像を記録する。また、記録ヘッドの移動速度が12.5[インチ/秒]のときには、気流制御ライン1403のOK領域内においてドットを形成するような記録データを生成し、その記録データに基づいて画像を記録する。記録ヘッドの移動速度が遅いほど気流の影響度が小さくなるため、その移動速度が遅いほど気流制御ラインは高めになり、OK領域が広くなる。このように、記録ヘッドの移動速度に応じたOK領域内においてドットを形成するように記録データを生成し、その記録データに基づいて画像を記録する。したがって、記録ヘッドの移動速度の如何に拘わらず、気流の影響のない記録制御の実現が可能となる。
図12は、大ドット形成用の記録データと小ドット形成用の記録データの構成例の説明図であり、それらのデータは、互い独立した2ビットのデータ形式となっている。大ドット形成用の記録データがレベル1のときは1画素に大ドットが1つ形成され、同様に、小ドット形成用の記録データがレベル1のときは1画素に小ドットが1つ形成される。その場合、前者のレベル1の記録データは、大ドット形成用の対のノズル列(例えば、シアンインクの場合にはノズル列C1、C2)に対して均等に振りまかれ、後者のレベル1の記録データは、小ドット形成用の対のノズル列(シアンインクの場合にはノズル列C3、C4)に均等に振りまかれる。
図13は、このような記録データの振りまき処理を説明するためのブロック構成図である。
インクジェット記録装置2000の記録制御部1010において、受信バッファ1011は、ホスト装置1000から2ビットに量子化された記録データを受信し、ドット配置パターン格納ユニット1012はドット配置パターンを格納する。ドット配置パターン割り付けモジュール1013は、前述した図8のドット配置パターン化処理を実行するものであり、格納ユニット1012に格納されたドット配置パターンを用いて、受信バッファ1011内の記録データにドット配置パターンを割り付ける。展開バッファ(プリントバッファ)1014は、モジュール1013によって割り付けられたドット配置パターンにより、記録データを展開する。モジュール1013は、ROM103(図7参照)に格納されてCPU101(図7参照)によって実行されるソフトウェアモジュールである。受信バッファ1011、格納ユニット1012、および展開バッファ1014は、DRAMの所定のアドレス領域に用意する。
格納ユニット1012には、ドット配置パターンが予め番号を割り付けて格納されている。そのドット配置パターンは、図12のように、大きさが異なるドット毎の記録データ(レベル0〜3の量子化データ)が取り得るドット配置パターンである。そして、それらの中から選択したパターンを展開バッファに1014に展開し、その展開したパターンにしたがってドットが形成される。図13において、大シアンはシアンインクによる大ドット形成用のパターン、小シアンはシアンインクによる小ドット形成用のパターン、大マゼンタはマゼンタインクによる大ドット形成用のパターン、小マゼンタはマゼンタインクによる小ドット形成用のパターン、大イエローはイエローインクによる大ドット形成用のパターン、大ブラックはブラックインクによる大ドット形成用のパターンである。
図14は、ドット配置パターン割り付けモジュール1013によるデータ展開処理を説明するためのフローチャートである。
まず、ホスト装置1000から転送された記録データ(2ビットの量子化データ)を受信し、その記録データを受信バッファ1011に格納する(ステップS1)。そして、その格納した記録データの中から1画素分の記録データを読み出し(ステップS2)、その記録データのレベル(0〜3)に対応するドット配置パターンを選択して、そのパターンを展開バッファ1014に展開する(ステップS3)。同一レベルの記録データに対してドット配置パターンが2つある場合には、それらのうちのいずれかを選択して展開することになる。その際には、それらの同一レベルの2つのドット配置パターンを交互に割り当てる。本例の場合、レベル1の記録データによってシアンインクの小ドットを形成するときには、図12のような2つのパターンを交互に割り当てて、ノズル列C3、C4に対して記録データを均等に振りまく。そして、受信バッファ1011に格納した記録データの全画素について、展開バッファ1014への展開が終了したか否かを判定し(ステップS4)、それが終了していなければステップS2に戻り、それが終了したときにはデータの展開処理を終了する。
(記録データの生成)
図15は、図9のように、大ドット形成用のノズル列と小ドット形成用のノズル列に対応する記録データの生成方法の具体的な説明図である。
本実施形態においては、記録画像の各階調レベルに関して、階調性を維持しつつ、気流制御ラインのOK領域内となる記録データを生成する。本例においては、階調補整処理J0004(図8参照)でのデータ変換処理を含む一連のデータ処理を介して、最終的に、各ノズル列に対応した図15のような記録データを生成する。階調補整処理J0004では、前述したように、C、M、Y、K、SC、SM(後段処理出力データ)各色の8ビットずつの色分解データ(後段処理入力データ)に対して、各色のインクの階調特性に応じた1次元LUTを用いて、インク色およびドットサイズに対応した分解データに変換し、量子化処理に渡す。
図15(a)、(b)は、シアンインクによる大ドット形成用のCの階調補正テーブルと、シアンインクによる小ドット形成用のSCの階調補正テーブルと、に関しての生成方法を代表して説明するための図である。それらのシアンインクによる大ドットと小ドットは、互いに隣接するノズル列(図9中のノズル列C1(L1)とC3(L2)、またはC2(L1)とC4(L2))を用いて形成される。また、これらの図15(a)、(b)においては、横軸は色分解された各プレーンの後段処理出力データで、CおよびSCデータが記録しない0から最大濃度のシアン信号値255に至る範囲を示している。一方、これらの図の縦軸は、8ビットの階調補正処理出力データC‘およびSC‘の値を示している。すなわち階調補正テーブルの形式を示している。また、後段処理J0003によるデータ変換の仕方は、記録ヘッドの移動速度に応じて異なる。本図においては、CとSCの階調補正テーブルの関係が判り易く説明するために、便宜上記録ヘッドの移動速度が35[インチ/秒]、のとき例を記載しているが、記録ヘッドの移動速度が他の場合においても同様な階調補正テーブルのセットが用意される。
図15(a)はCデータ、図15(b)はSCデータ、の階調補正処理についての説明図である。図15(a)のように、後段処理出力信号値が0〜255に対して、曲線1501のように変化している。曲線1501は後段処理出力信号値が0〜144の領域では、Cデータの補正出力値は0となっている。そして、144〜255の領域で、補正出力値が単調に増加しており、後段処理出力信号値が255のとき、補正出力値が175となるように補正されている。
一方図15(b)では、後段処理出力信号値が0〜255に対して、曲線1502のように変化している。曲線1502は後段処理出力信号値が0〜144の領域では、SCデータの補正出力値は単調増加しており、後段処理出力信号値が144のときSC補正出力値213で最大値をとり、144〜255の領域で、補正出力値が単調に減少している。後段処理出力信号値が255のとき、補正出力値が0となるように補正されている。なお、図15(a)と図15(b)の曲線1501と曲線1502が変化する点の入力値144は実験的に求められるしきい値であり、記録ヘッドのノズル列間の距離や各ノズル列のノズル数や記録ヘッドの移動速度によって異なる値となる。
さらに後段処理J0003で用いられる3DのテーブルはCとSCが必ず同じ値となるように生成されている。また、補間処理もCとSCで同一の処理が行われる。すなわち、階調補正処理J0004への入力信号である後段処理出力信号値はCとSCは全く同じ値となるように工夫されている。階調補正処理J0004でのCおよびSCの補正された信号値は、ハーフトーニング処理J0005で4レベルに量子化され、さらにドット配置パターン化処理J0007により図12で示したようなパターンにより各々0〜4発までの最終的な記録ドット数が決定される。
図16(a)は、図10の気流制御ライン1401だけを抜き出したものである。また、図16(b)は大ドットと小ドットの記録ドット数の遷移を、曲線1601に示したものである。曲線1601は次の様にして得られたる曲線である。まず、後段処理J0003からの出力信号値が0〜255に変化した際に、図15(a)および図15(b)で示された階調補正テーブルを用いて階調補正処理J0004を行う。次に、その後のハーフトーニング処理J0005およびドット配置パターン化処理J0007を行う。これら一連の処理の結果、最終的に得られる大ドットと小ドットの記録ドット数の遷移を示したものが曲線1601である。判り易くするために後段処理の出力信号値が0から255へ増加した際大ドットと小ドットの記録ドット数の遷移方向を→で示してある。
図15(a)、(b)および図16(b)を用いて、階調補正テーブルと実際の記録ドットの関係を説明する。図16(b)の曲線1601において始め原点から縦軸上にそって小ドットのドット数が増加している、これは図15(a)の曲線1501においては、C補正値が入力値「144」までは0であり、図15(b)の曲線1502だけが単調に増加している特性に対応する。後段出力信号値「144」の時、曲線1502が最大値「213」で曲線1501が「0」となっており、これが曲線1601においては、縦軸上の小ドットのドット数が最大値「2.8」の変極点である。その後、曲線1601は大ドットの記録ドット数が増加するにつれて、小ドットが減少する曲線となる。この領域では、曲線1601は、図16(a)の気流制御ライン1401と全く同じ特性になるように、曲線1501と1502は形成されている。すなわち、図15(a)および(b)において、同一の入力信号値(=後段信号出力値)に対して、入力値144を境に、曲線1501は単調に増加し、その単調増加量に応じて曲線1502は減少するよう形成されている。
これら曲線1501と1502により大ドットの記録ドット数と小ドットの記録ドット数は一対一に対応つけられている。さらにハーフトーニング処理J0005およびドット配置パターン処理J0007が定まっているため、図16(a)の気流制御ライン1401上を遷移させるように曲線1501と1502の形状を決定することができるのである。図16(b)で曲線1601は横軸上の点すなわち,大ドットの記録ドット数「2.1」,小ドットの記録ドット数「0」の点で終了しているが,これは図15(a),(b)において後段出力信号値が「255」の時の,CとSCの補正出力値の「175」と「0」に対応している。
ここで後段処理部J0003および階調補正処理部J0004で条件を制御していることが判る。しかしながら、後段処理部J0003は階調補正処理部J0004への入力信号値を同一にし、CおよびSCの関係を一対一関係にする役割を負っているに過ぎず、気流制御条件を実質的に実現しているのは、階調補正処理部J0004で用いる1次元のLutであることがわかる。すなわち,後段処理部J0003での補間アルゴリズムと気流制御ラインとの間には、何の制約も存在しない。そのため,公知の後段処理部で気流制御を実現した際に発生していた補間アルゴリズムと気流制約条件との不一致を考慮する必要は無くなる。
また、本実施形態では階調補正テーブルにより,気流制御条件を実現している。量子化前の信号値において制御を行っているので,ある巨視的な領域をみた平均的なドット数の制御が可能となる。すなわち、インデックスパターン時に発生していたような整数ドット単位での制御の制約がなくなり,画像形成上の自由度は各段にあがる。
次に本実施例の効果について説明する。本実施形態においては、気流影響、小インク滴の着弾精度、および大ドットを形成し始めるときの記録画像の粒状感を考慮して、上述したように記録データを生成する。さらに、ノズル列間のインク吐出に伴って生じる気流の影響で発生する画質の劣化が許容できる範囲に収まるように条件を設定するために、次のようにした。即ち、インク毎の分解において、同色の大ドットと小ドットに対応する分解データの出力値を同一にし、同一値である大ドットの分解データと小ドットの分解データに対して、階調補正を行った。条件設定を量子化前の達データの段階で行うことにより、量子化後に気流の影響を排除する条件設定を行う場合に比べ、マクロ的な調整が出来るため、気流制御領域内で、小ドットをぎりぎり多く使用できる気流制御ライン上で画像が形成でき、粒状感の少ない良好な画像が得ることが可能となる。そして、インク色分解後のデータに対して気流の影響の調整を行うので、1次元のLUTを用いた入出力特性の変換という簡単な方法で実現できる。これは、インク色分解前の段階で気流の調整を行った場合に必要となる気流調整を加味した3次元LUTの作成する手間を考えれば、インク色分解前の段階で気流の調整を行う場合と比べはるかに簡単な手法であるといえる。
また、本発明によれば、公知の手法では問題であったインデックスパターンにより気流制御を実現した際に発生していたような整数ドット単位での制御の制約により最適な画像が得られないという問題は発生しない。さらに、本発明によれば、公知の手法では問題であった後段処理部で気流制御を実現した際に発生していた補間アルゴリズムと気流制約条件との不一致による気流による画像劣化や設計作業の複雑化の問題も発生しない。本発明によれば、気流制御を実現しつつかつ最適な画像形成が可能となる。
<その他の実施形態1>
以下に、上記実施形態の補足事項に関して説明を行う。
上記実施形態において用いる階調補正テーブルの特性について述べる。図15a、15bで説明したように、階調補正テーブルは、後段処理の出力信号値が2色とも同じになるように設定されたCとScに対して、それぞれの階調補正テーブルを通し、ヘッドより塗布されるインクの量が気流の条件を満たすように作られている。図17は、後段出力値に対する同色のインクのみ(たとえばCとScの2色)を、図15aと図15bに示す階調補正テーブルを使用して階調補正してプリント出力した際の光学的特性を示したグラフである。図17に示すグラフの横軸は、C、Scの後段処理の出力信号値を示し、縦軸は明度でL*を示している。前述したがCとScの後段処理の出力信号値は同じ値になるようにしてある。ここでL*はCIE L*a*b*における明度である。グラフからわかるように、後段処理の出力信号値に対して、同色のインク2色(たとえばCとScの2色)を用いたプリント出力の光学特性は、線形な特性を示すように設定されている。これにより後段処理において色分解を行う際に、色分解テーブルの出力信号値に対しての光学的線形性を保障することになる。色分解の際には先に述べたように、格子点のみをテーブル値として値を設定し、格子点の間は四面体補完等の線形的な補完演算をもちいて計算で求めることが多い。補完演算により計算される後段の値に対して、図17に示すような光学的に線形性があるため、補完演算の結果に対しても光学的には線形性が保障される。もし気流制約条件を満たしていても、CとScの関係が、光学的に線形性の無い階調補正テーブルであったら色分解での補完演算結果に対して、光学的には線形性が無くなり、結果としてプリント出力では擬似輪郭等の画像弊害を起こすことになる。図17のように後段信号値に対して、C、Scの階調補正テーブルが光学的に線形特性を有していることにより、画像弊害のない良質な画像を形成することが可能となる。ここでは説明の便宜上、光学特性を明度特性の例でしめしたが、これに限定するものではない。明度のほか、彩度や色差、濃度、輝度等どのような光学的特性を用いるかに関しては、本発明を適応する場合の設計事項である。本発明の意図することころはそれらの光学特性に対して後段出力値に対して、線形性を保った特性となる階調補正テーブルを形成することである。
<その他の実施形態2>
図8の画像処理系のブロック構成図において、J0004への入力信号値および出力信号値のbit数は全色共通で、共に8bitで記載されている。気流制約条件のあるCとScに関するJ0004への入力値のbit数を8bitより大きなbit数にすることで階調特性をより良化させることが可能となる。気流制約の無いの場合、後段の入力信号値256段階(0〜255)に対して、出力値を対応付けることになる。一方、図15aのように、気流制約のあるCの場合(曲線1501)は、後段処理出力信号値が0〜144の領域では、Cデータの補正出力値は0となっている。そして、144〜255の領域で、補正出力値が単調に増加している。すなわち、後段の出力値が111段階に対して、出力値を対応付けている。先の気流制約の無い場合のドットに対して、実質の入力段階が下がっており、後段信号値の1段に対する出力値の変化も大きくなる。これは、現画像が連続階調を出力する際の階調再現の滑らかさを低下させる原因となる可能性がある。そこで、図8のJ0004に対して、入力する値を細かくすることで、階調補正テーブルからの出力値もなめらになり、結果連続階調時の階調再現が良好な画像が実現できることとなる。ここで、この図8のJ0004に対しての入力する値を細かくすることは、後段の出力値の小数部を有効にすることを意味する。一般的に、少数演算は、整数演算に比べ、処理速度が遅くなるため、本実施例では、後段の出力値を8bitより大きなBit数とすることで、8bitより多くしたBit数分を少数部に充てて、著しく速度を遅くすること無く実現している。このようなBit数の拡張の程度に関しては、設計事項ではあるが、目安としては図15aの場合のように実質的な入力レンジが通常の場合に比べてどの程度落ちているかを考慮して設計を行えばよい。本例であれば、他の色が256段階に比べ、Cは111段階であり、256/111で、およそ2.3倍程度悪化していることになる。Bit数で制御を行う場合、1bitもしくは2bit分(2倍から4倍の段階数)大きくしておけば、同等となる。
また、本説明で気流制約条件のあるドットにのみこれらのBit数を大きくする処理を行っているのは、Bit数をあげればその分だけ処理速度は遅くなるためで、必要の無い色に関してBit数を上げてしまうことによる余計な速度低下を防ぐことが可能となる。さらには、複数の印字モードを有する機器では、印字モードによっては気流制約条件が必要な印字モードと不要な印字モードが存在する場合がある。そのような場合は、不要な印字モードでは通常のBit数で処理を行い、必要な印字モードではBit数を大きくした処理に切り替えることによって、必要以上の速度低下を防ぐことが可能となる。その際、上記のように気流制約条件が必要な印字モードにおいて必要なドットに関してのみ後段出力のbit数の拡張を行ってもよい。しかし、処理系が複雑になる可能性もあるので、気流制約条件が必要な印字モードのすべての色でBit数の拡張を行い、気流制約条件が不要な印字モードではBit数の拡張を行わないといった実装形態があってもよく、その場合においても、気流制約条件が不要な印字モードでは処理速度の低下は防止できるという効果は実現できる。
<その他の実施形態>
上記の実施形態では、CとScにおいて気流制約条件が発生する場合についての例で述べたが、この組み合わせに制限するものはないことは、言うまでも無い。MとSmでもよい。また、インク滴の大きさが2段階の場合において述べたが、もっと3段階以上の場合においても本発明の意図する考え方によれば同様な効果が得られることは、言うまでもない。そのような場合においては、同色インクにおいて後段の色分解後出力値を各ドットで同じ値になるように設定して、その後の階調補正テーブルにおいて、各ドット間の制約条件に基づいたテーブルを設定すればよい。また、気流制約条件が同色で異なるインク濃度の場合に発生した場合においても同様な考え方が適応でき、たとえば濃度の濃いシアンインクと淡いシアンインクの間に気流制約条件があった場合には、それぞれのインクを本実施例のCドットとScドットに置き換えれば同様な効果がえられることとなる。
また図10のように印字モードによって気流制約条件がことなっている場合においても各印字モードにおける階調補正テーブル値を変更することにより、各印字モードに最適化した画像形成が可能となる。
また、前記本実施形態の説明においては気流制約条件に限りなく近づけるようにした例で説明を行ったが、気流による制約以外の要因で、複数のノズル列間の記録ドット数に制約がある場合には、それらの制約に基づいて本発明の手法を適応できる。ここで、重要なのは、図10や図18に示したように複数の記録ノズル間において記録ドット数に制約が必要だと認められた場合に本発明の手法が適応できることである。
本発明は、ホスト装置と記録装置の組み合わせを例に説明したが、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能、などを持つマルチファンクションプリンタ(MFP)で実施することも可能である。本発明を適用するMFPのハードウェア構成は、周知のものが使用できる。MFPのコピー機能に本発明を適用する場合、図8のホスト装置1000の処理ブロックと記録装置2000の処理ブロックは、両方ともMFPの内部で処理されることとなる。例えば、図8のJ0001のアプリケーションの処理として、スキャナ部を動作させて原稿を読み取りsRGBのデータを作成する処理を行い、プリンタドライバの処理ブロックJ0002〜J0006の処理をMFPのCPUや画像処理IC(半導体集積回路)で行うことで実施できる。