JP5171083B2 - 耐震補強構造及び耐震補強方法 - Google Patents

耐震補強構造及び耐震補強方法 Download PDF

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Description

本発明は主として耐震性の不足している既存の鉄筋コンクリート造、または鉄骨鉄筋コンクリート造、あるいはコンクリートブロック造、レンガ造等の構造体に対して実施される耐震補強構造、及び耐震補強方法に関するものである。
耐震性の不足する前記既存の鉄筋コンクリート造構造物等の耐震性を向上させる方法には、柱や梁の回り、または耐震壁の両側に鋼板(鉄板)や連続繊維シートを巻き付ける方法(特許文献1、2参照)、耐震壁を増設する方法、ブレースを増設する方法、耐震壁の壁厚を増加させる方法等がある。
これらの耐震補強方法の内、構造物質量の増加を招くことなく耐震壁を耐震補強する上では、連続繊維シートを用いる方法が有効であり、軽量であるために、施工性がよい利点もある。しかしながら、連続繊維シートは引張力に対してのみ抵抗でき、圧縮力を負担することができないため、地震による引張力と圧縮力の繰り返しによって耐震壁や柱等の躯体から剥離する可能性が高く、躯体と一体となった形で地震力に抵抗することが難しい。
連続繊維シートと躯体との一体性を補うために、躯体の表面に貼り付けられた連続繊維シートの周辺部分に鋼材を配置し、鋼材を貫通するボルトを躯体に打ち込むことにより連続繊維シートを躯体に一体化させることも行われる(特許文献1、2参照)。
繊維シートを鋼材で挟み込んで拘束する方法によれば、躯体と繊維シートとの一体性をある程度確保することができると考えられる。特に特許文献2の図3、図4では鋼材を耐震壁の周囲以外の部分にも格子状に配置しているため、繊維シートと躯体との一体化の効果が高い利点がある。但し、この方法によれば、鋼材が重なる部分を拘束することができるものの、重ならない部分まで均等に拘束することはできないため、その部分の躯体からの剥離を有効に防止することが難しい。
また樹脂組成物を含浸させた繊維シートの表面側から躯体中に釘類を打ち込んだ状態で、樹脂組成物を硬化させることによりFRP補強体を躯体表面に付着させる方法がある(特許文献3参照)。この方法ではFRP補強体は繊維シートに樹脂組成物が含浸し、硬化することにより形成され、その表面に位置する釘類の頭部がFRP補強体を躯体側へ押さえ付けることによりFRP補強体が躯体表面に密着した状態を維持する。
FRP補強体は樹脂(プラスチック)の存在により引張力に対する抵抗力を発揮することから(「連続繊維補強材を用いた既存鉄筋コンクリート造及び鉄骨鉄筋コンクリート造建築物の耐震改修設計・施工指針:(財)日本建築防災協会」参照)、高強度を保有する上でも樹脂を不可欠な要素にするため、樹脂を他の材料に置き換えれば同等の機能を持ち得ない。
この他、繊維シートを貫通して躯体中に定着されるアンカーピンの頭部を変形追従能力の高いアクリルゴム系の主材層によって完全に被覆し、繊維シートの剥離を防止する方法がある(特許文献4参照)。
特開平10−25904号公報(請求項1〜4、図1〜図3) 特開平11−62269号公報(請求項1、2、4、図1〜図8) 特開平5−93463号公報(請求項1、段落0008、図1〜図3) 特開2004−183261号公報(請求項1、段落0013、0017、図1)
特許文献4の方法によれば、アンカーピンの頭部を保護する主材層に弾性変形能力の高いアクリルゴム系材料を使用することにより、主材層の躯体の変形への追従能力を確保し、主材層への亀裂の発生を防止している。躯体が変形したときにその変形に主材層自体を追従させることによりアンカーピンの頭部を常に防水し、その結果としてアンカーピンの頭部が拘束するネット(繊維シート)の剥離を防止している。
この場合、アンカーピンの頭部はネットを躯体側へ押さえ付けるようにネットに密着しているため、アンカーピンの頭部が主材層に付着する効果はなく、主材層はアンカーピンに対してはその頭部を水から保護する役目を持つに過ぎない。従ってアンカーピンの軸部には主材層を躯体(ネット)側へ引き寄せる働きはなく、主材層にはネットを躯体に密着させた状態に維持する働きもない。
本発明は上記背景より、従来方法とは異なる手法により耐震壁等の構造体に密着している繊維シート全面を構造体に一体化させた状態に保持し、繊維シート全面の剥離を防止し得る耐震補強構造及び耐震補強方法を提案するものである。
請求項1に記載の発明の耐震補強構造は、構造体の表面に繊維シートが貼着され、その繊維シートの表面側からその繊維シートを貫通した状態で前記構造体中に定着具が定着されると共に、前記定着具の基部側の一部区間が前記繊維シートの表面から突出し、前記繊維シートの表面側に付着させられる補強材中に埋設され、前記定着具が前記構造体中に定着された状態を維持しながら、前記構造体表面から突出する区間において前記補強材に付着して前記補強材が前記繊維シートの表面に付着した状態を維持し、前記繊維シートが前記構造体の表面側へ密着した状態を維持していることを構成要件とする。定着具の基部は構造体中に定着される先端部の反対側の端部を指す。構造体はコンクリート造の躯体とコンクリート造以外の躯体を含む。
耐震補強は主として耐震性の不足している既存の耐震壁に対して実施されるが、新設の耐震壁においても実施される。耐震補強の対象は耐震壁には限られず、柱や梁、基礎、スラブ等も対象となる。コンクリート造の構造体は鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、コンクリートブロック造、レンガ造等があり、間仕切り壁のような非耐力壁や2次部材(非構造部材)も含まれる。
繊維シートには1方向、もしくは2方向の強化繊維の他、多方向の強化繊維が使用され、繊維シートの貼着は接着剤を用いて行われる。特に樹脂系接着剤を用いれば繊維シートがFRP化するため、繊維シートの引張強度、靭性、弾性が向上する。
定着具には主にボルトやアンカー等が使用されるが、軸部が構造体中に定着される区間と構造体から突出する区間を有すれば、定着具の形態は問われない。軸部の、構造体から突出する区間の先端(基部)には必ずしも頭部を有することは必要ではなく、突出区間の周面における付着力により補強材との一体性が確保される形態(機能)を有すればよい。定着具は複数本集合することにより一定レベルの水平力の作用時にも補強材が繊維シートの表面から剥落しない程度の付着力を補強材との間で確保し、この付着力の大きさから、隣接する定着具間の間隔が決められる。
補強材にはモルタルやコンクリート、樹脂の他、樹脂や繊維を混入したモルタル等の硬化性の材料が使用され、モルタルの場合、繊維シートには吹付けや塗布により付着させられる。コンクリートの場合には例えば繊維シートを埋設した、もしくは付着させたプレキャストコンクリートとして補強材が成型されることもある。この場合、補強材であるプレキャストコンクリートに繊維シートと定着具を予め一体化させることができるため、例えば既存の耐震壁等の構造体に対しては繊維シートが構造体側を向き、定着具の先端が構造体中に埋設された状態で接合される。
モルタル等の補強材の層厚は原則として定着具の、構造体からの突出区間との間で必要な付着力が得られるように決められ、具体的には上記した隣接する定着具間の間隔、定着具の、構造体表面から突出する区間の形態等との関係から任意に設定される。補強材は後述のように繊維シートの剥離を防止する機能を持つことから、基本的には繊維シートの貼着された面の全面に付着させられるが、繊維シート全面の内の剥離防止に有効な領域にのみ付着させられることもある。
定着具は構造体中に定着された状態を維持しながら、構造体表面から突出する区間において補強材に付着することにより補強材を構造体の表面側へ密着させる働きをし、複数本集合することにより補強材の構造体表面からの崩落を防止する。補強材が定着具に付着した状態を維持する限り、すなわち補強材が崩落を起こさない限り、繊維シートの構造体表面からの剥離が阻止されることになる。定着具が補強材を構造体側へ密着させる効果は請求項2に記載のように定着具が軸方向の引張力を受けた状態で構造体に定着されることにより向上する。
特許文献3、4のように釘類の頭部によって繊維シートを構造体側へ押さえ付ける形式によれば、繊維シートの、釘類頭部の背面部分と周辺部分のみが釘類に拘束されるため、繊維シート全面の剥離を防止することは難しい。これに対し、請求項1ではこの釘類に相当する定着具の基部(構造体表面からの突出区間)の表面に付着した補強材が繊維シートを構造体側へ押さえ付ける形になるため、繊維シート全面の剥離を防止する効果が高い。
また前記のように繊維シートと樹脂(プラスチック)の組み合わせによりFRP補強体を形成する方法では、FRPを構成する上で、樹脂をそれ以外の材料に置き換えることができないため、仮に樹脂をモルタル等に置換しても、繊維シート自身に引張力に対する抵抗力と靭性を付与することはできない。
これに対し、請求項1では補強材によって繊維シートに強度と靭性を付与するのではなく、補強材の全面を、繊維シートを構造体に拘束させるために利用しているため、補強材は繊維シート自身に強度と靭性を付与する機能を持つ必要がない。繊維シート自身がFRP補強体程の引張力に対する強度を有しなくても、補強材が繊維シートを構造体側へ拘束することで、繊維シートが構造体に付着した状態を維持し続けることができるため、結果的に繊維シートの引張力に対する抵抗力が確保されることになる。
また繊維シートの表面に補強材が付着させられることで、繊維シートは硬化する補強材によって固められるため、圧縮力によって繊維シートに皺が寄り、繊維シートが剥離する事態が回避される。結果として、繊維シートは全面において常に構造体に密着した状態を維持したまま、引張力を負担することが可能になる。
圧縮力による繊維シートの剥離が回避されることで、繊維シートは地震により繰り返し加力を受けた場合にも構造体から剥離を起こすことがなくなるか、剥離の可能性が低下するため、破断するまで繊維シート自身の持つ高強度特性を発揮させることが可能になる。繊維シートは補強材との付着効果によって補強材を構造体に付着させた状態を持続させる働きもするため、補強材の剥離を防止する効果も発揮し得る。
特に補強材として高性能繊維を混入した繊維補強モルタルを用いた場合には、繊維補強モルタル自体が2N/mm程度の引張応力を持続的に負担でき、30N/mm程度の圧縮強度も有することから、繊維シートに負担させる引張応力の低減と、繊維シートが負担できない圧縮応力を繊維補強モルタルに負担させることが可能である。その結果、少ない繊維シートの使用で耐震壁を効果的に補強することが可能になる。モルタル等の補強材に引張応力の負担を期待しない場合には、高性能繊維を混入しない一般のモルタルを使用し、モルタルには圧縮応力のみを負担させればよい。
補強材にモルタル等の無機質材料が使用された場合には、補強材は繊維シートの表面全体を覆うことで、火災発生時の火害劣化を防止する耐火被覆材になるため、有害ガスの発生を防止し、火災発生時に繊維シートを燃焼させることなく、その耐震補強材としての機能を維持させる働きもある。
補強材の定着具への付着効果は定着具の、構造体表面から突出する区間の表面積が大きい程、大きく、具体的に定着具が構造体中に定着される軸部より断面積の大きい頭部を有することで、補強材の付着効果が向上する。この場合、頭部はボルトの頭部やアンカーの頭部に類似した形状の他、構造体寄りの位置から基部側へかけて次第に断面が増大する形状、または節、もしくはねじを有する形状等、任意に形成される。
定着具の、構造体表面からの突出長さは前記のように補強材の層厚や、補強材との間で確保すべき付着力の大きさによって定まり、この突出長さによって構造体中に挿入等される区間の長さが決まる。そこで、請求項3に記載のように定着具が軸部の一部に構造体の表面に係止する係止部を有すれば、定着具の構造体への打ち込み時に打ち込み深さが係止部によって規定されるため、全定着具を確実に定着させることができ、定着作業の能率を向上させることが可能になる。
また前記のように定着具が軸方向の引張力を受けた状態で構造体に定着されれば、定着具が補強材を構造体側へ密着させる効果が高まるため、請求項3ではこの効果を得るために係止部を利用することも可能である。例えば請求項3において、係止部より先端側(構造体側)の軸部が構造体中にねじ込みにより、または打撃を受けた状態で定着されたときには、係止部が構造体表面に係止し、構造体表面から反力を受けることで、軸部が引張力を受けた状態になるため、補強材を構造体側へ密着させる効果が向上することになる。
定着具の構造体への定着から、補強材の繊維シート表面への付着までの作業は既存の構造体に対しては、主として請求項4に記載の方法によって行われる。
請求項4に記載の耐震補強方法は、構造体の表面に繊維シートを貼着する工程と、その繊維シートの表面側からその繊維シートを貫通させて前記構造体中に定着具を定着させ、前記繊維シートの表面側に補強材を付着させる工程とを含み、前記補強材を付着させる工程において、前記定着具の基部側の一部区間を前記繊維シートの表面から突出させて前記繊維シートの表面側の前記補強材中に埋設させると共に、前記定着具を前記構造体中に定着させた状態を維持しながら、前記構造体表面から突出する区間において前記補強材に付着させ、前記補強材を前記繊維シートの表面に付着させた状態を維持し、前記繊維シートを前記構造体の表面側へ密着させた状態を維持することを構成要件とする。
ここで、構造体表面に繊維シートを貼着する工程と、繊維シートの表面側に補強材を付着させる工程の前後は繊維シートを現場で構造体表面に貼着するか、工場で予め繊維シートの表面側に補強材を付着させるか、によって決まる。
現場で施工する場合には繊維シートの貼着後に補強材の付着が行われ、工場で補強材を生産する場合には繊維シートへの補強材の付着が先行することになる。請求項4の方法の実施によって請求項1〜請求項3に記載の耐震補強構造が形成されるため、請求項4は請求項1〜請求項3に記載の発明の利点を引き継ぐ。
構造体表面に貼着される繊維シートの表面側から構造体中に定着具を定着させると共に、繊維シートの表面側に補強材を付着させ、定着具の基部側の一部区間を繊維シートの表面から突出させてこの区間に補強材を付着させるため、複数本集合する定着具により補強材の構造体表面からの崩落を防止することができる。
従って補強材が崩落を起こさない限り、補強材によって繊維シートを構造体表面に密着させた状態に維持することができ、繊維シートの構造体表面からの剥離を阻止することができる。
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1はコンクリート造等の構造体1の表面に繊維シート2が貼着され、その繊維シート2の表面側から構造体1中に定着具3が定着されると共に、繊維シート2の表面側にモルタル等の補強材4が付着させられ、定着具3の基部側の一部の区間が繊維シート2の表面から突出し、補強材4が定着具3の基部側の一部の区間に付着した状態を維持している耐震補強構造の具体例を示す。図1−(b)は(a)の水平断面を示す。
図面では構造体1が耐震壁やコンクリートブロック壁、あるいはレンガ壁である場合の例を示すが、壁以外の柱、梁、スラブ、基礎等の構造体にも本発明は適用される。構造体1が耐震壁の場合を示す図面では、耐震壁の片面にのみ、繊維シート2と定着具3、及び補強材4を配置しているが、耐震壁の両面に配置することもある。
図面ではまた、既存の構造体1に対して繊維シート2の貼着と定着具3の定着、補強材4の付着を現場で行う様子を示しているが、補強材4を工場で製作し、この補強材4に予め繊維シート2と定着具3を一体化させておくこともある。
繊維シート2は1方向、2方向、または多方向に引張力に抵抗する強化繊維が使用され、主に強化の方向が構造体1表面に生ずる主引張応力方向を向くように貼着される、但し、状況によっては強化の方向が主引張応力方向を向かないこともある。繊維シート2の素材には炭素繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維等が使用され、引張方向に補強効果を発揮する繊維であれば素材は問われない。繊維シート2の貼着には主としてエポキシ樹脂を始めとする含浸接着樹脂等の接着剤が使用され、接着剤は硬化により繊維シート2に引張強度を付与する。
図1は一定の幅を有する帯状の繊維シート2を構造体1の表面に沿い、水平方向に向けて貼着した場合の例を示すが、帯状の繊維シート2は鉛直方向にも貼着される他、複数方向に組み合わせられて貼着されることもある。
現場で施工する場合、繊維シート2の表面側から繊維シート2を貫通して定着具3が構造体1中に挿入される。定着具3の挿入に先立ち、構造体1の定着具3に対応する位置には定着具3が挿入される挿入孔(削孔)が形成される。挿入孔には定着具3は単純に挿入される他、螺入や打撃等によって挿入される。挿入孔は削孔のままでもよいが、挿入手段に応じ、定着具3を受けるスリーブ、雌ねじの切られたインサート等が挿入孔に予め挿入されることもある。
定着具3にはボルトやピン(スタッドピン)、打撃により頭部が拡張する性能を有する特殊な釘、あと施工アンカー等が使用される。定着具3は前記した接着剤の硬化後の破断を防止する上で、接着剤の硬化前に構造体1中に挿入される。
図7は定着具3として前記の特殊な釘を使用し、専用のガン(銃)を用いて頭部に打撃力(衝撃力)を与えることにより定着具3を構造体1中に打ち込んだ場合を示す。図7−(a)は定着具3の打撃前の形状を、(b)はその頭部側の端面を示す。(c)は定着具3を構造体1中に打ち込んだ後の様子を、(d)はそのときの頭部の形状を示す。(e)、(f)は(c)の変形例であり、(e)は後述の係止部3cを有する場合、(f)は係止部3cを有しない場合を示す。
図7に示す定着具3の軸部3aは補強材4側から構造体1側へかけて次第に断面が小さくなる形状をし、頭部3bは打撃力を与えられる前には閉じた形をし、打撃力を受けることにより(c)、(d)に示すように拡張する。
図7に示す例では軸部3aの軸方向の中間部に、打ち込み時に構造体1(繊維シート2)に係止する係止部3cを形成し、係止部3cを構造体1の表面に係止させることで、定着具3の構造体1への挿入深さを制限している。定着具3の挿入深さが制限されることで、打撃力の大きさに拘らず、軸部3aの構造体1からの突出長さが一定に保たれる利点がある。
また係止部3cが構造体1に係止することで、係止部3cが構造体1から頭部3b側へ反力を受けるため、打撃により、もしくはねじ込みにより軸部3aを構造体1に挿入する場合に、軸部3aの係止部3cから先端側の区間に引張力を作用させることも可能である。この区間に生ずる引張力は定着具3の定着状態で定着具3の、構造体1から突出する区間に付着する補強材4を構造体1側へ引き寄せる効果を発揮する。
図7では係止部3cを鍔状に形成しているが、軸部3aの挿入に伴い、構造体1に係止することができれば係止部3cの形態は問われない。例えば軸部3aの途中から円錐台状に、次第に断面が拡大する形状に係止部3cが形成されれば、係止部3cの表面積が増加し、補強材4との付着効果が増大するため、係止部3cに頭部3bの機能を併せ持たせることもできる。
図8−(a)は軸部3aとなるスリーブ31の両側にコーン32を挿入した形式のあと施工アンカーを定着具3として用いた場合の挿入前の様子を示す。この定着具3は(b)に示すように構造体1に形成された削孔に対し、補強材4側から打撃力を受けることにより構造体1中のコーン32によってスリーブ31の先端が拡張し、同時に構造体1から突出した側のコーン32によってスリーブ31の補強材4側の端部も拡張する。スリーブ31の補強材4側の端部は拡張により定着具3の頭部3bになる。
図8−(c)はスリーブ31の片側にのみコーン32が挿入された形式のあと施工アンカーと、そのスリーブ31に螺合するボルト33を組み合わせて定着具3を構成した場合の定着具3の挿入状態を示す。この場合、スリーブ31を構造体1中に定着させた後、構造体1表面から突出するスリーブ31にボルト33を螺合させることにより定着具3が完成する。この定着具3ではボルト33の、スリーブ31から突出する部分の全体が補強材4との付着面積を確保する。
定着具3の構造体1への定着後、図1−(a)、(b)に示すように構造体1の表面全面に繊維シート2を被覆するように補強材4が吹付け、塗布、打設、接合等により付着させられる。補強材4には定着具3の、構造体1からの突出区間の全体が完全に埋設される程度の厚さが与えられる。定着具3は構造体1表面に沿った2方向に間隔を置いて配列し、複数本集合することにより補強材4を一体(1枚板)にした状態で、繊維シート2に付着した状態に保つ。
水平方向と高さ方向に隣接する定着具3、3間の距離は定着具3の構造体1からの突出長さ、補強材4の層厚等によって調整される。補強材4の層厚は繊維シート2に対する耐火被覆上、少なくとも25mm、特に30mm以上、確保されることが適切であるから、例えば補強材4の層厚が30mm程度であるとすれば、隣接する定着具3、3間の距離は300mm〜450mm程度に設定される。
図2は繊維シート2を耐震壁の全面に貼り付けながらも、補強材4を繊維シート2の剥離防止に有効な領域として、耐震壁の周囲(境界部分)にのみ付着させた場合を示す。この場合、補強材4を限られた領域に付着させるために、補強材4の付着以外の領域に発泡スチロールや耐熱ウール等から成型された型枠5が接着剤や両面テープ等により構造体1である耐震壁やその周りに接続する柱・梁のフレームに貼り付けられる。型枠5は補強材4と同等程度の厚さに成型される。
図3は2枚の帯状の繊維シート2を構造体1である耐震壁の隅角部間に対角線状に貼り付けることにより繊維シート2を引張ブレースとして作用させる場合を示す。2枚の繊維シート2は交差部分で重なる。この場合も、定着具3は基本的に各繊維シート2に付き、2方向に間隔をおいて配列するが、1枚の繊維シート2の幅が小さい場合には1方向にのみ間隔をおいて配列することもある。
図3でも繊維シート2の貼り付け部分に確実に補強材4が付着し、貼り付け部分以外に付着しないよう、繊維シート2以外の部分に型枠5を配置している。2枚の繊維シート2を交差させて貼り付けた場合、耐震壁の中央部における繊維シート2の交わり部分付近に、図中、白抜きで示す三角形状の領域が形成される。この領域に補強材4が付着しなければ、補強材4が剥離し易くなる可能性があることから、図3ではこの三角形状の領域にも補強材4が行き渡るよう、三角形状の領域を除いた部分に型枠5を配置している。
補強材4は2枚の交差した繊維シート2、2の表面と前記三角形状の領域に付着させられ、繊維シート2の長さ方向に沿って定着具3が配置される。この場合、補強材4の付着により繊維シート2の形態が維持されるため、繊維シート2が引張ブレースとして機能し、その機能を持続させることが可能になる。図3−(b)は(a)における繊維シート2の長さに沿った断面図である。
図2、図3の場合、型枠5は必ずしも補強材4の付着後に取り外される必要はなく、残されることで、保温材や防音材等として活用される。特に耐震壁が外壁である場合には型枠5が内断熱材、または外断熱材になるため、結露防止にも役立てられる。
図4〜図6は耐震壁が開口部6を有する場合に、耐震壁の片面に繊維シート2を貼り付けた耐震補強の例を示す。図4は開口部6が窓である場合の例を、図5、図6は開口部6が出入り口である場合の例を示す。耐震壁が開口部6を有する場合にも、耐震壁の両面に繊維シート2を貼り付け、補強材4を付着させることがある。
図4では特に開口部6周りの補強を強化するために、開口部6の外周に繊維シート2の剥離防止効果を高める拘束材7を配置している。拘束材7には例えば複数枚の繊維シート2を重ねた材料、またはFRP等の繊維強化プラスチック、鋼材等が使用される。拘束材7の繊維シート2への貼り付けには繊維シート2と同様に含浸接着樹脂等の接着剤が使用される。定着具3は拘束材7の位置では拘束材7の表面側から繊維シート2を貫通して構造体1中に挿入される。補強材4は基本的に拘束材7の位置を含め、繊維シート2が貼り付けられた領域の全面に付着させられる。
図4では拘束材7の離脱に対する安全性の面より、開口部6の高さと幅に余裕長を加えた区間に拘束材7を配置しているが、拘束材7は開口部6周りの補強に有効な区間に配置されれば足りる。ここでは高さ方向の拘束材7を耐震壁の全高に亘って配置し、水平方向の拘束材7を耐震壁の全幅より短い区間に配置しているが、水平方向の拘束材7を耐震壁の全幅に亘って配置することもある。
開口部6が耐震壁の中央部に位置する場合に、耐震壁の両面に繊維シート2を貼り付ける場合には、繊維シート2は例えば開口部6上の垂れ壁部分と開口部6下の腰壁部分、及び開口部6両側の袖壁部分において開口部6の小口(内周面)を巻き込むようにしながら壁の両面に貼り付けられる。図5、図6の例においても同様である。この他、開口部6の隅角部付近のひび割れ防止策として、開口部6の隅角部と耐震壁1の隅角部との間に繊維シート2を傾斜させて配置することもある。
図5は出入り口としての開口部6が耐震壁の中央部に形成されている場合の拘束材7の配置例を示す。この場合、拘束材7は開口部6の両側と上側に配置される。図6は同様に開口部6が耐震壁の片側に形成されている場合の拘束材7の配置例を示す。この場合も拘束材7は開口部6周りの補強に有効な区間に亘って配置される。
(a)は構造体としての耐震壁の片面全面に繊維シートを貼り付け、繊維シートの全面に補強材を付着させた様子を示した一部切欠き立面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。 (a)は耐震壁の片面全面に繊維シートを貼り付け、耐震壁の周囲部分に補強材を付着させた様子を示した一部切欠き立面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。 (a)は耐震壁の片面に繊維シートを交差させて貼り付け、繊維シートの全面に補強材を付着させた様子を示した一部切欠き立面図、(b)は(a)のC−C線断面図である。 (a)は耐震壁の開口部を除く全面に繊維シートを貼り付けると共に、開口部周りに拘束材を配置し、繊維シートの全面に補強材を付着させた様子を示した一部切欠き立面図、(b)は(a)のD−D線断面図である。 (a)は耐震壁の開口部を除く全面に繊維シートを貼り付けると共に、開口部周りに拘束材を配置し、繊維シートの全面に補強材を付着させた様子を示した一部切欠き立面図、(b)は(a)のE−E線断面図である。 (a)は耐震壁の開口部を除く全面に繊維シートを貼り付けると共に、開口部周りに拘束材を配置し、繊維シートの全面に補強材を付着させた様子を示した一部切欠き立面図、(b)は(a)のF−F線断面図である。 (a)は頭部に打撃力が与えられることにより構造体中に打ち込まれる定着具を示した立面図、(b)は(a)の頭部側の側面図、(c)は(a)の定着具が構造体中に打ち込まれたときの様子を示した立面図、(d)は(c)の側面図、(e)、(f)は(c)の変形例を示した立面図である。 (a)はあと施工アンカー型の定着具を示した立面図、(b)は(a)の定着具が構造体中に打ち込まれたときの様子を示した立面図、(c)は他のあと施工アンカー型の定着具の構造体中への挿入状態を示した立面である。
符号の説明
1………構造体
2………繊維シート
3………定着具
3a……軸部
3b……頭部
3c……係止部
31……スリーブ
32……コーン
33……ボルト
4………補強材
5………型枠
6………開口部
7………拘束材

Claims (4)

  1. 構造体の表面に繊維シートが貼着され、その繊維シートの表面側からその繊維シートを貫通した状態で前記構造体中に定着具が定着されると共に、前記定着具の基部側の一部区間が前記繊維シートの表面から突出し、前記繊維シートの表面側に付着させられる補強材中に埋設され、前記定着具が前記構造体中に定着された状態を維持しながら、前記構造体表面から突出する区間において前記補強材に付着して前記補強材が前記繊維シートの表面に付着した状態を維持し、前記繊維シートが前記構造体の表面側へ密着した状態を維持していることを特徴とする耐震補強構造。
  2. 前記定着具は軸方向の引張力を受けた状態で前記構造体に定着されていることを特徴とする請求項1に記載の耐震補強構造。
  3. 前記定着具は軸部の一部に前記構造体の表面に係止する係止部を有することを特徴とする請求項1、もしくは請求項2に記載の耐震補強構造。
  4. 構造体の表面に繊維シートを貼着する工程と、その繊維シートの表面側からその繊維シートを貫通させて前記構造体中に定着具を定着させ、前記繊維シートの表面側に補強材を付着させる工程とを含み、
    前記補強材を付着させる工程において、前記定着具の基部側の一部区間を前記繊維シートの表面から突出させて前記繊維シートの表面側の前記補強材中に埋設させると共に、前記定着具を前記構造体中に定着させた状態を維持しながら、前記構造体表面から突出する区間において前記補強材に付着させ、前記補強材を前記繊維シートの表面に付着させた状態を維持し、前記繊維シートを前記構造体の表面側へ密着させた状態を維持することを特徴とする耐震補強方法。
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