JP2008267136A - せん断抵抗型定着用ディスク - Google Patents

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Abstract

【課題】接着系アンカーのせん断耐力及びせん断剛性を高め、せん断耐力及びせん断剛性不足に起因するアンカー回りの躯体の損傷を回避する。
【解決手段】挿通孔2cを有し、アンカー3の定着用に穿孔7aが穿設された被定着体7の表面に設置され、穿孔7a内に嵌入するアンカー3を被定着体7に定着させるためのディスク2であり、表面に、外周に雄ねじの切られたねじ部2bを形成し、このねじ部2bに、アンカー3が挿通するための挿通孔2cを軸方向に貫通して形成する。
【選択図】図1

Description

この発明は既存の、または新設の構造物の柱、梁、壁面、基礎等のコンクリート躯体等の部分に耐震要素等の構造部材や壁パネル等の非構造部材、あるいは設備用の部材その他の部材を付加する場合に、それらの付加部材を設置するために接合されるベースプレートを躯体等に定着させるためのせん断抵抗型定着用ディスクに関するものである。
例えば既存建物や新設建物の柱や梁、外壁面や既存橋脚のフーチング(基礎)等の構造物のコンクリート躯体の表面側に耐震補強用のブレース等の耐震要素を架設する場合、耐震要素の端部は耐震要素が負担する引張力と圧縮力をコンクリート躯体に伝達できるように連結される必要がある。
コンクリート躯体が既存建物の場合、耐震要素の端部が連結されるベースプレートはドリル等によりコンクリートの一部に穿孔を形成した後、接着系アンカーや金属拡張アンカー等のあと施工アンカーによってコンクリート躯体に定着させられることになる。この内、接着系アンカーで用いられるアンカーボルトは穿孔内に注入される接着剤の付着力によって穿孔内に定着させられる(特許文献1、特許文献2参照)。
特開平8−247119号公報 特開平10−9239号公報
接着系アンカーのアンカーボルトの引き抜き耐力は接着剤のアンカーボルトとの付着力によって決まるが、せん断耐力及びせん断剛性はアンカーボルトの鉛直投影面積分のコンクリートの支圧力によって決まり、穿孔内にある接着剤の付着力はせん断耐力及びせん断剛性にはほとんど寄与しないため、引き抜き耐力に比べ、せん断耐力及びせん断剛性が小さい傾向がある。
例えばベースプレートにブレースが接続される場合にはブレースに作用する軸方向力によってアンカーボルトに必ずせん断力が作用するが、アンカーボルトのせん断耐力、すなわちアンカーボルト回りのコンクリートの支圧力が不足すれば、せん断力によってコンクリートを損傷させる可能性が高い。アンカーボルトは終局的には図16に示すようにコンクリートの表面寄りの部分が塑性変形し、アンカーボルト周囲のコンクリートに支圧破壊を起こさせることによりせん断耐力を発揮することになる。
この発明は上記背景より、従来の接着系アンカーより高いせん断耐力及びせん断剛性を発揮できる、せん断抵抗型定着用のディスクを提案するものである。
本発明ではコンクリートその他の被定着体の表面に設置されてベースプレートを受けるディスクと、被定着体に穿設され、アンカー用接着剤が充填された穿孔内に、ディスクの挿通孔を挿通して挿入されるアンカーと、アンカーの頭部に螺合し、アンカーとディスク及びベースプレートを被定着体に定着させるアンカー用ナットと、ディスクと被定着体間に介在する接着剤からベースプレートの定着装置を構成し、接着剤をディスクと被定着体との間に介在させることにより、接着剤の付着力をアンカーのせん断抵抗力に付加し、アンカーのせん断耐力及びせん断剛性を高める。
せん断抵抗型定着用ディスクは挿通孔を有し、アンカーの定着用に穿孔が穿設された被定着体の表面に設置され、前記穿孔内に嵌入する前記アンカーを前記被定着体に定着させるためのディスクであり、表面に、外周に雄ねじの切られたねじ部が形成され、このねじ部に、前記アンカーが挿通するための前記挿通孔が軸方向に貫通して形成されている。
ディスクの表面側に形成されたねじ部には、ベースプレートとディスクの被定着体への定着を確実にするために、ベースプレートをディスクとの間に挟み込み、ベースプレートをディスクに保持させるディスク用ナットを螺合させることもある(図1、図2、図10〜図12)。
定着装置はディスクが被定着体の表面に設置されると共に、ディスクの表面にベースプレートが重なった状態でアンカー用接着剤が充填された穿孔内にアンカーが挿入され、ディスク用ナットがディスクのねじ部に螺合し、アンカー用ナットがアンカーの頭部に螺合してアンカーとディスクを被定着体に定着することによりベースプレートを被定着体に定着させる。ベースプレートからのせん断力はベースプレートからディスクのねじ部に作用し、ねじ部からディスクの背面の接着剤を通じて被定着体に伝達される一方、ねじ部からその内周面を通じてアンカーに伝達される。
この場合、図7に示すようにディスクのねじ部の外周とベースプレートとの間に空隙が生じていれば、ベースプレートからディスクへのせん断力の伝達時に空隙分の相対変位が生じ、この相対変位はアンカーに変形を生じさせることと同じ結果となり、ダンパが接続される場合にそのエネルギ吸収量を損失させることになるため、この相対変位を防止するために、空隙が存在する場合には空隙にも接着剤が充填される。
ディスクと被定着体間に介在する接着剤がアンカー用接着剤と同一であるか否かは問われない。同一の場合には接着剤は例えば穿孔内に予め注入されるか、アンカーの穿孔内への挿入後にディスクの挿通孔を通じて穿孔内とディスクの背面に注入させられる。穿孔内に予め注入される場合は、アンカーの挿入によって接着剤が穿孔から溢れ出してディスクの背面に回り込む。ディスクと被定着体間に介在する接着剤は接着剤と同時に取り扱える接着用材料を含む。
接着剤とアンカー用接着剤が異なる場合、接着剤はディスクの設置前に予め貼着されるか、アンカーの穿孔内への挿入後にディスクの挿通孔を通じてディスクの背面に注入させられる。アンカー用接着剤はアンカーの挿入前に穿孔内に充填される。
接着剤の粘性が高く、流動的でない場合、例えば接着剤がシート状に形成される場合はベースプレート、もしくはディスクの背面は平坦でもよいが、接着剤が流動性を有する場合はディスクの背面に回り込んだ接着剤をディスクの背面内に留めるために、請求項2に記載のようにディスクの背面側の周囲に外周リブが形成され、外周リブの内側に接着剤が充填されるための凹部が形成される(図1等)。
ディスクの背面側の周囲に外周リブが形成される場合に、アンカーを定着させるためのアンカー用ナットの締め付けに伴い、ディスクの中央部が被定着体の表面側へ変形する可能性がある場合にはその変形を防止するために、ディスクの背面側の、挿通孔の周囲に内周リブが形成される。この場合、凹部は外周リブと内周リブで挟まれた領域に形成され、ディスクの変形は内周リブによって阻止される。
外周リブ、または内周リブが形成された場合において接着剤がアンカーの挿入によってディスクの背面に回り込むか、アンカーの挿入後に挿通孔から注入させられる場合には、ディスクの背面側の周囲に凹部の周囲を包囲するように外周リブが形成されていることで、アンカーの挿入によって穿孔から凹部内へ溢れ出した、または挿通孔から凹部内へ充填された接着剤は外周リブに塞き止められてディスクの凹部内に行き渡り、ディスクと被定着体間に介在する。
接着剤が凹部内に行き渡った後、アンカー用ナットの緊結によってアンカーが被定着体に定着させられ、同時にディスクとベースプレートが被定着体に定着させられる。
接着剤がディスクと被定着体間に介在することで、図1−(a)に示すようにベースプレートから直接、もしくはディスクを経てアンカーに作用するせん断力に対する抵抗力としてアンカーの鉛直投影面積分の被定着体の支圧力に、ディスクの全体、または凹部の面積分の接着剤の付着力が加算されるため、この付着力分だけアンカーのせん断耐力及びせん断剛性が向上する。
接着剤による付着力は常に被定着体の表面に生ずることから、仮に図2に示すように穿孔が被定着体の表面に垂直でない状態で形成され、アンカーがその穿孔に沿って挿入されても、付着力自体が低減されることはないため、穿孔の傾斜に関係なく、せん断力に対する一定の抵抗力を確保することが可能になる。
アンカーのせん断耐力及びせん断剛性が向上することで、コンクリートの支圧力のみによってせん断力に抵抗する場合のようなコンクリートの支圧破壊の発生が抑制、もしくは防止され、アンカーの変形も抑制、もしくは防止されるため、アンカーのせん断剛性も上昇する。この結果、例えばベースプレートに接続されるブレースがダンパを内蔵する場合には、アンカーの変形量が減少する分、ダンパに変形が集中するため、ダンパによる振動エネルギの吸収効果が向上する。
図5に従来の接着系アンカーのアンカーボルトと本発明のディスクに使用されるアンカーのせん断力−変形関係の実験結果を示す。破線が従来のアンカーボルトの曲線を、実線が本発明のアンカーの曲線を示す。
図5から、本発明のアンカーは従来のアンカーボルトの1.5〜2.0倍程度の大きさのせん断耐力を持ち、変形量は従来のアンカーボルトの変形量の1/7程度に留まり(例えばせん断力Qが20kNのとき)、それだけせん断剛性が高いことが分かる。図5中、一点鎖線はベースプレートにブレースが接続される場合を想定し、本発明のアンカーに軸方向圧縮力を加えたときの曲線を示すが、圧縮力が付加される分、せん断剛性が増大している。
ディスクの背面側に、被定着体中に嵌入する嵌入ブロックを有する場合にはせん断力の作用時にベースプレートやディスクからせん断力が被定着体に直接伝達されるため(図10〜図12)、せん断力に対する被定着体の抵抗力が嵌入ブロックの鉛直投影面積分の支圧力になり、嵌入ブロックがない場合より被定着体の抵抗力が向上する。
嵌入ブロックはディスクとは別体で製作される場合と(図10、図11)、ディスクの背面側に一体化する場合(図12)がある。
図8に示すように被定着体の穿孔の、表面側の一部の区間の内径を他の区間の内径より大きくし、被定着体に座堀り部を形成した場合には、被定着体の支圧面積が拡大するため、被定着体の支圧力によるせん断耐力及びせん断剛性が更に向上し、アンカーのせん断耐力及びせん断剛性を高める効果がある。この場合、被定着体に座堀り部を形成することに対応し、嵌入ブロックの外周面を含む断面積を穿孔の断面積より大きくすれば(図10〜図12)、被定着体の支圧面積が拡大し、被定着体の支圧力によるせん断耐力及びせん断剛性が更に向上するため、アンカーのせん断耐力及びせん断剛性を一層高めることができる。ここで嵌入ブロックの断面積と穿孔の断面積とは、アンカーの軸に直交する断面の断面積を言う。
ベースプレートやディスクに作用するせん断力はディスクの挿通孔からアンカーに伝達された後にアンカーから被定着体に伝達されるが、挿通孔とアンカーとの間に空隙が存在すれば、その空隙分だけ、ディスクが滑りを生ずる可能性があり、せん断力のアンカーへの伝達が損失する。そこで、アンカーの周面をベースプレートやディスクの挿通孔の内周面に接触させれば(図10−(b)〜図11−(b))、アンカーに伝達されるせん断力の損失がなくなるため、空隙がある場合よりアンカーによる抵抗力が向上する。
接着剤をディスクと被定着体間に介在させることで、アンカーに作用するせん断力に対する抵抗力としてアンカーの鉛直投影面積分のコンクリートの支圧力に、ディスクの凹部の面積分の接着剤の付着力が加算されるため、アンカーのせん断耐力及びせん断剛性が向上する。
アンカーのせん断耐力及びせん断剛性が向上することで、コンクリートの支圧力のみによってせん断力に抵抗する場合のようなコンクリートの支圧破壊の発生が抑制、もしくは防止され、アンカーの変形も抑制、もしくは防止される結果、アンカーのせん断剛性も上昇するため、ベースプレートにダンパが接続される場合にダンパによるエネルギ吸収効果を高めることができる。
ディスクの背面側の周囲に外周リブを形成し、外周リブの内側に接着剤が充填されるための凹部を形成した場合には、接着剤が流動性を有する場合にディスクの背面に回り込んだ接着剤をディスクの背面内に留めることができる。
ディスク背面の挿通孔の周囲に内周リブを形成した場合には、アンカー用ナットの締め付けに伴ってディスクの中央部が被定着体の表面側へ変形することを阻止できる。
ディスクの背面側に、被定着体中に嵌入する嵌入ブロックを付加した場合には、せん断力の作用時にディスクからせん断力を被定着体に直接伝達することができるため、せん断力に対する被定着体の抵抗力が嵌入ブロックの鉛直投影面積分の支圧力になり、被定着体の抵抗力が向上する。
嵌入ブロックの外周面を含む断面積を穿孔の断面積より大きくした場合には、被定着体の支圧面積が拡大するため、被定着体の支圧力によるせん断耐力及びせん断剛性が更に向上し、アンカーのせん断耐力及びせん断剛性を一層高めることができる。
ディスクの表面側に、挿通孔が形成されたねじ部を形成し、このねじ部に、ベースプレートをディスクとの間に挟み込み、ベースプレートをディスクに保持させるディスク用ナットを螺合させた場合には、ベースプレートとディスクの被定着体への定着を確実にすることができる。
アンカーの周面をディスクの挿通孔の内周面に接触させた場合には、アンカーに伝達されるせん断力の損失がなくなり、アンカーによる抵抗力が向上する。
この発明のディスク2を用いた定着装置1は図1に示すように挿通孔2cを有し、被定着体7の表面に設置されてベースプレート8を受けるディスク2と、被定着体7に穿設され、アンカー用接着剤9が充填された穿孔7a内に、前記ディスク2の挿通孔2cを挿通して挿入されるアンカー3と、アンカー3の頭部に螺合し、前記アンカー3とディスク2及びベースプレー8トを被定着体7に定着させるアンカー用ナット5と、前記ディスク2と被定着体7間に介在する接着剤6からなる。
被定着体7は構造部材と非構造部材の両者を含み、コンクリートの他、石材、レンガ、コンクリートブロック等のように穿孔することが可能な材料全般を含む。またコンクリートの部分を有すれば定着装置1を設置することができるため、構造物は建築構造物であるか土木構造物であるかを問わず、構造物本体の構造が鉄筋コンクリート造(鉄骨鉄筋コンクリート造)であるか鉄骨造であるかも問わない。
定着装置1は主として既存の建物の柱、梁、壁面、基礎等のコンクリートの部分の他、既存の橋梁の橋桁や橋脚、基礎(フーチング)等のコンクリートの部分に耐震要素等の構造部材や壁パネル等の非構造部材、あるいは設備用の部材その他の部材を付加する場合に、そのコンクリート等の被定着体7に部分的に設置されるが、新設の構造物にも同様に適用される。定着装置1の設置面は水平面であるか鉛直面であるかを問わず、傾斜面にも用いられる。
アンカー3は少なくとも頭部3aに雄ねじの切られたねじ部を有し、被定着体7の穿孔7a内に挿入され、ディスク2の挿通孔2cを挿通したときに頭部3aがディスク2から突出する。アンカー3の、穿孔7a内に位置する部分は頭部3aから連続してねじが切られる等によりアンカー用接着剤9との付着を確保するためのリブが形成される。
アンカー3の穿孔7a内への挿入は従来の接着系アンカーと同様の要領で、例えば穿孔7a内へのアンカー用接着剤9の充填後にアンカー3を挿入することにより、またはアンカー用接着剤9入りのカプセルを穿孔7a内に挿入しておいた状態でアンカー3を挿入するか、ねじ込むことによりアンカー用接着剤9を穿孔7a内に充填させながら行われるが、アンカー3をディスク2の設置前に挿入するか、設置後に挿入するかは問われない。接着剤6の種類は限定されないが、付着力の面からはエポキシ樹脂接着剤その他の合成樹脂系接着剤、あるいはポリマーセメントモルタル等のような無機系接着用材料が適当である。
図1はディスク2の基本的な使用状態を示す。(a)は縦断面図、(b)はその平面図である。
ディスク2は図1−(a)に示すように挿通孔2cを有し、アンカー3の定着用に穿孔7aが穿設された被定着体7の表面に、穿孔7a内に嵌入するアンカー3を被定着体7に定着させるために設置される。ディスク2の表面には、外周に雄ねじの切られたねじ部2bが形成され、このねじ部2bに、アンカー3が挿通するための挿通孔2cが軸方向に貫通して形成される。ディスク2は被定着体7の表面に設置されてベースプレート8を受け、アンカー3はアンカー用接着剤9が充填された穿孔7a内に、ディスク2の挿通孔2cを挿通して挿入される。
図1−(a)はまた、ディスク2の背面側の周囲に外周リブ2eを形成し、外周リブ2eの内側に、接着剤6が入り込む凹部2dを形成し、凹部2d内に接着剤6を充填した場合を示している。
図10、図11はディスク2の背面に凹部2dを形成した場合において、ディスク2とは別体の嵌入ブロック11を被定着体7中に嵌入させた場合の例を示す。
図10は円柱形の嵌入ブロック11を用いた場合、図11は円錐台形の嵌入ブロック11を用いた場合である。嵌入ブロック11にはアンカー3が挿通する挿通孔11aが形成される。図10、図11の(a)はアンカー3の周面とディスク2の挿通孔2cの内周面との間に僅かな空隙がある場合、(b)は空隙がなく、アンカー3の周面がディスク2の挿通孔2cの内周面に接触している場合である。
図10、図11、図1、図2等では図3に示すような、平板状をしたディスク2の本体2aの表面側に、外周に雄ねじの切られたねじ部2bを形成し、ねじ部2bに、軸方向に貫通する挿通孔2cを形成し、この挿通孔2cにアンカー3を挿通させ、ねじ部2bに図4に示すようなディスク用ナット4を螺合させた場合を示している。
ディスク用ナット4はベースプレート8をディスク2との間に挟み込んだ状態で、ねじ部2bに螺合し、ベースプレート8をディスク2に保持させる。図面ではディスク2の本体2aを円板状に形成しているが、必ずしもその必要はなく、方形状その他、任意の形状に形成される。
ねじ部2bの挿通孔2cの内径は少なくともアンカー3が挿通できる程度の大きさ以上あればよいが、挿通孔2cを通じて接着剤6を充填する場合には図示するようにアンカー3の径に余裕を加えた程度の大きさが与えられる。
ベースプレート8はディスク2の本体2aの表面に重なり、ディスク用ナット4によってディスク2に保持されることから、ディスク2のねじ部2bが挿通する開口8dを有し、ねじ部2bが開口8dを貫通してベースプレート8がディスク2の本体2aの表面に重なる。
開口8dはベースプレート8からディスク2へのせん断力の伝達上、ねじ部2bの外径に合致する大きさに形成されるが、ねじ部2bの外径より大きくなる場合には後述のようにねじ部2bと開口8dの内周面との間に接着剤6が充填される。
ディスク用ナット4はベースプレート8をディスク2の本体2aの表面に重ねた後に、ディスク2のねじ部2bに螺合してベースプレート8をディスク2の本体2aとの間に挟み込み、ベースプレート8をディスク2に保持させる。
アンカー用ナット5はアンカー3が穿孔7a内へ挿入され、アンカー用接着剤9との接着による引き抜き抵抗力を確保した後に、アンカー3の頭部3aに螺合し、アンカー3から反力を得ながらアンカー3とディスク2を被定着体7側へ押し込むことにより両者とベースプレート8を被定着体7に定着させる。
定着装置1の設置は基本的に穿孔7a内へのアンカー3の挿入とアンカー用接着剤9の充填、ディスク2の設置、接着剤6の充填、ベースプレート8の設置、ディスク用ナット4の締め付け、アンカー用ナット5の締め付けの手順で行われるが、ディスク用ナット5の締め付け以前の手順は前後することもある。
ディスク2の本体2aの背面には接着剤6の種類に応じ、外周リブ2eが形成されることにより相対的に凹部2dが形成されるが、接着剤6が本体2aの背面の範囲内に納まり、背面からの漏れ出しがないか、背面に薄く貼着されることができれば、特に外周リブ2eや凹部2dを形成する必要はない。
本体2aの背面に凹部2dを形成する場合には本体2aの中央部が被定着体の表面側へ変形することを防止するために、必要により本体2aの挿通孔2cの周囲に内周リブが形成される。
被定着体7に穿設された穿孔7a内には前記のようにアンカー3を定着させるためのアンカー用接着剤9が充填されるが、穿孔7a内へのアンカー3の挿入時にアンカー用接着剤9が溢れ出してディスク2の本体2aの背面に行き渡ることができれば、アンカー用接着剤9を接着剤6として兼用させることもある。接着剤6はその使用量と流動性に応じ、挿通孔2c内に充填される場合と充填されない場合がある。
接着剤6は本体2aの背面に貼着される場合以外は、例えばディスク2の挿通孔2cを通じて、または後述のように本体2aに形成される充填口2fを通じて背面の凹部2d内に充填される。アンカー用接着剤9を接着剤6として兼用させる場合には、アンカー用接着剤9はアンカー3の挿通前に予め穿孔7a内に充填されるか、挿通孔2cや充填口2fを通じて穿孔7a内と同時期に凹部2d内に充填される。
図10、図11ではまた、被定着体7に穿孔7aの径より大きい径の座堀り部7bを形成すると共に、嵌入ブロック11に座堀り部7bに対応した大きさを与えて嵌入ブロック11の外周面を含む断面積を穿孔7aの断面積より大きくし、座堀り部7bに嵌入ブロック11を嵌入させた場合を示しているが、必ずしも座堀り部7bを形成する必要はなく、穿孔7a中に嵌入ブロック11を挿入する場合もある。
図12の(a)と(b)はそれぞれ図13−(a),(b)、(c),(d)に示すような嵌入ブロック11をディスク2の背面側に一体化させ、ディスク2の挿通孔2cと嵌入ブロック11の挿通孔11aを連続させた場合を示す。
図12−(a)は嵌入ブロック11が円柱形の場合で、連続したディスク2の挿通孔2cと嵌入ブロック11の挿通孔11aの内周面との間に僅かな空隙がある場合、(b)は嵌入ブロック11が円錐台形の場合で、ディスク2の挿通孔2cと嵌入ブロック11の挿通孔11aの内周面にアンカー3の周面を接触させた場合である。
図10〜図12に示すように被定着体7に座堀り部7bを形成し、座堀り部7bに嵌入ブロック11を嵌入させる場合には、嵌入ブロック11のずれを防止するためと、嵌入ブロック11の存在位置のディスク2と被定着体7の表面との間に介在させられなくなる分の接着剤6を補うために、必要により嵌入ブロック11の周面及び底面と被定着体7との間にも接着剤6が介在させられる。
図1は図10−(a)に示す定着装置1における嵌入ブロック11を不在にした場合を、図2は図1の穿孔7aとアンカー3の軸が被定着体7の表面に対して傾斜した場合を示す。ここではディスク2のアンカー3に対する相対移動を極力少なくするために、ディスク2の凹部2d内に充填される接着剤6をディスク2の挿通孔2c内にも充填しているが、前記のように必ずしもその必要はない。
図6は定着装置1によるベースプレート8の被定着体7への接合例を示す。ここではブレースが接続されるガセットプレート10が一体化した1枚のベースプレート8を6個の定着装置1を用いて被定着体7である鉄筋コンクリート造の柱の側面に接合し、ブレースを柱・梁からなるフレームの構面内に架設した場合を示している。定着装置1はベースプレート8の定着に必要なアンカー3の本数分使用されることになる。
図6ではベースプレート8と被定着体7との間にディスク2を挟んでいるが、このディスク2を不在にし、ベースプレート8を直接被定着体7に重ねることもある。
図7はベースプレート8の開口8dが製作誤差等の理由によりディスク2のねじ部2bの断面積より大きくなっている場合に、ベースプレート8からのせん断力が確実にディスク2に伝達されるよう、ねじ部2bの外周と開口8dの内周との間の空隙に接着剤6を充填した様子を示す。この部分の接着剤6の充填はディスク用ナット4の締め付け前に行われる。
図8は被定着体7の穿孔7aの、表面側の一部の区間の内径を他の区間の内径より大きくし、すなわち被定着体7に座堀り部7bを形成して被定着体7の支圧面積を拡大し、支圧力によるせん断耐力及びせん断剛性を向上させた場合を示す。嵌入ブロック11はこの座堀り部7bに挿入されるが、嵌入ブロック11を用いずに被定着体7に座堀り部7bを形成するだけの場合もある。
図9は被定着体7の表面が梁の側面や壁面のように鉛直面をなす場合に、ディスク2の本体2aに形成された充填口2fを通じて本体2a背面の凹部2d内に接着剤6を充填するときの様子を示す。この場合、凹部2d内からの排気のために充填口2fは複数個形成され、相対的に下に位置する充填口2fが注入口、上に位置する充填口2fが吐出口となり、吐出口から接着剤6が吐出することにより凹部2d内に充填されたことが確認される。
図14は定着装置1を被定着体7である鉄筋コンクリート造の、増打ちをした外柱の側面に接合し、ブレースを柱・梁からなるフレームの構面外に架設する場合を示す。この場合もディスク2が省略されることもある。
この場合、ベースプレート8は図14−(b)に示すようにブレースの架設方向に平行な面と直交する面にアンカー3と接着剤6によって接合されるが、図14ではブレースの架設方向に平行なベースプレート3を既存の柱とその増打ち部の間に挟み、そのベースプレート3の上下2箇所にガセットプレート10を接合している。(c)に示すように上側のガセットプレート13に接続されるブレースが圧縮力を負担するときは下側のガセットプレート10に接続されるブレースが引張力を負担することになる。
図15は図14と同様にブレースをフレームの構面外に架設するために図14と同じ鉄筋コンクリート造の外柱の側面に、増打ちをせずに直接、定着装置1を接合した場合を示す。
(a)は定着装置の構成例を示した縦断面図、(b)はベースプレートを除いた(a)の平面図である。 図1−(a)におけるアンカーが傾斜した場合を示した縦断面図である。 定着装置のディスクを示した一部断面立面図である。 (a)は図3のディスクに対応したディスク用ナットを示した立面図、(b)は(a)の平面図である。 従来の接着系アンカーと本発明のアンカーのせん断力−変形関係を示したグラフである。 (a)は定着装置を鉄筋コンクリート造の柱に適用したときの様子を示した縦断面図、(b)は(a)の側面図である。 ベースプレートの開口とディスクのねじ部との間に空隙がある場合に空隙に接着剤を充填した様子を示した縦断面図である。 被定着体に座堀り部を形成した場合を示した縦断面図である。 定着装置を鉛直面に設置したときの様子を示した縦断面図である。 (a)、(b)は定着装置の構成例を示した縦断面図である。 (a)、(b)は定着装置の他の構成例を示した縦断面図である。 (a)、(b)は定着装置の構成例を示した縦断面図である。 (a)は図12−(a)のディスクを示した平面図、(b)は(a)の一部断面立面図、(c)は図12−(b)のディスクを示した平面図、(d)は(c)の一部断面立面図である。 (a)は増打ちをしてブレースをフレームの構面外に架設する場合の定着装置の接合例を示した立面図、(b)は(a)のx−x線断面図、(c)は(b)のy−y線矢視図である。 (a)は増打ちをせずにブレースをフレームの構面外に架設する場合の定着装置の接合例を示した立面図、(b)は(a)のx−x線断面図、(c)は(b)のy−y線矢視図である。 従来の接着系アンカーによるコンクリートの支圧破壊の様子を示した縦断面図である。
符号の説明
1……定着装置、2……ディスク、2a……本体、2b……ねじ部、2c……挿通孔、2d……凹部、2e……外周リブ、2f……充填口、
3……アンカー、3a……頭部、4……ディスク用ナット、5……アンカー用ナット、
6……接着剤、7……被定着体、7a……穿孔、7b……座堀り部、
8……ベースプレート、8d……開口、
9……アンカー用接着剤、10……ガセットプレート、11……嵌入ブロック。

Claims (2)

  1. 挿通孔を有し、アンカーの定着用に穿孔が穿設された被定着体の表面に設置され、前記穿孔内に嵌入する前記アンカーを前記被定着体に定着させるためのディスクであり、
    前記ディスクの表面に、外周に雄ねじの切られたねじ部が形成され、このねじ部に、前記アンカーが挿通するための前記挿通孔が軸方向に貫通して形成されていることを特徴とするせん断抵抗型定着用ディスク。
  2. 前記ディスクの背面側の周囲に外周リブが形成され、外周リブの内側に、接着剤が入り込む凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のせん断抵抗型定着用ディスク。
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