JP2017210830A - 制震補強架構柱の接合構造 - Google Patents

制震補強架構柱の接合構造 Download PDF

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Abstract

【課題】例えば既存の、あるいは新設のコンクリート造等の主構造体の構面外に、主構造体を制震補強する制震補強架構を主構造体の構面に平行に構築し、制震補強架構の支柱を主構造体の柱に距離を置いて接合に、柱の軸方向(鉛直方向)のせん断力を伝達可能に支柱材を柱に接合する。【解決手段】制震補強架構1の複数本の支柱2の内、少なくともいずれかの支柱2の最下層の支柱材21に対向する主構造体6の柱61の制震補強架構1側の正面に境界面プレート7を重ねて接合すると共に、境界面プレート7を直接、もしくは間接的に最下層の支柱材21に接合し、柱61の正面と支柱材21との間にコンクリート8を充填し、コンクリート8中に境界面プレート7とその支柱材21への接合部分を埋設する。【選択図】図1

Description

本発明は例えば既存の、あるいは新設のコンクリート造、鉄骨造等の主構造体の構面外に、主構造体を制震補強する制震補強架構を主構造体の構面に平行に構築する際に、制震補強架構を構成する少なくともいずれかの支柱を主構造体の柱にこれから距離を置いて接合した制震補強架構柱の接合構造に関するものである。
例えば既存のコンクリート造躯体等の主構造体に耐震性能、あるいは制震性能を付与する目的で、主構造体の表面に接した状態、もしくは接近した状態で構築され、主構造体に接合される制震補強架構の例として、主構造体の構面外にその構面内水平方向に配列する支柱と、隣接する支柱材間に架設されるつなぎ梁を有する形態の補強架構がある(特許文献1、2参照)。
この制震補強架構の各支柱は特許文献1の図3(特許文献2の図9)に示すように主構造体の構面内方向の層間変形に追従できるよう、鉛直方向に分離した複数本の支柱材からなり、上下に分離した支柱材間にはそれぞれの軸の向きを保ったまま両者間の相対水平移動を許容する、水平剛性の小さい絶縁装置(積層ゴム支承や滑り支承等)が介在させられる。絶縁装置は構面内水平方向に隣接する支柱材間の相対移動時に支柱材(の軸)が鉛直状態を維持するように、上下に隣接する支柱材間に配置される。特許文献1の図3は本件明細書に添付の図10に相当する。
隣接する支柱の、レベルの相違する支柱材間には主構造体の層間変形に制震補強架構が追従したときの支柱材間の相対移動を利用して減衰力を発生するダンパーを組み込んだブレース(ダンパー一体型ブレース)が架設される。つなぎ梁は主構造体が構面内水平方向(桁行方向)に層間変形を生じたときに、その層間変形に制震補強架構が追従できるよう、制震補強架構を主構造体に一体構造化させるために、隣接する支柱材間に架設されながら、主構造体の梁やスラブ等、いずれかの躯体に接合される(特許文献1の段落0066、図11)。
主構造体の構面内水平方向に地震が発生し、その方向に主構造体に層間変形が生じたときには、主構造体の各階のスラブ等に接合された制震補強架構のつなぎ梁とつなぎ梁に接合されている支柱材が主構造体に追従して相対移動し(特許文献1の図3)、構面内水平方向に隣接する支柱材間に架設されているブレースのダンパーが伸縮することにより減衰力を発生し、振動エネルギを吸収する(特許文献1の段落0019、0028)。
ブレースは構面内水平方向に隣接する支柱の内、一方側の支柱の下方側の支柱材、もしくはその付近のつなぎ梁とそれに隣接する支柱の上方側、または下方側の支柱材、もしくはその付近のつなぎ梁との間に斜めに架設されるため(特許文献1の図3)、制震補強架構が主構造体の構面内方向の層間変形に追従するときには、ブレースが架設された隣接する支柱の支柱材間に軸方向の引張力と圧縮力が交互に作用する。ブレースが架設された隣接する支柱の支柱材とは、ブレースでつながれた支柱材を指す。
ブレースでつながれた、レベルを異にして隣接する支柱材間に相対変位が生じ、ブレースに引張力と圧縮力が交互に作用するときには、支柱の中の最も下方に位置する支柱材は鉛直方向上向きと下向きに移動しようとする力を交互に受ける。ここで、最下層に位置する支柱材が主構造体の柱に接合されていなければ、その支柱材に隣接する支柱の支柱材に追従しようとすることで、浮き上がるか押し下げられようとし、ブレースが予定通りに伸縮することができなくなり、ダンパーが減衰力を発生することができなくなる。
特許第4038472号公報(請求項1、段落0013〜0026、図1、図3) 特許第4837145号公報(請求項1、段落0015〜0021、図1、図9)
このような事情から、最下層の支柱材は地盤に、または支柱に対向する主構造体に拘束される必要があるが、例えば主構造体の柱に支柱材を拘束しようとすれば、支柱材と主構造体の柱との接合面には鉛直方向のせん断力が作用するため、このせん断力に抵抗できる状態に支柱材と柱は接合されている必要がある。
本発明は上記背景より、主構造体の構面外に制震補強架構を配置し、その支柱を主構造体の柱に接合する際に、柱の軸方向(鉛直方向)のせん断力を伝達可能に支柱材を柱に接合した制震補強架構柱の接合構造を提案するものである。
請求項1に記載の発明の制震補強架構柱の接合構造は、柱・梁からなるフレームを有する主構造体の構面外にその構面に平行に配列し、互いに間隔を隔てて立設される支柱と、構面内水平方向に隣接する支柱間に架設されるつなぎ梁と、構面内水平方向に隣接する支柱間に架設される、ブレース本体にダンパーを組み込んだダンパー一体型ブレースを備え、前記支柱が鉛直方向に複数本の支柱材に分離し、上下に分離した支柱材間に両者間の相対水平移動を許容する絶縁装置が介在した、前記主構造体を制震補強するための制震補強架構が前記主構造体の前記フレームから距離を置いた位置に配置され、前記主構造体に接合された制震補強架構付き構造物において、
前記制震補強架構の複数本の支柱の内、少なくともいずれかの支柱の最下層の前記支柱材に対向する前記主構造体の前記柱の前記制震補強架構側の正面に境界面プレートが重なって接合されると共に、この境界面プレートが直接、もしくは間接的に前記最下層の前記支柱材に接合され、前記柱の前記正面と前記支柱材との間にコンクリートが充填され、このコンクリート中に前記境界面プレートとその前記支柱材への接合部分が埋設されていることを構成要件とする。
制震補強架構1の複数本の支柱2は図8に示すように主構造体6の構面に平行に、構面内水平方向に互いに間隔を隔てて配列し、各支柱2は鉛直方向に複数本の支柱材21〜23に分離する。上下に分離した支柱材21、22(22、23)間には両者間の相対水平移動を許容しながら、相対水平移動後に原位置に復帰させる絶縁装置5が介在する。同一レベルで水平方向に隣接する支柱材21、21(22、22(23、23))間には両支柱材21、21を互いにつなぎ、相対水平移動時にも両支柱材21、21の軸線が鉛直方向を向くように両支柱材21、21を保持するつなぎ梁3が架設される。
レベルを異にして隣接する支柱材21、22(22、23)間にはその隣接する支柱材21、22(22、23)間の相対水平移動時に、支柱材21、22(22、23)間の距離の変化に応じて伸縮し、その相対移動量、または相対速度に応じた減衰力を発生するダンパー42を内蔵したダンパー一体型ブレース(以下、ブレース)4が架設される。「構面内水平方向」は主構造体6の桁行方向を指し、主構造体6のスパン方向は構面外方向になる。
制震補強架構1は少なくともいずれかの支柱2において主構造体6の柱61に接合されるが、主構造体6の層間変形時の主構造体6からの水平せん断力を制震補強架構1に伝達させるために、制震補強架構1は図3、図9に示すようにつなぎ梁3においても主構造体6の梁やスラブ、壁62等の構造部材に接続スラブ31を介して接合される。接続スラブ31は主構造体6の構造部材とつなぎ梁3との間に構築され、双方に少なくとも水平せん断力の伝達が可能な状態に接合される。
請求項1における「制震補強架構柱」の「柱」は支柱2であり、特に最下層の支柱材21を指す。支柱2は主に鉄骨造、または鉄筋コンクリート造(鉄骨鉄筋コンクリート造を含む)である。また請求項1における「制震補強架構1が主構造体6のフレームから距離を置いた位置に配置される」の「フレーム」は主構造体6の制震補強架構1寄りの、構面内方向に平行な構面をなすフレームを指す。
前記のように制震補強架構1が主構造体6の層間変形に追従して変形するときにブレース4に内蔵されたダンパー41に減衰力を発生させる上では、少なくともいずれかの支柱2の内、最下層に位置する支柱材21が主構造体6の柱61に接合される必要があるため、支柱2の最下層の支柱材21が、柱61に重なって接合される境界面プレート7を介して柱61に接合される。
境界面プレート7は主構造体6のフレームを構成する柱61の制震補強架構1側を向いた正面に重なって接合され、それに対向する制震補強架構1の最下層の支柱材21には直接、接合されるか、または図1、図2に示すように境界面プレート7と支柱材21のそれぞれに接合される接合プレート11と連結材211が互いに接合されることにより間接的に接合される。「直接、接合される」とは、境界面プレート7が支柱材21を構成する鉄骨部材(鋼材)に溶接により、またはボルト等を用いて接合されることを言う。
請求項1における「境界面プレートと支柱材との接合部分」は直接、接合される場合の両者の接合部分を指し、接合プレート11と連結材211を介して間接的に接合される場合の両者を含む接合部分を指す。境界面プレート7と支柱材21との接合部分は柱61の正面と支柱材21との間に充填されるコンクリート(以下、本項目中、充填コンクリートと言う)8中に埋設され、この充填コンクリート8中への接合部分の埋設と定着により最下層の支柱材21が主構造体6の柱61に剛に接合される。充填コンクリート8中には必要により柱61の軸方向の引張抵抗材としての鉄筋が配筋されることもある。
境界面プレート7は主構造体6の柱61の正面(表面)に重なって接合されることで、前記のように柱61の鉛直せん断力を支柱2の最下層の支柱材21に伝達する働きをするため、柱61の軸方向(鉛直方向)には連続した形状をしていることが合理的である。一方、柱61の正面と支柱材21との間には両者を接合する充填コンクリート8の充填のための距離が確保されることで、境界面プレート7を柱61の軸方向に不連続な形状にしなければならない事情はないため、境界面プレート7を柱61の軸方向に連続した形状に形成することが可能であり、図4、図5に示すように境界面プレート7に支柱材21の全長に亘る長さを与えることも可能である。
図5に示すように境界面プレート7が柱61の軸方向に連続した、例えば長方形状に形成されている場合には、境界面プレート7の連続した長さの範囲で支柱材21の軸方向の伸び変形が柱61に拘束されるため、境界面プレート7による支柱材21の拘束効果が高まり、柱61と支柱材21の一体性も強まる。境界面プレート7が柱61の軸方向に連続しない場合には、不連続の区間において柱61による支柱材21の拘束効果も不連続になるのに対し、連続している場合には、拘束効果が断続しないことによる。
また境界面プレート7が重なった柱61の正面には境界面プレート7と充填コンクリート8を介して支柱材21が接合される結果、境界面プレート7が支柱材21の伸び変形を拘束し、鉛直せん断力を伝達するときに軸方向引張力を負担するため、境界面プレート7は柱61の正面を引張力に対して補強する効果も発揮する。特に境界面プレート7が柱61の軸方向に連続した形状をした場合には、柱61の境界面プレート7が重なった面の区間が軸方向に連続して引張力に対して補強されるため、補強効果が不連続になることがなく、補強効果が高い。
境界面プレート7の支柱材21側の表面全体と支柱材21との接合部分は充填コンクリート8中に埋設されることで、柱61の鉛直せん断力が支柱材21に伝達されようとするときに、充填コンクリート8との間で付着力と支圧力を発生させる。この付着力と支圧力は柱61の鉛直せん断力に対する抵抗力になるため、これらの力を通じて鉛直せん断力が支柱材21に伝達される。付着力は境界面プレート7の表面と接合部の表面に生じ、支圧力はコンクリート中8に埋設される接合部分の鉛直せん断力の作用方向に直交する面に生じ、大きさは鉛直せん断力の作用方向への投影面積分になる。
特に境界面プレート7の支柱材21側の面に、支柱材21との間で柱61の軸方向のせん断力を伝達するための複数のせん断力伝達部材10が柱61の軸方向に間隔を置いて突設された場合(請求項2)には、せん断力伝達部材10の表面に生じる付着力と支圧力が鉛直せん断力に対する充填コンクリート8中での抵抗力に加算されるため、柱61からの鉛直せん断力の支柱材21への伝達効果が向上する。境界面プレート7の支柱材21側の面は境界面プレート7の表面である。
せん断力伝達部材10の形態は問われないが、例えば軸方向が柱61と支柱材21が対向する方向を向く棒状(ボルト状)、または図1に示すように柱61の軸方向に直交等、交差する方向を向く面を持つ板(プレート)状の部材が使用される。板状の部材には孔あき鋼板も使用可能であり、その場合、表面が柱61の軸方向に向けられる。
せん断力伝達部材10は柱61の軸方向に間隔を置いて複数、支柱材21側へ突設されることで、柱61(支柱材21)の軸方向に分散して充填コンクリート8中に埋設されるため、柱61の鉛直せん断力が柱61の軸方向の全長から均等に、あるいは分散して支柱材21の軸方向に伝達される状態になり、いずれかのせん断力伝達部材10に鉛直せん断力が集中するようなことはない。
請求項1では制震補強架構1の支柱材21に対向する柱61の制震補強架構1側の正面(表面)に境界面プレート7が重なって接合されると共に、境界面プレート7が直接、もしくは間接的に支柱材21に接合され、柱61と支柱材21間の充填コンクリート8中に境界面プレート7とその支柱材21への接合部分が埋設されることで、主構造体6の柱61のコンクリートからの鉛直せん断力を境界面プレート7に伝達し、境界面プレート7と充填コンクリート8との接合部分を通じて支柱材21に伝達することができる。
柱61の鉛直せん断力が支柱材21に伝達されることで、主構造体6の層間変形時にも制震補強架構1の最下層の支柱材21が主構造体6の柱61に拘束されるため、主構造体6の構面内水平方向に隣接する支柱材21、21間に架設されているブレース4のダンパー42を予定通りに伸縮させることができる結果、ダンパー42に予定通りの減衰力を発生させることが可能になる。
境界面プレート7は支柱材21との間で柱61の軸方向のせん断力(鉛直せん断力)の伝達が可能な状態で柱61に接合されれば、境界面プレート7自体の形状と柱61への接合方法は問われず、主構造体6がコンクリート造躯体であれば、既存であるか新設であるか等の条件に応じて決められる。
例えば主構造体6が新設のコンクリート造躯体である場合には、境界面プレート7の柱61(コンクリート充填)側に、柱61の軸方向に直交等、交差する方向を向く面を持つ定着プレート等の板を突設し、これを柱61のコンクリート中に埋設することもできる。但し、主構造体6が既存のコンクリート造躯体の場合には柱61側への定着プレートの突設ができないか、困難であるため、図1等に示すように境界面プレート7を貫通する複数本の棒状(ボルト状)のせん断抵抗材9をコンクリート造躯体である場合の柱61のコンクリート中に埋設させる方法が適切である(請求項3)。主構造体6の柱61が鉄骨造である場合には、せん断抵抗材9が使用される必要はない。せん断抵抗材9は主に柱61が既存のコンクリート造躯体である場合の柱61のコンクリート中に埋設されるが、新設のコンクリート造躯体の柱61にも使用可能である。
せん断抵抗材9も柱61のコンクリート中では表面の付着力とせん断力の作用方向への投影面積分の支圧力をせん断力に対する抵抗力として発揮し、境界面プレート7にその面内方向に係合することで、柱61からの鉛直せん断力を境界面プレート7に伝達する。せん断抵抗材9は柱61のコンクリート中に埋設される区間において柱61の鉛直せん断力を受け、境界面プレート7に係合する部分から境界面プレート7に伝達する。せん断抵抗材9を介して境界面プレート7に伝達された柱61からの鉛直せん断力は境界面プレート7と支柱材21との接合部分と、境界面プレート7に突設された場合の上記のせん断力伝達部材10を介して支柱材21に定着される。
せん断抵抗材9は図7に示すように例えば棒状(ボルト状)の形状をした本体部の軸部91と、軸部91の先端部に形成、または螺合等により接続され、柱61の表面より奥側のコンクリート中に埋設されて定着される定着部92と、軸部91のコンクリートから露出する部分に形成、または螺合等により接続される頭部93を持つ。せん断抵抗材9の定着部92は柱61のコンクリート中に定着される一方、コンクリートから露出する頭部93の少なくとも一部は境界面プレート7の厚さの範囲内に位置し、境界面プレート7に面内方向に係合する。定着部92はコンクリート中に埋設されることで、せん断抵抗材9に生じる軸方向の引き抜き力に抵抗し、境界面プレート7を柱61の表面に接合した状態を維持する。
せん断抵抗材9は柱61が主に既存のコンクリート造の場合に柱61のコンクリート中に埋設されるが、その場合、定着部92を含むせん断抵抗材9の本体(軸部91)は柱61のコンクリート中に境界面プレート7側の正面から形成された削孔61a中に挿入される。定着部92は削孔61a内の奥まで挿入され、削孔61a内にモルタル、接着剤等の充填材61bが充填されることにより軸部91と共にコンクリート(充填材61b)中に埋設され、定着される。頭部93はコンクリートの表面側に位置する。
定着部92と頭部93はせん断抵抗材9本体である軸部91の一部であることもあるが、コンクリートの削孔61a中にせん断抵抗材9が挿入された後の削孔61a内への充填材61bの充填作業を容易にするために、頭部93は螺合等により軸部91から分離自在に接続されることもある。頭部93が軸部91から分離自在である場合、削孔61a内には頭部93が不在の状態で充填材61bが充填され、充填完了後、頭部93が軸部91に螺合により接続される。定着部92も軸部91の先端部に螺合等により接続されることもある。
せん断抵抗材9は頭部93において境界面プレート7に面内方向に係合するが、図7に示すように頭部93の定着部92側に、削孔61a内に挿入される挿入部94が一体的に形成された場合には、頭部93は削孔61aの周囲のコンクリートにも放射方向に係合することができる。このため、頭部93が挿入部94において柱61のコンクリートから直接、鉛直せん断力を受け、そのまま境界面プレート7に伝達することが可能になり、挿入部94がない場合より鉛直せん断力の伝達効果が高まる。
せん断抵抗材9も柱61の軸方向に間隔を置いて複数、配列することで、柱61の軸方向に分散して柱61のコンクリート中に埋設されるため、柱61の鉛直せん断力が柱61の軸方向の全長から均等に、あるいは分散して支柱材21の軸方向に伝達される状態になり、いずれかのせん断抵抗材9に鉛直せん断力が集中するようなことはない。せん断抵抗材9が柱61の軸方向に間隔を置いて配列することで、柱61に接合される支柱材21の全長に亘ってせん断抵抗材9を配列させることができる結果、柱21の鉛直せん断力を支柱材21の全長を通じて支柱材21に伝達させることができ、鉛直せん断力の伝達量が増大するため、鉛直せん断力の伝達効果が向上する。
せん断抵抗材9は棒状である場合には、図1、図5に示すように境界面プレート7の幅方向に並列して配列可能であり、境界面プレート7の幅方向に並列することで、境界面プレート7の幅方向にも均等に柱61の鉛直せん断力が複数本のせん断抵抗材9に伝達される状態を得ることが可能である。
なお、コンクリート造の構造部材の表面に重なるプレートを用いてプレートの面内方向のせん断力が構造部材に伝達されるようにプレートを構造部材に接合する方法として、構造部材の表面にベースプレートを重ね、ベースプレートを貫通するアンカーをその構造部材中に埋設する方法がある(特許第4189292号公報参照)。ここでのアンカーは請求項3のせん断抵抗材9に相当し得る。この方法によれば、ベースプレートの面内方向に作用するせん断力をベースプレートの挿通孔の内周面からアンカーに伝達し、アンカーから構造部材に伝達することができる(段落0026)。
しかしながら、この方法ではベースプレートに接続されるブレースに作用する軸方向力の、ベースプレート面内方向成分を構造部材に伝達することを想定しているため(段落0005、0069、0075)、本発明のように一方の柱61の軸方向力を鉛直せん断力として他方の柱(支柱材21)に伝達させるように両柱を接合するには、本方法をそのまま適用するだけでは十分とは言えず、何らかの追加の工夫を必要とする。
この点、請求項1ではコンクリート造躯体である主構造体6の柱61の正面(表面)に重なって接合される境界面プレート7を前記のように柱61の軸方向に連続した形状に形成することが可能であり、連続させることに障害はないため、請求項3のように複数本のせん断抵抗材9を柱61の軸方向に間隔を置いて配列させることが可能になっている。この結果、前記のように柱61の鉛直せん断力を支柱材21の全長に分散したせん断抵抗材9を通じて支柱材21に伝達させることができるため、柱61と支柱材21との間で十分な鉛直せん断力の伝達を図ることが可能になっている。
請求項1ではまた、柱61の正面と支柱材21との間に充填コンクリート8が充填され、境界面プレート7とその支柱材21との接合部分が充填コンクリート8中に埋設されるため、境界面プレート7の表面にせん断力伝達部材10を突設することで(請求項2)、柱61からの鉛直せん断力をせん断力伝達部材10を介しても支柱材21に伝達することが可能になっている。
只、境界面プレート7にせん断力伝達部材10を突設する場合(請求項2)にも、柱61の表面と充填コンクリート8とは境界面プレート7を介して接合されるに過ぎないため、柱61からの鉛直せん断力の支柱材21への伝達が十分でないこともある。
そこで、主構造体6が既存のコンクリート造躯体の場合には、最下層の支柱材21の主構造体6の柱61側に、柱61の、正面に交差する面をなす側面に重なって柱61に接合される側面プレート14を一体化させることで(請求項4)、鉛直せん断力の支柱材21への伝達を側面プレート14に補わせることもある。側面プレート14は柱61の正面から距離を置いた支柱材21から柱61側へ張り出して柱61の側面に重なることで、柱61と支柱材21間に充填される充填コンクリート8の充填領域を仕切るため、充填コンクリート8のせき板を兼ねる役目も果たす。
請求項4では柱61の側面に重なって接合される側面プレート14が支柱材21の柱61側に一体化することで、境界面プレート7に加え、側面プレート14からも柱61の鉛直せん断力が支柱材21に伝達されるため、柱61と支柱材21の一体性が強まる。この場合には、柱61の側面からも側面プレート14を介して鉛直せん断力が支柱材21に伝達されることで、柱61の正面の境界面プレート7のみから支柱材21に伝達される場合より、鉛直せん断力伝達時の柱61のコンクリートに生じる境界面プレート7からの反力が境界面プレート7と側面プレート14に分散するため、柱61のコンクリートの損傷が生じにくくなる利点もある。
側面プレート14の柱61の側面への接合方法も問われないが、側面プレート14は例えば境界面プレート7と同様に、側面プレート14を厚さ方向に貫通し、側面プレート14にその面内方向に係合するせん断抵抗材9が柱61中に定着されることにより柱61に接合される(請求項5)。柱61の側面は正面の両側の側面である場合と、いずれか片側の側面である場合があるが、側面プレート14の接合による柱61への偏心の影響を回避する上では両側が合理的である。
側面プレート14は支柱材21の柱61側には主に溶接、またはボルト接合により一体化させられ、支柱材21から充填コンクリート8の領域を越えて柱61に跨り、柱61の側面に重なる。図面ではH形鋼からなる支柱材21のフランジの柱61側の側面に側面プレート14を溶接している。
柱61の側面に主構造体6の壁62が接続している場合のように、側面プレート14を重ねようとする柱61の区間に柱61の側面が露出していないような場合には、壁62の柱61との目地等、壁62と柱61の境界の一部が除去され(斫られ)、柱61の側面が露出させられる。側面プレート14を貫通するせん断抵抗材9は側面プレート14の幅方向(柱61と支柱材21が対向する方向)には、柱61の側面への重なり代(幅)に応じ、1列、または複数列、配置される。
柱61からの鉛直せん断力の支柱材21への伝達効果、及び鉛直せん断力伝達時に柱61のコンクリートに生じる境界面プレート7等からの反力の分散効果は側面プレート14の主構造体6側の端部に、柱61の正面の反対側の背面に重なって柱61に接合される背面プレート16を一体化させることで(請求項6)、更に高まる。背面プレート16が側面プレート14に一体化しなければ、支柱材21への鉛直せん断力の伝達効果は生じないため、背面プレート16が柱61に接合される場合には鉛直せん断力の伝達上、背面プレート16は側面プレート14に一体化することに意味がある。
側面プレート14は柱61の側面の幅方向には側面の全幅に跨って重なる場合と、図1等に示すように柱61の支柱材21寄りの一部の区間にのみ重なる場合があるが、背面プレート16の形状は側面プレート14の柱61への重なり区間に応じて相違する。側面プレート14が柱61の全幅に跨る場合には、背面プレート16は柱61の背面にのみ重なれば側面プレート14に一体化(接合)されるが、側面プレート14が支柱材21寄りの一部の区間にのみ重なる場合には、図2−(d)に示すように背面プレート16は柱61の背面から柱61の側面に回り込み、側面プレート17を有する形状に形成され、柱61の側面における側面プレート17において側面プレート14に一体化される。
側面プレート14に背面プレート16が一体化する場合には、支柱材21に一体化した側面プレート14と背面プレート16が柱61の周方向に連続することで、支柱材21は側面プレート14と背面プレート16を介して柱61を包囲した状態で柱61に接合される。この結果、柱61の鉛直せん断力が側面プレート14と背面プレート16を通じて支柱材21に伝達される状態になるため、鉛直せん断力の支柱材21への伝達効果が更に高まる。また柱61のコンクリートが鉛直せん断力伝達時に各プレートから受ける反力が軽減されるため、柱61のコンクリートに損傷が生じにくくなる。
背面プレート16は側面プレート14、または境界面プレート7と同様に、例えば背面プレート16を厚さ方向に貫通し、背面プレート16にその面内方向に係合するせん断抵抗材9が柱61中に定着されることにより柱61に接合される(請求項7)。この場合もせん断抵抗材9は背面プレート16の幅に応じ、1列、または複数列、配置される。
制震補強架構の支柱材に対向する柱の制震補強架構側の正面に境界面プレートを重ねて接合すると共に、境界面プレートを直接、もしくは間接的に支柱材に接合し、柱と支柱材間に充填されるコンクリート中に境界面プレートとその支柱材への接合部分を埋設するため、主構造体の柱のコンクリートからの鉛直せん断力を境界面プレートに伝達し、境界面プレートと充填コンクリートとの接合部分を通じて支柱材に伝達することができる。
この結果、主構造体の層間変形時にも制震補強架構の最下層の支柱材を主構造体の柱に拘束した状態を維持することができるため、主構造体の構面内水平方向に隣接する支柱材間に架設されているブレースのダンパーを予定通りに伸縮させることができ、ダンパーに予定通りの減衰力を発生させることができる。
主構造体の柱が既存のコンクリート造躯体で、制震補強架構の支柱材が鉄骨造である場合に、柱の正面(表面)に境界面プレートを接合し、柱の正面と支柱材との間にコンクリートを充填し、支柱材を柱に接合した様子を示した水平断面図である。 (a)は図1に示す柱に支柱材を接合するときの柱の様子を示した水平断面図、(b)は(a)に示す柱の支柱材側の面にせん断力伝達部材と接合プレートが一体化した境界面プレートを柱の正面に接合し、接合プレートに、支柱材に一体化させた連結材を突き合わせるときの様子を示した水平断面図、(c)は(b)に示す接合プレートと連結材を添え板を用いて接合したときの様子を示した水平断面図、(d)は柱の背面に背面プレートを接合したときの様子を示した水平断面図である。 主構造体の構面内水平方向に隣接する支柱間に架設されるつなぎ梁が主構造体のスラブ等に接続スラブを介して接合されている様子を示した水平断面図である。 図1のx−x線断面図である。 図1のy−y線断面図である。 図1のz−z線断面図である。 境界面プレートを貫通するせん断抵抗材と柱のコンクリート及び境界面プレートとの関係を示した、せん断抵抗材の軸に垂直な方向の断面図である。 主構造体の構面外に制震補強架構が配置され、制震補強架構のつなぎ梁が主構造体のスラブ等に接合された様子を示した斜視図である。 制震補強架構のつなぎ梁が主構造体の壁に接続スラブを介して接合されている状況を示した斜視図である。 図8に示す制震補強架構を構成する支柱が3本の支柱材からなる場合に、主構造体に層間変形が生じ、制震補強架構の最下層より上の支柱材が水平方向に相対移動したときの様子を示した立面図である。
図1は図8に示すような柱・梁からなるフレームを有する主構造体6の構面外に、主構造体6を制震補強するための制震補強架構1が主構造体6から距離を置いて配置され、主構造体6に接合された制震補強架構付き構造物における主構造体6の柱61と制震補強架構1の一部である支柱2との接合部を示す。主構造体6は既存の場合と新設の場合があり、図面では鉄筋コンクリート造(鉄骨鉄筋コンクリート造を含む)の場合の例を示すが、鉄骨造の場合もある。
制震補強架構1は図8〜図10に示すように主構造体6の構面内水平方向に配列し、互いに間隔を隔てて立設される複数本の支柱2と、構面内水平方向に隣接する支柱2、2間に架設されるつなぎ梁3と、構面内水平方向に隣接する支柱2、2間に架設される、ブレース本体41にダンパー42を組み込んだダンパー一体型ブレース(以下、ブレース)4を基本的な構成要素として備える。
制震補強架構1は図9に示すようにつなぎ梁3において主構造体6の梁やスラブ、壁62等の構造部材に両者間に跨り、双方に少なくとも水平せん断力の伝達が可能な状態に接続スラブ31を介して接合される。「少なくとも」とは、主構造体6と制震補強架構1との間の水平せん断力のみが伝達可能な場合と、水平せん断力の他、いずれかの回りの曲げモーメント、または鉛直荷重の伝達が可能な場合があることの意味である。
支柱2は図8、図10に示すように鉛直方向に複数本の支柱材21〜23に分離し、上下に分離した支柱材21、22(22、23)間に両者間の相対水平移動を許容する積層ゴム支承等の絶縁装置5が介在する。制震補強架構1は主構造体6の構面(フレームの構面内方向)に沿って付加的に設置されるため、主に鉄骨造で構築されるが、鉄筋コンクリート造の場合もある。
支柱2は最下層に位置する支柱材21とその上に位置する上部の支柱材22の、計2本の支柱材21、22からなる場合と、図10に示すように最下層の支柱材21とその上に位置する2本以上の上部の支柱材22、23の、計3本以上の支柱材21〜23からなる場合がある。全支柱材21〜23の内、最下層の支柱材21は図10に示すように制震補強架構1が主構造体6の層間変形に追従して変形するときにも相対移動せずに原位置に留まるため、図6に示すように主構造体6の柱61に接合される。上記した図1に示す接合部における柱61に接合された支柱2は最下層の支柱材21である。
絶縁装置5は図10に示すようにそれが跨る上下の支柱材21、22(22、23)間の水平方向の相対移動を許容しながら、相対移動後に支柱材21、22(22、23)を相対移動前の状態に復帰させる状態(復元可能)に接合される。絶縁装置5として積層ゴム支承が使用される場合は、積層ゴム支承が復元装置を兼ね、積層ゴム支承以外の支承が使用される場合は、ばね等の復元装置が伴われる。
ブレース4は支柱2、2とつなぎ梁3、3からなる制震補強架構1内に、水平と鉛直に対して傾斜して架設されるため、ブレース4の一端部は例えば図8に示すように構面内水平方向に隣接する支柱材21、21(22、22)の内、一方の支柱材21(22)、もしくはその支柱材21(22)寄りのつなぎ梁3に接続(連結)され、他端部は他方の支柱材21(22)の直下、または直上の支柱材21(22)、もしくはその支柱材22(21)寄りのつなぎ梁3に接続(連結)される。
図10に示すように1本の支柱2が3本以上の支柱材21〜23からなる場合は、ブレース4の架設層が2層以上に亘ることから、最下層のブレース4の一端部は支柱材が2本の場合と同じく最下層の支柱材21やつなぎ梁3に接続され、他端部は水平方向に隣接する最下層の支柱材21の直上の支柱材22やつなぎ梁3に接続される。その直上層のブレース4の一端部は最下層の支柱材21の直上の支柱材22やつなぎ梁3に接続され、他端はその支柱材22に隣接する支柱材22の直上の支柱材23やつなぎ梁3に接続される。
ブレース4は図8に示すように互いに軸方向に相対移動自在なブレース本体41と、一方のブレース本体41に内蔵され、他方のブレース本体41に接続されるダンパー42からなり、ブレース本体41の端部に一体化したブラケットにおいて、例えば制震補強架構1の支柱2やつなぎ梁3に接合されたベースプレート等に一体化したガセットプレートに連結される。ブレース4はブレース本体41がその両端間に作用する圧縮力と引張力によって相対移動するときにダンパー42が減衰力を発生することにより構造体2の揺れを抑制する。ダンパー42にはオイルダンパー(油圧シリンダ)等の粘性流体を用いたダンパーが使用される。
図1に示すように制震補強架構1の複数本の支柱2の内、少なくともいずれかの支柱2の最下層の支柱材21に対向する主構造体6の柱61の制震補強架構1側の正面には境界面プレート7が重なって接合される。境界面プレート7は最下層の支柱材21に直接、もしくは間接的に接合される。「直接」とは、境界面プレート7が溶接、もしくはボルトを用いて支柱材21に接合されることを言い、「間接的に」とは例えば図1に示すように境界面プレート7と支柱材21のそれぞれに溶接等により一体化した接合プレート11と連結材211が互いにボルト13等により接合されることを言う。
柱61の制震補強架構1側の正面と最下層の支柱材21との間にはコンクリート(充填コンクリート)8が充填され、コンクリート8中に境界面プレート7とその支柱材21への接合部分が埋設されることで、柱61が支柱材21に接合される。このことから、支柱材21は柱61の正面との間に充填されるコンクリート8の充填領域を確保するために、図2−(c)に示すように柱61の正面との間に距離を置いて配置される。境界面プレート7と支柱材21との接合部分は直接接合の場合の両者の接合部分であり、図示するように間接的に接合される場合の接合プレート11と連結材211との接合部分である。
境界面プレート7は柱61には軸方向に間隔を置いて部分的に接合されることもあるが、柱61からの鉛直せん断力を軸方向に分散させ、支柱材21の軸方向に均等に伝達させながら、柱61の正面を軸方向の引張力に対して連続して補強する上では、図1のx−x線断面図である図4、及びy−y線断面図である図5に示すように柱61の軸方向に連続した形状に形成されることが適切である。このことから、境界面プレート7による柱61からの鉛直せん断力の伝達効果と柱61正面に対する補強効果が最大に発揮されるよう、図面では境界面プレート7に支柱材21の全長、もしくはほぼ全長に亘る長さを与え、長方形状に形成している。
図面ではまた、柱61の正面に直交する両側の側面から、境界面プレート7と同様に柱61の鉛直せん断力を支柱材21に伝達するための側面プレート14を支柱材21に接合しながら、柱61の側面に接合している。図面では支柱材21にH形鋼を使用し、弱軸方向を主構造体6の構面外方向(柱61と対向する方向)に向けていることから、側面プレート14は例えば支柱材21のフランジの柱61側の側面、またはフランジの厚さ方向のいずれかの面等に溶接等により一体化させられる。
柱61の幅方向(構面内方向)には柱61の全幅に相当する幅を境界面プレート7に持たせることもできるが、図面では境界面プレート7を柱61に接合するための、構面外方向を向くせん断抵抗材9と、境界面プレート7に直交する方向を向いて柱61に重なる側面プレート14を柱61に接合するためのせん断抵抗材9との柱61内での衝突(干渉)を回避するために、境界面プレート7の幅を柱61の全幅に満たない大きさにしている。
図示するように側面プレート14も境界面プレート7と同様に、せん断抵抗材9を用いて柱61の側面に接合する場合、境界面プレート7と側面プレート14をそれぞれ貫通するせん断抵抗材9、9は図1に示すように柱61内で互いに直交して配置されるため、柱61内でのせん断抵抗材9、9同士の衝突が想定される。そこで、上記のように境界面プレート7の幅を柱61の全幅に満たない大きさに抑えることで、境界面プレート7を貫通するせん断抵抗材9が構面外方向を向く柱61の中心線寄りに配置されるようになるため、そのせん断抵抗材9と、側面プレート14を貫通するせん断抵抗材9との柱61内部での衝突(干渉)を回避することが可能になる。
境界面プレート7を貫通するせん断抵抗材9は軸方向を柱61の軸方向に直交する方向に向けて柱61のコンクリート中に埋設されることで、主に軸方向に直交する方向のせん断力を負担し、柱61からの鉛直せん断力を境界面プレート7に伝達する働きをする。このせん断抵抗材9の機能から、せん断抵抗材9は軸方向引張力(引き抜き力)のみを負担する場合のように柱61のコンクリートとの付着による割裂破壊を考慮する必要がない。このことに加え、複数本のせん断抵抗材9の集合により鉛直せん断力の伝達効果が発揮されるようにするために、図面では図4、図5に示すように境界面プレート7を貫通するせん断抵抗材9を柱61の軸方向にせん断抵抗材9の全長分程度の間隔を置いて配列させている。
側面プレート14を貫通するせん断抵抗材9は境界面プレート7を貫通するせん断抵抗材9を補助する役目を持つことから、必ずしも境界面プレート7を貫通するせん断抵抗材9のような密度で配置される必要はないため、図6に示すように柱61の軸方向には、側面プレート14を貫通するせん断抵抗材9を部分的に配列させている。
せん断抵抗材9は図7に示すように本体である棒状の軸部91と、軸部91の先端部に形成、もしくは接続される定着部92と、軸部91のコンクリート表面側に形成、もしくは接続される頭部93の3部分を有する。せん断抵抗材9は柱61のコンクリート中に形成される削孔61a内に挿入される定着部92において削孔61a中に充填されるモルタル等の充填材61b中に定着され、頭部93において境界面プレート7に、または境界面プレート7と柱61のコンクリートに境界面プレート7の面内方向に係合する。
せん断抵抗材9は定着部92において充填材61b中に定着されることで、軸方向引張力に対する抵抗力を発揮し、頭部93において少なくとも境界面プレート7に面内方向に係合することで、境界面プレート7の面内方向のせん断力に対する抵抗力を発揮する。「少なくとも境界面プレート7に」とは、頭部93が境界面プレート7と削孔61a周囲のコンクリートに係合することもある意味である。図7では特に頭部93の削孔61a側に、削孔61aの内周面、またはコンクリートに境界面プレート7の面内方向に係合する挿入部94を連続して形成することで、頭部93に柱61のコンクリートからも直接、鉛直せん断力が伝達され、頭部93から境界面プレート7に伝達できるようにしている。
図7ではせん断抵抗材9の軸部91と定着部92を硬化した充填材61b中に埋設した後、軸部91に軸方向の引張力を予め与えることができるように軸部91の頭部93から境界面プレート7の表面側へ突出する部分にナット95を螺合している。頭部93へのナット95の緊結により軸部91に軸方向引張力を付与した場合には、軸部91の軸方向に、境界面プレート7を柱61のコンクリート表面に密着させようとする復元力が生ずるため、境界面プレート7と柱61のコンクリートとの間に鉛直せん断力の伝達時に生じる摩擦力が増大し、境界面プレート7と柱61との一体性が強まる利点がある。
柱61と支柱材21とは、両者の接合部がコンクリート8中に埋設され、接合部の表面に付着力と支圧力が生じることで、柱61の鉛直せん断力が支柱材21に伝達可能に互いに接合される。但し、接合部での付着力と支圧力のみでは鉛直せん断力の伝達が十分でないこともあるため、図面では境界面プレート8の正面(支柱材21側の面)に、支柱材21との間で柱61の鉛直せん断力を伝達するための複数のせん断力伝達部材10を柱61の軸方向に間隔を置いて突設している。
せん断力伝達部材10の形状(形態)は問われないが、図面では支圧力での鉛直せん断力の伝達を図るために柱61の軸方向(鉛直方向)に直交する方向を向く上下面を有する板(プレート)状にせん断力伝達部材10を形成している。
プレート状のせん断力伝達部材10の上下面を水平に向けてせん断力伝達部材10を使用することで、せん断力伝達部材10のコンクリートから受ける抵抗力が大きくなり過ぎるような場合には、板を水平に対して傾斜させるか、鉛直方向に向けた形にする場合もある。図面では境界面プレート7の支柱材21側の面に突設される各せん断力伝達部材10のせん断力伝達時の負担を軽減するために、柱61の軸方向にせん断抵抗材9の配列と同等程度の間隔を置いてせん断力伝達部材10を配列させている。
境界面プレート7の正面にはまた、境界面プレート7を支柱材21に接合するための接合プレート11が支柱材21側へ突出した状態で溶接等により一体化させられる。図面では制震補強架構1が鉄骨造であり、支柱2(支柱材21)にH形鋼を使用していることに伴い、接合プレート11を鉛直方向に向けて境界面プレート7に溶接する一方、接合プレート11を支柱材21の柱61側の面に突設した鋼材の連結材211にボルト、もしくは溶接により接合している。
図面では支柱材21としてのH形鋼の強軸方向を主構造体6の構面内方向に向けて支柱材21を配置していることから、H形鋼のウェブの柱61側の面に連結材211を弱軸方向に向けて突設している。連結材211は支柱2(支柱材21)が鉄筋コンクリート造の場合にも突設される。
支柱材21にH形鋼を使用した場合、H形鋼のウェブには、その柱61側の面に突設された連結材211から柱61の鉛直せん断力が伝達されることから、鉛直せん断力がウェブから支柱材21の軸方向に分散して伝達されるようにするために、図面ではH形鋼のウェブの柱61側に補強プレート212を水平に向けて突設すると共に、柱61の反対側にウェブ自身を曲げに対して補強するための補強プレート212をウェブに重ねて接合している。
接合プレート11と連結材211は直接、溶接等により接合されることもあるが、図面では現場での作業のし易さの面から、図2−(a)、(b)に示すように接合プレート11を連結材211に同一軸線上で突き合わせ、両者に跨る添え板12、12を双方の両面に重ねてボルト13により接合している。
支柱材21であるH形鋼の両フランジの幅方向一方の端部には、柱61と支柱材21との間に充填されるコンクリート8の充填時のせき板を兼ねる上記の側面プレート14が溶接やボルト等により接合される。側面プレート14は柱61と支柱材21の対向する方向(構面外方向)には少なくとも支柱材21のフランジから張り出して柱61の側面に重なる幅を持つ。この側面プレート14の柱61との重なり区間は少なくとも側面プレート14を柱61に接合するためのアンカー等の接合材である例えば上記のせん断抵抗材9を配置可能な程度の幅を持つ。
側面プレート14のコンクリート8側の面の内、コンクリート8のせき板を兼ねる部分にはコンクリート8との一体性を確保し、コンクリート8との間で補助的に鉛直せん断力を伝達するためのスタッドボルト15が突設される。
図1は図1のz−z線断面図である図6に示すように柱61の軸方向に壁62が接続する区間に側面プレート14が位置する場合の水平断面を示している。ここに示すように柱61の軸方向に柱61に壁62が接続する区間では、側面プレート14の支柱材21からの張り出し長さは壁62の屋外側の表面に到達するまでの大きさになるが、その内、コンクリート8のせき板を兼ねる部分(区間)を除いた部分が柱61と重なる部分になる。この側面プレート14の柱61と重なる区間(範囲)内に上記のせん断抵抗材9が側面プレート9を貫通し、せき板を兼ねる部分にスタッドボルト15が突設される。柱61の軸方向に柱61に壁62が接続する区間にせん断抵抗材9が貫通可能な、柱61との十分な重なり幅(重なり代)を側面プレート14が確保できない場合には、壁62の支柱材21側の一部が除去される。
図6に示すように上下に隣接する階の壁62、62間の壁62が不在の区間においては、図2−(d)、図3に示すように側面プレート14を柱61の屋内寄りの位置にまで到達させることができるため、側面プレート14の、柱61屋内寄りの位置にせん断抵抗材9を貫通させることもできる。図6は主構造体6の2階の下方から3階の中途までの区間に亘って配置された側面プレート14の立面形状を示している。ここに示すように側面プレート14が主構造体6の高さ方向に複数層に亘る場合、側面プレート14の柱61屋内寄りの端部の形状は柱61の接続する壁62の位置、または形状に応じて不連続に形成可能であるため、壁62の存在する区間と存在しない区間に対応し、柱61の屋内寄りに凸になる部分を形成可能になる。
この場合、側面プレート14の柱61屋内寄りに凸になる部分が形成可能であることで、この柱61屋内寄りに凸になる部分では側面プレート14を図2−(d)に示すように主構造体6の構面外方向に複数箇所にせん断抵抗材9を並列させて配置することが可能になる。この結果、せん断抵抗材9による側面プレート14の柱61への接合箇所数を増すことができるため、せん断抵抗材9による柱61からの鉛直せん断力の支柱材21への伝達効果を高めることが可能になる。
上下に隣接する階の壁62、62間の壁62が不在の区間、または壁62の柱61寄りの部分を除去した場合の除去区間においては、図2−(d)、図6に示すように柱61の正面の反対側の面である背面に背面プレート16を重ねて接合することができるため、境界面プレート7と共に背面プレート16を通じても柱61からの鉛直せん断力の伝達効果を得ることができる。
図面では特に背面プレート16をもせん断抵抗材9を用いて柱61の背面に接合していることから、側面プレート14と背面プレート16をそれぞれ貫通するせん断抵抗材9、9も図1に示すように柱61内で互いに直交して配置されることになる。図面ではまた、特に背面プレート16の幅方向両側に柱61の側面に重なり、側面プレート14に連続する側面プレート17、17を溶接等により一体化させ、この側面プレート17、17を側面プレート14、14に溶接し、柱61側面の幅方向に連続させている。
図2−(a)〜(d)は図1に示す柱61と支柱材21の接合部を完成させるための施工手順例を示している。ここでは図2−(a)、(b)に示すように柱61の支柱材21側の面に、接合プレート11が予め接合された境界面プレート7をせん断抵抗材9により接合している。せん断抵抗材9は図7に示すように柱61のコンクリートに支柱材21側から穿設された削孔61a内にモルタルや接着剤等の充填材61bを充填した後に挿入させられる。
図2に示す例では図2−(b)、(c)に示すように側面プレート14の柱61への重ね合わせの前に、側面プレート14を柱61の側面に接合するせん断抵抗材9を柱61のコンクリート中に形成された削孔61a内に挿入し、充填材61bの充填により定着させている。せん断抵抗材9の頭部93は軸部91に予め一体化、もしくは螺合している場合と、側面プレート14の柱61への重ね合わせ後に一体化や螺合により接続される場合がある。図2では頭部93を軸部91に予め接続している。
この場合、側面プレート14のせん断抵抗材9に対応した位置には図7に示すように頭部93が挿通可能な孔(開口)が形成されており、側面プレート14の柱61への重ね合わせ後、頭部93が挿通した孔(開口)の内周と頭部93の外周との間が溶接され、側面プレート14がせん断抵抗材9に一体化させられる。
図3は制震補強架構1の最下層の支柱材21が主構造体6の柱61に接合され、つなぎ梁3が図9に示すように主構造体6の壁62に接合された状況を示している。ここでは図9に示すようにつなぎ梁3と壁62との間に双方に接合される前記した接続スラブ31を構築し、接続スラブ31を通じて主構造体6の構面内方向の水平せん断力を制震補強架構1のつなぎ梁3に伝達するようにしている。
接続スラブ31と壁62及びつなぎ梁3との接合方法は前記のように両者間で水平せん断力が伝達可能であれば問われないが、図9では接続スラブ31と壁62との間、及び接続スラブ31とつなぎ梁3との間に跨ってそれぞれに埋設され、両者間でのせん断力の伝達が可能なせん断抵抗材18を用いて接合している。図3は図2−(d)に示す支柱材21と柱61との接合例の場合の、つなぎ梁3と壁62との接続スラブ31による接合状態を示している。図9に示すせん断抵抗材18はそれが接合する部材の双方に跨って定着される定着部とこれを貫通する棒状のアンカーから構成されている。
1……制震補強架構、
2……支柱、21、22、23……支柱材、211……連結材、212……補強プレート、
3……つなぎ梁、31……接続スラブ、
4……ダンパー一体型ブレース、41……ブレース本体、42……ダンパー、
5……絶縁装置、
6……主構造体、61……柱、61a……削孔、61b……充填材、62……壁、
7……境界面プレート、8……コンクリート、
9……せん断抵抗材、91……軸部、92……定着部、93……頭部、94……挿入部、95……ナット、
10……せん断力伝達部材、
11……接合プレート、12……添え板、13……ボルト、
14……側面プレート、15……スタッドボルト、
16……背面プレート、17……側面プレート
18……せん断抵抗材。
請求項1に記載の発明の制震補強架構柱の接合構造は、柱・梁からなるフレームを有する主構造体の構面外にその構面に平行に配列し、互いに間隔を隔てて立設される支柱と、構面内水平方向に隣接する支柱間に架設されるつなぎ梁と、構面内水平方向に隣接する支柱間に架設される、ブレース本体にダンパーを組み込んだダンパー一体型ブレースを備え、前記支柱が鉛直方向に複数本の支柱材に分離し、上下に分離した支柱材間に両者間の相対水平移動を許容する絶縁装置が介在した、前記主構造体を制震補強するための制震補強架構が前記主構造体の前記フレームから距離を置いた位置に配置され、前記主構造体に接合された制震補強架構付き構造物において、
前記制震補強架構の複数本の支柱の内、少なくともいずれかの支柱の最下層の前記支柱材に対向する前記主構造体の前記柱の前記制震補強架構側の正面に境界面プレートが重なって接合されると共に、この境界面プレートが直接、もしくは間接的に前記最下層の前記支柱材に接合され、前記柱の前記正面とこの正面との間に距離が確保された前記支柱材との間にコンクリートが充填され、このコンクリート中に前記境界面プレートとその前記支柱材への接合部分が埋設され
前記最下層の前記支柱材の幅方向両側に、前記支柱材から前記柱側へ張り出し、前記コンクリートの充填領域を仕切る側面プレートが一体化し、この側面プレートは前記柱の、前記正面に交差する側面に重なって前記柱に接合されていることを構成要件とする。
境界面プレート7の支柱材21側の表面全体と支柱材21との接合部分は充填コンクリート8中に埋設されることで、柱61の鉛直せん断力が支柱材21に伝達されようとするときに、充填コンクリート8との間で付着力と支圧力を発生させる。この付着力と支圧力は柱61の鉛直せん断力に対する抵抗力になるため、これらの力を通じて鉛直せん断力が支柱材21に伝達される。付着力は境界面プレート7の表面と接合部の表面に生じ、支圧力はコンクリート8中に埋設される接合部分の鉛直せん断力の作用方向に直交する面に生じ、大きさは鉛直せん断力の作用方向への投影面積分になる。
特に境界面プレート7の支柱材21側の面に、支柱材21との間で柱61の軸方向のせん断力を伝達するための複数のせん断力伝達部材10が柱61の軸方向に間隔を置いて突設された場合(請求項)には、せん断力伝達部材10の表面に生じる付着力と支圧力が鉛直せん断力に対する充填コンクリート8中での抵抗力に加算されるため、柱61からの鉛直せん断力の支柱材21への伝達効果が向上する。境界面プレート7の支柱材21側の面は境界面プレート7の表面である。
例えば主構造体6が新設のコンクリート造躯体である場合には、境界面プレート7の柱61(コンクリート充填)側に、柱61の軸方向に直交等、交差する方向を向く面を持つ定着プレート等の板を突設し、これを柱61のコンクリート中に埋設することもできる。但し、主構造体6が既存のコンクリート造躯体の場合には柱61側への定着プレートの突設ができないか、困難であるため、図1等に示すように境界面プレート7を貫通する複数本の棒状(ボルト状)のせん断抵抗材9をコンクリート造躯体である場合の柱61のコンクリート中に埋設させる方法が適切である(請求項)。主構造体6の柱61が鉄骨造である場合には、せん断抵抗材9が使用される必要はない。せん断抵抗材9は主に柱61が既存のコンクリート造躯体である場合の柱61のコンクリート中に埋設されるが、新設のコンクリート造躯体の柱61にも使用可能である。
なお、コンクリート造の構造部材の表面に重なるプレートを用いてプレートの面内方向のせん断力が構造部材に伝達されるようにプレートを構造部材に接合する方法として、構造部材の表面にベースプレートを重ね、ベースプレートを貫通するアンカーをその構造部材中に埋設する方法がある(特許第4189292号公報参照)。ここでのアンカーは請求項のせん断抵抗材9に相当し得る。この方法によれば、ベースプレートの面内方向に作用するせん断力をベースプレートの挿通孔の内周面からアンカーに伝達し、アンカーから構造部材に伝達することができる(段落0026)。
この点、請求項1ではコンクリート造躯体である主構造体6の柱61の正面(表面)に重なって接合される境界面プレート7を前記のように柱61の軸方向に連続した形状に形成することが可能であり、連続させることに障害はないため、請求項のように複数本のせん断抵抗材9を柱61の軸方向に間隔を置いて配列させることが可能になっている。この結果、前記のように柱61の鉛直せん断力を支柱材21の全長に分散したせん断抵抗材9を通じて支柱材21に伝達させることができるため、柱61と支柱材21との間で十分な鉛直せん断力の伝達を図ることが可能になっている。
請求項1ではまた、柱61の正面と支柱材21との間に充填コンクリート8が充填され、境界面プレート7とその支柱材21との接合部分が充填コンクリート8中に埋設されるため、境界面プレート7の表面にせん断力伝達部材10を突設することで(請求項)、柱61からの鉛直せん断力をせん断力伝達部材10を介しても支柱材21に伝達することが可能になっている。
只、境界面プレート7にせん断力伝達部材10を突設する場合(請求項)にも、柱61の表面と充填コンクリート8とは境界面プレート7を介して接合されるに過ぎないため、柱61からの鉛直せん断力の支柱材21への伝達が十分でないこともある。
そこで、主構造体6が既存のコンクリート造躯体の場合には、最下層の支柱材21の主構造体6の柱61側に、柱61の、正面に交差する面をなす側面に重なって柱61に接合される側面プレート14を一体化させることで(請求項)、鉛直せん断力の支柱材21への伝達を側面プレート14に補わせることもある。側面プレート14は柱61の正面から距離を置いた支柱材21から柱61側へ張り出して柱61の側面に重なることで、柱61と支柱材21間に充填される充填コンクリート8の充填領域を仕切るため、充填コンクリート8のせき板を兼ねる役目も果たす。
請求項では柱61の側面に重なって接合される側面プレート14が支柱材21の柱61側に一体化することで、境界面プレート7に加え、側面プレート14からも柱61の鉛直せん断力が支柱材21に伝達されるため、柱61と支柱材21の一体性が強まる。この場合には、柱61の側面からも側面プレート14を介して鉛直せん断力が支柱材21に伝達されることで、柱61の正面の境界面プレート7のみから支柱材21に伝達される場合より、鉛直せん断力伝達時の柱61のコンクリートに生じる境界面プレート7からの反力が境界面プレート7と側面プレート14に分散するため、柱61のコンクリートの損傷が生じにくくなる利点もある。
側面プレート14の柱61の側面への接合方法も問われないが、側面プレート14は例えば境界面プレート7と同様に、側面プレート14を厚さ方向に貫通し、側面プレート14にその面内方向に係合するせん断抵抗材9が柱61中に定着されることにより柱61に接合される(請求項)。柱61の側面は正面の両側の側面である場合と、いずれか片側の側面である場合があるが、側面プレート14の接合による柱61への偏心の影響を回避する上では両側が合理的である。
柱61からの鉛直せん断力の支柱材21への伝達効果、及び鉛直せん断力伝達時に柱61のコンクリートに生じる境界面プレート7等からの反力の分散効果は側面プレート14の主構造体6側の端部に、柱61の正面の反対側の背面に重なって柱61に接合される背面プレート16を一体化させることで(請求項)、更に高まる。背面プレート16が側面プレート14に一体化しなければ、支柱材21への鉛直せん断力の伝達効果は生じないため、背面プレート16が柱61に接合される場合には鉛直せん断力の伝達上、背面プレート16は側面プレート14に一体化することに意味がある。
背面プレート16は側面プレート14、または境界面プレート7と同様に、例えば背面プレート16を厚さ方向に貫通し、背面プレート16にその面内方向に係合するせん断抵抗材9が柱61中に定着されることにより柱61に接合される(請求項)。この場合もせん断抵抗材9は背面プレート16の幅に応じ、1列、または複数列、配置される。
柱61と支柱材21とは、両者の接合部がコンクリート8中に埋設され、接合部の表面に付着力と支圧力が生じることで、柱61の鉛直せん断力が支柱材21に伝達可能に互いに接合される。但し、接合部での付着力と支圧力のみでは鉛直せん断力の伝達が十分でないこともあるため、図面では境界面プレートの正面(支柱材21側の面)に、支柱材21との間で柱61の鉛直せん断力を伝達するための複数のせん断力伝達部材10を柱61の軸方向に間隔を置いて突設している。

Claims (7)

  1. 柱・梁からなるフレームを有する主構造体の構面外にその構面に平行に配列し、互いに間隔を隔てて立設される支柱と、構面内水平方向に隣接する支柱間に架設されるつなぎ梁と、構面内水平方向に隣接する支柱間に架設される、ブレース本体にダンパーを組み込んだダンパー一体型ブレースを備え、前記支柱が鉛直方向に複数本の支柱材に分離し、上下に分離した支柱材間に両者間の相対水平移動を許容する絶縁装置が介在した、前記主構造体を制震補強するための制震補強架構が前記主構造体の前記フレームから距離を置いた位置に配置され、前記主構造体に接合された制震補強架構付き構造物において、
    前記制震補強架構の複数本の支柱の内、少なくともいずれかの支柱の最下層の前記支柱材に対向する前記主構造体の前記柱の前記制震補強架構側の正面に境界面プレートが重なって接合されると共に、この境界面プレートが直接、もしくは間接的に前記最下層の前記支柱材に接合され、前記柱の前記正面と前記支柱材との間にコンクリートが充填され、このコンクリート中に前記境界面プレートとその前記支柱材への接合部分が埋設されていることを特徴とする制震補強架構柱の接合構造。
  2. 前記境界面プレートの前記支柱材側の面に、前記支柱材との間で前記柱の軸方向のせん断力を伝達するための複数のせん断力伝達部材が前記柱の軸方向に間隔を置いて突設され、このせん断力伝達部材が前記コンクリート中に埋設されていることを特徴とする請求項1に記載の制震補強架構柱の接合構造。
  3. 前記境界面プレートは前記柱の前記支柱材側の面に、前記境界面プレートを厚さ方向に貫通し、前記境界面プレートにその面内方向に係合するせん断抵抗材が前記柱中に定着されて前記柱に接合されていることを特徴とする請求項1、もしくは請求項2に記載の制震補強架構柱の接合構造。
  4. 前記最下層の前記支柱材の前記主構造体の前記柱側に、前記柱の、前記正面に交差する側面に重なって前記柱に接合される側面プレートが一体化していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の制震補強架構柱の接合構造。
  5. 前記側面プレートは前記柱の側面に、前記側面プレートを厚さ方向に貫通し、前記側面プレートにその面内方向に係合するせん断抵抗材が前記柱中に定着されて前記柱に接合されていることを特徴とする請求項4に記載の制震補強架構柱の接合構造。
  6. 前記側面プレートの前記主構造体側の端部に、前記柱の前記正面の反対側の背面に重なって前記柱に接合される背面プレートが一体化していることを特徴とする請求項4、もしくは請求項5に記載の制震補強架構柱の接合構造。
  7. 前記背面プレートは前記柱の背面に、前記背面プレートを厚さ方向に貫通し、前記背面プレートにその面内方向に係合するせん断抵抗材が前記柱中に定着されて前記柱に接合されていることを特徴とする請求項6に記載の制震補強架構柱の接合構造。
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