JP2001049874A - 既存構造物の耐震補強工法および耐震補強構造 - Google Patents

既存構造物の耐震補強工法および耐震補強構造

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Abstract

(57)【要約】 【課題】既存構造物の耐震補強に際し、既存構造物の内
部の補強作業を全く無くし、比較的簡易な施工により既
存構造物の耐震性能を大幅に向上させることができるよ
うにする。 【解決手段】既存構造物1の外周部の柱2と梁3に沿う
鋼製の柱12と梁13を有する鉄骨フレーム11を既存
構造物1の外側に新設し、この新設の鉄骨フレーム11
をアンカー金物付充填構法やアンカー金物付接着構法に
より既存構造物1の柱梁架構と一体化させ、外付けの鉄
骨フレーム11で既存構造物1に耐力および剛性を付加
し、既存構造物1の耐震性能を大幅に向上させる。必要
に応じて、鉄骨フレーム11の柱12または梁13の一
部には鋼製弾塑性ダンパ等を組み込み、制震により耐震
性能をより向上させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、既存構造物の耐震
性を向上させるための補強工法および補強構造に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】既存構造物の耐震性を向上させる補強工
法としては、耐震壁を増設する方法、鉄骨枠組みブレー
スを設置する方法、柱の鉄板補強等により既存構造物の
靱性を向上させる方法などが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前述の従来の
補強工法では、居室が補強部材により分断され、建物
の使い勝手が悪くなり、床面積が減少する、外壁では
採光有効面積が少なくなり、居室が暗くなり、また建物
の外観も悪くなる、避難のゾーニングや動線確保が困
難となる、居住者の仮移設が必要となる、などの問題
があった。
【0004】本発明は、前述のような問題点を解消すべ
くなされたもので、その目的は、既存構造物の内部の補
強作業を全く無くすことができ、比較的簡易な施工によ
り既存構造物の耐震性能を大幅に向上させることができ
る既存構造物の補強工法および補強構造を提供すること
にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の既存構造
物の補強工法は、既存構造物の外周部の柱と梁に沿う鋼
製の柱と梁を有する架構を既存構造物の外側に新設し、
この新設の鋼製柱梁架構を既存構造物の柱梁架構と一体
化させることを特徴とする(請求項1)。
【0006】本発明の第2の既存構造物の補強工法は、
既存構造物の外周部の柱と梁に沿う鋼製の柱と梁を有し
該柱または梁の一部にダンパ(鋼製弾塑性ダンパ、オイ
ルダンパ、鉛ダンパ、摩擦ダンパなどの制震ダンパ)を
組み込んだ架構を既存構造物の外側に新設し、この新設
の鋼製柱梁架構を既存構造物の柱梁架構と一体化させる
ことを特徴とする(請求項2)。
【0007】前記補強工法において、新設の鋼製柱梁架
構は、既存構造物の外周部の全部または一部に設置する
(請求項3)。即ち、既存構造物の全部の外周面に設置
してもよいし、補強を必要とする方向の外周面のみに設
置するようにしてもよい。
【0008】また、新設の鋼製柱梁架構は、既存構造物
の外周部の全部の階または一部の階に設置する(請求項
4)。即ち、既存構造物の外周部の全部あるいは一部に
おいて、全部の階に設置してもよいし、下階、中間階、
上階、あるいは1フロアのみに設置してもよい。
【0009】本発明の第1の既存構造物の補強構造は、
既存構造物の外周部における柱に沿う鋼製の柱と、既存
構造物の外周部における梁に沿う鋼製の梁とからなる新
設の柱梁架構を構成し、この新設の鋼製柱梁架構をアン
カー金物を介して既存構造物の柱梁架構に一体化してな
ることを特徴とする(請求項5)。
【0010】本発明の第2の既存構造物の補強構造は、
既存構造物の外周部における柱に沿う鋼製の柱と、既存
構造物の外周部における梁に沿う鋼製の梁と、この鋼製
の柱または梁の一部に組み込まれたダンパからなる新設
の柱梁架構を構成し、この新設の鋼製柱梁架構をアンカ
ー金物を介して既存構造物の柱梁架構に一体化してなる
ことを特徴とする(請求項6)。
【0011】新設の鋼製柱梁架構と既存構造物の接合に
は、アンカー金物・スタッドボルト・モルタル等による
アンカー金物付充填構法、あるいはアンカー金物・ナッ
ト・接着材によるアンカー金物付接着構法などを用いる
ことができる。この接合部位としては、新設の鋼製柱梁
架構の柱梁接合部(請求項7)、新設の鋼製柱梁架構の
柱部分(請求項8)、新設の鋼製柱梁架構の梁部分(請
求項9)の3つのケースが考えられる。
【0012】以上のような構成において、新たな鋼製柱
梁架構を既存構造物の外周面等に沿って構築し、これを
既存構造物にアンカー金物等を介して接合一体化するこ
とにより、既存構造物の耐力および剛性を向上させるこ
とができ、既存構造物の外部における比較的簡単な施工
により既存構造物の耐震性能を大幅に向上させ、地震に
対する安全性を向上させることができる。また、新設さ
れる鋼製柱梁架構にダンパを組み入れることで、既存構
造物が鋼製柱梁架構により部分的に補強されると共に、
タンパの変形により既存構造物の揺れを吸収し、さらな
る耐震性能の向上を図ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図示する実施の形
態に基づいて説明する。図1は本発明の既存構造物の外
付け鉄骨フレーム補強工法の1例を示したものである。
図2は図1の補強工法による耐震性の向上を示したもの
である。図3は本発明の既存構造物の外付け鉄骨フレー
ム制震補強工法の例を示したものである。図4は図3の
補強工法による耐震性の向上を示したものである。図
5,図6は鉄骨フレームと既存構造物の接合方法の例を
示したものである。図7は既存ビルの補強の具体例を示
したものである。
【0014】図1に示すように、鉄筋コンクリート造あ
るいは鉄骨鉄筋コンクリート造等の既存建物1の外周面
に鋼製の柱12と梁13からなる鉄骨フレーム11を外
付けし、既存建物1と一体化する。柱12にはH形鋼や
溝形鋼等を使用し、梁13には例えばH形鋼等の主材1
3aと腹材13bからなるラチス梁を使用し、柱12が
既存建物1の柱2に沿い、梁13が既存建物1の梁3に
沿うように、柱12と梁13を縦横に組んで鉄骨フレー
ム11を形成する。なお、柱2の梁接合部には水平リブ
14を設けて補剛する。
【0015】新設される鉄骨フレーム11と既存建物1
との接合方法は、例えばアンカー金物付充填構法あるい
はアンカー金物付接着構法を使用する。アンカー金物付
充填構法は、図5,図6(a) に示すように、既存建物1
の躯体にアンカー金物(接着系アンカー)20を打ち込
み、鉄骨フレーム11のH形鋼のウェブにはスタッドボ
ルト21を溶接等で取付けておき、交互に配置されたア
ンカー金物20とスタッドボルト21の先端部同士をラ
ップさせると共に、このラップ部分に割裂防止筋として
のスパイラル筋22を配設し、既存建物1の躯体表面に
目荒らしを施した後、躯体表面とウェブとの間に無収縮
モルタル23を充填して一体化する方法である。
【0016】アンカー金物付接着方法は、図6(b) に示
すように、鉄骨フレーム11が溝形鋼等の場合に適用さ
れ、既存建物1の躯体にアンカー金物24を打ち込み、
このアンカー金物24のボルト先端にナット25を螺着
して鉄骨フレーム11を固定し、躯体表面と鉄骨フレー
ム11の間の隙間には樹脂系接着材26を注入して一体
化する方法である。
【0017】このような接合部位は、図5に示すように
柱12と梁13の交差部(柱梁接合部)のみに設けても
よいし、柱12にのみ、あるいは梁13にのみに設ける
ようにしてもよい。
【0018】以上のように、既存建物1に耐力および剛
性の高い鉄骨フレーム11を外付けすることにより既存
建物1の耐力および剛性が向上し、図2に示すように、
補強前と比較して耐震性能が大幅に向上し、また補強耐
震目標や現行耐震基準を容易にクリアすることができ
る。
【0019】次に、図3に示す鉄骨フレーム制震補強工
法では、鉄骨フレーム11の柱12を上下の梁13,1
3の中間位置で分断し、この部分に鋼製弾塑性ダンパ
(ハニカムダンパ)15を設け、あるいは梁13を中間
で分断し、この部分に鋼製弾塑性ダンパ15を設ける。
梁13に設ける場合には、梁13をH形鋼等の充腹型と
し、そのウェブに鋼製弾塑性ダンパ15をボルト止めで
きるようにする。
【0020】以上のように、既存建物1に外付けした鉄
骨フレーム11に鋼製弾塑性ダンパ15を設けること
で、既存建物1が鉄骨フレーム11により部分的に補強
されると共に、鋼製弾塑性ダンパ15の変形により揺れ
を吸収し、図4に示すように、補強前と比較して建物の
揺れを大幅に低減することができる。なお、ダンパは鋼
製弾塑性ダンパが好ましいが、その他の制震ダンパを使
用することも可能である。
【0021】図7に示すように、鉄骨フレーム11の外
付けが終了すると、この鉄骨フレーム11に外壁パネル
16およびガラスパネル17を取り付けることで、既存
建物1の外装リニューアルを行うことができる。
【0022】なお、以上のような新設の鉄骨フレーム1
1は、既存建物1の外周部全面にわって設置してもよい
し、外周部の一部、例えば補強の必要な方向の外周面の
みに設置してもよい。また、既存建物1の全階にわたっ
て設けてもよいし、下階のみ、中間階のみ、上階のみ、
1フロアだけに設けてもよい。
【0023】
【発明の効果】本発明は、以上のような構成からなるの
で、次のような効果を奏することができる。
【0024】(1) 既存構造物の外側に鋼製の柱梁架構を
新設するため、既存構造物の内部の補強が無くなり、居
室が補強部材により分断されることがなく、建物の使い
勝手の悪化や床面積の減少が無く、住環境を維持でき
る。
【0025】(2) 外壁では開口部を遮る部材がなく、採
光有効面積を十分に確保することができ、居室が暗くな
ることがなく、また外観も良好なものとなる。 (3) 既存構造物を供用したままの所謂「居ながら」にし
て施工を行うことができる。
【0026】(4) 鋼製の柱梁架構を既存構造物の外周部
に取付けるだけでよいため、施工に手間がかからず、工
期の短縮およびコストの低減を図ることができる。 (5) 少ない補強構面で高い安全性を確保できると共に、
要求される地震レベルに応じた信頼性の高い補強を行う
ことが可能となる。
【0027】(6) 新設の柱梁架構を利用して外装パネル
を取付けることにより、外装リニューアルを簡単に行う
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の既存構造物の外付け鉄骨フレーム補強
工法の1例を示す斜視図である。
【図2】図1の補強工法による耐震性の向上を補強前と
補強後(本発明)で比較したグラフである。
【図3】本発明の既存構造物の外付け鉄骨フレーム制震
補強工法の例を示す斜視図である。
【図4】図3の補強工法による耐震性の向上を補強前と
補強後で比較した概略図である。
【図5】本発明の鉄骨フレームと既存構造物との接合方
法の例を示す(a) は平面図、(b) は立面図である。
【図6】(a) は鉄骨フレームと既存構造物のアンカー金
物付充填構法を示す断面図、(b) はアンカー金物付接着
構法を示す断面図である。
【図7】既存ビルの補強の具体例を工程順に示した斜視
図である。
【符号の説明】
1……既存建物(既存構造物) 2……既存建物外周部の柱 3……既存建物外周部の梁 11……新設の外付け鉄骨フレーム(鋼製柱梁架構) 12……新設の柱 13……新設の梁 14……水平リブ 15……鋼製弾塑性ダンパ 16……外壁パネル 17……ガラスパネル 20……アンカー金物 21……スタッドボルト 22……割裂防止筋(スパイラル筋) 23……無収縮モルタル 24……アンカー金物 25……ナット 26……樹脂系接着材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 金子 幸雄 新潟県新潟市万代1丁目3番4号 鹿島建 設株式会社北陸支店内 (72)発明者 坂本 光雄 東京都港区元赤坂1丁目2番7号 鹿島建 設株式会社内 (72)発明者 黒川 泰嗣 東京都港区元赤坂1丁目2番7号 鹿島建 設株式会社内 (72)発明者 牧部 一成 東京都港区元赤坂1丁目2番7号 鹿島建 設株式会社内 Fターム(参考) 2E176 AA00 BB28

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 既存構造物の外周部の柱と梁に沿う鋼製
    の柱と梁を有する架構を既存構造物の外側に新設し、こ
    の新設の鋼製柱梁架構を既存構造物の柱梁架構と一体化
    させることを特徴とする既存構造物の耐震補強工法。
  2. 【請求項2】 既存構造物の外周部の柱と梁に沿う鋼製
    の柱と梁を有し該柱または梁の一部にダンパを組み込ん
    だ架構を既存構造物の外側に新設し、この新設の鋼製柱
    梁架構を既存構造物の柱梁架構と一体化させることを特
    徴とする既存構造物の耐震補強工法。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2に記載の補強工
    法において、新設の鋼製柱梁架構は、既存構造物の外周
    部の全部または一部に設置することを特徴とする既存構
    造物の耐震補強工法。
  4. 【請求項4】 請求項1,請求項2または請求項3に記
    載の補強工法において、新設の鋼製柱梁架構は、既存構
    造物の外周部の全部の階または一部の階に設置すること
    を特徴とする既存構造物の耐震補強工法。
  5. 【請求項5】 既存構造物の外周部における柱に沿う鋼
    製の柱と、既存構造物の外周部における梁に沿う鋼製の
    梁とからなる新設の柱梁架構を構成し、この新設の鋼製
    柱梁架構をアンカー金物を介して既存構造物の柱梁架構
    に一体化してなることを特徴とする既存構造物の耐震補
    強構造。
  6. 【請求項6】 既存構造物の外周部における柱に沿う鋼
    製の柱と、既存構造物の外周部における梁に沿う鋼製の
    梁と、この鋼製の柱または梁の一部に組み込まれたダン
    パからなる新設の柱梁架構を構成し、この新設の鋼製柱
    梁架構をアンカー金物を介して既存構造物の柱梁架構に
    一体化してなることを特徴とする既存構造物の耐震補強
    構造。
  7. 【請求項7】 請求項5または請求項6に記載の補強構
    造において、新設の鋼製柱梁架構の柱梁接合部が既存構
    造物とアンカー金物により一体化されていることを特徴
    とする既存構造物の耐震補強構造。
  8. 【請求項8】 請求項5または請求項6に記載の補強構
    造において、新設の鋼製柱梁架構の柱部分が既存構造物
    とアンカー金物により一体化されていることを特徴とす
    る既存構造物の耐震補強構造。
  9. 【請求項9】 請求項5または請求項6に記載の補強構
    造において、新設の鋼製柱梁架構の梁部分が既存構造物
    とアンカー金物により一体化されていることを特徴とす
    る既存構造物の耐震補強構造。
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