JP5170491B2 - インクジェット記録装置及び記録データ形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は カラー記録や、高速記録に好適なインクジェット記録装置に関する。
インクジェット記録装置は、高速、低騒音、カラー化の容易さ、低ランニングコストなどの利点を有しているため、各種用途の印刷手段として急速に普及してきている。特にラインヘッドを用いたインクジェット記録装置は、その高速性によって産業用印刷機としての利用が拡大している。産業用印刷としては、例えば、フォーム印刷や、段ボール等の印刷がある。
インクジェット記録装置では、高濃度すなわち高いDutyで記録を行う場合に、記録直後における高濃度部分のインクの定着速度は、使用しているインクとメディア(用紙等の記録媒体、以下記録媒体という)の特性等に依存し、定着時間が変化する。特に、高速記録をおこなう場合においては、記録媒体の搬送速度にインクの定着が間に合わず、搬送ローラからの転写等により、画像部への不要インクの付着や、次ページへのインクの写りこみ等が起き、画質の低下を招いてしまう場合がある。
特に、ラインヘッドを用いて高速記録を行う場合においてはこのような現象が顕著となるため、インクの特性を変更したり、記録媒体を特殊なものに限定する等の対応を考慮する必要がある。また、その他、定着機を用いて、記録媒体を搬送する間に、ヒータで記録媒体を加熱してインクを乾かす等の処置を行う場合もある。
例えば、複数枚の用紙にマルチカラー記録を連続、かつ比較的高速に行おうとする際に、記録直後の排紙ローラの逆転写や用紙の汚れを防ぐために、用紙上に吹き付けられたインクを直接に又は間接的に強制乾燥させるインクジェットプリンタが知られている(特許文献1参照)。
また、記録パターンを監視し、べたパターン即ち塗りつぶし領域を検出した場合に、輪郭部以外の内側領域を間引き記録する技術も提案されている(特許文献2参照)。
特開平10−138525号公報 特開平6−143689号公報
しかしながら、上記した特許文献1による方法では、記録が疎の部分であるか、あるいは密の部分であるかにかかわらず均等に強制乾燥するため、変色や用紙の変形が発生しやすくなり、また、プリンタ自体が大型化して、取り扱いの点で多少難がある。
また、上記した特許文献2による方法は、プリンタの消費電力とインクの乾燥のいずれの点でも好ましいが、塗りつぶし領域の大小にかかわらず間引きされることから記録結果が元の画像と比較して極端に変化し、間引きされた領域に規則性をもった画像が現れるおそれがある。また、べた領域以外には、間引きが適用されないため、べたではないが記録密度が比較的に高い領域では、場合によってはインクの乾燥が不十分となる場合が考えられる。
また、インクの特性を変更したり、記録媒体を特殊なものに限定する等の対応も考えられるが、インクや記録媒体に対する利用者の要求は多岐にわたるため、インクや記録媒体を限定することは困難である。また、定着機を用いる場合には、装置が大型になり、大幅なコストアップとなってしまう。
一方、高速記録時におけるインクの定着速度を上げる方法として、記録したい画像に対してインクの吐出量(記録Duty)を制御して、紙面上の同じ面積に吐出されるインクの量を減少させることにより、定着性を向上させることが考えられる。この記録Dutyの制御としては、記録データと間引きパターンデータとを組み合わせて行う方法が考えられる。
ここで、間引きパターンを選定する際に重視すべき点として拡散性とランダム性とがある。ここで、拡散性とは、例えば、ラインヘッドを用いた記録において、ライン上のどの位置においても偏り無く間引きが行われることであり、この拡散性が確保されることで、記録画像全体の記録Duty値の均一性が保証される。
また、ランダム性とは、例えば、ラインヘッドを用いた記録において、記録媒体の搬送方向における各ライン間で相関無く間引きが行われることである。このランダム性が損なわれると、各ライン間において搬送方向の同じ位置で間引きが行われることになり、間引きかれた部分が線状の抜け部分(白線等で表される)として現れる。このランダム性が確保されることで、小さいフォントの文字や数ドットの細い直線の画質低下防止が保証される。
インクジェット記録装置における間引き処理において、上記した間引きパターンを作る一手法として、汎用性を有するソフトウェアを用いることが考えられる。しかしながら、データ転送速度を重視する高速ラインプリンタにおいては、ソフトウェアによる処理では間引きを行うプログラムの実行に時間がかかり、高速記録を阻害する場合がある。
また、間引き処理はインクジェット記録装置側で行う他に、ホスト(PC)側で行う場合も考えられる。この場合、間引きした画像と間引きしていない画像をそれぞれ圧縮後のデータ量を比較すると、間引き画像を圧縮した場合には、間引きによって画像圧縮の割合が小さくなるため、間引き画像の方が画像データの容量は大きくなる。そのため、ホスト(PC)側からインクジェット記録装置側への転送画像データの容量が増えることになり、データ転送速度に影響を与える可能性があり、ラインヘッドを用いたプリンタの特色である高速記録が実現しにくくなるという問題がある。
また、間引き処理において間引きパターンが規則的である場合には、規則的な記録画像部分や細い直線部分で間引きパターンが目立ってしまう場合がある。また、2ドットや3ドット等の少数ビットで形成される細い直線は、細線を構成するビット数に近い記録Duty値によるDuty制御で間引きを行うと、記録画像の一部が消えてしまい、直線性が損なわれる可能性がある。
また、ラインヘッドを用いたプリンタでは、記録媒体の搬送方向に対して横向きに設置されたヘッドにより1ラインごとに記録を行っている。そのため、搬送横方向の間引きパターンを分散させることは容易であるが、搬送縦方向に間引きパターンを分散させることは難しく、搬送方向に隣接したライン間で同じ間引きパターンが続いてしまう場合がある。同じ間引きパターンが連続すると、フォントの小さい文字が欠けてしまうこともある。
この問題を解決するための方法として、記録データの1ページ毎に、ランダムデータ生成処理によってランダムな間引きデータを合成し、記録を行う方法も考えられる。しかしながら、このように、1ページ分のランダムな間引きデータを生成するには長時間を要する他、生成した間引きデータを一時保持するために大容量のメモリが必要となる。
本発明は、上記問題を鑑み、簡単な構成で、高速性を損なわず、記録データのより適正な間引き処理を行うことを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、記録データに基づいて、複数の記録ヘッドを用いて記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置において、各々、記録媒体の記録幅全域にわたって複数の記録要素を備え、前記複数の記録要素を駆動することによってライン単位に記録する複数のライン型の記録ヘッドと、記録データの各ビットについて記録するか否かを定める複数ビットで形成される間引きパターンを、前記複数の記録ヘッドに対応して生成する間引きパターン生成手段と、前記間引きパターン生成手段により生成された間引きパターンと記録データとの組み合わせによって、記録データを間引いた記録パターンを生成する間引き処理を実行する間引き処理手段とを備え、各記録ヘッドは、各ラインに対応する記録データにおける記録ドットが連続した領域に対して、連続した記録ドットのドット数が所定の閾値以上の場合、前記間引き処理手段で生成された記録パターンにより当該記録ヘッドの複数の記録要素を駆動し、前記ドット数が前記所定の閾値に満たない場合、前記間引き処理手段による前記間引き処理を行っていない記録データに応じて生成される記録パターンにより当該記録ヘッドの複数の記録要素を駆動し、前記間引きパターン生成手段は、前記複数の記録ヘッドの各々に対しライン毎に異なる間引きパターンを生成し、さらに、同一ラインにおいて前記複数の記録ヘッドに対して生成する間引きパターンを、各記録ヘッド毎に互いに異ならせることを特徴とする
本発明のインクジェット記録装置は、シフト処理手段によって、間引きパターン生成手段で生成した間引きパターンを所定ビットずらすことで、搬送方向に隣接したライン間で同じ間引きパターンが続くといった現象を解消し、搬送縦方向の間引きパターンの分散を行う。このシフト処理は、例えば、1ライン分の間引きパターンを所定ビット数だけずらすだけの処理であるため、高速処理が可能であり、また、必要とするメモリ容量も極めて少なくて済む。
本発明の間引きパターン生成手段は、前記複数ビットで形成される間引きパターンを、単位間引きパターンをライン方向に複数配列することにより生成する構成とすることができる。この単位間引きパターンは連続する複数ビットにより構成することができ、各ビットは記録データの各ビットについて記録するか否かを設定するものである。
本発明によるシフト処理は、記録ヘッド間のシフトを設定する初期シフト処理と、ライン間のシフトを設定するラインシフト処理を含む。
初期シフト処理は、間引きパターンを、複数の記録ヘッドの各記録ヘッドについてそれぞれ異なる初期シフト量でずらすことで、記録ヘッド間のシフトを設定するものである。この初期シフトにより、複数の記録ヘッドで同時に間引き処理を行った際に、各記録ヘッド間でのランダム性を確保する。この複数の記録ヘッドは、それぞれ記録色が異なる複数の記録ヘッドとしても、あるいは、同一色の複数の記録ヘッドとしてもよい。
また、ラインシフト処理は、一つの間引きパターン又は初期シフト処理手段でシフトした間引きパターンを、複数のヘッドの同一の記録ヘッドについて、ラインを単位として右方向又は左方向にずらしてライン間のシフトを設定するものである。このラインシフトにより、同一の記録ヘッド間でのランダム性を確保する。初期シフト処理とラインシフト処理とは、いずれか一方のシフト処理を行うことも、あるいは、両方のシフト処理を行うこともできる。
また、本発明は、上記装置の態様の他に記録データ処理方法の態様を含む。
本発明の記録データ処理方法は、記録データに基づいて、複数の記録ヘッドを用いて記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法において、間引き処理を行うか否かを判定する間引き閾値処理を行うことによって、記録データが高濃度である、つまりDutyが高く定着等に問題が生じるおそれがある場合には、間引き処理を行って記録媒体に記録する記録量を制限し、記録データのDutyが高くなく定着等に問題が生じるおそれがない場合には、間引き処理を行うことなく、記録データをそのまま記録媒体に記録する。
この間引き閾値処理は、1ライン毎の記録データにおける隣接記録ドット数をカウントし、隣接記録ドット数と予め設定しておいた間引き閾値とを比較し、隣接記録ドット数が間引き閾値より大きい場合には、生成された間引きパターンと記録データを組み合わせることによって間引き処理を行う。
また、記録データに基づいて複数の記録ヘッドを用いて記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法において、記録データにおける間引きパターンを記録ヘッド毎に異ならせるシフト処理を行う。シフト処理の一形態では、記録ヘッド毎に前記生成した一つの間引きパターンをライン方向に所定ビットシフトさせ、この間引きパターンに記録データを組み合わせることで間引き処理を行う。


また、記録データにおける間引きパターンを記録ヘッド毎に異ならせるシフト処理において、他の形態では、複数の記録ヘッドに亘る複数ビット分を含む間引きパターンのブロックを、ライン方向に所定ビットシフトさせる第1のシフト、及び、同一ヘッドの次ラインの記録において、前記間引きパターンのブロックをライン方向に所定ビットシフトさせる第2のシフトのシフト処理を行い、このシフト処理で得た間引きパターンに記録データを組み合わせることで間引き処理を行う。
本発明によれば、簡単な構成で、高速性を損なわず、記録データをより適正に間引き処理することができる。
本発明の間引きに関連する各処理によれば、インクジェット記録装置側で行い、また、各処理が取り扱うデータ量も少ないため、データ転送速度に対して影響を与えることなく、また、高速記録が可能である。
また、間引きを行う必要のある箇所を判断し処理を行うため、記録データの全てについて間引き処理を行うことによって、間引きが不要な箇所のデータ低減による画質の低下を減らすことができる。
また、高速記録時においてもインクの定着速度の向上が可能であり、高画質で高速な記録を行うことができる。
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明のインクジェット記録装置に適用可能なライン型の記録ヘッド(ラインヘッド)部分を説明するための概略外形図である。
ラインヘッド100は用紙106(記録媒体)の搬送方向に複数のヘッド101〜104を配列して備え、各ヘッドは用紙106の記録幅全域にわたって複数の記録要素を備える。これらヘッド101〜104は、横一列に配置された記録要素に対応してノズルを備え、各記録要素を駆動することによりインクをノズルから吐出して記録を行う。
複数のヘッド101〜104によってカラー記録を行う場合には、ブラックヘッド(K)101、シアンヘッド(C)102、マゼンダヘッド(M)103、イエローヘッド(Y)104とし、これら複数のラインヘッドを順番に搬送縦方向に並べて構成する。
なお、複数のヘッド101〜104は例えばブラックヘッド(K)のように同一色のヘッドとし、これら複数のヘッドを搬送縦方向に並べる構成としてもよい。このように同一色のヘッドを搬送縦方向に並べて構成することで、複数のラインを同時に記録して高速記録を行うことができる。
ラインヘッド100の各ヘッドの位置は固定であり、搬送ローラ105が用紙106を搬送することで、各ヘッド101〜104と用紙106との位置関係を変更する。KCMYの各ヘッド101〜104は、各位置においてそれぞれインクを吐出して記録を行う。ヘッドを固定し用紙を一定方向に搬送するラインヘッドを用いたインクジェット記録装置は、ヘッドを用紙搬送方向と直角の方向に往復させることにより記録するシリアルプリンタと比べて高速記録が可能である。
図2は、インクジェット記録装置を用いた記録方法を説明するための図である。
画像201は、モニタ200上において、R(レッド)G(グリーン)B(ブルー)の各色の画素で表される。この画像201をインクジェット記録装置で記録する場合には、画像201をソフトウェア(ドライバ)によって色処理し、K(ブラック)202,C(シアン)203, M(マゼンダ)204,及び Y(イエロー)205の4色の画像データに変換し、記録装置(図示していない)に送ることで記録を行う。
例えば、モニタ200上で緑色の部分はC(シアン)ヘッドとY(イエロー)ヘッドを用いて、モニタ上で表示される色を再現するDuty値によって個々のヘッドからインクを吐出することで、用紙上で緑色を再現する。
図3は記録データの転送経路を説明するための図である。パソコン等の外部装置は、記録データをドライバ311によって圧縮データとし、USB等のインターフェース312を介して記録装置300に送る。
記録装置300は、圧縮データをUSB等のインターフェース312を介してUSBコントローラ303に入力する。USBコントローラ303はCPU304を経由して、入力した圧縮データをSDRAM等の受信メモリ305に保管した後、ASIC等で構成された制御回路302内部で解凍し、解凍して得られた画像データを記録データとしてSRAM等の記録メモリ306に書き込む。その後、制御回路302は、記録メモリ306から記録データを読み出し、記録ヘッド307に転送する。
記録ヘッド307は記録データを保管するレジスタを備える。記録ヘッド307は、1ライン分の記録データを受信して吐出の準備が完了する。その後、用紙の搬送状態によって好適なタイミングで吐出される。なお、記録装置300のCPUや各回路素子は制御基板301に搭載される。ラインヘッドを用いたプリンタは、記録ヘッドへのデータ転送を1ライン分の記録データを単位として行う。
次に、本発明のインクジェット記録装置の間引き処理について、図4,図5を用いて説明する。
本発明のインクジェット記録装置は、記録データを記録処理する際に、Duty制御処理10によって、必要に応じて間引き処理を行い、さらに、間引き処理を行う際には、間引きによる画像劣化を防ぐ処理を行う。
図4は、本発明のインクジェット記録装置の間引き処理を説明するための図である。図4において、Duty制御処理10は、記録データのDuty値が高く記録が密であるか、あるいは、記録データのDuty値が低く記録が疎であるかを判定する間引き閾値処理11を備える。
この間引き閾値処理11において、記録データのDuty値が高く記録が密である場合には、間引き処理14を行って間引いた記録データにより記録処理15を行う。Duty制御処理10は、この間引き処理14を行う前処理として間引きパターン生成処理12とシフト処理13を備える。間引きパターン生成処理12は、間引き処理14に用いる間引きパターンを生成する。生成する間引きパターンは、記録する画像の特性や、記録が行われる用紙の種類等の記録媒体の特性などの各条件に基づいて定めることができる。
シフト処理13は、間引きパターン生成処理12で生成した間引きパターンについて、ヘッドにおいて記録要素(ノズル)が配列される方向に間引きパターンをずらす処理であり、この処理によって、間引きパターンのパターン特性に基づく記録の劣化を防ぐ。また、用紙の搬送縦方向で同一の間引きパターンがライン毎に繰り返されることを防ぐために、記録処理15を行った後にシフト処理13を繰り返す。
一方、この間引き閾値処理11において、記録データのDuty値が低く記録が疎である場合には、間引き処理14をことなく元の記録データにより記録処理15を行う。
図5は、図4に示したDuty制御処理10をより詳細に説明するためのブロック図である。Duty制御処理10は、図4で示したように、間引き閾値処理11と、間引きパターン生成処理12と、シフト処理13とを含んでいる。
はじめに、間引き閾値処理11について説明する。Duty制御処理10において、間引き閾値処理11は、記録データに基づいてその記録データについて間引き処理を行うか否かを判定する処理であり、ライン上に配列した記録データにおいて、記録ドットの連続性に基づいて判定を行う。間引き閾値処理11による判定は、入力された記録データについて、1ライン毎の記録データにおける隣接記録ドット数をカウントし、この隣接記録ドット数を予め設定しておいた間引き閾値と比較することで行う。隣接記録ドット数が間引き閾値より大きい場合には記録ドットが密であるとして、間引き処理を行うと判定する。間引き閾値処理11はこの判定に基づいて、間引き処理14に記録データを送り、間引きパターンを適用させて間引き処理を行い、間引き後の記録データを記録処理15に送って記録を行う。
これに対して、隣接記録ドット数が間引き閾値より小さい場合には記録ドットが疎であるとして、間引き処理を行わないと判定する。間引き閾値処理11はこの判定に基づいて、記録データを直接記録処理15に送って記録を行う。
間引き閾値処理11に用いる間引き閾値は間引き閾値設定レジスタ11aに格納しておくことができる。間引き閾値処理11は間引き閾値設定レジスタ11aから必要な間引き閾値を読み出して比較処理を行う。比較に用いる間引き閾値は、任意に設定することができる。例えば、記録内容が文字データであるか、あるいは画像データであるか、記録を行う用紙の吸湿性等の特性等に応じて、間引き閾値設定レジスタ11aから好適な間引き閾値を選択して設定する。
次に、間引きパターン生成処理12について説明する。Duty制御処理10において、間引きパターン生成処理12は、記録データの各ビットについて記録するか否かを定める複数ビットのパターンを生成する。ラインプリンタでは、1ライン分について生成する。このとき、間引きパターン生成処理12は、単位間引きパターンをライン方向に複数配列することにより一ライン分の間引きパターンを生成する。
単位間引きパターンは、複数のビットから成る繰り返しの最小単位であり、そのビット数は1ライン分よりも少なく設定される。例えば、20ビット程度とすることができる。
単位間引きパターンの各ビットは、このパターンが適用される記録データの各ビットを記録するか否かを定めるものであり、記録すると定めたビットに対応する記録データは記録し、記録しないと定めたビットに対応する記録データは記録を行わない。
間引きパターン生成処理12は、この単位間引きパターンをライン方向に複数配列する。この配列によって、単位間引きパターンがライン方向に複数回繰り返された1ライン間引きパターンが生成される。
間引きパターン生成処理12に用いる単位間引きパターンは単位間引きパターン設定レジスタ12aに格納しておくことができる。
間引きパターン生成処理12は単位間引きパターン設定レジスタ12aから単位間引きパターンを読み出し、この単位間引きパターンをライン方向に並べることで1ライン分の間引きパターンを生成する。単位間引きパターン設定レジスタ12aは、記録データのDuty値に基づいて読み出す。記録データのDuty値は、用紙やインク等による乾燥性、色の再現性等に応じて定めることができ、用紙やインクに応じて予め定めることができるほか、利用者が任意に設定してもよい。
また、間引きパターン生成処理12は、他の形態で生成することもできる。この形態では、記録データのDuty値に応じて複数の一ライン分の間引きパターンを用意して、レジスタ等にDuty値をパラメータとして格納しておき、このレジスタからDuty値をパラメータとして複数の一ライン分の間引きパターンを選択することで生成する。
次に、シフト処理13について説明する。Duty制御処理10において、シフト処理13は、間引きパターン生成処理12で生成した一つの間引きパターンを、複数の記録ヘッドの各記録ヘッドについてそれぞれ異なる初期シフト量でずらして、記録ヘッド間のシフトを設定する初期シフト処理手段13Aと、間引きパターン生成処理12で生成した一つの間引きパターン又は初期シフト処理13Aでシフトした間引きパターンを、複数のヘッドの同一の記録ヘッドについて、ラインを単位として右方向又は左方向にずらしてライン間のシフトを設定するラインシフト処理13Bを備える。
初期シフト処理13Aは、複数ある記録ヘッドにおいて、各記録ヘッド毎に複数ビット分の間引きパターンをライン方向に所定ビットシフトさせる演算手段を備える。このシフトは、単位間引きパターンの先頭ビットのライン上における開始位置をずらす。これによって、複数の記録ヘッド間において、各単位間引きパターンの先頭位置がずれることになり搬送方向で同じパターンが並ぶといったことによる記録の劣化を避けることができる。
なお、単位間引きパターンの、複数のヘッド間での相対的なシフト量は、単位間引きパターンの長さの整数倍とならないように設定する。これは、単位間引きパターンの繰り返しで生成する性質から明らかなように、単位間引きパターンの長さの整数倍だけずらした場合には、同パターンの繰り返しが生じるためである。シフトする方向は、ライン方向の右方向及び/又は左方向とすることができる。
ここで、初期シフト量は、初期シフトレジスタ13aに格納しておくことができる。初期シフト量は、複数の記録ヘッドに対して一つの共通の値を初期シフトレジスタ13aに格納する他に、各記録ヘッド毎に異なる値を格納してもよい。初期シフト量として一つの共通の値を初期シフトレジスタ13aに格納しておく場合には、各記録ヘッドのシフト量は、この読み出した初期シフト量に所定の係数を乗じて用いる。例えば、第1番目の記録ヘッドについては読み出した初期シフト量を用いてシフトし、第2番目の記録ヘッドについては読み出した初期シフト量を2倍した値を用いてシフトし、第3番目の記録ヘッドについては読み出した初期シフト量を3倍した値を用いてシフトする。
なお、初期シフト処理は、間引きパターン生成処理で行うこともでき、複数ある記録ヘッドにおいて、各記録ヘッド毎に単位間引きパターンのライン上における配置位置をライン方向に所定ビットシフトさせ、その位置からライン方向に複数配列することで同様に初期シフト処理を行うことができる。
ラインシフト処理13Bは、同一ヘッドの次ラインの記録において、1ライン分の間引きパターンをライン方向に所定ビットシフトさせる演算手段を備える、このシフトは、同一ヘッドにおける1ライン分の間引きパターンをライン毎に異ならせる。これによって、同一のヘッドにおいて搬送方向で同じパターンが並ぶといったことによる記録の劣化を避けることができる。
ここで、ラインシフトのシフト量は、シフト量設定レジスタ13bに格納しておくことができる。このシフト量は、複数の記録ヘッドに対して一つの共通の値をシフト量設定レジスタ13bに格納する他に、各記録ヘッド毎に異なる値を格納してもよい。
間引きパターン生成処理12で生成された後、シフト処理13で初期シフト及び/又はラインシフトが行われた間引きパターンは間引き処理14に送られ、記録データと組み合わせることで間引き記録データを生成する。生成された記録データは、記録処理15で用紙上に記録される。
間引き閾値処理11を繰り返すことで全記録データについて間引きの必要性を判断し、また、ラインシフト処理13B、間引き処理14、及び記録処理15を繰り返すことで、全記録データについて用紙の搬送方向の規則的な抜けを防ぐ。
上記したDuty制御は、記録装置300中の制御回路302で行う構成とすることができる。制御回路302は、例えば、メモリ制御回路、データ転送処理回路、ヒートタイミング制御回路等の各記録ヘッドに対するプリント動作の制御をつかさどる様々な回路(不図示)で構成することができ、その回路の一部はASIC(application specific integrated circuit:特殊用途用IC)やFPGA(field programmable gate array:大規模PLD)等の半導体素子によって構成することができる。
図6は本発明における制御回路に含まれるASIC等の内部回路の一部の一例を示している。この回路例では、ラインシフト機能、初期シフト機能、間引き閾値機能をつかさどるDuty制御ブロック回路の一例を示している。
ラインヘッドを用いたインクジェット記録装置は、ヘッド1ライン単位でヘッドに記録データを転送する。本発明は、その特徴を利用して間引きパターンの生成を行う。
図6において、Duty制御ブロック回路20は、Duty制御レジスタ部20aとDuty制御演算部20Aを備える。
Duty制御レジスタ部20aは、図5中の間引き閾値設定レジスタ11a,単位間引きパターン設定レジスタ12a,初期シフトレジスタ13a,シフト量設定レジスタ13b等の各レジスタ部に対応し、それぞれのレジスタは、間引き閾値、単位間引きパターン、各ヘッド毎に初期シフト値、ラインシフト値が設定されている。
このDuty制御レジスタ部20aには、外部のブロックとの接続信号としてCPUからクロック信号(CLK)、リセット信号(N_RESET)、チップセレクト信号(N_CS)、ライトイネーブル信号(N_WE3〜N_WE0)、その他にメモリからのアドレスバス、データバス等の論理回路の動作上必要な基本的信号(A_IN,D_IN)が入力される。これらのレジスタの設定は、初期設定値または利用者が必要時に設定する値を指定することによって、CPUがファームウェアを実行することで行う。また、Duty制御演算部20Aとの通信信号として、Duty制御処理に使われる信号(DUTY_CLK_REG〜D_DUTY_C[])がある。
Duty制御演算部20Aは、図5中の間引き閾値処11,間引きパターン生成処理12,初期シフト処理13A,ラインシフト処理13Bに対応する演算を行う。
このDuty制御演算部20Aには、他の制御回路より記録に必要なタイミング信号(*_HSYNC,PHSYNC,*_ENB_REG,*_DLT_N_I)、記録データを転送するデータクロック信号(*D_CLK_I)、記録データ入力信号(*_IDATA1_I, *_IDATA2_I) と、Duty制御レジスタ部からの信号(DUTY_CLK_REG〜D_DUTY_C[])が接続される。
Duty制御演算部20Aは間引き処理された記録データ出力信号(*_IDATA10_O, *_IDATA2_O)を出力し、Duty制御レジスタ部20aはDuty値データ(D_DUTY_C[])を記録データ転送回路(不図示)に送る。
以下、間引きパターンの生成について、図7〜図10を用いて説明する。
間引きパターンの生成では、初めに複数ビット(例えば、20ビット)から成る単位間引きパターン設定を行う。図7に単位間引きパターンの一例を示している。
この単位間引きパターンは、各色ヘッド等の複数のヘッドごとに設定する他、各ヘッドに共通する一パターンを設定してもよい。このように、各ヘッドに共通する一パターンを設定することによって、ASIC等の内部回路の使用量を小さくすることができ、メモリの使用量が少ない仕様で効率的なDuty制御処理が可能となる。
図7に示す例では、Duty値(%表示の設定値)に対するレジスタ設定値とパターン例を示している。なお、レジスタ設定値は、2進符号と16進符号の両方で示している。
例えば、記録Duty値を50%から100%の範囲において5%刻みで制御する場合、ASIC等の回路内部の各色ヘッドに複数ビットの単位間引きパターンを設定する。ここでは50%から100%まで5%刻みで制御するため、20ビットの単位間引きパターンを設定する。この20ビットの数値例は、50%から100%までを5%刻みで表現するために最低限必要な数値であり、20ビットのレジスタがあれば上記条件を満たすことができる。
例えば、Duty値100%を、間引きを行わない場合に対応させたとき、Duty値50%は20ビット中の10ビット分について間引きを行い、残りの10ビット分については間引きを行わないように設定する。図7に示すDuty値50%の場合では、間引きするビットと間引きを行わないビットを交互に設定するパターンとしている。なお、ここで、Duty値は20ビットの内で幾つのビットについて間引きを行うかを設定する指標であり、20ビットの何れの位置のビットを間引きビットとするかは、単位間引きパターン内での間引きの分散を考慮して任意に設定することができる。
50%から100%の範囲において5%刻みで制御する場合、ASIC等の内部回路に20bitの間引きパターンを設定するレジスタを持つ。このレジスタには図7に示すようなそれぞれの記録Duty値にあった間引きパターンが設定される。この20bitの間引きパターンは、記録したいDuty値を設定した際、ファームウェアによって、単位間引きパターン設定レジスタ12aに設定される。
この20ビットの例では、50%から100%までを10%刻みでDuty値を制御する場合は、10bitの単位間引きパターン及びレジスタで足りる。
間引きパターンを格納するレジスタの領域が大きいほどASIC等の内部回路の回路規模は大きくなる。本発明の間引きパターンは、1ライン分の間引きパターンをレジスタに格納するのではなく、1ライン分の間引きパターンを構成するための単位間引きパターンをレジスタに格納する構成であるため、必要とするレジスタ領域は小さくてすみ、回路規模を軽減し、コストを削減することができる。
回路規模に余裕があるならば、それぞれのヘッドごとに記録Duty値が同じになる様な異なるパターンを複数設定するとより、間引きパターンに分散性を持たせることができる。この構成の場合には、設定するパターン数に応じたメモリ容量が必要となる。
なお、間引きを行うビットが偏在すると、隣接の複数のビットで間引きが行われることになる。このような間引き処理は、記録された画質を低下させる要因となる。そこで、単位間引きパターンは、間引き処理による記録データの画質の低下を最小限に抑えるため、隣接したビットで間引きが行われないように、間引きビットが分散されるパターンを設定する。
また、ヘッド1ライン分の単位間引きパターンを繰り返すことで形成されるため、この単位間引きパターンの先端側のビットと後端側のビットを間引きデータとして設定すると、繰り返した際に間引きデータが連続することになる。そこで、単位間引きパターンの最初の複数ビットに間引くデータ(あるいは間引かないデータ)を設定し、最後の複数ビットに間引かないデータ(あるいは間引くデータ)を設定することによって、単位間引きパターンを繰り返して間引きパターンを形成したときに、間引きデータが隣接することを防止することができる。
なお、間引きデータを隣接させないためであれば、単位間引きパターンの最初の複数ビット及び最後の複数ビットに間引かないデータを設定する構成によってもできるが、この場合には、所定のDuty値を実現するために、単位間引きパターンの中間部分に間引かないデータが集まることになり、記録された画質が低下する要因となる。
また、図8は、同一のDuty値を実現する異なる単位間引きパターンの例を示している。レジスタ容量に余裕がある場合には、同一のDuty値を実現する異なる単位間引きパターンを複数用意しておき、これらの単位間引きパターンを適宜選択することにより、同一の間引きパターンを用いることによる規則性によって、画質が低下することを防ぐことができる。なお、この異なる単位間引きパターンの選択は、一ラインを構成する場合に適用する他、一ライン内では同じ単位間引きパターンを用いてライン間において適用してもよい。
図9は、20ビットの単位間引きパターンを繰り返すことによって、1ライン分の間引きパターンを形成する例を模式的に示している。ヘッドは、入力した記録データに対して、間引きパターンをマスクとして適用することで、ヘッドを駆動する記録データを形成する。例えば、記録データのビット位置が間引きパターンの間引きのビット位置と一致した場合に、そのビット位置の記録データを無効とし、間引きパターンの間引きを行わないビット位置と一致する記録データのみを有効として、間引き処理後の記録データを形成する。
図10はDuty制御ブロック回路が行う間引き処理を説明するためのフローチャートである。なお、以下のフローチャートの処理は、CPUがフラッシュROM等の記録媒体内に格納された各種プログラムを読み出して実行することにより実現することができる。
図10のフローチャートにおいて、記録データの転送が行われた後、間引き閾値処理11は、間引き閾値設定レジスタ11aから間引き閾値を読み出す(S1)。また、間引き閾値処理11は、入力した記録データにおいて、1ライン分の記録データの内で隣接するドット数を計数する(S2)。
S2で計数した隣接記録ドット数と、S1で取得した間引き閾値とを比較する。この比較によって、間引き処理を行うか否かの判定を行う(S3)。
間引き処理を行う場合には、間引きパターンを定め(S4)、定めた間引きパターンと記録データとを合成して間引き処理を行い(S5)、合成した記録データをヘッドに転送する(S6)。S3の工程において、間引き処理を行わないと判定した場合には、間引き処理を行うことなく記録データをヘッドに転送する(S6)。
以下、間引き閾値機能について説明する。
図11は、間引き閾値処理の一構成例を説明するためのブロック図である。図11において、間引き閾値処理手段11Aは、記録データの連続したドットをカウントする計数手段11Aaと、間引きを行うか行わないかの閾値を設定するレジスタ11aと、設定されたレジスタ値とカウント値を比較、演算する演算手段11AbをDuty制御処理ブロック回路に備える。
記録メモリから制御回路を介してヘッドへ記録データが転送される際に、ヘッド1ライン分の記録データ転送において、隣接するドット数を計数手段11Aaで計数する。記録データの隣接記録ドット数を計数する計数手段11Aaは、例えば”111110000110”という記録データを数える時、”1”を5回数えた後、次に現れる”0”で計数手段11Aaをリセットする。その後、”0”が続くと計数手段11Aaは計数を停止したままとする。その後、”1”を2回数えて”0”でリセットする。ここで、”1”は記録を行い”0”は記録を行わないデータである。
計数手段11Aaは、上記のようにして隣接する記録ドット数を計数する。比較手段11Abは計数手段11Aaで計数した計数値と、間引き閾値設定レジスタ11aから読み出した間引き閾値とを比較し、計数値が間引き閾値以上であれば、間引き処理を指令する。
これによって、ヘッド1ライン分毎を単位として、間引き処理を行うか否かの判定を行うことができる。
図12は、間引き閾値処理を説明するための図である。図12(a)において、濃い地模様の部分は記録を行い部分を表し、薄い地模様の部分は記録を行わない部分を表している。搬送方向の最下方に示すラインは、間引く閾値を“7以上”に設定した場合を示しており、実質的に間引きを行わない例となっている。このラインに対して、搬送方向の上方に向かって順に間引く閾値を“6”,“5”,“4”,“3”に設定して間引き処理を行った例を示している。記録を行部分に対して間引き処理を適用すると、間引きパターンに応じて記録データが間引かれる。記録部分中で白抜きとなった箇所は、間引きによって記録が成されなかったビット部分を示している。
つまり、図12(a)において、白抜き部分をデータ無しの部分とし、間引き閾値を例えば”4”と設定すると、搬送横方向において隣接するドット数が3ドット以下の記録データは間引き処理を行なわず、4ドット以の記録データについて間引き処理を行う。
図12(b)は、間引き閾値を”1”に設定した場合であり、各ビット(データクロックにおいて、“1”と“0”とをそれぞれ1つ組み合わせてなる単位)を単位とし、入力画像データが“1”で、かつ、間引きパターンが“0”のとき、その入力画像データの“1”を間引いて出力画像データを“0”とする。この状態は、図12(b)中で「間引き箇所」で表している。
また、入力画像データが“1”で、かつ、間引きパターンが“1”のときは、その入力画像データの“1”を間引くことなく出力画像データを“1”とする。なお、入力画像データが“0”であるときは、間引きパターンに係わらず出力画像データを“0”とする。
図12(c)は、間引き閾値を”3”に設定した場合であり、図12(b)と同様に、各ビット(データクロックにおいて、“1”と“0”とをそれぞれ1つ組み合わせてなる単位)を単位とし、入力画像データが連続して3ビット以上“1”である領域において、間引きパターンが“0”のとき、間引きパターンが“0”に対応する入力画像データの“1”を間引いて出力画像データを“0”とする。この状態は、図12(c)中で「間引き箇所」で表している。
また、前記の領域において、間引きパターンが“1”のときは、その入力画像データの“1”を間引くことなく出力画像データを“1”とする。なお、入力画像データが“0”であるときは、間引きパターンに係わらず出力画像データを“0”とする。
図12(c)中のAで示す部分は、入力画像データの連続ドット数が“2”であるため、この領域での間引きは行わない。
この間引き閾値によって、搬送縦方向のバーコードのような細い直線を間引くことによる画質の低下を軽減することができる。
次にシフト機能の内で、ラインシフト機能について説明を行う。
各ヘッドに対して、ライン毎に常に同じビット位置で間引きされた間引きパターンを用いて記録データが生成すると、搬送縦方向に白スジができてしまい、Duty制御された画像に画質の低下が生じてしまう。
そこで、ヘッドが次のラインを記録する際に、ラインシフト処理回路によって間引きされた記録データを所定ビットだけシフトさせることにより、同じビット位置で間引きされないようにする。
図13は設定した記録Duty値が60%の時、ラインシフト量をそれぞれ1ビット、2ビット、3ビットと設定してシフトさせた時の例である。ここで、間引きパターンは、図7に示したDuty設定値60%のパターンを用いている。例えば、図13(a)において、同じ記録Duty値であってもラインシフト設定値を1ビットとしてラインシフトさせた場合には、搬送縦方向に対し隣接した間引きパターンを無くすことが可能となる。
図13(b)はラインシフト設定値を2ビットとしてラインシフトさせた場合である。この場合には、搬送方向の白スジの発生を防ぐことができるが、斜め方向の規則性が発生し、記録データによっては斜め方向に白スジが発生するおそれがある。
図13(c)はラインシフト設定値を3ビットとしてラインシフトさせた場合である。この場合には、図13(b)で発生した斜め方向の規則性を緩和させることができる。
ラインシフト処理回路は、画像の特性に応じてラインシフト設定値を設定することにより、画質の低下を防止することができる。
次に初期シフト機能について説明を行う。
前記したラインシフトは同じヘッドが次のラインを記録する時に間引きパターンをずらす処理であるのに対し、初期シフトは複数のヘッドについて、各ヘッドの間引きパターンの開始位置を右方向あるいは左方向にずらす処理である。なお、複数のヘッドは異なる色ヘッドとすることも、あるいは同一色のヘッドとすることもできる。
この処理は記録開始の時点で一度設定すると、その設定値が記録終了まで保たれる。
各ヘッドに対して初期シフトレジスタ値をDuty制御処理ブロック回路部に備えておく。初期シフトは、各ヘッドにおいて、単位間引きパターンにより生成されたヘッド1ライン分の間引きパターンを記録開始時に設定値分だけ右方向あるいは左方向にシフトして間引きパターンの生成を行う。
各ヘッドに初めから異なるパターンを設定することも有効であるが、この場合には単位間引きパターンをヘッドの本数分だけ必要となる。そこで、複数の記録ヘッドに対する間引きパターンを同一の間引きパターンで共通化し、その同一の間引きパターンを所定ビット分シフトさせることで間引きパターンを生成すれば、レジスタ設定に要する容量や回路規模を減少するのに有効である。この初期シフトは、ラインシフトと同様に、ヘッド1ライン分の間引きパターンに対して行う他、単位間引きパターン生成の時点で行ってもよい。
次のラインの間引きパターンの生成において、1ラインの間引きパターンの開始位置をずらすラインシフト量を設定するレジスタをASIC等の回路内部に持つ構成としてもよい。間引きパターンが、次のラインに移る時、単位間引きパターンが繰り返されて生成されたヘッド1ライン分の間引きされた記録データに対して、ラインシフトの設定値分だけパターンの開始位置を右方向あるいは左方向にずらす。この処理は記録が終了するまで実行される。
このラインシフト機能はDuty制御処理ブロック回路部のラインシフト処理回路で実行される。ここでは、ヘッド1ライン分の間引きパターンに対してラインシフトを行っているが、前記したように、設定された複数ビットの間引きパターンを繰り返す際に、単位間引きパターン生成の時点で間引きパターンの開始位置をずらして、ヘッド1ライン分間引きパターンを繰り返すことによって、間引きされた記録データを生成してもよい。以上のようにして、ラインごとに間引き位置が異なる記録データを生成することができる。
以下、単位間引きパターンからシフト処理を経た間引きパターンの生成の複数の形態例について説明する。
第1の形態では、図14に示すように、単位間引きパターン設定レジスタ12aから選択した単位間引きパターンをライン方向に配列することによって、1ライン分間引きパターン処理12Aを行う。
初期シフト量設定レジスタ12bに設定されている初期シフト量に基づいて、生成された1ライン分の間引きパターンをシフトさせる。ここでは、ラインの右方向にシフトさせる例を示しているが、左方向にシフトさせる他に、ヘッド毎に右方向あるいは左方向にシフトさせてもよい。なお、これらシフト量は、シフト後の間引きパターンが単位間引きパターンの整数倍とならないように設定する。
次に、初期シフトした各ヘッドの1ライン分の間引きパターンをラインシフト量設定レジスタ12cに設定されるラインシフト量だけシフトさせる。図14では、各色ヘッドの内のKのヘッドについて、ライン間でシフトさせた間引きパターンを示している。
第2の形態では、図15に示すように、単位間引きパターン設定レジスタ12aから選択した単位間引きパターンを、初期シフト量設定レジスタ12bに設定されている初期シフト量に基づいてシフトさせて開始位置をずらし、この開始位置から、単位間引きパターンをライン方向に配列することによって、1ライン分の間引きパターンを生成する。図15では、この間引きパターンに生成処理と初期シフト処理を合わせて間引きパターン処理12ABとしている。
次に、各ヘッドの1ライン分の間引きパターンをラインシフト量設定レジスタ12cに設定されるラインシフト量だけシフトさせる。図15では、各色ヘッドの内のKのヘッドについて、ライン間でシフトさせた間引きパターンを示している。
第3の形態では、図16に示すように、単位間引きパターン設定レジスタ12aから複数の単位間引きパターンを選出し、これら複数の単位間引きパターンのライン方向の配列順序をランダムに変えながら間引きパターンを生成するものであり、初期シフト処理及びラインシフト処理を同時に行いながらライン間引きパターンを生成するものである。
図17は、記録データと間引きパターンとの合成を説明するための図である。隣接した記録データが間引き閾値以上であり、間引き処理を要すると判定した場合には、図17に示すように、記録データ1001と間引きパターン1002を合成(間引き処理の実行)し、ヘッドへ記録するデータ1003を転送する。
次に、本発明のインクジェット記録装置の別の態様について説明する。
図18は本発明の第2の態様を示す図である。第2の態様は、インクジェット記録装置に同色のヘッドを搬送方向に配列した構成であり、これら各ヘッドを同時に駆動することで高速記録を行う態様である。
図18において、インクジェット記録装置はK1st,K2nd,K3rd,K4thの4つのヘッド101a〜101dを備え、それぞれ同色により記録を行う。例えば、ブラックのインクを記録するヘッド101a〜101dを4本並べ、これら各ヘッド101a〜101dを同時に駆動して記録を行う。このヘッド駆動において、各ヘッドは4ラインおきに吐出を行えばよいため、データ転送速度、ヘッドの耐久駆動周波数が見かけ上4倍の能力に値することになる。したがって、1つのヘッドで記録を行う場合と比較して、4倍の速度で記録が可能となる。
図19は、第2の態様による記録動作例を模式的に示している。各記録動作では4つのヘッドが同時に4本のラインを記録する。そのため、例えば、第1記録動作〜第3記録動作の3回の記録動作によって、12ライン分を記録することができる。
図20は記録ページの拡大した部分を示している。図20において、1番目ラインはブラックのK1stヘッドにより記録され、次の2番目のラインはK2ndヘッドにより記録され、同様に3番目、4番目の各ラインは、K3rdヘッド、K4thヘッドで記録される。さらに、5番目のラインは再びK1stヘッドによって記録される。
このように同色の4本のラインヘッドを用いた記録方式によれば、各記録ヘッドは4ラインごとに記録を行ない、順次異なったヘッドでラインを記録する。そのため、Duty制御を行う際の間引きパターン選定において、各ヘッドの間引きパターンを考慮する必要がある。
すなわち第2の態様の場合、同じヘッドが次の記録を行う間に他のヘッドから記録されるため、同ヘッドの間引きパターンの選定のとき、前後ヘッドの間引きパターンを考慮する。したがってこの間引きパターンでは、初期シフト処理とラインシフト処理を組み合わせて行う。
図21は、同色の複数のヘッドを並べて記録する態様においてDuty制御ブロックのプロセスを示したフローチャートである。この態様は、前記図15と同様に動作である。
間引きパターンの生成において、単位間引きパターンを設定し(S11)、この単位間引きパターンを初期シフトする(S12)。初期シフトした単位間引きパターンについて、ラインシフトする(S13)。ラインシフトを各ヘッドについて行い、各ヘッドの1ライン分のデータを生成する(S14)。
図22はラインシフトと初期シフトを組み合わせた場合の間引きパターン生成例を示す図である。この生成例では、ライン方向と搬送縦方向を組み合わせて成るブロックを単位として間引きパターンを生成し、このブロックはライン方向に配列することで、1記録動作に用いる複数ライン分の間引きパターンを生成し、さらに、次に記録動作に対してブロックを搬送方向にシフトさせることで、次の複数ライン分の間引きパターンを生成する。
隣り合ったヘッド間において、初めに設定した複数ビットの間引きパターンと初期シフト値の組み合わせを考慮することにより、図22に示すように、搬送縦方向、つまり隣り合ったヘッドの間引きパターンにおいて、同じ間引きパターンの繰り返しを避けることが可能となる。
例えば、図22において、単位間引きパターンを“○●●○●●●”のようにレジスタに設定する(2001)。
次に、ヘッド1には初期シフト“0”を設定し、ヘッド2には初期シフト“2”、ヘッド3には初期シフト“4”を設定し、ヘッド4には初期シフト“3”を設定する。この設定により、それぞれのヘッドの初期パターンは、ヘッド1では“○●●○●●●”となり(2002)、ヘッド2では“●●○●●○●”となり(2003)、ヘッド3では“○●●●○●●”となり(2004)、ヘッド4では“●●●○●●○”となる(2005)。
第1の記録動作で1ライン〜4ライン目を記録する場合には、ヘッド1〜ヘッド4は初期パターンに基づいて記録を行う。次の第2記録動作で5ライン目〜8ライン目を記録する場合には、ヘッド1〜ヘッド4はラインシフト機能により、前記初期パターンをシフトさせる。ここでは、設定値“2”として、初期パターンを右方向に2ドット分シフトさせる。
同色のヘッドを並べて記録する方法の場合、間引きパターンを縦4ドット、横7ドット(7ビットの間引きパターン)の長方形パターンをブロックとして、ラインシフトで設定した値だけ右方向にずれて移動していくことによって、間引きパターンを生成する。
記録データの連続ドット数は計数手段によって計数することができる。計数値が間引き閾値で設定された値以上の場合には、上記のようにして生成された間引きパターンと記録データをASIC等の回路のDuty制御演算部で合成することによって、入力画像データはDuty制御され、間引きされ出力画像データとなる。
本態様によれば、同色のヘッドを並べて記録する場合に、Duty制御ブロック回路のレジスタに複数ビット(例では7ビット)の間引きパターンと、初期シフト値、ラインシフト値を設定しておくことによって間引きパターンを生成することができる。
この間引きパターンは、ラインヘッドが特徴的に備える1ライン単位での記録データ転送と合わせて間引きを行うため、生成された間引きパターン全てをメモリに保管しておく必要がないという利点がある。また、間引きパターンの生成と間引き処理は並行して行うことができるため、ASIC等の内部回路のレジスタ設定のみで間引き処理が可能であり、ラインヘッドを用いたインクジェット記録装置の利点である高速記録に影響を与えることなくDuty制御が可能となる。
なお、本態様では、4本の記録ヘッドを用いた4色カラーのインクジェット記録装置及び同色インクの4本の記録ヘッドを用いたモノクロのインクジェット記録装置を例として説明しているが、ヘッドの本数はこれに限定されるものではなく、2本や6本等の任意の本数を用いても同様に好適な間引きパターンの生成は可能である。
また、記録Duty値は複数ビットの間引きパターンを定める際に、○(間引きするデータ)と●(間引きしないデータ)の割合が少ないビット数で表せる場合であれば、ASIC等の内部レジスタ使用量が少ないDuty制御回路を作成することができる。
さらに、初期シフト処理回路や、ラインシフト処理回路において、間引きパターンを右方向にシフトを行う場合を説明したが、右方向に限定するものではなく、左右どちらの方向にシフトしてもよい。
また上記の例では、ASIC等の内部回路でDuty制御を行う場合について説明したが、本発明の目的や効果を損なわない範囲において、本Duty制御回路ブロックの一部をCPU内部処理に置き換える構成や外部回路で対応する構成としてもよい。
本発明のようなDuty制御を用いて記録データの間引き処理を行うことにより、記録Dutyの高いオブジェクトを高速記録で記録する場合であっても、好適な記録データの間引き制御が可能となり、画像の的確な場所において余分なインクの吐出を控え、紙写りや転写のない高画質な画像を記録することが可能となる。
本発明のインクジェット記録装置に適用可能なライン型の記録ヘッド(ラインヘッド)部分を説明するための概略外形図である。 インクジェット記録装置を用いた記録方法を説明するための図である。 記録データの転送経路を説明するための図である。 本発明のインクジェット記録装置の間引き処理を説明するための図である。 本発明のインクジェット記録装置の間引き処理を説明するための図である。 本発明における制御回路に含まれるASIC等の内部回路の一部の一例を示す図である。 本発明の間引きパターンの一例を示す図である。 本発明の同一のDuty値を実現する異なる単位間引きパターンの例を示す図である。 本発明の単位間引きパターンの繰り返しによる1ライン分の間引きパターンを形成する例を示す図である。 本発明のDuty制御ブロック回路が行う間引き処理を説明するためのフローチャートである。 本発明の間引き閾値処理の一構成例を説明するためのブロック図である。 本発明の間引き閾値処理を説明するための図である。 本発明のラインシフトを説明するための図である。 本発明の単位間引きパターンから間引きパターンを生成する第1の形態例を説明するための図である。 本発明の単位間引きパターンから間引きパターンを生成する第2の形態例を説明するための図である。 本発明の単位間引きパターンから間引きパターンを生成する第3の形態例を説明するための図である。 本発明の記録データと間引きパターンとの合成を説明するための図である。 本発明の第2の態様を示す図である。 本発明の第2の態様による記録動作例を模式的に示す図である。 本発明の第2の態様の記録ページの拡大した部分を示す図である。 本発明の同色の複数のヘッドを並べて記録する態様においてDuty制御ブロックのプロセスを示したフローチャートである。 本発明のラインシフトと初期シフトを組み合わせた場合の間引きパターン生成例を示す図である。
符号の説明
10 Duty制御処理
10A 間引き閾値処理
10Aa 計数手段
10Ab 演算手段
10Ab1 比較手段
10Ab2 計数手段
10Ab3 比較手段
10a 間引き閾値設定レジスタ
11 間引き閾値処理
11a 間引き閾値設定レジスタ
11A 間引き閾値処理手段
11Aa 計数手段
11Ab 比較手段
12 間引きパターン生成処理
12a 単位間引きパターン設定レジスタ
12b 初期シフト量設定レジスタ
12c ラインシフト量設定レジスタ
12A 間引きパターン生成手段
12B 初期シフト処理
12C ラインシフト処理
13 シフト処理
13a 初期シフトレジスタ
13b シフト量設定レジスタ
13A 初期シフト処理
13B ラインシフト処理
14 間引き処理
15 記録処理
20 DUTY制御ブロック
20a DUTY制御レジスタ部
20A DUTY制御演算部
100 ラインヘッド
101〜104 ヘッド
101a〜101d ヘッド
105 搬送ローラ
106 用紙
200 モニタ
201 画像
202〜205 画像データ
300 記録装置
301 制御基板
302 制御回路
303 USBコントロ−ラ
304 CPU
305 受信メモリ
306 記録メモリ
307 記録ヘッド
1001 記録データ
1002 間引きパターン
1003 記録データ

Claims (6)

  1. 記録データに基づいて記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置において、
    各々、記録媒体の記録幅全域にわたって複数の記録要素を備え、前記複数の記録要素を駆動することによってライン単位に記録する複数のライン型の記録ヘッドと、
    記録データの各ビットについて記録するか否かを定める複数ビットで形成される間引きパターンを、前記複数の記録ヘッドに対応して生成する間引きパターン生成手段と、
    前記間引きパターン生成手段により生成された間引きパターンと記録データとの組み合わせによって、記録データを間引いた記録パターンを生成する間引き処理を実行する間引き処理手段とを備え、
    各記録ヘッドは、各ラインに対応する記録データにおける記録ドットが連続した領域に対して、連続した記録ドットのドット数が所定の閾値以上の場合、前記間引き処理手段で生成された記録パターンにより当該記録ヘッドの複数の記録要素を駆動し、前記ドット数が前記所定の閾値に満たない場合、前記間引き処理手段による前記間引き処理を行っていない記録データに応じて生成される記録パターンにより当該記録ヘッドの複数の記録要素を駆動し、
    前記間引きパターン生成手段は、前記複数の記録ヘッドの各々に対しライン毎に異なる間引きパターンを生成し、さらに、同一ラインにおいて前記複数の記録ヘッドに対して生成する間引きパターンを、各記録ヘッド毎に互いに異ならせることを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 前記間引きパターン生成手段は、前記複数ビットで形成される間引きパターンを、単位間引きパターンをライン方向に複数配列することにより生成することを特徴とする、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記単位間引きパターンは連続する複数ビットを備え、
    当該各ビットは記録データの各ビットについて記録するか否かを設定することを特徴とする、請求項2に記載のインクジェット記録装置。
  4. 前記間引きパターン生成手段は、生成した一つの間引きパターンを、前記複数の記録ヘッドの各記録ヘッドについてそれぞれ異なる初期シフト量でずらして記録ヘッド間のシフトを設定する初期シフト処理手段と、
    生成した一つの間引きパターン又は前記初期シフト処理手段でシフトされた間引きパターンを、前記複数のヘッドの各々の記録ヘッドについて、ラインを単位としてライン方向にずらしてライン間のシフトを設定するラインシフト処理手段とを備えることを特徴とする、請求項1乃至の何れかに記載のインクジェット記録装置。
  5. 前記初期シフト処理手段は、複数ある記録ヘッドにおいて、各記録ヘッド毎に前記生成した一つの間引きパターンをライン方向に所定ビットシフトさせる演算手段を備えることを特徴とする、請求項に記載のインクジェット記録装置。
  6. 前記初期シフト処理手段は、間引きパターン生成手段において、各記録ヘッド毎に前記生成した一つの間引きパターンのライン上における配置位置をライン方向に所定ビットシフトさせ、当該位置からライン方向に複数配列することを特徴とする、請求項に記載のインクジェット記録装置。
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