JP5168726B2 - 熱電材料およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、酸化物熱電材料とその製造方法に関する。
近年、従来の金属化合物系で問題となっていた高温耐久性・有毒性を解決する技術として、金属酸化物を用いた熱電変換素子が提案され、その研究が急速に進展している。通常バルク形状に切り出されたペレットから形成される熱電変換素子においては、その性能は、性能指数Z(=S2σ/κ:Sはゼーベック係数、σは電気伝導率(導電率)、κは熱伝導率)で、さらには絶対温度Tを乗じた無次元性能指数ZTの値で評価される。これらの値が大きいほど熱電特性が優れる。ここで、熱伝導率は、格子振動(フォノン)による格子熱伝導率と電子伝導により伝わる電子熱伝導率からなる。
ここで、非特許文献1に記載されているように、酸化物における導電率と熱伝導率は、その結晶異方性がキャリア特性に大きく依存することが知られており、いかに結晶異方性をバルク形状においても制御できるかが、酸化物熱電変換素子の特性向上に大きく影響する要因となる。
また熱電変換素子は、熱源から効率的にエネルギーを取り出すために必要となる素子の体積も非常に大きいものとなるため、素子に用いる酸化物バルクも大量に合成できることが必要となる。よって、従来の高価な金属化合物を用いた熱電変換素子から酸化物系に今後置き換わるためには、いかに熱電変換デバイスの心臓部である酸化物バルク体を安価で、しかも大量に作製できるかが必須な課題として挙げられる。
ここで、熱電変換素子を作製するためには、キャリアが正孔であるp型半導体と、電子がキャリアとなるn型半導体の組合せにより高効率に発電できることが求められる。しかし、現状では、NaCo多結晶体で金属化合物に匹敵する約0.7という高いZTが報告されているp型に比べ、n型酸化物系では約0.3程度のZTまでしか得られていないことが、酸化物熱電変換デバイスの普及の障害になっていることが挙げられ、現在は特にn型酸化物の熱電特性のブレークスルーが求める声が非常に強くなっている。
酸化亜鉛(ZnO)をベースとして3価もしくは4価の金属イオンをドープした酸化物は、n型熱電材料の中でも高いZTを示すことが報告されており、酸化物熱電変換素子の有力な候補材料として非常に注目されている(非特許文献2)。
またウルツ鉱型の結晶構造を有するZnOは、そのc軸に垂直な面(c面)が、Znが並んだ導電性の高い面として知られている。よって、ZnOのc面に平行な方向に電流が流れるようなc軸配向性のZnOをベースとした成型体を設計および作製できれば、高い熱電変換能を発現することが期待できる。
このようなZnO成型体で結晶異方化を達成する技術として、バルク単結晶を作製すれば完全な配向構造体が得られるが、融点の高い金属酸化物の育成には極めて高い温度(〜2000℃)と専用の単結晶育成装置を必要とするので、作製には非常に高コストになる問題がある。
そこで、結晶配向性の多結晶ZnO熱電材料を作製する技術として、特許文献1に記載されている、反応性テンプレート粒成長(Reactive templated grain growth:以下、RTGG)法を利用した多結晶性配向構造体の製造方法が知られている。このRTGG法を利用した多結晶ZnO配向構造体は、塩基性硫酸亜鉛板状結晶とAl粒子を湿式混合して得られる分散スラリーを用いて、テープ成型法の一つであるドクターブレード法により作製したグリーンシートを切断して数十層重ねて積層圧着し、加熱による脱脂および焼成、さらに静水圧プレス(CIP)処理した後に、焼結処理することにより作製できることが開示されている。しかしながら、この製造方法では、Al3+をドープしたc軸配向性ZnO焼結体は得られるものの、高温でも揮発しにくい硫酸塩を原料として用いるため、高温での焼成後も不純物として硫酸が残存することや、大きな薄片状結晶が集積した構造となり焼結性が低くなるため、導電性、さらには熱電特性に悪影響が出ることが懸念される。またAl粒子を原料として用いているため、ZnOの結晶中へのAl3+の固溶が不均一に起こる恐れがある。実際、熱電変換性能の指標として開示されている800℃における出力因子(=S2σ)は3.0×10−4(W/m・K)であり、非特許文献2に開示されているAl3+をドープした等方的なZnO成型体の値[1.5×10−3(W/m・K)]に比べ、かなり低い値にとどまっている。さらに、製造方法としては非常に煩雑な工程を経ることから、多結晶体作製に期待される低コストでのZnO結晶配向成型体の作製は困難であると考えられる。
またZnOとAl粒子を含むスラリーに、高い回転磁場(〜10T)を掛けながら固化し、焼結処理することにより作製されたc軸配向したZnO焼結体の熱電特性が開示されている(特許文献2)。しかしながら、この方法しておいても、上記のRTGG法による成型体の製造方法と同様に、Al粒子を原料として用いているため、ZnOの結晶中へのAlの固溶が不均一に起こる恐れがあること、回転磁場装置を用いるために作製できるバルク成型体のサイズが限定されること、さらには大掛かりな設備が必要となることから高コストになってしまうという懸念がある。
「月刊セラミックス」、161〜165ページ、1998年3月号、日本セラミックス協会刊行 「Journal of Materials Chemistry」、p85〜90、1996年 特開2003−095741号公報 特開2007−243070号公報
本発明は、上記の問題点に鑑み、煩雑および高コストなプロセスを必要とせずに作製可能であり、かつ高い熱電変換特性を有する、結晶配向性の熱電材料と、その製造方法を提供しようとするものである。
本発明者らは、鋭意検討の結果、ドーパントとなる金属元素を含む層状水酸化亜鉛塩の板状粒子を加熱処理することにより得られる多結晶性の酸化亜鉛焼結体が高い熱電変換能を示す材料であることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明の熱電材料は、ドーパントとなる金属元素を含む層状水酸化亜鉛塩の板状粒子を加熱してなる。また、本発明の熱電材料の好ましい態様は、c軸方向に結晶配向性を有する多結晶性の酸化亜鉛焼結体であって、ドーパントとなる金属元素がZnOの結晶格子中に存在するZnと置換している。
本発明の結晶配向性熱電材料およびその製造方法は、煩雑および高コストなプロセスを必要とせずに作製可能であることから生産性に優れ、さらにバルク成型体でありながら結晶異方性を有するため、高い導電性および熱電変換特性が発現できることにより、高効率な熱電変換素子への適用が可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の熱電材料は、ドーパントとなる金属元素を含む層状水酸化亜鉛塩の板状粒子を原料として用いて作製される。ここで、本発明における層状水酸化亜鉛塩とは、主成分として結晶層中にZn2+を含むブルーサイト構造を基本構造とする層状金属水酸化物塩である。このようなブルーサイト構造を基本構造とする層状金属水酸化物塩は、結晶層中に含まれる金属イオンの種類や数により、層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide)、層状金属水酸化物(Layered Metal Hydroxide、)、もしくは複水酸化物塩(Hydroxy Double salt)とも呼ばれる。
本発明におけるドーパントとなる金属元素とは、酸化亜鉛の結晶格子中に存在するZn元素と置換することにより導電性が向上するような金属元素であり、好ましくは、B、Al、Ga、In、Fe、Co、Y、Sc、V、Eu、Si、Ge、Ti、Zr、Hfから選ばれる少なくとも一種である。これらの金属元素は、亜鉛よりも多くの価電子(3もしくは4つ)を有することから酸化亜鉛中の亜鉛サイトに固溶することで、キャリアとなる自由電子を生成する。そのため、これらの金属元素をドーピングした酸化亜鉛は飛躍的に導電性が向上することが期待できる。これらの金属元素は亜鉛イオンに比較的近いイオン半径を有することから、結晶構造に歪みを生じることなく、安定に酸化亜鉛の結晶中に固溶可能である。(「透明導電膜の新展開II」、31〜40ページ、2002年10月、シーエムシー出版)
本発明において、より好ましい金属元素はAlである。AlはZnOに固溶した際に歪みが小さく、また0.1程度までのモル比率でZnO結晶にドーピング可能であるので、結果的に高い導電性と熱電変換特性が期待できる。
本発明において用いられる層状水酸化亜鉛塩は、亜鉛に対する、ドーパントとなる金属元素のモル比率が0.001以上0.2以下であることが好ましい。ここで、ドーパントとなる金属元素のモル比率とは、層状金属水酸化物に含まれるZnのモル量に対するドーパントとなる金属元素のモル量の比率のことである。このような比率でドーパントが層状水酸化亜鉛塩に含有することにより、加熱後の酸化亜鉛焼結体は高い導電性が実現できる。なお、前記金属/亜鉛の比率は、加熱後の酸化亜鉛焼結体においても概ね同じモル比率を維持する。
層状水酸化亜鉛塩に含まれるドーパントの存在状態としては、層状水酸化亜鉛塩のブルーサイトシート内のZn2+サイトに置換固溶された状態であっても、格子間に侵入固溶された状態であっても良い。
本発明にあっては、ドーパントとなる金属イオンを含む層状水酸化亜鉛塩の板状粒子は、例えば、水溶液中での原料金属塩の加水分解反応を利用した湿式プロセスにより作製でき、中でも、共沈法、水熱合成法、均一沈殿法等の方法が好適に利用することができる。
本発明において用いられる層状水酸化亜鉛塩は、前述の通りブルーサイト構造を基本構造とする。ブルーサイト層はカチオン性であるため、その層間には、結晶の電気的中性を保つためにアニオンが含まれる。
アニオンの種類としては、成型体の高温での加熱処理により速やかに分解もしくは揮発することによって、成型体中に不純物として残存しにくいものが好ましい。すなわち、硫酸イオンやハロゲン化物イオン等の難揮発性アニオンは、加熱処理により分解もしくは揮発しにくいため、酸化亜鉛結晶中に残存することが懸念され、結果的に熱電変換素子としての性能に悪影響を及ぼす恐れがあるためである。ここで、難揮発性のアニオンとは、大気中での1000℃程度での焼成により、大気中に放散せずに、焼成後の酸化物表面に吸着もしくは固溶することにより、酸化物1molあたり0.01mol以上残存するアニオン種を示す。残存するアニオン種を示す。よって、本発明における層間アニオンとしては、高温での加熱処理により速やかに分解もしくは揮発するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、酢酸イオン、乳酸イオン、酪酸イオン、アミノ酸イオン等の有機アニオンや、硝酸イオン等の無機アニオンが好ましい。
本発明において用いられる層状水酸化亜鉛塩は、その板状粒子の平均板面径が100nm以上30000nm以下であり、平均板厚が10nm以上1000nm以下である。そして、本発明において用いられる層状水酸化亜鉛塩の板状粒子の(平均板面径/平均板厚)で表される平均アスペクト比は、10以上1000以下である。
層状水酸化亜鉛塩の平均板面径、平均板厚、平均アスペクト比が、それぞれ上記の範囲外である場合、成型処理による板状粒子の配向が不十分となり、成型体がランダムな結晶配向状態となる恐れがある。ここで、本発明における平均板面径および平均板厚はそれぞれ、走査型電子顕微鏡(例えば、日立製作所製、“S−800”)の倍率10000倍の視野で観測される、粒子50個の板面直径および板厚を平均することにより測定することができる。
本発明の他の態様においては、ドーパントとなる金属元素を含む層状水酸化亜鉛塩の板状粒子を成型する工程を含む。成型体は、層浄水酸化亜鉛塩の板状形状に由来して、層状水酸化亜鉛層を構成するシートに垂直な方位(c軸)に優先的に配向した結晶配向性を有するものである。さらに、このc軸配向した層状水酸化亜鉛塩成型体を加熱することにより多結晶性の酸化亜鉛焼結体が得られる。この酸化亜鉛焼結体は、酸化亜鉛のウルツ鉱型構造のc軸に配向している。また本発明においては、層状水酸化亜鉛塩の原料粉末を仮焼して酸化亜鉛に相転移させた後に成型体を作製し、加熱処理することによっても、c軸配向した酸化亜鉛焼結体を得ることが可能である。この場合、仮焼温度としては、酸化亜鉛への相転移が起こる温度であれば良いので、300〜1500℃が好ましい。このように、本発明においては、層状水酸化亜鉛塩を焼成することによりトポタクティックに結晶構造変化が起こることにより、結晶配向性ZnOへの相転移が起こることが重要となる。
本発明において用いられる層状水酸化亜鉛塩またはその仮焼体の成型体の作製方法としては、乾式成型法、湿式成型法のいずれも好適に用いることができる。乾式成型法としては、例えば、一軸プレス成型法、ホットプレス法、ホットフォージ法、等が挙げられる。湿式成型法としては、例えば、射出成型法、鋳込成型法、押出し成型法、加圧成型法、遠心成型法、等が挙げられる。本発明にあっては、低コストで結晶配向性を有する酸化亜鉛焼結体を作製するために、最も簡便な方法であり、大量生産可能な一軸プレス成型法をより好適に利用することができる。また上記成型方法により成型した成型体の充填密度を向上させるために、静水圧プレス(CIP)処理を行っても良い。
本発明において、酸化亜鉛焼結体を製造するための加熱温度は、ZnOが焼結し、さらにドーパントがZnO結晶格子中に固溶する温度であれば良く、1000℃以上1500℃以下が好ましい。また、焼結性を向上させるために、スパークプラズマ焼結(SPS)法等を利用しても良い。
酸化亜鉛焼結体は、ドーパントとなる金属元素が単独で原料となる層状水酸化亜鉛塩に予め含まれることから、焼成後のZnOの結晶格子中にドーパントが均一にドーピングされるので、優れた導電性および熱電変換特性を実現できる。したがって熱電材料として利用が可能である。
酸化亜鉛焼結体の結晶配向性は、X線回折測定装置(例えば、パナリティカル製“Xpert Pro”、X線源:CuKα、波長:1.54オングストローム、印加電圧:45kV)により調べることができる。またX線回折測定により得られるピーク強度をLotgering法により解析することにより、配向度を定量的に算出することも可能である。本発明においては、Lotgering法によるc軸配向度は、X線回折により得られるI ( h k l ) ピーク強度をそれぞれ求め、これらのピーク強度の和に対し、I ( 0 0 l ) の割合を示し、以下の式で与えられるf で算出される。
f = ( P − P ) / ( 1 − P
ここで、P はP = Σ I ( 0 0 l ) / Σ I ( h k l ) で表され、配向試料から得られたピーク強度である。P はP = Σ I ( 0 0 l ) / Σ I ( h k l ) で表され、無配向試料から得られるピーク強度である。本発明における熱電材料のc軸配向度fは、0.5以上1.0未満であり、高いc軸配向性を示す。
以上のように説明した酸化亜鉛焼結体を熱電材料として熱電変換素子に用いた場合、その高導電性のc面に平行な面が並んだ特徴があるため、優れた熱電変換特性を発揮することができる。本発明における熱電材料の熱電変換特性は、熱電特性測定装置(例えば、オザワ科学製“RZ2001i”)で測定することが可能である。これにより、約5mm×約5mm×約15mmの角柱状に切出した測定サンプルを用いて、各温度域(例えば、0〜1000℃)で、サンプル両端に温度差をつけた際の導電率(σ)やゼーベック係数(S)の測定が可能となり、これにより出力因子(σS)を求めることができる。またレーザーフラッシュ熱物性測定装置(例えば、京都電子工業製、“LFA−502”)により、熱伝導率κを求めることができる。具体的には、約5mm×約5mm×約1mm厚の板状に切出した測定サンプルの表面に、エネルギー密度が均一なレーザービームをパルス状に照射し均一に加熱すると、その熱がサンプルの裏面に拡散する時間と温度変化を検出することにより熱拡散率が分かり、これとサンプル密度から、熱伝導率を求めることができる。以上の測定により、種々の温度域における導電率、ゼーベック係数、熱伝導率から、ZT(=σS/κ)を求めることができる。
(実施例1)
ドーパントを含む層状水酸化亜鉛塩の作製
ドーパントを含む層状水酸化亜鉛塩は、以下の手順により合成した。
酢酸亜鉛(和光純薬製)0.098molと、ドーパントとなるAl3+イオン源である酢酸アルミニウムn水和物(和光純薬製)0.002molを蒸留水1000mlに溶解させ、室温で約1時間攪拌した。作製した金属塩水溶液に、0.1M 水酸化ナトリウム水溶液1000mlを室温で攪拌しながら1時間かけて滴下し、その後約20時間攪拌を行った。攪拌終了後、遠心分離することで白色ゲルを回収し、蒸留水による洗浄処理と遠心分離を、上澄みのpHが7程度になるまで繰り返すことで白色ゲルを得た。さらに、得られた白色ゲルを吸引ろ過して、100mlのエタノールで洗浄後、60℃で2時間乾燥することで、白色の薄板状体を得た。
この薄板状体をX線回折測定装置(パナリティカル製“Xpert Pro”、X線源:CuKα、波長:1.54オングストローム、印加電圧:45kV)によるX線回折(XRD)測定、結晶構造の同定を行ったところ、ブルーサイト構造を有する層状水酸化亜鉛酢酸塩の単相に帰属された。また薄板状体の表面に垂直に層状水酸化亜鉛酢酸塩のc軸が強く配向しており、Lotgering法によるc軸配向度は、約0.8であった。この薄板状体の走査型電子顕微鏡(SEM、日立製作所製、“S−800”)観察を行った結果を図1に示す。図1からも分かるように、板面径が100〜10000nmで、板厚が20〜100nmであり、アスペクト比が10〜200の薄板状粒子同士が板面に平行にスタックした形状であることが分かった。SEM観察により求めた平均板面径、平均板厚および平均アスペクト比は、それぞれ5000nm、30nmおよび100であった。
層状水酸化亜鉛酢酸塩の仮焼処理と焼結処理による結晶配向性ZnO焼結体の作製
次に、上記で得られた薄板状体を700℃で5時間焼成し、乳鉢で解砕することで得られた白色粉末のXRDパターンを測定した結果、c軸に配向したウルツ鉱型ZnOであることが分かった。そして、このc軸配向したZnO白色粉末を、一軸プレス成型機でプレス処理し、さらに静水圧プレス(CIP)処理することにより、直径約25mmで厚み約7mmの円盤状ペレットを作製した。
この円盤状ペレットを、1000℃で10時間、さらに1400℃で10時間焼成することにより焼結させた(ZnO−Al2%焼結体)。この焼結体の表面をサンドペーパーで研磨した後、XRDパターンを測定したところ、焼結体の円形表面に垂直にZnOのc軸が強く配向しており、Lotgering法によるc軸配向度は、0.89であった。また、この焼結体を粉砕した粉末のエネルギー分散X線分析(EDX)を測定し、金属換算の物質量比を求めたところ、Znに対してAlが約2%含有していること、およびZn、AlおよびO以外の元素が不純物として含まれていないことを確認した。
結晶配向性ZnO焼結体の熱電物性測定
上記のように作製したc軸配向性のZnO―Al2%焼結体を、c軸に垂直な方向に長手方向がくるようにダイヤモンドカッターで5mm×5mm×15mmのサイズに切出し、全ての表面をサンドペーパーで研磨することにより、熱電物性測定サンプルを作製した。
熱電物性測定装置(オザワ科学製、“RZ2001i”)を用いて、ZnO焼結体の測定サンプルの室温(20℃)〜1000℃における熱電特性を評価した。各温度における導電率σ、ゼーベック係数Sおよび出力因子σSのデータを図2に示す。
導電率は、全温度域で100S/cm以上であり、さらに温度上昇と共に導電率がわずかに低下する傾向があり、ZnO―Al2%焼結体は金属的な電子伝導を示すことから、Al3+がドーパントとしてZnO結晶中に固溶していることを示している。またゼーベック係数および出力因子ともに高い値を示した。
さらに、レーザーフラッシュ熱物性測定装置(京都電子工業製、“LFA−502”)により、c軸方向に垂直に板厚方向がくるように切出した5mm×5mm×1mm厚の板状サンプルの室温〜1000℃までの熱伝導率κを測定した。これらの結果より、無次元性能指数ZTを求めたグラフを図3に示す。1000℃におけるZTは、約0.35であり、高い熱電特性を示した。
(実施例2)
硝酸亜鉛六水和物(和光純薬製)0.095molと硝酸アルミニウム九水和物 0.005molを用いて作製したAl3+を含む層状水酸化亜鉛硝酸塩を原料に用いた以外は、実施例1と同様の手順で、ZnO−Al5%焼結体を作製した。層状水酸化亜鉛硝酸塩の薄板状体およびZnO−Al5%焼結体のLotgering法によるc軸配向度は、ともに0.87であった。
このZnO―Al5%焼結体の熱電物性(導電率、ゼーベック係数、出力因子)を図4に、ZTの温度依存性を図5に示す。ZnO―Al5%焼結体は、高い熱電変換特性を有することが分かる。
実施例1におけるAl3+を含む層状水酸化亜鉛酢酸塩のSEM像を示す図である。 実施例1におけるZnO−Al2%焼結体の熱電物性を示す図である。 実施例1におけるZnO−Al2%焼結体のZTの温度依存性を示す図である。 実施例2におけるZnO−Al5%焼結体の熱電物性を示す図である。 実施例2におけるZnO−Al5%焼結体のZTの温度依存性を示す図である。

Claims (7)

  1. ドーパントとなる金属元素を含む層状水酸化亜鉛塩の板状粒子を加熱してなる、結晶配向性を有する熱電材料であって、前記金属元素は、前記層状水酸化亜鉛塩のZn 2+ サイトに置換固溶または格子間に侵入固溶していることを特徴とする、熱電材料
  2. 前記金属元素がAlである、請求項に記載の熱電材料。
  3. 前記層状水酸化亜鉛塩の層間には、有機アニオンが含まれていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱電材料。
  4. 前記熱電材料はc軸方向に結晶配向してなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱電材料。
  5. 前記金属元素は、亜鉛に対するモル比率が0.001以上0.2以下である、請求項1又は4に記載の熱電材料。
  6. ドーパントとなる金属元素を含む層状水酸化亜鉛塩の板状粒子を加熱する工程を含んでなる、結晶配向性を有する熱電材料の製造方法であって、前記金属元素は、前記層状水酸化亜鉛塩のZn 2+ サイトに置換固溶または格子間に侵入固溶していることを特徴とする、熱電材料の製造方法
  7. 前記板状粒子を成型する工程と、1000℃以上1500℃以下で加熱する工程と、を含んでなる、請求項6に記載の製造方法。
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