JP5165816B2 - エポキシ樹脂組成物およびその硬化物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は硬化性に優れるとともに、耐湿性、耐熱性に優れた硬化物を与える半導体素子に代表される電気・電子部品等の封止、コーティング材料、積層材料、複合材料等の硬化剤として有用な多価ヒドロキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物ならびにその硬化物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、エポキシ樹脂は工業的に幅広い用途で使用されてきているが、その要求性能は近年ますます高度化している。例えば、エポキシ樹脂を主剤とする樹脂組成物の代表的分野に半導体封止材料があるが、近年、半導体素子の集積度の向上に伴い、パッケージサイズが大面積化、薄型化に向かうとともに、実装方式も表面実装化への移行が進展しており、より半田耐熱性に優れた材料の開発が望まれている。
【0003】
これらの要求を満足させるため、主剤となるエポキシ樹脂および硬化剤としては、高耐熱化および低吸湿化が望まれている。従来より、電子部品の封止用途では、エポキシ樹脂硬化剤としてフェノールノボラックが広く使用されてきている。フェノールノボラックを用いることにより耐熱性は向上するものの、吸水率が高くなる欠点があった。特公昭47-15111号公報には、耐湿性を向上させたものとして、フェノールアラルキル樹脂が提案されているが、耐熱性が低下する問題がある。
【0004】
耐熱性と耐湿性を満足させるものとして、特開平3-90075号公報にはナフトールアラルキル樹脂が提案されている。しかし、ナフトールアラルキル樹脂はその製造に際して、ナフトールの沸点および融点が高いことから、樹脂中に残存するナフトールモノマーを除去しづらい欠点があり、通常は1重量%前後のナフトールモノマーを含有している。ナフトールモノマーは単官能性であるため、エポキシ樹脂の硬化剤としては硬化性および耐熱性を低下させる問題がある。また、ナフトールアラルキル樹脂を用いることによって、硬化物の耐熱性および耐湿性は向上するものの、ナフトールアラルキル樹脂は硬化性に劣り、成形性が低下する問題があった。
【0005】
これまでの一般的事実として、ナフトールアラルキル樹脂をエポキシ樹脂硬化剤として用いた場合、フェノールアラルキル樹脂に比べて硬化性に劣ることが知られていたが、本発明者らの詳細な検討により、ナフトールアラルキル樹脂の硬化性は、ナフトールアラルキル樹脂の酸化の程度に大きく影響されることが明らかとなった。すなわち、ナフトールアラルキル樹脂は、その製造において、残存するナフトールを除去するために、通常、減圧蒸留あるいは水蒸気蒸留等の方法が取られる。この際、ナフトールは沸点が高いことから、高温で長時間の熱履歴に曝されることにより樹脂が酸化され易い状況にある。また、ナフトールアラルキル樹脂はフェノールアラルキル樹脂に比べて、保存時においても酸化されやすい傾向にあり、酸化劣化の小さいナフトールアラルキル樹脂を得ることは困難であった。以上のことから、これまでナフトールモノマーの含有率が少なく、かつ酸化の程度が小さいナフトールアラルキル樹脂は知られていなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、硬化性に優れるとともに耐湿性および耐熱性に優れた硬化物を与える多価ヒドロキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物ならびにその硬化物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点に鑑み鋭意検討した結果、ナフトールモノマーの含有率が少なく、かつ酸化の程度が小さい多価ヒドロキシ樹脂をエポキシ樹脂の硬化剤として用いることにより、上記問題点を克服できることを見いだし本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、エポキシ樹脂および下記一般式(1)で表される多価ヒドロキシ樹脂硬化剤を必須成分とするエポキシ樹脂組成物において、該多価ヒドロキシ樹脂中のナフトール類モノマーの含有率が0.8重量%以下であり、かつ、該多価ヒドロキシ樹脂の10重量%メチルエチルケトン溶液のガードナー色数が13以下であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物、およびこれを硬化してなる硬化物である。
【化2】
(式中、Aはナフタレン骨格を示し、mは1または2の整数、平均の繰り返し数nは1から10の数である)
【0009】
本発明で硬化剤として用いる多価ヒドロキシ樹脂の製造方法に特に制約はない。例えば、ナフトール類と、下記一般式(2)で表される縮合剤の混合物を、酸性触媒の存在下に反応させることにより合成することができる。
【化3】
(式中、Rは水素原子または炭素数1から6のアルキル基を表し、mは1または2の整数である)
【0010】
ここで、ナフトール類としては1−ナフトールまたは2−ナフトールがあるが、これらの混合物であってもよい。さらに、場合によってはナフトール類以外のフェノール類を少量含有していてもよい。
【0011】
ナフトール類以外のフェノール類としては、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,6−キシレノール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン等のベンゼン系フェノール類、1,4−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオール、1,6−ナフタレンジオール、1,7−ナフタレンジオール、2,6−ナフタレンジオール、2,7−ナフタレンジオール等のジヒドロキシナフタレン類、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類等が挙げられる。その使用量はナフトール類に対して、30重量%以下、好ましくは10重量%以下にとどめることがよい。これより多いと耐熱性、耐湿性や熱分解安定性が低下する。
【0012】
縮合剤としては、ベンゼン骨格を有するものとビフェニル骨格を有するものがある。
ベンゼン骨格を有する縮合剤としては、o−体、m−体、p−体のいずれでもよいが、好ましくは、m−体またはp−体である。具体的には、p−キシリレングリコール、α,α’−ジメトキシ−p−キシレン、α,α’−ジエトキシ−p−キシレン、α,α’−ジイソプロピル−p−キシレン、α,α’−ジブトキシ−p−キシレン、m−キシリレングリコール、α,α’−ジメトキシ−m−キシレン、α,α’−ジエトキシ−m−キシレン、α,α’−ジイソプロポキシ−m−キシレン、α,α’−ジブトキシ−m−キシレン等が挙げられる。
【0013】
また、ビフェニル骨格を有する縮合剤としては、4,4’−ジヒドロキシメチルビフェニル、2,4’−ジヒドロキシメチルビフェニル、2,2’−ジヒドロキシメチルビフェニル、4,4’−ジメトキシメチルビフェニル、2,4’−ジメトキシメチルビフェニル、2,2’−ジメトキシメチルビフェニル、4,4’−ジイソプロポキシメチルビフェニル、2,4’−ジイソプロポキシメチルビフェニル、2,2’−ジイソプロポキシメチルビフェニル、4,4’−ジブトキシメチルビフェニル、2,4’−ジブトキシメチルビフェニル、2,2’−ジブトキシメチルビフェニル等が挙げられる。メチロール基等の官能基のビフェニルに対する置換位置は、4,4’−位、2,4’−位または2,2’−位のいずれでもよいが、縮合剤として好ましい化合物は4,4’−体であり、全縮合剤中に4,4’−体が50重量%以上含まれたものが特に好ましい。これより少ないとエポキシ樹脂を硬化させる際の硬化速度が低下したり、得られた硬化物が脆くなるなどの欠点がある。
【0014】
ナフトール類と縮合剤との反応には、縮合剤に対して過剰量のナフトール類を使用する。縮合剤の使用量は、ナフトール類1モルに対して0.1〜0.9モル、好ましくは0.2〜0.7モルである。縮合剤の使用量が0.9モルより多いと樹脂の軟化点が高くなって成形作業性に支障をきたし、0.1モルより少ないと反応終了後、過剰のナフトール類の除く量が多くなり、工業的に好ましくない。
【0015】
通常、この反応は、公知の無機酸、有機酸等の酸触媒の存在下に行う。このような酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、燐酸等の鉱酸や、ギ酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、等の有機酸や、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸や、活性白土、シリカ−アルミナ、ゼオライト等の固体酸等が挙げられる。
【0016】
通常、この反応は10〜250℃で1〜20時間行うが、合成される多価ヒドロキシ樹脂の酸化を防ぐ目的から、酸素ガスを含まないガス、例えば窒素ガスで置換した後に、180℃以下の温度で10時間以内に行うことが望ましい。さらに、反応の際に溶媒として、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジグライム、トリグライム等のアルコール類や、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族化合物などを使用してもよい。
【0017】
反応終了後、場合により、中和、水洗等の方法により触媒を除去し、その後、残存する未反応のナフトール類を系外に除去する。この方法としては、特に限定されるものではないが、減圧蒸留あるいは水蒸気蒸留等の方法が採られる。また、温水またはアルコール類等の溶媒を用いることにより、モノマーを抽出する方法を用いてもよい。
【0018】
本発明で硬化剤として使用する多価ヒドロキシ樹脂中のナフトール類モノマー量は、0.8重量%以下であり、好ましくは0.5重量%以下である。これより多いと硬化剤としての硬化性が低下するとともに、得られた硬化物の耐熱性も低下する。ここでモノマー量とは、GPC測定装置を用い、カラム;TSK-GEL2000×3本およびTSK-GEL4000×1本(いずれも東ソー(株)製)、溶媒;テトラヒドロフラン、流量;1 ml/min、温度;38℃、検出器;RI、の条件で得られる値であり、全ピークの面積に占めるナフトールのピーク面積の割合のことを指す。
【0019】
さらに、上記多価ヒドロキシ樹脂は、メチルエチルケトンに溶解して10重量%溶液としたときのガードナー色数が13以下である必要がある。多価ヒドロキシ樹脂の色調は、製造時に用いる1−ナフトール等のナフトール類の色調に大きく影響される。したがって、用いるナフトール類の色調は、10重量%メチルエチルケトン溶液でのガードナー色数が5以下であることが好ましく、さらに好ましくは3以下である。ここで、ガードナー色数は、JIS K 0071に従い、測定した値である。
【0020】
このようにして製造される多価ヒドロキシ樹脂は、上記一般式(1)で表されるものであるが、好ましくは、Aは無置換若しくはメチル基で置換されたナフタレン環であり、平均の繰り返し数nは1〜10である。
【0021】
本発明で硬化剤として使用する多価ヒドロキシ樹脂は、分子量に応じて常温でから固形の形態をとるが、好ましくは、軟化点が70〜130℃のものである。これより低いものは、多価ヒドロキシ樹脂の製造時に残存するモノマーの量が多くなり、多価ヒドロキシ樹脂の生産性が低下するとともに、硬化物とした際の耐熱性が低下する。また、これより高いと溶融粘度が高くなり、取扱い作業性が低下する。
また、上記多価ヒドロキシ樹脂は、樹脂中のモノマー量、ガードナー色数等が特定の数値以下である必要があるが、これらの特性は用いられるナフトール類、縮合剤、縮合触媒や溶媒等の原料の種類や純度を選択したり、その反応温度、反応時間、脱モノマー、反応雰囲気等の製造条件を適宜選択することにより本発明に適したものとすることができる。
【0022】
得られた多価ヒドロキシ樹脂は、酸素の影響を受けやすいため、アルミニウム、スチール等の金属ラミネート袋、金属製容器等の通気性の小さい容器に密閉保存しておくことが好ましい。保存時の温度は25℃以下が好ましく、より好ましくは10℃以下である。
【0023】
本発明のエポキシ樹脂組成物に使用するエポキシ樹脂としては、分子中にエポキシ基を2個以上有する通常のエポキシ樹脂が全て使用可能である。例を挙げれば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、3,3’, 5,5’−テトラメチル−ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ビフェノール、3,3’, 5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン等の2価のフェノール類、あるいは、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂等の3価以上のフェノール類、またはテトラブロモビスフェノールA等のハロゲン置換フェノール類から誘導されるグルシジルエーテル化物等がある。これらのエポキシ樹脂は、1種または2種以上を混合して用いることができる。フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、フェノールアラルキル樹脂等のノボラック系のエポキシ樹脂が好ましいものの一つとして挙げられる。
【0024】
本発明のエポキシ樹脂組成物に使用する硬化剤は、前記多価ヒドロキシ樹脂の他に、必要によりこれに他の硬化剤を配合したものであってもよい。他の硬化剤としては、一般にエポキシ樹脂の硬化剤として知られているものはすべて使用することができる。他の硬化剤を配合したものである場合、前記多価ヒドロキシ樹脂の全硬化剤中に占める割合は、通常、20重量%以上であり、好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。これより少ないと、本発明の特徴である耐熱性、耐湿性および難燃性が低下する。また、他の硬化剤を配合する場合、硬化剤全体としても、前記ナフトール類が0.8重量%以下であり、ガードナー色数が13以下であることがよい。
【0025】
上記他の硬化剤としては、例えば、多価フェノール類、酸無水物、ジシアンジアミド、芳香族および脂肪族アミン類等がある。
【0026】
多価フェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール等の2価のフェノール類、あるいは、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、ナフトールノボラック、ポリビニルフェノール等に代表される3価以上のフェノール類、さらにはフェノール類、ナフトール類または、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール等の2価のフェノール類のホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−キシリレングリコール等の縮合剤により合成される多価フェノール性化合物等が例示される。しかし、遊離のナフトールを0.8重量%以上含むものは使用されない。
【0027】
酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチル無水ハイミック酸、無水ドデシニルコハク酸、無水ナジック酸、無水トリメリット酸等がある。
【0028】
アミン類としては、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、m−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン等の芳香族アミン類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族アミン類がある。
これらの硬化剤は、必要により1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0029】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物中には、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、石油樹脂、インデンクマロン樹脂、フェノキシ樹脂、等のオリゴマーまたは高分子化合物を適宜配合してもよい。
【0030】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、無機充填剤、顔料、難然剤、揺変性付与剤、カップリング剤、流動性向上剤、等の添加剤を配合できる。無機充填剤としては、例えば、球状あるいは破砕状の溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ粉末、アルミナ粉末、ガラス粉末、またはマイカ、タルク、炭酸カルシウム、アルミナ、水和アルミナ等が挙げられる。顔料としては、有機系または無機系の体質顔料、鱗片状顔料等がある。揺変性付与剤としては、シリコン系、ヒマシ油系、脂肪族アマイドワックス、酸化ポリエチレンワックス、有機ベントナイト系等を挙げることができる。
【0031】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物には必要に応じて、従来より公知の硬化促進剤を用いることができる。例を挙げれば、アミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン類、ルイス酸等がある。添加量としては、通常、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.2〜5重量部の範囲である。さらに必要に応じて、本発明の樹脂組成物には、カルナバワックス、OPワックス等の離型剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のカップリング剤、カーボンブラック等の着色剤、三酸化アンチモン等の難燃剤、シリコンオイル等の低応力化剤、ステアリン酸カルシウム等の滑剤等を使用できる。
【0032】
またさらに、本発明のエポキシ樹脂組成物は、有機溶剤に溶解させワニス状態とすることができる。この場合の好ましい有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジグライム、トリグライム等のアルコール類、あるいはそれらのエステル類、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性溶剤が挙げられ、これらの有機溶剤は2種類以上のものを混合使用してもよい。
【0033】
ワニス状としたエポキシ樹脂組成物は、基材の上に塗布、あるいは含浸させた後、有機溶剤を除去し、いわゆるBステージのプリプレグとすることができる。この場合の基材としては、例えば、銅箔、ステンレス箔、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、等のフィルム状物、ガラス繊維、アラミド繊維、アラミド不織布、ポリエステル繊維、ポリエステル不織布、等の繊維状物が挙げられる。
【0034】
本発明のエポキシ樹脂硬化物は、上記のエポキシ樹脂組成物を加熱することにより得ることができ、これは低吸湿性、高半田耐熱性等に優れた効果を発揮する。硬化物を得るための方法としては注型、注入、ポッティング、ディッピング、ドリップコーティング、トランスファー成形、圧縮成形、プレス成形等が好適に用いられ、その際の温度としては通常、100℃〜250℃の範囲である。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を合成例、実施例、比較例により、さらに具体的に説明する。
なお、原料及び製品のガードナー色数は、10重量%メチルエチルケトン溶液として測定したものである。
【0036】
合成例1
4口フラスコに、ガードナー色数が3である1−ナフトール1152g(8.0モル)、p−キシリレングリコールジメチルエーテル464.8g(2.8モル)及び48%硫酸0.8gを仕込み、窒素気流下に攪拌しながら180℃で2時間反応させた。この間に生成するメタノールは系外に除いた。その後、水洗により硫酸を除去した。更に減圧蒸留を行うことにより未反応の1−ナフトールを除去し、多価ヒドロキシ樹脂946gを得た。得られた樹脂のOH当量は208、軟化点は85℃、150℃における溶融粘度は0.22Pa・sであった。また、残存モノマー量は1.4重量%、ガードナー色数は6であった。
【0037】
合成例2
合成例1で得られた多価ヒドロキシ樹脂600gを用いて、さらに水蒸気蒸留を行い、未反応の1−ナフトールを除去することにより、多価ヒドロキシ樹脂586gを得た。得られた樹脂のOH当量は210、軟化点は88℃、150℃における溶融粘度は0.25Pa・sであった。また、残存モノマー量は0.4重量%、ガードナー色数は8であった。
【0038】
合成例3
p−キシリレングリコールジメチルエーテルを664g(4.0モル)、48%硫酸を0.8g用いた以外は合成例1と同様に反応を行い、多価ヒドロキシ樹脂1204gを得た。得られた樹脂のOH当量は223、軟化点は116℃、150℃における溶融粘度は4.2Pa・sであった。また、残存モノマー量は0.2重量%、ガードナー色数は11であった。
【0039】
合成例4
ガードナー色数が7である1−ナフトールを用いて合成例1と同様に反応を行った後、水蒸気蒸留を行い、未反応の1−ナフトールを除去することにより、多価ヒドロキシ樹脂470gを得た。得られた樹脂のOH当量は211、軟化点は87℃、150℃における溶融粘度は0.24Pa・sであった。また、残存モノマー量は0.3重量%、ガードナー色数は14であった。
【0040】
合成例5
合成例2で得られた多価ヒドロキシ樹脂200gを40℃の温風乾燥機中に1日間放置した。得られた樹脂のOH当量は211、軟化点は88℃、150℃における溶融粘度は、0.24Pa・sであり、ガードナー色数は12であった。
【0041】
参考例6
参考例2で得られた多価ヒドロキシ樹脂200gを40℃の温風乾燥機中に7日間放置した。得られた樹脂のOH当量は214、軟化点は89℃、150℃における溶融粘度は0.26Pa・sであり、ガードナー色数は17であった。
【0042】
実施例1〜3及び比較例1〜4
電子部品等の用途でのエポキシ樹脂組成物としての特性を評価するために、電子部品封止材料用の配合、評価により以下に示した評価を行った。
エポキシ樹脂成分として、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(ECN:日本化薬製、EOCN-1020-80;エポキシ当量 200、加水分解性塩素 400ppm、軟化点 80℃)を用い、硬化剤として、合成例1〜6のナフト−ルアラルキル型多価ヒドロキシ樹脂、及びフェノ−ルアラルキル型多価ヒドロキシ樹脂(PA:三井化学製、ミレックスXL-225-L;OH当量180、軟化点 85℃、150℃溶融粘度 0.9Pa・s)を用いた。
更に、充填剤として球状シリカ(平均粒径 18μm)、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン、着色剤としてカ−ボンブラック、離型剤としてカルナバワックスを用い、表1に示す配合で混練し、エポキシ樹脂組成物を得た。
なお、表1において、ECNはo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を、合成例1〜6は合成例1〜6のナフト−ルアラルキル型多価ヒドロキシ樹脂を、PAはフェノ−ルアラルキル型多価ヒドロキシ樹脂を示し、数字は配合量(重量部)である。
【0043】
このエポキシ樹脂組成物を用いて175℃にて成形し、175℃にて12時間ポストキュアを行い、硬化物試験片を得た後、各種物性測定に供した。結果を表2に示す。
なお、表2中の各種物性測定は以下の評価方法によるものである。
(熱時硬度)
熱時硬度は175℃にて90秒成形を行った試験片を、バ−コル硬度計にて測定を行った。
(ガラス転移点)
ガラス転移点は、熱機械測定装置により、昇温速度10℃/分の条件で求めた。
(吸水率)
吸水率は、本エポキシ樹脂組成物を用いて50mmφ×3mmの円盤を成形し、ポストキュア後85℃、85%RHの条件で100時間吸湿させたときのものである。
(難燃性)
難燃性は、厚さ1/16インチの試験片を成形し、UL94V−0規格によって評価した。また、定量的にはn=5の試験での合計フレ−ミング時間を指標として示した。
(クラック発生率)
クラック発生率は、QFP−80pin(14×20×2.5mm)を成形し、ポストキュア後、吸水率と同条件の85℃、85%RHの条件で所定の時間吸湿後、260℃の半田浴に10秒間浸漬させた後、パッケージの状態を観察し求めた。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【発明の効果】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、速硬化性、流動性に優れるとともに、高い熱時硬度を有する硬化物を与えることから優れた成形性を示す。また、耐熱性、低吸湿性、半田リフロ−性、難燃性等に優れた硬化物を与え、特に表面実装型の半導体素子等の電子部品の封止またはプリント基板等に応用した場合、優れた耐熱性、低吸湿性、半田リフロ−性、難燃性を示す。
Claims (2)
- エポキシ樹脂および下記一般式(1)で表される多価ヒドロキシ樹脂硬化剤を必須成分とするエポキシ樹脂組成物において、該多価ヒドロキシ樹脂中のナフトール類モノマーの含有率が0.8重量%以下であり、かつ、該多価ヒドロキシ樹脂の10重量%メチルエチルケトン溶液のガードナー色数が13以下であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物(但し、エポキシ樹脂として下記一般式(11)又は一般式(12)で表されるエポキシ樹脂を含むことはない。また、エポキシ樹脂組成物中に、軟化点が10〜250℃、窒素気流下で700℃まで昇温したときの残炭率が10wt%以上であり、 13 C-核磁気共鳴スペクトルにおける芳香族指数(fa)が0.85以上である多環芳香族系物質を、難燃剤としてエポキシ樹脂100重量部に対して1〜100重量部含有することはない)。
- 請求項1記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
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JP2000070068A JP5165816B2 (ja) | 2000-03-14 | 2000-03-14 | エポキシ樹脂組成物およびその硬化物 |
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