以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
尚、図1〜図2,図6〜図9,図12〜図19において、同一部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
図1は、本発明の実施形態であり、後述する電動式パワーステアリング制御装置(例えば、図2)等から成る電動式パワーステアリングシステム100を示す図である。電動式パワーステアリングシステム100は、車両(例えば、自動車)に搭載される。
図中の電動式パワーステアリングシステム100において、ステアリング1を操舵(回転操作)すると、その操舵力が、軸2aを介してギア機構3に伝達され、さらに、軸2bとギア機構5を介して軸6に伝達される。軸6は、当該操舵力によって駆動し、軸6が駆動することで、リンク機構7を介して車輪8の向きが変わる。
また、モータ15が回転すると、その駆動力が、クラッチ4を介してギア機構3に伝達され、さらに、軸2bとギア機構5を介して軸6に伝達される。これにより、軸6には、ステアリング1の操舵により伝達された操舵力に加えて、モータ15の駆動力も伝達されるため、当該駆動力によって、軸6の駆動と車輪8の転向が補助される。即ち、ステアリング1での操舵が、モータ15により補助される。尚、本実施形態におけるモータ15は、例えば、ブラシモータから成る。
トルクセンサ11は、ステアリング1により加えられる操舵トルクを検出する。 角速度センサ12は、ステアリング1の角速度(回転操作速度)を検出する。車速センサ13は、車両の車速(走行速度)を検出する。尚、トルクセンサ11は、本発明における操舵トルク入力手段の一実施形態であり、角速度センサ12は、本発明における角速度入力手段の一実施形態であり、車速センサ13は、本発明における車速入力手段の一実施形態である。
ECU(Electronic Control Unit)10は、クラッチ4をON(結合)/OFF(離脱)制御する。また、ECU10は、トルクセンサ11により検出した操舵トルク、角速度センサ12により検出した角速度、車速センサ13により検出した車速に基づいて、モータ15を駆動するための電流指令値を決定し、当該電流指令値に基づいてモータ15の駆動を制御する。尚、ECU10は、本発明における駆動電流指令値出力手段の一実施形態である。
バッテリ9は、ECU10とモータ15に電力を供給する。尚、ECU10、トルクセンサ11、角速度センサ12、車速センサ13は、本発明に係る電動式パワーステアリング制御装置の一実施形態を構成する。
図2、図7〜図9、図12〜図14は、ECU10の機能ブロックを示す図であり、各図中において一点鎖線で囲まれている部分(但し、モータ駆動部51を除く)が、ECU10の内部においてプログラムにより実行される機能である。
また、図2は、本実施形態の第1実施例におけるECU10の機能ブロックを示す図であり、以下同様に、図7は第2実施例、図8は第3実施例、図9は第4実施例、図12は第9実施例、図13は第10実施例、図14は第11実施例を示す図である。尚、第5〜第8実施例については、図示を省略する(詳細については後述する)。
まず始めに、図2に示すECU10(第1実施例)について説明する。トルクセンサ11により検出されたステアリング1(図1)の操舵トルクTは、微分指令値算出器21、微分ゲイン算出器22、第1電流指令値算出器23、電流ゲイン算出器24aに入力される。
角速度センサ12により検出されたステアリング1の角速度AVは、電流ゲイン算出器24aに入力される。また、車速センサ13により検出された車両の車速Vは、微分ゲイン算出器22および第1電流指令値算出器23に入力される。
微分指令値算出器21は、操舵トルクTを時間に対して微分することにより、微分指令値T1を算出して、乗算器31に出力する。微分ゲイン算出器22は、操舵トルクTと車速Vとに基づいて、微分指令値T1に対するゲインである微分ゲインgを算出して、乗算器31に出力する。詳しくは、微分ゲイン算出器22には、車速Vによって異なる3種類の微分ゲイン曲線(図3)が予め記憶されている。尚、微分指令値算出器21は、本発明における微分指令値算出手段の一実施形態を構成する。
図3に示す微分ゲイン曲線において、車速VがV0(例えば、V0=0:車両停止時)である場合(実線)の微分ゲインgは、操舵トルクTの値に関わらず一定である。車速VがV1(例えば、V1=10:車両走行時)である場合(点線)の微分ゲインgは、操舵トルクTの値が大きくなるにつれて小さくなる。同様に、車速VがV2(例えば、V2=20:車両走行時)である場合(一点鎖線)の微分ゲインgは、操舵トルクTの値が大きくなるにつれて小さくなる。
また、操舵トルクTの値に関わらず、車速VがV0である場合の微分ゲインgは、車速VがV1,V2である場合の微分ゲインgよりも常に大きく、車速VがV1である場合の微分ゲインgは、車速VがV2である場合の微分ゲインgよりも常に大きい。
微分ゲイン算出器22は、車速Vに応じていずれかの微分ゲイン曲線を選択し、当該微分ゲイン曲線と操舵トルクTとから微分ゲインgを算出する。尚、微分ゲイン算出器22は、本発明における微分ゲイン算出手段の一実施形態を構成する。
第1電流指令値算出器23(図2)は、操舵トルクTと車速Vとに基づいて、第1電流指令値I1を算出して、乗算器32に出力する。詳しくは、第1電流指令値算出器23には、車速Vによって異なる3種類の第1電流指令値曲線(図4)が予め記憶されている。尚、第1電流指令値算出器23は、本発明における第1電流指令値算出手段の一実施形態を構成する。
図4に示す第1電流指令値曲線において、車速VがV0(例えば、V0=0:車両停止時)である場合(実線)の第1電流指令値I1は、操舵トルクTが所定値T0となるまで増大し、当該所定値T0を超えると一定になる。以下同様に、車速VがV1(例えば、V1=10:車両走行時)である場合(点線)の第1電流指令値I1は、操舵トルクTが所定値T1となるまで増大し、当該所定値T1を超えると一定になる。車速VがV2(例えば、V2=20:車両走行時)である場合(一点鎖線)の第1電流指令値I1は、操舵トルクTが所定値T2となるまで増大し、当該所定値T2を超えると一定になる。尚、本実施例では、上述した各所定値T0、T1、T2の関係は、T0≦T1≦T2であり、また、T0>0としている。
また、操舵トルクTの値に関わらず、車速VがV0である場合の第1電流指令値I1は、車速VがV1,V2である場合の第1電流指令値I1よりも常に大きく、車速VがV1である場合の第1電流指令値I1は、車速VがV2である場合の第1電流指令値I1よりも常に大きくなるようにしている。
第1電流指令値算出器23は、車速Vに応じていずれかの第1電流指令値曲線を選択し、当該第1電流指令値曲線と操舵トルクTとから第1電流指令値I1を算出する。
電流ゲイン算出器24a(図2)は、第1電流指令値I1に対するゲインであるゲインG1を算出(決定)して、乗算器32に出力する。詳しくは、電流ゲイン算出器24aには、操舵トルクTと角速度AVとに基づいて、運転者が感じる操舵感覚を分類した分類マップ71(図5の(a))と、当該分類マップ71での判定結果に係る識別子(以下、「ID」と記載)とゲイン値(ゲインG1)とが対応付けられている対応表72(図5の(b))とが予め記憶されている。尚、対応表73(図5の(c))は、本実施例と関係がないため、後述する他の実施例において詳述する。また、電流ゲイン算出器24aは、本発明における電流ゲイン算出手段の一実施形態であり、分類マップ71は、本発明における第1判定手段の一実施形態であり、対応表72は、本発明における第1電流ゲイン決定手段の一実施形態であり、対応表73は、本発明における第2電流ゲイン決定手段の一実施形態である。更に、ゲインG1は、本発明における第1電流ゲインに対応している。
図5の(a)に示す分類マップ71には、例えば、操舵感覚A(破線内の領域)と、操舵感覚B(実線内の領域)と、操舵感覚C(一点鎖線内の領域)と、操舵感覚A〜Cのいずれにも属さない操舵感覚Dの異なる4種類の操舵感覚が分布している。
また、各操舵感覚(A〜D)には、上述したIDが予め設定されており、例えば、判定結果が操舵感覚Aである場合のIDは、ID=0である。以下同様に、判定結果が操舵感覚Bである場合のIDは、ID=1であり、操舵感覚Cである場合のIDは、ID=2であり、操舵感覚Dである場合のIDは、ID=3である。
このように、操舵トルクTと角速度AVとに基づいて、運転者が感じる操舵感覚を判定し、当該判定結果に係るIDに基づいて、図5の(b)に示す対応表72を参照することで、ゲインG1を算出(決定)する。例えば、操舵トルクTがTAであり、角速度AVがAVAである場合の判定結果は、操舵感覚Aであり、当該判定結果に係るIDは0であるため、対応表72により、当該ID(ID=0)に対応するゲインG1(G1=a)が算出される。
以下同様に、操舵トルクTがTBであり、角速度AVがAVBである場合の判定結果は、操舵感覚Bであり、当該判定結果に係るIDは1であるため、対応表72により、当該ID(ID=1)に対応するゲインG1(G1=b)が算出される。
操舵トルクTがTCであり、角速度AVがAVCである場合の判定結果は、操舵感覚Cであり、当該判定結果に係るIDは2であるため、対応表72により、当該ID(ID=2)に対応するゲインG1(G1=c)が算出される。
操舵トルクTがTDであり、角速度AVがAVDである場合の判定結果は、操舵感覚Dであり、当該判定結果に係るIDは3であるため、対応表72により、当該ID(ID=3)に対応するゲインG1(G1=d)が算出される。
尚、上述した方法により操舵感覚が判定し辛い場合、つまり、分類マップ71において、操舵感覚Aと操舵感覚Bとが重なる部分(斜線部)、または、操舵感覚Bと操舵感覚Cとが重なる部分(灰色部)の操舵感覚を判定する場合、本実施形態においては、当該分類マップ71の前面に出ている(隠れていない)方の操舵感覚を優先する。
詳しくは、操舵感覚Aと操舵感覚Bとが重なる部分(斜線部)の操舵感覚を判定する場合は、分類マップ71において、操舵感覚Aよりも前面に位置する操舵感覚Bを判定結果として優先的に適用し、当該ID(ID=1)に対応するゲインG1(G1=b)を算出する。同様に、操舵感覚Bと操舵感覚Cとが重なる部分(灰色部)の操舵感覚を判定する場合は、分類マップ71において、操舵感覚Cよりも前面に位置する操舵感覚Bを判定結果として優先的に適用し、当該ID(ID=1)に対応するゲインG1(G1=b)を算出する。
乗算器31(図2)は、微分指令値T1と微分ゲインgとを乗算することにより第2電流指令値I2を算出して、加算器34(図2)に出力する。乗算器32(図2)は、第1電流指令値I1とゲインG1とを乗算することにより第3電流指令値I3を算出して、加算器34に出力する。加算器34は、第2電流指令値I2に第3電流指令値I3を加算することにより駆動電流指令値Idを算出して、モータ駆動部51に出力する。尚、乗算器31は、本発明における第2電流指令値算出手段の一実施形態であり、乗算器32は、本発明における第3電流指令値算出手段の一実施形態であり、加算器34は、本発明における駆動電流指令値算出手段の一実施形態である。
図6は、モータ15を駆動するためのモータ駆動部51の詳細を示す図である。モータ駆動部51は、後述するFET(Field Effect Transistor)ゲート駆動回路52に入力される駆動電流指令値Idに基づいてモータ15をPWM(Pulse Width Modulation)制御で駆動する。
詳しくは、モータ駆動部51は、FETゲート駆動回路52、昇圧電源53、FET61〜64で成るHブリッジ回路等から構成されている。FETゲート駆動回路52は、駆動電流指令値Idに基づいて各FET61〜64のゲートを駆動する。
FET61またはFET62は、モータ15を駆動する際に、駆動電流指令値Idに基づいて決定された所定のデューティ比のPWM信号によりON/OFFが切り替えられる。FET63またはFET64は、モータ15を駆動する際にONされる。PWM信号の符号から判断されるモータ15の回転方向に応じて、駆動するFET61〜64が切り替わる。
例えば、FET64がON状態にあるときに、FET61をON/OFF制御することで、駆動電流指令値Idに応じたレベルの電流が、電源54からFET61、モータ15、FET64、および抵抗66を経て、グランド55に流れて、モータ15が正方向に回転駆動する。
また、FET63がON状態にあるときに、FET62をON/OFF制御することで、駆動電流指令値Idに応じたレベルの電流が、電源54からFET62、モータ15、FET63、および抵抗65を経て、グランド55に流れて、モータ15が逆方向に回転駆動する。
このように、本実施形態の第1実施例において、ECU10(図2)は、ステアリング1(図1)の操舵トルクTに基づいて微分指令値T1を算出し、操舵トルクTと車速Vに基づいて微分ゲインgと第1電流指令値I1とを算出し、操舵トルクTと角速度AVに基づいてゲインG1を算出している。
そして、微分指令値T1と微分ゲインgとに基づいて第2電流指令値I2を算出し、第1電流指令値I1とゲインG1とに基づいて第3電流指令値I3を算出し、第2電流指令値I2と第3電流指令値I3とに基づいて駆動電流指令値Idを算出している。
このため、操舵トルクTと車速Vに応じて第1電流指令値I1と微分指令値T1のみを変化させる従来技術とは異なり、モータ15(図1)を駆動するための駆動電流指令値Idをきめ細かく制御して、その調整精度を上げることが出来るため、モータ15の駆動力も従来技術に比べて微調整可能となる。これにより、運転者が感じている操舵感覚に応じた的確な補助力(モータ15の駆動力)の供給が可能となるため、ステアリング1の操舵フィーリングを良好にすることが出来る。
また、ステアリング1の操舵フィーリングを良好にするための手段として、モータ15の回転数をパラメータの1つとして利用する従来技術とは異なり、本実施形態においては、当該モータ15の回転数を用いないため、車両毎に異なるモータ15の回転数に応じて、電動式パワーステアリングシステム100のチューニングを行う必要がない。
更に、操舵感覚の調整を行うための調整値入力部を設けた従来技術とは異なり、操舵感覚の調整を行うための調整値を運転者が入力する必要がないため、運転者の手間を軽減することが出来る。
次に、図7に示すECU10(第2実施例)について説明する。尚、本図中の微分指令値算出器21、微分ゲイン算出器22、第1電流指令値算出器23、乗算器31、乗算器32、モータ駆動部51は、前述のECU10(図2,第1実施例)におけるそれらと同一であり、同一の機能を有するため、以下において、これらに関する説明を省略する。
図7中の電流ゲイン算出器24bは、前述の第1実施例における電流ゲイン算出器24a(図2)と同様、第1電流指令値I1に対するゲインであるゲインG1を算出(決定)して、乗算器32に出力する。ここで、第1電流指令値I1は、前述した第1実施例と同様に、トルクセンサ11により検出された操舵トルクTと、車速センサ13により検出された車速Vとに基づいて、第1電流指令値算出器23で算出した値である。尚、電流ゲイン算出器24bは、本発明における電流ゲイン算出手段の一実施形態である。
また、これとは別に、電流ゲイン算出器24bは、第2電流指令値I2に対するゲインであるゲインG2を算出(決定)して、乗算器33に出力する。ここで、第2電流指令値I2は、前述した第1実施例と同様に、操舵トルクTを時間に対して微分することにより微分指令値算出器21で算出した微分指令値T1と、微分ゲイン算出器22で算出した微分ゲインgとに基づいて、乗算器31で算出した値である。尚、乗算器33は、本発明における第4電流指令値算出手段の一実施形態である。また、ゲインG2は、本発明における第2電流ゲインに対応している。
詳しくは、電流ゲイン算出器24bには、電流ゲイン算出器24a(図2)と同様、分類マップ71(図5の(a))と対応表72(図5の(b))とが予め記憶されている。また、これに加えて、分類マップ71での判定結果に係るIDとゲイン値(ゲインG2)とが対応付けられている他の対応表73(図5の(c))も記憶されている。
ここで、電流ゲイン算出器24bにおけるゲインG1の算出方法については、電流ゲイン算出器24a(図2)におけるゲインG1の算出方法と同様であるため説明を省略し、電流ゲイン算出器24bにおけるゲインG2の算出方法ついてのみ説明する。
電流ゲイン算出器24bでは、操舵トルクTと角速度AVとに基づいて、分類マップ71(図5の(a))により操舵感覚を判定し、当該判定結果に係るIDに基づいて対応表73(図5の(c))を参照することで、ゲインG2を算出する。
例えば、分類マップ71(図5の(a))において、操舵トルクTがTAであり、角速度AVがAVAである場合の判定結果は、操舵感覚Aであり、当該判定結果に係るIDは0であるため、対応表73(図5の(c))により、当該ID(ID=0)に対応するゲインG2(G2=p)が算出される。
以下同様に、操舵トルクTがTBであり、角速度AVがAVBである場合の判定結果は、操舵感覚Bであり、当該判定結果に係るIDは1であるため、対応表73により、当該ID(ID=1)に対応するゲインG2(G2=q)が算出される。
操舵トルクTがTCであり、角速度AVがAVCである場合の判定結果は、操舵感覚Cであり、当該判定結果に係るIDは2であるため、対応表73により、当該ID(ID=2)に対応するゲインG2(G2=r)が算出される。
操舵トルクTがTDであり、角速度AVがAVDである場合の判定結果は、操舵感覚Dであり、当該判定結果に係るIDは3であるため、対応表73により、当該ID(ID=3)に対応するゲインG2(G2=s)が算出される。
尚、上述した方法により操舵感覚が判定し辛い場合、つまり、分類マップ71において、操舵感覚Aと操舵感覚Bとが重なる部分(斜線部)、または、操舵感覚Bと操舵感覚Cとが重なる部分(灰色部)の操舵感覚を判定する場合は、当該分類マップ71の前面に出ている(隠れていない)方の操舵感覚を優先する。
詳しくは、操舵感覚Aと操舵感覚Bとが重なる部分(斜線部)の操舵感覚を判定する場合は、分類マップ71において、操舵感覚Aよりも前面に位置する操舵感覚Bを判定結果として優先的に適用し、当該ID(ID=1)に対応するゲインG2(G2=q)を算出する。同様に、操舵感覚Bと操舵感覚Cとが重なる部分(灰色部)の操舵感覚を判定する場合は、分類マップ71において、操舵感覚Cよりも前面に位置する操舵感覚Bを判定結果として優先的に適用し、当該ID(ID=1)に対応するゲインG2(G2=q)を算出する。
乗算器33(図7)は、第2電流指令値I2とゲインG2とを乗算することにより第4電流指令値I4を算出して、加算器35に出力する。加算器35は、第3電流指令値I3に第4電流指令値I4を加算することにより駆動電流指令値Idを算出して、モータ駆動部51に出力する。ここで、第3電流指令値I3は、前述した第1実施例と同様に、第1電流指令値I1と、電流ゲイン算出器24bで算出したゲインG1とに基づいて、乗算器32で算出した値である。尚、駆動電流指令値Idに基づくモータ駆動部51(図6)の駆動方法については、前述の第1実施例と同様であるため、説明を省略する。また、加算器35は、本発明における駆動電流指令値算出手段の一実施形態である。
このように、本実施形態の第2実施例において、ECU10(図7)は、ステアリング1(図1)の操舵トルクTに基づいて微分指令値T1を算出し、操舵トルクTと車速Vに基づいて微分ゲインgと第1電流指令値I1とを算出し、操舵トルクTと角速度AVに基づいてゲインG1とゲインG2を算出している。
そして、微分指令値T1と微分ゲインgとに基づいて第2電流指令値I2を算出し、第1電流指令値I1とゲインG1とに基づいて第3電流指令値I3を算出し、第2電流指令値I2とゲインG2とに基づいて第4電流指令値I4を算出し、第3電流指令値I3と第4電流指令値I4とに基づいて駆動電流指令値Idを算出している。
このため、操舵トルクTと車速Vに応じて第1電流指令値I1と微分指令値T1のみを変化させる従来技術とは異なり、モータ15(図1)を駆動するための駆動電流指令値Idをきめ細かく制御して、その調整精度を上げることが出来るため、モータ15の駆動力も従来技術に比べて微調整可能となる。
また、本実施例においては、第1電流指令値I1とゲインG1とに基づいて第3電流指令値I3を算出するだけでなく、第2電流指令値I2とゲインG2とに基づいて第4電流指令値I4を算出し、第3電流指令値I3と第4電流指令値I4とに基づいて駆動電流指令値Idを算出しているため、前述の第1実施例よりも更に、モータ15の駆動力の微調整が可能となる。
これにより、運転者が感じている操舵感覚に応じた的確な補助力(モータ15の駆動力)の供給が可能となるため、ステアリング1の操舵フィーリングを良好にすることが出来る。尚、その他の効果については、第1実施例と同様であるため、説明を省略する。
次に、図8に示すECU10(第3実施例)について説明する。尚、本図中の微分指令値算出器21、微分ゲイン算出器22、第1電流指令値算出器23、乗算器31、乗算器32、加算器34、モータ駆動部51は、前述のECU10(図2,第1実施例)におけるそれらと同一であり、同一の機能を有するため、以下において、これらに関する説明を省略する。
図8中の電流ゲイン算出器24cには、前述の第1実施例における電流ゲイン算出器24a(図2)と同様、トルクセンサ11により検出されたステアリング1(図1)の操舵トルクTと、角速度センサ12により検出されたステアリング1の角速度(回転操作速度)AVが入力される。尚、電流ゲイン算出器24cは、本発明における電流ゲイン算出手段の一実施形態である。
また、これに加えて、車速センサ13により検出された車両の車速Vと、微分指令値T1も入力される。ここで、微分指令値T1は、前述した第1実施例と同様に、操舵トルクTを時間に対して微分することにより微分指令値算出器21で算出した値である。
電流ゲイン算出器24cは、電流ゲイン算出器24a(図2)と同様、第1電流指令値I1に対するゲインであるゲインG1を算出(決定)して、乗算器32に出力する。ここで、第1電流指令値I1は、前述した第1実施例と同様に、操舵トルクTと、車速Vとに基づいて、第1電流指令値算出器23で算出した値である。
詳しくは、電流ゲイン算出器24cには、電流ゲイン算出器24a(図2)と同様、分類マップ71(図5の(a))と、対応表72(図5の(b))とが予め記憶されており、また、これに加えて、操舵トルクTと微分指令値T1と車速Vとに基づいて、或る特定の操舵感覚に該当するか否かを判別(判定)する特定感覚判別グラフ(以下、単に「判別グラフ」と記載)74(図10)が予め記憶されている。尚、判別グラフ74は、本発明における第2判定手段の一実施形態である。
ここで、電流ゲイン算出器24cにおけるゲインG1の算出方法は、電流ゲイン算出器24a(図2)におけるゲインG1の算出方法と異なるため、以下において説明する。
電流ゲイン算出器24cでは、操舵トルクTと角速度AVとに基づいて、分類マップ71(図5の(a))により操舵感覚を判定する。尚、分類マップ71(図5の(a))による操舵感覚の判定方法については、電流ゲイン算出器24a(図2)における判定方法と同様であるため、説明を省略する。
これとは別に、電流ゲイン算出器24cでは、操舵トルクTと微分指令値T1と車速Vとに基づいて、或る特定の操舵感覚に該当するか否かを、判別グラフ74(図10)により判別する。
詳しくは、判別グラフ74は、各時点における操舵感覚が、予め設定された特定の(重要な)操舵感覚に該当するか否かを判別するためのグラフであり、当該判別グラフ74には、特定の操舵感覚に該当するか否かを判別するための閾値が予め設定されている。尚、上述の特定の操舵感覚は、操舵感覚A〜D(図5の(a))のいずれでもよいが、本実施例においては、特定の操舵感覚を操舵感覚Aとし、以下においては、これに従って説明を行う。
判別グラフ74には、例えば、操舵トルクTの閾値α,β(一点鎖線部)と、微分指令値T1の閾値γ,δ(点線部)が設定されている。尚、これらの閾値α〜δは、車速Vに基づいて逐次変更される。
ここで、判別グラフ74に対して、破線で示される操舵トルクTと、実線で示される微分指令値T1とが入力された場合、本実施例においては、例えば、操舵トルクTが、閾値αと閾値βの間の値であり、且つ、微分指令値T1が、閾値γと閾値δの間の値である場合、つまり、操舵トルクTと微分指令値T1が共に、図中の斜線部内の値である場合に、その時点における操舵感覚は操舵感覚Aであると判別する。
以上のように、分類マップ71(図5の(a))と判別グラフ74(図10)により、操舵感覚がそれぞれ得られた場合、電流ゲイン算出器24c(図8)では、例えば、図11に示す表75に従って、運転者が感じる操舵感覚の最終判定を行う。尚、最終判定結果(操舵感覚)は、それぞれ図11中の斜線部で示される部分である。
詳しくは、(1)のように、分類マップ71による判定結果が操舵感覚Aであり、判別グラフ74による判別結果が操舵感覚Aである場合、最終的に判定される操舵感覚は、操舵感覚Aとなる。判別グラフ74による判別結果が操舵感覚Aでない場合、最終的に判定される操舵感覚は、分類マップ71が優先されて、操舵感覚Aとなる。
(2)のように、分類マップ71による判定結果が、操舵感覚Aと操舵感覚Bとが重なる場合(図5の(a)の斜線部)に優先される操舵感覚Bであり、判別グラフ74による判別結果が操舵感覚Aである場合、最終的に判定される操舵感覚は、操舵感覚Aとなる。このときは、分類マップ71の操舵感覚の重なり部分に操舵感覚Aが含まれており、判別グラフ74による判別結果も操舵感覚Aであることから(操舵感覚の一致)、判別グラフ74による判別結果が優先される。判別グラフ74による判別結果が操舵感覚Aでない場合、最終的に判定される操舵感覚は、操舵感覚Bとなる。
(3)のように、分類マップ71による判定結果が、操舵感覚Aと操舵感覚Bとが重ならない場合の操舵感覚Bであり、判別グラフ74による判別結果が操舵感覚Aである場合、最終的に判定される操舵感覚は、分類マップ71による判定結果が優先されて操舵感覚Bとなる。このときは、分類マップ71から得られる操舵感覚に、操舵感覚Aが含まれていないので、判別グラフ74による判別結果(操舵感覚A)は優先されない。判別グラフ74による判別結果が操舵感覚Aでない場合、最終的に判定される操舵感覚は、操舵感覚Bとなる。
(4)のように、分類マップ71による判定結果が、操舵感覚Bと操舵感覚Cとが重なる場合(図5の(a)の灰色部)に優先される操舵感覚Bであり、判別グラフ74による判別結果が操舵感覚Aである場合、最終的に判定される操舵感覚は、分類マップ71による判定結果が優先されて操舵感覚Bとなる。このときは、分類マップ71の操舵感覚の重なり部分に操舵感覚Aは含まれないため、判別グラフ74による判別結果(操舵感覚A)は優先されない。判別グラフ74による判別結果が操舵感覚Aでない場合、最終的に判定される操舵感覚は、操舵感覚Bとなる。
(5)のように、分類マップ71による判定結果が、操舵感覚Bと操舵感覚Cとが重ならない場合の操舵感覚Cであり、判別グラフ74による判別結果が操舵感覚Aである場合、最終的に判定される操舵感覚は、分類マップ71による判定結果が優先されて操舵感覚Cとなる。このときは、(3)と同様の理由により、判別グラフ74による判別結果は優先されない。判別グラフ74による判別結果が操舵感覚Aでない場合、最終的に判定される操舵感覚は、操舵感覚Cとなる。
(6)のように、分類マップ71による判定結果が操舵感覚Dであり、判別グラフ74による判別結果が操舵感覚Aである場合、最終的に判定される操舵感覚は、分類マップ71による判定結果が優先されて操舵感覚Dとなる。このときも、(3)と同様の理由により、判別グラフ74による判別結果は優先されない。判別グラフ74による判別結果が操舵感覚Aでない場合、最終的に判定される操舵感覚は、操舵感覚Dとなる。
上記判定方法により、運転者が感じる操舵感覚を最終判定し、当該最終判定結果に係るIDに基づいて対応表72(図5の(b))を参照することで、ゲインG1を算出する。
電流ゲイン算出器24c(図8)で算出されたゲインG1は、乗算器32において第1電流指令値I1と乗算され、当該乗算により算出された第3電流指令値I3は、加算器34において、第2電流指令値I2に加算される。ここで、第2電流指令値I2は、前述した第1実施例と同様に、微分指令値T1と、微分ゲイン算出器22で算出した微分ゲインgとに基づいて、乗算器31で算出した値である。
そして、加算器34は、第2電流指令値I2と第3電流指令値I3とを加算して算出した駆動電流指令値Idを、モータ駆動部51に出力する。尚、駆動電流指令値Idに基づくモータ駆動部51の駆動方法については、前述の第1実施例と同様であるため、説明を省略する。
このように、本実施形態の第3実施例において、ECU10(図7)は、前述した操舵感覚の判定方法(第1実施例)に加えて、各時点における操舵感覚が、予め設定された特定の(重要な)操舵感覚に該当するか否かを判別グラフ74(図10)により判別し、分類マップ71(図5の(a))による判定結果と判別グラフ74による判別結果に基づいて、操舵感覚を最終的に判定する。このため、分類マップ71において操舵感覚が重なる部分に該当する場合に、最適の操舵感覚を選択することが出来る。例えば、図11の(2)の場合は、分類マップ71に従えば、本来の操舵感覚はBであるが、判別グラフ74により操舵感覚がAと判別された場合は、BからAに補正されるため、操舵感覚が特定の操舵感覚Aと合致し、より最適なものとなる。こうして、分類マップ71と判別グラフ74とを用いることにより、運転者が感じている操舵感覚をより的確に特定することが出来る。
よって、運転者が感じる操舵フィーリングの違和感を更に低減することができ、以って、ステアリング1(図1)の操舵フィーリングをより良好にすることが出来る。尚、その他の効果については、第1実施例と同様であるため、説明を省略する。
次に、図9に示すECU10(第4実施例)について説明する。尚、本図中の微分指令値算出器21、微分ゲイン算出器22、第1電流指令値算出器23、乗算器31、乗算器32、乗算器33、加算器35、モータ駆動部51は、前述のECU10(図7,第2実施例)におけるそれらと同一であり、同一の処理機能を有するため、これらに関する説明は、以下において省略する。
図9中の電流ゲイン算出器24dには、前述の第2実施例における電流ゲイン算出器24b(図7)と同様、トルクセンサ11により検出されたステアリング1(図1)の操舵トルクT、角速度センサ12により検出されたステアリング1の角速度(回転操作速度)AVが入力される。尚、電流ゲイン算出器24dは、本発明における電流ゲイン算出手段の一実施形態である。
また、これに加えて、車速センサ13により検出された車両の車速Vと、微分指令値T1も入力される。ここで、微分指令値T1は、前述した第1実施例と同様に、操舵トルクTを時間に対して微分することにより微分指令値算出器21で算出した値である。
電流ゲイン算出器24dは、電流ゲイン算出器24b(図7)と同様、第1電流指令値I1に対するゲインであるゲインG1を算出(決定)して、乗算器32に出力するとともに、第2電流指令値I2に対するゲインであるゲインG2を算出(決定)して、乗算器33に出力する。ここで、第1電流指令値I1は、前述した第1実施例と同様に、操舵トルクTと、車速Vとに基づいて、第1電流指令値算出器23で算出した値である。また、第2電流指令値I2は、前述した第1実施例と同様に、微分指令値T1と、微分ゲイン算出器22で算出した微分ゲインgとに基づいて、乗算器31で算出した値である。
詳しくは、電流ゲイン算出器24dには、電流ゲイン算出器24b(図7)と同様、分類マップ71(図5の(a))と、対応表72(図5の(b))と、対応表73(図5の(c))とが予め記憶されており、また、これに加えて、電流ゲイン算出器24c(図8,第3実施例)と同様、操舵トルクTと微分指令値T1と車速Vとに基づいて、或る特定の操舵感覚に該当するか否かを判別する判別グラフ74(図10)が予め記憶されている。
ここで、電流ゲイン算出器24dにおけるゲインG1,G2の算出方法は、電流ゲイン算出器24b(図7)におけるゲインG1,G2の算出方法と異なるため、以下において説明する。
電流ゲイン算出器24dでは、操舵トルクTと角速度AVとに基づいて、分類マップ71(図5の(a))により操舵感覚を判定する。尚、分類マップ71(図5の(a))による操舵感覚の判定方法については、電流ゲイン算出器24b(図7)における判定方法と同様であるため、説明を省略する。
これとは別に、電流ゲイン算出器24dでは、操舵トルクTと微分指令値T1と車速Vとに基づいて、或る特定の操舵感覚に該当するか否かを、判別グラフ74(図10)により判別する。尚、判別グラフ74による操舵感覚の判別方法については、電流ゲイン算出器24c(図8)における判別方法と同様であるため、説明を省略する。
上記構成の電流ゲイン算出器24dにおいて、分類マップ71(図5の(a))と判別グラフ74(図10)により、操舵感覚がそれぞれ得られた場合、例えば、図11に示す表75に従って、運転者が感じる操舵感覚の最終判定を行う。尚、操舵感覚の最終判定方法については、電流ゲイン算出器24c(図8)における最終判定方法と同様であるため、説明を省略する。
そして、上記判定方法により、運転者が感じる操舵感覚を最終判定し、当該最終判定結果に係るIDに基づいて対応表72(図5の(b))を参照することで、ゲインG1を算出するとともに、当該最終判定結果に係るIDに基づいて対応表73(図5の(c))を参照することで、ゲインG2を算出する。
電流ゲイン算出器24d(図9)で算出されたゲインG1は、乗算器32において第1電流指令値I1と乗算され、当該乗算により第3電流指令値I3が算出される。また、電流ゲイン算出器24dで算出されたゲインG2は、乗算器33において第2電流指令値I2と乗算され、当該乗算により第4電流指令値I4が算出される。
乗算器32で算出された第3電流指令値I3と乗算器33で算出された第4電流指令値I4は、加算器35にそれぞれ出力され、加算器35は、第3電流指令値I3と第4電流指令値I4とを加算して、駆動電流指令値Idを算出し、当該駆動電流指令値Idをモータ駆動部51に出力する。尚、駆動電流指令値Idに基づくモータ駆動部51の駆動方法については、前述の第1実施例と同様であるため、説明を省略する。
このように、本実施形態の第4実施例において、ECU10(図9)は、前述した操舵感覚の判定方法(第2実施例)に加えて、各時点における操舵感覚が、予め設定された特定の(重要な)操舵感覚に該当するか否かを判別グラフ74(図10)により判別し、分類マップ71(図5の(a))による判定結果と判別グラフ74(図10)による判別結果に基づいて、操舵感覚を最終的に判定するため、第3実施例と同様に、運転者が感じている操舵感覚をより的確に特定することが出来る。
これにより、運転者が感じる操舵フィーリングの違和感を更に低減することができ、以って、ステアリング1(図1)の操舵フィーリングをより良好にすることが出来る。
また、本実施例においては、第1電流指令値I1とゲインG1とに基づいて第3電流指令値I3を算出するだけでなく、第2電流指令値I2とゲインG2とに基づいて第4電流指令値I4を算出し、第3電流指令値I3と第4電流指令値I4とに基づいて駆動電流指令値Idを算出しているため、前述の第1実施例よりも更に、モータ15の駆動力の微調整が可能となる。
これにより、運転者が感じている操舵感覚に応じた的確な補助力(モータ15の駆動力)の供給が可能となるため、ステアリング1の操舵フィーリングを良好にすることが出来る。尚、その他の効果については、第1実施例と同様であるため、説明を省略する。
次に、第5実施例〜第8実施例について説明する。
尚、後述する第5実施例は、図2に示すECU10(第1実施例)の変形例であり、以下同様に、第6実施例は、図7に示すECU10(第2実施例)の変形例、第7実施例は、図8に示すECU10(第3実施例)の変形例、第8実施例は、図9に示すECU10(第4実施例)の変形例である。
また、第1実施例と第5実施例、第2実施例と第6実施例、第3実施例と第7実施例、第4実施例と第8実施例、の各々においてECU10の機能ブロックに関する変更がないため、第5〜第8実施例に係るECU10の機能ブロックについては、それぞれ、図2,図7〜図9を流用する。
第5実施例においては、第1実施例と同様に、電流ゲイン算出器24a(図2)にて、分類マップ71(図5の(a))による操舵感覚の判定を行う。
しかしながら、本実施例においては、当該判定結果に変化が生じた場合、つまり、前回の判定結果と今回の判定結果が異なる場合は、前回の判定結果を優先し、今回の判定結果は適用しない。尚、前回の判定結果は、本発明における第1判定結果の一例であり、今回の判定結果は、本発明における第2判定結果の一例である。
そして、今回の判定結果と同様の判定結果が、今回以降、連続して所定回数得られた場合にのみ、所定回数得られた判定結果を適用して、操舵感覚の変更を行い、連続して所定回数得られない場合は、操舵感覚の変更を行わない。
詳しくは、分類マップ71(図5の(a))に基づく判定結果が、前回は操舵感覚Aであり、今回は操舵感覚Bである場合、前回の判定結果である操舵感覚Aを優先し、今回の判定結果である操舵感覚Bは適用しない。
そして、当該操舵感覚Bが、今回以降、連続して所定回数(例えば、10回)得られた場合は、判定結果を操舵感覚Aから操舵感覚Bに変更し、連続して所定回数(例えば、10回)得られない場合は、判定結果を操舵感覚Aのままとする。
ここで、上述の今回の判定結果と同様の判定結果が、今回以降、連続して所定回数(例えば、10回)得られない場合の一例としては、まず、操舵感覚Aと判定され、次に、操舵感覚Bと判定され、これ以降、所定回数未満(例えば、8回)操舵感覚Bと判定された後、操舵感覚Aまたは操舵感覚Cと判定される場合や、まず、操舵感覚Aが判定され、次に、操舵感覚B、操舵感覚Cの順に判定された後、操舵感覚A,B,Cの順に繰り返し判定が行われる場合等がある。
以上のような判定方法は、第6実施例において、電流ゲイン算出器24b(図7)でも行われ、以下同様に、第7実施例において、電流ゲイン算出器24c(図8)でも行われ、第8実施例において、電流ゲイン算出器24d(図9)でも行われるため、各電流ゲイン算出器(24b〜24d)における説明を省略する。
このように、本実施形態の第5〜第8実施例において、各ECU10は、前述したそれぞれの操舵感覚の判定方法(第1〜第4実施例)に加えて、同一の判定結果(操舵感覚)が、連続して所定回数得られたか否かを逐次検証し、検証の結果、連続して所定回数得られた判定結果である場合は、当該判定結果を適用して操舵感覚を変更し、連続して所定回数得られていない判定結果である場合は、当該判定結果を不適用とし、操舵感覚を変更しない。このため、判定結果が頻繁に変わる場合においても、当該判定結果に基づいて操舵感覚が頻繁に変更されることを抑制することが出来る。
これにより、運転者が感じる操舵フィーリングの違和感を更に低減することができ、以って、ステアリング1(図1)の操舵フィーリングをより良好にすることが出来る。尚、その他の効果については、第1実施例〜第4実施例と同様であるため、説明を省略する。
次に、図12に示す第9実施例、図13に示す第10実施例、図14に示す第11実施例、図15に示す第12実施例について説明する。
図12に示すECU10(第9実施例)は、図2に示すECU10(第1実施例)の他の変形例であり、電流ゲイン算出器24aと乗算器32との間に、更に、フィルタ71を設けている。
以下同様に、図13に示すECU10(第10実施例)は、図7に示すECU10(第2実施例)の他の変形例であり、電流ゲイン算出器24bと乗算器32との間に、更に、フィルタ71を設けている。
図14に示すECU10(第11実施例)は、図8に示すECU10(第3実施例)の他の変形例であり、電流ゲイン算出器24cと乗算器32との間に、更に、フィルタ71を設けている。
図15に示すECU10(第12実施例)は、図9に示すECU10(第4実施例)の他の変形例であり、電流ゲイン算出器24dと乗算器32との間に、更に、フィルタ71を設けている。
ここで、上述したフィルタ71は、例えば、LPF(Low Pass Filter)から構成されている。そして、各実施例(第9〜第12実施例)において、電流ゲイン算出器(24a〜24d)から出力されたゲインG1は、フィルタ71を介して、乗算器32に入力される。尚、フィルタ71は、本発明における第1フィルタ手段の一実施形態である。
このように、本実施形態の第9〜第12実施例において、各ECU10は、前述したそれぞれの操舵感覚の判定方法(第1〜第4実施例)に加えて、或る操舵感覚(例えば、操舵感覚A)から他の操舵感覚(例えば、操舵感覚B)に変更された場合に、当該変更に対応して各電流ゲイン算出器24a〜24dから出力されたゲインG1を、フィルタ71を介して、乗算器32に入力している。このため、ゲインの変化を滑らかにするフィルタ71の作用により、操舵感覚の変更に基づくゲインG1の急激な変化を抑制することが出来る。
これにより、モータ駆動部51(図6)に出力される駆動電流指令値Idの急激な変化を抑制することが出来るため、操舵感覚の切り替えの際に、操舵手が操舵フィーリングの違和感を感じないようにすることが出来る。尚、その他の効果については、第1実施例〜第4実施例と同様であるため、説明を省略する。
次に、図16に示す第13実施例、図17に示す第14実施例について説明する。
図16に示すECU10(第13実施例)は、図7に示すECU10(第2実施例)の他の変形例であり、電流ゲイン算出器24bと乗算器33との間に、更に、フィルタ72を設けている。
図17に示すECU10(第14実施例)は、図9に示すECU10(第4実施例)の他の変形例であり、電流ゲイン算出器24dと乗算器33との間に、更に、フィルタ72を設けている。
ここで、上述したフィルタ72は、例えば、前述のフィルタ71と同様、LPFから構成されている。そして、各実施例(第13,第14実施例)において、電流ゲイン算出器24b,24dから出力されたゲインG2は、フィルタ72を介して、乗算器33に入力される。尚、フィルタ72は、本発明における第2フィルタ手段の一実施形態である。
このように、本実施形態の第13,第14実施例において、各ECU10は、前述したそれぞれの操舵感覚の判定方法(第2,第4実施例)に加えて、或る操舵感覚(例えば、操舵感覚A)から他の操舵感覚(例えば、操舵感覚B)に変更された場合に、当該変更に対応して各電流ゲイン算出器24b,24dから出力されたゲインG2を、フィルタ72を介して、乗算器33に入力している。このため、ゲインの変化を滑らかにするフィルタ72の作用により、操舵感覚の変更に基づくゲインG2の急激な変化を抑制することが出来る。
これにより、モータ駆動部51(図6)に出力される駆動電流指令値Idの急激な変化を抑制することが出来るため、操舵感覚の切り替えの際に、操舵手が操舵フィーリングの違和感を感じないようにすることが出来る。尚、その他の効果については、第2,第4実施例と同様であるため、説明を省略する。
最後に、図18に示す第15実施例、図19に示す第16実施例について説明する。
図18に示すECU10(第15実施例)は、図7に示すECU10(第2実施例)の他の変形例であり、図13に示すECU10(第10実施例)と、図16に示すECU10(第13実施例)とを組み合わせた実施例である。
このため、電流ゲイン算出器24bと乗算器32との間には、フィルタ71が設けられており、また、電流ゲイン算出器24bと乗算器33との間には、フィルタ72が設けられている。
図19に示すECU10(第16実施例)は、図9に示すECU10(第4実施例)の他の変形例であり、図15に示すECU10(第12実施例)と、図17に示すECU10(第14実施例)とを組み合わせた実施例である。
このため、電流ゲイン算出器24dと乗算器32との間には、フィルタ71が設けられており、また、電流ゲイン算出器24dと乗算器33との間には、フィルタ72が設けられている。
このように、本実施形態の第18,第19実施例において、各ECU10は、前述したそれぞれの操舵感覚の判定方法(第2,第4実施例)に加えて、或る操舵感覚(例えば、操舵感覚A)から他の操舵感覚(例えば、操舵感覚B)に変更された場合に、各電流ゲイン算出器24b,24dから出力されたゲインG1,G2を、それぞれフィルタ71,72を介して、乗算器32,33に入力している。このため、操舵感覚の変更に基づくゲインG1の急激な変化をフィルタ71により抑制することが出来るとともに、操舵感覚の変更に基づくゲインG2の急激な変化をフィルタ72により抑制することが出来る。
これにより、モータ駆動部51(図6)に出力される駆動電流指令値Idの急激な変化を抑制することが出来るため、操舵感覚の切り替えの際に、操舵手が操舵フィーリングの違和感を感じないようにすることが出来る。尚、その他の効果については、第2,第4実施例と同様であるため、説明を省略する。
本発明では、以上述べた以外にも種々の実施形態を採用することができる。例えば、上記実施形態の全実施例(第1〜第16実施例)では、微分ゲイン算出器22(例えば、図2)に、車速Vによって異なる3種類の微分ゲイン曲線(図3)を予め記憶したが、これに限られず、車速Vを更に細かく設定して、車速V毎の微分ゲイン曲線を更に多種類記憶してもよい。
また、上記実施形態の全実施例では、微分ゲイン曲線(図3)において、車速VがV0である場合の微分ゲインgを、操舵トルクTの値に関わらず一定の値とし、車速VがV1である場合の微分ゲインgを、操舵トルクTの値が大きくなるにつれて小さくなる値とし、同様に、車速VがV2である場合の微分ゲインgを、操舵トルクTの値が大きくなるにつれて小さくなる値としたが、これに限られず、全車速V(V0,V1,V2)において、操舵トルクTの値に関わらず一定で、それぞれ値の異なる微分ゲインgとしてもよい。また、車速VがV0である場合の微分ゲインgを、操舵トルクTの値が大きくなるにつれて小さくなる値としてもよい。さらに、車速VがV0の場合の微分ゲインgよりも、車速VがV1もしくはV2の場合の微分ゲインgのほうが大きくなるような操舵トルクTの値(領域)があってもよい。
また、上記実施形態の全実施例では、第1電流指令値算出器23(例えば、図2)に、車速Vによって異なる3種類の第1電流指令値曲線(図4)を予め記憶したが、これに限られず、車速Vを更に細かく設定して、車速V毎の第1電流指令値曲線を更に多種類記憶してもよい。
また、上記実施形態の全実施例では、ステアリング1の回転方向に関係なく操舵トルクTを正の値として、当該操舵トルクTの値と車速V毎の第1電流指令値曲線とから第1電流指令値I1を算出したが(図4)、これに限られず、ステアリング1の回転方向が右方向である場合の操舵トルクTを正の値とし、左方向である場合の操舵トルクTを負の値として、当該操舵トルクTの値と車速V毎の第1電流指令値曲線とから第1電流指令値I1を算出してもよい。
尚、この場合、ステアリング1の回転方向が左方向である場合の各所定値T0、T1、T2の大小関係は、T0≧T1≧T2となり、T0<0となる。また、第1電流指令値曲線は、図4に示す曲線と当該曲線を原点(T=0,I1=0である点)中心に180°回転させた曲線(図示省略)とが連続する曲線(図示省略)となるため、操舵トルクTが負の値である場合、第1電流指令値I1は、負の値となる。
また、上記実施形態の全実施例では、車速V毎の第1電流指令値曲線(図4)において、第1電流指令値I1が飽和状態となる操舵トルクTをそれぞれ所定値T0、T1、T2とし、これら所定値T0、T1、T2の関係を、T0≦T1≦T2としたが、これに限られず、T2≦T0≦T1としてもよい。つまり、所定値T0、T1、T2の大小関係について、特に制約を設けなくてもよい。
また、上記実施形態の全実施例では、車速V毎の第1電流指令値曲線(図4)において、第1電流指令値I1の飽和値が、車速V毎に異なったが、これに限られず、車速毎に異ならない値としてもよい。つまり、所定値T0、T1における第1電流指令値I1が同一となるようにしてもよいし、所定値T0、T2における第1電流指令値I1が同一となるようにしてもよい。同様に、所定値T1、T2における第1電流指令値I1が同一となるようにしてもよいし、所定値T0、T1、T2における第1電流指令値I1が同一となるようにしてもよい。
また、上記実施形態の全実施例では、分類マップ71(図5の(a))を、操舵感覚A〜Dの4種類の操舵感覚が分布している分類マップとしたが、これに限られず、更に多種類の操舵感覚が分布している分類マップとしてもよい。
尚、この場合、各電流ゲイン算出器24a〜24dには、分類マップ71での判定結果に係るIDとゲイン値(ゲインG1)とが対応付けられている対応表72(図5の(b))も予め記憶されているため、分類マップ71における操舵感覚の種類増加に伴って、当該分類マップ71での判定結果(操舵感覚)に係るIDも増加する必要があり、また、当該IDに対応するゲイン値(ゲインG1)も設定する必要がある。
また、各電流ゲイン算出器24a〜24dの内、電流ゲイン算出器24b,24dには、分類マップ71での判定結果に係るIDとゲイン値(ゲインG2)とが対応付けられている対応表73(図5の(c))も予め記憶されているため、分類マップ71における操舵感覚の種類増加に伴って、当該分類マップ71での判定結果(操舵感覚)に係るIDも増加する必要があり、また、当該IDに対応するゲイン値(ゲインG2)も設定する必要がある。
また、上記実施形態の全実施例では、分類マップ71(図5の(a))において、操舵感覚Aと操舵感覚Bとが重なる部分(斜線部)の操舵感覚を判定する場合は、操舵感覚Bを判定結果として優先的に適用し、操舵感覚Bと操舵感覚Cとが重なる部分(灰色部)の操舵感覚を判定する場合は、操舵感覚Bを判定結果として優先的に適用したが、これに限られず、例えば、操舵感覚Aと操舵感覚Bとが重なる部分(斜線部)の操舵感覚を判定する場合は、操舵感覚Aを判定結果として優先的に適用してもよい。つまり、各操舵感覚の重なり部分において、操舵感覚の優先順位は、任意に選定することが出来る。
また、上記実施形態の第3〜第4,第7〜第8,第11〜第12,第14,第16実施例では、各電流ゲイン算出器24c,24dに予め記憶された判別グラフ74(図10)における特定の(重要な)操舵感覚を操舵感覚Aとしたが、これに限られず、操舵感覚Bや、操舵感覚Cを特定の操舵感覚としてもよい。
また、上記実施形態の第3〜第4,第7〜第8,第11〜第12,第14,第16実施例において、判別グラフ74(図10)に、操舵トルクTの閾値α,βと、微分指令値T1の閾値γ,δを設定し、操舵トルクTが、閾値αと閾値βの間の値であり、且つ、微分指令値T1が、閾値γと閾値δの間の値である場合に、予め設定された特定の操舵感覚(例えば、操舵感覚A)に該当すると判定したが、これに限られず、例えば、操舵トルクTが、閾値αと閾値βの間の値であり、且つ、微分指令値T1が、閾値γと閾値δの間の値でない場合に、特定の操舵感覚(例えば、操舵感覚A)に該当すると判定してもよい。
また、特定の操舵感覚に該当する条件として、これ以外に、例えば、操舵トルクTが、閾値αと閾値βの間の値でなく、且つ、微分指令値T1が、閾値γと閾値δの間の値である場合としてもよく、操舵トルクTが、閾値αと閾値βの間の値でなく、且つ、微分指令値T1が、閾値γと閾値δの間の値でない場合としてもよい。
また、上記実施形態の全実施例では、角速度センサ12を用いて角速度(回転操作速度)を求めたが、これに限られず、ステアリング1の回転量を検出するセンサ(図示省略)や、モータ15の回転速度を検出するモータ回転センサ14等の出力値から角速度を推定するようにしても良い。
また、上記実施形態の全実施例において、モータ15をブラシモータとしたが、これに限られず、ブラシレスモータとしてもよい。
さらに、上記実施形態では、電動式パワーステアリングシステム100を、車両(例えば、自動車)に搭載したが、これに限られず、ステアリング1を備えるものであればよく、例えば、船舶や航空機等に搭載してもよい。