JP3809594B2 - 電動式パワーステアリングシステム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のステアリングホイールを操作したとき、その操舵トルクにアシストトルクを付加して操作性を良くする電動式パワーステアリングシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の電動式パワーステアリングシステムにおいては、ステアリングホイールの操舵トルクをトルクセンサにより検出し、車速を車速センサにより検出している。そして、トルクセンサの出力と、車速センサの出力とからアシスト電流指令値を決定し、これにトルクセンサの出力の微分量と車速により決定される微分指令値を足してモータ駆動電流指令値を決定し、これによりアシストモータを駆動して操舵トルクにアシストトルクを付加している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
然しながら、上述の制御システムにおいて、微分指令値の微分ゲインは車速によってのみ変化させており、操舵トルクが変わった場合でも同じ微分ゲインを掛けている。
然しながら、ステアリングホイールの操舵フィーリングを良好にする条件は、操舵トルクが小さい中立位置と、操舵トルクが大きい大舵角位置においては異なり、つぎのような問題が発生している。
【0004】
たとえば、停車時においては、中立位置で操舵フィーリングが良好になるように微分ゲインを設定すると、大舵角位置においてはコギングトルクによる振動がステアリングホイールに伝達されて、操舵フィーリングが悪くなる。
また、大舵角位置で操舵フィーリングが良好になるように微分ゲインを設定すると、中立位置においては、電流のオーバーシュートが大きく、いわゆるプラプラ感が発生して操舵フィーリングが悪くなる。
【0005】
一方、走行時においては、微分ゲインは、主に中立位置(入力トルク小)での切り出し時の遅れを補うように決定しているが、大舵角での切り返し時に電流のオーバーシュートが大きくなり、手ごたえが不足する。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、走行速度及びステアリングホイールの操舵角度に拘らず快適な操舵フィーリングを得ることができる電動式パワーステアリングシステムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために請求項1の発明が採った手段は、実施例で使用する符号を付して説明すると、ステアリングホイール10の操舵トルクを検出するトルクセンサ20の出力と車速を検出する車速センサ30の出力とにより決定されるアシスト電流指令値23に、微分指令値32を足し、これによりアシストモータ40を駆動して操舵トルクにアシストトルクを付加する電動式パワーステアリングシステムにおいて、
前記微分指令値32を、前記トルクセンサ20の出力の微分量に、前記トルクセンサ20の出力と車速により決められた微分ゲインを掛け合わせて決定し、
前記微分ゲインは、所定の操舵トルクの範囲において、車速が0である場合は中立時に小さく、操舵トルクが増加するにつれて大となることを特徴とするものである。
【0008】
この課題を解決するために請求項2の発明が採った手段は、実施例で使用する符号を付して説明すると、ステアリングホイール10の操舵トルクを検出するトルクセンサ20の出力と車速を検出する車速センサ30の出力とにより決定されるアシスト電流指令値23に、微分指令値32を足し、これによりアシストモータ40を駆動して操舵トルクにアシストトルクを付加する電動式パワーステアリングシステムにおいて、
前記微分指令値32を、前記トルクセンサ20の出力の微分量に、前記トルクセンサ20の出力と車速により決められた微分ゲインを掛け合わせて決定し、
前記微分ゲインは、所定の操舵トルクの範囲において、車両が走行中は、中立時に大きく、操舵トルクが増加するにつれて小となることを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例につき、図面を参照しつつ説明する。
まず、図2において、ステアリングホイール10を操作すると、その操舵トルクはギヤーケース11の入力軸11aに伝達され、出力軸11bの下端のピニオンを介してラック12を駆動する。このラック12は操舵リンク13を介して車輪14の方向を変える。
【0010】
一方、ギヤーケース11に取付けられたトルクセンサ20が操舵トルクを検出し、車速センサ30が自動車の速度を検出し、その電気信号が電気制御装置(以下ECU50と云う)に入力される。ECU50は、図1に示すように、トルクセンサ20からの入力と車速センサ30からの入力とにより後述するモータ駆動電流指令値41を決定し、ドライブ回路51によってアシストモータ40がPWM(パルス幅変調)制御で駆動される(図1参照)。
【0011】
このアシストモータ40のトルクは、電磁クラッチ15を介してギヤーケース16の入力軸16aに伝達され、出力軸16bの下端のピニオンを介してラック12を駆動する。このラック12は、ステアリングホイール10の出力軸11bとともに、アシストモータ40の出力軸16bにより駆動されるので、ステアリングホイール10の操作性が著しく改善されるのである。
【0012】
つぎに、図1について説明する。
操舵トルクがトルクセンサ20により検知されると、トルクセンサ20の出力が電流決定回路21に入力され、また、車速センサ30が検知した車速がアシストテーブル22に入力されてアシスト電流指令値23が決まる。
車速センサ30が検知した車速は、微分ゲインテーブル31に入力される。後述するように、微分ゲインテーブル31から選択された車速に応じた微分ゲインは、トルクセンサ20の出力の微分量に掛け合わされて微分指令値32を決定する。そして、アシスト電流指令値23に微分指令値32が足し込まれてモータ駆動電流指令値41が決定される。
【0013】
微分ゲインテーブル31は、操舵トルクに応じた微分ゲインを決めるものであって、停止時即ち車速(V=0 Km/hr)の微分ゲイン曲線33と、走行時(V>>0 Km/hr)の微分ゲイン曲線34が決められている。
そして、微分ゲイン曲線33は、操舵トルクが所定の範囲で、中立位置(操舵トルクが小)のとき微分ゲインは小さく、操舵トルクが大きくなる(舵角が増加する)につれて順次大きくなる。そして、所定の範囲を越えると一定となる。
また、微分ゲイン曲線34は、中立位置(操舵トルクが小)のときに微分ゲインは大きく、操舵トルクが大きくなる(舵角が増加する)につれて小さくなる。所定の範囲を越えると一定となる。
【0014】
ドライブ回路51は、図3に示すように、変換回路52で変換された電流方向信号及びPWM信号がFETゲート駆動回路53に入力される。このFETゲート駆動回路53は、Hブリッジ接続された4個のFET54を制御するもので、FET1,FET4が通電状態になったときは、電源55からFET1,アシスト モータ40,FET4の順に矢印A方向に電流が供給されて、アシストモータ4 0は正方向に回転する。また、FET2,FET3が通電状態になったときは、電源55からFET2,アシストモータ40,FET3の順に矢印B方向に電流が供給されて、アシストモータ40は逆方向に回転する。
【0015】
モータ駆動電流指定値41は、つぎの過程を経て決められる。
図4において、
a,車速センサ30に車速が入力されると、車速パルス周期を計測し、周波数変換して車速が演算される(STEP10)。
b,この車速は、微分ゲインテーブル31に入力され、微分ゲイン曲線33または微分ゲイン曲線34が選択される(STEP11)。尚、微分ゲイン曲線33及び34は車速により、リニアに変化するものである。
c,また、車速は、アシストテーブル22に入力されてアシストテーブルを決定する(STEP12)。
【0016】
また、図5において、
d,操舵トルクがトルクセンサ20により検知されると、トルクセンサ20の出力が微分ゲインテーブル31に入力され、STEP11により選択された微分ゲイン曲線33,34から微分ゲインが決定される(STEP20)。
e,この微分ゲインは、トルクセンサ20の出力の微分値に掛けあわされて微分指令値32を決定する(STEP21)。
【0017】
f,電流決定回路21及びアシストテーブル22(STEP11)からアシスト電流指令値23が決定する(STEP22)。
g,アシスト電流指令値23に微分指令値32が足しこまれてモータ駆動電流指定値41が決定する。(STEP23)。
h,このようにして決定されたモータ駆動電流指定値と操舵トルクとの関係は、図6及び図7に示すようになる。すなわち、停止時においては、大舵角操作時に中立時よりも広い微分制御領域を設けることができ、また、走行時においては、中立時に大舵角操作時よりも広い微分制御領域を設けることができる。
【0018】
上記実施例によれば、つぎの効果を奏する。
1,停止時において大舵角のときに微分ゲインを大きくしたので、広い微分調整領域を設けることができ、コギングトルクを平滑化することができて、操舵のフィーリングを良好にできる。
2,また、停止時の中立位置において、微分ゲインを小さくしたので、中立付近で電流のオーバーシュートがなく、いわゆるプラプラ感を防止して操舵フィーリングを良好にできる。
【0019】
3,走行時においては、中立位置における微分ゲインを大きくしたので、中立位置での切り出し時の遅れを補うことができる。
4,また、走行時において、微分ゲインを小さくしたので、大舵角での切り返し時に電流のオーバーシュートがなく、操舵フィーリングを良好にできる。
【0020】
【発明の効果】
本発明は、ステアリングホイールの操舵トルクを検出するトルクセンサの出力と車速を検出する車速センサの出力とにより決定されるアシスト電流指令値に、微分指令値を足し、これによりアシストモータを駆動して操舵トルクにアシストトルクを付加する電動式パワーステアリングシステムにおいて、
前記微分指令値を、前記トルクセンサの出力の微分量に、前記トルクセンサの出力と車速により決められた微分ゲインを掛け合わせたので、車両が停止時においても走行中においても、中立位置及び大舵角操作時の何れの場合にも操舵フィーリングを良好にできるという優れた効果を奏するものである。
【0021】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の制御ブロック図である。
【図2】 本発明のパワーステアリングシステムを説明するブロック図である。
【図3】 本発明のドライブ回路の制御ブロック図である。
【図4】 車速を検出してモータ駆動指令値を決めるフローチャートである。
【図5】 操舵トルクを検出してモータ駆動指令値を決めるフローチャートである。
【図6】 停止時における操舵トルクとモータ駆動電流指令値との関係を示すグラフである。
【図7】 走行時における操舵トルクとモータ駆動電流指令値との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
20 トルクセンサ
21 電流決定回路
22 アシストテーブル
23 アシスト電流指令値
30 車速センサ
31 微分ゲインテーブル
32 微分指令値
33 微分ゲイン曲線
34 微分ゲイン曲線
40 アシストモータ
41 モータ駆動電流指令値
50 電気制御装置(ECU)
51 ドライブ回路

Claims (2)

  1. ステアリングホイールの操舵トルクを検出するトルクセンサの出力と車速を検出する車速センサの出力とにより決定されるアシスト電流指令値に、微分指令値を足し、これによりアシストモータを駆動して操舵トルクにアシストトルクを付加する電動式パワーステアリングシステムにおいて、
    前記微分指令値を、前記トルクセンサの出力の微分量に、前記トルクセンサの出力と車速により決められた微分ゲインを掛け合わせて決定し、
    前記微分ゲインは、所定の操舵トルクの範囲において、車速が0である場合は中立時に小さく、操舵トルクが増加するにつれて大となることを特徴とする電動式パワーステアリングシステム。
  2. ステアリングホイールの操舵トルクを検出するトルクセンサの出力と車速を検出する車速センサの出力とにより決定されるアシスト電流指令値に、微分指令値を足し、これによりアシストモータを駆動して操舵トルクにアシストトルクを付加する電動式パワーステアリングシステムにおいて、
    前記微分指令値を、前記トルクセンサの出力の微分量に、前記トルクセンサの出力と車速により決められた微分ゲインを掛け合わせて決定し、
    前記微分ゲインは、所定の操舵トルクの範囲において、車両が走行中は、中立時に大きく、操舵トルクが増加するにつれて小となることを特徴とする電動式パワーステアリングシステム。
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