JP5158603B2 - 積層電子部品の製造方法 - Google Patents

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本発明は、積層コンデンサ、積層インダクタ、積層アクチュエータ等の積層セラミック電子部品を製造する方法に関する。
積層セラミック電子部品(以下「積層電子部品」という。)は、一般に次のようにして製造される。誘電体、磁性体、圧電体等のセラミック原料粉末を樹脂バインダ中に分散させ、シート化してなるセラミックグリーンシート(以下「セラミックシート」という。)に、導電性粉末と所望によりセラミック粉末等を含む無機粉末、樹脂バインダおよび溶剤を主成分とする内部電極用導体ペーストを所定のパターンで印刷し、乾燥して溶剤を除去し、内部電極乾燥膜を形成する。得られた内部電極乾燥膜を有するセラミックシートを複数枚積み重ね、圧着して積層体とし、所定の形状に切断した後、高温で焼成して、セラミック層の焼結と内部電極層の形成を同時に行い、セラミック素体を得る。この後、素体の両端面に端子電極を焼き付けて、積層電子部品を得る。
近年、積層電子部品の小型化、高積層化の要求が強く、特に、導電性粉末としてニッケルおよび/または銅を用いた積層電子部品においては、セラミック層、内部電極層ともに薄層化が急速に進んでいる。このためセラミックシートには、より薄く、緻密で平滑な表面を有するものが使用される。一方、内部電極用導体ペーストは、極めて微細な導電性粉末を使用し、かつペーストを印刷、乾燥した後の乾燥膜が平滑な表面を有していることが要求される。
しかし、セラミックシートと内部電極の乾燥膜との界面が極めて平滑であると、積層、圧着時、この界面においてすべり現象が生じ、位置ずれを起こしやすくなる。一般に高積層品には、無機粉末の分散性と印刷性を考慮して、エチルセルロース系の樹脂バインダを用いた内部電極用ペーストが使用されるが、この場合、特にすべり現象が発生しやすい。内部電極の位置ずれは、積層体を切断、焼成して得た個々の部品の電気特性の不良を引き起こす。例えば積層コンデンサにおいては、コンデンサの容量不良等が発生する。積層数の多い高積層品では、内部電極が存在する部分と存在しないマージン部との段差を最小にするため、高い圧力をかけて圧着する必要があるが、圧力が高いほどすべりが起こりやすく、位置ずれが大きくなり、極端な場合、所定の形状に積層体を切断することができなくなる。このような問題を解決するため、従来、圧着条件等、工程上のさまざまな改善がなされているが、工程が煩雑となる(例えば、特許文献1参照。)。また特に、極めて微細な導電性粉末を使用した高性能の導体ペーストを用いることにより、内部電極の乾燥膜の表面粗さ(Ra)が0.1μm以下になってくると、従来の技術では、位置ずれによる不良を防止することが非常に困難であった。
特開2000−269640号公報
本発明の目的は、セラミックシートに内部電極用導体ペーストを印刷し、乾燥して得た内部電極膜を有するセラミックシートを積層、圧着する際、内部電極膜の位置ずれを起こさない、積層電子部品の製造方法を提供することにある。特に、セラミックシートと内部電極膜との界面が極めて平滑であり、例えば内部電極の乾燥膜の表面粗さ(Ra)が0.1μm以下になった場合でも、圧着時、位置ずれを起こしにくい積層電子部品の製造方法を提供するものである。また本発明の他の目的は、高積層品でも内部電極膜の位置ずれによる特性不良のない積層電子部品を得ることができる、積層電子部品の製造方法を提供することにある。
本発明の要旨は、以下の通りである。
1.樹脂バインダとしてエチルセルロース系樹脂を含む内部電極用導体ペーストをセラミックシート上に所定パターンで印刷し、乾燥して得られる内部電極乾燥膜を有するセラミックシートを複数枚積み重ね、圧着し、所定形状に切断し、焼成する各工程を有する積層電子部品の製造方法において、
前記セラミックシートと前記内部電極乾燥膜との界面ですべりによる内部電極の位置ずれが生ずる高積層品に対し、
前記樹脂バインダとして、前記エチルセルロース系樹脂と、ブチラール樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ロジンおよびロジン誘導体から選択される少なくとも1種の樹脂と、を配合比率が重量比で95:5〜60:40の範囲になるように併用することにより、前記位置ずれを防止することを特徴とする積層電子部品の製造方法。
2.前記内部電極乾燥膜の表面粗さ(Ra)が0.1μm以下であることを特徴とする、前記1に記載の積層電子部品の製造方法。
本発明の製造方法で用いられる内部電極用導体ペーストは、セラミックシートとの接着性が極めて優れており、導体ペーストを印刷、乾燥したセラミックシートを複数枚積み重ね、圧着する際、セラミックシートと内部電極膜との界面が極めて平滑な場合であっても内部電極膜の位置ずれを起こすことがない。このため特性不良のない、優れた積層電子部品が歩留まり良く得られる。特に、高い圧力で圧着する必要のある高積層品でも位置ずれが発生しにくく、このため更に小型で高積層の積層部品を製造することが可能になる。
セラミックシートとの接着性が良好な樹脂とは、内部電極が印刷形成されるセラミックシートとの接着性がエチルセルロース系樹脂より高く、内部電極乾燥膜とセラミックシートとを圧着したときの両者の接合性を改善しうるものであり、例えばブチラール樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ロジン、ロジン誘導体などが使用される。このような樹脂をエチルセルロース系樹脂と併用することにより、セラミックシートを積層、圧着する際、両者の界面ですべり現象が起こりにくくなり、位置ずれが発生しない。このため高積層品を高圧で圧着する場合にも、内部電極膜の位置ずれによる容量不良等の特性不良がなく、歩留まりが改善される。特に、内部電極の乾燥膜の平滑性が高く、表面粗さ(Ra)が0.1μm以下である場合にも、不良が発生せず極めて優れた特性の積層部品を得る。このため更に小型で高積層の積層部品を製造することが可能になる。
エチルセルロース系樹脂とセラミックシートとの接着性の良好な樹脂との比率は、重量比で95:5〜40:60であることが望ましい。セラミックシートとの接着性の良好な樹脂の比率がこの範囲より少ないと効果が顕著でなく、また多いと積層体の焼成工程における脱バインダ性が悪くなる。特に、90:10〜50:50の範囲が最適である。
またバインダ樹脂として、上記以外の樹脂を、本発明の効果を損なわない範囲で添加することもできる。
本発明において用いられる導電性粉末は、特に制限はない。例えばニッケル、銅、コパルト、銀、パラジウム、白金等の金属粉末や、これらを含む合金粉末などが用いられる。単体の金属粉末のほか、前記金属を含む合金粉末や、複合粉末を使用してもよい。また金属粉末表面に金属酸化物、ガラス、セラミックなどの無機材料を存在させた金属−無機複合粉末や、金属酸化物、ガラス、セラミックなどの無機粉末に導電性金属を被覆した金属−無機複合粉末を用いることもできる。これらの導電性粉末を2種以上混合して用いてもよい。
特に、気相法、噴霧熱分解法、金属化合物粉末を気相中に分散させて熱分解する方法などにより製造される、平均粒径1μm以下の、分散性の良好な球状の高結晶性または単結晶金属粉末を用いて、膜厚が極めて薄く、表面粗さ(Ra)が0.1μm以下の平滑な表面を有する内部電極膜を形成する場合に、本発明は極めて優れた効果を奏する。また本発明は、ニッケルおよび/または銅を主成分とする導電性粉末を使用した場合に、特に有効である。
導体ペーストには、導電性粉末の他に、通常配合されることのある無機成分、即ちガラス、セラミックシートに含有されるセラミックと同一の成分を含むセラミック、アルミナ、シリカ、酸化銅、酸化マンガン、酸化チタン等の金属酸化物、モンモリロナイトなどを、目的に応じて適宜添加することができる。これらの無機成分は、粉末状で添加してもよいが、前述のように導電性粉末の表面に被覆することによりペースト中に配合することもできる。
溶剤としては、前記バインダ樹脂を溶解するものであれば特に限定はなく、通常内部電極用ペーストに使用されているものを適宜選択して配合する。例えばアルコール系、エーテル系、エステル系、炭化水素系等の有機溶剤や水、またはこれらの混合溶剤が挙げられる。
本発明の製造方法で用いられる導体ペーストには、この他通常添加されることのある可塑剤、分散剤、界面活性剤等を適宜配合することができる。特に、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等の高級脂肪酸やこれらの脂肪酸のエステルを、その構造の中に有する界面活性剤を配合すると、本発明の効果をより高めるので好ましい。このような界面活性剤は、各々のバインダ樹脂と導電性粉末の分散性を向上させることにより、樹脂同士の相溶性が比較的悪いバインダ樹脂を用いた場合でも、バインダ樹脂と導電性粉末の分離現象や、導電性粉末同士の凝集を防止する効果を有している。
本発明の製造方法で用いられる導体ペーストは、常法に従って、導電性粉末や他の無機粉末を樹脂および溶剤と均一に混合分散させることにより製造される
また、本発明に係る積層電子部品は、前記内部電極用導体ペーストを用いて、通常の積層部品と同様の方法で製造される。
次に、本発明を実施例に基づき、さらに具体的に説明する。
〔実施例1〕
平均粒径0.2μmの球状の高結晶性ニッケル粉末100重量部に対し、セラミック粉末を20重量部配合した無機粉末を、エチルセルロース4.0重量部、ポリビニルブチラール樹脂1.0重量部、高級脂肪酸エステル系界面活性剤1.0重量部、高級脂肪酸系界面活性剤0.5重量部および溶剤100重量部と混合し、3本ロールミルを使用して混練して、導体ペーストを作製した。なおセラミック粉末は、本実施例でコンデンサの誘電体層を形成するのに使用されるものと同一組成のセラミック粉末である(以下「共材」という。)。溶剤はテルピネオールおよび脂肪族炭化水素系溶剤からなるものである。
セラミックシートとしてチタン酸バリウムを主成分とする誘電体セラミック粉末と有機バインダとからなる厚さ約2.5μmのシートを用意した。このシート上に、得られた前記の導体ペーストを所定のパターンに印刷し、90℃で1分間加熱して乾燥させ、内部電極乾燥膜を有するセラミックシートを得た。この内部電極乾燥膜の厚さは約1.5μm、表面粗さ(Ra)は約0.04μmであった。内部電極乾燥膜を有するセラミックシートを、誘電体有効層が200層になるように積み重ね、80℃で800Kg/cm2の圧力を加えて圧着、成形した後、所定の形状に切断し、未焼成の積層コンデンサチップを得た。
得られたチップを端子側の側面に平行な面で切断し、断面を観察して、内部電極膜の位置ずれ(圧着性)を調べた。結果を表1に示す。圧着性の評価基準は、次のとおりである。
垂直方向にほぼ全ての内部電極の位置が揃っているものを◎、若干の位置ずれはあるものの特性に影響しない程度であるものを〇、ずれが大きく、側面から内部電極が露出しているものを×とした。
次に、前記未焼成の積層コンデンサチップを水蒸気を含む窒素ガス中、600℃で10時間保持することにより仮焼し、脱バインダ性を調べ、結果を表1に併せて示した。チップが黒色化していたものを×、そうでないものを〇とした。
〔実施例2〜4〕
実施例1と同様にして、表1に示す組成の導体ペーストを作製した。同様にして、圧着性、脱バインダ性を調べ、Raの値と共に表1に示した。
〔比較例1〕
実施例1と同様にして、表1に示す組成の導体ペーストを作製した。同様にして、圧着性、脱バインダ性を調べ、Raの値と共に表1に示した。
Figure 0005158603
表1より明らかなように、本発明の導体ペーストを用いた場合、乾燥膜の表面がきわめて平滑であるにもかかわらず、位置ずれがほとんど生じなかった。
〔実施例5〜6,比較例2〜3
エチルセルロース系樹脂とポリビニルブチラール樹脂の比率を、表2のように変化させる以外は実施例1と同様にして、導体ペーストを作製した。圧着性、脱バインダ性を調べ、Raの値と共に表2に示した。
Figure 0005158603

Claims (2)

  1. 樹脂バインダとしてエチルセルロース系樹脂を含む内部電極用導体ペーストをセラミックシート上に所定パターンで印刷し、乾燥して得られる内部電極乾燥膜を有するセラミックシートを複数枚積み重ね、圧着し、所定形状に切断し、焼成する各工程を有する積層電子部品の製造方法において、
    前記セラミックシートと前記内部電極乾燥膜との界面ですべりによる内部電極の位置ずれが生ずる高積層品に対し、
    前記樹脂バインダとして、前記エチルセルロース系樹脂と、ブチラール樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ロジンおよびロジン誘導体から選択される少なくとも1種の樹脂と、を配合比率が重量比で95:5〜60:40の範囲になるように併用することにより、前記位置ずれを防止することを特徴とする積層電子部品の製造方法。
  2. 前記内部電極乾燥膜の表面粗さ(Ra)が0.1μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の積層電子部品の製造方法。
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