本発明に係る液滴吐出ヘッドの一例として、インクジェット記録装置のインクジェットヘッドを例に説明する。また、インクが被吐出媒体に対して吐出される方向を下方向とする。インクジェットヘッドは、図示しないが、用紙の搬送方向(副走査方向、以下第2の方向またはY方向という)と直交する方向(主走査方向、以下第1の方向、X方向という)に往復移動するキャリッジに搭載されたヘッドユニット1を有し、そのヘッドユニット1には、例えば、4色のインクが、本体に静置されたインクカートリッジからヘッドユニット1内に供給されるように構成されている。
ヘッドユニット1は、複数枚のプレートが積層されて構成されたキャビティユニット10と、その上面に対して接着して積層されるプレート型の圧電アクチュエータ12と、その上面に圧電アクチュエータ12を駆動させるための駆動信号を出力する駆動回路102を備えたフレキシブルプリント基板40(配線部材)とにより構成されている。
キャビティユニット10は図2に示すように、下層から順にノズルプレート11、カバープレート15、ダンパープレート16、二枚のマニホールドプレート17,18、2枚のスペーサプレート19,20及び圧力室23が形成されているベースプレート21の合計8枚の扁平な板をそれぞれ接着剤にて重ね接合して積層されている。ポリイミドなどの合成樹脂製のノズルプレート11を除き、各プレート15〜21はステンレス製であり、それらの板厚は50μm〜150μm程度の厚さを有する。各プレート11〜21には、電解エッチング、レーザ加工、またはプラズマジェット加工により開孔や溝が形成されている。
キャビティユニット10の最下層のノズルプレート11には、微小径(実施形態では25μm程度)のインク吐出用の多数のノズル11aが微小間隔で穿設され、ノズル孔11aはノズルプレート11のY方向(第2の方向)に沿って延びる列状に設けられ、その列がX方向(第1の方向)に沿って列状に5列設けられている。ベースプレート21には、X方向に沿って延びる細幅の圧力室23が、その長手方向がノズル孔11aの列と直交する方向に沿うように配置され、ベースプレート21を厚さ方向に貫通して形成された圧力室孔をなしている。これら複数の圧力室孔は、上方向から圧電アクチュエータ12が積層され、下方から第2スペーサプレート20が積層されることにより、内部空間を有する圧力室23を形成する。
第2スペーサプレート20からカバープレート15までのそれぞれには、各圧力室23の一端部に連通し、各ノズル孔11aにまで連通する連通路となる各開口25が貫通形成され、また、第2スペーサプレート20と第1スペーサプレート19には、共通インク室26と圧力室23の他端部とを連通する接続流路となる各開口29および溝28が形成されている。
また、上下マニホールドプレート17、18は、圧力室23が列方向(Y方向に)配置された位置に対応する下方位置にて、Y方向に長いインク通路が共通インク室26となる共通インク室孔が板厚方向に貫通するように形成されX方向に5列配置されている。そして、上側の第1スペーサプレート19と下側のダンパープレート16とに挟まれて積層されることにより、共通インク室(マニホールド室)26となる。また、ダンパープレート16には、共通インク室26との対抗面とは反対側の面を凹み形成し、その肉厚が薄肉にさせたダンパ壁25が共通インク室26の形状と対応してY方向に5列形成され、カバープレート15がその下層に積層されることによってダンパ室が形成される。さらにカバープレート15には、複数のノズル孔11aを有するノズルプレート11を下方から積層接着されている。
これらの各プレート11〜21が積層されていることで、形成された開孔や溝が連通し、共通インク室から接続流路、圧力室、連通流路およびノズルからなるインクが流通するチャンネルが構成されている。上記構成により、図示しないインク供給源から流入したインクがノズル11aまで導かれる。
なお、ベースプレート21から上下のマニホールドプレート17のY方向の一端部には、上下の位置を対応させて、X方向に適宜間隔で穿設された4つのインク供給口31(図1参照)が穿設されている。図示しない各インク供給源からこの場合4種類のインクがインク供給口31にそれぞれ独立して供給される。なお、使用頻度の高いインク(ブラックインクなど)が流入するインク供給口31が、2つのチャンネルとつながり、他のインク供給口31がそれぞれ互いに独立して1つのチャンネルとつながる。
次に、圧電アクチュエータ12の構成について説明する。圧電アクチュエータ12は、図3に示すようにそれぞれ平面視で略同一寸法の矩形状に形成され積層された7枚の圧電層33、34と、その上面の拘束層となる圧電層46と、最上面となる表面シートとしてトップ層35(トップ圧電層)を積層した構造である。圧電層33、34は、1枚の厚みが30μm程度の圧電セラミックス板からなり、圧電層33、34間には共通内部電極37および個別内部電極36とを備え、交互に積層されている。トップ層35には、その表面に個別表面電極93と共通表面電極92とが設けられている。トップ層35と拘束層46は、圧電セラミックス板でもよいし、他の材料でも良く電気的絶縁性を有していればよい。
圧電アクチュエータ12は、複数枚の圧電層33、34を積層方向に挟んで形成されている個別内部電極36と共通内部電極37の積層方向に対向する両電極間の前記圧電層を活性部として有し、任意の個別内部電極36と共通内部電極37との間に駆動電圧を印加することにより、その印加された個別内部電極36に対応した圧電層の活性部に当該積層方向に圧電縦効果による歪みを発生するものである。該活性部は、圧力室23の数と同一の数で同一の列にてその対応する位置に形成されている。即ち、前記活性部は、ノズル11a(圧力室23)の列方向(Y方向)に沿って並べられ、且つ前記ノズルの列の数と同じ数だけ、X方向に並べられている。また、各活性部は、X方向に圧力室23の長手方向に長く形成され、且つ隣接する活性部の配置間隔(ピッチP)も圧力室23の配置と同様であって、千鳥状配列されることになる。
7枚の圧電層33、34は、下から数えて奇数番目に配置される圧電層34と、下から数えて偶数番目に配置される圧電層33とからなり、圧電アクチュエータ12がキャビティユニット10に接合されている状態では、各圧力室23が当該圧電アクチュエータ12(最下層の圧電層34)の下面に覆われている。最下層の圧電層34の上面には、共通内部電極37がその広幅面全体に印刷形成されており、この最下層以外の圧電層34の上面には、共通内部電極37が広幅に印刷形成されていると共に、当該共通内部電極37が存在しない非電極部分38が形成され、非電極部38には後述するダミー個別電極38aが形成されている。
各圧電層33の上面には、複数の個別内部電極36がX方向に長い平面視細長形状に印刷形成されている。各個別内部電極36は、積層方向で各圧力室23と重なる位置でX方向列状に同ピッチでY方向に5列並んで配置され、図6(b)に示すように各個別内部電極36には、圧力室23と重なる直線部36bに対して、その一端部が屈曲して形成され、圧力室23に対向する位置から外側に伸びた導通用の屈曲部36aが形成されている。屈曲部36aは、後述する個別電極用スルーホール42が開口される。なお、図3で第3列目の個別内部電極36における一端部36aは、圧力室23の外側一端に対して交互に外に延びている。また、各圧電層33の上面において、その外周縁を囲うようにダミー共通電極43が帯状に設けられており、後述する共通電極用スルーホールがこのダミー共通電極43に開口されている。
トップ層35の上面には、共通内部電極37を外部と導通させるための共通表面電極92と、個別内部電極36を外部と導通させるための複数の個別表面電極93とが設けられている。共通表面電極92は、圧電アクチュエータ12の外周縁に沿って帯状に延びている。複数の個別表面電極93は、X方向に細長い形状でY方向に圧力室23と同ピッチ(例えばP=0.339μm)で列状に並びY方向において5列配置されている。
個別表面電極93は、その幅が細い細幅部93a(例えば、W2=幅100μm)と細
幅部93aと連接される広幅部93b(例えば、W3=幅150〜300μm。(200〜220μm程度が好ましい。)L3=長手方向360μm程度)とを有し、図6(b)に示すように、平面視でY方向に並ぶ圧力室23と圧力室23との間の隔壁部分(W1=120〜150μm)に細幅部93aが配置され、細幅部93は隔壁部分の幅よりも小さくなっている。また、広幅部93bは隔壁部分の幅よりも若干広く形成されていて、その広幅部93b上に、配線部材40の下面に露出した後述する個別電極ランド78(端子電極)に接続するための個別端子電極95が配置される。つまり、各個別表面電極93の長手方向の片端部に個別端子電極95が配置される。また、端から二列毎の個別表面電極93は互いにY方向にずらされている。
個別端子電極95は、個別表面電極93の広幅部93bよりも長手方向および幅方向の寸法が小さい細長矩形状であり、複数の個別端子電極95は列方向に沿って千鳥状に配置されている。すなわち、個別端子電極95は、Y方向に並ぶ個別表面電極93において、個別表面電極93の長手方向の一端部と他端部とを交互に配置させている。個別端子電極95は、千鳥状に配列された個別電極ランド78に対応した位置に設けられるため、対応して個別端子電極95も千鳥状に配置されている。また、個別端子電極95が配置されるよう個別表面電極93も、その広幅部93bを対応させるように配置されている。個別端子電極95は、例えばその幅が150〜200μm程度であり、個別端子電極95の外周縁と広幅部93bの外周縁との間の平面視の間隔寸法は25μm程度(片側のみ)である。
また、共通表面電極92上には、X方向に適宜距離をおいて複数の共通端子電極94が配置されている。共通端子電極94は、配線部材40の共通電極ランド57に接続する為に設けられている。なお、個別端子電極95および共通端子電極94は、配線部材40の各ランド78、57との接合においてバンプ電極103が接合される。なお、共通表面電極92、個別表面電極93はAg−Pd系の導電材を用いてスクリーン印刷で層厚さを薄く(1〜2μm)形成されており、共通端子電極94および個別端子電極95は、ガラスフリットを含むAg系の導電材を用いて各表面電極上に層厚さが厚く(10〜20μm)印刷形成されている。
トップ層35は、図4,5にあるように、板厚さを貫通するように穿設された複数のスルーホール44が表面個別電極93上にその一方の端部が開口するように位置され、また、後述する拘束層46の接続用パターン53にも他方の端部が開口されるように位置される。そして、複数のスルーホール44内にそれぞれ充填した導電部材(銀―パラジュウム系の導電部材)にて内部導通電極44aが形成されている。なお、図示されていないが、共通表面電極92と拘束層の連絡用パターン54とに、その端部が開口するようなスルーホールも形成され導電部材が充填されている。
拘束層46の上面には、図3に示すように、平面視で略矩形型の個別導通部としての接続用パターン53が前記圧電層34における各ダミー個別電極38aの少なくとも一部と平面視で重複するように一定間隔で配置形成されている。また、拘束層46の上面の短辺に沿う部位等には、圧電層34における共通内部電極37の一部及び圧電層33におけるダミー共通電極43の一部にそれぞれ平面視で重複する位置に共通導通部としての連絡用パターン54が形成されている。図4、図6(b)に示すように、各圧電層33上の個別内部電極36は、その屈曲部36aが、上下に隣接する圧電層34におけるダミー個別電極38a及び拘束層46の接続パターン53とそれぞれ少なくとも一部が平面視で重なる。そして、各屈曲部36aは、圧電層34及び拘束部46を貫通する後述する個別電極用スルーホール42内の個別内部導通電極42aとそれぞれ電気的に接続可能な位置に配置される。
最下層の圧電層33、34を除き、それより上層の圧電層34、33、拘束層46において、積層方向に貫通する個別電極用スルーホール42が形成され、個別電極用スルーホール42の内部には、導電材を充填もしく塗布してなる個別内部導通電極42aが設けられている。また、圧電層34のうち、下から2番目までの圧電層34においては、その上面において前述したように共通内部電極37を有するとともに非電極部38を有し、非電極部38にダミー個別電極38aが形成され個別電極用スルーホール42がダミー個別電極38aに開口するように位置している。そのため、個別電極用スルーホール42の開口位置周辺には、共通内部電極37と独立しているため、共通内部電極37と個別内部電極36とが互いに電気的に独立している。スルーホール44は、個別表面電極93と、接続用パターン53とに開口している。
よって、個別電極用スルーホール42は、最下層の圧電層33以外の各圧電層33、各圧電層34のダミー個別電極38a、拘束層46の接続用パターン53が設けられている位置でその端部が開口されるように板厚を貫通するように設けられ、スルーホール44が、接続用パターン53とトップ層35の上面の個別表面電極93上に位置するように設けられているため、これにより積層方向に並ぶ各個別内部電極36と個別表面電極93とが、内部個別導通電極42a、内部導通電極44aを介して導通されている。なお、複数の積層方向に設けられたスルーホール42、43は、互いにその配置位置が偏寄されて設けられている。
同様に、最下層の圧電層34を除き、それより上層の圧電層34、33、拘束層46、トップ層35の全ての圧電層を積層方向に貫通する図示しない共通電極用スルーホールが形成され、共通電極用スルーホールの内部には、導電材を充填もしくは塗布してなる図示しない内部共通導通電極が設けられている。共通電極用スルーホールは、最下層の圧電層34以外の各圧電層34の共通内部電極37と、各圧電層33のダミーコモン電極43、拘束層46の連絡用パターン54、およびトップ層35の上面の共通表面電極92が設けられている位置でその端部が開口されるように板厚を貫通するように設けられている。これにより、積層方向に並ぶ各共通内部電極37と共通表面電極92とが、内部共通導通電極を介して導通されている。
複数の圧電層34〜36は、圧電層33、34及び拘束層46、トップ層35の元材料であるグリーンシートの表面に表面電極91、共通表面電極92、個別内部電極36、共通内部電極37、ダミー個別電極38、ダミー共通電極43、接続用パターン53及び連絡用パターン54を、銀−パラジュウム系導電部材(導電性ペースト)を用いてスクリーン印刷形成した後、圧電層33、34、拘束層46及びトップ層35を所定の順に積層し、プレスした後、さらに焼成して形成される。なお、スルーホール42、44は各圧電層33,34、拘束層46、トップ層35にパターン印刷する前に穿設され、スルーホール41、42内への内部導通電極42a,44aの充填はパターン印刷時に同時に行われる。
個別端子電極95は、Y方向に並ぶ個別表面電極93の一列に対して、各個別表面電極93の一端と他端をY方向に交互に配置されて千鳥状に配列されている。その個別表面電極93に開口するトップ層35に形成されるスルーホール44は、その下層にある拘束層46に形成された接続用パターン53にも開口する必要がある。接続用パターン53は、X方向に同じ位置にY方向に配列された一列である。よって、スルーホール44を接続用パターン53位置から積層方向に垂直上方向に対して、個別表面電極93上に開口させると、Y方向に千鳥状に配列された個別端子電極95の配置位置の直下にスルーホール44の開口の端部が配置されないものも含まれる。
ところで、前記焼成工程においてスルーホール42、44内の内部導通電極42a,44aはやせ細り、その内壁に筒状に張りつく。特に、トップ層35の表面(上面)における個別表面電極93に対するそれぞれスルーホール44の開口端部では、内部導通電極44aが平面視でほぼリング状で極めて厚さが薄い状態である。そのため、トップ層35の表面が製造工程において冶具等で擦れると電気的に断線が発生することがある。また、後述するバンプ電極103を介して個別端子電極95とランド部78とを接合する際に、溶融したハンダが表面個別電極上のいて流れ出し「銀食われ」が起こり、表面個別電極が薄いことにより電気的断線が発生しやすかった。そのため、層厚の厚い個別端子電極95(及び後述するダミー部96)にてスルーホール44の開口端部を広い面積にわたって覆うことで、トップ層35の表面が取り扱い中に治具等で擦れてても、スルーホール44の内面の内部導通電極44aは個別端子電極95に広い面積において電気的に接続されるため、電気的断線事故が発生しないようにしている。また、「銀食われ」が起こったとしても、電気的に接続されているスルーホール44の内部導通電極44aは、個別端子電極95,の直下にあるためスルーホール44は保護され断線されない。
しかしながら、前述のように個別端子電極95の配置位置の直下にスルーホール44の開口端部が配置されないものがある。そのため、そのようにスルーホール44の開口の端部が個別端子電極95で覆われない位置関係になっているものに対しては、ダミー端子96を配置させることで、スルーホール44の開口の端部をダミー端子96によって保護させる。なお、ダミー端子96は、個別端子電極95と同様の工程で形成される。よって、複数の個別端子電極95と、また、後工程のハンダ接合時に個別端子電極95上に接合されるハンダバンプ電極103が、スルーホール44の開口だが個別端子電極95の配置位置にない場合においても、ダミー端子部96において銀食われなど保護され、電気的断線事故が発生しない。しかも、外部導電部としての共通端子電極94、個別端子電極95(及びダミー部96)は、スルーホール44の内部まで充填され、スルーホール44の開口端部において内部導通電極44aに密着しているので、内部導通電極44aの極めて厚さが薄い部分を補強し、電気的断線を確実に防いでいる。
なお、以降の説明では、個別端子電極95の配置位置においてスルーホール44が個別表面電極93に開口するものを個別端子電極95aとし、特に区別する必要がないときは個別端子電極95として説明する。
また、拘束層46に貫通形成されるスルーホール42の位置は、トップ層35に設けられたスルーホール42の位置から偏倚している。よって、トップ層35のスルーホール44の開口端部を覆うように形成された共通端子電極94,個別端子電極95が、後述する接合工程において配線部材40の接合電極部77、78にて押圧されるとき、トップシート35のスルーホール44が形成された部位は、トップ層46のスルーホール44が形成されていない部位にて支持されるので、配線部材40を押圧したときの変形を防止している。
なお、共通表面電極92、個別表面電極93の焼成後に、外部導電部としての共通端子電極94、個別端子電極95及び後述するダミー部96は銀−ガラスフリット系の厚膜用の導電性ペースト(共通内部電極37、個別内部電極36と同じ材料)を用いて表面に印刷形成した後に前記焼成温度より低い温度で焼成して形成される。
図9にあるように配線部材40は、端子形成領域Aと圧電アクチュエータ12と接合され、端子形成領域AからY方向に外側へ引き出されている。配線部材40には、ポリイミドなどの合成樹脂製のフレキシブルな帯状の樹脂シート101と、樹脂シート101の下面に銅箔からなる導線材層が積層され、その導線材層を覆う合成樹脂材(ポリイミド樹脂や感光性ソルダレジストなど)保護材100とが積層されて構成されている。樹脂シート101の上面には駆動回路102が実装され、樹脂シート101の下面には、導線材層に共通電極用配線77、個別電極用配線79、個別電極ランド(電極用端子)78、共通電極ランド57等がフォトレジスト等により印刷形成されている。なお、個別電極ランド78は、駆動回路102から延びる各個別電極用配線79の端部にそれぞれ設けられていて、保護材100をエッチング等で除去して圧電アクチュエータ12側に開口させ、その開口から配線79を露出させて成る。また、同様に共通電極ランド78は、幅広の共通電極用配線77を部分的にその保護材100を除去して開口させ、その開口から配線77を露出させてなる。
個別電極ランド78は、圧電アクチュエータ12の個別端子電極95と対応して接合されるため、Y方向に列状に並び、X方向に複数列形成されている。また、共通電極ランド57も、共通端子電極94と対応する位置に複数形成されている。
共通電極用配線77はグランド電位に保持され、配線部材40の短辺側(Y方向)両端にX方向に沿って帯状に延びて引き出されている。個別電極ランド78は、圧電アクチュエータ12の個別端子電極95と対応する位置に形成されていて、X方向に千鳥状に延びて配列されるとともにY方向に5列は配置されている。また、共通表面電極92上の複数の共通端子電極94に対応する位置に共通電極ランド57が形成されている。また、個別電極用配線34は、対応する個別電極ランド27からY方向に隣り合う他の個別電極ランド57間を通って、駆動回路102に接続されている。なお、個別電極ランド57は、多数の個別電極用配線34をその個別ランド57間を通って配線させるため千鳥状に配列されている。そして、図9(b)に示すように、保護材103を除去して露出された各ランド57,78に対して、ハンダなどの導電性材料で形成されたバンプ電極103が配置されている。バンプ電極103は、各ランド57,78に対してソルダーペーストを設置させて、リフロー工程をへることで凸状のバンプ電極103が形成されている。
そして、配線部材40と圧電アクチュエータ12とは、ハンダバンプ電極103が形成された個別電極ランド78および共通電極ランド57と、個別端子電極95とおよび共通端子電極94とを、互いに対向させるように位置合わせして積層して、配線部材40の上方から図示しないバーヒーターなどで熱圧着させることで、図4に示すようにハンダバンプ電極103が溶融して各ランド57,78と個別端子電極95、共通端子電極94との間に介在した状態で硬化させることで電気的かつ機械的に接合される接合部91が構成される。
配線部材40とアクチュエータ12とがハンダ接続されたときに、各ランドと各端子間との間にハンダ103が介在した状態で、その間からハンダ103があふれ出してくることがある。その場合、あふれ出した余剰のハンダ103は、個別表面電極93の長手方向(Y方向)に沿って広がる。このとき、スルーホール44が個別端子電極95の直下で保護されているため、個別表面電極93上に余剰のハンダ103が広がって個別表面電極93の銀食われが起こったとしても、スルーホール44を保護できるが、しかしながら、図7(b)にあるようにハンダバンプ電極103位置において、熱圧着時にバンプの先端部を中心に押圧集中と熱集中が接合部91にかかりやすくなるため、バンプ電極103の先端に対応するトップ層35に脆弱部104を形成してしまう。
また、図10に示すように、ハンダを用いて接合するときにハンダ溶融点程度まで熱をかけることにより、配線部材40の樹脂シート101が熱膨張し、図示しないバーヒーターをリリースするとその逆方向に収縮しようとする熱応力がかかり、各複数の接続部91間には平面方向に引っ張り荷重が発生する。図10には便宜的にその熱膨張・熱収縮の方向を直線矢印Aで示した。この熱応力により、複数の接合部91には平面方向全方位に向く引っ張り荷重が作用し、接合部91が剥離するおそれがある。接合部91が単一の場合、接合部91に作用する引っ張り荷重は周囲に発散されて接合部91に対する荷重の影響は小さい。しかしながら、複数の接合部91がある場合、配線部材40の樹脂シート101が圧電アクチュエータ12との接合領域の中心部から略放射状に膨張・収縮し、特に端子形成領域の外周縁において大きな引っ張り荷重が作用することがある。ある接合部91の周囲に他の接合部91が存在していれば、各接合部91での引っ張り荷重が互いに打ち消し合うと考えられるが、上記外周縁に配される接合部91においては、端子形成領域の外側に他の接合部が存在しないため、この接合部91に作用する引っ張り荷重に偏りが生じてこれら外周縁に配される接合部91が剥がれ易くなると考えられる。特に、端子形成領域Aの4つの隅部に最も引っ張り荷重がかかりやすい。
本実施形態においては、このような引っ張り荷重による接合部91の剥離を抑えるために、個別端子電極95aの直下に配置されるスルーホール44の開口端部の位置44bと、個別端子電極95aに接合されるバンプ配置位置103aとが互いに個別端子電極95aの長手方向Xに互いにずれるような構成をしている。複数の個別端子電極95のうち、スルーホール44が個別端子電極95の直下において開口する個別端子電極95aは、他の個別端子電極95よりもX方向に長く形成され、またハンダバンプ電極103のバンプ径よりもさらに長い寸法を有している。(本実施形態では、例えば、バンプ径の2倍よりも大きくなるように形成されている。)そして、そのような個別端子電極95aに対して、個別表面電極93の幅広部93bもX方向に長くバンプ径よりも長い寸法を有している。そして個別端子電極95aの長手方向Xの両端部のうち、一端にバンプ電極103が、他端にスルーホール44の開口端部位置44bが、X方向に離れて配置されるように形成されている。つまり、配線部材40のランド78に配置されるバンプ電極103の先端部が個別端子電極95aに接合する位置103aと、スルーホール44の開口端部位置44bとがX方向に互いにずれて配置されている。また、そのような個別端子電極95aにおいて、その両端部のうち、ハンダバンプ電極103が接合される位置103aが圧電アクチュエータ12の外側方向に、スルーホール44の開口端部位置44bの内側方向になるように互いにX方向にずれて配置されている。なお、図5に示すようにスルーホール44は、個別表面電極93上に開口されるとともに、接続パターン53に対しても開口される必要があるため、本実施形態のような個別端子電極95aに接続されるスルーホール44の開口端部44b位置は、バンプ103の配置位置とX方向にずらさせるため、対応する接続パターン53aは、他の接続パターン53よりもX方向に長くなるように配置され、スルーホール44の開口端部44bと接続される。
図7(a)(b)に示すように、本発明の接続部91によると、バンプ電極103がヒーターによって接合したときに、そのバンプ103の先端部を中心として押圧集中と熱集中がかかるため、その先端部直下の位置103aにおいて、トップ圧電層35に脆弱部104を発生させてしまう。しかしながら、個別端子電極95aのX方向において、脆弱部104を発生させるバンプ103が配置された側を、圧電アクチュエータ12の外側方向に配置し、そのバンプ103の配置位置103aとはその反対側(内側)に距離をおいてスルーホール44の開口端部位置44bを配置させる。よって、スルーホール44の配置位置44bが、脆弱部104を避けて形成されている。
従来では、アクチュエータ12の外側方向における複数の接続部91において引っ張り荷重が働き、ハンダ103により個別端子電極95とランド78とが接合状態のまま配線部材40が外側方向から剥離されようとすると、個別表面電極93の広幅部93bとともに脆弱部104が引っ張り荷重によって共にもがれてしまう。しかしながら、本実施形態のような接合部91の構成であると、バンプ電極103の配置位置103aとスルーホール44が開口されている位置44bは距離が離れて配置されているため、少なくとも脆弱部104を避けてスルーホール44が配置され、脆弱部104が破損しても少なくともスルーホール44を保護することができる。また、脆弱部104を発生させるバンプ電極103の配置された側を、接合部91に対して引っ張り荷重が大きくかかりやすい圧電アクチュエータ12の外側方向に配置し、そのバンプ103の配置位置103aとはその反対側(内側)に距離をおいてスルーホール44の開口端部位置44bを配置させているため、外側方向の脆弱部104が破損されたとしても、それよりも内側でスルーホール44が配置されるトップ層35の部分はもがれることなく配置されることができるため、スルーホール44における電気的導通はとることができ、断線されることがない。よって、本実施形態の構成によると、電気的断線を起こさせるような圧電層の剥離を生じさせることを抑制させることができるようになっているため、電気的断線影響を抑制し、インク吐出に影響を及ぼすことを抑制することができる。
このような接続部91は、図10に示すように、複数の個別表面電極93の列のうち、引っ張り荷重がかかりやすい外周縁に近い個別表面電極93の列に対して設けるのがよい。また、複数の接続部91がある略矩形状の領域のうち、特に引っ張り荷重が集中する4隅におけるいくつかの個別表面電極においてもよい。
なお、本実施形態の構成は、スルーホール44の配置位置44bが、表面個別電極93aにおいて個別端子電極95aの配置された領域に開口されているものに対して適用されていて、ダミー外部電極96の配置された領域にスルーホール44が開口されている個別端子電極95、個別表面電極93に対してはこの構成が適用されていないが、個別表面電極93の個別端子電極95が配置された領域にスルーホール44の配置位置44bが開口されるように接続パターン53の形状をX方向に延在させるようにすれば、ダミー外部電極96を配置する必要はなく、本実施形態の構成を適用させることができる。
また、本実施形態では、熱圧着による配線部材の熱応力を起因とする引っ張り荷重に対して本実施形態の構成を用いることで効果を得ることができるが、それ以外に、例えば、圧電アクチュエータ12と配線部材40とを接合したのちに、ヘッドホルダなどのケーシングに組み立てる工程において、配線部材40の引き出された側を折りたたむため、作業者などが引き出された側を摘むことがある。複数の接続部91において、配線部材40の引き出された側の複数の接続部91においては、引っ張り荷重がかかるため接合部91が剥離されやすく断線が起こる可能性がある。そのため、本実施形態の構成を用いても同様の効果を得ることができる。
また、上記で開示された実施形態は例示であって制限的なものではない。例えば、圧電アクチュエータの積層枚数、各電極等の形態を変更してもよい。なお、本発明に係る液体吐出装置として、インクジェットプリンタに搭載されるインクジェットヘッドと、これに電気的及び機械的に接続される配線基板とからなる組立体を例示したが、インク以外の液体、例えば着色液を吐出して液晶表示装置のカラーフィルタを製造する装置、導電液を吐出して電気配線を形成する装置などに使用する液滴吐出装置に適用してもよい。